説明

車両骨格部材の補強構造

【課題】車両骨格部材の内部に配置されるリインフォースメントの形状が制限されることなく、設計の自由度を高めることができる車両骨格部材の補強構造を得る。
【解決手段】前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間にビード部30が挟み込まれるため、このビード部30にフロントピラーリインフォースメント24の上端面24A及びサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aがそれぞれ面接触すれば良いことになる。このため、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の形状における制限が少なくなる。つまり、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の形状において設計の自由度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における車両骨格部材の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントピラーを構成するフロントピラーリインフォースメントとサイドレールリインフォースメントの互いに対向する長手方向の端部同士を交差させて配置することで、フロントピラーの長手方向に沿って衝突荷重が作用した場合、フロントピラーリインフォースメントの移動がサイドレールリインフォースメントによって確実に阻止され、前面衝突時のフロントピラーの反力を向上させた車両骨格部材の補強構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−145369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術による場合、板厚を厚くする等の補強が必要ないため重量増加を抑制しつつ前面衝突時のフロントピラーの反力を向上できるが、フロントピラーリインフォースメント及びサイドレールリインフォースメントの形状が制限されるため、設計の自由度が制限されてしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両骨格部材の内部に配置されるリインフォースメントの形状が制限されることなく、設計の自由度を高めることができる車両骨格部材の補強構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両骨格部材の補強構造は、車両骨格部材の一部を構成し、当該車両骨格部材の長手方向に沿って車両骨格部材の内部に設けられた第1リインフォースメントと、前記車両骨格部材の一部を構成し、当該車両骨格部材の長手方向に沿って設けられ、第1リインフォースメントとの間で長手方向に隙間を空けて配置された第2リインフォースメントと、前記車両骨格部材の一部を構成し、前記第1リインフォースメント及び前記第2リインフォースメントの車両外側に配置されたアウタ部材と、前記車両骨格部材の一部を構成し、前記第1リインフォースメント及び前記第2リインフォースメントの車両内側に配置されたインナ部材と、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられ、前記隙間内に位置し、車両衝突時に前記第1リインフォースメント及び前記第2リインフォースメントで挟み込まれる被挟持部と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の車両骨格部材の補強構造では、第1リインフォースメント及び第2リインフォースメントが、車両骨格部材の内部に車両骨格部材の長手方向に沿って設けられており、第1リインフォースメントの長手方向の端部と第2リインフォースメントの長手方向の端部との間には、隙間が設けられている。また、第1リインフォースメント及び第2リインフォースメントの車両外側にはアウタ部材が設けられており、第1リインフォースメント及び第2リインフォースメントの車両内側にはインナ部材が設けられている。
【0008】
このインナ部材又はアウタ部材には、第1リインフォースメントと第2リインフォースメントとの間に設けられた隙間内に被挟持部が設けられており、この被挟持部は、車両衝突時に第1リインフォースメント及び第2リインフォースメントで挟み込まれる。
【0009】
車両衝突時に第1リインフォースメントへ荷重が伝達されると、この第1リインフォースメントは第2リインフォースメント側へ移動する。このとき、第1リインフォースメントと第2リインフォースメントとの間に設けられた隙間は埋まることとなるが、当該隙間内に位置する被挟持部は、第1リインフォースメント及び第2リインフォースメントによって挟み込まれるため、第1リインフォースメントへ伝達された荷重は、被挟持部を介して第2リインフォースメントへ確実に伝達されることとなる。
【0010】
つまり、車両衝突時において、荷重伝達の安定化を図り、衝撃吸収を確実に行うことができる。また、荷重を伝達する、第1リインフォースメントと第2リインフォースメントの間に被挟持部を挟み込むようにすることで、荷重の伝達のタイミングをより早くすることができ、荷重伝達部材としての効果をより高めることができる。
【0011】
また、ここでは、車両衝突時に第1リインフォースメントの長手方向の端部と第2リインフォースメントの長手方向の端部との間に被挟持部が挟み込まれるため、この被挟持部に第1リインフォースメントの長手方向の端部及び第2リインフォースメントの長手方向の端部がそれぞれ面接触すれば良いことになる。このため、例えば、第1リインフォースメントの長手方向の端部及び第2リインフォースメントの長手方向の端部を互いに交差させて配置する必要はなく、第1リインフォースメント及び第2リインフォースメントの形状における制限が少なくなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両骨格部材の補強構造において、前記車両骨格部材がフロントピラーであり、前記第1リインフォースメントがフロントピラーの上部側に配置されたフロントピラーリインフォースメント、前記第2リインフォースメントがフロントピラーの上部側に接続されたサイドレールリインフォースメントである。
【0013】
請求項2に記載の発明では、車両骨格部材がフロントピラーであり、第1リインフォースメントがフロントピラーの上部側に配置されたフロントピラーリインフォースメント、第2リインフォースメントがフロントピラーの上部側に接続されたサイドレールリインフォースメントである。
