車体補剛装置
【課題】1つのタワーバー本体に対し、異なるプリロード値を発生させることができるようにする。
【解決手段】車体幅方向の両側に設けた各ストラットタワー3の上面に固定ブラケット13を固定し、この各固定ブラケット13に形成した取付部13dに設けたボルト14に、タワーバー本体12の両端の連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿通し、ナット15で締結する。取付部13dと連結部12bとの間には呼び角αが設定されており、ナット15の締結により、連結部12bは呼び角αが狭められる方向へ移動すると共に、連結部12bの先端面12dが取付部13dに形成されている先端ストッパ部13eに押し当てられ、タワーバー本体12の長手方向への移動が規制される。ナット15を更に締結するとタワーバー本体12が弾性変形してプリロードが発生する。プリロードは先端ストッパ部13eの位置を変えることで変更することができる。
【解決手段】車体幅方向の両側に設けた各ストラットタワー3の上面に固定ブラケット13を固定し、この各固定ブラケット13に形成した取付部13dに設けたボルト14に、タワーバー本体12の両端の連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿通し、ナット15で締結する。取付部13dと連結部12bとの間には呼び角αが設定されており、ナット15の締結により、連結部12bは呼び角αが狭められる方向へ移動すると共に、連結部12bの先端面12dが取付部13dに形成されている先端ストッパ部13eに押し当てられ、タワーバー本体12の長手方向への移動が規制される。ナット15を更に締結するとタワーバー本体12が弾性変形してプリロードが発生する。プリロードは先端ストッパ部13eの位置を変えることで変更することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に所定間隔を開けて設けられている一対の立骨間を連結して補剛する車体補剛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の剛性を簡単に高める技術として、車体に対して補剛部材を外部から取付ける技術が知られている。このような補剛部材の代表として、ストラットタワーバーがある。このストラットタワーバーは、車体前部においては、左右のストラットタワーの上端部の間を連結し、ストラットタワーバーの突っ張り等によって、左右のストラットタワーの倒れ剛性を高めるようにしたものである。
【0003】
この場合、例えば特許文献1(実用新案登録第3113995号公報)、特許文献2(特開2006−182133号公報)に開示されているように、ストラットタワーバーの中央に、コイルばねやガススプリング等のばね要素を介装させ、このばね要素の反力で車体にプリロードを常時印加することで、車両の操縦性、及び乗り心地を向上させるようにしたものも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した各文献に開示されている技術では、ストラットタワーバーを代表とする補剛部材に、反力を有するばね要素を介装しているため、この補剛部材の両端を車体に固定するに際しては、ばね要素を圧縮し、或いは引張した状態、すなわちプリロードを付加した状態で取付ける必要がある。
【0005】
従って、この補剛部材の両端を車体に固定するに際しては、補剛部材を圧縮或いは引張させた状態で固定する専用の取付け治具が必要になるため、取扱性が悪いと云う問題がある。
【0006】
又、補剛部材に発生させるプリロードは、ばね要素に対する押圧力、或いは引張力で調整することができるが、最適なプリロードは車両毎に相違するばかりでなく、運転者の好みによっても相違する。その結果、異なるプリロード値を発生させることのできる補剛部材を予め複数本用意しておく必要があり、部品管理が煩雑化する問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、補剛部材を異なるブリロード値毎に複数本用意する必要がなく、簡単な構造で、しかも専用の取付け治具が不要で、共通の補剛部材で異なるプリロード値を発生させることができ、部品管理の容易な車体補剛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、車体に所定間隔を開けて設けられている一対の立骨に各々固定する固定部材と、前記各固定部材に設けられている取付部に固定する連結部を両端に有する補剛部材と、前記連結部を前記固定部材に締結する締結部材とを備え、前記締結部材で締結される際の該取付部と前記連結部との間に呼び角が設けられており、前記締結部材による締結にて前記連結部が前記呼び角を狭める方向へ移動される車体補剛構造において、前記固定部材と前記連結部との少なくとも一方であって、前記締結部材による締結位置とは別の部位に、前記締結部材による締結の際の前記補剛部材の前記立骨間方向の移動を規制する位置規制部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補剛部材の立骨間方向への移動を規制する位置規制部を締結部材による締結部位とは別の部位に設けたので、この位置規制部の位置を変更することで、補剛部材に異なるブリロードを発生させることが出来る。従って、補剛部材を異なるブリロード値毎に複数本用意する必要がなく、共用化できるため部品管理が容易となる。又、補剛部材に発生するプリロードは、締結部材にて連結部を固定部材の取付部側に呼び角を狭める方向へ締結するだけで発生させることができるため、構造が簡素化され、しかも専用の取付け治具が不要となり、作業工数が短縮され、製品コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態による補剛装置を用いてストラットタワー間を連結した状態の概略平面図
【図2】同、タワーバー本体を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】同、バー本体固定ブラケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は(a)のC-C断面図
【図4】同、ストラットタワーに補剛装置を取付ける状態の要部断面図
【図5】第2実施形態によるバー本体固定ブラケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)のC-C断面図
【図6】同、図6(c)のVI-VII断面図
【図7】同、ストラットタワーに補剛装置を取付ける状態の要部断面図
【図8】第3実施形態によるバー本体固定ブラケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は(a)のC-C断面図
【図9】同、ストラットタワーに補剛装置を取付ける状態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1〜図4に本発明の第1実施形態を示す。尚、本実施形態では補剛装置をストラットタワーバーとして使用する態様を示す。
【0013】
図1に示すように、車体前部の左右サイドフレーム1,2間にエンジンルームEが形成されている。尚、この左右サイドフレーム1,2の前端が、車体前部に配設されているラジエータパネル(図示せず)に連結されている。又、符号4は、エンジンルームEの上部を閉塞するフロントフード、矢印Fは車体前方を示す。
