説明

車両装着用作業機

【課題】バケットへのパレットフォークの着脱を容易にするとともに、その取付位置を変更可能とし、作業性を向上させた車両装着用作業機を提供する。
【解決手段】車体フレーム2に立設したヒッチ21に昇降自在に枢支したメインビーム23と、このメインビーム23の先端部に、取付部材28を介して装着したローダバケット16とからなり、このローダバケット16は、側面視略L字形状のパレットフォーク36を着脱自在に兼備するとともに、パレットフォーク36を取付けるための切欠部35を、上板31の正面側に複数形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームに立設したヒッチに昇降自在に枢支したメインビームと、このメインビームの先端部に、取付部材を介して装着したローダバケットとからなる車両装着用作業機に関し、より詳細には、側面視略L字形状のパレットフォークを着脱自在に兼備するとともに、パレットフォークを取付けるための切欠部を、ローダバケット上板の正面側に複数形成した車両装着用作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業車両には、作業機を別途着脱自在に装着させるものがあり、その作業機として例えば、車両前部の車体フレームに立設したヒッチに、フロントローダを着脱自在に取付けるとともに、このフロントローダの先端部に装着するアタッチメントとしてローダバケットを用い、フロントローダの操作により、このローダバケットで、圃場の掘り起こしや、樹木類の掘上げ、植付け、根切り作業のほか、土、砂、砂利などをすくい上げるなどの農作業や土木作業を行うものがある。さらには、バケットを装着したまま、堆肥切り返しや、稲藁、西瓜ツルの収集作業などを行うためのフォークとして、マニアフォークをバケットに兼備させたもの(例えば、特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−243712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような車両装着用作業機では、バケットにフォークを着脱させる際、バケット底面に、複数のフォークをボルトなどにより取付けあるいは取外しているため、これらフォークの着脱作業に時間を要するとともに、別途工具を必要とするため、作業効率が悪いという問題があった。また、上述したフォークは、直線形状のマニアフォークであり、藁草や木材のほか、梱包した箱などの積込み作業などを容易にする、通常2本1組の側面視略L字形状を有するパレットフォークでは、バケットへの取付作業がより複雑となるほか、このパレットフォークを必要とする作業の内容や作業対象物の大きさあるいは作業位置などに伴い、バケットへのパレットフォーク取付位置の変更により、作業が捗る場合であっても、パレットフォークの取付位置を変更できず、作業性が悪くなる問題もあった。
そこで、この発明の目的は、バケットへのパレットフォークの着脱を容易にするとともに、その取付位置を変更可能とし、作業性を向上させた車両装着用作業機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、車体フレームに立設したヒッチに昇降自在に枢支したメインビームと、前記メインビームの先端部に、取付部材を介して装着したローダバケットとからなる車両装着用作業機において、前記ローダバケットは、側面視略L字形状のパレットフォークを着脱自在に兼備するとともに、前記パレットフォークを取付けるための切欠部を、上板の正面側に複数形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両装着用作業機において、前記ローダバケットは、着脱可能とする固定具を側板に貫設し、前記パレットフォークを正面側から固定することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両装着用作業機において、前記パレットフォークの上部には、前記パレットフォークを前記切欠部に掛止させる掛止部を設けることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両装着用作業機において、前記パレットフォークの背面には、前記パレットフォークを前記ローダバケットの奥板に支持させる支持部を設けることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の車両装着用作業機において、前記パレットフォークは、該パレットフォークの背面であって、前記ローダバケットの底面との接触部分に、弾性部材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、車体フレームに立設したヒッチに昇降自在に枢支したメインビームと、メインビームの先端部に、取付部材を介して装着したローダバケットとからなる車両装着用作業機において、ローダバケットは、側面視略L字形状のパレットフォークを着脱自在に兼備するとともに、パレットフォークを取付けるための切欠部を、上板の正面側に複数形成したので、パレットフォークをローダバケットの正面側から容易に取付けることができるとともに、ローダバケットに有する複数の切欠部から必要に応じた切欠部を選択してパレットフォークを装着することで、パレットフォークを、作業の内容や作業対象物の大きさ、あるいは作業位置などに対応させたローダバケットへの取付位置に変更自在とすることができる。