説明

車両管理システム

【課題】複数の電動車両における蓄電池の寿命のバラツキを抑制できる車両管理システムを提供する。
【解決手段】複数の電動車両1を管理する車両管理システムであって、複数の電動車両1の劣化状態を検出し、検出された電動車両1のEV蓄電池11の劣化状態が小さいほど、電動車両1を利用する順序を先となるよう決定する。状態検出手段により検出された劣化状態が大きい電動車両の及び劣化状態が小さい電動車両の充電レベルを所定範囲又は所定値以上に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電動車両の利用を管理する車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車共同利用システムが記載されている。この電気自動車共同利用システムは、複数の電動車両を共同して利用するものである。この電気自動車共同利用システムは、管理サーバによって充電ポストに接続された電動車両の状態及び位置を認識している。電気自動車共同利用システムは、ユーザの携帯電話から予約を受け付け、予約受付結果をユーザに通知する。これによってユーザは、充電ポストに接続された電動車両を予約して、予約に従って当該電動車両を利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−369315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した電気自動車共同利用システムにおいて、充電ポストに接続された電動車両は常に充電され、ほぼ満充電状態で電動車両を待機させている。また、この電気自動車共同利用システムは、電動車両から電力を放電することは意図していない。したがって、この電気自動車共同利用システムでは、長時間に亘って電動車両の蓄電池を満充電状態に維持することによる蓄電池の寿命劣化が問題となる。
【0005】
また、この電気自動車共同利用システムは、それぞれの電動車両で使用頻度にバラツキがあると蓄電池の寿命に関する問題が発生する。使用頻度が低い電動車両の場合には、蓄電池が満充電の状態で放置される時間が他の電動車両よりも長くなり、蓄電池の寿命劣化が進んでしまう。一方、特定の電動車両が高い頻度で使用された場合にも、各電動車両に搭載された蓄電池の寿命に偏りが生ずる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、複数の電動車両における蓄電池の寿命のバラツキを抑制できる車両管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る車両管理システムは、複数の電動車両を管理する車両管理システムであって、前記複数の電動車両の蓄電池の劣化状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段により検出された前記電動車両の蓄電池の劣化状態が小さいほど、前記電動車両を利用する順序を先となるよう決定する利用順序決定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様に係る車両管理システムは、上記第1の態様の車両管理システムに対し、前記状態検出手段により検出された劣化状態又は前記利用順序決定手段により決定された利用順序に応じてそれぞれの電動車両の蓄電池の充電レベルを決定する充電レベル決定手段を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様に係る車両管理システムは、上記第2の態様の車両管理システムに対し、前記充電レベル決定手段は、前記状態検出手段により検出された劣化状態が大きい電動車両の充電レベル、又は、前記利用順序決定手段により決定された利用順序が遅い電動車両の充電レベルを、所定範囲に決定することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様に係る車両管理システムは、上記第2又は第3の態様の車両管理システムに対し、前記充電レベル決定手段は、前記状態検出手段により検出された劣化状態が小さい電動車両の充電レベル、又は、前記利用順序決定手段により決定された利用順序が早い電動車両の充電レベルを、所定値以上に決定することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の態様に係る車両管理システムは、上記第3又は第4の態様の車両管理システムに対し、負荷機器を含み、蓄電池の充電レベルを所定範囲に維持するために放電される電力を、前記負荷機器に供給することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の態様に係る車両管理システムは、上記第3又は第4の態様の車両管理システムに対し、発電装置を含み、前記蓄電池の充電レベルを所定範囲又は所定値以上に維持するための前記蓄電池への充電電力を、前記発電装置から供給することを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