【0014】
この左右サイドフレーム1,2の対向面にストラットタワー3が形成され、この各ストラットタワー3にストラット5がそれぞれ収容されている。図4に示すように、ストラットタワー3と、車体を構成するインナーパネルやアウタパネルとで中空断面形状の立骨が形成されている。又、このストラット5の上端はストラットマウント6に支持されており、このストラットマウント6の外周に形成されているフランジ6aが、ストラットタワー3の上面に形成されている平坦なマウント座面3aに当接されている。
【0015】
本実施形態のマウント座面3aは車体幅方向の外側から車体幅方向の中央側へ下方傾斜されているが、このマウント座面3aは水平であっても良い。尚、図4には車体幅方向右側のストラットタワー3のみが記載されているが、左側のストラットタワーは右側のストラットタワー3と対称な構造であるため、右側のストラットタワー3と同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
このフランジ6aに、複数(本実施形態では3本)のボルト7が突設されており、この各ボルト7が、マウント座面3aを貫通して上方へ突出され、ナット8にて締結される。尚、符号9はストラット5の上部に固設されているスプリングリテーナ、10はスプリングリテーナ9に上端が掛止されているサスペンションスプリングである。
【0017】
又、図1の符号11は左右一対のストラットタワー3間を連結するストラットタワーバーであり、補剛部材としてのタワーバー本体12と、このタワーバー本体12の両端を固設するバー本体固定ブラケット13とに分割されている。
【0018】
タワーバー本体12は、鉄、ばね鋼材等、ある程度の弾性を有する棒材を加工して形成されている。尚、図2のハッチングはタワーバー本体12の断面を示すものであり、同図に示すように、本実施形態で採用するタワーバー本体12は、楕円形断面の中実材を加工して形成している。但し、このタワーバー本体12は断面円形の棒材、或いは中空棒材を加工して形成しても良い。
【0019】
図2(a),(b)に示すように、タワーバー本体12は長手方向の中央から左右に線対称に形成されており、その両端に、同図(b)の斜め外下方へ屈曲されたアーム部12aが形成され、このアーム部12aの端部に連結部12bが形成されている。又、同図(b)に示すように、このタワーバー本体12が図の上方へやや湾曲するアーチ状に形成されている。
【0020】
連結部12bは扁平化された略矩形状に形成されていると共に、斜め下方へ設定角度θ(本実施形態では、約10[deg])だけ傾斜されている。この連結部12bにボルト挿通孔12cが穿設されている。図2(a)に示すように、このボルト挿通孔12cは、タワーバー本体12の長手方向に沿って長い長孔に形成されている。
【0021】
一方、図3に示すように、タワーバー本体12の左右端に形成されている連結部12bに各々固定されるバー本体固定ブラケット13は、同一形状を有している。従って、1つのストラットタワーバー11に対して、2つのバー本体固定ブラケット13が使用される。
【0022】
このバー本体固定ブラケット13に、ストラットタワー3に設けられているマウント座面3aの上面に固設される固定部材としてのタワー固定部13aが形成されている。このタワー固定部13aは円環状に形成されており、中央の逃げ孔13bからは、マウント座面3aに固設されているストラットマウント6の上端が突出される。
【0023】
又、このタワー固定部13aにボルト孔13cが穿設されている。このボルト孔13cは、ストラットマウント6のフランジ6aから突出されているボルト7が挿通されるものである。更に、このタワー固定部13aの一側にバー本体取付部13dが形成され、このバー本体取付部13dに、底面側からバー本体固定ボルト14が挿通される。このバー本体固定ボルト14はウエルドボルトであり、ボルト頭がバー本体取付部13dの底面に溶接にて固定されている。
【0024】
バー本体固定ブラケット13は、タワー固定部13aの中心とバー本体固定ボルト14の中心とを結ぶ線を軸として線対称に形成されている。図1に示すように、各バー本体固定ブラケット13を各ストラットタワー3のマウント座面3a上に載置すると共に、ボルト孔13cを、マウント座面3aから突出されているボルト7に挿通すると、バー本体取付部13dが互いに対峙する位置に配設される。尚、図1においては、ボルト7を締結するナット8が省略されている。
【0025】
このバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の各連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cが挿通され、締結部材としてのナット15にて締結される。又、このバー本体取付部13dには、略矩形状に形成された連結部12bの先端面12dと幅面12eとを位置決めする先端ストッパ部13eと側面ストッパ部13fとが形成されている。尚、本実施形態では、この各ストッパ部13e,13fを、切越しにより形成しているが、別部材を溶接することで形成するようにしても良い。
【0026】
又、図1に示すように、バー本体固定ブラケット13を、左右ストラットタワー3のタワー固定部13a上面に各々固定すると、互いに対峙する先端ストッパ部13e間の距離Lが固定される。尚、このバー本体取付部13dの先端に、補強のための屈曲部13gが曲げ形成されている。又、タワーバー本体12の長さLsは、この先端ストッパ部13e間の距離Lよりもやや短く形成されている。
【0027】
次に、このような構成によるストラットタワーバー11を車両の左右ストラットタワー3間に取付ける際の作用について説明する。
【0028】
先ず、バー本体固定ブラケット13のタワー固定部13aに穿設されているボルト孔13cを、左右のストラットタワー3の上面に形成されているマウント座面3aから突出しているボルト7に挿通し、タワー固定部13aを左右のマウント座面3aの上面にそれぞれ載置する。そして、このボルト7にナット8を螺入して、タワー固定部13aをマウント座面3a上に固定する。すると、各バー本体固定ブラケット13に形成されているバー本体取付部13dが互いに対峙される。尚、バー本体取付部13dに固設されているバー本体固定ボルト14のボルト頭は、ストラットタワー3の側面からはみ出した位置に配設される。
【0029】
次いで、この各バー本体固定ブラケット13のバー本体取付部13dに突設されているバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の各連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿通する。すると、連結部12bは、その先端面12d及び両幅面12eが、バー本体取付部13dに形成されているストッパ部13e,13fで位置決めされる。又、ボルト挿通孔12cは、タワーバー本体12の長手方向に長い長孔に形成されているため、このボルト挿通孔12cとバー本体固定ボルト14との、タワーバー本体12の長手方向への相対移動は許容される。
【0030】
又、このボルト挿通孔12cが穿設されている連結部12bは、斜め下方に設定角度θだけ傾斜されており(図2(b)参照)、更に、本実施形態ではバー本体固定ブラケット13が固定されているマウント座面3aも傾斜されているため、図4に示すように、連結部12bの底面とタワー固定部13aとの間に、所定の呼び角αが形成される。又、タワーバー本体12の長さLsは、左右の固設されているバー本体固定ブラケット13の各先端ストッパ部13e間の距離L(図1参照)とほぼ同じであるため、タワーバー本体12の両側の先端面12dが、先端ストッパ部13eに近接、或いは当接する。
