説明

車両

【課題】利用者によって入力された操作を車輪に伝達することで初動可能な車両において、安全性および操作性を向上させること。
【解決手段】ニュートラル切り替えユニット57の第一当接部57aは、ラチェット本体53が正転駆動状態にある場合の切り替えレバー53cの先端部の軌跡上に形成され、ラチェット本体53の正転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替わるのを案内する。なお、上述の切替動作は、利用者による足踏みペダル56の踏み込み操作のみによって実現する。また、ラチェット本体53がニュートラル状態へ切り替わった後に手押し台車1が障害物に衝突した場合でも、手押し台車1への衝突の反動がラチェット本体53を介して足踏みペダル56に伝達されることがなく、利用者に危害を加えるおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者によって入力された操作を車輪に伝達することで初動可能な運搬用台車や車椅子などの車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、荷物などの重量物を運搬するのに用いられる運搬用台車が知られている。
この種の運搬用台車としては、例えば、前方に主回動輪を、後方に従回動輪を有し、前記主回動輪側に設けた操舵によって移動させるようにした台車において、前記主回動輪の車軸にラチェットを嵌合させて該ラチェットの回動により上記台車を移動させるようにしてなる台車が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、この種の運搬用台車としては、重量物を収納した筐体に取り付けられた車輪と、この車輪と固定的に同軸に取り付けられたラチェットと、一端が前記同軸に可揺動に取り付けられたレバー(以下駆動レバー)と、この駆動レバーの一方揺動によって前記ラチェットに係合するストッパと、前記駆動レバーの他方揺動によって前記ラチェットに係合するディスクブレーキとを備えてなる台車としての移動形重量物装置が挙げられる(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方、車椅子においても、ラチェットを用いて主回動輪の車軸にラチェットを嵌合させて該ラチェットの回動により車椅子を移動させるように構成されたものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
しかし、上述のような台車や車椅子などの車両においては、移動中の車両が縁石などの障害物に衝突した場合など、駆動レバーの操作によって進行可能な方向とは反対の方向に車両が移動した場合に、ラチェットを介して車輪と連動する駆動レバーがそれまでとは反対方向に回動して、駆動レバーを操作する利用者に危害を加えるおそれがあった。
【0006】
そこで、このような事故を未然に防止するために、車両が移動し始めたら、ラチェットの状態を前進または後進からニュートラルに切り替えておくことが考えられる。
なお、一般的にラチェットは、前進、後進、ニュートラルを切り替えるための切替レバーを有し、利用者が切替レバーを手動で操作することで、ラチェットの状態を前進、後進、ニュートラルの何れかに切り替えることができるようになっている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3−85268号公報
【特許文献2】実開昭61−122156号公報
【特許文献3】特開2002−65758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述のようにラチェットの状態を切り替えるためには、利用者が駆動レバーから切替レバーへ持ち替える必要があり面倒であった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、利用者によって入力された操作を車輪に伝達することで初動可能な車両において、安全性および操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る車両は、車両本体と、前記車両本体に正転方向または逆転方向の何れにも回転可能に取り付けられた車輪と、前記車輪を前記正転方向へ回転させるための操作である正転操作または前記車輪を前記逆転方向へ回転させるための操作である逆転操作を入力可能な操作部と、前記操作部へ入力された前記正転操作または前記逆転操作を前記車輪に伝達可能であり、前記操作部に入力された前記正転操作を前記車輪へ伝達して前記車輪を前記正転方向へ回転駆動するとともに前記操作部に入力された前記逆転操作を前記車輪へ伝達せずに前記車輪を前記逆転方向へは回転駆動しない正転駆動状態と、前記操作部に入力された前記正転操作を前記車輪へは伝達せずに前記車輪を前記逆転方向へ回転駆動しないとともに前記操作部に入力された前記逆転操作を前記車輪へ伝達して前記車輪を前記逆転方向へ回転駆動する逆転駆動状態と、前記操作部に入力された前記正転操作および前記逆転操作の何れも前記車輪へは伝達せずに前記車輪を前記正転方向および前記逆転方向の何れにも回転駆動しないニュートラル状態とで切り替え可能に構成された操作伝達部と、を備える車両であって、前記操作伝達部が前記正転駆動状態にある際に第一所定量の前記正転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記正転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替える状態切替部を備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明の車両によれば、操作伝達部が正転駆動状態にある際に第一所定量の正転操作が操作部に入力されるまでは、操作部に入力された正転操作を車輪へ伝達して車輪を正転方向へ回転駆動し、第一所定量の正転操作が操作部に入力された場合に、状態切替部が操作伝達部を正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替える。
