説明

車体後部構造

【課題】部品点数及び重量の増加を抑制しつつ、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる。
【解決手段】本車体後部構造では、リヤサイドメンバ18の長手方向中間部には、リヤタイヤ14に対向する位置に折れ曲り部19が形成されており、リヤサイドメンバ18の長手方向中間部が車幅内側へ突出している。ここで、リヤサイドメンバ18の側壁18Aには、折れ曲り部19の車幅方向内側において傾斜部22が設けられており、折れ曲り部19の車幅方向内側がリヤサイドメンバ18とリヤフロアパネル12との閉断面20の面積を縮小させるように抉れている。このため、折れ曲り部19において、上記閉断面20の図心S1の曲率が折れ曲り部19自体の曲率よりも小さくなっている。しかも、折れ曲り部19における車幅方向内側面(傾斜壁22)には、ボデーマウント26を介してリヤサスペンションメンバ24が連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の後部構造(例えば、特許文献1参照)では、一対のリヤサイドフレーム(リヤサイドメンバ)の間にテンションバーを掛け渡すことによって、車両の後面衝突時における一対のリヤサイドメンバの座屈を抑制するようにしている。
【特許文献1】特開2001−151144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の車体後部構造では、テンションバーが追加される構成であるため、部品点数及び重量が増加する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、部品点数及び重量の増加を抑制しつつ、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる車体後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る車体後部構造は、車体後部の車幅方向側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲ると共に、閉断面を構成し、前記閉断面の図心が前記曲り部において前記閉断面の車幅方向中央部よりも車幅方向外側に配置されたリヤサイドメンバを有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車体後部構造では、リヤサイドメンバが構成する閉断面の図心が、リヤサイドメンバの曲り部において前記閉断面の車幅方向中央部よりも車幅方向外側に配置されている。このため、リヤサイドメンバの曲り部における前記閉断面の図心の曲率が、曲り部自体の曲率よりも小さくなっている。これにより、車両の後面衝突時にリヤサイドメンバに生じる曲げモーメントを小さくすることができるので、部品点数及び重量の増加を抑制しつつ、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明に係る車体後部構造は、車体後部の車幅方向側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲ると共に、閉断面を構成し、前記曲り部の車幅方向内側が前記閉断面の面積を縮小させるように抉れたリヤサイドメンバを有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車体後部構造では、リヤサイドメンバの曲り部の車幅方向内側が、リヤサイドメンバによって構成される閉断面の面積を縮小させるように抉れている。このため、リヤサイドメンバの曲り部において、前記閉断面の図心は、上記抉れ部が省略されている場合よりも車幅方向外側に配置されており、前記閉断面の図心の曲率が、曲り部自体の曲率よりも小さくなっている。これにより、車両の後面衝突時にリヤサイドメンバに生じる曲げモーメントを小さくすることができるので、部品点数及び重量の増加を抑制しつつ、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る車体後部構造は、車体後部の車幅方向両側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲がった左右一対のリヤサイドメンバと、前記一対のリヤサイドメンバの前記曲り部における車幅方向内側面に連結されて両者の間に掛け渡されたリヤサスペンションメンバと、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車体後部構造では、リヤサスペンションメンバが一対のリヤサイドメンバの曲り部における車幅方向内側面に連結されて一対のリヤサイドメンバ間に掛け渡されている。このため、リヤサイドメンバの曲り部が車体後方側からの荷重によって車幅方向内側へ撓むことを、リヤサスペンションメンバによって抑えることができる。したがって、部品点数及び重量の増加を抑制しつつ、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明に係る車体後部構造は、車体後部の車幅方向両側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲ると共に、閉断面を構成し、前記曲り部の車幅方向内側が前記閉断面の面積を縮小させるように抉れた左右一対のリヤサイドメンバと、前記一対のリヤサイドメンバの前記抉れ部に連結されて両者の間に掛け渡されたリヤサスペンションメンバと、を有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車体後部構造では、リヤサイドメンバの曲り部の車幅方向内側が、リヤサイドメンバによって構成される閉断面の面積を縮小させるように抉れている。このため、リヤサイドメンバの曲り部において、前記閉断面の図心は、上記抉れ部が省略されている場合よりも車幅方向外側に配置されており、前記閉断面の図心の曲率が、曲り部自体の曲率よりも小さくなっている。