説明

車線推定装置

【課題】二重白線等、走行車線の内外に、走行車線と誤認し易い車線候補点が断続的にプロットされた場合であっても、走行車線を連続して推定することができて、安定した運転支援を行うことができるようにする。
【解決手段】前回求めた走行車線の内側エッジを推定する仮想線に基づいて今回の予測標準線LpL,LpRを求め(S12)、この予測標準線LpL,LpRと車線境界をプロットする第1候補点P1の点列との一致度を求め(S13)、第1候補点P1が最も一致度が高いと判定した場合、この第1候補点P1の点列を今回の主候補点Pmの点列として設定する(S18)。そして、この主候補点Pmの点列に基づき曲線近似式(y=ax+bx+c)から、今回の走行車線の内側エッジを推定する仮想線Lsを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている撮像手段で撮像した前方の外部環境に基づいて走行レーンを区画する走行車線を推定する車線推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等の走行において、自車両前方の走行環境を検出し、検出した走行環境データに基づいて、自車走行レーンの左右を区画する走行車線を検出し、この走行車線に沿って自車両を自動走行させる走行制御や、認識した車線位置から自車両が逸脱すると予測される場合には警告を発して、運転者に注意を促すレーンキープ制御等の運転支援装置が知られている。
【0003】
自車両を走行車線に沿って正確に走行させるためには、この走行車線の位置を正確に推定する必要がある。この走行車線位置を推定する手段としては、車両に搭載されているカメラ(以下、「車載カメラ」と称する)で撮像した自車両前方の画像に基づき、路面と白線との輝度差から白線のエッジを検出し、この白線のエッジから走行車線位置を確定する技術が知られている。
【0004】
しかし、高速道路上の走行車線は、走行レーンを区画する左右の走行車線のみならず、カーブ路等には、走行車線とその内側の誘導線(いわゆるドットライン)とからなる二重白線が描かれている場合がある。白線のエッジを路面との輝度差により検出する技術では、道路内側の白線が外側の白線よりも輝度差が明確に現れるため、二重白線では、内側誘導線を走行車線と誤認識しやすい。又、車線と平行に轍が形成されている場合、この轍が水溜まりになると、その水面からの反射光により高輝度が受光されるため、この轍を車線と誤認識してしまう可能性がある。
【0005】
この対策として、例えば特許文献1(特開2004−310522号公報)には、車載カメラで撮像した画像に基づき、走行レーンの左右を区画する走行車線をエッジ抽出により検出するに際し、片側の走行車線として複数の車線候補が検出された場合には、各候補のエッジ周期を比較して最も連続線に近い候補を走行車線と判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−310522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した文献に開示されている技術では、例えば二重白線の内側誘導線は不連続線(ドットライン)であり、一方、走行車線は連続線であるため、最も長い連続線を走行車線と判定するようにしている。
【0008】
車載カメラで認識する二重白線の走行車線と内側誘導線との間隔は、遠方へ延出するに従い次第に狭くなるため、遠方では、走行車線のエッジ抽出点(車線候補点)と内側誘導線のエッジ抽出とが近接して分離し難くなり、従って、遠方へ向かうに従い走行車線の推定位置にずれが生じ易くなり、走行車線を遠方まで正確に検出することができない問題がある。
【0009】
又、二重白線の出口(内側誘導線の終了端)では、走行車線のエッジ抽出点と内側誘導線のエッジ抽出点とが明確に切り分けることができないので、走行車線の位置検出にずれが生じ易くなる不都合がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、二重白線等、走行車線の内外に、走行車線と誤認し易い車線候補点が断続的に検出された場合であっても、走行車線を連続して推定することができ、安定した運転支援を行うことのできる車線推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明による車線推定装置は、車両に搭載されて該車両の外部環境を撮像する撮像手段と、予め設定されている複数の車線種毎のレーン幅データを記憶する記憶手段と、前記撮像手段で撮像した画像に基づいて走行車線と路面との車線境界を検出し、該車線境界に車線候補点を点列状にプロットする車線候補点設定手段と、前回の演算時に求めた仮想線を求める曲線近似式に基づき、該曲線近似式を演算周期分の時間進み補正して車線予測線を求め、該車線予測線と前記車線候補点の点列との一致度を調べ、一致度の高い点列を成す前記車線候補点を主候補点として設定する予測線一致判定手段と、前記主候補点の点列に基づいて前記車線境界を推定する前記仮想線の曲線近似式を設定し、該仮想線と前記記憶手段に記憶されている前記レーン幅とに基づき該仮想線の車線種を推定する曲線近似処理手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二重白線等、走行車線の内外に走行車線と誤認し易い車線候補点が断続的に検出された場合であっても、今回演算する車線予測線が前回演算時に求めた仮想線に基づいて設定されているので、車線予測線が急激に変化することが無く、この車線予測線との一致度の高い主候補点を検出することで、この主候補点に基づいて求めた仮想線の車線種を連続して推定することができ、安定した運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】走行制御装置の構成を示す機能ブロック図
