説明

車両車体のクリーン化剤

【課題】原料に、動植物由来のものであって、しかもバージンではない使用済みのものを用いてなる、車体クリーン化剤を提供する。
【解決手段】車体クリーン化剤を、廃食用油を源資とするリサイクル脂肪酸由来の脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び脂肪酸石鹸の中から選ばれた少なくとも一種の薬剤を含んでなるものとする。車体クリーン化剤にはさらに界面活性剤を配合するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両車体(窓ガラスを含む)(以下、車体ともいう)のクリーン化剤、とりわけ車体の洗車剤、例えば車体を洗浄するための洗浄剤や、車体、中でもその塗装面に撥水性を付与するためのワックス剤等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、車体のクリーン化剤としては、石油由来界面活性剤や動植物由来界面活性剤を原料とするクリーナーやフォーム剤からなるシャンプー類等や、石油パラフィンやロウ等のワックス類がよく用いられ、これらクリーン化剤は、洗車機を通して車体に施用して洗車処理に供されるのが一般的である(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
近年、環境問題への配慮から環境負荷の低い薬剤の開発が行われ、中でも原料を石油由来から動植物由来のものへと変えた化成品による薬剤が多く検討されているが、その一方、天然原料の枯渇等が問題視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−348597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情の下、原料に、動植物由来のものであって、しかもバージンではない使用済みのものを用いてなる、車体クリーン化剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、大半が家畜の餌に利用され、一部燃料用の原料として再利用されている程度の廃食用油に着目し、これを車体クリーン化剤の原料とすると、それが使用済みのものであるにもかかわらず、バージンのものと遜色のない性能を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)廃食用油を源資とするリサイクル脂肪酸由来の脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び脂肪酸石鹸の中から選ばれた少なくとも一種の薬剤を含んでなることを特徴とする車体クリーン化剤。
(2)さらに界面活性剤を配合してなる前記(1)記載の車体クリーン化剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車体クリーン化剤は、使用済みの廃食用油を源資とするリサイクル脂肪酸由来の薬剤を用いているにもかかわらず、純正脂肪酸由来のものなどバージン品を用いたものと遜色のない性能を示すという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1における素地の石鹸のFT−IRチャートである。
【図2】実施例10におけるポリエチレングリコール脂肪酸エステルのFT−IRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の車体クリーン化剤は、廃食用油を源資とするリサイクル脂肪酸由来のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、及び脂肪酸石鹸の中から選ばれた少なくとも一種の薬剤を含んでなるものである。
【0011】
廃食用油としては特に限定されないが、例えば、揚げ物等の加工食品の製造に用いられ、廃棄された使用済みの食用油等が挙げられる。食用油を例示すると、サラダ油、大豆油、ナタネ油、キャノーラ油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、サフラワー油、パーム油、ベニバナ油、サフラワー油、米油、ひまわり油、ピーナッツ油、ヤシ油、カカオ油、米ぬか油等を挙げることができる。
【0012】
上記のポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、リサイクル脂肪酸とポリエチレングリコールとを反応させて得られるエステルであり、ポリエチレングリコールとしては、分子量が通常200〜20000、好ましくは400〜4000の範囲のものが用いられる。
【0013】
上記の脂肪酸エステルは、リサイクル脂肪酸と脂肪族モノアルコールとを反応させて得られるエステルである。
この脂肪酸エステルをワックス剤として用いうるようにするには、脂肪族モノアルコールを炭素数8〜22の直鎖状または分岐状のものとするのが好ましい。
【0014】
上記の脂肪酸石鹸は、リサイクル脂肪酸アルカリ金属塩や、リサイクル脂肪酸とアミンとの塩である。
アミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。
【0015】
これらの薬剤に、洗浄剤としての性能を増強するために、各種界面活性剤、例えば、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を添加することができる。
界面活性剤の添加量は、洗浄剤に対し、重量基準で、1〜20%の範囲で選ぶのが好ましい。