これにより、車両の後面衝突時にリヤサイドメンバに生じる曲げモーメントを小さくすることができる。しかも、リヤサスペンションメンバが一対のリヤサイドメンバの曲り部における車幅方向内側面に連結されて一対のリヤサイドメンバ間に掛け渡されている。このため、リヤサイドメンバの曲り部が車体後方側からの荷重によって車幅方向内側へ撓むことを、リヤサスペンションメンバによって抑えることができる。したがって、部品点数及び重量の増加を抑制しつつ、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る車体後部構造では、部品点数及び重量を増加させることなく、後面衝突時におけるリヤサイドメンバの座屈を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る車体後部構造が適用されて構成された車体後部10の部分的な構成が車体上方側から見た平面図で模式的に示されている。また、図2には、図1の2−2線断面図が示されている。なお、図中矢印FRは車体前方向を示し、矢印UPは車体上方向を示し、矢印INは車幅内側方向を示している。
【0015】
図1に示されるように、車体後部10には、リヤフロアパネルが配設されている。リヤフロアパネル12の車体後方側には、収納凹部12Aが形成されており、この収納凹部12Aにスペアタイヤ(図示省略)が収納可能とされている。また、リヤフロアパネル12の車幅方向両側部には、リヤタイヤ14及びリヤサスペンション16(図2参照)を配置させるための切欠部12Bが形成されている。さらに、リヤフロアパネル12の車幅方向両側部には、車体の骨格を構成する左右一対のリヤサイドメンバ18が車体前後方向を長手方向として配置されている。
【0016】
図3に示されるように、各リヤサイドメンバ18は、左右の側壁18A、18Bと、各側壁18A、18Bの下端部を連結する底壁18Cと、各側壁18A、18Bの上端部から互いに離間する方向に延出されたフランジ部18D、18Eとを有しており、車体正面側から見た形状が開口部を車体上方側へ向けた略ハット形状に形成されている。これらのリヤサイドメンバ18は、フランジ部18D、18Eがスポット溶接等によってリヤフロアパネル12の下面に結合されることでリヤフロアパネル12に取り付けられており、リヤフロアパネル12と共に閉断面20を構成している。これらの閉断面20は、各リヤサイドメンバ18の長手方向に沿って延在している。
【0017】
各リヤサイドメンバ18の長手方向中間部には、リヤタイヤ14に対向する位置に、折れ曲り部19が形成されており、各リヤサイドメンバ18の長手方向中間部は、互いに接近する方向(車幅内側)へ突出している。
【0018】
リヤサイドメンバ18の折れ曲り部19における車幅方向内側の側壁18Aは、断面が略く字状に折れ曲っており、下端側の部分が車体上下方向に対して大きく傾斜した傾斜部22とされている。この傾斜部22は、折れ曲り部19の前後両側へ向かうに従い徐々に小さくなるように形成されており、図1に示される範囲Lにわたって形成されている。
【0019】
すなわち、本実施形態に係るリヤサイドメンバ18では、折れ曲り部19を含む上記範囲Lの車幅方向内側部分が、閉断面20の面積を縮小させるように抉れている。このため、図1に示されるように、閉断面20の図心S1は、折れ曲り部19の周辺において、上記抉れ部が省略された場合の図心(図4の図心S2参照、閉断面20の車幅方向中央部)よりも車幅方向外側に配置されている。このため、折れ曲り部19の周辺において、図心S1の曲率が折れ曲り部19自体の曲率よりも小さくなっており(図心S1の曲り度合いが折れ曲り部19の曲り度合いよりも小さくなっており)、平面視で図心S1が直線的になっている。
【0020】
一方、一対のリヤサイドメンバ18の折れ曲り部19には、リヤサスペンション16を支持するためのリヤサスペンションメンバ24が連結されている(図2参照)。なお、本実施形態に係る車体後部構造は、車幅方向中心線に対し左右対称に構成されているので、以下、基本的に車幅方向の一方側について説明することとする。
【0021】
このリヤサスペンションメンバ24は、車幅方向中央部に配置された本体部24A(長手方向中間部)が車幅方向に沿って延在している。また、リヤサスペンションメンバ24の長手方向両端側は、車幅方向外側へ向けて上昇する傾斜部24Bとされており、各傾斜部24Bは、各リヤサイドメンバ18の傾斜部22の法線方向に沿って延在している。各傾斜部24Bの下端部(車幅方向内側端部)には、リヤサスペンション16を介してリヤタイヤ14が連結されている。また、各傾斜部24Bの上端部(リヤサスペンションメンバ24の長手方向両端部)は、ボデーマウント26を介して各リヤサイドメンバ18の傾斜部22(車幅方向内側面)に連結されている。
【0022】
各ボデーマウント26は、リヤサイドメンバ18の傾斜部22及びリヤサスペンションメンバ24の傾斜部24Bの車体上下方向に対する傾斜角度に対応して傾斜して配置されている。これらのボデーマウント26は、弾性部材28(例えばゴム等)を含んで構成されており、リヤサスペンションメンバ24と各リヤサイドメンバ18とを弾性的に連結している。
【0023】
ここで、図3に示されるように、各ボデーマウント26の入力部26A(ボデーマウント26の断面の幾何形状の図心であり荷重入力中心)には、車体の重量の一部(図3の矢印F1参照)が入力されると共に、車両走行時に地面からリヤタイヤ14に入力される荷重(図2の矢印F2参照)の一部がリヤサスペンション16及びリヤサスペンションメンバ24を介して入力される(図3の矢印F3参照)。これらの荷重の合力F4は、上記入力部26Aに対して車幅方向内側へ斜め下向きに作用するが、本実施形態では、ボデーマウント26の入力部26Aに対して前記合力F4の作用方向と反対方向にリヤサイドメンバ18の図心S1が配置されている。なお、本実施形態では、リヤサイドメンバ18の図心S1は、車両の所定の走行状態(直進走行時もしくは旋回走行時)において、ボデーマウント26の入力部26Aを通り上記合力F4の作用方向に沿った線分A上又はこの付近に配置されるようになっている。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0025】