【図2】車線推定部の機能ブロック図
【図3】車線位置推定ルーチンを示すフローチャート
【図4】車線位置推定処理サブルーチンを示すフローチャート(その1)
【図5】車線位置推定処理サブルーチンを示すフローチャート(その2)
【図6】車線位置推定処理サブルーチンを示すフローチャート(その3)
【図7】前回のフレーム画像に基づいて設定した仮想線と今回のフレーム画像から検出した車線境界をプロットした第1候補点の点列を示す説明図
【図8】前回のフレーム画像に基づいて設定した仮想線と今回のフレーム画像から検出した二重白線の内側誘導線の車線境界にプロットした第1候補点を示す説明図
【図9】前回のフレーム画像に基づいて設定した仮想線と今回のフレーム画像から検出した車線境界にプロットした第1候補点の点列と轍の内側エッジにプロットした第0候補点の点列とを示す説明図
【図10】フレーム画像の先行車のテールに走行車線と誤認識し易いパターンが表示されている状態を示す説明図
【図11】カーブ走行時の自車両と予測標準線及び予測補助線、及び候補点の点列を示す説明図
【図12】走行車線の内側エッジに候補点をプロットした状態の説明図
【図13】二重白線の走行車線の内側エッジと内側誘導線の内側エッジとに候補点をプロットした状態の説明図
【図14】二重白線の出口付近における候補点のプロット状態を示す説明図
【図15】轍のエッジに候補点をプロットした状態の説明図
【図16】先行車のテールに走行車線と誤認識しやすいパターンがある場合にこのパターンに候補点がプロットされる状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す走行制御装置は、画像処理系Aと操舵制御系Bとを有し、画像処理系Aが撮像手段1と画像処理部2と車線推定部9とで構成され、操舵制御系Bが操舵制御部10と操舵アクチュエータ11とで構成されている。尚、本実施形態では、画像処理系Aと操舵制御部10とがカメラユニットに設けられている。又、操舵アクチュエータ11としては、電動モータや油圧モータ等がある。
【0015】
操舵制御部10はマイクロコンピュータを主体に構成されており、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線12を通じて操舵アクチュエータ11と双方向通信可能に接続されている。この操舵制御部10は、画像処理系Aから送信される走行車線データに基づき、自車両が走行レーンの左右を区画する走行車線に沿って走行するようにステアリングのハンドル角を設定し、対応する操舵トルクを操舵アクチュエータ11へ出力する。操舵アクチュエータ11は、操舵制御部10からの操舵トルクに基づきステアリングを動作させて車両の進行方向を調整する。
【0016】
又、図2に示すように、画像処理系Aの撮像手段1は、メインカメラ1aとサブカメラ1bとからなるステレオカメラであり、この両カメラ1a,1bは、例えばルームミラー上方であって、フロントガラスに近接する位置の車幅方向中央から左右に等間隔を開けて水平な状態で設置されている。又、この各カメラ1a,1bにCCDやCMOS等の撮像素子が設けられており、この両撮像素子によって自車両が走行している走行レーンを含む車両前方の外部環境が撮像される。
【0017】
両カメラ1a,1bで撮像した一対のアナログ画像が画像処理部2に出力される。画像処理部2は、A/D変換部3と画像補正部4と画像データメモリ5と車線推定部9とを備えている。各カメラ1a,1bで撮像したアナログ画像は、A/D変換部3に設けられている各A/D変換器3a,3bで所定輝度階調のデジタル画像に変換されて画像補正部4に出力される。
【0018】
画像補正部4では、両カメラ1a,1bの取付位置の誤差に起因するずれやノイズの除去等を含む輝度値の補正等の画像補正が行われ、メインカメラ1aの出力信号から基準画像データが生成され、又、サブカメラ1bの出力信号から、基準画像と垂直方向長が同じで、基準画像よりも大きな水平方向長を有する比較画像データが生成される。そして、この基準画像データ及び比較画像データが画像データメモリ5に格納されると共に、画像処理手段6に出力される。
【0019】
画像処理手段6はイメージプロセッサ7と距離データメモリ8とを備えている。イメージプロセッサ7は、基準画像データと比較画像データとの視差に基づいて両画像中の同一対象物の距離データ(自車両から対象物までの距離)を、三角測量の原理を利用して算出し、距離データメモリ8に格納する。
【0020】
