説明

車両通行遮断機

【課題】阻止棒をリリース状態に確実に保持することができる車両通行遮断機を提供する。
【解決手段】遮断機本体11に開閉軸12を介して支持されたアーム21と、該アーム21にリリース軸26を介して支持された阻止棒30と、阻止棒30をリリース状態に保持する保持手段40とを備える遮断機10において、保持手段40を、アーム21に設けられた係止軸部80と、阻止棒30に設けられ、阻止棒30のリリース状態への回動によって係止軸部80に対して乗り越え可能に当接し、阻止棒30のリリース状態へのさらなる回動によって係止軸部80を乗り越えた後に該係止軸部80と係合する係合フック50から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路等の車両有料施設の料金所に設置され、車両の通行を阻止または許可可能な車両通行遮断機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等の有料道路や駐車場等の料金所において、料金の収受を自動化するシステムとしてETC(Electronic Toll Collection Sysem)が導入されている。このETCにおいては、料金所ゲートへの車両の進入を車両検知器が検知すると、車線サーバが路側アンテナに対して通信指令を発し、これに基づいて路側アンテナが車両に搭載された車載器と通信を開始する。次いで、車線サーバは路側アンテナにより車載器から得られた情報に基づいて、正常車両か異常車両かの別を判断する。そして、正常車両と判断した際には車両通行遮断機の阻止棒を開状態とし、異常車両と判断した際には阻止棒を閉状態に維持することで、車両の通行を許可又は阻止する。
【0003】
このETCにおいては、阻止棒が閉じた状態であるにも拘わらず車両が強行的に車両通行遮断機を通過した場合、車両が阻止棒に衝突することによって阻止棒や車両が損傷するという事故が生じる。そこで、このような問題に対処すべく、車両の衝突時に阻止棒が受けた衝撃を逃がすように、該阻止棒がリリース動作を行う車両通行遮断機が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
これら特許文献1,2に記載の車両通行遮断機は、車両が阻止棒に衝突することなく通常に使用されている間は、その阻止棒が鉛直面内で回転し、水平に倒伏した状態で車両の通行を阻止する一方、鉛直に起立した状態で車両の進入を許可するような開閉動作を行う。そして、車両が阻止棒に衝突した際には、その衝撃に従って阻止棒が車両進行方向へと向かって水平面に沿って折れ曲がりリリース状態となる。
【0005】
ここで、このような車両通行遮断機では、リリース動作をした阻止棒がその回動限界まで達した後にその勢いにより跳ね戻ってくることがあり、該阻止棒が後続車両に衝突してしまうおそれがあった。
これに対して、例えば特許文献3には、阻止棒をリリース状態にて保持することが可能な車両通行遮断機が開示されている。この車両通行遮断機によれば、阻止棒がリリース状態となった際に、阻止棒のV字切欠にリバウンド防止フックが凹凸に係合することにより、阻止棒がリリース状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3594957号公報
【特許文献2】特開2003−336232号公報
【特許文献3】特開2001−271316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の車両通行遮断機では、阻止棒がリリース状態となる際に単に凸状のリバウンド防止フックが凹状のV字切欠に係合することで該阻止棒をリリース状態に保持する構成のため、その保持力が十分とは言えず阻止棒の跳ね戻りを確実に防止することはできない。
【0008】
即ち、阻止棒がリリース状態となる際にはリバウンド防止フックがV字切欠に対して何ら抵抗なく容易に凹凸係合可能とされるため、該凹凸係合の解除もまた容易に行われてしまう。よって、阻止棒の勢いが大き過ぎる場合には、一旦リバウンド防止フックがV字切欠に係合したとしても阻止棒の跳ね戻りによって凹凸係合が解除されてしまうおそれがある。