【0014】
つまり、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメントの長手方向の端部とサイドレールリインフォースメントの長手方向の端部との間に被挟持部が挟み込まれ、フロントピラーリインフォースメントへ伝達された荷重は、当該被挟持部を介してサイドレールリインフォースメントへ伝達される。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造において、前記被挟持部が前記インナ部材に設けられている。
【0016】
車両衝突時、車両骨格部材において、一般的にインナ部材からアウタ部材へ荷重が伝達されるため、請求項3に記載の発明では、先に荷重が伝達されるインナ部材側に被挟持部を設けることで、第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)の端部と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)の端部との間で被挟持部を確実に挟み込ませるようにする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造において、前記被挟持部が前記インナ部材の少なくとも車両下側に設けられている。
【0018】
第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)の端部と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)の端部との間で、被挟持部が一部でも挟み込まれると、第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)へ伝達された荷重を、当該被挟持部を介して第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)へ伝達させることができる。また、車両衝突時、車両骨格部材において、一般的に車両下側から車両上側へ荷重が伝達される。
【0019】
このことから、請求項4に記載の発明では、先に荷重が伝達されるインナ部材の少なくとも車両下側に被挟持部を設けている。これにより、第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)の端部と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)の端部との間で被挟持部を確実に挟み込ませるようにする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造において、前記被挟持部が、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられたビード部である。
【0021】
請求項5に記載の発明では、インナ部材又はアウタ部材に予めビート部を設けて、当該ビート部を第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)の端部と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)の端部との間に設けられた隙間内に配置する。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造において、前記被挟持部が、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられた平板状の壁部材である。
【0023】
請求項6に記載の発明では、インナ部材又はアウタ部材に予め平板状の壁部材を設けて、当該壁部材を第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)の端部と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)の端部との間に設けられた隙間内に配置する。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造において、前記被挟持部が、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられ、車両衝突時に、インナ部材又はアウタ部材と対面するアウタ部材又はインナ部材へ向かって突出するように変形する変形誘導部である。
【0025】
請求項7に記載の発明では、変形誘導部は、インナ部材(又はアウタ部材)を予め折曲げたり、所定の方向へ折曲げ易くするために肉厚を変えたりなどして、アウタ部材(又はインナ部材)へ向かう方向へ変形し易くしている。これにより、車両衝突時に、変形誘導部が変形し、第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)の端部と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)の端部とで当該変形誘導部が挟み込まれる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、車両骨格部材の内部に配置されるリインフォースメントの形状が制限されることなく、設計の自由度を高めることができる。
【0027】
請求項2に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、フロントピラーリインフォースメント及びサイドレールリインフォースメントの形状が制限されることなく、設計の自由度を高めることができる。
【0028】
請求項3に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、インナ部材は外観に露出しないため、被挟持部の形状が制限されることはなく、設計の自由度を高めることができる。
【0029】
請求項4に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、インナ部材の少なくとも車両下側に被挟持部を設けることで、さらに設計の自由度を高めることができる。
【0030】
請求項5に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、ビード部を第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)との間で確実に挟み込むことができる。
【0031】