又、車線推定部9は、予測線設定部9aと、車線候補点設定手段としての車線候補点設定部9bと、予測線一致判定手段としての予測線一致判定部9cと、曲線近似処理手段としての曲線近似処理部9dと、車線位置設定部9eと、記憶手段としての固定データメモリ9fとを備えている。固定データメモリ9fには、図12、図13に示すように、走行レーンを区画する左右の走行車線21L,21R間の車線幅(以下「標準レーン幅」と称する)W1、及び二重白線の内側誘導線22間の車線幅(以下「狭レーン幅」と称する)W2の各データと、後述する表1〜表3に示されている車線種判定データT1〜T3が格納されている。
【0021】
高速道路の走行レーンは、走行車線21L,21Rが連続線で左右に一本ずつ描かれており、又、カーブ等のように車両が走行レーンから逸脱し易い道路では、走行車線21L,21Rの内側に破線状の誘導線(ドットライン)22が描かれた二重白線となっている。尚、高速道路における走行車線21L,21R、及び内側誘導線22のレーン幅W1,W2は予め設定範囲に決められており、例えば走行車線21L,21R間のレーン幅(標準レーン幅)W1は3.25〜3.5[m]、内側誘導線22間のレーン幅(狭レーン幅)W2は2.8〜3.05[m]程度である。従って、互いに対向する車線の間隔が判別できれば、この間隔から車線種を推定することができる。
【0022】
予測線設定部9aは、前回演算時に求めた今回の走行車線と路面との車線境界である内側エッジを推定する仮想線Ls(n-1)(ここで、(n-1)は前回値を示す)を求める曲線近似式である二次モデル式(y=ax+bx+c)の各係数a,b,cを1フレーム分、すなわち、演算周期分の時間進み補正処理を行った値(時間進み予測値)a’,b’,c’を求める。
【0023】
尚、二次モデル式は走行車線21L,21R毎に設定されるため、詳細には、左車線用二次モデル式LpL(y=aLx+bLx+cL)と、右車線用二次モデル式LpR(y=aRx+bRx+cR)とが、個別に求められる。従って、時間進み予測値も、左走行車線の時間進み予測値aL’,bL’,cL’と、右走行車線の時間進み予測値aR’,bR’,cR’とが求められる。但し、以下においては、説明を容易にするため、特に断りのない場合は、二次モデル式を、左右の走行車線で区別することなく、y=ax+bx+cと表わし、又、時間進み予測値も、a’,b’,c’と記載する。
【0024】
そして、この時間進み予測値a’,b’,c’に基づく二次モデル式(y=a’x+b’x+c’)から、今回のフレーム画像に対応する1フレーム分の走行車線を予測する車線予測線である第1予測線としての予測標準線LpL,LpR(仮想線Lsの延長線)を求める。又、前回の演算時に二重白線が検出された場合は、予測標準線LpL,LpRに加えて内側誘導線と路面との車線境界である内側エッジを予測する車線予測線である第2予測線としての予測補助線Lp2を求める。尚、この二次モデル式については後述する。
【0025】
車線候補点設定部9bは、画像データメモリ5に格納されている今回撮像した基準画像データと比較画像データとを読込み、又、距離データメモリ8に格納されている距離データを読込む。そして、これら各データに基づき基準画像データ上の自車両が走行する走行レーン左右の車線境界を検出し、この車線境界に候補点(車線候補点)を点列状にプロットする。尚、車線候補点は、連続する点列群毎に分類され、本実施形態では、前フレームからの候補点の移動数が所定値以上、且つ候補点のエッジ強度等に基づいて白線らしさが検出された等の上限を満足する点列群を構成する車線候補点を第1候補点P1として設定し、それよりも外側の点列群の車線候補点を第2候補点P2とし、内側の点列群の車線候補点を第0候補点P0としている。尚、白線らしさは、予め設定されている白線認定条件を候補点毎に判定し、この条件が満足された候補点の集まりで構成された候補点群は、白線らしさを有していると判定する。
【0026】
具体的には、今回撮像した1つのフレームの基準画像データ上の1画素幅の水平ライン上を下側(自車両の手前側)から上向き(遠方)に1画素幅ずつオフセットしながら順次画素を探索し、基準画像データの各画素の輝度値に基づいて各画素の輝度微分値、すなわちエッジ強度(輝度差)が閾値以上に大きく変化する条件を満たしている画素を車線境界として検出する。このエッジ強度は、内側エッジの方が、外側エッジよりも強く表れる。従って、図7に示すように、走行レーンの左右に走行車線21L,21Rが1本ずつ描かれている場合には、この各走行車線21L,21Rの内側エッジが、第1候補点P1としてプロットされる。又、図8に示すように、二重白線の場合は、内側誘導線22の内側エッジが第1候補点P1としてプロットされ、左右外側に平行に描かれている走行車線21L,21Rの内側エッジが第2候補点P2としてプロットされる。
【0027】