また、リバウンドを防止するためにはその係合力を強固にする必要があるが、これを行うことによって、そもそも係合するために大きな力が必要であったり、係合した後にそれを解除する際に、大きな力が必要であるなど、様々な懸念点が想定され得るものであった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、阻止棒をリリース状態に確実に保持することができ、かつ、保持の解除を簡易に行うことのできる車両通行遮断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る車両通行遮断機は、遮断機本体に開閉軸を介して支持され、車両の通行を阻止する阻止位置と車両の進行を許容する許可位置との間で開閉制御されるアームと、該アームにリリース軸を介して支持され、前記開閉軸の径方向に延在する通常状態と該通常状態から車両進行方向前方側に折れ曲がるリリース状態との間で回動可能とされる阻止棒と、前記阻止棒を前記リリース状態に保持する保持手段とを備え、該保持手段は、係止軸部と、前記阻止棒のリリース状態への回動によって前記係止軸部に対して乗り越え可能に当接し、前記阻止棒のリリース状態へのさらなる回動によって前記係止軸部を乗り越えた後に該係止軸部と係合する係合フックとを備え、前記係合フックは、前記リリース軸と平行な回動軸を介して前記阻止棒に対して相対回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような特徴の車両通行遮断機によれば、阻止棒のリリース状態への回動時に係合フックが係止軸部に当接した際には、係合フックが阻止棒に対して相対回転することで係止軸部を容易に乗り越えることができる。これによって、係合フックと係止軸部とが互いに係合して阻止棒がリリース状態に保持される。即ち、阻止棒がリリース状態となる際には、係合フックが係止軸部を一旦乗り越える必要があるため、逆にリリース状態から通常状態へと阻止棒を回動させる際にも係合フックが係止軸部を乗り越える必要がある。したがって、阻止棒が一旦リリース状態となった際に該阻止棒をリリース状態に強固に保持することができる。
また、阻止棒をリリース状態から通常状態に復帰させる際には、これに先立って係止軸部を回動軸回りに阻止棒に対して相対回動させることによって、容易に係止軸部と係止軸部との係合を解除することができる。
【0012】
また、本発明に係る車両通行遮断機において、前記保持手段は、前記係合フックの前記阻止棒に対する相対回動範囲を、前記係止軸部に当接可能かつ係合可能とされた第一回動位置と、前記係止軸部に当接不能かつ係合不能とされた第二回動位置との間で規制するストッパをさらに有することが好ましい。
【0013】
阻止棒の回動範囲を必要な範囲に抑えることにより、係合フックの阻止棒に対する不用意な回動を防止することができる。
また、阻止棒がリリース状態に回動する際には、第一回動位置とされた係合フックが係止軸部に当接し、その後阻止棒がリリース状態へとさらに回動する際に係合フックが第二回動位置に回動することによって係止軸部を乗り越えることができる。
さらに、阻止棒がリリース状態とされている際には、第一回動位置の係合フックが係止軸部に係合することで阻止棒をリリース状態に保持することができる一方、係合フックを第二回動位置とすることによりこれら係合フックと係止軸部との係合を解除することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る車両通行遮断機において、前記保持手段は、前記係合フックを前記第二回動位置から前記第一回動位置に向かって付勢する付勢部材をさらに有することが好ましい。
【0015】
これによって、付勢部材によって第一回動位置に付勢された係合フックが阻止棒のリリース状態への回動に伴って係止軸部に当接した際には、該係止軸部からの反力によって係合フックが付勢部材の付勢に抗して第二回動位置に回動する。これによって、係合フックは係止軸部を乗り越えることができる。
また、阻止棒がリリース状態とされた際には、係合部材が付勢部材の付勢力に従って第一回動位置に回動することで該係合部材と係止軸部とを確実に係合させることができる。
【0016】
また、本発明に係る車両通行遮断機において、前記係合フックに一体に設けられ、前記回動軸の径方向外側に向かって延びる操作バーをさらに有することを特徴とする。