従って、作業性を向上させた車両装着用作業機を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ローダバケットは、着脱可能とする固定具を側板に貫設し、パレットフォークを正面側から固定するので、別途パレットフォークを支持固定させるための工具を必要とせず、固定具の簡単な取付けにより、パレットフォークを容易、かつ確実に支持固定することができる。従って、作業性を向上させた車両装着用作業機を提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、パレットフォークの上部には、パレットフォークを切欠部に掛止させる掛止部を設けるので、パレットフォークをローダバケットに取付ける際、パレットフォークの掛止部を切欠部に掛止させて、パレットフォークをローダバケットの正面開口部分に確実、かつ容易に支持固定させることができる。従って、作業性および安全性を向上させた車両装着用作業機を提供することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、パレットフォークの背面には、パレットフォークをローダバケットの奥板に支持させる支持部を設けるので、パレットフォークをローダバケットの正面開口部分に取付けた際、パレットフォークの支持部がローダバケットの奥板に当接するため、パレットフォークをローダバケットに確実、かつ容易に支持固定させることができる。従って、作業性および安全性を向上させた車両装着用作業機を提供することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、パレットフォークは、このパレットフォークの底面であって、ローダバケットの底板との接触部分に、弾性部材を設けるので、ローダバケットに装着したパレットフォークによる作業に伴う、パレットフォーク底面と、ローダバケット底板との摩擦による両者の損傷および不快な摩擦音の発生を弾性部材により防ぐことができる。従って、作業性を向上させた車両装着用作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前部に車両装着用作業機を取付けた作業車両の一例を示すホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】ローダバケットを前方から見た斜視図である。
【図3】パレットフォークを取付けたローダバケットを前方から見た斜視図である。
【図4】パレットフォークを取付けたローダバケットの左側面図である。
【図5】1本の固定具によりパレットフォークをローダバケットに固定した例を示す、ローダバケットを前方から見た斜視図である。
【図6】パレットフォークの取付位置の変更を示す、パレットフォークを取付けたローダバケットを前方から見た斜視図である。
【図7】摺動部材により設置位置を変更可能とする、パレットフォークを取付けたローダバケットを前方から見た斜視図である。
【図8】後部作業機を装着したトラクタの左側面図である。
【図9】油圧昇降装置に接続する後部作業機コントロールレバーを示す操縦部周辺の斜視図である。
【図10】後部作業機コントロールレバーの設置例を模式的に示した操縦部の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、前部に車両装着用作業機を取付けた作業車両の一例を示すホイール式トラクタの左側面図である。なお、図1に例示した作業車両としてのトラクタは、キャビン仕様のホイール式トラクタに限定されず、ロプス仕様や、クローラ式などであってもよく、さらには、トラクタに限定されず、作業車両としての除雪車や、建設作業車両など、車両装着用作業機を着脱できる車両であればよい。
【0017】
この例の作業車両であるトラクタ1は、図1に示すように、機体フレーム2の前後に前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6およびエンジン6の後方にクラッチハウジング7が配置され、さらにこのクラッチハウジング7の後方には、ミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。そして、ボンネット5の後部に連続して、機体フレーム2上には、キャビン9が設けられる。
【0018】
次に、キャビン9内には、車両の操縦部10として、それぞれ図示しないブレーキペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル、ステアリングハンドル、後に示すシートSなどが設けられる。
【0019】
さらに、シートSの両側方に有する、後述の左右フェンダfには、例えば、それぞれ図示しない主変速レバー、副変速レバー、PTO変速レバーなどの各種操作レバーが突設される。
【0020】
