説明

車両衝突時の補機ガイド構造

【課題】車両の衝突事故の際に、補機を壊さず、かつ、乗客室に突入させずに退避させる。
【解決手段】エンジンルーム103内に配置されるインバータ201には、下方に延びる第1の補機固定用金具251が取り付けられる。エンジンルーム103内には、一枚の金属板から形成されるトレイ202が、車両101に対して固定的に配置される。トレイ202に形成される傾斜部203は、インバータ201に対して乗客室102側に並び、乗客室102側に向かって上昇するよう傾斜して延びている。衝突事故等によりインバータ201に対してバンパー104側からの所定以上の力が入力されると、インバータ201は離脱し、傾斜部203とこの両縁部から上方に突出するレール部213とで囲われる断面コ字形状の収納空間215に第1の補機固定用金具251が位置付けられ、インバータ201がレール部213に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突事故を起こした車両に搭載されている補機を乗客室に突入させないようにするための車両衝突時の補機ガイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
補機は、車両で衝突事故が発生しても乗客及び周囲に影響を及ぼさないように、車両に搭載されている必要がある。特に、ハイブリッド車に関しては、多くの補機が搭載されるため、その搭載方法が重要である。この点、特許文献1には、「ハイブリッド車のインバータは、…、フロントエンジンルームの車両左側に配置され、…、当該インバータ51の底面は車体側の車両前後方向に延在する図示しないサイドメンバにこれも図示しない平板状のインバータトレーを介して締結される構成が一般に採られてきた。…ところが、…このような構成においては、図6の二点鎖線に示すように、車両が前面衝突して、車体の骨格をなすラジエタコアサポート54が車両後方に変位した場合に、ラジエタコアサポート54が図6中二点鎖線に示すように後方に移動するため、インバータ51の前面にラジエタコアサポート54が干渉して、インバータ51のケースおよび内部機器が損傷するという問題点があった。」という記載がある。特に、ハイブリッド車に搭載されるインバータの電圧は、車載用の12Vバッテリに比べて高く、このために、インバータが破損すると漏電事故等の二次災害が発生するおそれがある。このような二次災害を防止するために、衝突事故が起きてもインバータが破損しないよう法制度等で規定する国も存在する。
【0003】
衝突事故が起きてもインバータ等の補機が壊れないようにする発明の一例として、特許文献1には、インバータの前面と車体の骨格をなすラジエタコアサポートとの間に、前面衝突時の車体入力を低減する緩衝部材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−117051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を用いたとしても、衝突時にボデー(車体)に対して緩衝部材が吸収できる以上の荷重が入力された場合、この荷重は車両に搭載された補機(例えば、インバータ)にまで及び、この補機を破損してしまう。また、補機に加わった荷重の大きさや向きによっては、補機が破損せずにボデーから外れることも考えられる。この場合であっても、ボデーから外れた補機は乗客室に飛び込み、乗客を負傷させてしまう。
【0006】
さらに、近年では、車両の小型化の要請から、エンジンルームが小さくなってきている。このために、衝突事故の際にバンパーやボンネットが衝突時の荷重を吸収しきれず、その荷重が補機に入力されやすくなっている。
【0007】
加えて、車両設計上、運転席の前方に補機が設置されることもある。このような車両で衝突事故が発生し、補機に衝突時の荷重が入力されてこの補機が破損せずにボデーから外れたとしても、その補機が乗客室側に飛び出してステアリングを押して運転者に大怪我を負わせてしまう。
【0008】
本発明の目的は、車両の衝突事故の際に、補機を壊さず、かつ、乗客室に突入させずに退避させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両衝突時の補機ガイド構造は、(a)一枚の金属板から形成され、車両端部と乗客室との間に位置するエンジンルーム内で前記車両に対して固定的に配置されるトレイであって、前記エンジンルーム内に配置される補機に対して前記乗客室側に並び前記乗客室側に向かうにつれて上昇するよう傾斜して延びる傾斜部と、前記傾斜部の両縁部から上方に突出し前記傾斜部とともに断面コ字形状の収納空間を形成するレール部と、を有するトレイと、(b)前記補機に取り付けられ下方に延びる突部と、(c)前記補機を前記車両に対して固定的に保持し、前記補機に対して前記車両端部側からの所定以上の力が入力された場合に前記突部を前記断面コ字形状の収納空間に内在させる方向に前記補機を離脱させる補機保持機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衝突事故が起きていない通常の状態では補機は車両に対して固定的に保持され、衝突事故が起きて補機に荷重を加えられた場合には補機は乗客室側に離脱し、突部が断面コ字形状の収納空間に入り込んで補機がレール部に沿って移動し斜め上方に移動する。したがって、車両の衝突事故の際に、補機を壊さず、かつ、乗客室に突入させずに退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両の内部構造を示す側面図である。
