説明

車両用非接触充電装置

【課題】共鳴コイルを用いて電力を伝える変調方式より損失が少なく、効率的に発電でき、車載する充電装置を省略して、車両上の乗員スペースを確保できるようにする。
【解決手段】車両1に搭載したバッテリ3と、バッテリ3を充電する発電機6と、発電機6を駆動するとともに車両1の外部から回転駆動できる入力軸7と、入力軸7に接続した導体8と、導体8に渦電流を流すように回転磁界を生成する外部充電器10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用非接触充電装置に係り、特に、車両に搭載した発電機を外部から非接触状態で駆動して発電し、バッテリを充電することができる車両用非接触充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用モータを駆動源として走行する車両には、走行用モータに電力を供給するバッテリを外部電源からの給電で充電する、いわゆるプラグイン電気自動車やプラグインハイブリッド車などがある。プラグイン形式の車両に搭載したバッテリの充電装置には、共鳴コイルを用いて変調回路により変調された交流電流を外部充電器から車載の充電器に非接触状態で送信し、バッテリを充電する非接触充電装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−183813号
【特許文献2】特開2010−68632号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1および特許文献2に開示される非接触充電装置は、共鳴コイルを用いて非接触状態で電力を伝達し、車両に搭載されたバッテリに充電する方式であるため、一般に充電効率が悪い。また、非接触充電装置は、車載する充電器に変調回路が必要であるため、充電器の搭載で車両上の乗員スペースが減少されることになる。
【0005】
この発明は、共鳴コイルを用いて電力を伝える変調方式より損失が少なく、効率的に発電でき、車載する充電装置を省略して、車両上の乗員スペースを確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車両に搭載したバッテリと、前記バッテリを充電する発電機と、前記発電機を駆動するとともに車両の外部から回転駆動できる入力軸と、前記入力軸に接続した導体と、前記導体に渦電流を流すように回転磁界を生成する外部充電器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、外部充電器の回転磁界で車両に搭載した発電機の入力軸を回転させるので、共鳴コイルを用いて電力を伝える変調方式の非接触充電装置よりも損失が少なく、効率的に発電できる。また、変調回路が不要であり、車載する充電装置を省略できる結果、車両上の乗員スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は車両用非接触充電装置のシステム構成図である。(実施例1)
【図2】図2は車両用非接触充電装置のシステム構成図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1を示すものである。図1において、1はプラグイン形式の電気自動車やハイブリッド車などの車両、2は走行用モータ、3はバッテリである。車両1は、バッテリ3の電力で走行用モータ2を駆動し、走行する。車両1に搭載したバッテリ3を充電する車両用非接触充電装置4は、バッテリ3にコンバータ5を介して発電機6を接続している。発電機6は、車体のフロア又はフレームに取り付けられている。バッテリ3は、発電機6の発電する電力をコンバータ5を介して供給され、充電される。発電機6は、この発電機6を駆動するとともに車両1の外部から回転駆動できる入力軸7を備えている。入力軸7には、導体8を接続している。導体8は、回転面が車体パネル9の車両側面に沿うように配置する。
前記車両用非接触充電装置4は、外部充電器10を備えている。外部充電器10は、商用電源から所定の交流電流を発生する交流発生器11と、発生した交流電流を増幅する増幅器12と、増幅された交流電量が流れる複数個(偶数個)のコイル13の回転方向を交互に並べて構成した多極コイル14とを備えている。多極コイル14は、車両側面に沿う回転面の回転磁界15を生成する。回転磁界15は、この回転磁界15内の導体8に渦電流(Eddy current)を流して回転させる。
【0011】
車両用非接触充電装置4は、バッテリ3を充電する際に、発電機6の入力軸7に設けた導体8を覆う車体パネル9に、外部充電器10の多極コイル14を近づけて車両1を停止させる。外部充電器10は、交流発生器11で発生した交流電流を増幅器12で増幅して多極コイル14に流す。導体8に近づけて位置した多極コイル14は、交流電流が流れると、車体パネル9の車両側面に沿う回転面の回転磁界15を生成し、この回転磁界15内の導体8に渦電流を流して回転させる。導体8の回転は、入力軸7を回転させて発電機6を駆動し、発電する。発電機6が発電した電力は、コンバータ5を介してバッテリ3に供給され、充電する。
このように、車両用非接触充電装置4は、外部充電器10の回転磁界15で車両1に搭載した発電機6の入力軸7を回転させるので、共鳴コイルを用いて電力を伝える変調方式の非接触充電装置よりも損失が少なく、効率的に発電できる。また、変調回路が不要であり、車載する充電装置を省略できる結果、車両上の乗員スペースを確保できる。
また、外部充電器10は、車両側面に沿う回転面の回転磁界15を生成する多極コイル14を備えることで、導体8と回転磁界15との強力な磁気回路を形成して、大きな回転力を発電機6に伝えることができる。
【実施例2】
【0012】
図2は、実施例2を示すものである。図2において、1はプラグイン形式の電気自動車やハイブリッド車などの車両、2は走行用モータ、3はバッテリである。車両1は、バッテリ3の電力で走行用モータ2を駆動し、走行する。車両1に搭載したバッテリ3を充電する車両用非接触充電装置4は、バッテリ3にコンバータ5を介して発電機6を接続している。発電機6は、車体のフロア又はフレームに取り付けられている。バッテリ3は、発電機6の発電する電力をコンバータ5を介して供給され、充電される。発電機6は、この発電機6を駆動するとともに車両1の外部から回転駆動できる入力軸7を備えている。入力軸7には、導体8を接続している。導体8は、回転面が車体パネル9の車両側面に沿うように配置する。