の態様に係る車両管理システムは、上記第3又は第4の態様の車両管理システムに対し、所定位置に固定された定置型蓄電池を含み、前記蓄電池の充電レベルを所定範囲又は所定値以上に維持するための電力を、前記定置型蓄電池によって充放電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電動車両の劣化が小さいほど電動車両を利用する順序を先にするので、複数の電動車両における蓄電池の寿命劣化のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態として示す車両管理システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態として示す車両管理システムにおいて電動車両の利用順序を決定する処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態として示す車両管理システムにおける全体の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態として示す車両管理システムにおいて、電動車両の充電レベルが目標値となるように充放電を行うときの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態として示す車両管理システムの全体における他の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態として示す車両管理システムにおいて、電動車両の充電レベルが目標値となるように充放電を行うときの他の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態として示す車両管理システムの他の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態として示す車両管理システムにおいて、電動車両の充電レベルが目標値となるように充放電を行うときの他の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態として示す車両管理システムの他の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態として示す車両管理システムの他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の実施形態として示す車両管理システムは、例えば図1に示すように構成される。この車両管理システムは、番号(1)〜任意の番号(n)が付された複数の電動車両(EV)1、及び、充放電システム2を含む。充放電システム2は、電力系統3と接続されている。この車両管理システムは、電動車両1が電力ケーブルを介して充放電システム2と電気的に接続されている。
【0018】
この車両管理システムは、例えば複数の電動車両1を不特定数のユーザが共同して利用するためのものである。例えば電動車両1は、共同利用するために複数台用意されて駐車場設備に駐車される。駐車場設備に駐車された状態において、各電動車両1は、充放電システム2に接続される。これにより、各電動車両1は、充電状態が充放電システム2によって制御される。そして、車両管理システムは、電動車両1の利用を希望するユーザに対して利用許可等の処理を行う。このとき、車両管理システムは、優先的に利用させたい電動車両1を表示・通知することもできる。
【0019】
以下、この車両管理システムの具体的な構成について説明する。
【0020】
車両管理システムは、充放電システム2が電力系統3から電力(以下、系統電力と呼ぶ。)が供給される。充放電システム2は、供給された系統電力を複数の電動車両1に供給する。
【0021】
電動車両1は、EV蓄電池11、蓄電池情報記憶部12、及び、通信部13を含む。
【0022】
EV蓄電池11は、電動車両1に搭載された蓄電池である。EV蓄電池11は、電動車両1が走行するために、電力を蓄積する。この電力は、充放電システム2から供給されてEV蓄電池11に蓄電され、電動車両1の走行に応じて消費される。また、この電力は、電動車両1が充放電システム2以外の電気スタンド等でも充電可能である。
【0023】
蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11の蓄電池情報として、当該EV蓄電池11の劣化に関連する情報を記憶する。蓄電池情報記憶部12は、現在の充電レベル(例えば、SOC:State Of Charge)を記憶している。このために、蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11に対する充電及び放電に応じて、充電レベルを更新する。
【0024】
