説明

車両衝突判定装置

【課題】車両に生じる音響帯域の高周波振動に基づいて衝突判定を行うに当って、衝突判定精度の安定化を実現可能な車両衝突判定装置を提供する。
【解決手段】車両衝突判定装置は、車両に生じる音響帯域の高周波振動を検出する振動検出手段と、前記高周波振動のエネルギ変化量を算出するエネルギ変化量算出手段と、前記エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両衝突時に乗員を保護するためのシステムとして、SRS(Supplemental Restraint System)エアバッグシステムが知られている。このSRSエアバッグシステムとは、車両の各部に設置された加速度センサから取得した加速度データを基に、車両衝突の発生を検知してエアバッグ等の乗員保護装置を起動するものである。
【0003】
従来では、車両前部に設置された複数のフロントクラッシュセンサと、車両中央部に設置されたSRSユニット(SRSエアバッグシステムを統括制御するECU)内のユニットセンサとから得られる加速度データに基づいて、前面衝突(正面衝突、オフセット衝突、斜突を含む)が発生したか否かの判定を行い、その衝突判定結果に応じて乗員保護装置の起動制御を行う技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、近年では、音響センサを用いて衝突時の車体変形に起因して発生する衝撃音を検出し、その検出結果を基に衝突判定を行うCISS(Crash Impact Sound Sensing)技術の開発が進んでいる。音響センサと加速度センサとの違いは、検出対象振動の周波数帯域が異なるだけであり、どちらも振動センサに属するものである。一般的には、周波数帯域0Hz〜400Hzの低周波振動を加速度データとして扱い、周波数帯域5kHz〜20kHz(音響帯域)の高周波振動を音響データとして扱う。
【0005】
下記特許文献2には、バルク音波センサを用いて車両衝突時に車体要素(サイドメンバー)に発生するトランスバーサル方向のバルク音波の振れを検出し、その検出結果を基に衝突判定を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−287203号公報
【特許文献2】特表2001−519268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されているように、加速度センサを用いて前面衝突判定を行うためには、フロントクラッシュセンサとユニットセンサが必要である。これは、ユニットセンサだけでは、判別が困難な衝突モード(乗員保護装置の起動が必要な高速オフセット衝突と、乗員保護装置の起動が不要な低速オフセット衝突)が存在するからである。ユニットセンサは前面衝突時の車体変形が小さい車両中央部に設置されているため、衝突発生時点から両方の衝突モードを正確に判別できる程の大きな差がセンサ出力に現れるまで長い時間(約40ms以上)を要する。
【0008】
つまり、ユニットセンサだけを用いる場合、衝突発生時点から40ms後に衝突判定(具体的には閾値判定)が実施されるよう閾値設定を行う必要があり、必然的に乗員保護装置の起動タイミングが遅くなる。乗員保護の観点から、衝突発生時点から20〜30msの間に乗員保護装置を起動することが理想とされているため、ユニットセンサだけでは要求される乗員保護性能を満足できない。そこで、従来では、前面衝突時の車体変形が大きい車両前部にフロントクラッシュセンサを設けることで、迅速且つ正確な衝突判定を実現しているのである。
【0009】
フロントクラッシュセンサを使用するとシステムコストの上昇を招くため、SRSユニットに内蔵されたユニットセンサのみで衝突判定を行うことが理想であるが、上記のようにユニットセンサだけでは要求される乗員保護性能を満足できない。そこで、ユニットセンサとして加速度センサの代わりに音響センサを用いることで、フロントクラッシュセンサを不要とするシステムの構築が試みられている。
【0010】
音響センサから得られる音響データは、車体が変形(損壊)する特徴を捉えやすい傾向があり、車体変形が大きい高速オフセット衝突と車体変形が軽微な低速オフセット衝突との判別が容易で、迅速且つ正確な衝突判定の実現に有効である。ところが、従来では、音響データのエンベロープに基づいて衝突判定を行っていたため、エンベロープはノイズが乗りやすく且つ変動しやすいことから、衝突判定精度が安定しないという課題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両に生じる音響帯域の高周波振動に基づいて衝突判定を行うに当って、衝突判定精度の安定化を実現可能な車両衝突判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、車両衝突判定装置に係る第1の解決手段として、車両に生じる音響帯域の高周波振動を検出する振動検出手段と、前記高周波振動のエネルギ変化量を算出するエネルギ変化量算出手段と、前記エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第2の解決手段として、車両に生じる振動を検出する振動検出手段と、前記振動に含まれる音響帯域の高周波振動を抽出する抽出手段と、前記高周波振動のエネルギ変化量を算出するエネルギ変化量算出手段と、前記エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記エネルギ変化量算出手段は、前記高周波振動の絶対値を算出する絶対値算出手段と、前記高周波振動の絶対値を区間積分することで前記エネルギ変化量を算出する区間積分手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