【0017】
これによって、阻止棒がリリース状態となった後に操作バーを操作して係合フックを回動させることで、係合フックと係止軸部との係合を容易に解除することができる。これによって、阻止棒を通常状態へと容易に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両通行遮断機によれば、阻止棒がリリース状態へと回動する際に係合フックが係止軸部に乗り越え可能に当接する。そして、阻止棒のリリース状態へのさらなる回動によって係合フックが係止軸部を乗り越えた後に係合フックと係止軸部とが互いに係合することで、阻止棒をリリース状態に確実に保持することができる。また、阻止棒を通常位置に復帰させる際には、係合フックを阻止棒に対して相対回転させることで該係合フックと係止軸部との係合を解除することができ、即ち、阻止棒のリリース状態における保持の解除を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る通常状態の車両通行遮断機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る通常状態の車両通行遮断機の概略構成を示す平面図である。
【図3】実施形態に係るリリース状態の車両通行遮断機の概略構成を示す平面図である。
【図4】図1の保持手段の拡大図である。
【図5】図4の保持手段の横断面図である。
【図6】阻止棒がリリース動作をしている際の保持手段の状態を示す図である。
【図7】阻止棒がリリース動作をしている際の保持手段の状態を示す図である。
【図8】阻止棒がリリース動作をした結果、リリース状態となった際の保持手段の状態を示す図である。
【図9】リリース状態となった際の保持手段の操作バーを操作して係合フックを第二回動位置とさせた際の保持手段の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る車両通行遮断機10について、図面を参照して詳細に説明する。
車両通行遮断機10(以下、単に遮断機10と称する)は、図1〜図3に示すように、遮断機本体11と、該遮断機本体11に支持された支持アーム部20と、該支持アーム部20に支持された阻止棒30と、支持アーム部20及び阻止棒30にわたって設けられた保持手段40とを備えている。
【0021】
遮断機本体11は高速道路の料金所における車両通行路の側方に立設されている。この遮断機本体11における車両進行方向G後方側を向く面には、開閉軸12(図2及び図3参照)が設けられている。
この開閉軸12は遮断機本体11内に設けられた開閉用モータ(図示省略)によって車両進行方向Gに延びる水平軸回りに回転駆動可能とされている。開閉用モータは回転速度や回転角度を任意に制御可能ないわゆるサーボモータであって、車線サーバ(図示省略)からの信号に基づいて正逆回転するように構成されている。なお、遮断機本体11を設置する箇所は高速道路の料金所に限られず、例えば駐車場等の他の車両有料施設の料金所等であってもよい。
【0022】
支持アーム部20はアーム21と、リリース軸26と、付勢突起27とを有している。
アーム21は開閉軸12の直径方向を長手方向とするように延在する部材であって該開閉軸12の先端に固定支持されている。このアーム21は開閉軸12の回転に伴って該アーム21の長手方向が水平方向に平行な阻止位置と鉛直方向に平行な許可位置との間で回動する。即ち、アーム21は開閉軸12の回転に伴って阻止位置と許可位置との間で90°の範囲を回動するように構成されている。
【0023】
このアーム21は長手方向に直交する断面形状が略コの字状をなしており、阻止位置にある場合において上下方向に対向する上板部22及び下板部23と、これら上板部22及び下板部23とを接続して開閉軸12の先端に固定される中板部24を備えている。
【0024】
また、アーム21にはリリース軸26を支持するためのリリース軸支持部25が設けられている。このリリース軸支持部25はアーム21の中板部24から車両進行方向G前方側に突出しており、上板部22と下板部23との対向方向、即ち、アーム21が阻止位置にある際の上下方向に離間して一対が設けられている。
【0025】