【0016】
このような界面活性剤のうち、陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0017】
また、非イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルエチレンオキシド付加物、アルキルフェニルエーテルエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(脂肪酸エチレンオキシド付加物およびポリエチレングリコール脂肪酸エステル、硬化ひまし油エチレンオキシド付加物)、ソルビタン脂肪酸エステルエチレンオキシド付加物、脂肪族アミンアルキレンオキシド(例えばポリオキシエチレンアルキルアミン)、アルキルアルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルアミンオキシド等が挙げられる。
【0018】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタインやアルキルアミドベタイン等が挙げられる。
【0019】
上記車体クリーン化剤がワックス剤として用いられる場合については、水に効率よく分散、乳化、溶解させるために、界面活性剤、中でも非イオン界面活性剤、またはカチオン界面活性剤が配合されているのが好ましい。
【0020】
カチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムクロライドのエチレンオキシド付加物、アルキルアミン酢酸塩等が挙げられる。
【0021】
本発明の車体クリーン化剤は、有効成分の種類にもよるが、有効成分濃度が1〜20重量%程度に調製されたものが好ましく、これを用いて、洗車機等を介して車体に施用して洗浄や、ワックスかけをするなどの洗車処理に際しては、実用的には、上記好適濃度の20〜1000倍になるまで水で希釈するのがよい。
【0022】
また、本発明の車体クリーン化剤には、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、有機溶剤、紫外線吸収剤、染料、防錆剤、防腐剤などの任意の添加成分を配合することができる。
【実施例】
【0023】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜9
2.5重量%の水酸化カリウム水溶液80部を60℃に加熱し、そこに同様に加熱した、築野食品工業株式会社製の廃食用油源資のリサイクル脂肪酸(TFA−140F)10部を滴下した。その後常温になるまで放冷し、得られた石鹸を素地とする洗浄液を調製し、またこの洗浄液に以下の表1に示すように各種界面活性剤を5重量%添加してなる洗浄液を調製し、これらを洗車剤試料とした。
【0025】
上記の実施例1における素地の石鹸について、そのFT−IRチャートを図1に示す。図中、(A)の1700cm−1付近のピークは、廃油由来脂肪酸のカルボキシル基の2量体のC=Oの伸縮振動に由来するものであり、(B)の1560cm−1付近のピークは、脂肪酸カリウムによるCOOの逆対称伸縮振動に由来するものである。よって、上記方法により、廃油由来脂肪酸のカリウム石鹸が生成されていることが確認できた。
【0026】
比較例1〜4
市販カリウム石鹸を素地とする洗浄液を調製し、またこの洗浄液に以下の表1に示すように界面活性剤を5重量%添加してなる洗浄液を調製し、これらを比較のための洗車剤試料とした。
【0027】
上記各試料につき、以下の試験法、評価基準に基づき、諸性能を評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0028】
(1)(起泡性)
洗車剤を1000倍に希釈し、ロスマイルス法にて泡の高さ(mm)を測定し、その値を以下の評価基準で評価した。
◎:150mm超
○:100mm超〜150mm
△:50mm超〜100mm
×:50mm以下
【0029】
(2)(発泡性)
1000倍に希釈した洗浄剤1000mlを、圧縮空気を使用する発泡機を通して発泡させ、5000mlのステンレスビーカーに泡を集め、泡の嵩をビーカーの目盛(ml)で目視測定し、その値を以下の評価基準で評価した。
◎:2000ml超
○:1500ml超〜2000ml
△:1000ml超〜1500ml
×:1000ml以下
【0030】
(3)(洗浄性)
10倍に希釈した洗浄剤に、ロウ・パラフィン・植物油等で作製し青色に染色した人工汚染油を処理したテストピースを浸漬し、10分間攪拌する試験において、試験前後のテストピース表面を色差計により測定し、比較例1の洗浄力を100としたときの以下の相対評価基準で評価した。
◎:170超
○:135超〜170
△:100超〜135
×:100以下
【0031】
【表1】

【0032】
これより、素地が廃食用油由来の脂肪酸石鹸である洗浄液の方が上記市販石鹸素地の洗浄液より、とりわけ界面活性剤が配合されることで上記実施例の本発明の洗車剤の方が比較例のそれより、いずれも総合的に優れた性能を示すことが分かる。
特に、石鹸素地にラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドを添加することで、性能を格段に向上させることができる。
よって、本発明を利用することで廃食用油のリサイクルという資源有効活用をより一層拡張することができる。
【0033】
実施例10〜18