第4の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記エネルギ変化量算出手段は、前記高周波振動の絶対値を算出する絶対値算出手段と、前記絶対値のエンベロープを出力するエンベロープ出力手段と、前記エンベロープを区間積分することで前記エネルギ変化量を算出する区間積分手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、前記衝突判定手段は、前記エネルギ変化量と所定の閾値とを比較し、前記エネルギ変化量が前記閾値を越えた場合に、前記乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したと判定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明では、車両衝突判定装置に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれか1つの解決手段において、前記音響帯域の高周波振動は、周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、車両に生じる音響帯域の高周波振動に基づいて衝突判定を行うに当って、従来のような音響帯域の高周波振動のエンベロープではなく、ノイズに強く且つ変動の少ない安定したエネルギ変化量を算出し、そのエネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定するため、衝突判定精度の安定化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態におけるSRSエアバッグシステムの構成概略図(a)及びSRSユニット1(車両衝突判定装置)の要部ブロック構成図(b)である。
【図2】エネルギ変化量算出部13の詳細構成図(a)及び変形例(b)である。
【図3】エネルギ変化量ΔEの時間変化傾向と閾値ΔEthとの関係を示す図である。
【図4】SRSユニット1の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本実施形態におけるSRSエアバッグシステムの構成概略図である。この図に示すように、本実施形態におけるSRSエアバッグシステムは、車両100の中央部に設置されたSRSユニット1(車両衝突判定装置)と、車両100の運転席及び助手席に設置されたエアバッグ2(乗員保護装置)とから構成されている。
【0021】
SRSユニット1は、内蔵する音響センサ11の出力信号に基づいて、車両100に前面衝突が発生したか否かの判定(衝突判定)を行い、その衝突判定結果に応じてエアバッグ2の起動制御を行うECU(Electronic Control Unit)である。エアバッグ2は、SRSユニット1から入力される点火信号に応じて展開し、車両100の前面衝突により乗員が前方に2次衝突することで負う傷害を軽減する乗員保護装置である。なお、一般的に車両100には、エアバッグ2の他、シートベルトプリテンショナ等の他の乗員保護装置も設けられているが、図1(a)では図示を省略している。
【0022】
図1(b)は、SRSユニット1の要部ブロック構成図である。この図に示すように、SRSユニット1は、音響センサ11(振動検出手段)、バンドパスフィルタ12(抽出手段:以下、BPFと称す)、エネルギ変化量算出部13(エネルギ変化量算出手段)、及び衝突判定部14(衝突判定手段)を備えている。
【0023】
音響センサ11は、SRSユニット1に内蔵された振動センサであり、車両100の長さ方向(図中のX軸方向)に生じる、少なくとも5kHz〜20kHzを含む周波数帯域の振動を検出し、その検出結果を振動データSa(t)としてBPF12へ出力する。BPF12は、通過周波数帯域が5kHz〜20kHzに設定されたバンドパスフィルタであり、音響センサ11から入力される振動データSa(t)から周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分を音響帯域の高周波振動として抽出し、その抽出した振動成分を音響データS(t)としてエネルギ変化量算出部13へ出力する。このBPF12から得られる音響データS(t)は、前面衝突によって車両100が変形(損壊)する特徴をよく捉えたものである。
【0024】
エネルギ変化量算出部13は、BPF12から入力される音響データS(t)のエネルギ変化量ΔEを算出し、その算出したエネルギ変化量ΔEを衝突判定部14へ出力する。具体的には、図2(a)に示すように、エネルギ変化量算出部13は、絶対値算出部13a(絶対値算出手段)及び区間積分部13b(区間積分手段)を備えている。
【0025】
絶対値算出部13aは、BPF12から入力される音響データS(t)の絶対値|S(t)|を算出し、その算出した絶対値|S(t)|を区間積分部13bへ出力する。区間積分部13bは、絶対値算出部13aから入力される絶対値|S(t)|を区間積分することでエネルギ変化量ΔEを算出し、その算出したエネルギ変化量ΔEを衝突判定部14へ出力する。
【0026】
本来、音響データS(t)のエネルギ変化量ΔEは、S(t)の二乗を区間積分すること、つまり、下記(1)式で表されるように、一定時間区間内で{S(t)}を積算することで求めることができるが、本実施形態ではエネルギ変化量ΔEの算出処理に掛かる負荷を減らすために、下記(2)式で表されるように、音響データS(t)の絶対値|S(t)|を区間積分する(一定時間区間内で積算する)ことにより、近似的にエネルギ変化量ΔEを算出する。
ΔE = Σ{S(t)} ・・・(1)
ΔE ≒ Σ|S(t)| ・・・(2)
【0027】