【0011】
なお、上述の切替動作は、利用者による操作部への入力のみによって実現し、車両の操作性が高まる。
そして、操作伝達部が正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わった後に移動中の車両が障害物に衝突した場合でも、車両への衝突の反動が操作伝達部を介して操作部に伝達されることがなく、操作部を操作する利用者に危害を加えるおそれがない。
【0012】
したがって、利用者によって入力された操作を車輪に伝達することで初動可能な車両において、安全性および操作性を向上させることができる。
また、上記課題を解決するためになされた請求項2に係る車両は、請求項1に記載の車両において、前記状態切替部は、さらに、前記操作伝達部が前記逆転駆動状態にある際に第二所定量の前記逆転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記逆転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替えることを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明の車両によれば、操作伝達部が逆転駆動状態にある際に第二所定量の逆転操作が操作部に入力されるまでは、操作部に入力された逆転操作を車輪へ伝達して車輪を逆転方向へ回転駆動し、第二所定量の逆転操作が操作部に入力された場合に、状態切替部が操作伝達部を逆転駆動状態からニュートラル状態へ切り替える。
【0014】
なお、上述の切替動作は、利用者による操作部への入力のみによって実現し、車両の操作性が高まる。
そして、操作伝達部が逆転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わった後に移動中の車両が障害物に衝突した場合でも、車両への衝突の反動が操作伝達部を介して操作部に伝達されることがなく、操作部を操作する利用者に危害を加えるおそれがない。
【0015】
したがって、利用者によって入力された操作を車輪に伝達することで初動可能な車両において、安全性および操作性を向上させることができる。
また、上記課題を解決するためになされた請求項3に係る車両は、請求項2に記載の車両において、前記状態切替部は、さらに、前記操作伝達部が前記正転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替わった後に第三所定量の前記正転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記ニュートラル状態から前記逆転駆動状態へ切り替え、一方、前記操作伝達部が前記逆転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替わった後に第四所定量の前記逆転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記ニュートラル状態から前記正転駆動状態へ切り替えることを特徴とする。
【0016】
このように構成された本発明の車両によれば、操作伝達部の正転駆動状態からニュートラル状態を経由しての逆転駆動状態への切替動作および操作伝達部の逆転駆動状態からニュートラル状態を経由しての正転駆動状態への切替動作は、利用者による操作部への入力のみによって実現し、車両の操作性が更に高まる。
【0017】
したがって、利用者によって入力された操作を車輪に伝達することで初動可能な車両において、操作性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】手押し台車1の側面図
【図2】図1のA部拡大図
【図3】車椅子100の側面図
【図4】図3のB部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1は手押し台車1の側面図であり、図2は図1のA部拡大図である。
【0020】
[1.手押し台車1の構成の説明]
図1および図2に示すように、車両としての手押し台車1は、台車ベースフレーム10と、台車ベースフレーム10の下方に設けた各2個の前輪20および後輪30と、手押し部40と、伝達機構50と、を備える。
【0021】
[1.1.台車ベースフレーム10の構成の説明]
台車ベースフレーム10は、長尺状の4本の枠部材を四辺枠に連結することで枠体を形成し、枠体の内部に長尺状の補強部材を連結することで補強するとともに、枠体の上面に板状の天板部材を取り付けた構成を有している。このように構成された台車ベースフレーム10には、天板部材上に積載物Sを載置可能である。なお、台車ベースフレーム10は、特許請求の範囲の台車本体に該当する。
【0022】
台車ベースフレーム10の枠体の一端には、作業者が手押し台車1を移動させる際に押すための手押し部40が取り付けられている。なお、図1においては、台車ベースフレーム10の手押し部40が取り付けられている側を手押し台車1の後側とし、その反対側を手押し台車1の前側とする。
【0023】
[1.2.前輪20および後輪30の構成の説明]
2個の前輪20は、台車ベースフレーム10の前側左右端部それぞれの下方に正転方向または逆転方向の何れにも回転可能に設けられている。また、2個の後輪30は、台車ベースフレーム10の後側左右端部それぞれの下方に正転方向または逆転方向の何れにも回転可能に設けられている。なお、前輪20および後輪30が特許請求の範囲の車輪に相当する。
【0024】
[1.3.伝達機構50の構成の説明]
伝達機構50は、取付ステー51と、駆動軸52と、ラチェット本体53と、クランク部品支持ステー54と、クランク部品55と、足踏みペダル56と、ニュートラル切り替えユニット57と、を有する。
【0025】