また、蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11の蓄電池情報として充電レベルの変化を示す充放電履歴情報を記憶していてもよい。このために、蓄電池情報記憶部12は、所定時刻ごとの充電レベルを記憶しておく。また、蓄電池情報記憶部12は、充放電履歴情報として、EV蓄電池11の放電深度の履歴、充放電量の履歴、充放電レートの履歴を含んでいてもよい。放電深度は、満充電状態からの放電度合いを示す値である。充放電レートは、単位時間当たりの充放電量である。
【0025】
更に、蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11の蓄電池情報として、EV蓄電池11の内部抵抗を記憶していてもよい。この場合、電動車両1は、EV蓄電池11の内部抵抗測定装置を備える必要がある。
【0026】
更にまた、蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11の劣化を示す指標として、電動車両1の積算走行距離を記憶していてもよい。
【0027】
通信部13は、充放電システム2の通信部24との間で通信信号の授受を行う。通信部13は、充放電システム2の通信部24に対して蓄電池情報記憶部12に記憶している充電レベルを送信する。通信部13及び通信部24は、電動車両1と充放電システム2とを接続する電力ケーブルに内蔵された通信ケーブルを介して通信を行ってもよく、無線通信によって通信を行ってもよい。
【0028】
充放電システム2は、分電盤21、番号(1)〜任意の番号(n)が付された複数の充放電コンバータ22、制御部23、及び、通信部24を含む。
【0029】
充放電コンバータ22は、電力ケーブルを介して電動車両1と電気的に接続される。番号(1)〜番号(n)の充放電コンバータ22は、それぞれ、番号(1)〜番号(n)の電動車両1に対応している。
【0030】
充放電コンバータ22は、対応する電動車両1と接続された場合に、制御部24の制御に従って、当該電動車両1との間で電力を授受する。充放電コンバータ22は、DC−DC変換回路と、AC−DC変換回路とを含む。充放電コンバータ22は、充放電システム2に適した電圧と電動車両1のEV蓄電池11に適した電圧との間でAC/DC変換を行う。例えば、充放電システム2に適した電圧は100Vの交流電圧である。例えば、電動車両1におけるEV蓄電池11の充放電に適した電圧は300V〜400Vの直流電圧である。
【0031】
分電盤21は、電力系統3及び充放電コンバータ22と接続されている。分電盤21は、分岐回路やリレー、ブレーカ等を備える。分電盤21は、電動車両1のEV蓄電池11に対して充電を行う場合に、充放電コンバータ22に電力を供給する。
【0032】
なお、分電盤21には、太陽電池や燃料電池が接続されていてもよい。分電盤21は、太陽電池や燃料電池によって電力が生成された場合に、充放電コンバータ22に分岐することができる。
【0033】
制御部23は、充放電システム2と電動車両1との間で授受される電力を管理する。制御部23には、通信部24が接続されている。制御部23は、各電動車両1におけるEV蓄電池11の充電レベルに応じたEV蓄電池11の劣化状態に基づいて、複数の電動車両1における利用順序を決定する。
【0034】
この車両管理システムにおける制御部23は、図2に示す処理を行う。先ず、制御部23は、ステップS1において、全ての電動車両1のEV蓄電池11の劣化状態を検出(確認)する(状態検出手段)。
【0035】
このステップS1におけるEV蓄電池11の劣化状態の検出方式は、例えば下記の(A)〜(C)の何れかが挙げられるが、この他の任意の方式であってもよい。
【0036】
(A)制御部23は、電動車両1の積算走行距離に基づいてEV蓄電池11の劣化状態を判断してもよい。制御部23は、電動車両1の積算走行距離が長いほどEV蓄電池11が劣化していると判断する。
【0037】
(B)制御部23は、EV蓄電池11の内部抵抗に基づいてEV蓄電池11の劣化状態を判断してもよい。制御部23は、EV蓄電池11の内部抵抗が高いほど、EV蓄電池11が劣化していると判断する。例えば、鉛蓄電池の内部抵抗が初期値の150%、200%に達した時に、公称容量の80%以下、70%以下になることを利用して、内部抵抗を測定した値からEV蓄電池11の劣化状態が判断できる。
【0038】
(C)制御部23は、EV蓄電池11の充放電履歴に基づいてEV蓄電池11の劣化状態を判断してもよい。制御部23は、放電深度の履歴、充放電量の履歴、充放電レートの履歴に基づいてEV蓄電池11の劣化状態を判断できる。制御部23は、放電深度が極端に高い履歴がある場合にはEV蓄電池11が劣化していると判断できる。制御部23は、積算した充放電量が高い履歴がある場合にはEV蓄電池11が劣化していると判断できる。制御部23は、充放電レートが高い履歴がある場合にはEV蓄電池11が劣化していると判断できる。
【0039】
次のステップS2において、制御部23は、ステップS1にて確認されたEV蓄電池11の劣化状態に基づいて電動車両1を利用する順序を決定する。このとき、制御部23は、EV蓄電池11の劣化状態が小さいほど、電動車両1を利用する順序が先となるよう決定する(利用順序決定手段)。