更に、図9に示すように、一方の走行レーンの走行車線(本実施形態では、左側走行車線21L)に平行して轍25が形成されている場合、この轍25が水溜まりとなり、そこからの太陽光や照明光の反射光が高輝度で両カメラ1a,1bに受光されると、轍25と路面とのエッジ強度が強くなるため、この轍25の内側と路面とのエッジ(内側エッジ)が車線境界として誤検出される。この場合、第1候補点P1の点列は、予め設定されている条件(前フレームからの候補点の移動数が所定値以上、且つ白線らしさを検出した等)を満足する候補点をプロットしたものが選択されているため、轍25の内側エッジをプロットした点列内の候補点が、この条件を満足しておらず、走行車線21のエッジをプロットした候補点が条件を満足している場合は、走行車線21Lのエッジをプロットした候補点が第1候補点となり、轍25の内側エッジをプロットした候補点は第0候補点となる。尚、左右の各候補点PI,P2,P0は、画面下側(自車両の手前側)から画面上方(遠方)へ移動するに従い1画素の距離が長くなるため、相対的に遠方の各候補点P1,P2,P0は、近方の候補点P1,P2,P0に比し精度が低くなる。
【0028】
そして、図11に示すように、基準画像データと比較画像データとに基づいて生成した仮想道路平面上に、距離データに基づいて算出した左右の候補点(図においては、二重白線のエッジを示す候補点P1,P2が示されている)をプロットし直す。この仮想道路平面には自車両Mが配設されており、撮像手段1に設けられている両カメラ1a,1b間の車幅方向中央の真下の道路面上の点を原点とし、自車両Mの車幅方向にy軸、前後方向にx軸を取る座標が設定される。尚、符号bは車線と自車両Mとのなす角(ヨー角)であり、詳細については後述する。又、上述した各図面では、左右の候補点P1,P2,P0の点列が疎らにプロットされているが、実際にはより細かい点列となっている。
【0029】
予測線一致判定部9cは、予測線設定部9aで求めた左右の予測標準線LpL,LpR(及び左右の予測補助線Lp2)と左右の各候補点P1,P2,P0との一致度[%]を左右で調べ、この一致度(=信頼度)と、各候補点P1,P2,P0の数等から、候補点群を分類し、基本点列となる主候補点Pmを決定する。
【0030】
例えば図12においては、走行レーンの左右に1本の走行車線21L,21Rが描かれているだけであるため、主候補点Pmは第1候補点P1となる。又、図13に示すように、二重白線の入口(開始端)では、内側誘導線22のエッジが第1候補点P1としてプロットされるため、この第1候補点P1が主候補点Pmに設定される。一方、図14に示すように、二重白線の出口(終了端)を過ぎると、走行車線21L,21Rのエッジが第1候補点P1としてプロットされるため、これが主候補点Pmに設定される。更に、図9に示すように、走行レーンに轍25が形成され、この轍25からの反射光によりエッジが検出された場合には、この轍25のエッジに第0候補点P0がプロットされ、走行車線21L,21Rの内側エッジが第1候補点P1としてプロットされるため、この第1候補点P1が主候補点Pmに設定される。
【0031】
曲線近似処理部9dは、予測線一致判定部9cで特定した主候補点Pmに基づいて、最小二乗法により、後述する二次モデル式(y=ax+bx+c)の係数a,b,cを求め、この二次モデル式から走行車線21L,21Rの内側エッジを推定する近似曲線である仮想線Lsを求める。従って、この仮想線Lsは走行レーンの左右に設定される。
【0032】
例えば図12においては、主候補点Pmが第1候補点P1であるため、この第1候補点P1の点列(候補点群)に基づいて仮想線Lsが設定される。又、図13に示すように、二重白線の入口(開始端)では、内側誘導線22のエッジをプロットした第1候補点P1が主候補点Pmに設定されるため、この第1候補点P1の点列に基づいて仮想線Lsが求められる。同様に、図14に示すように、二重白線の出口(終了端)では、走行車線21L,21Rのエッジをプロットした第1候補点P1が主候補点Pmとなるため、この第1候補点P1の点列に基づいて仮想線Lsが設定される。更に、図9に示すように、走行レーンに轍25が形成され、この轍25からの反射光によりエッジが検出され、そこにプロットされた第0候補点P0の数が少ない場合、走行車線21L,21Rの内側エッジにプロットされた第1候補点P1が主候補点Pmとなる。
【0033】
そして、走行レーンの左右に設定された仮想線Ls間のレーン幅に基づいて、仮想線Lsの車線種を推定し、推定した車線種と予測標準線LpL,LpR、及び左右の予測補助線Lp2との一致度より、今回の推定した車線種が正しいか否かを左右で検証する。
【0034】
車線位置設定部9eは、判定した車線種が予測標準線LpL,LpR、或いは左右の予測補助線Lp2と一致している場合、その車線種に応じたシフト量で、当該車線種の位置を走行車線21L,21Rの内側エッジへ移動させて、左右走行車線21L,21Rに対応する横位置cを設定し、今回のフレーム画像における曲線近似式である二次モデル式(y=ax+bx+c)に基づき、自車両Mの走行している走行レーンを区画する左右の走行車線の位置を確定すると共に、1フレーム分の時間進み後の予測係数である時間進み予測値a’,b’,c’を設定する。
【0035】
上述した各処理部9a〜9eでの処理は、具体的には、図3に示す車線位置推定ルーチン、及び図4〜図6に示す車線位置推定処理サブルーチンに従って実行される。尚、以下においては、自車両Mが高速道路を走行している場合を例に掲げて説明する。