本実施形態では、リヤサイドメンバ18の折れ曲り部19の車幅方向内側が、リヤサイドメンバ18とリヤフロアパネル12との閉断面20の面積を縮小させるように抉れている。このため、図3に示されるように、リヤサイドメンバ18の折れ曲り部19において、閉断面20の図心S1の曲率が折れ曲り部19自体の曲率よりも小さくなっており、平面視で図心S1が直線的になっている。したがって、車両後方からの衝撃荷重(図1の矢印F5参照)の入力時にリヤサイドメンバ18に生じる曲げモーメントを、上記抉れ部が省略されている場合よりも小さくすることができる。
【0026】
しかも、本実施形態では、リヤサスペンション16を支持するリヤサスペンションメンバ24が、一対のリヤサイドメンバ18の折れ曲り部19における車幅方向内側面(傾斜部22)に連結されて一対のリヤサイドメンバ18間に掛け渡されている。このため、車両後方からの衝撃荷重によってリヤサイドメンバ18の折れ曲り部19が車幅方向内側へ撓むことをリヤサスペンションメンバ24によって抑えることができる。
【0027】
以上のことから、本実施形態では、車両の後面衝突時におけるリヤサイドメンバ18の座屈を効果的に抑制することができる。しかも、リヤサイドメンバ18の座屈を抑制するために新しい部品を追加する必要がないため、車両の部品点数の削減及び車両重量の軽量化を図ることができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、リヤサイドメンバ18とリヤフロアパネル12とによって構成された閉断面20の図心S1が、ボデーマウント26の入力部26Aに対して当該入力部26Aに入力される荷重の合力F4の作用方向と反対方向に配置されている。このため、ボデーマウント26に入力される荷重によってリヤサイドメンバ18に捩りモーメントが発生することを抑制できる。
【0029】
なお、図5に示される従来の車体後部構造では、リヤサイドメンバ100とリヤフロアパネル102とによって構成された閉断面104の図心S3が、ボデーマウント104の入力部104Aに対して当該入力部104A入力される荷重の合力F6の作用方向と反対方向に配置されておらず、入力部104Aを通り上記合力F6の作用方向に沿った線分Bから大きく離れて配置されている。このため、ボデーマウント104に入力される荷重によって、リヤサイドメンバ100に捩りモーメント(図6の矢印M参照)が発生する。この点、本実施形態では、このような捩りモーメントの発生を防止することができるので、車体も含めた剛性(バネ定数)を従来の車体後部構造に比べて向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る車体後部構造が適用されて構成された車体後部の部分的な構成を示す模式的な平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体後部構造が適用されて構成された車体後部の部分的な構成を示し、図1の2−2線に対応する断面図である。
【図3】図2の一部を拡大した断面図である。
【図4】図1に示される車体後部構造においてリヤサイドメンバの抉れ部が省略された場合のリヤサイドメンバの図心について説明するための図である。
【図5】従来の車体後部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
12 リヤフロアパネル
18 リヤサイドメンバ
19 折れ曲り部
20 閉断面
24 リヤサスペンションメンバ
26A 入力部
S1 リヤサイドメンバの図心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の車幅方向側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲ると共に、閉断面を構成し、前記閉断面の図心が前記曲り部において前記閉断面の車幅方向中央部よりも車幅方向外側に配置されたリヤサイドメンバを有する車体後部構造。
【請求項2】
車体後部の車幅方向側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲ると共に、閉断面を構成し、前記曲り部の車幅方向内側が前記閉断面の面積を縮小させるように抉れたリヤサイドメンバを有する車体後部構造。
【請求項3】
車体後部の車幅方向両側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲がった左右一対のリヤサイドメンバと、
前記一対のリヤサイドメンバの前記曲り部における車幅方向内側面に連結されて両者の間に掛け渡されたリヤサスペンションメンバと、
を有する車体後部構造。
【請求項4】
車体後部の車幅方向両側部に車体前後方向を長手方向として配置され、長手方向中間部が車幅方向内側へ突出するように曲ると共に、閉断面を構成し、前記曲り部の車幅方向内側が前記閉断面の面積を縮小させるように抉れた左右一対のリヤサイドメンバと、
前記一対のリヤサイドメンバの前記抉れ部に連結されて両者の間に掛け渡されたリヤサスペンションメンバと、
を有する車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−12643(P2009−12643A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177445(P2007−177445)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】