【0040】
以上のように、この車両管理システムによれば、電動車両1の劣化が小さいほど電動車両1を利用する順序を先にするので、複数の電動車両1におけるEV蓄電池11の寿命劣化のバラツキを抑制することができる。
【0041】
また、この車両管理システムは、検出されたEV蓄電池11の劣化状態又は決定された利用順序に応じてそれぞれの電動車両1のEV蓄電池11の充電レベルを決定することが望ましい(充電レベル決定手段)。この車両管理システムにおける制御部23は、決定された利用する順序が遅い場合には、EV蓄電池11の充電レベルを低くする。EV蓄電池11の充電レベルが低い状態でEV蓄電池11を放置すると、充電レベルが高い状態でEV蓄電池11を放置した場合と比較して、経過時間に応じた劣化度合いを抑制できる。
【0042】
このために、制御部23は、電動車両1の蓄電池情報記憶部12から、通信部13及び通信部24を介してEV蓄電池11の充電レベルを取得する。制御部23は、複数の電動車両1のうち、利用する順序が遅い場合には、EV蓄電池11の充電レベルを低くする。具体的には、充放電コンバータ22から新たに充電する動作を禁止する。
【0043】
これにより、車両管理システムによれば、各電動車両1の利用順序を決定した後に、利用順序が遅い電動車両1については充電レベルを低くできるので、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。
【0044】
このように充電レベルを決定する車両管理システムは、例えば図3及び図4に示すように動作する。
【0045】
図3に示すように、制御部23は、上述と同様にステップS1,ステップS2によって電動車両1の利用順序を決定する。
【0046】
その後、制御部23は、ステップS11において、利用順序が遅いM台の充電レベルの目標値を所定範囲に決定する。すなわち、車両管理システムは、劣化状態が大きい電動車両1の充電レベルを所定範囲に決定する。また、制御部23は、利用順序が遅くなくても、EV蓄電池11の劣化状態が大きい電動車両1の充電レベルを所定範囲に決定してもよい。例えば、複数の電動車両1のほぼ全台に亘って劣化状態が大きい場合には、利用順序が遅くなくとも、充電レベルを所定範囲にすることが望ましい。
【0047】
この充電レベルの目標値の所定範囲は、EV蓄電池11が放置されることによって当該EV蓄電池11の劣化の進行が比較的緩やかな充電レベルの上限値と下限値によって規定されている。この充電レベルの目標値の所定範囲は、予めEV蓄電池11を利用した実験値等によって設定されている。
【0048】
ステップS12において、充放電システム2は、充電レベルが目標値となるようにEV蓄電池11に対する充放電を実施する。このとき、制御部23は、ステップS11において充電レベルを、予め設定された充電レベルの目標値の所定範囲とすることが決定された電動車両1に対して充放電を実施する。これにより、充電レベルが制御される電動車両1に対応した充放電コンバータ22は、対応する電動車両1のEV蓄電池11に対して充放電を行う。
【0049】
このステップS12の動作は、図4に示すようになる。
【0050】
先ずステップS21において、制御部23は、利用順序の遅いM台の電動車両1に対して必要な充放電電力量合計値Emを算出する。このとき、先ず制御部23は、ステップS2において決定された電動車両1の利用順序を参照し、利用順序が遅いM台の電動車両1を抽出する。次に制御部23は、抽出したM台の電動車両1の蓄電池情報記憶部12から、現在の充電レベルを取得する。次に制御部23は、各電動車両1の充電レベルと、充電レベルの目標値の所定範囲とを比較して、各電動車両1について必要な充電電力量又は放電電力量を算出する。次に制御部23は、必要な充電電力量を正値、必要な放電電力量を負値として合計することで、利用順序の遅いM台の電動車両1に対して必要な充放電電力量合計値Emを算出する。
【0051】
次のステップS22において、制御部23は、ステップS21にて算出された利用順序の遅いM台の電動車両1に対して必要な充放電電力量合計値Emを参照して、EV蓄電池11の放電が必要か否かを判定する。制御部23は、必要な充放電電力合計値Emが負値である場合にはEV蓄電池11の放電が必要であると判定してステップS23に処理を進める。一方、制御部23は、必要な充放電電力合計値Emが正値である場合にはEV蓄電池11の放電が必要ではないと判定してステップS24に処理を進める。
【0052】
ステップS24において、充放電システム2は、ステップS21にて算出された必要な充電電力量合計値のEmだけ、利用順序の遅いM台の電動車両1に対して充電を実施する。このとき、充放電システム2は、現在の充電レベルが所定範囲よりも高い電動車両1に対しては所定範囲に達するように放電を行わせる。放電を行った電動車両1に対応する充放電コンバータ22は、当該放電電力を、充電が必要な電動車両1に対応した充放電コンバータ22に供給する。充電が必要な電動車両1に対応した充放電コンバータ22は、他の充放電コンバータ22から供給された放電電力を、自己に対応した電動車両1に充電させる。これにより、現在の充電レベルが所定範囲よりも低い電動車両1は、対応する充放電コンバータ22からの電力をEV蓄電池11に充電して、充電レベルを所定範囲にすることができる。