【0036】
このルーチンは、撮像手段1で撮像した画像の1フレーム毎に実行され、先ず、ステップS1で、今回プロットした候補点数が、車線を推定するに充分な数か否かを調べる。そして、候補点数が充分な場合は、ステップS2へ進み、不足している場合は、ステップS3へ分岐する。充分な数とは、このプロットした候補点に基づき最小二乗法により求める左右車線毎の二次モデル式(y=ax+bx+c)の各係数a,b,cが安定性、信頼性を維持することのできる数であり、予め実験などに基づいて設定される。
【0037】
そして、ステップS2へ進むと、プロットした候補点に基づいて車線位置推定処理サブルーチンを実行し、ルーチンを抜ける。一方、候補点数が不足していると判定されてステップS3へ分岐すると、候補点数が不足していると判定された後の経過時間が設定時間T以内か否かを調べる。この設定時間Tは、二次モデル式の係数a,b,cの時間進み予測値が安定性、信頼性を維持することのできる時間であり、予め実験などに基づいて設定される。従って、例えば、設定時間Tが300[ms]、フレームレートが10[fps]とした場合、3フレーム以内であれば、信頼性、安定性を維持することができると判定される。
【0038】
そして、未だ、設定時間Tが経過していないと判断されたときは、ステップS4へ進み、最新の二次モデル式(y=ax+bx+c)の係数a,b,cに基づき、所定経過時間後の予測係数である時間進み予測値a’,b’,c’を設定し、ルーチンを抜ける。又、候補点数が不足した状態が設定時間T[ms]以上経過していると判断されると、二次モデル式の係数a,b,cに基づいて設定する時間進み予測値は安定性、信頼性に欠けると判定し、時間進み予測値を設定することなく、そのままルーチンを抜ける。
【0039】
又、上述したステップS2の車線位置推定処理は、図4〜図6に示す車線位置推定処理サブルーチンにおいて実行される。
【0040】
このサブルーチンでは、先ず、ステップS11で、前回の演算時に予測モデル式が設定されているか否かを調べる。この予測モデル式は、上述したステップS4、或いは後述するステップS30で求めた予測値a’,b’,c’に基づいて設定される(y=a’x+b’x+c’)。
【0041】
そして、前回演算時に予測モデル式が設定されている、換言すれば予測値a’,b’,c’が設定されていると判定した場合、ステップS12へ進み、設定されていない場合、すなわち、二次モデル式の係数a,b,cがクリアされていると判定した場合は、ステップS23へジャンプする。
【0042】
ステップS12へ進むと、前回算出した予測モデル式(y=a’x+b’x+c’)の係数xに、今回プロットした各候補点群毎の各候補点P0,P1,P2のx座標値を代入して、予測モデル式の予測y座標をそれぞれ算出する。すなわち、今回プロットした各候補点のP0,P1,P2のx座標と同一のx座標上にある予測モデル式上のy座標(予測y座標)を求め、この予測y座標と今回プロットした各候補点群毎の各候補点P0,P1,P2のy座標とを比較する。尚、以下においては、説明を容易にするために、これらの座標点(x,予測y)により特定される候補点を、それぞれ第1予測候補点P1、第2予測候補点P2、第0予測候補点P0と、予測前の候補点と同一の符号を用いて説明する。
【0043】
又、前回のフレーム画像で、二重白線の走行車線21L,21Rと内側誘導線22とが検出されている場合、予測標準線LpL,LpRを求める二次モデル式の係数である時間進み予測値a‘,b’,c‘に加え、内側誘導線22の内側エッジをプロットした第1候補点P1に基づいて予測補助線Lp2を求める二次モデル式の係数である時間進み予測値が設定される。図8〜図16に示すように、この予測標準線LpL,LpRは、前回のフレーム画像に基づいて設定した仮想線Ls(n-1)の延長上にあり、今回のフレーム画像に基づいて設定する主候補点Pmの判定基準となる。このように、予測標準線LpL,LpR(二重白線の場合は、予測標準線LpL,LpRと左右の予測補助線Lp2)は、前回の演算時に求めた仮想線Lsの延長線上に設定されるので、急激に変化することがなく安定している。尚、ステップS11,S12での処理が、予測線設定部9aでの処理に対応している。
【0044】
続いて、ステップS13へ進み、ステップS12で求めた予測モデル式上の予測y座標と、今回プロットした各候補点のP0,P1,P2のy座標とを比較して、その一致度[%]を求める。予測y座標と各候補点のP0,P1,P2のy座標との一致度は、予測y座標を基準として、換言すれば予測二次モデル式から求めた予測標準線LpL,LpRを基準として各候補点のP0,P1,P2のy座標の分散から調べる。すなわち、例えば、図12に示すように、走行レーンの両側に第1候補点P1のみがプロットされている場合、当然、この第1候補点P1が予測標準線LpL,LpRに対して一致度が高くなる。又、例え予測補助線Lp2が設定されていても、この予測補助線Lp2と第1候補点P1との一致度は低いと判定する。
【0045】
