説明

車内無線通信システム

【課題】第1端末と第2端末との不正通信を生じ難くすることができる車内無線通信システムを提供する。
【解決手段】車内無線LANシステム4は、無線モジュール7と、複数の通信端末5とにより構築される。無線モジュール7は、通信端末5と通信が確立すると、通信端末5とID認証を実行する。ID認証には、チャレンジレスポンス認証及びIDコード認証が含まれる。また、無線モジュール7は、通信端末5から受信した電波の受信信号強度を測定し、測定した受信信号強度を閾値と比較することにより、受信信号強度認証も行う。無線モジュール7は、ID認証及び受信信号強度認証の認証結果を基に、通信端末5の正当性を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内の各端末を無線通信により接続して動作させる車内無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車内の端末同士を無線により接続する車内無線通信システムが広く普及している。車内無線通信システムの一種としては、例えばカーナビゲーション装置やオーディオ装置を、リモートコントローラにより遠隔操作するものが周知である。(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−064890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この車内無線通信システムでは、仮にリモートコントローラが第三者によって不正に車外に持ち出されてしまうと、車外から車載機器が勝手に操作されてしまう問題があった。なお、この問題は、カーナビゲーション装置やオーディオ装置に限る問題ではなく、車内の端末同士を無線で繋ぐ種々の装置やシステムにおいても同様に生じ得る問題である。
【0005】
本発明の目的は、第1端末と第2端末との不正通信を生じ難くすることができる車内無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、車内における端末同士を無線により接続する車内無線通信システムにおいて、車体で一位置にセットして使用するものの当該車体から取り外しても通信可能な第1端末が、車内の第2端末と通信するとき、当該第1端末から送信されるID信号により、該第1端末のIDを認証するID認証手段と、前記第1端末及び前記第2端末が通信したときの受信信号強度を測定し、この受信信号強度を認証する受信信号強度認証手段と、前記ID認証手段の認証結果と前記受信信号強度認証手段の認証結果とを基に、前記端末の正当性を判定する判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
本発明の構成によれば、仮に第1端末が第三者等によって車外に勝手に持ち出されて、車外から第1端末で第2端末と通信された場合、ID認証は成立してしまうが、このときは通常時よりも長い通信距離で通信が行われるので、受信信号強度は通常よりも低い値をとり、結果、このときの通信が不正通信として判定される。よって、車外に勝手に持ち出された第1端末では、第2端末との通信が実行できないので、不正通信を生じ難くすることが可能となる。従って、第1端末を盗み出した第三者によって、不正に第2端末が操作されてしまう状況が生じ難くなる。
【0008】
本発明では、前記受信信号強度認証手段は、前記第1端末を車体に初期登録したときに測定した受信信号強度を閾値とし、前記第1端末及び第2端末の通信が確立したときの受信信号強度と前記閾値とを比較することにより、受信信号強度の認証を行うことを要旨とする。この構成によれば、第1端末を車体に初期登録したとき測定した受信信号強度を、受信信号強度判定の閾値とするので、好適な値を閾値の初期値として車体に登録することが可能となる。
【0009】
本発明では、現在の受信信号強度の正否を確認する際に使用する閾値を、その時々の状況に応じて調整する閾値可変手段を備えたことを要旨とする。この構成によれば、受信信号強度判定の閾値を可変としたので、閾値をその時々に応じた好適な値に設定することが可能となる。よって、不正通信防止に一層効果が高くなる。
【0010】
本発明では、前記受信信号強度認証手段は、前記第1端末及び前記第2端末が通信中、前記受信信号強度の認証を定期的に実行することを要旨とする。この構成によれば、第1端末及び第2端末が通信中のときも受信信号強度判定を実行するので、不正通信防止に一層効果が高くなる。
【0011】
本発明では、前記第1端末は、通信端末であり、前記第2端末は、当該通信端末のマスタ装置であり、前記判定手段は、前記通信端末が前記マスタ装置と無線通信するときの当該通信端末の正当性を判定することを要旨とする。この構成によれば、車内の所定位置にセットされた通信端末が、例えば第三者によって車内から不正に車外に持ち出され、この通信端末でマスタ装置と通信が行われたとしても、受信信号強度認証の不成立を以て、このときの通信が許可されない。よって、勝手に車外に持ち出された通信端末でマスタ装置が不正に操作されてしまう状況を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1端末と第2端末との不正通信を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の車内無線LANシステムの構成図。