【0031】
その後、図4に示すように、バー本体固定ボルト14にナット15を螺入して、締結する。すると、連結部12bが呼び角αを狭める方向へ回動すると共に、先端面12dが先端ストッパ部13eに押しつけられる。この先端ストッパ部13e間の距離Lは固定されているため、タワーバー本体12の長手方向の移動が位置規制され、連結部12bは、長手方向が距離Lの状態で呼び角αを狭める方向へ回動する。その結果、タワーバー本体12全体が弾性変形し、このタワーバー本体12に圧縮方向のプリロードが発生する。尚、この先端ストッパ部13eが本発明の位置規制部に対応している。
【0032】
図4に実線で示す矢印のように、連結部12bの呼び角αを狭める方向への移動により、タワーバー本体12に圧縮方向のプリロードが発生した場合、同図に破線で示す矢印のように、ストラットタワー3間に、このストラットタワー3間を押し広げる方向の反力が発生する。
【0033】
その結果、このタワーバー本体12の連結部12bを、ストラットタワー3のマウント座面3a上面に固定されているバー本体固定ブラケット13に固定すると、このタワーバー本体12のプリロードにより、図1に破線で示す矢印のように、ストラットタワー3間に、このストラットタワー3を押し広げる方向の反力が常時付勢される。
【0034】
このように、本実施形態では、タワーバー本体12の連結部12bを、ストラットタワー3のマウント座面3a上面に固定されているバー本体固定ブラケット13に、ナット15にて締め付ける際にタワーバー本体12を弾性変形させてプリロードを発生させるようにしたので、タワーバー本体12にガススプリング等のばね要素を介在させる必要がなく、構造の簡素化を実現することが出来る。又、その際、タワーバー本体12の長手方向の移動が、固定ブラケット13に設けられている先端ストッパ部13aにて規制されるため、プリロードを発生させるための専用の取付け治具が不要で、作業工数を短縮させることができ、製品コストの低減を図ることができる。
【0035】
[第2実施形態]
図5〜図7に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態では、バー本体固定ブラケット13に設けられているバー本体取付部13dが、タワー固定部13aと同一面上にあるため、呼び角αは、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bの傾斜角度θによって一義的に決定される。これに対し、本実施形態では、バー本体取付部13dを傾斜させることで、共通のタワーバー本体12を使用しつつ、呼び角αを変更できるようにしたものである。尚、第1実施形態と同様の構成部品については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施形態によるストラットタワーバー11は、第1実施形態と同様の形状有するタワーバー本体12と、このタワーバー本体12の両端に締結されるバー本体固定ブラケット21とを有している。
【0037】
図5、図6に示すように、バー本体固定ブラケット21は、ストラットタワー3のマウント座面3a上面に固設されるタワー固定部21aを有している。このタワー固定部21aは円環状に形成されており、中央の逃げ孔21bからは、マウント座面3aに固設されているストラットマウント6の上端が突出される。
【0038】
又、バー本体固定ブラケット21のタワー固定部21aに、ストラットマウント6のフランジ6aから突出されているボルト7が挿通されるボルト孔21cが穿設されている。更に、このタワー固定部21aの一側に、起上部21hを介してバー本体取付部21dが形成されている。起上部21h、バー本体取付部21dは、タワー固定部21aに連続する平板を屈曲させて形成したものであり、起上部21hは、タワー固定部21aの一側から、図5(c)の斜め上方へ曲げ形成されており、バー本体取付部21dは、この起上部21hの上端から斜め下方に設定角度曲げ形成され、その端部に屈曲部21gが形成されている。又、このバー本体取付部21dに、底面側からバー本体固定ボルト14が挿通されて固定されている。
【0039】
又、このバー本体取付部13dには、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bの先端面12dと幅面12eとを位置決めする先端ストッパ部21eと側面ストッパ部21fとが、切越し形成されている。バー本体固定ブラケット21は、タワー固定部21aの中心とバー本体固定ボルト14の中心とを結ぶ線を軸として線対称に形成されており、各バー本体固定ブラケット21を、各ストラットタワー3のマウント座面3a上に固定すると、バー本体取付部21dが互いに対峙する位置に配設される。
【0040】
本実施形態では、バー本体取付部21dを、所定に立ち上げられた起上部21hから斜め下方へ傾斜させるようにしているため、このバー本体取付部21dをマウント座面3aに対して、下方へ傾斜させることが出来る。その結果、図7に示すように、バー本体取付部21dと、タワーバー本体12の連結部12bの底面との間の呼び角αを大きく確保することができる。
【0041】
このような構成では、先ず、バー本体固定ブラケット21を、左右のストラットタワー3のマウント座面3a上に所定に取付けた後、このバー本体固定ブラケット21のバー本体取付部21dに立設されているバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の両端の連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿入する。
【0042】
次いで、このバー本体固定ボルト14にナット15を螺入し、連結部12bを締め付ける。すると、先ず、この連結部12bの先端面12dが先端ストッパ部21a方向へ移動して押しつけられる。この先端ストッパ部21a間は、距離Lで固定されているため、タワーバー本体12の長手方向の移動は、先端ストッパ部21a間にて位置規制される。
【0043】
次いで、ナット15を更に締め付けると、連結部12bは先端面12dを中心に、バー本体取付部21d側へ回動し、呼び角αが狭められる。そして、この連結部12bが、呼び角αを狭める方向へ回動する過程において、この連結部12bが伸びる方向(図7の左方向)へ移動されると、タワーバー本体12に引張方向のプリロードが発生する。図7に実線で示す矢印のように、連結部12bの移動により、タワーバー本体12に引張方向のプリロードが発生した場合、同図に破線で示す矢印のように、ストラットタワー3間に、このストラットタワー3間を圧縮させる向の反力が発生する。
【0044】
その結果、このタワーバー本体12に発生する引張方向のプリロードにより、ストラットタワー3間には圧縮方向の反力が常時付勢される。
【0045】