請求項6に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、壁部材を第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)との間で確実に挟み込むことができる。
【0032】
請求項7に記載の車両骨格部材の補強構造によれば、車両衝突時、変形誘導部の変形により、第1リインフォースメント(フロントピラーリインフォースメント)と第2リインフォースメント(サイドレールリインフォースメント)との間で当該変形誘導部を挟み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態に係る車両骨格部材の補強構造を示す、車両外側から見た側面図である。
【図2】本実施の形態に係る車両骨格部材の補強構造を模式図に示す分解斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る車両骨格部材の補強構造を模式図に示す斜視図であり、(A)は、車両衝突前の状態を示し、(B)は、車両衝突後の状態を示している。
【図4】本実施の形態に係る車両骨格部材の補強構造を模式図に示す断面図であり、(A)は、車両衝突前の状態を示し、(B)は、車両衝突後の状態を示している。
【図5】(A)は、本実施の形態に係る車両骨格部材の補強構造の要部を示す断面図であり、(B)、(C)は、それぞれ(A)の変形例を示している。
【図6】本実施の形態に係る車両骨格部材の補強構造の変形例を模式図に示す斜視図であり、(A)は、車両衝突前の状態を示し、(B)は、車両衝突後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る車両用骨格部材の補強構造の実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。また、図2〜図4は、それぞれ各部材の断面形状を模式的に示しており、実際には車種に合わせて複雑に形成されている。
【0035】
(車両用骨格部材の補強構造の構成)
【0036】
図1には、車両用骨格部材としてのフロントピラーが配設された車両10の外側から見た側面図が示されている。この図に示されるように、車両10のボディー本体11のフロント側の両側部(図1では車両10の側部の一方のみが図示されている)には、車両後方側へ向かって上り勾配となるように傾斜して延在される、車両用骨格部材としてのフロントピラー12が配設されている。
【0037】
このフロントピラー12の車両後端部には、車両前後方向に沿って延在するルーフサイドレール14が配設されており、ルーフサイドレール14の車両前端側は、車両後方側へ向かって上り勾配となるように傾斜している。また、ルーフサイドレール14の中間部は、車両前後方向に沿ってほぼ水平に配置されており、ルーフサイドレール14の中間部の車両下方側には、車両上下方向に沿って延在するセンタピラー16が配設されている。
【0038】
このセンタピラー16と、フロントピラー12と、ルーフサイドレール14と等で囲まれた部分は、フロントサイドドア開口部18とされ、図示しないフロントドアが開閉可能に設けられている。また、ボディー本体11の両側部のフロントピラー12間には、図示しないウィンドウシールドガラスが配設されている。
【0039】
図2に示されるように、フロントピラー12は、車両外側に配置されるサイメンアウタパネル(アウタ部材)20と、車両内側に配置されるピラーインナパネル(インナ部材)22と、を備えている。サイメンアウタパネル20及びピラーインナパネル22は、フロントピラー12とルーフサイドレール14とで連続して設けられており、サイメンアウタパネル20とピラーインナパネル22とで構成された閉断面部内には、補強用のフロントピラーリインフォースメント(第1リインフォースメント)24及びサイドレールリインフォースメント(第2リインフォースメント)28が、フロントピラー12の長手方向に沿って配置されている。
【0040】
ここで、サイドレールリインフォースメント28は、フロントピラーリインフォースメント24の車両後方側に配置されるが、図3(A)に示されるように、フロントピラー12の上部の長手方向の中間部に位置する、フロントピラーリインフォースメント24の長手方向の上端面24A(以下、単に「フロントピラーリインフォースメント24の上端面24A」という)と、サイドレールリインフォースメント28の長手方向の下端面28A(以下、単に「サイドレールリインフォースメント28の下端面28A」という)との間には、隙間t1が設けられている。
【0041】
また、ピラーインナパネル22には、車幅方向の全域に渡って、頂部が角丸めされた略三角形状の断面を有するビード部30(図4(A)参照)が延設されており、サイメンアウタパネル20側へ向かって突出し、ビード部30の内側には、ビード部30の対面する斜面30A同士で形成された空間31が設けられている。
【0042】
このビード部30がフロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間に設けられた隙間t1内に配置されている。そして、ビード部30の高さは、図4(A)に示されるように、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の表面と略同じ高さとなるように設定されている。
【0043】
(車両用骨格部材の補強構造の作用・効果)
【0044】
図3(A)及び図4(A)に示されるように、本実施形態では、フロントピラー12において、ピラーインナパネル22の車幅方向の全域に渡ってビード部30を延設し、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間に設けられた隙間t1内に配置している。
【0045】
前面衝突時にフロントピラーリインフォースメント24へ荷重が伝達されると、このフロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aは、サイドレールリインフォースメント28の下端面28A側へ移動する。このとき、図3(B)及び図4(B)に示されるように、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aとの間に設けられた隙間t1は埋まることとなるが、当該隙間t1内に位置するビード部30は、空間31が潰れ、ビード部30の斜面30A同士が面接触した状態で、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28によって挟み込まれる。