なお、ラチェット本体53が特許請求の範囲の操作伝達部に該当し、クランク部品支持ステー54、クランク部品55および足踏みペダル56が特許請求の範囲の操作部に該当し、ニュートラル切り替えユニット57が特許請求の範囲の状態切替部に該当する。
【0026】
取付ステー51は、台車ベースフレーム10の下面に取り付けられ、駆動軸52を前輪20の回転軸および後輪30の回転軸と同方向に回転可能に支持する。
駆動軸52の一方の端部はラチェット本体53の一方の端部のラチェット機構53b(後述)に内挿されている。また、この駆動軸52の他方の端部にはプーリー54が取り付けられており、駆動軸52の回転に伴ってプーリー52aが回転するようになっている。そして、プーリー52aと前輪20の歯車21にはチェーン52bが掛け渡されており、駆動軸52の回転がプーリー52aおよびチェーン52bによって歯車21と連動して回転可能な前輪20に伝達されるようになっている。
【0027】
ラチェット本体53は、棒状のハンドル部53aと、ハンドル部53aの一方の端部に内蔵されるラチェット機構53bと、ハンドル部53aに内蔵されてラチェット機構53bの状態を切り替えるための切り替えレバー53cと、を備える。なお、ラチェット機構53bの構成およびについては公知技術であるためその詳細な説明はここでは省略する。また、切り替えレバー53cは、その中央部がラチェット機構53bに内挿される駆動軸52と平行な回転軸を中心として回転可能になっている。
【0028】
そして、ラチェット本体53は、切り替えレバー53cの両端部のうちのニュートラル切り替えユニット57と対向する側をハンドル部53aの両端部のうちのクランク部品55と連結される側へ向けて操作することにより逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態に切り替わり、一方、切り替えレバー53cの両端部のうちのニュートラル切り替えユニット57と対向する側をハンドル部53aの両端部のうちのラチェット機構53bが内蔵される側へ向けて操作することにより正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態に切り替わるようになっている。
【0029】
なお、正転駆動状態とは、ハンドル部53aの一方の端部を中心とする回動時に、正転方向(前進方向)にはハンドル部53aの回動を伝達して駆動軸52および前輪20を回転駆動するとともに逆転方向(後進方向)にはハンドル部53aの回動を伝達せずに駆動軸52および前輪20を回転駆動しない状態を云う。また、逆転駆動状態とは、ハンドル部53aの一方の端部を中心とする回動時に、正転方向にはハンドル部53aの回動を伝達せずに駆動軸52および前輪20を回転駆動しないとともに逆転方向にはハンドル部53aの回動を伝達して駆動軸52および前輪20を回転駆動する状態を云う。また、ニュートラル状態とは、正転方向および逆転方向の何れの回転方向にもハンドル部53aの回動を伝達せずに駆動軸52および前輪20を回転駆動しない状態、つまりハンドル部53aが空転するニュートラル状態と云う。
【0030】
クランク部品支持ステー54は、台車ベースフレーム10の下面に取り付けられ、駆動軸52と平行に配置される回転軸を中心としてクランク部品55の中央部を揺動可能に支持する。また、クランク部品支持ステー54に揺動可能に支持されるクランク部品55は、一方の端部に足踏みペダル56が取り付けられている。また、クランク部品55の他方の端部付近には、長孔55aが長手方向に沿って形成され、この長孔55aにはラチェット本体53のハンドル部53aの他方の端部がクランク部品55の長手方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような構成によれば、足踏みペダル56を踏み込むことにより、利用者による前輪20を正転方向へ回転させる操作(正転操作)が入力可能であり、一方、足踏みペダル56を持ち上げることにより、利用者による前輪20を逆転方向へ回転させる操作(逆転操作)を入力可能である。
【0031】
ニュートラル切り替えユニット57は、駆動軸52と平行な回転軸を中心として回転可能に取付ステー51に取り付けられている。また、ニュートラル切り替えユニット57は、回転軸を中心として回転させることで、切り替えレバー53cに対する姿勢を鉛直方向および前後方向に調節可能になっており、取付ステー51に対して上下方向に移動可能に取り付けられた2個の鉛直方向位置決め用ボルト58および取付ステー51に対して前後方向に移動可能に取り付けられた1個の前後方向位置決め用ボルト59によってその姿勢を調節可能である。
【0032】
また、ニュートラル切り替えユニット57には、第一当接部57aおよび第二当接部57bが形成されている。このうちの第一当接部57aは、ラチェット本体53が正転駆動状態にある場合の切り替えレバー53cの先端部の軌跡上に形成される。そして、第一当接部57aは、ラチェット本体53の正転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替わるのを案内する。一方、第二当接部57bは、ラチェット本体53が逆転駆動状態にある場合の切り替えレバー53cの先端部の軌跡上に形成される。そして、第二当接部57bは、ラチェット本体53の逆転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0033】
[2.手押し台車1の動作の説明]
まず、ラチェット本体53が正転駆動状態時である場合の手押し台車1の動作について説明する。
【0034】
手押し台車1を前方へ移動させるため、ラチェット本体53が正転駆動状態である場合に、作業者が足踏みペダル56を踏み込むと、クランク部品支持ステー54に揺動可能に支持されるクランク部品55が、足踏みペダル56側が下方に下がるとともにラチェット本体53側が上方に上がるように揺動する。すると、ラチェット本体53が正転方向への回転し、ラチェット本体53の正転方向への回転に伴って駆動軸52が回転する。さらに、駆動軸52の回転がプーリー52aおよびチェーン52bによって歯車21と連動して回転可能な前輪20に伝達されて、前輪20が前進方向に回転する。
