説明

車体構造

【課題】左右のシート間にコンソールボックスやフロアトンネルを設置できない車両においても、シートに入力された側面衝突荷重を効率良く車体フロアに伝達することのできる車体構造を提供する。
【解決手段】左右のシート1,1間に荷重伝達部材10を設置する。荷重伝達部材10は、シート1,1間で車体フロア4に固定される底板11と、底板11の左右両側から各シート1の内側面に沿って立設される左右の側板12を備えた構成とする。左右の側板12,12の間に車体前後方向に開放される通路14を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体側方から入力される衝撃荷重を、乗員の着座するシートを介してフロアに伝達する機能を備えた車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時に車体側方からシートに入力される衝撃荷重を車体フロアに速やかに伝達できる車体構造として、左右のシート間に配置されるフロアトンネルの上部に、側面衝突時にシートの側部と当接して荷重をフロアトンネルに伝達する荷重伝達部材を固定設置したものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車体構造においては、荷重伝達部材はコンソールボックスに内装された補強部材によって構成され、コンソールボックスはフロアトンネルの上部に固定設置されている。したがって、側面衝突時にシートに加わった衝撃荷重はコンソールボックスを介してフロアトンネルに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−131041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の商品価値上、左右のシート間にコンソールボックスやフロアトンネルを設置できない車両においては、シート自体に側面衝突荷重を伝達する構造を内蔵したとしても、シートから車体フロアの幅方向中央領域に効率良く荷重を伝達することができない。
【0006】
そこでこの発明は、左右のシート間にコンソールボックスやフロアトンネルを設置できない車両においても、シートに入力された側面衝突荷重を効率良く車体フロアに伝達することのできる車体構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車体フロア(例えば、後述の実施形態における車体フロア4)上に左右に並んで設置された一対のシート(例えば、後述の実施形態におけるシート1)の間に、車体側方から前記シートに入力された荷重を車体フロアの幅方向中央領域に伝達する荷重伝達部材(例えば、後述の実施形態における荷重伝達部材10)が設けられている車体構造であって、前記荷重伝達部材を、前記一対のシートの間で前記車体フロアに固定される底板(例えば、後述の実施形態における底板11)と、該底板の左右両側から前記各シートの内側面に沿って立設された左右の側板(例えば、後述の実施形態における側板12)と、を備えた構成とするとともに、前記左右の側板の間に車体前後方向に開放される通路(例えば、後述の実施形態における通路14)を形成したことを特徴とする。
これにより、車両の側面衝突時に車体側方から一方のシートに衝撃荷重が入力され、そのシートの内側面が荷重伝達部材の側板に当接すると、底板で車体フロアに固定された荷重伝達部材によってその荷重が受け止められるようになる。また、左右の側板の間には車体前後方向に開放される通路が形成されるため、その通路によって左右のシート間の乗員歩行や荷物の載置が許容されるようになる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体構造において、前記左右の側板の外側、かつ前記シートの下側位置で、前記左右の側板と車体フロアを結合する補強部材(例えば、後述の実施形態における補強リブ13)を設けたことを特徴とする。
これにより、左右の側板の倒れが強度部材によって規制されるようになる。また、各補強部材がシートの下側位置に位置されるため、左右の側板の間の通路スペースが狭められることがなくなるとともに、補強部材が外部から見えにくくなる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、シートに入力された側面衝突荷重を、底板で車体フロアに固定された荷重伝達部材の側板で受け止めることができるため、左右のシート間の通路スペースを確保しつつ、側面衝突荷重を効率良く車体フロアに伝達することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、左右の側板と車体フロアを結合する補強部材が、側板の外側、かつシートの下側位置に設置されることから、側板間の通路スペースの減少や外観品質の低下を招くことなく、補強部材によって側板の倒れを確実に防止して、荷重伝達部材の支持剛性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態の車体を左右のシートの前方側で破断してシートを前方側から見た正面図である。
【図2】この発明の一実施形態の車体を左右のシートの前方側で破断してシートを斜め前方側から見た斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の荷重伝達部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2は、ミニバンタイプの車両の前席側の左右のシート1,1を前方側から見た図である。
