説明

車体前部構造

【課題】カウル部材の一部がサスペンションタワーに対する車両上下方向上側(真上)に位置される場合であっても、サスペンションタワーの剛性を確保する。
【解決手段】車体前部構造10において、カウル部材18は、ダッシュパネル24と結合されたカウルインナ30と、カウルインナ30と結合されたカウルアウタ32と、カウルインナ30及びカウルアウタ32における車両幅方向両側に位置されると共に、サスペンションタワー14、カウルインナ30及びカウルアウタ32と結合されたカウルサイドブラケット34と、ダッシュパネル24における車両幅方向両側に位置されると共に、サスペンションタワー14及びダッシュパネル24と結合されたブレース36と、サスペンションタワー14に対する車両上下方向上側(真上)に位置されると共に、サスペンションタワー14と結合されたカウルフロント38とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に係り、特にカウル部材をサスペンションタワーと結合することによってサスペンションタワーの剛性を確保するようにした車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車体前部構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に記載の例において、左右のサスペンションタワーは、カウルフロントによって連結されている。また、サスペンションタワーは、タワー取付部材と、第1の連結部材と、ボディー取付部材とが結合されることによって、カウル本体と車両前後方向と結合されている。さらに、このサスペンションタワーは、タワー取付部材と、第2の連結部材と、カウルインナの下端縁とが結合されることによって、カウル本体と車両幅方向にも結合されている。
【特許文献1】特開2006−290185号公報
【特許文献2】特開2002−137762号公報
【特許文献3】特開平10−316026号公報
【特許文献4】特開平11−115810号公報
【特許文献5】特開平8−324456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、この車体前部構造が例えば小型車に適用される等により、カウルフロントがサスペンションタワーに対する車両上下方向上側(真上)に位置される場合、タワー取付部材と、第1の連結部材及び第2の連結部材との連結が困難となる。そして、この場合には、サスペンションタワーの剛性を確保できない虞がある。
【0004】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであって、カウル部材の一部がサスペンションタワーに対する車両上下方向上側(真上)に位置される場合であっても、サスペンションタワーの剛性を確保することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体前部構造は、車体前部における車両幅方向両側に配置され、上壁部にサスペンションプレートが結合されたサスペンションタワーと、前記サスペンションタワーに対する車両前後方向後側に配置されると共に、車両幅方向に延在されたダッシュパネル部材と、全体として車両幅方向に延在されると共に、一部が前記サスペンションタワーに対する車両上下方向上側に位置されて、前記サスペンションタワー及び前記ダッシュパネル部材と結合され、前記サスペンションタワーを車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向に支持するカウル部材と、を備えている。
【0006】
この請求項1に記載の車体前部構造によれば、カウル部材の一部はサスペンションタワーに対する車両上下方向上側(真上)に位置されているが、このカウル部材は、サスペンションタワー及びダッシュパネル部材と結合され、サスペンションタワーを車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向に支持している。
【0007】
従って、カウル部材の一部がサスペンションタワーに対する車両上下方向上側(真上)に位置される場合であっても、サスペンションタワーにおける車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向の剛性を確保することができる。
【0008】
請求項2に記載の車体前部構造は、請求項1に記載の車体前部構造において、前記カウル部材が、前記ダッシュパネル部材に対する車両上下方向上側に配置されると共に、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて、車両上下方向下側が前記ダッシュパネル部材と結合されたカウルインナと、前記カウルインナに対する車両上下方向上側に配置されると共に、車両前後方向及び車両幅方向に延在されて、車両前後方向後側が前記カウルインナと結合されたカウルアウタと、前記カウルインナ及び前記カウルアウタにおける車両幅方向両側に位置されると共に、車両前後方向及び車両上下方向に延在されて、車両前後方向前側が前記サスペンションタワーと結合され、車両前後方向後側が前記カウルインナと結合され、車両上下方向上側が前記カウルアウタと結合されたカウルサイドブラケットと、前記ダッシュパネル部材における車両幅方向両側に位置されると共に、車両前後方向に延在されて、車両前後方向前側が前記サスペンションタワーと結合され、車両前後方向後側が前記ダッシュパネル部材と結合されたブレースと、前記サスペンションタワーに対する車両上下方向上側に位置されると共に、車両幅方向に延在されて車両幅方向両側が前記サスペンションタワーと結合されたカウルフロントと、を有する構成とされている。
【0009】
