説明

車両用香料揮発装置

【課題】揮発性香料の車室内への排出口を開閉する開閉手段を調整可能とすることで、香料の無駄な消費を抑制してコスト低減を図る。
【解決手段】エアコン4から車室内1に空調風5を供給する送風路3の外側に配置された香料発生部11と、その一端13aが香料発生部と連通し、その他端13bが送風路と連通するように開口された排出口13cを有する排出通路13と、排気通路の排出口13cを開閉する開閉手段20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載した香料の揮発させる香料揮発装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者を活性化させたり、リラックスさせるために香料部材を配置し、この香料部材から揮発する香料を車室内に導入するものが知られている。例えば特許文献1では、空調風が流れる送風路内に、温度上昇に伴い可撓性が上昇するドアを有する容器本体を設置し、容器本体内に香料部材を収納し、風量が大きくなる場合や環境温度が高くなるとドアの撓み量を大きくして容器本体の出口部の開度を狭める構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−70354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、香料部材を収納した容器本体を送風路内に設置し、環境温度や送風路を流れる風量で、容器本体から送風路へ流れる香料の出口部の開度を可撓性のドアの撓み量で調整しているが、低温時や風量の少ない時は、出口部を閉塞することができないため、香料部材が揮発した場合、車室内に漏れてしまい、香料部材の減り方が想定よりも早まる傾向となり、ユーザーのコスト負担が大きくなる。また、夏場などの車室内温度が上昇すると、香料の揮発量が多くなるので、車室内での香りが強くなり過ぎてしまうので、より細かな揮発量の制御が要望されている。
本発明は、揮発性香料の車室内への排出口を開閉する開閉手段を調整可能とすることで、香料の無駄な消費を抑制してコスト低減を図れる車両用香料揮発装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明にかかる車両用香料揮発装置は、エアコンから車室内に空調風を供給する送風路の外側に配置された香料発生部と、その一端が香料発生部と連通し、その他端が送風路と連通するように開口された排出口を有する排出通路と、排気通路の排出口を開閉する開閉手段を有することを特徴としている。
本発明に係る車両用香料揮発装置において、開閉手段は、送風路内に回動自在に配置され、同送風路を開閉するシャッター部材と連動して排出口を開閉する蓋部材と、一端側がシャッター部材と連結され、他端側が車室内に臨んでいて、他端側を操作することで排出口を開口する開位置と排出口を閉塞する閉位置とにシャッター部材を回動させるリンク部材を有することを特徴としている。
本発明に係る車両用香料揮発装置において、開閉手段は、送風路内に回動自在に配置され、同送風路を開閉するシャッター部材と連動して開口を開閉する蓋部材と、一端側がシャッター部材と連結されたリンク部材と、リンク部材の他端側と連結され、排出口を開口する開位置と排出口を閉塞する閉位置とに蓋部材を回動させる回転駆動手段を有することを特徴としている。
本発明に係る車両用香料揮発装置において、エアコンをオン/オフするエアコンスイッチがオンされると、蓋部材が開位置へと移動し、エアコンスイッチがオフされると、蓋部材が閉位置で停止するように、回転駆動手段の作動を制御する制御手段を有することを特徴としている。
本発明に係る車両用香料揮発装置において、蓋部材は、排出口が開口されている送風路の内面に対して平行に移動に移動する扇形の板部材であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エアコンから車室内に空調風を供給する空調風を放出する送風路の外側に配置された香料発生部と一端が連通し、他端が送風路と連通するように開口された排出通路の排出口を開閉手段で開閉するので、シャッターを閉めた状態において香料の無駄な消費を抑制してコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る車両用香料揮発装置が設置された車室内を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態における開閉手段の構成と排出口の開閉状態を示す底面図である。