そして、エンジン6からの動力は、ミッションケース8から突出した不図示のPTO軸からや、後述の油圧ケース54などを介して、車両後部では、図示しないユニバーサルジョイントや三点リンク式などの作業機装着装置12を介して装着された後述するロータリー作業機などの後部作業機11を駆動させることができるほか、車両前部では、機体の前部に設置した左右一対のヒッチ21を介して車両前後に装着されたフロントローダなど前部の車両装着用作業機15が駆動される。
【0021】
上述したフロントローダなどの車両装着用作業機15は、トラクタ1前部における左右各機体フレーム2の前部側面から上方に向けて立設した左右一対のヒッチ21を介して着脱自在に装着されるとともに、この車両装着用作業機15の先端部には、車両装着用作業機15の一部で、アタッチメントとしての、圃場の掘り起こしなどを行うローダバケット16が、着脱自在に取付けられる。
【0022】
また、ヒッチ21は、機体フレーム3の中途部に設置した、左右一対のステー21aを介してそれぞれ上方に立ち上げ状に取付け、各ヒッチ21の上端部には、正面視略門型の連結フレーム21bが跨架される。
【0023】
さらに、車両装着用作業機15は、上述したヒッチ21と、各ヒッチ21に基端部を枢支した、中途部にメインビーム23を介在する左右一対のブーム24と、各ブーム24の先端間に、取付部材を介して着脱自在に取付けた、アタッチメントとしてのローダバケット25と、各ブーム24を昇降駆動させるための、各メインビーム23と各ヒッチ21との間に介設した左右一対のリフトシリンダ26と、ローダバケット25を回動させるための、アタッチメント25の左右側部と各リフトアーム24の中途部との間に介設した左右一対のアタッチメントシリンダ27などとから構成される。なお、図中の符号19はローダースタンド、符号28はアタッチメントリンク(取付部材)、符号29は連動リンク、符号30は連動ロッドである。
【0024】
従って、作業者が、前記操縦部などから、車両装着用作業機15の図示しない操作部材を操作し、リフトアーム24やリフトシリンダ26などを作動させることで、ローダバケット16を含む車両装着用作業機15を回動させ、圃場の掘り起こしなどの作業が行われる。
【0025】
次に、本願発明の特徴である、パレットフォークを兼備するローダバケットを備える車両装着用作業機について、その具体的構成を説明する。図2はローダバケットを前方から見た斜視図、図3はパレットフォークを取付けたローダバケットを前方から見た斜視図、図4はパレットフォークを取付けたローダバケットの左側面図、図5は1本の固定具によりパレットフォークをローダバケットに固定した例を示す、ローダバケットを前方から見た斜視図、図6はパレットフォークの取付位置の変更を示す、パレットフォークを取付けたローダバケットを前方から見た斜視図、図7は摺動部材により設置位置を変更可能とする、パレットフォークを取付けたローダバケットを前方から見た斜視図である。
【0026】
まず、ローダバケット16は、図2に示すように、上板31と、底板32と、左右側板33と、奥板34とから構成される、正面(作業面)を開口した金属製箱型のものである。そして、このローダバケット16における上板31の正面側には、ローダバケット16の車両左右方向に亘って、複数の切欠部35が形成される。
【0027】
これら各切欠部35の左右幅は、後述するパレットフォーク36を嵌合可能とした、パレットフォーク36の左右幅に略等しいものとする。また、ローダバケット16の中央近傍には、左右ステーsが取付けられるとともに、各ステーsには穴部h2が貫通形成される。
【0028】
さらに、左右各側板33における作業面側の適宜位置には、穴部h1が貫通形成される。そして、これら穴部h1,h2は、後述する固定具41(41a,41b)が嵌入可能な直径とされる。
【0029】
次に、パレットフォーク36は、図3〜4に示すように、側面視略L字形状で、作業方向に突出させた部分を有する金属製のもので、このパレットフォーク36に、例えば、藁草や木材のほか、梱包箱などを積載させて、これらの積込作業などを行うものである。なお、パレットフォーク36は、図中の例のように2本1組で使用する場合のほか、1本もしくは3本以上複数本を1組として使用してもよい。
【0030】
そして、パレットフォーク36の上端部には、このパレットフォーク36の左右側部から左右外方に向けて突出させた、パレットフォーク36を切欠部35に掛止させるための掛止部37が形成される。なお、掛止部37の底面であって、切欠部35側方のローダバケット16の上板31との接触面には、適宜弾性部材を取付けてもよい。
【0031】
また、パレットフォーク36の背面には、パレットフォーク36をローダバケット16に取付けた際、パレットフォーク36をローダバケット16の奥板34に支持させるための支持部38としての金属ステーなどが取付けられる。なお、支持部38の先端には、ゴム板などの弾性部材39を取付けることが好ましい。
【0032】
さらに、パレットフォーク36には、このパレットフォーク36の屈曲部周辺の底面であって、ローダバケット16の底板32との接触部分に、両者の摩擦による損傷および不快な摩擦音の発生を防止するための、ゴム板などの弾性部材40が取付けられる。