【0046】
これにより、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24へ伝達された荷重は、ビード部30を介してサイドレールリインフォースメント28へ確実に伝達される。前面衝突は高速衝突であり、衝突現象においては様々なバラツキが発生するため、必ずしも狙いの変形モードとして一致して現象が生じるとは言えないが、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aとでビード部30を挟み込むようにすることで、前面衝突時の荷重伝達の安定化を図り、衝撃吸収を確実に行うことができる。
【0047】
また、荷重を伝達する、フロントピラーリインフォースメント24とサイドレールリインフォースメント28の間にビード部30を挟み込むようにすることで、荷重の伝達のタイミングをより早くすることができ、荷重伝達部材としての効果をより高めることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間にビード部30を挟み込むため、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24A及びサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aが互いにずれて当接し、フロントピラーリインフォースメント24又はサイドレールリインフォースメント28が裂かれるということがない。したがって、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の材料として、ハイテン材のように普通鋼よりも伸びの少ないものを用いることができ、車両の軽量化を図ることができる。
【0049】
また、ここでは、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間にビード部30が挟み込まれるため、このビード部30にフロントピラーリインフォースメント24の上端面24A及びサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aがそれぞれ面接触すれば良いことになる。
【0050】
このため、例えば、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24A及びサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aを互いに交差させて配置する必要はなく、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の形状における制限が少なくなる。つまり、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の形状において、設計の自由度を高めることができる。
【0051】
また、前面衝突時、一般的に、ピラーインナパネル22からサイメンアウタパネル20へ荷重が伝達されるため、ビード部30をピラーインナパネル22側に設け、ビード部30を確実にフロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間で挟み込ませるようにする。
【0052】
このように、衝撃力が先に伝達されるピラーインナパネル22側にビード部30を設けることで、フロントピラーリインフォースメント24とサイドレールリインフォースメント28の間で確実にビード部30を挟み込ませることができる。また、ピラーインナパネル22は外観に露出しないため、ビード部30の形状が制限されることはなく、設計の自由度をさらに高めることができる。
【0053】
<その他の実施形態>
【0054】
(1) 図5(A)に示されるように、本実施形態では、ピラーインナパネル22に、頂部が角丸めされた略三角形状の断面を有するビード部30を設けたが、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24A及びサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aによって部材が挟み込まれるようになっていれば良いため、いわゆるビード形状に限るものではない。
【0055】
例えば、図5(B)に示されるように、ピラーインナパネル22に、頂部を尖鋭にした略三角状の断面を有する屈曲部32を形成しても良い。これによると、ビード部30よりもさらに塑性変形し易くなる。また、これ以外にも、図5(C)に示されるように、ピラーインナパネル22に、サイメンアウタパネル20側へ突出する平板状の壁部材34を設けても良い。この場合、壁部材34は溶接によりピラーインナパネル22へ固定させても良いし、これ以外の方法により、ピラーインナパネル22へ固定させても良い。
【0056】
(2)また、本実施形態では、図4(A)に示されるように、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28の表面と略同じ高さとなるように、ビード部30を予めピラーインナパネル22に形成したが、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24A及びサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aによって被挟持部が挟み込まれるようになっていれば良いため、塑性変形により、当該被挟持部が挟み込まれるようにしても良い。
【0057】
例えば、図6(A)に示されるように、ピラーインナパネル22の車幅方向の下縁側に、ピラーインナパネル22の車幅方向の上縁側へ向かって角状に折れ曲がる座面(変形誘導部)36を設ける。この座面36による折れ曲がりによって、対面する壁部36A(車幅方向に沿って形成)の間には、隙間t2が形成される。
【0058】
前面衝突時、座面36の壁部36A同士を架け渡す上壁部36B(車両前後方向に沿って形成)が折れ曲がり、この隙間t2は埋まることとなるが、壁部36A同士が面接触した状態で、フロントピラーリインフォースメント24及びサイドレールリインフォースメント28によって挟み込まれる。
【0059】
このように、フロントピラーリインフォースメント24とサイドレールリインフォースメント28との間で被挟持部(座面36)が一部でも挟み込まれると、フロントピラーリインフォースメント24へ伝達された荷重をサイドレールリインフォースメント28へ伝達することができる。
【0060】