【図4】シャッター部材と蓋部材の連結部分の一構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態における開閉手段の構成と排出口の開閉状態を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1、2において、車室内1に装備されているインストルメンタルパネル2には、エアコン4から車室内1に空調風5を供給するための送風路3の開口部3aが形成されている。送風路3の内部には、エアコン4で温度調整された空調風5が流れ、開口部3aから車室内1に吹き出されることで供給される。開口部3aの手前に位置する送風路3内には、ルーバー8が配置されていて、空調風5の方向を変更可能とされている。送風路3は、運転席側1Aと助手席側1Bにそれぞれ形成されている。
【0009】
ルーバー8よりも送風路3の内側には、送風路3を開閉するシャッター部材9が配置されている。本形態において、シャッター部材9は、図3に示すように、複数(3つ)のシャッター部材9で送風路3を開閉するように構成されている。各シャッター部材9は、その軸部9aが送風路3の互いに対向する内面3b、3c(図2参照)に回動自在に支持されている。
【0010】
図2に示すように、インストルメンタルパネル2内には、車両用香料揮発装置10が配備されている。車両用香料揮発装置10は、本形態では運転席1A側の送風路3の外側となる送風路3の下方に配置された香りを発する香料発生部11と、送風路3と香料発生部11を連通する導入通路12と、香料発生部11と送風路3を連通する排出通路13と、排出通路13の排出口13cを開閉する開閉手段20を備えている。
【0011】
本形態では、香料発生部11を送風路3の下方に配置したが、インストルメンタルパネル2内の構成によっては、送風路3の外側となる送風路3の横方に配置してもよい。また、車両用香料揮発制御装置10は運転席1A側の送風路3の外側ではなく、助手席1B側の送風路3の外側に配置する形態であっても良い。
【0012】
香料発生部11は、揮発性の香料部材15が容器16内に収納されている。香料部材15は、液体やジェル状のものであっても、液体をスポンジなどの吸収体に含浸させたものであってもよい。
【0013】
導入通路12の一端12aは、ルーバー8よりも空調風上流側において送風路3内に開口している。導入通路12の他端12bは容器16と連通している。
【0014】
排出通路13は、その一端13aが香料発生部11の容器16と連通し、その他端13bが送風路3と連通するように開口された排出口13cを備えている。排出口13cは、ルーバー8よりも空調風下流側の開口部3a近傍において送風路3内に開口されていて、容器16内で香料部材15から揮発した香料を送風路3内に供給する機能を備えている。
【0015】
開閉手段10は、送風路3を開閉するシャッター部材9と連動して排出口13cを開閉する蓋部材21と、一端側22aがシャッター部材9と連結され、他端側22bが車室内1に臨んでいるリンク部材22とを備えている。リンク部材22は、ピン24で揺動自在とされていて、その一端側22aには、図3に示すように、3つのシャッター部材9の軸部9aとピン結合された連結アーム23の一端がピン結合されている。リンク部材22と連結アーム23は、図2に示すリンク部材22の他端側22bをスライド操作すると、その操作方向に応じて図3(a)に示す排出口13cを閉塞する閉位置と、図3(b)に示す排出口13cを開口する開位置とにシャッター部材21を回動させるように構成されている。
【0016】
蓋部材21は、図4に示すように、扇形の板部材210と、扇形の板部材210を1つのシャッター部材9の軸部9aに装着する筒状のボス部211とを備えている。ボス部211には、軸部9aをボス部211内に挿通したときに、シャッター部材9のシャッター端部9bと係合して軸部9aとシャッター部材9とを一体的に回動可能とする窪み部212が形成され、シャッター端部9bと窪み部212が係合することで位置決めが行われる。本形態においては、シャッター部材9のシャッター端部9bと蓋部材21の窪み部212を係合する構造であるため、既存のシャッター部材を加工することなく用いることができるため、コストの低減につながる。
【0017】
蓋部材21は、ボス部211を軸部9aに装着してシャッター部材9と一体化されたときに、排出口13cが開口されている送風路3の内面3bに対して平行に移動するように構成されている。送風路3の内面3bと対向する扇形の板部材210の面210aには、密閉性確保と滑り易いようにする部材であるフェルト部材213などを付設している。フェルト部材213は、蓋部材21が回動する際に、送風路3の内面3bとの摩擦を軽減して、蓋部材21やシャッター部材9の動きをスムーズにするとともに、蓋部材21が閉位置を占めたときに、排出口13cとの密着性を高める機能を備えている。なお、板部材210は香料の排出口13cの開閉できるのであれば、扇形以外の形状であってもよいのは言うまでもない。
【0018】