このように、本実施形態では、第1実施形態のバー本体固定ブラケット13に代えて、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bとバー本体取付部21dとの間の呼び角αが大きくなるように形成されたバー本体固定ブラケット21を用いることで、タワーバー本体12に引張方向のプリロードを発生させることができる。又、このプリロードは、バー本体取付部21dの傾斜角度を変更することで、任意の値に設定することが出来る。尚、タワーバー本体12に引張方向のプリロードが発生すると、連結部12bは、圧縮方向(図7の右方向)へ戻ろうとするが、この連結部12bは、ナット15からの押圧力によりバー本体取付部21d側へ押しつけられているため、その移動が規制される。
【0046】
又、バー本体取付部21dの傾斜角を設定するだけで、このタワーバー本体12に発生するプリロードを簡単に設定することができるため、取付け後の調整が不要で、取扱性が良い。
【0047】
[第3実施形態]
図8、図9に本発明の第3実施形態を示す。上述した第1実施形態では、タワーバー本体12の長手方向の移動を、左右のバー本体固定ブラケット13に形成されている先端ストッパ部13a間で規制したが、本実施形態では、この先端ストッパ部13eを廃止して、構造の簡素化を実現したものである。
【0048】
すなわち、図8に示すように、本実施形態で採用するバー本体固定ブラケット13は、第1実施形態で採用するものと殆ど同じ形状であるが、第1実施形態の先端ストッパ部13eが無く、それに代えて、バー本体固定ボルト14の中心とタワー固定部13aの中心とを結ぶ線上に係合孔13hが穿設されている。
【0049】
一方、図9に示すように、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bの底面には、係合孔13hに係合される突起12fが設けられている。尚、左右のストラットタワー3に固設されているバー本体固定ブラケット13に穿設されている係合孔13h、及びこれに係合するタワーバー本体12に形成されている突起12fとで、本発明の位置規制部が構成されている。
【0050】
この突起12fはタワーバー本体12と一体であっても良く、或いは別体の突起12fを植設したものであっても良い。又、この突起12fをバー本体取付部13dに形成し、この突起12fに係合する係合孔13hを連結部12bに穿設するようにしても良い。
【0051】
このような構成では、バー本体固定ブラケット13を、左右のストラットタワー3のマウント座面3a上に所定に取付けた後、このバー本体固定ブラケット13に設けられているバー本体取付部13dに立設されているバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿通する。更に、連結部12bの底面に突設されている突起12fの下端を、バー本体取付部13dに穿設されている係合孔13hに係入させる。従って、この突起12fの長さは、少なくとも連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cをバー本体固定ボルト14に挿通した際に、その下端が、係合孔13hに係入される長さを有している。
【0052】
その後、バー本体固定ボルト14にナット15を螺入し、連結部12bを締め付ける。すると、タワーバー本体12の両側に形成されている突起12fが、係合孔13hにそれぞれ係入され、タワーバー本体12の長手方向が位置決めされる。そして、ナット15を更に締め付けると、連結部12bの底面がバー本体取付部13d上に近接する。
【0053】
その際、突起12fが係合孔13hに係入して長手方向の移動が規制されているため、連結部12bの移動により、タワーバー本体12にプリロードが発生する。図9に実線で示す矢印のように、本実施形態では、連結部12bの移動によりタワーバー本体12に圧縮方向のプリロードが発生する。従って、ストラットタワー3間には、同図に破線で示す矢印のように、このストラットタワー3間を押し広げる方向の反力が発生する。
【0054】
このように本実施形態では、突起12fと、これに係合する係合孔13hとの係合により、タワーバー本体12の長手方向を位置規制した状態で、ナット15の締め付けにより連結部12bをバー本体取付部13d方向へ回動させるようにしたので、ナット15にて連結部12bをバー本体取付部13dに固定した際に、タワーバー本体12に発生するプリロードをより正確に設定することが出来る。
【0055】
従って、このブリロードはバー本体固定ブラケット13のバー本体取付部13dの傾斜角度を適宜設定し、バー本体取付部13dと連結部12bとの間の呼び角αを、第2実施形態で示したように大きく設定すれば、タワーバー本体12に引張方向のブリロードを容易に設定することが出来る。又、この呼び角αを適宜設定することで、タワーバー本体12に発生させることのできるプリロード値をより正確に設定することができる。
【0056】
尚、本発明は上述した各実施形態に限るものではなく、例えばストラットタワーバー11を、車体を補剛するクロスメンバとして用いても良い。又、タワーバー本体12の連結部12bの根元とアーム部12aの先端との間を、ヒンジを介して、図2(b)の上下方向への回動を許容した状態で支持するようにしても良い。
【0057】
更に、上述した各実施形態では、バー本体固定ブラケット13のタワー固定部13aとバー本体取付部13dとが一体形成されているが、このタワー固定部13aとバー本体取付部13dとを別体とし、ボルト、ナット等の締結部材を介して両者を固定するようにしても良い。こうすることで、図1に示す距離Lを、タワー固定部13aに対してバー本体取付部13dの取付け位置を変更するだけで任意に設定することができ、これによりブリロード値をより高い精度良で設定することが出来る。
【符号の説明】
【0058】
3…ストラットタワー、
3a…マウント座面、
5…ストラット、
6…ストラットマウント、
11…ストラットタワーバー、
12…タワーバー本体、
12a…アーム部、
12b…連結部、
12c…ボルト挿通孔、
12f…突起、
13,21…バー本体固定ブラケット、
13a,21a…タワー固定部、
13d,21d…バー本体取付部、
13e,21e…先端ストッパ部、
13h…係合孔、
14…バー本体固定ボルト、
15…ナット
α…呼び角
L…距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】実用新案登録第3113995号公報
【特許文献2】特開2006−182133号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に所定間隔を開けて設けられている一対の立骨間を連結して補剛する車体補剛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の剛性を簡単に高める技術として、車体に対して補剛部材を外部から取付ける技術が知られている。このような補剛部材の代表として、ストラットタワーバーがある。このストラットタワーバーは、車体前部においては、左右のストラットタワーの上端部の間を連結し、ストラットタワーバーの突っ張り等によって、左右のストラットタワーの倒れ剛性を高めるようにしたものである。
【0003】
この場合、例えば特許文献1(実用新案登録第3113995号公報)、特許文献2(特開2006−182133号公報)に開示されているように、ストラットタワーバーの中央に、コイルばねやガススプリング等のばね要素を介装させ、このばね要素の反力で車体にプリロードを常時印加することで、車両の操縦性、及び乗り心地を向上させるようにしたものも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した各文献に開示されている技術では、ストラットタワーバーを代表とする補剛部材に、反力を有するばね要素を介装しているため、この補剛部材の両端を車体に固定するに際しては、ばね要素を圧縮し、或いは引張した状態、すなわちプリロードを付加した状態で取付ける必要がある。