リリース軸26は、図2及び図3に示すように、アーム21の先端側に設けられており、本実施形態においては上記一対のリリース軸支持部25にわたるようにして設けられている。
このリリース軸26はリリース軸支持部25に支持されることでアーム21の長手方向に直交し、かつ、鉛直面に沿って延びる軸線回りに回転可能とされている。即ち、リリース軸26はアーム21の開閉軸12回りの回転軌跡の接線方向に延びる軸線回りに回動可能とされている。これによって、アーム21が阻止状態とされている際にはリリース軸26は鉛直軸回りに回動可能とされる。
【0026】
付勢突起27はアーム21における上板部22及び下板部23にそれぞれ設けられており、アーム21の内部に向かって上板部22及び下板部23から突出するように付勢されている。
【0027】
阻止棒30はリリース軸26の直径方向に沿って延在するように該リリース軸26に固定支持されている。そして、支持アーム部20が阻止位置とされている場合における阻止棒30のリリース軸26から見た車両通行路側の部分が、長尺状をなして車両の進行を阻止する棒部31とされている。また、阻止棒30におけるリリース軸26を挟んで棒部31の反対側の部分が、アーム21の内側に収納可能な基部32とされている。
【0028】
この阻止棒30には、図4に示すように、阻止棒30に一体に設けられた連結部33が設けられている。この連結部33は阻止棒30がアーム21の延在方向に沿って配置されている状態に車両進行方向G前方側に向かって突出するように設けられている。そして、この連結部33がリリース軸26に支持されることで、阻止棒30がリリース軸26の回転に伴って該リリース軸26の軸線回りに回動するようになっている。
【0029】
この阻止棒30においては、図1及び図2に示すように、該阻止棒30の延在方向がアーム21の長手方向と平行な状態、即ち、阻止棒30が開閉軸12の径方向に延在する状態が通常状態とされている。なお、阻止棒30の基部32は該阻止棒30が通常状態にある際にアーム21の内側に収納されている。なお、基部32には一対の付勢突起27がそれぞれ係合可能とされた凹部(図示省略)が形成されている。
【0030】
また、阻止棒30においては、図3に示すように、リリース軸26の回動に伴って通常状態から車両進行方向Gに回動した状態がリリース状態とされている。本実施形態の阻止棒30は該阻止棒30の延在方向が支持アーム部20の長手方向と直交する状態、即ち、阻止棒30が開閉軸12及び車両進行方向Gと平行に延在する状態まで回動する。
【0031】
以下では、阻止棒30が通常状態からリリース状態に回動する方向、即ち、リリース動作を行う方向をリリース回動方向T1とし、これとは逆にリリース状態から通常状態に回動する方向、即ち、復帰動作を行う方向を復帰回動方向T2とする。
また、このような遮断機10においては阻止棒30が通常状態とされるとともにアーム21が阻止位置にある際に車両の進行を阻止する。これに対して、阻止棒30が通常状態とされるとともにアーム21が許可位置にある際に車両の通行を許可する。
【0032】
次に、保持手段40について説明する。この保持手段40は阻止棒30をリリース状態に保持する役割を有しており、詳しくは図4及び図5に示すように、回動軸支持部41と、回動軸42と、ストッパ43と、係合フック50と、操作バー60と、付勢部材70と、係止軸部80とを備えている。
【0033】
回動軸支持部41は、阻止棒30の連結部33からアーム21の先端側に向かって、即ち、車両通行路側に向かって延びるように該連結部33に一体に設けられており、リリース軸26の延在方向、即ち、阻止棒30が阻止位置にある場合の上下方向に間隔をあけて一対が設けられている。
【0034】
回動軸42は一対の回動軸支持部41の先端部において、これら一対の回動軸支持部41にわたって設けられた軸であって、リリース軸26と平行に延在している。
ストッパ43は、一対の回動軸支持部41の間において連結部33からアーム21の先端側に向かって突出するように連結部33に一体に設けられている。
【0035】
係合フック50は回動軸42に固定支持された部材であって、この回動軸42の回転に伴って回動するように構成されている。即ち、係合フック50は回動軸42を介して阻止棒30に対して相対回転可能とされている。