【0053】
ステップS23において、制御部23は、利用順序の遅いM台以外の電動車両1のEV蓄電池11の充電可能電力量合計値Eoを算出する。 先ず制御部23は、ステップS2において決定された電動車両1の利用順序を参照し、利用順序が遅いM台以外の電動車両1を抽出する。次に制御部23は、抽出したM台以外の電動車両1の蓄電池情報記憶部12から、現在の充電レベルを取得する。次に制御部23は、現在の充電レベルを参照して利用順序が遅いM台以外の電動車両1の充電可能電力を確認し、充電可能電力の合計値Eoを算出する。
【0054】
次のステップS25において、制御部23は、ステップS23にて算出した充電可能電力の合計値Eoと、ステップS21にて算出した充放電電力量合計値Emとを比較する。
【0055】
充放電電力合計値Emが充電可能電力の合計値Eoよりも高い場合には、ステップS26に処理を進める。ステップS26においては、利用順序の遅いM台の電動車両1は、放電電力量Eoで放電を実施する。一方、利用順序の遅いM台以外の電動車両1は、充電電力量Eoで充電を実施する。
【0056】
これにより、車両管理システムは、利用順序の遅いM台の電動車両1の充電レベルを所定範囲にするために必要な放電電力量が他の電動車両1で充電できない場合には、可能な限りの電力量を放電させる。これにより、車両管理システムは、可能な限り、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。
【0057】
充放電電力合計値Emが充電可能電力の合計値Eoよりも低い場合には、ステップS27に処理を進める。ステップS27においては、利用順序の遅いM台の電動車両1は、充放電電力合計値Emで放電を実施する。一方、利用順序の遅いM台以外の電動車両1は、充電電力量をEmにして充電を実施する。
【0058】
これにより、車両管理システムは、利用順序の遅いM台の電動車両1の充電レベルを所定範囲にするために必要な放電電力量の全部を他の電動車両1に充電できる。これにより、車両管理システムは、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。
【0059】
以上のように、この車両管理システムによれば、EV蓄電池11の劣化状態又は電動車両1の利用順序に応じてそれぞれの電動車両1のEV蓄電池11の充電レベルを決定する。これにより、利用順序が遅く長時間の放置が予想される電動車両1のEV蓄電池11の劣化を少なくするために、EV蓄電池11の充電レベルを所定範囲にでき、長期放置による電動車両の蓄電池の寿命劣化が低減できる。
【0060】
つぎに、上述した車両管理システムによる他の動作について説明する。
【0061】
この車両管理システムは、図5に示すように、ステップS11にて利用順序の遅いM台の電動車両1についての充電レベルの目標値を所定範囲にすることを決定した後に、ステップS31に処理を進める。ステップS31において、利用順序が早いN台の電動車両1の充電レベルの目標値を、所定値以上に決定する。また、制御部23は、利用順序が早くなくても、EV蓄電池11の劣化状態が小さい電動車両1の充電レベルを所定範囲に決定してもよい。例えば、複数の電動車両1のほぼ全台に亘って劣化状態が小さい場合には、利用順序が早くなくとも、充電レベルを所定値以上に決定してもよい。
【0062】
その後のステップS12において、充放電システム2は、充電レベルが目標値となるようにEV蓄電池11に対する充放電を実施する。
【0063】
このステップS12の動作は、図6に示すようになる。
【0064】
先ずステップS41において、制御部23は、利用順序の早いN台の電動車両1に対して必要な充電電力量合計値Enを算出する。このとき、先ず制御部23は、電動車両1の利用順序を参照し、利用順序が早いN台の電動車両1を抽出する。次に制御部23は、抽出したN台の電動車両1の蓄電池情報記憶部12から、現在の充電レベルを取得する。次に制御部23は、各電動車両1の充電レベルと、ステップS31で決定した充電レベルの所定値とを比較して、各電動車両1について必要な充電電力量を算出する。次に制御部23は、必要な充電電力量を合計することで、利用順序の早いN台の電動車両1に対して必要な充電電力量合計値Enを算出する。
【0065】
次のステップS21において、制御部23は、利用順序の遅いM台の電動車両1に対して必要な充放電電力量合計値Emを算出する。
【0066】
次のステップS22において、制御部23は、ステップS21にて算出された利用順序の遅いM台の電動車両1に対して必要な充放電電力量合計値Emを参照して、EV蓄電池11の放電が必要か否かを判定する。EV蓄電池11の放電が必要である場合にはステップS42に処理を進める。一方、EV蓄電池11の放電が必要でない場合にはステップS24に処理を進める。