【図2】測定した受信信号強度と測定回数との変化を示すグラフ。
【図3】(a),(b)は閾値の初期値を無線モジュールに登録するときの手順を示す模式図。
【図4】通信端末と無線モジュールとの通信シーケンス。
【図5】(a)は車内の通信端末が無線モジュールと通信するときの様子を示す模式図、(b)は車外の通信端末が無線モジュールと通信するときの様子を示す模式図。
【図6】別例の車内無線LANシステムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した車内無線通信システムの一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、各車載装置の動作を制御する車載ECU(Electronic Control Unit)2,2…が設けられている。車載ECU2には、例えば電子キーとの無線によるID照合を行う照合ECU、車載電装品の電源を管理するボディECU、エンジンを制御するエンジンECU、エアバックの動作を管理するエアバックECU等がある。これら車載ECU2,2…は、車内バス3を介して有線接続されている。車内バス3には、例えばLAN(Local Area Network)やCAN(Controller Area Network)が使用されている。
【0015】
車両1には、車載された各種端末を無線LANにより接続する車内無線LANシステム4が設けられている。車内無線LANシステム4は、車内に配置された複数の通信端末5,5…とのネットワークを無線LANにより構築するものである。無線LANは、例えばIEEE 802.11等の諸規格によって通信するネットワーク通信の総称である。なお、車内無線LANシステム4が車内無線通信システムに相当し、通信端末5が第1端末を構成する。
【0016】
通信端末5は、車内において例えばセンタークラスターやセンターコンソール等の一位置にセットして使用する端末の一種であって、仮に車体6から取り外されたとしても、その取り外し状態でも通信可能となっている。また、通信端末5は、例えば車体6に常時固定されたままの取り付け状態をとるものでもよいし、或いは車内外に自由に持ち運び可能となっていてもよい。いずれにしても、通信端末5は、車内において使用するとき、車内の所定位置にセットして使用する端末である。通信端末5としては、例えばステアリングスイッチモジュール、リアディスプレイ、iPod(登録商標)、各種SWがある。
【0017】
この場合、車内バス3には、車内無線LANシステム4の車体6側のゲートウェイとして無線モジュール7が接続されている。無線モジュール7は、例えば車両1のイグニッションスイッチがIGオンに操作されると起動状態に入り、周囲に通信端末5が存在するか否かを探査する。無線モジュール7は、各車載ECU2と車内バス3を通じて信号の送受が可能である。なお、無線モジュール7が第2端末(マスタ装置)に相当する。
【0018】
無線モジュール7には、無線により通信端末5とID認証を行うID認証部8が設けられている。ID認証部8は、通信端末5と無線モジュール7との通信が確立すると、車両1からID信号Sidを受信してID認証を実行する。ID認証には、チャレンジレスポンス認証とIDコード認証とが含まれる。チャレンジレスポンス認証は、無線モジュール7から通信端末5にチャレンジコードを送信してそのレスポンスコードを演算させ、このレスポンスコードと、無線モジュール7側で演算したレスポンスコードとを照らし合わせる認証である。また、IDコード認証は、通信端末5に登録されたIDコードと、無線モジュール7のIDコードとを照らし合わせる認証である。なお、ID認証部8がID認証手段に相当する。
【0019】
無線モジュール7には、無線モジュール7で受信した電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を測定する受信信号強度測定部9が設けられている。受信信号強度測定部9は、通信が確立した通信端末5から受信した電波の受信信号強度を測定する。なお、受信信号強度測定部9が受信信号強度認証手段を構成する。
【0020】
無線モジュール7には、通信端末5から受信した電波の受信信号強度が適正値をとるか否かを認証する受信信号強度認証部10が設けられている。受信信号強度認証部10は、初期登録時に設定された閾値Ekと、測定した受信信号強度とを比較することにより、現在の受信信号強度が適正値をとるか否かを確認する。図2に示すように、閾値Ekは、測定誤差を許容するために、所定範囲を持った値に設定されている。なお、受信信号強度認証部10が受信信号強度認証手段を構成する。
【0021】