又、図13に示すように、二重白線では、第2候補点P2と予測標準線LpL,LpRとの一致度が高く、しかも、第1候補点P1と予測補助線Lp2との一致度が高くなり、候補点数も多いと判定する。一方、図9に示すように、走行レーンに轍25が形成され、この轍25が水溜まりとなっており、水面からの反射光により路面とのエッジが検出された場合、この内側エッジに候補点がプロットされる。この場合、水溜まりの始まりでは、走行車線21L,21Rのエッジをプロットする第1候補点P1の内側に、轍25のエッジをプロットする第0候補点P0が位置している。しかし、第1候補点P1は予測標準線LpL,LpRとの一致度が高く、候補点数も多い。一方、予測標準線LpL,LpRと第0候補点P0との一致度は低いと判定する。
【0046】
又、轍25が形成されている位置(水溜まり)を走行中の場合、轍25の内側エッジに第1候補点P1がプロットされ、その外側にある走行車線21L,21Rの内側エッジには第2候補点P2がプロットされる。轍25は走行車線21L,21Rと平行に形成されているものではなく、図15に示すように、遠方において外れた場合に誤判定を招く可能性がある。本実施形態では、予測標準線LpL,LpRと第1候補点P1、及び第2候補点P2との一致度を調べているので、当然第2候補点P2の一致度が高く、候補点数も多いと判定され、又、第1候補点P1と予測補助線Lp2との一致度は低いと判定される。尚、ステップS13での処理が、車線候補点設定部9bでの処理の一部に対応している。
【0047】
次いで、ステップS14へ進み、このステップS14〜S18で、不要なノイズ除去処理が実行される。ステップS14では、先行車補正が必要か否かを調べる。例えば図10に示すように、左右に走行車線21L,21Rが描かれている走行レーンをバス等の大型車両31が先行車として走行している場合、前方を走行する大型車両31の後部路面上に、当該大型車両31の陰影31aが映し出されたり、大型車両31のリヤに影線31bが形成される場合がある。
【0048】
本実施形態では、走行車線をエッジ強度(輝度差)によって検出しているため、陰影31aや影線31bの境界を走行線のエッジと誤認識する場合がある。
【0049】
この場合、誤検出したエッジの長さは有限であり、又、当該エッジの方向も急激に屈曲しているため、陰影31aや影線31bのエッジを検出した第1候補点P1の点列は、路面に描かれている左側走行車線21Lのエッジを検出してプロットした第1候補点P1の点列に比し、大きく屈曲されるか、終端で途切れて検出不能となる等の異常な状態となる。
【0050】
従って、ステップS14では、先行車を検出し、且つ予測標準線LpL,LpRと第1候補点P1との一致度[%]が予め設定した設定値よりも低い場合、点列(候補点群)に異常な値を示す第1候補点(ノイズ成分)が存在すると判定し、当該ノイズ成分の含まれた第1候補点P1の候補点位置を補正すべく、ステップS15へ分岐する。そして、ステップS15で、先行車との車間距離、及び一致度に基づき異常な座標位置にプロットされている第1候補点P1の一連の点列を削除してステップS16へ進む。一方、ステップS14で先行車が検出されず、或いは先行車が検出されても、予測標準線LpL,LpRと第1候補点P1との一致度が設定値以上の場合は、誤判定を示すノイズ成分が含まれていないと判定し、ステップS16へ進む。その結果、先行車が検出されている場合であっても、その先行車の横から実際の走行車線21L或いは21Rの内側エッジが検出されている場合は、第1候補点P1がプロットされるため、高い信頼性を得ることができる。
【0051】
ステップS16では、自車両Mの走行している走行レーンが二重白線であり、前方に二重白線の出口(終了端)が有るか否かを調べる。二重白線の出口では、内側誘導線22が急に途切れるため、図8に示すように、この内側誘導線22をプロットする第1候補点P1は、内側誘導線22が途切れることで、走行車線21Lをプロットする第2候補点P2と同一座標上にプロットされてしまうため、内側誘導線22の終了端を過ぎた付近では、第1候補点P1が間違った位置にプロットされてしまう。
【0052】
本実施形態では、二重白線が検出された場合、予測標準線LpL,LpRに加えて予測補助線Lp2が求められるため、この予測補助線Lp2と第1候補点P1、第2候補点P2との一致度[%]を調べる。そして、近方では、第1候補点P1と予測補助線Lp2との一致度が設定値以上で、且つ、遠方では第2候補点P2と予測標準線LpL,LpRとの一致度が設定値以上の場合、二重白線の出口(終了端)と判定し、ステップS17へ分岐する。又、近方、遠方の何れでも、第1候補点P1と予測補助線Lp2或いは予測標準線LpL,LpRとの一致度が設定値以上の場合、ステップS18へ進む。
【0053】
ステップS17では、一致度[%]が設定値よりも低いと判定された第1候補点P1を含み、それよりも遠方の第1候補点P1の点列を、予測補助線Lp2側へシフトさせると共に、当該位置にある第2候補点P2の点列を削除する。
【0054】