【図2】エンジンルーム内の構造を示す側面図である。
【図3】トレイに取り付けられた状態のインバータの側面図である。
【図4】トレイ及び補機保持機構を示す斜視図である。
【図5】(a)及び(b)のいずれも、補機固定用金具の斜視図である。
【図6】(a)及び(b)は、車両が障害物に正面衝突した場合のインバータの動きを説明するための側面図である。
【図7】エンジンルーム内の構造の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態を、図1ないし図7に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第一の実施の形態と呼ぶ。図1は、車両101の内部構造を示す側面図である。車両101は、乗客(図示せず)が収納される乗客室102を有する。車両101において乗客室102よりも前方には、エンジンルーム103が設けられている。エンジンルーム103よりも車両101の前方であって車両101の最前端となる箇所には、バンパー104が取り付けられている。また、車両101は、フロントサイドフレーム105を有する。フロントサイドフレーム105は、エンジンルーム103に対して車両101の幅方向に隣接して配置され、図1に示すように水平方向に延び、車両101の骨格をなしている。フロントサイドフレーム105の後端部は、乗客室102の骨格をなす乗客室フレーム106に連結している。一方、フロントサイドフレーム105の前端部は、リーンフォースメント107を介してバンパー104に連結している。リーンフォースメント107は、バンパー104に入力された衝撃力を吸収する。
【0013】
エンジンルーム103は、ボンネット108に覆われる。ボンネット108は、車両101の最前端から後方に向かうにつれて緩やかに上昇する斜面を形成する。このボンネット108の下面には、リーンフォースメント109が取り付けられている。
【0014】
エンジンルーム103と乗客室102とは、仕切壁部110によって仕切られている。この仕切壁部110には、ダッシュパネル、サイレンサ、カウル等の各種の部材が含まれる。仕切壁部110には、電子制御ブレーキシステムECB(Electric Control Braking system)が取り付けられている。仕切壁部110からは、乗客室102に向けて、ステアリングシャフト111が突出している。ステアリングシャフト111は、車両101の後方側が上になるよう傾斜していて、その先端にステアリングホイール112が取り付けられている。
【0015】
図2は、エンジンルーム103内の構造を示す側面図である。図1及び図2に基づいて説明する。エンジンルーム103内には、補機としてのインバータ201が配置される。インバータ201は、略直方体形状をなしている。インバータ201は、その上面がボンネット108と離間してこのボンネット108と略平行に対面するように、斜めに傾いている。これは、エンジンルーム103の空間を可能な限り効率的に利用するとともに、インバータ201をはじめとする補機をボンネット108から所定距離以上離れた箇所に配置しなければならないという設計上の要請によるものである。
【0016】
エンジンルーム103内には、トレイ202が配置される。トレイ202は、車両101に対して固定的に取り付けられている。トレイ202は、一枚の金属板からプレス加工によって形成されるものであって、傾斜部203と、板面部204とを形成している。傾斜部203は、インバータ201に対して乗客室102(図1参照)側に横並びしている。傾斜部203は、乗客室102側に向かうにつれて上昇するよう傾斜して延びている。板面部204は、傾斜部203におけるボンネット108(図1参照)側の縁から車両101の前方側に延びる平坦状の部材であり、インバータ201の下方に位置している。傾斜部203と板面部204とは鈍角をなし、これらの交差箇所に形成される角部は、下方に向いている。このため、トレイ202は、図2に示すように、側面視において「へ」という字を上下反転させたように見える。
【0017】
板面部204の下面には、溶接等によって取り付けられた固定取付用部材205が設けられている。固定取付用部材205は、側面視略三角形状をなしていて、ボルトナット(図示せず)によってフロントサイドフレーム105に固定取付される。その結果、トレイ202は、車両101に対して固定的に取り付けられることになる。また、板面部204は、車両101の前方から後方にかけて上るよう傾斜する。そして、傾斜部203は、板面部204よりもさらに急勾配で傾斜する。