このような構成において、エアコン4が作動すると、図2に示すように、空調風5が送風路3内を開口部3aに向かって流れる。シャッター部材9が図3(b)に示す開位置を占めていると、開口部3aから車室内1に空調風5が吹き出される。このとき、蓋部材21は、排出口13cを開放する開位置を占めるので、導入通路12から容器16内に空調風5が導入され、香料部材15に当たり、香料部材15から香料が揮発する。無論空調風5が当たらない場合でも揮発温度を超えた時点で香料部材15から香料が揮発する。揮発した香料は排出通路13の排出口13cを通って送風路3へと排出され、図2に示すように、送風路3内を流れる空調風5と混合されて開口部3aから車室内1へと放出されて、車室内1で拡散される。図2の符号cは香料を示す。
【0019】
一方、エアコン4が作動していても、リンク部材22の他端側22bを、シャッター部材9を閉じる方向にスライド操作すると、シャッター部材9が図3(b)の開状態から図3(a)に示す閉状態となる。このとき、蓋部材21もシャッター部材9と連動して回動して排出口13cを閉塞するので、導入通路12から容器16へ流れる空調風5を阻止することができる。このため、香料部材15から香料が揮発するのを抑制することができる。また、既に揮発して容器16内に漂っている香料が送風路3内へ供給されるのを防止できる。このため、香料の排出口13cの開閉を開閉手段20によって任意に行えるので、香料の車室内1への揮発量を調整することができ、香料の無駄な消費を抑制してコスト低減を図ることができる。
【0020】
また、排出口13cの開閉する蓋部材21の形状を扇形としているので、蓋部材21とシャッター部材9との組付け誤差や、排出口13cの開口場所に誤差が発生している場合でも、蓋部材21はその回動中心に対して外形が広くなるので組付け誤差や製造誤差を許容することができ、組付け時の作業性を向上する。
【0021】
上記第1の実施形態以外でも、リンク部材22の一端側22aを連結アーム23の中間部などの送風路3内に設け、リンク部材22の他端側22bをルーバー8上に設け、ルーバー8上でシャッター部材9の開閉を操作できるようにした構造のものであってもよい。またルーバー8自体がシャッター部材9と一体化し、兼用となっている構造のものであってもよい。
(第2の実施形態)
図5、図6を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態との違いは、開閉手段30の構成が開閉手段20と異なっている点である。このため、第1の実施形態と同一に機能をする部材には、第1の実施形態の説明で用いた符号と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0022】
図5に示す。車両用香料揮発装置10Aは、香料発生部11と、送風路3と香料発生部11を連通する導入通路12と、香料発生部11と送風路3を連通する排出通路13の排出口13cを開閉する開閉手段30を備えている。
【0023】
開閉手段30は、図5,図6に示すように、送風路3に回動自在に配置され、同送風路を開閉するシャッター部材9と連動して排出口13cを開閉する蓋部材21と、一端側がシャッター部材の軸部9aと連結されたリンク部材33と、リンク部材33の他端側と連結され、図6(b)に示すように、排出口13cを開口する開位置と、図6(a)に示すように、排出口13bを閉塞する閉位置とに蓋部材21を回動させる回転駆動手段となる駆動モータ35を備えている。
【0024】
図5に示すように、車両用香料揮発装置10Aは、エアコン4をオン/オフするエアコンスイッチ36がオンされると、蓋部材21が開位置へと移動し、エアコンスイッチ36がオフされると、蓋部材21が閉位置で停止するように、駆動モータ35の作動を制御する制御手段40を備えている。
【0025】
このような構成によると、エアコンスイッチ36がオンされると、図5に示すように、空調風5が送風路3内を開口部3aに向かって流れるとともに、駆動モータ35が作動し、リンク部材33が図6に符号aで示す開方向へ移動する。この移動により、蓋部材21は、図6(a)に示す閉位置から図6(b)が開位置へと移動して、開口部3aから車室内1に空調風5が吹き出される。このとき、蓋部材21は、排出口13cを開放する開位置を占めるので、導入通路12から容器16内に空調風5が導入されて香料部材15に当たり、香料部材15から香料が揮発する。無論空調風5が当たらない場合でも揮発温度を超えた時点で香料部材15から香料が揮発する。揮発した香料は排出通路13の排出口13cを通って送風路3へと排出され、図5に示すように、送風路3内を流れる空調風5と混合されて開口部3aから車室内1へと放出されて、車室内1で拡散される。図5の符号cは香料を示す。
【0026】