無線モジュール7には、受信信号強度判定用の閾値Ekを調整する閾値調整部11が設けられている。ところで、図2に示すように、測定した受信信号強度は、経年変化や使用環境の変化などによって変化(下降)してしまうことが知られている。よって、閾値調整部11は、受信信号強度を測定したとき、その測定値を閾値Ekの新たな基準とするとともに、この基準から上下に所定マージンを持たせた範囲を、新たな閾値Ekとして設定する。なお、閾値調整部11が閾値可変手段に相当する。
【0022】
無線モジュール7には、ID認証部8及び受信信号強度認証部10の各認証結果を基に、通信中の通信端末5の正当性を判定する端末正当性判定部12が設けられている。端末正当性判定部12は、ID認証部8及び受信信号強度認証部10が両方とも認証成立と判定すると、通信中の通信端末5を正規通信相手と認識する。一方、端末正当性判定部12は、ID認証部8及び受信信号強度認証部10の少なくとも一方が認証不成立を判定すると、通信中の通信端末5を不正通信相手と認識する。なお、端末正当性判定部12が判定手段に相当する。
【0023】
次に、本例の車内無線LANシステム4の動作を、図3〜図5を用いて説明する。
まずは、無線モジュール7に受信信号強度認証用の閾値Ekを登録する作業(閾値Ekの初期登録)を行う。このとき、図3(a)に示すように、無線モジュール7を所定操作するなどして、無線モジュール7の動作状態を、閾値Ekの登録モードに切り換える。そして、図3(b)に示すように、通信端末5から電波を送信して無線モジュール7に受信信号強度を測定させ、このときの受信信号強度が閾値Ekの初期値として無線モジュール7に登録する。なお、このときに通信端末5から送信させる電波は、どのような信号でもよい。
【0024】
図4に示すステップ101において、車両1のイグニッションスイッチがIGオンにあるとき、無線モジュール7は起動状態に入り、通信を開始する。
ステップ102において、ID認証部8は、ウェイク信号及びチャレンジコードを断続的に送信する。ウェイク信号は、待機状態にある通信端末5を起動させるトリガ信号である。また、チャレンジコードは、通信の度に毎回値が変わる乱数である。
【0025】
ステップ103において、通信端末5は、無線モジュール7からウェイク信号を受信すると、待機状態から起動状態に切り換わる。
ステップ104において、通信端末5は、ウェイク信号の後に受信するチャレンジコードを、自身のチャレンジレスポンス認証用の暗号鍵に通してレスポンスコードを演算する。
【0026】
ステップ105において、通信端末5は、このレスポンスコードと自身のIDコードとを、無線モジュール7にID信号Sidとして送信する。
ステップ106において、ID認証部8は、チャレンジコードを通信端末5に送信したとき、同チャレンジコードを自身のチャレンジレスポンス認証用の暗号鍵に通して、自らもレスポンスコードを演算する。
【0027】
ステップ107において、ID認証部8は、通信端末5から取得したレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを比較して、チャレンジレスポンス認証の成立/不成立を判定する。また、ID認証部8は、通信端末5から取得したIDコードと、自身のIDコードとを比較して、IDコード認証の成立/不成立を判定する。このとき、ID認証部8は、両認証が成立することを確認すると、ID認証成立通知を端末正当性判定部12に出力する(ステップ108に移行する)。一方、ID認証部8は、どちらか一方でも成立しないことを確認すると、ID認証不成立通知を端末正当性判定部12に出力する(フローチャートを終了する)。
【0028】
ステップ108において、受信信号強度測定部9は、通信端末5からID信号Sid(レスポンスコード及びIDコード)を受信したときの受信信号強度を測定する。
ステップ109において、受信信号強度認証部10は、測定した受信信号強度と閾値Ekとを比較して、測定した受信信号強度が適正値をとるか否かを判定する。
【0029】
このとき、図5(a)に示すように、通信端末5が正常に車内に配置されたままであれば、無線モジュール7と通信端末5とは一定の決まった距離に位置するので、無線モジュール7は通信端末5からの電波を、通常通りの正しい受信信号強度で受けるはずである。よって、受信信号強度認証部10は、測定した受信信号強度が閾値Ek内に収まることを確認し、受信信号強度認証成立通知を端末正当性判定部12に出力する(ステップ110に移行する)。
【0030】
一方、図5(b)に示すように、例えば第三者が不正に端末を車外に持ち出して、車外から無線モジュール7に通信を行った場合、通信端末5と無線モジュール7とは、距離を大きくとった状態で通信されるので、無線モジュール7は通信端末5からの電波を、通常よりも低い受信信号強度で受けるはずである。よって、受信信号強度認証部10は、測定した受信信号強度が閾値Ekから外れることを確認し、受信信号強度認証不成立通知を端末正当性判定部12に出力する(フローチャートを終了する)。
【0031】