【0067】
ステップS42において、制御部23は、ステップS41にて算出した充電電力量合計値Enと、ステップS21にて算出した充放電電力量合計値Emとを比較する。
【0068】
充放電電力合計値Emの方が充電電力量合計値Enよりも低い場合には、ステップS44に処理を進める。ステップS44において、車両管理システムは、利用順序の遅いM台の電動車両1の、放電電力量をEmにして放電を実施すると同時に、利用順序の早いN台の電動車両1の、充電電力量をEnにして充電を実施する。利用順序の遅いM台の電動車両1からの放電電力Emを利用順序の早いN台の電動車両1へ供給し、充電電力量Enに対する不足分は電力系統3から供給する。これにより、車両管理システムは、利用順序の遅いM台の電動車両1の充電レベルを所定範囲に遷移でき、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。また、N台の電動車両1に対する充電によって、当該N台の電動車両1の充電レベルを所定値にまで高くすることができる。
【0069】
充放電電力合計値Emが充電電力量合計値Enよりも高い場合には、ステップS43に処理を進める。ステップS43において、制御部23は、利用順序の遅いM台の電動車両1と利用順序の早いN台の電動車両1以外の電動車両1のEV蓄電池11の充電可能電力の合計値Eoを算出する。このとき、先ず制御部23は、電動車両1の利用順序を参照し、M台、N台以外の電動車両1を抽出する。次に制御部23は、抽出した電動車両1の蓄電池情報記憶部12から、現在の充電レベルを取得する。次に制御部23は、現在の充電レベルを参照してM台、N台以外の電動車両1の充電可能電力を確認し、充電可能電力の合計値Eoを算出する。
【0070】
次のステップS45において、制御部23は、ステップS21にて算出した充放電電力合計値Emと、ステップS41にて算出した充電電力量合計値EnとステップS43にて算出した充電可能電力の合計値Eoとの合算値とを比較する。
【0071】
必要な充放電電力合計値Emが、充電電力量合計値Enと充電可能電力の合計値Eoとの合算値よりも高い場合には、ステップS46に処理を進める。
【0072】
ステップS46において、充電電力量合計値Enと充電可能電力の合計値Eoとの和を放電電力量として、M台の電動車両1によって放電する。これにより車両管理システムは、可能な限り、利用順序の遅いM台の電動車両1の充電レベルを所定範囲に遷移でき、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。一方で、車両管理システムは、M台の電動車両1の放電電力により、M台以外の電動車両の充電を行う。充電可能電力の合計値Eoの電力を、M台の電動車両1及びN台の電動車両1以外の電動車両1に充電するとともに、充電電力を充電電力量合計値Enにして、N台の電動車両1に充電を実施する。これにより、車両管理システムは、N台の電動車両1に対する充電によって、当該N台の電動車両1の充電レベルを所定値にまで高くすることができる。
【0073】
必要な充放電電力合計値Emが、充電電力量合計値Enと充電可能電力の合計値Eoとの合算値よりも低い場合には、ステップS47に処理を進める。ステップS47において、充放電電力量合計値Emを放電電力量としてM台の電動車両1から放電を実施する。これにより、利用順序の遅いM台の電動車両1の充電レベルを所定範囲に遷移でき、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。一方で、車両管理システムは、M台の電動車両1の放電電力により、M台以外の電動車量の充電を行う。必要な充放電電力量合計値Emから充電電力量合計値Enを差し引いた電力を、M台の電動車両1及びN台の電動車両1以外の電動車両1に充電するとともに、充電電力を充電電力量合計値Enにして、N台の電動車両1に充電を実施する。これにより、車両管理システムは、N台の電動車両1に対する充電によって、当該N台の電動車両1の充電レベルを所定値にまで高くすることができる。
【0074】
EV蓄電池11の放電が必要でない場合は、ステップS24において利用順序の遅いM台の電動車両の充電を実施した後に、ステップS48において、充電電力を充電電力量合計値Enにして利用順序の早いN台の電動車両1に充電を実施する。
【0075】
以上のように、この車両管理システムによれば、劣化状態が小さい電動車両1の充電レベル、又は、利用順序が早い電動車両1の充電レベルを、所定値以上に決定するので、予期しない急な走行に対応できる。また、この車両管理システムによれば、上述したように、劣化が大きい電動車両1や利用順序の遅い電動車両1の充電レベルを所定範囲にすると同時に、劣化が小さい電動車両1や利用順序の早い電動車両1の充電レベルを所定値以上にできる。
【0076】
更に、この車両管理システムは、図7に示すように、負荷機器31を含み、EV蓄電池11の充電レベルを所定範囲に維持するために放電して、負荷機器31に供給することが望ましい。
【0077】