【0035】
なお、ここで足踏みペダル56の踏み込みを止めると、ラチェット本体53のラチェット機構53bと駆動軸52とが空転して、駆動軸52および前輪20が回転し続ける状態となる。
【0036】
一方、作業者が足踏みペダル56を更に深く踏み込むと、クランク部品55が更に揺動してラチェット本体53も正転方向へ更に回転し、切り替えレバー53cの先端部がニュートラル切り替えユニット57の第一当接部57aに当接した後に、当接する第一当接部57aによる反力によってハンドル部53aの両端部のうちのラチェット機構53bが内蔵される側へ向けて操作され、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わる。
【0037】
なお、ここで足踏みペダル56の踏み込みを止めると、ラチェット本体53がニュートラル状態であるため、手押し台車1が前後方向の何れにも自由に移動可能な状態となる。なお、このときの足踏みペダル56の踏み込み量が特許請求の範囲の第一所定量に該当する。
【0038】
そして、作業者が足踏みペダル56を更に深く踏み込むと、クランク部品55が更に揺動してラチェット本体53も正転方向へ更に回転し、切り替えレバー53cの先端部が当接する第一当接部57aによる反力によってハンドル部53aの両端部のうちのラチェット機構53bが内蔵される側へ向けて操作され、ラチェット本体53がニュートラル状態から逆転駆動状態へ切り替わる。なお、このときの足踏みペダル56の踏み込み量が特許請求の範囲の第三所定量に該当する。
【0039】
次に、ラチェット本体53が逆転駆動状態時である場合の手押し台車1の動作について説明する。
手押し台車1を後方へ移動させるため、ラチェット本体53が逆転駆動状態である場合に、作業者が足踏みペダル56を上方に引き上げると、クランク部品55が、足踏みペダル56側が上方に上がるとともにラチェット本体53側が下方に下がるように揺動する。すると、ラチェット本体53が逆転方向への回転し、ラチェット本体53の逆転方向への回転に伴って駆動軸52が回転する。さらに、駆動軸52の回転がプーリー52aおよびチェーン52bによって歯車21と連動して回転可能な前輪20に伝達されて、前輪20が後進方向に回転する。
【0040】
なお、ここで足踏みペダル56の引き上げを止めると、ラチェット本体53のラチェット機構53bと駆動軸52とが空転して、駆動軸52および前輪20が回転し続ける状態となる。
【0041】
一方、作業者が足踏みペダル56を更に引き上げると、クランク部品55が更に揺動してラチェット本体53も逆転方向へ更に回転し、切り替えレバー53cの先端部がニュートラル切り替えユニット57の第二当接部57bに当接した後に、当接する第二当接部57bによる反力によってハンドル部53aの両端部のうちのクランク部品55と連結される側へ向けて操作され、ラチェット本体53が逆転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わる。
【0042】
なお、ここで足踏みペダル56の引き上げを止めると、ラチェット本体53がニュートラル状態であるため、手押し台車1が前後方向の何れにも自由に移動可能な状態となる。なお、このときの足踏みペダル56の引き上げ量が特許請求の範囲の第二所定量に該当する。
【0043】
そして、作業者が足踏みペダル56を更に引き上げると、クランク部品55が更に揺動してラチェット本体53も逆転方向へ更に回転し、切り替えレバー53cの先端部が、当接する第二当接部57bによる反力によってハンドル部53aの両端部のうちのクランク部品55と連結される側へ向けて操作され、ラチェット本体53がニュートラル状態から正転駆動状態へ切り替わる。なお、このときの足踏みペダル56の引き上げ量が特許請求の範囲の第四所定量に該当する。
【0044】
[3.第一実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の手押し台車1によれば、ラチェット本体53が正転駆動状態にある際に足踏みペダル56が第一所定量踏み込まれるまでは、利用者による足踏みペダル56への踏み込み操作を前輪20へ伝達して前輪20を正転方向へ回転駆動し、足踏みペダル56が第一所定量踏み込まれた場合に、ニュートラル切り替えユニット57の第一当接部57aが、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わるのを案内する。なお、上述の切替動作は、利用者による足踏みペダル56への踏み込み操作のみによって実現する。
【0045】
そして、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わった後に移動中の手押し台車1が障害物に衝突した場合でも、手押し台車1への衝突の反動がラチェット本体53を介して足踏みペダル56に伝達されることがなく、足踏みペダル56を操作する利用者に危害を加えるおそれがない。
【0046】
したがって、利用者によって入力された操作を前輪20に伝達することで初動可能な手押し台車1において、安全性および操作性を向上させることができる。
(2)また、本実施形態の手押し台車1によれば、ラチェット本体53が逆転駆動状態にある際に足踏みペダル56が第二所定量引き上げられるまでは、利用者による足踏みペダル56への引き上げ操作を前輪20へ伝達して前輪20を逆転方向へ回転駆動し、足踏みペダル56が第二所定量引き上げられた場合に、ニュートラル切り替えユニット57の第二当接部57bが、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が逆転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わるのを案内する。なお、上述の切替動作は、利用者による足踏みペダル56への引き上げ操作のみによって実現する。