【0005】
従って、この補剛部材の両端を車体に固定するに際しては、補剛部材を圧縮或いは引張させた状態で固定する専用の取付け治具が必要になるため、取扱性が悪いと云う問題がある。
【0006】
又、補剛部材に発生させるプリロードは、ばね要素に対する押圧力、或いは引張力で調整することができるが、最適なプリロードは車両毎に相違するばかりでなく、運転者の好みによっても相違する。その結果、異なるプリロード値を発生させることのできる補剛部材を予め複数本用意しておく必要があり、部品管理が煩雑化する問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、補剛部材を異なるブリロード値毎に複数本用意する必要がなく、簡単な構造で、しかも専用の取付け治具が不要で、共通の補剛部材で異なるプリロード値を発生させることができ、部品管理の容易な車体補剛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、車体に所定間隔を開けて設けられている一対の立骨に各々固定する固定部材と、前記各固定部材に設けられている取付部に固定する連結部を両端に有する補剛部材と、前記連結部を前記固定部材に締結する締結部材とを備え、前記締結部材で締結される際の該取付部と前記連結部との間に呼び角が設けられており、前記締結部材による締結にて前記連結部が前記呼び角を狭める方向へ移動される車体補剛構造において、前記固定部材と前記連結部との少なくとも一方であって、前記締結部材による締結位置とは別の部位に、前記締結部材による締結の際の前記補剛部材の前記立骨間方向の移動を規制する位置規制部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補剛部材の立骨間方向への移動を規制する位置規制部を締結部材による締結部位とは別の部位に設けたので、この位置規制部の位置を変更することで、補剛部材に異なるブリロードを発生させることが出来る。従って、補剛部材を異なるブリロード値毎に複数本用意する必要がなく、共用化できるため部品管理が容易となる。又、補剛部材に発生するプリロードは、締結部材にて連結部を固定部材の取付部側に呼び角を狭める方向へ締結するだけで発生させることができるため、構造が簡素化され、しかも専用の取付け治具が不要となり、作業工数が短縮され、製品コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態による補剛装置を用いてストラットタワー間を連結した状態の概略平面図
【図2】同、タワーバー本体を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】同、バー本体固定ブラケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は(a)のC-C断面図
【図4】同、ストラットタワーに補剛装置を取付ける状態の要部断面図
【図5】第2実施形態によるバー本体固定ブラケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)のC-C断面図
【図6】同、図6(c)のVI-VII断面図
【図7】同、ストラットタワーに補剛装置を取付ける状態の要部断面図
【図8】第3実施形態によるバー本体固定ブラケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は(a)のC-C断面図
【図9】同、ストラットタワーに補剛装置を取付ける状態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1〜図4に本発明の第1実施形態を示す。尚、本実施形態では補剛装置をストラットタワーバーとして使用する態様を示す。
【0013】
図1に示すように、車体前部の左右サイドフレーム1,2間にエンジンルームEが形成されている。尚、この左右サイドフレーム1,2の前端が、車体前部に配設されているラジエータパネル(図示せず)に連結されている。又、符号4は、エンジンルームEの上部を閉塞するフロントフード、矢印Fは車体前方を示す。
【0014】
この左右サイドフレーム1,2の対向面にストラットタワー3が形成され、この各ストラットタワー3にストラット5がそれぞれ収容されている。図4に示すように、ストラットタワー3と、車体を構成するインナーパネルやアウタパネルとで中空断面形状の立骨が形成されている。又、このストラット5の上端はストラットマウント6に支持されており、このストラットマウント6の外周に形成されているフランジ6aが、ストラットタワー3の上面に形成されている平坦なマウント座面3aに当接されている。
【0015】
本実施形態のマウント座面3aは車体幅方向の外側から車体幅方向の中央側へ下方傾斜されているが、このマウント座面3aは水平であっても良い。尚、図4には車体幅方向右側のストラットタワー3のみが記載されているが、左側のストラットタワーは右側のストラットタワー3と対称な構造であるため、右側のストラットタワー3と同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
このフランジ6aに、複数(本実施形態では3本)のボルト7が突設されており、この各ボルト7が、マウント座面3aを貫通して上方へ突出され、ナット8にて締結される。尚、符号9はストラット5の上部に固設されているスプリングリテーナ、10はスプリングリテーナ9に上端が掛止されているサスペンションスプリングである。
【0017】
又、図1の符号11は左右一対のストラットタワー3間を連結するストラットタワーバーであり、補剛部材としてのタワーバー本体12と、このタワーバー本体12の両端を固設するバー本体固定ブラケット13とに分割されている。
【0018】
タワーバー本体12は、鉄、ばね鋼材等、ある程度の弾性を有する棒材を加工して形成されている。尚、図2のハッチングはタワーバー本体12の断面を示すものであり、同図に示すように、本実施形態で採用するタワーバー本体12は、楕円形断面の中実材を加工して形成している。但し、このタワーバー本体12は断面円形の棒材、或いは中空棒材を加工して形成しても良い。
【0019】
図2(a),(b)に示すように、タワーバー本体12は長手方向の中央から左右に線対称に形成されており、その両端に、同図(b)の斜め外下方へ屈曲されたアーム部12aが形成され、このアーム部12aの端部に連結部12bが形成されている。又、同図(b)に示すように、このタワーバー本体12が図の上方へやや湾曲するアーチ状に形成されている。
【0020】
連結部12bは扁平化された略矩形状に形成されていると共に、斜め下方へ設定角度θ(本実施形態では、約10[deg])だけ傾斜されている。この連結部12bにボルト挿通孔12cが穿設されている。図2(a)に示すように、このボルト挿通孔12cは、タワーバー本体12の長手方向に沿って長い長孔に形成されている。
【0021】
一方、図3に示すように、タワーバー本体12の左右端に形成されている連結部12bに各々固定されるバー本体固定ブラケット13は、同一形状を有している。従って、1つのストラットタワーバー11に対して、2つのバー本体固定ブラケット13が使用される。
【0022】