【0033】
ここで、ローダバケット16にパレットフォーク36を兼備させ、このパレットフォーク36により作業を行うため、ローダバケット16にパレットフォーク36を取付ける際には、まず、作業方向に突出させた部分を向けた2本のパレットフォーク36を、ローダバケット16の適宜選択した各切欠部35に嵌合させる。
【0034】
次いで、パレットフォーク36上端部の掛止部37を、これらパレットフォーク36を嵌合させた切欠部35に掛止させるとともに、パレットフォーク36の屈曲部周辺の底部を、ローダバケット16の底板32に接触させて、パレットフォーク36をローダバケット16の開口部に支持させる。
【0035】
このとき、パレットフォーク36背面に設けられた支持部38の先端部が、ローダバケット16の底板32に当接するため、パレットフォーク36は、ローダバケット16に対して掛止部37と、支持部38と、屈曲部周辺の底部との3点により安定支持させることができる。
【0036】
次いで、ローダバケット16における左右一方の側板33に設けられた穴部h1から、穴部h1の内径に略等しい直径を有する金属製で円柱形状の棒などの固定具41a(41b)を差込み、パレットフォーク36の正面に触接させて、一方のステーsの穴部h2まで貫設させるとともに、他方の側板33に設けられた穴部h1から固定具41b(41a)を差込み、パレットフォーク36の正面に触接させて、他方のステーsの穴部h2まで貫設させる。なお、固定具41におけるパレットフォーク36の接触部分または、パレットフォーク36の作業面における固定具41の接触部分には、上述したような弾性部材を取付けてもよい。
【0037】
そして、各固定具41a,41bの、側板33およびステーsそれぞれの外方に、着脱自在なストッパーピンなどの固定部材42を取付けることで、穴部h1,h2からの固定具41a,41bの滑脱を防止することができる。
【0038】
このような構成により、パレットフォーク36を、ローダバケット16の作業面側からローダバケット16に、別途工具を用いる必要がなく、容易に着脱することができる。また、上述してきたように、パレットフォーク36の掛止部37の底面であって、切欠部35側方のローダバケット16の上板31との接触面や、パレットフォーク36の支持部38先端、固定具41a,41bおよびパレットフォーク36の接触部分、パレットフォーク36の屈曲部周辺の底面などに取付けられた弾性部材39,40などにより、ローダバケット16や車両装着用作業機15を回動させて行うパレットフォーク36の作業に伴い、ローダバケット16、固定具41a,41bおよびパレットフォーク36の互いの摩擦による損傷および不快な摩擦音の発生を防ぐことができる。
【0039】
また、固定具41は、1本の部材からなるものとして、ローダバケット16を固定させることもできる。この場合、図5に示すように、ローダバケット16の中央近傍には、上述したようなステーsなどを取付けない構成にすることができる。
【0040】
そして、上述同様に、例えば2本のパレットフォーク36を、ローダバケット16の適宜切欠部35にそれぞれ嵌合させた後、左右一方の側板33の穴部h1から固定具41を貫入し、各パレットフォーク36の表面に触接させながら、左右他方の側板33の穴部h1から固定具41を貫通させ、固定具41の両端部に固定部材42を取付けて、各パレットフォーク36を支持固定する。
【0041】
このような構成にすることで、固定具41の装着を容易になるとともに、ローダバケット16にステーsを設ける手間がなく、作業性がより向上する。
【0042】
次に、ローダバケット16に取付けたパレットフォーク36の取付位置を容易に変更させることもできる。この場合、例えば、図6に示すように、上述したようなローダバケット16の位置に取付けたパレットフォーク36を、一側部に間隔を狭めて設置する際、固定部材42を取外して固定具41(または41a,41b)をローダバケット16から抜き取るとともに、一方のパレットフォーク36を移動して、他方のパレットフォーク36に近い適宜位置に有するローダバケット16の切欠部35に嵌合させた後、上述同様にして固定具41(または41a,41b)でローダバケット16に固定する。なお、パレットフォーク36の取付位置の変更は、上述した方法や位置に限定されない。
【0043】
このような構成にすることで、例えば、車両1台が通過できる程度の狭い通路内の側部に積み上げられた藁の収集作業を行うなど、作業の内容や作業対象物の大きさあるいは作業位置などに伴い、ローダバケット16に対してパレットフォーク36を、上述の例のような設置位置および設置間隔に容易に変更することができ、作業効率の向上が可能となる。
【0044】
また、切欠部35を形成しないローダバケット16´に、取付位置を変更可能としたパレットフォーク36´を兼備させることもできる。この場合、図7に示すように、ローダバケット16´の上板31にパレットフォーク36´の上部背面を接触させるとともに、ローダバケット16´の底板32上にパレットフォーク36の屈曲部周辺の底面を載置させたこれらパレットフォーク36´の上部側面に設けた穴部h3に位置するローダバケット16´の左右側板33の上部位置には、穴部h4が貫設される。