【0018】
上記のようにエンジンルーム103内で配置されたトレイ202に対し、電子制御ブレーキシステムECBは、フロントサイドフレーム105よりも上方で傾斜部203よりも後方に位置する。また、フロントサイドフレーム105と固定取付用部材205との間に形成される側面視略三角形状の空間内には、エンジンマウント206が配置される。
【0019】
図3は、トレイ202に取り付けられた状態のインバータ201の側面図である。図4は、トレイ202及び第1の補機保持機構250を示す斜視図である。図5(a)は、第1の補機固定用金具251の斜視図である。図5(b)は、図5(a)とは別の方向から見た第1の補機固定用金具251の斜視図である。なお、説明のために、図4では、インバータ201を省略している。
【0020】
トレイ202の傾斜部203の両縁部では、折り曲げ加工されて形成されたレール部213が上方に突出する。また、傾斜部203の幅方向略中央には、レール部213に並行して延びるビード214が形成されている。このビード214も、折り曲げ加工によって形成される。レール部213及びビード214は、傾斜部203の剛性を高め、傾斜部203に加わる衝撃力で傾斜部203が折れ曲がることを防ぐ。傾斜部203とレール部213とは、第1の補機固定用金具251(後述)を内在できる大きさの断面コ字形状の収納空間215を形成する。
【0021】
傾斜部203と板面部204との屈曲部位には、第1の台部207が形成されている。また、板面部204のバンパー104側の端部には、第2の台部208及び第3の台部209が、トレイ202の幅方向に横並びで隔離して形成されている。
【0022】
ところで、インバータ201には、突部としての第1の補機固定用金具251、第2の補機固定用金具252及び第3の補機固定用金具253がボルトナット(図示せず)によって取り付けられていて、いずれも下方に突出している。第1の補機固定用金具251は、インバータ201における乗客室102側に取り付けられている。第2の補機固定用金具252及び第3の補機固定用金具253は、インバータ201におけるバンパー104側に取り付けられている。
【0023】
第1の補機固定用金具251は、平面視において乗客室102側が先細る三角形状をなしている。第1の補機固定用金具251は、バンパー104側に、第1の台部207の上面に接する平面部254を有する。平面部254には、バンパー104側に開口するU字形切欠255が設けられている。また、平面部254から乗客室102側には、平面部254から離れるにつれて上昇するように傾斜する接触部256が延びている。この接触部256は、トレイ202の傾斜部203と同じ角度で傾斜する。
【0024】
第1の補機固定用金具251の幅方向の略中央で平面部254から接触部256にかけた箇所は、台状に隆起して、インバータ201に取り付けられる補機側区域257となる。補機側区域257には、ボルトナット(図示せず)によってインバータ201に締結されるためのボルト孔257aが形成されている。さらに、平面部254から接触部256にかけてその両端領域には、それぞれ上に向かって折り曲げ加工によって壁部258が形成されている。
【0025】
図4に示すように、第1の台部207には、第1の補機固定用金具251のU字形切欠255に対応する箇所にボルト孔210が設けられている。このボルト孔210の下方からは、ボルト211が挿通され、図3に示すようにトレイ202から上方に突出する。このボルト211は、第1の台部207の上面に位置付けられた第1の補機固定用金具251のU字形切欠255に入り込む。ナット212は、このボルト211に対して螺合し平面部254を強固に挟み込む。このとき、ナット212は、衝突事故時にインバータ201に入力される荷重が加わらない限りボルト211がU字形切欠255の開口側から抜けないようにボルト211に螺合し、ボルト211とともに第1の補機固定用金具251を締め付け固定する。ここに、第1の補機固定用金具251に設けられた平面部254とボルト211とナット212とは、第1の補機保持機構250を構成する。そして、ボルト211とナット212とが第1の補機固定用金具251を締め付け固定すると、平面部254は第1の台部207に接し、接触部256は傾斜部203に接触する。
【0026】
第2の補機固定用金具252及び第3の補機固定用金具253は、基本的には第1の補機固定用金具251と同様の構造を有するが、接触部256を形成していない点で第1の補機固定用金具251と異なる。また、第2の補機固定用金具252及び第3の補機固定用金具253のいずれも、U字形切欠255を設けた平面部254を有している。ここで、第2の補機固定用金具252は、第2の台部208の上面に位置付けられる。また、第3の補機固定用金具253は、第3の台部209の上面に位置付けられる。そして、第2の補機固定用金具252及び第3の補機固定用金具253は、それぞれ、板面部204の下方から挿通されてU字形切欠255に入り込むボルト211とこれに螺合するナット212とによって挟まれ、板面部204におけるバンパー104側の領域に締め付け固定される。ここに、第2の補機固定用金具252や第3の補機固定用金具253に設けられた平面部254とボルト211とナット212とは、第2の補機保持機構250aを構成する。