このバー本体固定ブラケット13に、ストラットタワー3に設けられているマウント座面3aの上面に固設される固定部材としてのタワー固定部13aが形成されている。このタワー固定部13aは円環状に形成されており、中央の逃げ孔13bからは、マウント座面3aに固設されているストラットマウント6の上端が突出される。
【0023】
又、このタワー固定部13aにボルト孔13cが穿設されている。このボルト孔13cは、ストラットマウント6のフランジ6aから突出されているボルト7が挿通されるものである。更に、このタワー固定部13aの一側にバー本体取付部13dが形成され、このバー本体取付部13dに、底面側からバー本体固定ボルト14が挿通される。このバー本体固定ボルト14はウエルドボルトであり、ボルト頭がバー本体取付部13dの底面に溶接にて固定されている。
【0024】
バー本体固定ブラケット13は、タワー固定部13aの中心とバー本体固定ボルト14の中心とを結ぶ線を軸として線対称に形成されている。図1に示すように、各バー本体固定ブラケット13を各ストラットタワー3のマウント座面3a上に載置すると共に、ボルト孔13cを、マウント座面3aから突出されているボルト7に挿通すると、バー本体取付部13dが互いに対峙する位置に配設される。尚、図1においては、ボルト7を締結するナット8が省略されている。
【0025】
このバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の各連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cが挿通され、締結部材としてのナット15にて締結される。又、このバー本体取付部13dには、略矩形状に形成された連結部12bの先端面12dと幅面12eとを位置決めする先端ストッパ部13eと側面ストッパ部13fとが形成されている。尚、本実施形態では、この各ストッパ部13e,13fを、切越しにより形成しているが、別部材を溶接することで形成するようにしても良い。
【0026】
又、図1に示すように、バー本体固定ブラケット13を、左右ストラットタワー3のタワー固定部13a上面に各々固定すると、互いに対峙する先端ストッパ部13e間の距離Lが固定される。尚、このバー本体取付部13dの先端に、補強のための屈曲部13gが曲げ形成されている。又、タワーバー本体12の長さLsは、この先端ストッパ部13e間の距離Lよりもやや短く形成されている。
【0027】
次に、このような構成によるストラットタワーバー11を車両の左右ストラットタワー3間に取付ける際の作用について説明する。
【0028】
先ず、バー本体固定ブラケット13のタワー固定部13aに穿設されているボルト孔13cを、左右のストラットタワー3の上面に形成されているマウント座面3aから突出しているボルト7に挿通し、タワー固定部13aを左右のマウント座面3aの上面にそれぞれ載置する。そして、このボルト7にナット8を螺入して、タワー固定部13aをマウント座面3a上に固定する。すると、各バー本体固定ブラケット13に形成されているバー本体取付部13dが互いに対峙される。尚、バー本体取付部13dに固設されているバー本体固定ボルト14のボルト頭は、ストラットタワー3の側面からはみ出した位置に配設される。
【0029】
次いで、この各バー本体固定ブラケット13のバー本体取付部13dに突設されているバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の各連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿通する。すると、連結部12bは、その先端面12d及び両幅面12eが、バー本体取付部13dに形成されているストッパ部13e,13fで位置決めされる。又、ボルト挿通孔12cは、タワーバー本体12の長手方向に長い長孔に形成されているため、このボルト挿通孔12cとバー本体固定ボルト14との、タワーバー本体12の長手方向への相対移動は許容される。
【0030】
又、このボルト挿通孔12cが穿設されている連結部12bは、斜め下方に設定角度θだけ傾斜されており(図2(b)参照)、更に、本実施形態ではバー本体固定ブラケット13が固定されているマウント座面3aも傾斜されているため、図4に示すように、連結部12bの底面とタワー固定部13aとの間に、所定の呼び角αが形成される。又、タワーバー本体12の長さLsは、左右の固設されているバー本体固定ブラケット13の各先端ストッパ部13e間の距離L(図1参照)とほぼ同じであるため、タワーバー本体12の両側の先端面12dが、先端ストッパ部13eに近接、或いは当接する。
【0031】
その後、図4に示すように、バー本体固定ボルト14にナット15を螺入して、締結する。すると、連結部12bが呼び角αを狭める方向へ回動すると共に、先端面12dが先端ストッパ部13eに押しつけられる。この先端ストッパ部13e間の距離Lは固定されているため、タワーバー本体12の長手方向の移動が位置規制され、連結部12bは、長手方向が距離Lの状態で呼び角αを狭める方向へ回動する。その結果、タワーバー本体12全体が弾性変形し、このタワーバー本体12に圧縮方向のプリロードが発生する。尚、この先端ストッパ部13eが本発明の位置規制部に対応している。
【0032】
図4に実線で示す矢印のように、連結部12bの呼び角αを狭める方向への移動により、タワーバー本体12に圧縮方向のプリロードが発生した場合、同図に破線で示す矢印のように、ストラットタワー3間に、このストラットタワー3間を押し広げる方向の反力が発生する。
【0033】
その結果、このタワーバー本体12の連結部12bを、ストラットタワー3のマウント座面3a上面に固定されているバー本体固定ブラケット13に固定すると、このタワーバー本体12のプリロードにより、図1に破線で示す矢印のように、ストラットタワー3間に、このストラットタワー3を押し広げる方向の反力が常時付勢される。
【0034】
このように、本実施形態では、タワーバー本体12の連結部12bを、ストラットタワー3のマウント座面3a上面に固定されているバー本体固定ブラケット13に、ナット15にて締め付ける際にタワーバー本体12を弾性変形させてプリロードを発生させるようにしたので、タワーバー本体12にガススプリング等のばね要素を介在させる必要がなく、構造の簡素化を実現することが出来る。又、その際、タワーバー本体12の長手方向の移動が、固定ブラケット13に設けられている先端ストッパ部13aにて規制されるため、プリロードを発生させるための専用の取付け治具が不要で、作業工数を短縮させることができ、製品コストの低減を図ることができる。
【0035】
[第2実施形態]
図5〜図7に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態では、バー本体固定ブラケット13に設けられているバー本体取付部13dが、タワー固定部13aと同一面上にあるため、呼び角αは、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bの傾斜角度θによって一義的に決定される。これに対し、本実施形態では、バー本体取付部13dを傾斜させることで、共通のタワーバー本体12を使用しつつ、呼び角αを変更できるようにしたものである。尚、第1実施形態と同様の構成部品については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施形態によるストラットタワーバー11は、第1実施形態と同様の形状有するタワーバー本体12と、このタワーバー本体12の両端に締結されるバー本体固定ブラケット21とを有している。