【0045】
そして、左右側板33の一方の穴部h3から、金属製の丸棒状部材である摺動軸43が貫入されるとともに、この摺動軸43を、各パレットフォーク36´の穴部h3を介して左右側板33の他方の穴部h3から外方に突出させる。そして、この摺動軸43における左右側板33の外方に位置する左右両端部には、固定部材42が取付けられることで、摺動軸43がローダバケット16´に固定される。なお、各パレットフォーク36´は、上述同様に固定具41で支持固定される。
【0046】
ここで、パレットフォーク36´の取付位置を変更させたい場合には、各パレットフォーク36´の左右側方であって、摺動軸43上に取付けられている固定部材42´による固定を解除して、パレットフォーク36´を摺動軸43上で摺動させ、再び固定部材42´でパレットフォーク36´を固定する。
【0047】
この固定部材42´は、上述したストッパーピンなどのほか、図中に例示したような摺動軸43上を摺動する、摺動軸43に覆設した金属製の摺動部材44を用いることができる。この摺動部材44は内面に取付けられた凸部45が、摺動軸43に形成された凹状のレール46内に嵌設されており、さらにレール46には、等間隔に複数の切込部47が形成される。
【0048】
従って、パレットフォーク36´の摺動に伴い、レール46に沿って摺動部材44を摺動させるとともに、パレットフォーク36´を設置位置に摺動させたところで、摺動部材44を回転させて、パレットフォーク36´の設置位置に応じた切込部47に摺動部材44の凸部45を嵌入させることで、摺動部材44が摺動軸43上の当該位置で固定されるため、パレットフォーク36´も同位置で固定される。
【0049】
この結果、上述の効果と同様に、ローダバケット16´に対して、パレットフォーク36´を、別途工具を必要とせず、容易に着脱できるとともに、パレットフォーク36´の取付位置を容易に変更することができる。
【0050】
ところで、本願発明のパレットフォークを兼備するローダバケットを装着した車両装着用作業機15を備えるトラクタ1では、上述した後部作業機11の姿勢制御を容易に行える操作レバーを配備することができる。図8は後部作業機を装着したトラクタの左側面図、図9は後部作業機コントロールレバーの斜視図、図10は後部作業機コントロールレバーの設置例を模式的に示した操縦部の斜視図である。
【0051】
この場合、後部作業機コントロールレバー51は、操縦部10内に配設されるもので、図9に示すように、台座52から上方に向けて貫設させた1本の後部作業機コントロールレバー51の下端には、この後部作業機コントロールレバー51を方向a,bに回動させると、方向aの回動に従い方向a´および方向bの回動に従い方向b´に摺動するワイヤー53と、後部作業機コントロールレバー51を方向c,dに回動させると、方向cの回動に従い方向c´および方向dの回動に従い方向d´に摺動するワイヤー54とが接続される。
【0052】
そして、ワイヤー53は、それぞれ図示しない油圧シリンダーケース内の油圧シリンダに接続されるとともに、ワイヤー54は図示しないリフトシリンダ(UFOシリンダ)に接続される。なお、これら油圧シリンダーケースおよびリフトシリンダからなる油圧昇降装置に、図8に示すような作業機装着装置12を介して後部作業機11が取付けられている。
【0053】
従って、作業者が、例えば、図10(a)のように設置した後部作業機コントロールレバー51を、方向aに回動させると、ワイヤー53の摺動に伴い前記油圧シリンダを介して後部作業機11が車両上(前)方向に上昇され、後部作業機コントロールレバー51を方向bに回動させると、ワイヤー53の摺動に伴い前記油圧シリンダを介して後部作業機11が車両下(後)方向に下降される。
【0054】
一方、例えば、後部作業機コントロールレバー51を方向cに回動させると、ワイヤー54の摺動に伴い前記リフトシリンダを介して後部作業機11の車両左側を上方にして後部作業機11を左右傾斜させることができ、後部作業機コントロールレバー51を方向dに回動させると、ワイヤー54の摺動に伴い前記リフトシリンダを介して後部作業機11の車両右側を上方にして後部作業機11を左右傾斜させることができる。
【0055】
なお、後部作業機コントロールレバー51の回動方向と後部作業機11の姿勢位置とは、上述した構成に限定されない。また、油圧昇降装置の詳細な構成および作用は、例えば、特開2004−89153や特開2003−00003などに記載される周知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0056】
このような構成にすることで、従来において、作業者による後部作業機11の姿勢制御には、操縦部10に備えられた、作業機上下レバーの操作により後部作業機11を上下(前後)に昇降させるほか、傾き手動レバーなどの操作により後部作業機11を左右に傾斜させるなど、作業者はその操作の都度、対応するレバーの位置を探すとともに、当該レバーを握り変えていたが、これら操作を上述したように1本の後部作業機コントロールレバー51で操作できるため、作業効率を向上することができる。