【0027】
図6(a)及び図6(b)は、車両101が障害物Z(図1参照)に正面衝突した場合のインバータ201の動きを説明するための側面図である。本実施の形態では、トレイ202は、固定取付用部材205がフロントサイドフレーム105に支持されることで、エンジンルーム103内で車両101に対して固定的に配置される。そして、インバータ201に取り付けられる第1の補機固定用金具251は、第1の補機保持機構250によってトレイ202の第1の台部207に固定される。また、インバータ201に取り付けられる第2の補機固定用金具252は、第2の補機保持機構250aによってトレイ202の第2の台部208に固定される。また、インバータ201に取り付けられる第3の補機固定用金具253は、第2の補機保持機構250aによってトレイ202の第3の台部209に固定される。このようにして、衝突事故が発生していない通常の状態においては、車両101に対するインバータ201の位置が固定されている。
【0028】
車両101が障害物Z(図1参照)に正面衝突した場合を考える。この場合、まず、バンパー104(図1参照)が障害物Zに接触し、バンパー104は障害物Zから衝撃力を受ける。この衝撃力は、リーンフォースメント107(図1参照)によって弱められる。しかしながら、車両101が高速で障害物Zに衝突した場合、図6(a)に示すように、衝突による衝撃力Fはインバータ201における最もバンパー104側の箇所に入力される。インバータ201が衝撃力Fを受けて第1の補機保持機構250及び第2の補機保持機構250aに所定以上の大きさの乗客室102側に向く力が加わると、第1の補機固定用金具251、第2の補機固定用金具252及び第3の補機固定用金具253は乗客室102側に移動して第1の台部207、第2の台部208及び第3の台部209から離脱する。これにより、図6(b)に示すように、インバータ201は乗客室102側に動く。その結果、第1の補機固定用金具251は、収納空間215(図4参照)に入り込み、第1の補機固定用金具251の接触部256(図5(a)等参照)がトレイ202の傾斜部203に沿って滑る。このとき、レール部213の上面にインバータ201の底部が接触して、インバータ201がレール部213上を滑るようにしてもよい。ここで、第1の補機固定用金具251の両側部分には折り曲げ加工されて壁部258(図5(a)及び図5(b)参照)が形成されているため、第1の補機固定用金具251が滑るときに傾斜部203に突き刺さることはない。そして、第1の補機固定用金具251は、レール部213に挟まれて、車両101の幅方向の動きが制限される。その結果、インバータ201はレール部213に沿って斜め上方に移動することになり、インバータ201が仕切壁部110(図1参照)に衝突することがなくなる。
【0029】
このように、本実施の形態の車両101に採用される車両衝突時の補機ガイド構造によれば、衝突事故が起きていない通常の状態ではインバータ201(補機)は車両101に対して固定的に保持され、衝突事故が起きてインバータ201(補機)は荷重を加えられた場合にはインバータ201(補機)は乗客室102側に離脱する。このため、衝突事故が発生しても、インバータ201(補機)が壊れることはない。また、本実施の形態の車両101では、第1の補機固定用金具251が断面コ字形状の収納空間215に入り込み、インバータ201(補機)がレール部213に沿って移動し斜め上方に移動する。このため、車両101の衝突事故の際に、インバータ201(補機)を乗客室102に突入させずに退避させることができる。
【0030】
また、本実施の形態の車両101では、トレイ202が一枚の金属板から形成されて傾斜部203と板面部204とを有し、インバータ201(補機)はこのようなトレイ202に取り付けられている。このため、車両101が走行してフロントサイドフレーム105等を含むボデーが振動しても、第1の補機保持機構250と第2の補機保持機構250aとの間の距離が変化せず、第1の補機保持機構250や第2の補機保持機構250aが緩んでインバータ201(補機)が脱落するようなことがない。
【0031】
さらに、本実施の形態の車両101では、傾斜部203にビード214が形成されていてトレイ202の剛性が高められているため、衝突事故によってインバータ201(補機)がトレイ202に衝突してもトレイ202が変形しにくい。
【0032】
さらに、本実施の形態の車両101では、第1の補機固定用金具251に接触部256が形成されていて、インバータ201(補機)が離脱した後に接触部256が傾斜部203に接触したまま第1の補機固定用金具251が滑走するため、インバータ201(補機)をレール部213に沿う方向に確実に導くことができる。