【0047】
そして、ラチェット本体53が逆転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わった後に移動中の手押し台車1が障害物に衝突した場合でも、手押し台車1への衝突の反動がラチェット本体53を介して足踏みペダル56に伝達されることがなく、足踏みペダル56を操作する利用者に危害を加えるおそれがない。
【0048】
したがって、利用者によって入力された操作を前輪20に伝達することで初動可能な手押し台車1において、安全性および操作性を向上させることができる。
(3)また、本実施形態の手押し台車1によれば、作業者が足踏みペダル56を踏み込むことでラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わった後に、作業者が足踏みペダル56を更に深く踏み込むと、クランク部品55が更に揺動してラチェット本体53も正転方向へ更に回転し、ニュートラル切り替えユニット57の第一当接部57aが、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53がニュートラル状態から逆転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0049】
このようにラチェット本体53の正転駆動状態からニュートラル状態を経由しての逆転駆動状態への切替動作は、利用者による足踏みペダル56への踏み込み操作のみによって実現する。
【0050】
したがって、利用者によって入力された操作を前輪20に伝達することで初動可能な手押し台車1において、操作性を更に向上させることができる。
(4)また、本実施形態の手押し台車1によれば、作業者が足踏みペダル56を引き上げることでラチェット本体53が逆転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わった後に、作業者が足踏みペダル56を更に引き上げると、クランク部品55が更に揺動してラチェット本体53も逆転方向へ更に回転し、ニュートラル切り替えユニット57の第二当接部57bが、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53がニュートラル状態から正転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0051】
このようにラチェット本体53の逆転駆動状態からニュートラル状態を経由しての正転駆動状態への切替動作は、利用者による足踏みペダル56への引き上げ操作のみによって実現する。
【0052】
したがって、利用者によって入力された操作を前輪20に伝達することで初動可能な手押し台車1において、操作性を更に向上させることができる。
[4.他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0053】
(1)足踏みペダル56の代わりに、作業者が把持して操作可能な操作レバーを、クランク部品支持ステー54に揺動可能に支持されるクランク部品55の一方の端部に取り付けてもよい。この場合、操作レバーを前後方向に揺動可能にしてもよいし、操作レバーを左右方向に揺動可能にしてもよい。
【0054】
なお、操作レバーを左右方向に揺動可能にするには、操作レバーが取り付けられたクランク部品55を揺動可能に支持する回転軸を前後方向に沿って配置するとともに、ラチェット本体53に内挿される駆動軸52を前後方向に沿って配置し、駆動軸52の回転を歯車機構によって前輪20の回転軸に伝達するように構成すればよい。
【0055】
(2)また、ラチェット本体53を正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替える機能のみを有するようにしてもよい。具体的には、当接部をラチェット本体53が正転駆動状態にある場合の切り替えレバー53cの先端部の軌跡上に形成する。この当接部は、ラチェット本体53の正転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わるのを案内する。なお、当接部を前後方向に移動可能に構成してもよい。
【0056】
(3)また、本発明を車椅子に適用してもよい。
(3−1)まず、ラチェット本体53が、正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替わる機能と、逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態へと切り替わる機能とを有するように構成してもよい。
【0057】
具体的には、車椅子本体に回転可能に取り付けられた車輪の回転軸をラチェット本体53に内挿させ、ニュートラル切り替えユニット57を、第一当接部57aが、ラチェット本体53が正転駆動状態にある場合の切り替えレバー53cの先端部の軌跡上に配置されるとともに、第二当接部57bが、ラチェット本体53が逆転駆動状態にある場合の切り替えレバー53cの先端部の軌跡上に配置されるようにする。
【0058】
ラチェット本体53が正転駆動状態である場合にハンドル部53aを下方に押し下げると、ラチェット本体53が正転方向へ回転し、ニュートラル切り替えユニット57の第一当接部57aが、ラチェット本体53の正転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0059】