図1(b)に戻り、衝突判定部14は、エネルギ変化量算出部13から入力されるエネルギ変化量ΔEに基づいて乗員保護装置の起動、つまりエアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したか否かを判定し、その衝突判定結果を出力する。具体的には、この衝突判定部14は、エネルギ変化量ΔEと所定の閾値ΔEthとを比較し、エネルギ変化量ΔEが閾値ΔEthを越えた場合に、エアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したと判定する。
【0028】
図3は、エネルギ変化量ΔEの時間変化傾向と閾値ΔEthとの関係を示す図である。この図3において、符号ΔE1は、エアバッグ2の展開を必要とする衝突(高速オフセット衝突等の車体変形(損壊)を伴う激しい衝突)が発生した時のエネルギ変化量を示し、符号ΔE2は、エアバッグ2の展開が不要な衝突(低速オフセット衝突等の車体変形が軽微な穏やかな衝突)が発生した時のエネルギ変化量を示している。
【0029】
この図3に示すように、衝突発生時点から短時間でエネルギ変化量ΔE1の時間変化傾向とエネルギ変化量ΔE2の時間変化傾向との間に明確な差異が発生することがわかる。つまり、閾値ΔEthをエネルギ変化量ΔE1とΔE2とを確実に切り分けできる値に設定しておくことにより、エネルギ変化量算出部13にて算出されたエネルギ変化量ΔEが閾値ΔEthを越えた時、エアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したと正確に判定することができる。
【0030】
以上説明したBPF12、エネルギ変化量算出部13及び衝突判定部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置が衝突判定プログラムを実行することで実現されるソフトウェア的な機能である。以下では、図4のフローチャートを参照しながら、CPUが衝突判定プログラムに従って実行する衝突判定処理について説明する。
【0031】
CPUは、SRSユニット1の電源がオンされている間、つまり車両100の走行中に、以下のステップS1〜S4からなる衝突判定処理を一定周期(例えば数百μs周期)で繰り返し実行する。
まず、CPUは、衝突判定処理が開始されると、制御変数nをインクリメントした後、音響センサ11からアナログデータとして入力される振動データSa(t)をサンプリング及びA/D変換することで、振動データSa(t)の現在値を示すデジタルデータSa(n)を取得する(ステップS1)。以下では、Sa(n)を振動データSa(t)の今回値と呼ぶ。
【0032】
なお、CPUは、上記のように取得した振動データSa(t)の今回値Sa(n)をRAM等の揮発性メモリに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に取得された振動データSa(t)={Sa(1)、…、Sa(n−2)、Sa(n−1)、Sa(n)}が記憶されることになる。なお、RAMの記憶容量をオーバーする場合には、古いデータから順に削除して、空いた記憶領域に新しいデータを記憶すれば良い。
【0033】
続いて、CPUは、RAMからデジタルバンドパスフィルタ処理に必要な振動データSa(t)を読み出し、通過周波数帯域が5kHz〜20kHzに設定されたデジタルバンドパスフィルタ処理用の演算式に代入することで、周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分である音響データS(t)の今回値S(n)を算出する(ステップS2)。ここで、例えば、デジタルバンドパスフィルタ処理に、振動データSa(t)の今回値、前回値、前々回値が必要な場合には、RAMからSa(n)、Sa(n−1)、Sa(n−2)を読み出せば良い。
【0034】
なお、CPUは、上記のように算出した音響データS(t)の今回値S(n)をRAMに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に算出された音響データS(t)={S(1)、…、S(n−2)、S(n−1)、S(n)}が記憶されることになる。このようなステップS2の処理によって、上述したBPF12の機能が実現される。
【0035】
続いて、CPUは、RAMからエネルギ変化量ΔEの算出に必要な音響データS(t)を読み出し、一次区間積分用の下記演算式(3)に代入することでエネルギ変化量ΔEの今回値ΔE(n)を算出する(ステップS3)。なお、下記(3)式において、Nは積分区間である。また、下記(3)式は、上記(2)式と等価である。
ΔE(n)=|S(n)|+|S(n−1)|+…+|S(n−N+1)|
…(3)
【0036】
なお、CPUは、上記のように算出したエネルギ変化量ΔEの今回値ΔE(n)をRAMに時系列的に記憶させる。つまり、RAMには、過去から現在まで衝突判定処理が実行される度に算出されたエネルギ変化量ΔE={ΔE(1)、…、ΔE(n−2)、ΔE(n−1)、ΔE(n)}が記憶されることになる。このようなステップS3の処理によって、上述したエネルギ変化量算出部13の機能が実現される。
【0037】
続いて、CPUは、RAMからエネルギ変化量ΔEの今回値ΔE(n)を読み出し、このエネルギ変化量ΔEの今回値ΔE(n)が閾値ΔEthを越えたか否かを判定する(ステップS4)。CPUは、上記ステップS4において「Yes」の場合、つまりエアバッグ2の展開を必要とする衝突(車体変形を伴う激しい衝突)が発生した場合、衝突判定結果を「1」にセットして衝突判定処理を終了する(ステップS5)。
一方、CPUは、上記ステップS4において「No」の場合、つまりエアバッグ2の展開が不要な場合、衝突判定結果を「0」に保持した状態で衝突判定処理を終了する。このようなステップS4、S5の処理によって、上述した衝突判定部14の機能が実現される。