そして、ステップS16、或いはステップS17からステップS18へ進むと、各候補点P1,P2,P0のデータ数、及び予測標準線LpL,LpRと各候補点P1,P2,P0との一致度[%]に基づいて、点列(候補点群)を分離し、現在の走行レーンの主候補点Pmを設定する。その結果、例えば、図12では、走行車線21L,21Rの内側エッジをプロットしている第1候補点P1が主候補点Pmとして設定される。又、図13に示すように、二重白線の始まりでは、内側誘導線22の内側エッジをプロットしたる第1候補点P1が主候補点Pmとして設定される。更に、図14に示すように、二重白線の出口(終了端)よりも遠方では、走行車線21L,21Rの内側エッジをプロットした第1候補点P1が主候補点Pmとして設定される。更に、図9に示すように、走行車線21L,21Rの内側に轍25が形成されており、この轍25の内側エッジが第0候補点P0でプロットされている場合であっても、走行車線21L、21Rの内側エッジをプロットしている第1候補点P1が主候補点Pmとして設定される。尚、上述したステップS13の一部、及びステップS14〜S18での処理が、予測線一致判定部9cでの処理に対応している。
【0055】
次いで、ステップS19へ進むと、走行レーンの左右から主候補点Pmが設定されたか否かが調べられ、双方の主候補点Pmが設定されている場合は、ステップS20へ進み、又、主候補点Pmの設定に失敗した場合は、ステップS20以下の検証は行わずに、ステップS23へジャンプする。
【0056】
ステップS20へ進むと、ステップS20〜S22で主候補点Pmの車線種を検証する。先ず、ステップS20では、左右の主候補点Pm間の距離と、標準レーン幅W1、及び狭レーン幅W2とを比較し、左右の主候補点Pm間の距離が、標準レーン幅W1か、狭レーン幅W2か、或いは両レーン幅W1とW2との間の何れに最も多く点在している(分散が最小)かを調べる。そして、標準レーン幅W1に候補点数が最も多く点在している場合は(例えば、図12の状態)、「標準最小」と判定する。又、狭レーン幅W2に候補点数が最も多く点在している場合は(例えば図13の状態)、「狭最小」と判定する。更に、両レーン幅W1とW2との間に候補点数が最も多く点在している場合は、「標狭最小」と判定する。
【0057】
次いで、ステップS21へ進むと、このステップS21、及び次のステップS22で、上述したステップS20で判定した左右の主候補点Pmの分散(最小二乗分散)の状態に応じて、固定データメモリ9fに格納されている車線種判定データT1〜T3を読込み、主候補点Pmの車線種を決定する。すなわち、「標準最小」(主候補点Pmが標準レーン幅W1にある)と判定されたときは、表1に示す第1車線種判定データT1を読込み、先ず、ステップS21で主候補点Pmの左車線状態と右車線状態とを判定する。次いで、ステップS22で、ステップS21で判定した車線状態に基づき、主候補点Pmがプロットされている車線種を決定し、上述したステップS18で設定した主候補点Pmが、車線種(走行車線、或いは内側誘導線)を正しくプロットしているものであるか否かを検証する。
【表1】

【0058】
第1車線種判定データT1では、走行車線21L、21Rの内側に轍25が形成されており、この轍25を誤検出しているか否かを調べる。具体的には、左右の第1候補点P1と、予測標準線LpL,LpR、及び予測補助線Lp2とを比較する。そして、第2候補点P2と予測標準線LpL,LpRとの一致度が高い場合、当該主候補点Pmは轍25の内側エッジをプロットしていると判定する(b),c))。
【0059】
又、「狭最小」(主候補点Pmが狭レーン幅W2にある)と判定されたときは、表2に示す第2車線種判定データT2を読込み、ステップS21で主候補点Pmの左車線状態と右車線状態とを判定する。次いで、ステップS22で、ステップS21で判定した車線状態に基づき、主候補点Pmがプロットされている車線種を決定し、上述したステップS18で選択した主候補点Pmが、車線種(走行車線、或いは内側誘導線)を正しくプロットしているものであるか否かを検証する。
【表2】

【0060】
この第1車線種判定データT2では、主候補点Pmが二重白線の内側誘導線22のエッジをプロットしているか否かを調べる。二重白線は、内側誘導線22の外側に走行車線21L,21Rが描かれているため、第1候補点P1と予測補助線Lp2、及び第2候補点P2と予測標準線LpL,LpRとを比較する。そして、これらの一致度が高い場合、主候補点Pmは内側誘導線22の内側エッジをプロットしていると判定する。
【0061】
又、「標狭最小」(主候補点Pmが標準レーン幅W1と狭レーン幅W2との間にある)と判定されたときは、表3に示す第3車線種判定データT3を読込み、ステップS21で主候補点Pmの左車線状態と右車線状態とを判定する。次いで、ステップS22で、ステップS21で判定した車線状態に基づき、主候補点Pmがプロットされている車線種を決定し、上述したステップS18で主候補点Pmが、車線種(走行車線、或いは内側誘導線)を正しくプロットしているか否かを検証する。
【表3】

【0062】