一方、ラチェット本体53が逆転駆動状態である場合にハンドル部53aを上方に引き上げると、ラチェット本体53が逆転方向へ回転し、ニュートラル切り替えユニット57の第二当接部57bが、ラチェット本体53の逆転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー53cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体53が逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0060】
なお、車椅子が特許請求の範囲の車両に該当し、車椅子本体が特許請求の範囲の車両本体に該当し、ラチェット本体53のハンドル部53aが特許請求の範囲の操作部に該当し、ラチェット本体53が特許請求の範囲の操作伝達部に該当し、ニュートラル切り替えユニット57が特許請求の範囲の状態切替部に該当する。
【0061】
(3−2)また、図3および図4に例示するように、ラチェット本体153が、正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替わる機能を有するように構成してもよい。
【0062】
[1.車椅子100の構成の説明]
図3および図4に示すように、車両としての車椅子100は、車椅子本体110と、車椅子本体110の両側部それぞれに設けた2個の主輪120と、車椅子本体110の前部左右端それぞれに設けた2個の前輪130と、手押し部140と、伝達機構150と、を備える。
【0063】
[1.1.車椅子本体110の構成の説明]
車椅子本体110は、搭乗者の臀部を下側から支持する座部111と、搭乗者の背中を後側から支持する背凭れ部112と、搭乗者の脚部を載せるための載置部113と、を有し、座部111と背凭れ部112と載置部113とを左右の枠部材114で連結した構造を有している。なお、車椅子本体110は、特許請求の範囲の台車本体に該当する。
【0064】
また、車椅子本体110の枠部材114の後端には、補助者が車椅子100を移動させる際に押すための手押し部140が取り付けられている。なお、図3においては、車椅子本体110の手押し部140が取り付けられている側を車椅子100の後側とし、その反対側を車椅子100の前側とする。
【0065】
[1.2.主輪120および前輪130の構成の説明]
2個の主輪120は、車椅子本体110の左右の枠部材114それぞれに正転方向または逆転方向の何れにも回転可能に設けられている。また、2個の前輪130は、車椅子本体110の左右の枠部材114の前部に正転方向または逆転方向の何れにも回転可能に設けられている。なお、主輪120および前輪130が特許請求の範囲の車輪に相当する。
【0066】
[1.3.伝達機構150の構成の説明]
伝達機構150は、駆動軸152と、ラチェット本体153と、駆動レバー156と、ニュートラル切り替えユニット157と、を有する。
【0067】
なお、ラチェット本体153が特許請求の範囲の操作伝達部に該当し、駆動レバー156が特許請求の範囲の操作部に該当し、ニュートラル切り替えユニット157が特許請求の範囲の状態切替部に該当する。
【0068】
駆動軸152は、車椅子本体110の左右の枠部材114に、主輪120の回転軸120aおよび前輪130の回転軸と同方向に回転可能に支持される。駆動軸152の一方の端部はラチェット本体153の一方の端部のラチェット機構153b(後述)に内挿されている。また、この駆動軸152の他方の端部には歯車152aが取り付けられており、駆動軸152の回転に伴って歯車152aが回転するようになっている。そして、歯車152aと主輪120の歯車121にはチェーン152bが掛け渡されており、駆動軸152の回転が歯車152aおよびチェーン152bによって歯車121と連動して回転可能な主輪120に伝達されるようになっている。
【0069】
ラチェット本体153は、棒状のハンドル部153aと、ハンドル部153aの一方の端部に内蔵されるラチェット機構153bと、ハンドル部153aに内蔵されてラチェット機構153bの状態を切り替えるための切り替えレバー153cと、を備える。なお、ラチェット機構153bの構成およびについては公知技術であるためその詳細な説明はここでは省略する。また、切り替えレバー153cは、その中央部がラチェット機構153bに内挿される駆動軸152と平行な回転軸を中心として回転可能になっている。
【0070】
また、ハンドル部153aの先端には棒状の駆動レバー156が取り付けられている。
そして、ラチェット本体153は、切り替えレバー153cの両端部のうちのニュートラル切り替えユニット157と対向する側をハンドル部153aの両端部のうちの駆動レバー156と連結される側へ向けて操作することにより正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態に切り替わり、一方、切り替えレバー153cの両端部のうちのニュートラル切り替えユニット157と対向する側をハンドル部153aの両端部のうちのラチェット機構153bが内蔵される側へ向けて操作することにより逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態に切り替わるようになっている。
【0071】
なお、正転駆動状態とは、ハンドル部153aの一方の端部を中心とする回動時に、正転方向(前進方向)にはハンドル部153aの回動を伝達して駆動軸152および主輪120を回転駆動するとともに逆転方向(後進方向)にはハンドル部153aの回動を伝達せずに駆動軸152および主輪120を回転駆動しない状態を云う。また、逆転駆動状態とは、ハンドル部153aの一方の端部を中心とする回動時に、正転方向にはハンドル部153aの回動を伝達せずに駆動軸152および主輪120を回転駆動しないとともに逆転方向にはハンドル部153aの回動を伝達して駆動軸152および主輪120を回転駆動する状態を云う。また、ニュートラル状態とは、正転方向および逆転方向の何れの回転方向にもハンドル部153aの回動を伝達せずに駆動軸152および主輪120を回転駆動しない状態、つまりハンドル部153aが空転するニュートラル状態と云う。