この係合フック50は阻止棒30が通常状態にある場合において車両進行方向G前方側に向かうに従って漸次阻止棒30の後端側に向かって延在している。換言すれば、この係合フック50は、回動軸42の径方向外側に向かうにしたがって該回動軸42におけるリリース回動方向T1と同様の回動方向(以下、第一回動方向T3と称する)に向かって傾斜するように延在している。
【0036】
係合フック50の先端には、該先端が第一回動方向T3に屈曲するようにして形成されたフック部51が設けられており、このフック部51には第一回動方向T3前方側を向く当接面52が形成されている。
また、この当接面52における回動軸42の径方向内側の端部には、該当接面52に対して鋭角に交差して湾曲するフック面53が形成されている。
【0037】
また、係合フック50には、ストッパ43を間に挟むようにして設けられた第一凸部54及び第二凸部55を備えている。第一凸部54はストッパ43における復帰回動方向T2と同様の回動方向(以下、第二回動方向T4と称する)側に位置しており、第二凸部55はストッパ43の第一回動方向T3側に位置している。なお、これら第一凸部54と第二凸部55との間隔はストッパ43の厚みよりも大きく設定されており、係合フック50の回動によって第一凸部54と第二凸部55とのいずれか一方がストッパ43に当接するようになっている。これにより、係合フック50はストッパ43が第一凸部54又は第二凸部55に当接することでその回動範囲が規制されている。
【0038】
以下では、図4に示すように係合フック50の第一凸部54がストッパ43に当接する位置を係合フック50の第一回動位置とし、図5に示すように係合フック50の第二凸部55がストッパ43に当接する位置を係合フック50の第二回動位置とする。
即ち、本実施形態では係合フック50が第一回動方向T3に回動する際の限界位置が第一回動位置とされており、係合フック50が第二回動方向T4に回動する際の限界位置が第二回動位置とされている。
【0039】
操作バー60は回動軸42から阻止棒30の先端側に向かって延在するように係合フック50に一体に設けられた部材である。より詳細には、この操作バー60は図4に示すように係合フック50が第一回動位置にある際に阻止棒30と平行に延在しており、図5に示すように係合フック50が第二回動位置に回動した際には阻止棒30に近接するように回動する。なお、操作バー60は係合フック50が第二回動位置にある場合において該阻止棒30に干渉しないように配置されている。
【0040】
付勢部材70は係合フック50を第一回動方向T3へと向かって、即ち、第二回動位置から第一回動位置向かって付勢する役割を有しており、ボルト71を介して回動軸支持部41に固定された板バネ72から構成されている。即ち、この板バネ72は係合フック50の第二凸部55付近にボルト71によって固定された状態で阻止棒30の先端側に向かって延在しており、その一部が第一回転方向に向かって屈曲して操作バー60に当接している。
【0041】
これによって板バネ72は操作バー60を第一回動方向T3に押圧しており、該操作バー60と一体をなす係合フック50を第一回動方向T3に付勢している。このように付勢された係合フック50は第一凸部54がストッパ43に当接する第一回動位置に位置している。
なお、付勢部材70としては板バネ72に代えて例えばコイルスプリング等を採用してもよい。
【0042】
係止軸部80は一対のリリース軸支持部25にわたるように設けられたリリース軸26と平行に延びる断面円形の軸であって、リリース軸支持部25におけるリリース軸26の車両進行方向G前方側かつアーム21の後端側の部分に配置されている。この係止軸部80は第一回動位置にある係合フック50が阻止棒30のリリース動作に伴って回動する際の当接面52の軌跡上に位置している。また、係止軸部80の位置は阻止棒30がリリース状態となった際に係合フック50におけるフック部51のフック面53が係止軸部80に引っ掛かることにより係合する位置とされている。
【0043】
これにより、係止軸部80は阻止棒30がリリース動作をする際に第一回動位置の係合フック50が当接可能とされ、かつ、阻止棒30がリリース状態にある場合に第一回動位置の係合フック50が係合可能な位置に配置されている。即ち、係合フック50の第一回動位置は、該係合フック50が係止軸部80に対して当接可能かつ係合可能な位置とされている。