ステップ110において、端末正当性判定部12は、ID認証結果及び受信信号強度認証結果を基に、現在通信中の通信端末5の正当性を判定する。端末正当性判定部12は、ID認証部8からID認証成立通知を入力し、受信信号強度認証部10から受信信号強度認証成立通知を入力すると、現在通信中の通信端末5を正規通信相手とみなし、通信を継続する(ステップ111に移行する)。よって、無線モジュール7と通信端末5とは、相互通信(暗号通信)によって各種情報のやり取りを行う。
【0032】
一方、ステップ110で、端末正当性判定部12は、ID認証部8からID認証不成立通知を入力したり、受信信号強度認証部10から受信信号強度認証不成立通知を入力したりすると、現在通信中の通信端末5を不正通信相手とみなし、通信を強制終了する(フローチャートを終了する)。
【0033】
また、ステップ108の受信信号強度測定時、閾値調整部11は、測定した現在の受信信号強度を、次判定時の新たな閾値Ekとして更新する。よって、測定する受信信号強度が経年や使用環境が原因で変化する状況となっても、その変化に対応した閾値Ekに都度調整される。
【0034】
ステップ111において、受信信号強度認証部10は、通信実行中も、受信信号強度認証を継続して行う。これは、通信端末5が無線モジュール7と通信している最中に、通信端末5が不正に車外に持ち出されてしまう可能性も想定されるからである。
【0035】
ステップ112において、無線モジュール7は、通信端末5との通信が終了したか否かを判定する。無線モジュール7は、通信が継続中であれば、受信信号強度認証を継続する(ステップ111に戻る)。一方、無線モジュール7は、通信終了を確認すると、通信確立が継続中であれば、次の相互通信を待つ状態に入り、例えば通信が不確立となれば、待機状態に切り換わる(フローチャートを終了する)。
【0036】
以上により、本例においては、通信端末5が無線モジュール7と通信するとき、通信端末5から送信されたID信号SidでのID認証のみならず、ID信号Sidを受信したときの受信信号強度によっても、通信の正当性を判定する。このため、仮に第三者が通信端末5を車外に不正に持ち出して、車外から通信端末5で無線モジュール7と通信しようとしても、このときは通信距離が長くなるので、受信信号強度が閾値Ek未満となり、通信が不成立と判定される。よって、不正な通信行為を防止することが可能となる。
【0037】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)通信端末5が第三者によって車内の装着位置から仮に車外に持ち出されて、その通信端末5で無線モジュール7と通信される状況となっても、このときは通信距離の長さから受信信号強度が閾値Ek未満をとるので、通信が不成立と判定される。よって、車外に勝手に持ち出された通信端末5では無線モジュール7との通信が成立しないので、不正通信を生じ難くすることができる。従って、通信端末5を車内から勝手に盗み出した第三者によって、不正に無線モジュール7が操作されてしまう状況を生じ難くすることができる。
【0038】
(2)通信端末5を無線モジュール7に初期登録したときの受信信号強度を閾値Ekの初期値として設定するので、好適な初期値を無線モジュール7に登録しておくことができる。
【0039】
(3)受信信号強度判定の閾値Ekを可変としたので、仮に経年変化や使用環境変化が生じても、その時々に応じた好適な値に閾値Ekを設定することができる。よって、不正通信防止に一層効果が高くなる。
【0040】
(4)通信端末5と無線モジュール7とが通信(暗号通信)を行っている最中も、受信信号強度判定を継続して行うので、不正通信防止に一層効果が高くなる。
(5)仮に通信端末5が車体6に固定された取り付け状態をとる場合は、通信端末5が車外に持ち出され難くなっているので、車外への不正持ち出し防止に効果が高い。また、このような取り付け状態をとった通信端末5が仮に車外に不正に持ち出されたとしても、この通信端末5では無線モジュール7と通信が実行できなくなる。よって、2重の対策を講じておくことができ、通信不正防止に一層効果が高くなる。
【0041】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・図6に示すように、通信端末5をセット可能な無線モジュール41を車両1に設け、通信端末5はこの無線モジュール41を介して無線モジュール7と無線LANにより通信するものでもよい。通信端末5は、無線モジュール41にセットされた際、無線モジュール41と有線により接続される。この場合、仮に無線モジュール41が車外に持ち出されても、無線モジュール41の使用が無効となるので、無線モジュール41を用いた不正操作を防止することが可能となる。なお、無線モジュール41が第1端末を構成する。
【0042】
・受信信号強度測定部9は、無線モジュール7側に設けることに限らず、通信端末5に設けてもよい。また、同様に受信信号強度判定も通信端末5側で行ってもよい。
・受信信号強度判定は、通信実行中も継続して行うことに限らず、例えば通信の最初のときにも行われてもよい。
【0043】
・閾値Ekの可変方式は、実施形態に述べた例に限定されず、種々の方式に適宜変更可能である。また、閾値Ekは可変することに限らず、所定の固定値としてもよい。