【0072】
このような構成によれば、駆動レバー156を持ち上げることにより、利用者による主輪120を正転方向へ回転させる操作(正転操作)が入力可能であり、一方、駆動レバー156を押し下げることにより、利用者による主輪120を逆転方向へ回転させる操作(逆転操作)を入力可能である。
【0073】
ニュートラル切り替えユニット157は、車椅子本体110の枠部材114から上方に延出する取付部材114aの先端114bに取り付けられ、切り替えレバー153cを正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替える機能を有する。具体的には、ニュートラル切り替えユニット157は当接部157aを有し、この当接部157aは、ラチェット本体153が正転駆動状態にある場合の切り替えレバー153cの先端部の軌跡上に形成され、切り替えレバー153cに対する姿勢を接近する接近方向および離間する離間方向に調節可能になっている。具体的には、当接部157aは、取付部材114aの先端114bに対して接近方向および離間方向に移動可能に取り付けられた1個の位置決め用ボルト158によって位置決め可能である。そして、当接部157aは、ラチェット本体153の正転方向への回転に伴って、当接する切り替えレバー153cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体153が正転駆動状態からニュートラル状態を経由して逆転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0074】
なお、逆転駆動状態にある切り替えレバー153cを手動で回動させると、ラチェット本体153が逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態へと切り替わる。
【0075】
[2.車椅子100の動作の説明]
まず、ラチェット本体153が正転駆動状態時である場合の車椅子100の動作について説明する。
【0076】
車椅子100を前方へ移動させるため、ラチェット本体153が正転駆動状態である場合に、補助者が駆動レバー156の先端を持ち上げると、ラチェット本体153が、その先端が上方に上がるように揺動する。すると、ラチェット本体153が正転方向への回転し、ラチェット本体153の正転方向への回転に伴って駆動軸152が回転する。さらに、駆動軸152の回転が歯車152aおよびチェーン152bによって歯車121と連動して回転可能な主輪120に伝達されて、主輪120が前進方向に回転する。
【0077】
なお、ここで駆動レバー156の操作を止めると、ラチェット本体153のラチェット機構153bと駆動軸152とが空転して、駆動軸152および主輪120が回転し続ける状態となる。
【0078】
一方、補助者が駆動レバー156の先端を更に持ち上げると、ラチェット本体153も正転方向へ更に回転し、切り替えレバー153cの先端部が、ニュートラル切り替えユニット157の当接部157aに当接した後に、当接する当接部157aによる反力によってハンドル部153aの両端部のうちの駆動レバー156と接続される側へ向けて操作され、ラチェット本体153が正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わる。
【0079】
なお、ここで駆動レバー156の操作を止めると、ラチェット本体153がニュートラル状態であるため、車椅子100が前後方向の何れにも自由に移動可能な状態となる。なお、このときの駆動レバー156の操作量が特許請求の範囲の第一所定量に該当する。
【0080】
そして、補助者が駆動レバー156の先端を更に持ち上げると、ラチェット本体153も正転方向へ更に回転し、切り替えレバー153cの先端部が、当接する当接部157aによる反力によってハンドル部153aの両端部のうちの駆動レバー156と接続される側へ向けて操作され、ラチェット本体153がニュートラル状態から逆転駆動状態へ切り替わる。なお、このときの駆動レバー156の操作量が特許請求の範囲の第三所定量に該当する。
【0081】
次に、ラチェット本体153が逆転駆動状態時である場合の車椅子100の動作について説明する。
車椅子100を後方へ移動させるため、ラチェット本体153が逆転駆動状態である場合に、補助者が駆動レバー156の先端を押し下げると、ラチェット本体153が逆転方向への回転し、ラチェット本体153の逆転方向への回転に伴って駆動軸152が回転する。さらに、駆動軸152の回転が歯車152aおよびチェーン152bによって歯車121と連動して回転可能な主輪120に伝達されて、主輪120が後進方向に回転する。
【0082】
ここで駆動レバー156の操作を止めると、ラチェット本体153のラチェット機構153bと駆動軸152とが空転して、駆動軸152および主輪120が回転し続ける状態となる。
【0083】
なお、車椅子100を再び前方へ移動させるためには、逆転駆動状態にある切り替えレバー153cを手動で回動させ、ラチェット本体153を逆転駆動状態からニュートラル状態を経由して正転駆動状態へと切り替えればよい。
【0084】
このように構成すれば、ラチェット本体153が正転駆動状態にある際に駆動レバー156が第一所定量操作されるまでは、補助者による駆動レバー156の操作を主輪120へ伝達して主輪120を正転方向へ回転駆動し、駆動レバー156が第一所定量操作された場合に、ニュートラル切り替えユニット157の当接部157aが、当接する切り替えレバー153cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体153が正転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わるのを案内する。なお、上述の切替動作は、補助者による駆動レバー156の操作のみによって実現する。