この請求項2に記載の車体前部構造によれば、カウルフロントがサスペンションタワーと結合されることにより、サスペンションタワーが車両幅方向に支持されている。また、ブレースがサスペンションタワーと結合されることにより、サスペンションタワーが車両前後方向に支持されている。さらに、カウルサイドブラケットがサスペンションタワーと結合されることにより、サスペンションタワーが車両上下方向に支持されている。これにより、サスペンションタワーにおける車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向の剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したように、本発明によれば、カウル部材の一部がサスペンションタワーに対する車両上下方向上側(真上)に位置される場合であっても、サスペンションタワーの剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の車体前部構造の一実施形態について説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係る車体前部構造10が適用された車体12の前部が要部拡大斜視図にて示されており、図2には、図1の車体12の前部においてサスペンションタワー14からカウルフロント38が取り外しされた状態が示されている。また、図3〜図5は、図1の3−3線断面図、図1の4−4線断面図、図1の5−5線断面図である。
【0013】
なお、これらの図において示される矢印FR、矢印UP、矢印RHは、この車体前部構造10が適用された車両における車両前後方向前側、車両上下方向上側、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。
【0014】
本発明の一実施形態に係る車体前部構造10は、例えば、フロントピラーが通常の車両に対して車両前後方向前側に位置された小型の車両に好適に適用されるものであり、サスペンションタワー14と、ダッシュパネル部材16と、カウル部材18とを備えている。
【0015】
なお、車体前部構造10は、左右対称な構成とされており、図1,図2においては、この車体前部構造10の右側のみが示されている。
【0016】
サスペンションタワー14は、図1,図2に示されるように、車体12の前部における車両幅方向両側に配置されており、その上壁部14Aには、サスペンションプレート20が配置されている。
【0017】
サスペンションプレート20は、図2に示されるように、概略円板状のプレート本体部20Aと、このプレート本体部20Aから車両上下方向上側に突出して形成された台座部20Bと、プレート本体部20Aから車両上下方向後側に延出された延出部20Cとを有して構成されている。
【0018】
プレート本体部20Aは、サスペンションタワー14の上壁部14A及び図示しないサスペンションの上部と締結具22により共締めされている。なお、このプレート本体部20Aは、サスペンションタワー14の上壁部14Aを介さずにサスペンションの上部と直接結合されていても良い。
【0019】
ダッシュパネル部材16は、サスペンションタワー14に対する車両前後方向後側に配置されており、ダッシュパネル24及びダッシュフロント26により構成されている。
【0020】
ダッシュパネル24は、車両幅方向及び車両上下方向に延在されており、その車両幅方向両側部は、図示しない左右一対のフロントピラーと結合されている。
【0021】
ダッシュフロント26は、車両幅方向及び車両前後方向に延在されており、図4に示されるように、その車両前後方向前側部26Aは、後述するカウルフロント38における車両前後方向後側部38Bと締結具28により結合されている。
【0022】
また、図3〜図5に示されるように、このダッシュフロント26における車両前後方向中間部26Bは、後述するブレース36における車両前後方向中間部36Cと溶接されることにより結合されており、このダッシュフロント26における車両前後方向後側部26Cは、後述するカウルインナ30における車両上下方向中間部30Cと溶接されることにより結合されている。
【0023】
カウル部材18は、カウルインナ30と、カウルアウタ32と、カウルサイドブラケット34と、ブレース36と、カウルフロント38とを有して構成されている。
【0024】
カウルインナ30は、ダッシュパネル部材16に対する車両上下方向上側に配置されると共に、車両上下方向及び車両幅方向に延在されている。そして、図3〜図5に示されるように、このカウルインナ30における車両上下方向下側部30Aは、ダッシュパネル24における車両上下方向上側部24Aと溶接されることにより結合されている。
【0025】
カウルアウタ32は、カウルインナ30に対する車両上下方向上側に配置されると共に、車両前後方向及び車両幅方向に延在されている。図3に示されるように、このカウルアウタ32における車両幅方向外側の車両前後方向後側部32Aは、後述するカウルサイドブラケット34の車両前後方向後側部34B、及び、カウルインナ30における車両上下方向上側部30Bと溶接されることにより結合されている。
【0026】
また、図4,図5に示されるように、このカウルアウタ32における上述の車両前後方向後側部32A(図3参照)よりも車両幅方向内側の車両前後方向後側部32Bは、カウルインナ30における車両上下方向上側部30Bと直接結合されている。
【0027】
図1,図2に示されるように、カウルサイドブラケット34は、カウルインナ30及びカウルアウタ32における車両幅方向両側に位置されると共に、車両前後方向及び車両上下方向に延在されている。図3に示されるように、このカウルサイドブラケット34における車両前後方向前側部34Aは、後述するブレース36における車両前後方向前側部36A、及び、サスペンションタワー14の上壁部14Aと溶接されることにより結合されている。
【0028】
また、このカウルサイドブラケット34における車両前後方向後側部34Bは、カウルインナ30における車両上下方向上側部30Bと溶接されることにより結合され、このカウルサイドブラケット34における車両上下方向上側部34Cは、カウルアウタ32と車両前後方向に亘って溶接されることにより結合されている。
【0029】
さらに、カウルサイドブラケット34の車両前後方向中間部34Dは、サスペンションプレート20の台座部20B及び後述するカウルフロント38における車両前後方向後側部38Bと締結具40により結合されている。
【0030】