前記車両用非接触充電装置4は、外部充電器20を備えている。外部充電器20は、商用電源を変換して所定の交流電流を発生するインバータ21と、発生した交流電流により駆動される回転用モータ22と、回転用モータ22により回転される回転板23と、回転板23の回転方向に磁極(N,S)が交互に並ぶように構成した複数個(偶数個)の磁石24とを備えている。磁石24は、車両側面に沿う回転面の回転磁界25を生成する。回転磁界25は、この回転磁界25内の導体8に渦電流(Eddy current)を流して回転させる。
【0013】
車両用非接触充電装置4は、バッテリ3を充電する際に、発電機6の入力軸7に設けた導体8を覆う車体パネル9に、外部充電器20の磁石24を近づけて車両1を停止させる。外部充電器20は、インバータ21で発生した交流電流を回転用モータ22に供給して回転板23により複数個の磁石24を回転させる。回転板23の回転方向に磁極が交互に並ぶように配置した磁石24は、車体パネル9の車両側面に沿う回転面の回転磁界25を生成し、この回転磁界25内の導体8に渦電流を流して回転させる。導体8の回転は、入力軸7を回転させて発電機6を駆動し、発電する。発電機6が発電した電力は、コンバータ5を介してバッテリ3に供給され、充電する。
このように、車両用非接触充電装置4は、外部充電器20の回転磁界25で車両1に搭載した発電機6の入力軸7を回転させるので、共鳴コイルを用いて電力を伝える変調方式の非接触充電装置よりも損失が少なく、効率的に発電できる。また、変調回路が不要であり、車載する充電装置を省略できる結果、車両上の乗員スペースを確保できる。
また、外部充電器20は、車両側面に沿う回転面の回転磁界25を生成する磁石24とこの磁石24を回転させる回転用モータ22とを備えることで、導体8と回転磁界25との強力な磁気回路を形成して、大きな回転力を発電機6に伝えることができる。
【0014】
なお、前記導体8は、外部充電器10側の磁気発生源である多極コイル14、あるいは外部充電器20側の磁気発生源である磁石24と、単純な磁気回路を形成する構造であるので、両極(N、S)に両端が対応する単純な棒形状のものが望ましい。棒形状の導体8の長手方向の長さは、回転する導体8として車載する際に許容できる長さであって、なるべく長い方が大きなトルクを与えられ、発電力を高めることができる。
回転する導体8は、露出させないために、樹脂製などの非磁性体であり、背面側に鉛直かつ平坦な偏平空間を形成できる形状の車体パネルで覆うことが望ましい。
導体8および入力軸6は、回転磁界15、25との空間距離を短縮して、車体パネル9の外表面に近づけることにより、回転磁界15、25との強力な磁気回路を形成して、大きな回転力を発電機6に伝える事ができ、効率的である。
また、前記導体8および入力軸7は、実際の車両1に搭載する場合、外力を受ける可能性を考慮して、破損を軽減する構造を加えておくことが望ましい。
例えば、入力軸7は、破損を軽減する構造として、発電機6側で片持ち支持する構造とし、導体8および発電機6に対して着脱可能な中空管形状とする。この入力軸7は、その中間部分に狭窄部を形成して相対的に脆弱にし、狭窄部の変形によって外力のエネルギを吸収する構造とする。また、この入力軸7は、中間部分にて分割し、互いにキー溝やスプラインにより雌雄嵌合させ、径方向にピンを貫通させて回転を伝達可能で摺動不能とし、外力によってピンを破断させて中間部分を相対摺動させ、エネルギを吸収する構造としても良い。
さらに、発電機6の入力軸7にワンウェイクラッチを設けることで、車両1に搭載される発動機(エンジン等)の動力により発電機6を駆動して発電させたり、また、多極コイル14に交流電流を供給して回転磁界15を生成し、あるいは磁石24を回転させて回転磁界25を生成することで発電をさせたりすることができる。ワンウェイクラッチなどの作動連結と切断(相互自由に回転)を切換えられるクラッチを設ける場合は、発電機6と入力軸7の間に設ける。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、効率的に発電でき、また、車両上の乗員スペースを確保できるものであり、車両に搭載したバッテリの充電だけでなく、他の交通機関に搭載したバッテリや据え置き型のバッテリの充電にも応用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 車両
2 走行用モータ
3 バッテリ
4 車両用非接触充電装置
5 コンバータ
6 発電機
7 入力軸
8 導体
9 車体パネル
10 外部充電器
11 交流発生器
12 増幅器
13 コイル
14 多極コイル
15 回転磁界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載したバッテリと、前記バッテリを充電する発電機と、前記発電機を駆動するとともに車両の外部から回転駆動できる入力軸と、前記入力軸に接続した導体と、前記導体に渦電流を流すように回転磁界を生成する外部充電器とを備えることを特徴とする車両用非接触充電装置。
【請求項2】
前記外部充電器は、車両側面に沿う回転面の回転磁界を生成する多極コイルを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用非接触充電装置。
【請求項3】
前記外部充電器は、車両側面に沿う回転面の回転磁界を生成する磁石とこの磁石を回転させる回転用モータとを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用非接触充電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−110835(P2013−110835A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253452(P2011−253452)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】