【0044】
一方、係合フック50が第二回動位置にある場合には、阻止棒30がリリース動作をしたとしても係合フック50が係止軸部80に当接することはなく、阻止棒30がリリース状態にあっても係合フック50が係止軸部80に係合することはない。即ち、係合フック50の第二回動位置は、該係合フック50が係止軸部80に対して当接不能かつ係合不能な位置とされている。
【0045】
次に、本実施形態の遮断機10の動作について説明する。
車両通行路に車両が進入しておらず遮断機10が待機状態の際には、図1及び図2に示すように、アーム21が阻止位置とされるとともに阻止棒30が通常状態とされ、遮断機10は車両の通行を阻止した状態とされている。なお、この際、阻止棒30の基部32に設けられた凹部に付勢突起27がそれぞれ係合することにより、阻止棒30は通常状態に固定されている。
また、保持手段40においては、付勢部材70によって係合フック50が第一回動方向T3に付勢されることで第一凸部54がストッパ43に当接した状態となり、即ち、係合フック50は第一回動位置に位置している。
【0046】
このような遮断機10を備えた料金所ゲートに車両が進入した際には、車両検知器(図示省略)による車両の検知や路側アンテナ(図示省略)による車両の車載機との通信が行われる。
この結果、車線サーバ(図示省略)によって車両が正常車両と判定されると、車線サーバは開閉モータの出力軸を正回転させる信号を送出することにより、アーム21が阻止位置から許可位置へと回動させられる。これによって、遮断機10が車両の通行を許可した状態となる。
一方、車線サーバ(図示省略)によって当該車両が異常車両と判定された際には、アーム21は阻止位置に維持され、遮断機10は車両の通行を禁止した状態を維持する。
【0047】
ここで、このように車線サーバが異常車両と判断して異常処理を行った際には、アーム21が阻止位置に維持されることにより阻止棒30に車両が衝突する場合がある。また、車線サーバが正常車両と判断してアーム21に開動作を行わせた際であっても、車両の進入速度が速すぎる場合には阻止棒30に車両が衝突し得る。この際には、当該車両の衝撃に基づいて阻止棒30のリリース動作が行われる。
【0048】
即ち、阻止棒30の棒部31に対して車両進行方向Gに進行する車両が衝突すると、当該衝撃力が阻止棒30をリリース軸26回りにリリース回動方向T1に回動させる回転モーメントとして作用する。そして、この回転モーメントにより付勢突起27による阻止棒30の固定は解除され、阻止棒30はリリース回動方向T1に回動していく。
【0049】
このように阻止棒30が回動していくと、該阻止棒30に対してリリース軸支持部25及び回動軸支持部41を介して設けられた係合フック50も阻止棒30と一体にリリース回動方向T1に回動していく。すると、この回動途中において、図6に示すように、係合フック50におけるフック部51の当接面52が係止軸部80に対して当接する。
【0050】
次いで、阻止棒30がさらにリリース回動方向T1に回動すると係合フック50は当接面52を介して反力を受け、この反力によって係合フック50は付勢部材70の付勢に抗して第二回動方向T4に向かって阻止棒30に対して相対回動させられる。すると、図7に示すように係合フック50が第二回動位置に移動するとともに係合フック50におけるフック部51の当接面52とフック面53との稜線部が係止軸部80の形状に沿って該係止軸部80に乗り上げる。このように係合フック50が第二回動位置に移動することで、係合フック50の当接面52は係止軸部80と当接不能となる。
【0051】
そして、阻止棒30がさらにリリース回動方向T1に回動すると、係合フック50におけるフック部51の当接面52とフック面53との稜線部が係止軸部80をリリース回動方向T1に乗り越える。これによって、係止軸部80から当接面52に対して作用する反力が失われ、係合フック50は付勢部材70の付勢に従って第一回動位置に回動する。すると、図8に示すように、係合フック50のフック面53が係止軸部80に引っ掛かるようにして係合し、即ち、係合フック50と係止軸部80とが互いに係合した状態となる。
【0052】