【0037】
図5、図6に示すように、バー本体固定ブラケット21は、ストラットタワー3のマウント座面3a上面に固設されるタワー固定部21aを有している。このタワー固定部21aは円環状に形成されており、中央の逃げ孔21bからは、マウント座面3aに固設されているストラットマウント6の上端が突出される。
【0038】
又、バー本体固定ブラケット21のタワー固定部21aに、ストラットマウント6のフランジ6aから突出されているボルト7が挿通されるボルト孔21cが穿設されている。更に、このタワー固定部21aの一側に、起上部21hを介してバー本体取付部21dが形成されている。起上部21h、バー本体取付部21dは、タワー固定部21aに連続する平板を屈曲させて形成したものであり、起上部21hは、タワー固定部21aの一側から、図5(c)の斜め上方へ曲げ形成されており、バー本体取付部21dは、この起上部21hの上端から斜め下方に設定角度曲げ形成され、その端部に屈曲部21gが形成されている。又、このバー本体取付部21dに、底面側からバー本体固定ボルト14が挿通されて固定されている。
【0039】
又、このバー本体取付部13dには、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bの先端面12dと幅面12eとを位置決めする先端ストッパ部21eと側面ストッパ部21fとが、切越し形成されている。バー本体固定ブラケット21は、タワー固定部21aの中心とバー本体固定ボルト14の中心とを結ぶ線を軸として線対称に形成されており、各バー本体固定ブラケット21を、各ストラットタワー3のマウント座面3a上に固定すると、バー本体取付部21dが互いに対峙する位置に配設される。
【0040】
本実施形態では、バー本体取付部21dを、所定に立ち上げられた起上部21hから斜め下方へ傾斜させるようにしているため、このバー本体取付部21dをマウント座面3aに対して、下方へ傾斜させることが出来る。その結果、図7に示すように、バー本体取付部21dと、タワーバー本体12の連結部12bの底面との間の呼び角αを大きく確保することができる。
【0041】
このような構成では、先ず、バー本体固定ブラケット21を、左右のストラットタワー3のマウント座面3a上に所定に取付けた後、このバー本体固定ブラケット21のバー本体取付部21dに立設されているバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の両端の連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿入する。
【0042】
次いで、このバー本体固定ボルト14にナット15を螺入し、連結部12bを締め付ける。すると、先ず、この連結部12bの先端面12dが先端ストッパ部21a方向へ移動して押しつけられる。この先端ストッパ部21a間は、距離Lで固定されているため、タワーバー本体12の長手方向の移動は、先端ストッパ部21a間にて位置規制される。
【0043】
次いで、ナット15を更に締め付けると、連結部12bは先端面12dを中心に、バー本体取付部21d側へ回動し、呼び角αが狭められる。そして、この連結部12bが、呼び角αを狭める方向へ回動する過程において、この連結部12bが伸びる方向(図7の左方向)へ移動されると、タワーバー本体12に引張方向のプリロードが発生する。図7に実線で示す矢印のように、連結部12bの移動により、タワーバー本体12に引張方向のプリロードが発生した場合、同図に破線で示す矢印のように、ストラットタワー3間に、このストラットタワー3間を圧縮させる向の反力が発生する。
【0044】
その結果、このタワーバー本体12に発生する引張方向のプリロードにより、ストラットタワー3間には圧縮方向の反力が常時付勢される。
【0045】
このように、本実施形態では、第1実施形態のバー本体固定ブラケット13に代えて、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bとバー本体取付部21dとの間の呼び角αが大きくなるように形成されたバー本体固定ブラケット21を用いることで、タワーバー本体12に引張方向のプリロードを発生させることができる。又、このプリロードは、バー本体取付部21dの傾斜角度を変更することで、任意の値に設定することが出来る。尚、タワーバー本体12に引張方向のプリロードが発生すると、連結部12bは、圧縮方向(図7の右方向)へ戻ろうとするが、この連結部12bは、ナット15からの押圧力によりバー本体取付部21d側へ押しつけられているため、その移動が規制される。
【0046】
又、バー本体取付部21dの傾斜角を設定するだけで、このタワーバー本体12に発生するプリロードを簡単に設定することができるため、取付け後の調整が不要で、取扱性が良い。
【0047】
[第3実施形態]
図8、図9に本発明の第3実施形態を示す。上述した第1実施形態では、タワーバー本体12の長手方向の移動を、左右のバー本体固定ブラケット13に形成されている先端ストッパ部13a間で規制したが、本実施形態では、この先端ストッパ部13eを廃止して、構造の簡素化を実現したものである。
【0048】
すなわち、図8に示すように、本実施形態で採用するバー本体固定ブラケット13は、第1実施形態で採用するものと殆ど同じ形状であるが、第1実施形態の先端ストッパ部13eが無く、それに代えて、バー本体固定ボルト14の中心とタワー固定部13aの中心とを結ぶ線上に係合孔13hが穿設されている。
【0049】
一方、図9に示すように、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bの底面には、係合孔13hに係合される突起12fが設けられている。尚、左右のストラットタワー3に固設されているバー本体固定ブラケット13に穿設されている係合孔13h、及びこれに係合するタワーバー本体12に形成されている突起12fとで、本発明の位置規制部が構成されている。
【0050】
この突起12fはタワーバー本体12と一体であっても良く、或いは別体の突起12fを植設したものであっても良い。又、この突起12fをバー本体取付部13dに形成し、この突起12fに係合する係合孔13hを連結部12bに穿設するようにしても良い。
【0051】
このような構成では、バー本体固定ブラケット13を、左右のストラットタワー3のマウント座面3a上に所定に取付けた後、このバー本体固定ブラケット13に設けられているバー本体取付部13dに立設されているバー本体固定ボルト14に、タワーバー本体12の両端に形成されている連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cを挿通する。更に、連結部12bの底面に突設されている突起12fの下端を、バー本体取付部13dに穿設されている係合孔13hに係入させる。従って、この突起12fの長さは、少なくとも連結部12bに穿設されているボルト挿通孔12cをバー本体固定ボルト14に挿通した際に、その下端が、係合孔13hに係入される長さを有している。
【0052】
その後、バー本体固定ボルト14にナット15を螺入し、連結部12bを締め付ける。すると、タワーバー本体12の両側に形成されている突起12fが、係合孔13hにそれぞれ係入され、タワーバー本体12の長手方向が位置決めされる。そして、ナット15を更に締め付けると、連結部12bの底面がバー本体取付部13d上に近接する。