一方、エアコンスイッチ36がオフされると、エアコン4の作動が停止するとともに、駆動モータ35が作動し、リンク部材33が図6(b)に符号bで示す閉方向へ移動する。この移動により、蓋部材21は、図6(b)に示す開位置から図6(a)に示す閉位置へと移動して、開口部3aから車室内1に吹き出される空調風5がなくなるとともに、蓋部材21により排出口13cを閉塞する閉位置を占めるので、導入通路12から容器16へ流れる空調風5を阻止することができる。このため、香料部材15から香料が揮発するのを抑制することができるとともに、既に揮発して容器16内に漂っている香料が送風路3内へ供給されるのを防止できる。
【0027】
このように、車両用香料揮発装置10Aでは、エアコン4の動作と連動して、香料の排出口13cの開閉を開閉手段30によって行えるので、香料の車室内1への揮発量を調整することができ、香料の無駄な消費を抑制してコスト低減を図ることができる。
【0028】
上記各形態において、蓋部材21は、そのボス部211を軸部9aに装着してシャッター部材9と一体化されたときに、排出口13cが開口されている送風路3の内面3bに対して平行に移動するように構成したので、シャッター部材9が開状態で、開口部3aから車室内1に空調風5が吹き出される場合でも、空調風5を遮る面が少なく、空調風5の流動抵抗が少なくなり、風切音の発生を抑制することができ、車室内1の静粛性に寄与することができる。
【0029】
各形態の蓋部材21は、3つのシャッター部材9のうちの中央に配置されたシャッター部材9の軸部9aに装着して、同軸部と一体的に回動可能としたが、これは、香料を排出する排気通路13の排出口13cにもっとも近く位置するためであるが、中央のシャッター部材9ではなく、左右何れかのシャッター部材9の軸部9aに装着して、同軸部と一体的に回動可能としてもよい。
【0030】
上記各形態において、シャッター部材9は、複数のシャッター部材9としたが、1つのシャッター部材9で送風路3を開閉するものであってもよい。シャッター部材9は、その中央に配置した軸部9aで送風路3に回動自在に支持する形態としたが、この軸部9aは、シャッター部材9の中央ではなく、片側に配置したものであっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 車室内
3 送風路
3b 送風路の内面
4 エアコン
5 空調風
9 シャッター部材
10,10A 車両用香料揮発装置
11 香料発生部
12 導入通路
13 排出通路
13a 排出通路の一端
13b 排出通路の他端
13c 排気口
20,30 開閉手段
21 蓋部材
22,33 リンク部材
22a 一端側
22b 他端側
35 回転駆動手段
40 制御手段
41 エアコンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンから車室内に空調風を供給する送風路の外側に配置された香料発生部と、
その一端が前記香料発生部と連通し、その他端が前記送風路と連通するように開口された排出口を有する排出通路と、
前記排気通路の排出口を開閉する開閉手段を有することを特徴とする車両用香料揮発装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用香料揮発装置において、
前記開閉手段は、前記送風路内に回動自在に配置され、同送風路を開閉するシャッター部材と連動して前記排出口を開閉する蓋部材と、
一端側が前記シャッター部材と連結され、他端側が前記車室内に臨んでいて、前記他端側を操作することで、前記排出口を開口する開位置と前記排出口を閉塞する閉位置とに前記シャッター部材を回動させるリンク部材を有することを特徴とする車両用香料揮発装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用香料揮発装置において、
前記開閉手段は、前記送風路内に回動自在に配置され、同送風路を開閉するシャッター部材と連動して前記開口を開閉する蓋部材と、
一端側が前記シャッター部材と連結されたリンク部材と、
前記リンク部材の他端側と連結され、前記排出口を開口する開位置と前記排出口を閉塞する閉位置とに前記蓋部材を回動させる回転駆動手段を有することを特徴とする車両用香料揮発装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用香料揮発装置において、
前記エアコンをオン/オフするエアコンスイッチがオンされると、前記蓋部材が前記開位置へと移動し、前記エアコンスイッチがオフされると、前記蓋部材が前記閉位置で停止するように、前記回転駆動手段の作動を制御する制御手段を有することを特徴とする車両用香料揮発装置。
【請求項5】
請求項2ないし4の何れか1つに記載の車両用香料揮発装置において、
前記蓋部材は、前記排出口が開口されている送風路の内面に対して平行に移動に移動する扇形の板部材であることを特徴とする車両用香料揮発装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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