このような車両管理システムは、図8に示すように、上述したステップS21において充放電電力量合計値Emを算出し、ステップS22にて利用順序の遅いM台の電動車両1に放電が必要と判断された場合に、ステップS51に処理を進める。
【0078】
ステップS51において、制御部23は、負荷機器31の消費電力(負荷消費電力Pc)を算出する。
【0079】
次のステップS52において、充放電システム2は、ステップS51にて算出された負荷消費電力PcをEV蓄電池11の放電電力として、利用順序の遅いM台の電動車両1から放電させる。これにより、充放電システム2は、電動車両1の放電電力を負荷機器31に供給できる。
【0080】
このような車両管理システムによれば、EV蓄電池11の充電レベルを所定範囲に遷移するために充放電コンバータ22へ放電することにより、他の電動車両1が満充電であって充電できなくても、逆潮流させることなく充電レベルを遷移できる。これにより、この車両管理システムによれば、長期放置によるEV蓄電池11の寿命劣化が低減できる。
【0081】
更に、この車両管理システムは、図9に示すように、発電装置41を含み、EV蓄電池11の充電レベルを所定範囲に維持するための電力を、発電装置41からEV蓄電池11に充電することが望ましい。これにより、車両管理システムは、利用順序の遅いM台の電動車両1の充電レベルを所定範囲にするため、又は、利用順序の早いN台の電動車両1の充電レベルを所定値以上にするために、発電電力を充電することで、コスト低減できる。
【0082】
更に、この車両管理システムは、図10に示すように、所定位置に固定された定置型蓄電池51を含んでいてもよい。充放電システム2は、電動車両1のEV蓄電池11の充電レベルを所定範囲に維持するための電力を、定置型蓄電池51によって充放電することができる。これにより、車両管理システムは、他の電動車両1のEV蓄電池11が満充電や負荷機器31が少ない場合でも、逆潮流することなく充電レベルを低コストで遷移できる。
【0083】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
1 電動車両
11 EV蓄電池
23 制御部(状態検出手段、利用順序決定手段、充電レベル決定手段)
31 負荷機器
41 発電装置
51 定置型蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動車両を管理する車両管理システムであって、
前記複数の電動車両の蓄電池の劣化状態を検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段により検出された前記電動車両の蓄電池の劣化状態が小さいほど、前記電動車両を利用する順序を先となるよう決定する利用順序決定手段と
を備えることを特徴とする車両管理システム。
【請求項2】
前記状態検出手段により検出された劣化状態又は前記利用順序決定手段により決定された利用順序に応じてそれぞれの電動車両の蓄電池の充電レベルを決定する充電レベル決定手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の車両管理システム。
【請求項3】
前記充電レベル決定手段は、前記状態検出手段により検出された劣化状態が大きい電動車両の充電レベル、又は、前記利用順序決定手段により決定された利用順序が遅い電動車両の充電レベルを、所定範囲に決定することを特徴とする請求項2に記載の車両管理システム。
【請求項4】
前記充電レベル決定手段は、前記状態検出手段により検出された劣化状態が小さい電動車両の充電レベル、又は、前記利用順序決定手段により決定された利用順序が早い電動車両の充電レベルを、所定値以上に決定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両管理システム。
【請求項5】
負荷機器を含み、
前記蓄電池の充電レベルを所定範囲に維持するために放電される電力を、前記負荷機器に供給することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両管理システム。
【請求項6】
発電装置を含み、
前記蓄電池の充電レベルを所定範囲又は所定値以上に維持するための前記蓄電池への充電電力を、前記発電装置から供給することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両管理システム。
【請求項7】
所定位置に固定された定置型蓄電池を含み、
前記蓄電池の充電レベルを所定範囲又は所定値以上に維持するための電力を、前記定置型蓄電池によって充放電することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−109609(P2013−109609A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254670(P2011−254670)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】