一方、前面衝突時、一般的に車両下側から車両上側へ荷重が伝達されるため、先に荷重が伝達されるピラーインナパネル22の少なくとも車幅方向の下縁側に座面36を設けることにより、フロントピラーリインフォースメント24とサイドレールリインフォースメント28との間で座面36を挟み込ませることができる。
【0061】
以上のように、ピラーインナパネル22の少なくとも車幅方向の下縁側に座面36を設けることで、ピラーインナパネル22の車幅方向の全域に渡って座面36を設ける場合と比較して、さらに設計の自由度を高めることができる。
【0062】
なお、ここでは、図6(B)に示されるように、前面衝突時に、フロントピラーリインフォースメント24の長手方向の上端側の下にサイドレールリインフォースメント28の長手方向の下端側が潜り込む図となっているが、前面衝突時、ピラーインナパネル22では車両下側から車両上側へ荷重が伝達され、また、ピラーインナパネル22側からサイメンアウタパネル20側へ荷重が伝達されるため、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aは、互いに車両上側へ向かって突出し、互いにクロスした状態で当接する。
【0063】
つまり、フロントピラーリインフォースメント24とサイドレールリインフォースメント28が直接接触して荷重が伝達される。このため、ここでは、フロントピラーリインフォースメント24の上端面24Aとサイドレールリインフォースメント28の下端面28Aの間に設けられた隙間t1を座面36の隙間t2よりも小さくすることが望ましい。
【0064】
また、ここでは、ピラーインナパネル22の車幅方向の下縁側に、ピラーインナパネル22の車幅方向の上縁側へ向かって角状に折れ曲がる座面(変形誘導部)36を設けたが、これ以外にも、例えば、ピラーインナパネル22の肉厚を変えるなどして、ピラーインナパネル22を特定の方向へ折曲げ易くし、前面衝突前の状態では、ピラーインナパネル22にはサイメンアウタパネル20側へ突出する被挟持部は形成されていないが、前面衝突時に、特定の方向へ折曲がって塑性変形することで、フロントピラーリインフォースメント24とサイドレールリインフォースメント28との間に被挟持部が挟み込まれるようにしても良い。
【0065】
なお、以上の実施形態では、車両骨格部材としてフロントピラーを例に挙げて説明したが、他の部位においても適用可能であり、車両後方部材であっても良い。また、前面衝突時、一般的には、ピラーインナパネル22側からサイメンアウタパネル20側へ荷重が伝達されるため、ピラーインナパネル22側に被挟持部を設けた方が効率は良いが、フロントピラーリインフォースメント24からサイドレールリインフォースメント28へ荷重を伝達するという観点からすると、被挟持部がサイメンアウタパネル20側に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0066】
10 車両
11 ボディー本体
12 フロントピラー(車両骨格部材)
14 ルーフサイドレール
20 サイメンアウタパネル(アウタ部材)
22 ピラーインナパネル(インナ部材)
24 フロントピラーリインフォースメント(第1リインフォースメント)
28 サイドレールリインフォースメント(第2リインフォースメント)
30 ビード部(被挟持部)
32 屈曲部(被挟持部)
34 壁部材(被挟持部)
36 座面(変形誘導部、被挟持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両骨格部材の一部を構成し、当該車両骨格部材の長手方向に沿って車両骨格部材の内部に設けられた第1リインフォースメントと、
前記車両骨格部材の一部を構成し、当該車両骨格部材の長手方向に沿って設けられ、第1リインフォースメントとの間で長手方向に隙間を空けて配置された第2リインフォースメントと、
前記車両骨格部材の一部を構成し、前記第1リインフォースメント及び前記第2リインフォースメントの車両外側に配置されたアウタ部材と、
前記車両骨格部材の一部を構成し、前記第1リインフォースメント及び前記第2リインフォースメントの車両内側に配置されたインナ部材と、
前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられ、前記隙間内に位置し、車両衝突時に前記第1リインフォースメント及び前記第2リインフォースメントで挟み込まれる被挟持部と、
を有する車両骨格部材の補強構造。
【請求項2】
前記車両骨格部材がフロントピラーであり、前記第1リインフォースメントがフロントピラーの上部側に配置されたフロントピラーリインフォースメント、前記第2リインフォースメントがフロントピラーの上部側に接続されたサイドレールリインフォースメントである請求項1に記載の車両骨格部材の補強構造。
【請求項3】
前記被挟持部が前記インナ部材に設けられた請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造。
【請求項4】
前記被挟持部が前記インナ部材の少なくとも車両下側に設けられた請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造。
【請求項5】
前記被挟持部が、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられたビード部である請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造。
【請求項6】
前記被挟持部が、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられた平板状の壁部材である請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造。
【請求項7】
前記被挟持部が、前記インナ部材又は前記アウタ部材に設けられ、車両衝突時に、インナ部材又はアウタ部材と対面するアウタ部材又はインナ部材へ向かって突出するように変形する変形誘導部である請求項1又は2に記載の車両骨格部材の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−111081(P2011−111081A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270805(P2009−270805)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】