【0057】
さらには、後部作業機コントロールレバー51と、前記油圧昇降装置との接続が、ワイヤー53,54であるため、従来のような固定リンクとは異なり、後部作業機コントロールレバー51の設置位置に自由度を与えることができる。また、フェンダfに形成するレバー溝(穴)を従来に比べて減少できるため、コストダウンを図ることができる。
【0058】
そこで、後部作業機コントロールレバー51を、例えば、図10(b)に示すように、フェンダf後部のシートS側方に、車両前方に向けて設置する場合には、後部作業機コントロールレバー51の回動方向aを車両上方に向けて、後部作業機コントロールレバー51が設置される。
【0059】
このような構成にすることで、作業者は、後部作業機コントロールレバー51を車両上方向である方向aに回動させた場合には、後部作業機10が車両上(前)方向に上昇させることができ、後部作業機コントロールレバー51を車両下方向である方向bに回動させた場合には、後部作業機10が車両下(後)方向に下降させることができる。
【0060】
さらには、後部作業機コントロールレバー51を車両左方向である方向cに回動させた場合には、後部作業機11の車両左側を上方にして後部作業機11を左右傾斜させることができ、後部作業機コントロールレバー51を車両右方向である方向dに回動させた場合には、後部作業機11の車両右側を上方にして後部作業機11を左右傾斜させることができる。
【0061】
従って、後部作業機コントロールレバー51の回動方向と、後部作業機11の姿勢制御方向とを一致させるように後部作業機コントロールレバー51を配置するため、作業者は、容易に後部作業機コントロールレバー51による後部作業機11の姿勢制御を行うことができ、作業性が向上する。
【0062】
以上詳述したように、この例の車両装着用作業機15は、車体フレーム2に立設したヒッチ21に昇降自在に枢支したメインビーム23と、このメインビーム23の先端部に、取付部材28を介して装着したローダバケット16とからなり、このローダバケット16は、側面視略L字形状のパレットフォーク36を着脱自在に兼備するとともに、パレットフォーク36を取付けるための切欠部35を、上板31の正面側に複数形成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
なお、上述の例では、車両装着用作業機を装着する作業車両の一例としてホイール式トラクタについて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタや、建設作業車両など、作業機を着脱自在に装着できるものであればよい。
【0064】
また、車両装着用作業機は、フロントローダを例にした前部作業機で説明したが、機体後部に装着させる後部作業機であってもよく、さらには、アタッチメントは、ローダバケット以外にも、フォークなどを兼備できる、車両に装着するあらゆる作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
15 車両装着用作業機
16 ローダバケット
31 上板
32 底板
33 左右側板
34 奥板
35 切欠部
36,36´ パレットフォーク
37 掛止部
38 支持部
39,40 弾性部材
41,41a,41b 固定具
42,42´ 固定部材
43 摺動軸
44 摺動部材
h1,h2,h3,h4 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに立設したヒッチに昇降自在に枢支したメインビームと、
前記メインビームの先端部に、取付部材を介して装着したローダバケットと、からなる車両装着用作業機において、
前記ローダバケットは、側面視略L字形状のパレットフォークを着脱自在に兼備するとともに、前記パレットフォークを取付けるための切欠部を、上板の正面側に複数形成したことを特徴とする車両装着用作業機。
【請求項2】
前記ローダバケットは、着脱可能とする固定具を側板に貫設し、前記パレットフォークを正面側から固定することを特徴とする、請求項1に記載の車両装着用作業機。
【請求項3】
前記パレットフォークの上部には、前記パレットフォークを前記切欠部に掛止させる掛止部を設けることを特徴とする、請求項1に記載の車両装着用作業機。
【請求項4】
前記パレットフォークの背面には、前記パレットフォークを前記ローダバケットの奥板に支持させる支持部を設けることを特徴とする、請求項1に記載の車両装着用作業機。
【請求項5】
前記パレットフォークは、該パレットフォークの背面であって、前記ローダバケットの底面との接触部分に、弾性部材を設けることを特徴とする、請求項1に記載の車両装着用作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−275049(P2010−275049A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127875(P2009−127875)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】