【0053】
その際、突起12fが係合孔13hに係入して長手方向の移動が規制されているため、連結部12bの移動により、タワーバー本体12にプリロードが発生する。図9に実線で示す矢印のように、本実施形態では、連結部12bの移動によりタワーバー本体12に圧縮方向のプリロードが発生する。従って、ストラットタワー3間には、同図に破線で示す矢印のように、このストラットタワー3間を押し広げる方向の反力が発生する。
【0054】
このように本実施形態では、突起12fと、これに係合する係合孔13hとの係合により、タワーバー本体12の長手方向を位置規制した状態で、ナット15の締め付けにより連結部12bをバー本体取付部13d方向へ回動させるようにしたので、ナット15にて連結部12bをバー本体取付部13dに固定した際に、タワーバー本体12に発生するプリロードをより正確に設定することが出来る。
【0055】
従って、このブリロードはバー本体固定ブラケット13のバー本体取付部13dの傾斜角度を適宜設定し、バー本体取付部13dと連結部12bとの間の呼び角αを、第2実施形態で示したように大きく設定すれば、タワーバー本体12に引張方向のブリロードを容易に設定することが出来る。又、この呼び角αを適宜設定することで、タワーバー本体12に発生させることのできるプリロード値をより正確に設定することができる。
【0056】
尚、本発明は上述した各実施形態に限るものではなく、例えばストラットタワーバー11を、車体を補剛するクロスメンバとして用いても良い。又、タワーバー本体12の連結部12bの根元とアーム部12aの先端との間を、ヒンジを介して、図2(b)の上下方向への回動を許容した状態で支持するようにしても良い。
【0057】
更に、上述した各実施形態では、バー本体固定ブラケット13のタワー固定部13aとバー本体取付部13dとが一体形成されているが、このタワー固定部13aとバー本体取付部13dとを別体とし、ボルト、ナット等の締結部材を介して両者を固定するようにしても良い。こうすることで、図1に示す距離Lを、タワー固定部13aに対してバー本体取付部13dの取付け位置を変更するだけで任意に設定することができ、これによりブリロード値をより高い精度良で設定することが出来る。
【符号の説明】
【0058】
3…ストラットタワー、
3a…マウント座面、
5…ストラット、
6…ストラットマウント、
11…ストラットタワーバー、
12…タワーバー本体、
12a…アーム部、
12b…連結部、
12c…ボルト挿通孔、
12f…突起、
13,21…バー本体固定ブラケット、
13a,21a…タワー固定部、
13d,21d…バー本体取付部、
13e,21e…先端ストッパ部、
13h…係合孔、
14…バー本体固定ボルト、
15…ナット
α…呼び角
L…距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】実用新案登録第3113995号公報
【特許文献2】特開2006−182133号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に所定間隔を開けて設けられている一対の立骨に各々固定する固定部材と、前記各固定部材に設けられている取付部に固定する連結部を両端に有する補剛部材と、前記連結部を前記固定部材に締結する締結部材とを備え、
前記締結部材で締結される際の該取付部と前記連結部との間に呼び角が設けられており、前記締結部材による締結にて前記連結部が前記呼び角を狭める方向へ移動される車体補剛構造において、
前記固定部材と前記連結部との少なくとも一方であって、前記締結部材による締結位置とは別の部位に、前記締結部材による締結の際の前記補剛部材の前記立骨間方向の移動を規制する位置規制部が設けられている
ことを特徴とする車体補剛装置。
【請求項2】
前記位置規制部が、前記各固定部に設けられて、前記補剛部材の両端に設けられた前記連結部の先端面間の位置を規制する先端ストッパ部である
ことを特徴とする請求項1記載の車体補剛装置。
【請求項3】
前記位置規制部が、前記各固定部に設けられていると共に前記補剛部材の前記各連結部に設けられている突起に係合して、該突起間の位置を規制する係合孔である
ことを特徴とする請求項1記載の車体補剛装置。
【請求項4】
前記位置規制部が、前記各固定部に設けられていると共に前記補剛部材の前記各連結部に設けられている係合孔に係合して、該突起間の位置を規制する突起である
ことを特徴とする請求項1記載の車体補剛装置。
【請求項5】
前記各固定部材に設けられている前記取付部が、該固定部材に対して設定角度傾斜されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車体補剛装置。
【請求項6】
前記取付部が、前記固定部材に対して他の締結部材を介して固定されている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車体補剛装置。
【請求項1】
車体に所定間隔を開けて設けられている一対の立骨に各々固定する固定部材と、前記各固定部材に設けられている取付部に固定する連結部を両端に有する補剛部材と、前記連結部を前記固定部材に締結する締結部材とを備え、
前記締結部材で締結される際の該取付部と前記連結部との間に呼び角が設けられており、前記締結部材による締結にて前記連結部が前記呼び角を狭める方向へ移動される車体補剛構造において、
前記固定部材と前記連結部との少なくとも一方であって、前記締結部材による締結位置とは別の部位に、前記締結部材による締結の際の前記補剛部材の前記立骨間方向の移動を規制する位置規制部が設けられている
ことを特徴とする車体補剛装置。
【請求項2】
前記位置規制部が、前記各固定部に設けられて、前記補剛部材の両端に設けられた前記連結部の先端面間の位置を規制する先端ストッパ部である
ことを特徴とする請求項1記載の車体補剛装置。
【請求項3】
前記位置規制部が、前記各固定部に設けられていると共に前記補剛部材の前記各連結部に設けられている突起に係合して、該突起間の位置を規制する係合孔である
ことを特徴とする請求項1記載の車体補剛装置。
【請求項4】
前記位置規制部が、前記各固定部に設けられていると共に前記補剛部材の前記各連結部に設けられている係合孔に係合して、該突起間の位置を規制する突起である
ことを特徴とする請求項1記載の車体補剛装置。
【請求項5】
前記各固定部材に設けられている前記取付部が、該固定部材に対して設定角度傾斜されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車体補剛装置。
【請求項6】
前記取付部が、前記固定部材に対して他の締結部材を介して固定されている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車体補剛装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−221969(P2010−221969A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74506(P2009−74506)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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