同図において、2は、車室下方の両側部に車体前後方向に略沿って延在する左右のフロントフロアフレームであり、3A,3Bは、左右のフロントフロアフレーム2,2間に架設されたフロントフロアクロスメンバ、4は、フロントフロアフレーム2,2とフロントフロアクロスメンバ3A,3Bの上部に固定設置された車体フロアである。
【0013】
各シート1は、乗員の臀部を支持するシートクッション5と、このシートクッション5の後端部に連結されて、乗員の腰部および胸部(背部)を支持するシートバック6を備え、シートクッション5がシートレール7を介して車体フロア4の上部に前後スライド可能に取り付けられている。各シート1のシートバック6には、図示しないシートバックフレームが車幅方向に延出するクロスメンバや波板状の補強板によって補強され、側面衝突時に車体側方からシート1に衝撃荷重が入力されたときに、その荷重を車幅方向の内方に確実に伝達し得るようになっている。
また、車体フロア4上の左右のシート1,1のほぼ中間領域には荷重伝達部材10が固定設置されている。
【0014】
図3は、荷重伝達部材10を示す図である。
荷重伝達部材10は、鋼板等の板状の金属材料から成り、左右のシート1,1の間で車体フロア4に固定される底板11と、底板11の左右両側から左右のシート1,1の内側面に沿って上方に立設される左右の側板12,12と、各側板12の外側面(幅方向外側の面)に一体に接合された補強リブ13(補強部材)と、を備えている。
【0015】
補強リブ13は、直角三角形状の一対の側壁が斜辺相当部で相互に接合された立体構造とされ、直角三角形の残余の一辺に相当する部位が側板12の外側面に溶接固定されている。そして、各補強リブ13は、側板12に一体に取り付けられた状態において、各対応する側のシート1の下方位置で車体フロア4に固定される。したがって、この荷重伝達部材10は、外板11と両側の補強リブ13,13において車体フロア4に固定されている。
【0016】
また、荷重伝達部材10の各側板12は、側面衝突時にシート1の側部から衝撃荷重を受ける部分であり、その突出高さは、少なくとも各シート1のシートレール7の高さよりも高くなるように設定されている。この側板12の突出高さは、シートクッション5の下面の高さよりも高いことが望ましく、シートバック6をシートクッション5に対して傾動させる図示しないリクライニングデバイスに少なくとも側板12の一部を対向されることが望ましい。
【0017】
また、荷重伝達部材10の底板11と両側の側板12,12によって囲まれる略コ字状の空間部は車体前後方向に連続し、側板12,12の間が車体前後方向に開放された通路14とされている。
【0018】
なお、図中15は、フロントフロアクロスメンバ3Bの上方膨出部に沿うように底板11に形成された湾曲部である。この湾曲部15は、底板11の一般面に対して段差無く滑らかに盛り上がっており、側板12の補強リブ13,13に接合される面の内側に設けられている。
【0019】
この車両では、以上のように左右のシート1,1間に荷重伝達部材10による通路14が確保されているため、この通路14を通してシート1,1の前後に乗員が歩いて移動すること(所謂、ウォークスルー)が可能であり、また、必要に応じて通路14部分に荷物を載せ置くことも可能である。
【0020】
また、車両の側面衝突時に、車体側方から一方のシート1に衝撃荷重が入力されると、シート1が車幅方向内側に変位してシート1の内側面が荷重伝達部材10の一方の側板12に当接し、このとき荷重が荷重伝達部材10の底板12と補強リブ13を介してシート1,1間の車体フロア4に伝達される。
【0021】
特に、この実施形態の荷重伝達部材10においては、側板12の外側で補強リブ13が車体フロア4に結合されているため、側板12にシート1から荷重が入力されると、車体フロア4との間で補強リブ13に引張荷重が作用し、これによって側板12の倒れが確実に防止される。
したがって、この車体構造を採用した場合には、左右のシート1,1間に充分な通路スペースを確保しつつ、シート1に入力される側面衝突荷重を速やかに車体フロア4に伝達することができる。
【0022】
また、この実施形態の車体構造においては、側板12の外側に一体に取り付けられる補強リブ13が隣接するシート1の下方側で車体フロア4に結合されているため、外部から補強リブ13が殆ど見えることがなく、外観品質の低下を招くことがない。
さらに、この車体構造の場合、補強リブ13が側板12の外側に設けられることから、側板12の内側の通路14のスペースを狭めることもない。
【0023】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…シート
4…車体フロア
10…荷重伝達部材
11…底板
12…側板
13…補強リブ(補強部材)
14…通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロア上に左右に並んで設置された一対のシートの間に、車体側方から前記シートに入力された荷重を車体フロアの幅方向中央領域に伝達する荷重伝達部材が設けられている車体構造であって、
前記荷重伝達部材を、前記一対のシートの間で前記車体フロアに固定される底板と、該底板の左右両側から前記各シートの内側面に沿って立設された左右の側板と、を備えた構成とするとともに、
前記左右の側板の間に車体前後方向に開放される通路を形成したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記左右の側板の外側、かつ前記シートの下側位置で、前記左右の側板と車体フロアを結合する補強部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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