・閾値Ekの初期値は、無線モジュール7を初期登録モードにするとともに通信端末5から電波を送信させ、このときの受信信号強度を初期値とすることに限定されない。例えば、実験や検査等により導き出した初期値が無線モジュール7に予め登録されていてもよい。
【0044】
・ID認証は、チャレンジレスポンス認証及びIDコード認証の両方を含むことに限らず、例えば一方のみ行うものでもよい。また、ID認証は、チャレンジレスポンス認証やIDコード認証に限定されず、通信端末5のIDを確認できる認証であれば、他の方式を採用してもよい。
【0045】
・受信信号強度認証は、ID信号Sidにて行うことに限らず、通信端末5から送信される電波であれば、何でもよい。
・第2端末は、無線モジュール7に限定されず、無線通信可能な車載器であればよい。
【0046】
・第1端末は、通信端末5に限定されず、車載器相当の部品でもよい。
・車内無線通信システムは、車内無線LANシステム4に限定されない。例えば、通信インフラとして、例えばブルートゥースを使用してもよい。
【0047】
・通信端末5は、複数存在することに限定されず、1つでもよい。
・通信端末5は、例えば車内において隠された取り付け状態をとっていてもよい。
・通信端末5は、単に信号をやり取りするだけの端末でもよい。
【0048】
・車載ECU2と無線モジュール7とを接続する通信インフラに、本例の車内無線LANシステム4を応用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0049】
(イ)請求項1〜5において、前記端末(通信端末)は、通常時、前記車体に固定された取り付け状態をとり、仮に前記車体から取り外されたとしても使用できるものとなっている。この構成によれば、車体にがっちりと固定された端末が仮に不正に車外に持ち出されても、この端末による通信が許可されないので、対策を2重に講じておくことが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
4…車内無線通信システムとしての車内無線LANシステム、5…第1端末を構成する通信端末、6…車体、7…第2端末(マスタ装置)としての無線モジュール、8…ID認証手段としてのID認証部、9…受信信号強度認証手段を構成する受信信号強度測定部、10…受信信号強度認証手段を構成する受信信号強度認証部、11…閾値可変手段としての閾値調整部、12…判定手段としての端末正当性判定部、41…第1端末を構成する無線モジュール、Sid…ID信号、Ek…閾値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内における端末同士を無線により接続する車内無線通信システムにおいて、
車体で一位置にセットして使用するものの当該車体から取り外しても通信可能な第1端末が、車内の第2端末と通信するとき、当該第1端末から送信されるID信号により、該第1端末のIDを認証するID認証手段と、
前記第1端末及び前記第2端末が通信したときの受信信号強度を測定し、この受信信号強度を認証する受信信号強度認証手段と、
前記ID認証手段の認証結果と前記受信信号強度認証手段の認証結果とを基に、前記端末の正当性を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする車内無線通信システム。
【請求項2】
前記受信信号強度認証手段は、前記第1端末を車体に初期登録したときに測定した受信信号強度を閾値とし、前記第1端末及び第2端末の通信が確立したときの受信信号強度と前記閾値とを比較することにより、受信信号強度の認証を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車内無線通信システム。
【請求項3】
現在の受信信号強度の正否を確認する際に使用する閾値を、その時々の状況に応じて調整する閾値可変手段を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車内無線通信システム。
【請求項4】
前記受信信号強度認証手段は、前記第1端末及び前記第2端末が通信中、前記受信信号強度の認証を定期的に実行する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の車内無線通信システム。
【請求項5】
前記第1端末は、通信端末であり、前記第2端末は、当該通信端末のマスタ装置であり、前記判定手段は、前記通信端末が前記マスタ装置と無線通信するときの当該通信端末の正当性を判定する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の車内無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−216942(P2012−216942A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79847(P2011−79847)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】