【0033】
図7は、エンジンルーム103内の構造の変形例を示す側面図である。本変形例では、インバータ201は、その上面及び下面が水平になるようにエンジンルーム103(図1参照)内に配置されている。また、本変形例では、板面部204の下面に固定取付用部材205(図2参照)が設けられていない。このため、本変形例においてエンジンマウント206(図2参照)は、エンジンルーム103内で、図1及び図2に示す箇所とは異なる箇所に配置される。その結果、トレイ202の板面部204は水平に向き、傾斜部203が水平面に対して傾斜する。
【0034】
本変形例では、車両101が障害物Z(図1参照)に正面衝突した場合、衝突による衝撃力は、インバータ201の前面201aの全体に受ける。これにより、第1の補機固定用金具251から第1の台部207及び傾斜部203に加わる力Pのうち傾斜部203に直交する方向の分力Pvは、インバータ201を斜めに傾けて配置した場合(図2参照)に比べて小さくなる。このため、本変形例では、インバータ201がトレイ202に衝突してもトレイ202が一層変形しにくく、インバータ201(補機)がレール部213に沿って確実に導かれる。
【0035】
なお、上記の説明では、トレイ202に設置される補機としてインバータ201を採用した場合について述べたが、インバータ201以外にも、トレイ202にはバッテリ等の各種の補機を設置することができることはいうまでもない。
【0036】
また、上記の説明では、乗客室102とバンパー104との間に位置するエンジンルーム103に配置されたインバータ201に対する車両衝突時の補機ガイド構造について述べたが、乗客室102とリアバンパー(図示せず)との間に配置した補機に対して上記で説明した補機ガイド構造を適用し、車両101の後方から追突された場合に補機がエンジンルーム103に突入することを防止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
101 車両
102 乗客室
103 エンジンルーム
104 バンパー(車両端部)
201 インバータ(補機)
202 トレイ
203 傾斜部
204 板面部
211 ボルト
212 ナット
213 レール部
214 ビード
215 収納空間
250 補機保持機構(第1の補機保持機構)
250a 補機保持機構(第2の補機保持機構)
251 第1の補機固定用金具(突部)
254 平面部
255 U字形切欠
256 接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の金属板から形成され、車両端部と乗客室との間に位置するエンジンルーム内で前記車両に対して固定的に配置されるトレイであって、前記エンジンルーム内に配置される補機に対して前記乗客室側に並び前記乗客室側に向かうにつれて上昇するよう傾斜して延びる傾斜部と、前記傾斜部の両縁部から上方に突出し前記傾斜部とともに断面コ字形状の収納空間を形成するレール部と、を有するトレイと、
前記補機に取り付けられ下方に延びる突部と、
前記補機を前記車両に対して固定的に保持し、前記補機に対して前記車両端部側からの所定以上の力が入力された場合に前記突部を前記断面コ字形状の収納空間に内在させる方向に前記補機を離脱させる補機保持機構と、
を備える車両衝突時の補機ガイド構造。
【請求項2】
前記トレイは、前記傾斜部における前記車両端部側の縁から前記車両端部側に延びて前記補機の下方に位置する板面部を有し、
前記補機保持機構は、
前記突部を前記斜面部に保持させる第1の補機保持機構と、
前記補機を前記板面部における前記車両端部側の領域に保持させる第2の補機保持機構と、
を含む、
請求項1記載の車両衝突時の補機ガイド構造。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記レールに並行して延びるビードを有する、
請求項1又は2に記載の車両衝突時の補機ガイド構造。
【請求項4】
前記補機保持機構は、
前記突部に含まれ、前記車両端部側に開口するU字形切欠を形成する平面部と、
前記トレイから上方に突出し前記U字形切欠に入り込むボルトと、
前記ボルトに螺合して前記平面部を挟み込むナットと、
を含む、
請求項1から3のいずれか一に記載の車両衝突時の補機ガイド構造。
【請求項5】
前記突部は、前記補機が離脱した後に前記傾斜部に沿って滑走する接触部を有する、
請求項1から4のいずれか一に記載の車両衝突時の補機ガイド構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−126363(P2011−126363A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285066(P2009−285066)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】