このように本実施形態においては、阻止棒30のリリース状態への回動によって係合フック50が係止軸部80に対して乗り越え可能に当接し、係合フック50が阻止棒30のリリース状態へのさらなる回動に伴って係止軸部80を乗り越えた後これら係合フック50と係止軸部80とが互いに係合する構成とされている。これによって、係合フック50と一体に設けられた阻止棒30がリリース状態に保持される。
【0053】
また、リリース状態の保持を解除して阻止棒30を通常状態へと復帰させる際には、図9に示すように、操作バー60を第二回動方向T4に向かって押圧することで係合フック50を第二回動位置に位置させる。これによって、係合フック50のフック面53と係止軸部80とが係合不能な状態となる。そして、この状態でさらに操作バー60を第二回動方向T4に回動させることによって、当該操作バー60に接続された阻止棒30を復帰回動方向T2に回動させることができる。
【0054】
以上のように本実施形態の遮断機10によれば、阻止棒30が通常状態からリリース状態に回動する際に当該阻止棒30に設けられた係合フック50が係止軸部80に当接し、その後阻止棒30がさらにリリース状態へと向かって回動することで係合フック50が係止軸部80を乗り越える。これによって、係合フック50は係止軸部80によって係止されるため、係合フック50と一体をなす阻止棒30をリリース状態に保持することができる。
【0055】
即ち、阻止棒30がリリース状態となる際には、係合フック50が係止軸部80を一旦乗り越える必要があるため、阻止棒30のリリース状態から通常状態に回動させる際にも同様に係合フック50は係止軸部80を乗り越えなければならない。これにより、阻止棒30が一旦リリース状態となった際に阻止棒30をリリース状態に強固に保持することができるため、例えば車両が勢い良く阻止棒30に衝突した場合であっても、リリース動作をした阻止棒30がその回動限界まで達した後にその勢いにより跳ね戻ってくることを防止することができる。
【0056】
また、本実施形態では、係合フック50が阻止棒30に対してリリース軸26と平行な回動軸42回りに相対回動可能に設けられているため、阻止棒30がリリース状態へと回動する際に係合フック50が係止軸部80に当接した際に係合フック50が阻止棒30に対して相対回転することで係止軸部80を容易に乗り越えることができる。これによって、阻止棒30がリリース状態となる際に係合フック50を係止軸部80によって円滑に係止することができる。
【0057】
また、阻止棒30をリリース状態から通常状態に復帰させる際には、これに先立って係止軸部80を回動軸42回りに阻止棒30に対して相対回動させることによって、容易に係合フック50と係止軸部80との係合を解除することができる。したがって、阻止棒30のリリース状態における保持の解除を簡易に行うことができる。
【0058】
さらに、係合フック50の回動範囲はストッパ43によって第一回動位置と第二回動位置との間に規制されているため、阻止棒30の回動範囲を必要な範囲に抑えることにより、係合フック50の阻止棒30に対する不用意な回動を防止することができる。
また、阻止棒30がリリース状態に回動する際には、第一回動位置とされた係合フック50が係止軸部80に当接し、その後阻止棒30がリリース状態へとさらに回動する際に係合フック50が第二回動位置に回動することによって係止軸部80を容易に乗り越えることができる。
【0059】
そして、阻止棒30がリリース状態とされている際には、第一回動位置の係合フック50が係止軸部80に係合することで阻止棒30をリリース状態に保持することができる一方、係合フック50を第二回動位置とすることによりこれら係合フック50と係止軸部80との係合を解除することができる。
【0060】
さらに、係合フック50が付勢部材70によって第一回動位置に付勢された構成とすることにより、係合フック50が阻止棒30のリリース状態への回動に伴って係止軸部80に当接した際には、係合フック50が付勢部材70の付勢に抗して第二回動位置に回動することで該係合フック50は係止軸部80を乗り越えることができる。また、阻止棒30がリリース状態とされた際には、付勢部材70によって係合フック50が第一回動位置に付勢されることで、阻止棒30をリリース状態に確実に保持することができる。