【0085】
そして、ラチェット本体153が正転駆動状態からニュートラル状態へ切り替わった後に移動中の車椅子100が障害物に衝突した場合でも、車椅子100への衝突の反動がラチェット本体153を介して駆動レバー156に伝達されることがなく、駆動レバー156を操作する補助者に危害を加えるおそれがない。
【0086】
したがって、補助者による駆動レバー156の操作を主輪120に伝達することで初動可能な車椅子100において、安全性および操作性を向上させることができる。
また、補助者による駆動レバー156の操作でラチェット本体153が正転駆動状態からニュートラル状態へと切り替わった後に、補助者が駆動レバー156を更に操作すると、ラチェット本体153も正転方向へ更に回転し、ニュートラル切り替えユニット157の当接部157aが、当接する切り替えレバー153cの先端部を押圧することで操作し、ラチェット本体153がニュートラル状態から逆転駆動状態へと切り替わるのを案内する。
【0087】
このようにラチェット本体153の正転駆動状態からニュートラル状態を経由しての逆転駆動状態への切替動作は、補助者による駆動レバー156の操作のみによって実現する。
【0088】
したがって、補助者による駆動レバー156の操作を主輪120に伝達することで初動可能な車椅子100において、操作性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1…手押し台車、10…台車ベースフレーム、20…前輪、21…歯車、30…後輪、40…手押し部、50…伝達機構、51…取付ステー、52…駆動軸、52a…プーリー、52b…チェーン、53…ラチェット本体、53a…ハンドル部、53b…ラチェット機構、53c…切り替えレバー、54…クランク部品支持ステー、54…プーリー、55…クランク部品、55a…長孔、56…足踏みペダル、57…ニュートラル切り替えユニット、57a…第一当接部、57b…第二当接部、58…鉛直方向位置決め用ボルト、59…前後方向位置決め用ボルト、100…車椅子、110…車椅子本体、111…座部、112…背凭れ部、113…載置部、114…枠部材、114a…取付部材、114b…取付部材の先端、120…主輪、120a…回転軸、121…歯車、130…前輪、140…手押し部、150…伝達機構、152…駆動軸、152a…歯車、152b…チェーン、153…ラチェット本体、153a…ハンドル部、153b…ラチェット機構、153c…切り替えレバー、156…駆動レバー、157…ニュートラル切り替えユニット、157a…当接部、158…位置決め用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体に正転方向または逆転方向の何れにも回転可能に取り付けられた車輪と、
利用者による前記車輪を前記正転方向へ回転させるための操作である正転操作または利用者による前記車輪を前記逆転方向へ回転させるための操作である逆転操作を入力可能な操作部と、
前記操作部へ入力された前記正転操作または前記逆転操作を前記車輪に伝達可能であり、前記操作部に入力された前記正転操作を前記車輪へ伝達して前記車輪を前記正転方向へ回転駆動するとともに前記操作部に入力された前記逆転操作を前記車輪へ伝達せずに前記車輪を前記逆転方向へは回転駆動しない正転駆動状態と、前記操作部に入力された前記正転操作を前記車輪へは伝達せずに前記車輪を前記逆転方向へ回転駆動しないとともに前記操作部に入力された前記逆転操作を前記車輪へ伝達して前記車輪を前記逆転方向へ回転駆動する逆転駆動状態と、前記操作部に入力された前記正転操作および前記逆転操作の何れも前記車輪へは伝達せずに前記車輪を前記正転方向および前記逆転方向の何れにも回転駆動しないニュートラル状態とで切り替え可能に構成された操作伝達部と、
を備える車両であって、
前記操作伝達部が前記正転駆動状態にある際に第一所定量の前記正転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記正転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替える状態切替部を備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記状態切替部は、さらに、前記操作伝達部が前記逆転駆動状態にある際に第二所定量の前記逆転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記逆転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替えることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記状態切替部は、さらに、前記操作伝達部が前記正転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替わった後に第三所定量の前記正転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記ニュートラル状態から前記逆転駆動状態へ切り替え、一方、前記操作伝達部が前記逆転駆動状態から前記ニュートラル状態へ切り替わった後に第四所定量の前記逆転操作が前記操作部に入力された場合に、前記操作伝達部を前記ニュートラル状態から前記正転駆動状態へ切り替えること
を特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−105229(P2011−105229A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264232(P2009−264232)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(309016533)株式会社オクト工業 (1)
【Fターム(参考)】