【0038】
上記のような衝突判定処理が一定周期で繰り返し実行されることにより、衝突判定に有効なエネルギ変化量ΔEの今回値ΔE(n)が得られる毎に衝突判定(閾値ΔEthとの比較)が実施され、エアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したと判定された場合(衝突判定結果が「1」にセットされた場合)にエアバッグ2が展開されることになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によると、従来のような音響データS(t)のエンベロープではなく、ノイズに強く且つ変動の少ない安定したエネルギ変化量ΔEを算出し、そのエネルギ変化量ΔEに基づいてエアバッグ2の展開を必要とする衝突が発生したか否かを判定するため、衝突判定精度の安定化を実現できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態において、絶対値算出部13a及び区間積分部13bを備えるエネルギ変化量算出部13を例示したが、図2(b)に示すように、絶対値算出部13a及び区間積分部13bに加えてエンベロープ出力部13c(エンベロープ出力手段)を設けても良い。このエンベロープ出力部13cは、絶対値算出部13aから入力される音響データS(t)の絶対値|S(t)|のエンベロープ|Se(t)|を出力するものである。
【0041】
このようなエンベロープ出力部13cとしては、例えばカットオフ周波数が400Hzに設定されたローパスフィルタを用いることができる。この場合、区間積分部13bは、エンベロープ出力部13cから入力されるエンベロープ|Se(t)|を区間積分することでエネルギ変化量ΔEを算出する。
【0042】
(2)上記実施形態では、音響センサ11を用いて車両100の長さ方向に生じる、少なくとも5kHz〜20kHzを含む周波数帯域の振動(振動データSa(t))を検出し、BPF12を用いて振動データSa(t)から周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分を音響帯域の高周波振動(音響データS(t))として抽出する構成を例示した。これに対して、BPF12を削除し、周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分を音響帯域の高周波振動として直接検出可能な音響センサを用いる構成を採用しても良い。
【0043】
(3)上記実施形態では、音響帯域の高周波振動として周波数帯域5kHz〜20kHzの振動を検出する場合を例示したが、検出対象振動の周波数帯域はこれに限定されず、車両100の構造や要求される乗員保護性能に応じて適宜設定すれば良い。つまり、高周波振動の周波数帯域は、前面衝突によって車両100が変形(損壊)する特徴(構造音響)を捕捉可能であれば良い。
【符号の説明】
【0044】
1…SRSユニット(車両衝突判定装置)、11…音響センサ(振動検出手段)、12…BPF(抽出手段)、13…エネルギ変化量算出部(エネルギ変化量算出手段)、14…衝突判定部(衝突判定手段)、13a…絶対値算出部(絶対値算出手段)、13b…区間積分部(区間積分手段)、13c…エンベロープ出力部(エンベロープ出力手段)、2…エアバッグ、100…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に生じる音響帯域の高周波振動を検出する振動検出手段と、
前記高周波振動のエネルギ変化量を算出するエネルギ変化量算出手段と、
前記エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段と、
を備えることを特徴とする車両衝突判定装置。
【請求項2】
車両に生じる振動を検出する振動検出手段と、
前記振動に含まれる音響帯域の高周波振動を抽出する抽出手段と、
前記高周波振動のエネルギ変化量を算出するエネルギ変化量算出手段と、
前記エネルギ変化量に基づいて乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したか否かを判定する衝突判定手段と、
を備えることを特徴とする車両衝突判定装置。
【請求項3】
前記エネルギ変化量算出手段は、
前記高周波振動の絶対値を算出する絶対値算出手段と、
前記高周波振動の絶対値を区間積分することで前記エネルギ変化量を算出する区間積分手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両衝突判定装置。
【請求項4】
前記エネルギ変化量算出手段は、
前記高周波振動の絶対値を算出する絶対値算出手段と、
前記絶対値のエンベロープを出力するエンベロープ出力手段と、
前記エンベロープを区間積分することで前記エネルギ変化量を算出する区間積分手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両衝突判定装置。
【請求項5】
前記衝突判定手段は、前記エネルギ変化量と所定の閾値とを比較し、前記エネルギ変化量が前記閾値を越えた場合に、前記乗員保護装置の起動を必要とする衝突が発生したと判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両衝突判定装置。
【請求項6】
前記音響帯域の高周波振動は、周波数帯域5kHz〜20kHzの振動成分であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両衝突判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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