【0061】
このように本実施形態では、係合フック50が回動軸42を介して阻止棒30に相対回動可能に設けられ、ストッパ43によって係合フック50の回動範囲を規制し、さらに付勢部材70によって阻止棒30を第一位回動位置へと付勢することで、阻止棒がリリース状態となる際に係合フック50を容易かつ強固に係止軸部80に係合させることができる。
【0062】
そして、操作バー60を操作して係合フック50を任意に回動させるができるため、例えば阻止棒30がリリース状態となった後には操作バー60を操作することで係合フック50と係止軸部80との係合を容易に解除することができる。これにより阻止棒30を円滑に通常状態に復帰させることが可能となる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば実施形態の構成に加えて、保持手段40の操作バー60を復帰回動方向T2に押圧可能な復帰機構を設けてもよい。これにより、例えば阻止棒30のリリース動作後に車線サーバからの信号によって復帰機構が操作バー60を復帰回動方向T2に押圧することで、係合フック50と係止軸部80との係合を解除すると同時に阻止棒30を通常状態まで回動させることができる。
【符号の説明】
【0064】
10…車両通行遮断機(遮断機)、11… 遮断機本体、12…開閉軸、20…支持アーム部、21…アーム、22…上板部、23…下板部、24…中板部、25…リリース軸支持部、26 …リリース軸、27…付勢突起、30…阻止棒、31…棒部、32…基部、33…連結部、40…保持手段、41…回動軸支持部、42…回動軸、43…ストッパ、50…係合フック、51…フック部、52…当接面、53…フック面、54…第一凸部、55…第二凸部、60…操作バー、70…付勢部材、71…ボルト、72…板バネ、80…係止軸部、T1…リリース回動方向、T2…復帰回動方向、T3…第一回動方向、T4…第二回動方向、G…車両進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断機本体に開閉軸を介して支持され、車両の通行を阻止する阻止位置と車両の進行を許容する許可位置との間で開閉制御されるアームと、
該アームにリリース軸を介して支持され、前記開閉軸の径方向に延在する通常状態と該通常状態から車両進行方向前方側に折れ曲がるリリース状態との間で回動可能とされる阻止棒と、
前記阻止棒を前記リリース状態に保持する保持手段とを備え、
該保持手段は、
係止軸部と、
前記阻止棒のリリース状態への回動によって前記係止軸部に対して乗り越え可能に当接し、前記阻止棒のリリース状態へのさらなる回動によって前記係止軸部を乗り越えた後に該係止軸部と係合する係合フックとを備え、
前記係合フックは、前記リリース軸と平行な回動軸を介して前記阻止棒に対して相対回動可能に設けられていることを特徴とする車両通行遮断機。
【請求項2】
前記保持手段は、
前記係合フックの前記阻止棒に対する相対回動範囲を、前記係止軸部に当接可能かつ係合可能とされた第一回動位置と、前記係止軸部に当接不能かつ係合不能とされた第二回動位置との間で規制するストッパをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の車両通行遮断機。
【請求項3】
前記保持手段は、
前記係合フックを前記第二回動位置から前記第一回動位置に向かって付勢する付勢部材をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の車両通行遮断機。
【請求項4】
前記保持手段は、
前記係合フックに一体に設けられ、前記回動軸の径方向外側に向かって延びる操作バーをさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両通行遮断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207366(P2012−207366A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71353(P2011−71353)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】