ブレース36は、ダッシュパネル部材16における車両幅方向両側に位置されると共に、車両前後方向に延在されている。図3〜図5に示されるように、このブレース36における車両前後方向前側部36Aは、サスペンションタワー14の上壁部14Aと溶接されることにより結合され、このブレース36における車両前後方向後側部36Bは、カウルインナ30の車両上下方向下側部30A、及び、ダッシュパネル24における車両上下方向上側部24Aと溶接されることにより結合されている。
【0031】
また、図4に示されるように、ブレース36における上述の車両前後方向中間部36C(図3参照)よりも車両前後方向前側の車両前後方向中間部36Dは、サスペンションプレート20の延出部20Cと締結具42により結合されている。
【0032】
カウルフロント38は、サスペンションタワー14に対する車両上下方向上側(真上)に位置されると共に、車両幅方向に延在されている。図2,図5に示されるように、このカウルフロント38における車両幅方向両側部38Aには、連結パネル44が結合されており、この連結パネル44は、サスペンションプレート20のプレート本体部20Aに締結具46により結合されている。
【0033】
つまり、このカウルフロント38における車両幅方向両側部38Aは、連結パネル44、サスペンションプレート20、及び、サスペンションタワー14の上壁部14Aと結合されている。
【0034】
なお、このカウルフロント38は、上述のダッシュフロント26と一体に構成されていても良い。
【0035】
次に、本発明の一実施形態に係る車体前部構造10の作用及び効果について説明する。
【0036】
本発明の一実施形態では、車体前部構造10が、例えばフロントピラーが通常の車両に対して車両前後方向前側に位置された小型の車両に適用される等により、カウル部材18の一部(カウルフロント38)が、サスペンションタワー14に対する車両上下方向上側(真上)に位置されている。
【0037】
ここで、本発明の一実施形態に係る車体前部構造10では、カウルフロント38がサスペンションプレート20及びサスペンションタワー14の上壁部14Aと結合されることにより、サスペンションタワー14が車両幅方向に支持されている。また、ブレース36における車両前後方向前側部36Aがサスペンションタワー14の上壁部14Aと結合されることにより、サスペンションタワー14が車両前後方向に支持されている。さらに、カウルサイドブラケット34における車両前後方向前側部34Aがブレース36における車両前後方向前側部36A及びサスペンションタワー14の上壁部14Aと結合されることにより、サスペンションタワー14が車両上下方向に支持されている。
【0038】
従って、カウル部材18の一部(カウルフロント38)がサスペンションタワー14に対する車両上下方向上側(真上)に位置される場合であっても、サスペンションタワー14における車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向の剛性を簡易な構成により確保することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体前部構造が適用された車体の前部を示す要部拡大斜視図である。
【図2】図1の車体の前部においてサスペンションタワーからカウルフロントが取り外しされた状態を示す図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車体前部構造
14 サスペンションタワー
16 ダッシュパネル部材
18 カウル部材
20 サスペンションプレート
30 カウルインナ
32 カウルアウタ
34 カウルサイドブラケット
36 ブレース
38 カウルフロント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部における車両幅方向両側に配置され、上壁部にサスペンションプレートが結合されたサスペンションタワーと、
前記サスペンションタワーに対する車両前後方向後側に配置されると共に、車両幅方向に延在されたダッシュパネル部材と、
全体として車両幅方向に延在されると共に、一部が前記サスペンションタワーに対する車両上下方向上側に位置されて、前記サスペンションタワー及び前記ダッシュパネル部材と結合され、前記サスペンションタワーを車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向に支持するカウル部材と、
を備えた車体前部構造。
【請求項2】
前記カウル部材は、
前記ダッシュパネル部材に対する車両上下方向上側に配置されると共に、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて、車両上下方向下側が前記ダッシュパネル部材と結合されたカウルインナと、
前記カウルインナに対する車両上下方向上側に配置されると共に、車両前後方向及び車両幅方向に延在されて、車両前後方向後側が前記カウルインナと結合されたカウルアウタと、
前記カウルインナ及び前記カウルアウタにおける車両幅方向両側に位置されると共に、車両前後方向及び車両上下方向に延在されて、車両前後方向前側が前記サスペンションタワーと結合され、車両前後方向後側が前記カウルインナと結合され、車両上下方向上側が前記カウルアウタと結合されたカウルサイドブラケットと、
前記ダッシュパネル部材における車両幅方向両側に位置されると共に、車両前後方向に延在されて、車両前後方向前側が前記サスペンションタワーと結合され、車両前後方向後側が前記ダッシュパネル部材と結合されたブレースと、
前記サスペンションタワーに対する車両上下方向上側に位置されると共に、車両幅方向に延在されて、車両幅方向両側が前記サスペンションタワーと結合されたカウルフロントと、
を有する、
請求項1に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95050(P2010−95050A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265574(P2008−265574)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】