築野食品工業株式会社製の廃食用油源資のリサイクル脂肪酸(TFA−140F)1重量部とポリエチレングリコール(600)4重量部を攪拌しながら混合した。混合物を80℃まで加熱し、そこに硫酸0.03重量を加え、80〜90℃で90分攪拌した。その後、室温になるまで放冷し、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを主洗浄成分とする洗浄液を調製し、またこの洗浄液に以下の表2に示すように各種界面活性剤を5重量%添加してなる洗浄液を調製し、これらを洗車剤試料とした。
【0034】
上記の実施例10におけるポリエチレングリコール脂肪酸エステルについて、そのFT−IRチャートを図2に示す。図中、(B)の1700cm−1付近の廃油由来脂肪酸のカルボキシル基の2量体のC=Oの伸縮振動に由来するピークが、(C)では見られず、1735cm−1付近にピークが見られる。これは、エステルのC=Oの伸縮振動に由来するピークであることから、上記方法により、ポリエチレングリコールと脂肪酸より、エステルが生成されていることが確認できた。
【0035】
比較例5〜8
市販のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを洗浄成分とする洗浄液を調製し、またこの洗浄液に以下の表2に示すように各種界面活性剤を添加してなる洗浄液を調製し、これらを比較のための洗車剤試料とした。
【0036】
上記各試料につき、以下の試験法、評価基準に基づき、諸性能を評価した。その結果を以下の表2に示す。
【0037】
(1)(起泡性)
洗車剤を1000倍に希釈し、ロスマイルス法にて泡の高さ(mm)を測定し、その値を以下の評価基準で評価した。
◎:70mm超
○:60mm超〜70mm
△:50mm超〜60mm
×:50mm以下
【0038】
(2)(発泡性)
1000倍に希釈した洗浄剤1000mlを、圧縮空気を使用する発泡機を通して発泡させ、5000mlのステンレスビーカーに泡を集め、泡の嵩をビーカーの目盛(ml)で目視測定し、その値を以下の評価基準で評価した。
◎:2000ml超
○:1500ml超〜2000ml
△:1000ml超〜1500ml
×:1000ml以下
【0039】
(3)(洗浄性)
10倍に希釈した洗浄剤に、ロウ・パラフィン・植物油等で作製し青色に染色した人工汚染油を処理したテストピースを浸漬し、10分間攪拌する試験において、試験前後のテストピース表面を色差計により測定し、比較例5の洗浄力を100としたときの以下の相対評価基準で評価した。
◎:150超
○:125超〜150
△:100超〜125
×:100以下
【0040】
【表2】

【0041】
これより、廃食用油由来のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを主洗浄成分とする洗浄液が上記市販洗浄液と同等以上のレベル、とりわけ界面活性剤が配合されることで上記実施例の本発明の洗車剤の方が比較例のそれより総合的に優れた性能を示すことが分かる。
特に、主洗浄成分にミリスチルジメチルアミンオキシドを添加することで、性能を格段に向上させることができる。
よって、本発明を利用することで廃食用油のリサイクルという資源有効活用をより一層拡張することができる。
【0042】
実施例19、比較例9
下記表3に示す所定用量の各種成分からなるワックス剤を調製し、このワックス剤の性能を評価した。評価方法は、自動車の車体用めっき鋼板材片に、アクリル−メラミン系樹脂からなる自動車用塗料をベースコートとトップコートの積層形態で焼付け塗装して塗装板を作成した後、これをけいそう土で研磨し、水洗風乾して試験片を作成し、この試験片に、各ワックス剤を20倍に希釈して塗布処理し、得られた塗膜上の水に対する接触角を接触角測定器(協和界面DropMaster)を用いて測定した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
これより、廃食用油由来脂肪酸エステルを撥水成分として用いた場合、従来のパラフィンワックスやオレフィンワックスを主体とするワックス剤と何ら遜色ない性能を有することが分かる。
【0045】
このように、従来のワックス剤と同等レベルの性能を食用油由来の原料を用いることで発現することができた。よって、本発明を利用することで廃食用油のリサイクルという資源有効活用をより一層拡張することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の車体クリーン化剤は、使用済みの廃食用油を源資とするリサイクル脂肪酸由来の薬剤を用いているにもかかわらず、純正脂肪酸由来のものなどバージン品を用いたものと遜色のない性能を示すので、産業上大いに利用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食用油を源資とするリサイクル脂肪酸由来の脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び脂肪酸石鹸の中から選ばれた少なくとも一種の薬剤を含んでなることを特徴とする車体クリーン化剤。
【請求項2】
さらに界面活性剤を配合してなる請求項1記載の車体クリーン化剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77277(P2012−77277A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235892(P2010−235892)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】