「標狭最小」は、左右の何れか一方の主候補点Pmが走行車線21L,21Rの内側エッジをプロットしている場合、他方の主候補点Pmは、内側誘導線22或いは轍25の内側エッジをプロットしていると推定できる。又、二重白線であっても内側誘導線22が掠れている場合には、走行車線21L或いは21Rのエッジをプロットする。従って、第3車線種判定データT3では、先ず、走行車線21L或いは21Rの何れか一方の内側エッジをプロットしている主候補点Pmを、第1候補点P1と予測標準線LpL,LpRとの一致度に基づいて調べ、次いで、反対側の主候補点Pmが、内側誘導線22と轍25との何れの内側エッジをプロットしているかを調べる。
【0063】
この場合、主候補点Pmが内側誘導線22のエッジをプロットしている場合、第1候補点P1と予測補助線Lp2との一致度が高く、且つ第2候補点P2と予測標準線LpL,LpRとの一致度が高くなる。又、主候補点Pmが轍25の内側エッジをプロットしている場合、轍25は車重の大きな大型車両の通過によって形成されため、線幅は白線よりも広い(太い)。従って、主候補点Pmをプロットした内側エッジと、その外側エッジとの差を調べ、白線幅よりも太い場合、轍25と判定する。
【0064】
そして、上述したステップS22で主候補点Pmのプロットされている車線種が決定されると、プログラムはステップS24へ進み、左右の主候補点Pmの点列と、予測標準線LpL,LpR或いは予測補助線Lp2、及びレーン幅とが共に一致している態様か否かを調べる。そして、両者が一致している態様の場合、主候補点Pmの点列は信頼性が高く、走行車線21L,21Rの内側エッジを明確に推定することができると判定し、ステップS25へ進む。一致していない態様の場合は、主候補点Pmの点列は信頼性が低いと判定し、ステップS26へ分岐する。
【0065】
具体的には、上述した表1に示す第1車線種判定データT1では、a)の条件を満足する車線種(左右とも走行車線)が、予測標準線LpL,LpRと標準レーン幅W1とが共に一致している態様となる。又、表2に示す第2車線種判定データT2には、予測補助線Lp2と狭レーン幅W2とが共に一致している態様が示されている。一方、表3に示す第3車線種判定データT3では、主候補点Pmが、両レーン幅W1,W2の間にあるため、予測標準線LpL,LpR或いは予測標準線LpL,LpRと標準レーン幅W1とが共に一致する態様は無い。
【0066】
そして、ステップS25へ進むと、一致するレーン幅W1或いはW2に応じて、後述するステップS29で設定する車線モデル式(y=ax+bx+c)の係数cを補正する横位置シフト量Δcを決定する。後述するように、本実施形態では、自車両Mのカメラ1a,1bの中間を原点とし、左側を負値(−)、右側を正値(+)座標としているため、左側車線のシフト量Δcは、自車両から離れる方向へシフトさせる場合の符号は負値(−)となる。一方、右側車線のシフト量Δcは、自車両から離れる方向へシフトさせる場合の符号は正値(+)となる。
【0067】
上述したように、ステップS25で対象となる態様は、表1に示す第1車線種判定データT1のa)、及び表2に示す第2車線種判定データT2の態様のみである。
【0068】
第1車線種判定データT1のa)の態様では、主候補点Pmの点列が走行車線21L,21Rの内側エッジに沿ってプロットされているため、横位置シフト量Δcは0として(Δc←0)、ステップS28へ進む。又、第2車線種判定データT2の態様では、主候補点Pmの点列が、二重白線の内側誘導線22の内側エッジに沿ってプロットされているため、左右の主候補点Pmを走行車線21L,21Rの内側エッジ方向へシフトさせるべく、両レーン幅W1,W2の差分の1/2による横位置シフト量Δc(Δc←(W1−W2)/2)を設定して、ステップS28へ進む。
【0069】
一方、ステップS24からステップS26へ進むと、その態様に応じて、左右の主候補点Pmに対するシフト量を個別に設定する。具体的には、上述した表1に示す第1車線種判定データT1では、態様b),c)が対象となり、表3に示す第3車線種判定データT3では全ての態様が対象となる。この場合、左右の主候補点Pmが予測標準線LpL,LpR、或いは予測補助線Lp2と一致していないので、上述したように両レーン幅W1,W2に応じて一義的にシフトさせると、前回のフレーム画像に基づいて設定した横位置に比し、今回の横位置が大きく変動してしまう可能性がある。
【0070】
そのため、第1車線種判定データT1の態様b)では、左側の主候補点Pmが轍25のエッジをプロットしているが、この轍25の内側エッジにプロットした主候補点Pmの横位置を、例えば、前回値をフィルタリングすることで、前回値から大きく変動しない値に設定し、ステップS28へ進む。
【0071】
又、表3に示す第3車線種判定データT3の態様a)では、右側の主候補点Pmが走行車線21Rの内側エッジをプロットし、左側の主候補点Pmが内側誘導線22の内側エッジをプロットしていると判定しているため、左側の主候補点Pmの点列に対する横位置シフト量Δc(Δc←(W1−W2)/2)のみを設定して、ステップS28へ進む。又、態様b)では、右側の主候補点Pmが走行車線21Rの内側エッジをプロットし、左側の主候補点Pmが轍25の内側エッジをプロットしていると判定しているため、右側の主候補点Pmの点列に対する横位置シフト量Δc(Δc←(W1−W2)/2)のみを設定して、ステップS28へ進む。
【0072】
一方、表3に示す第3車線種判定データT3の態様c)では、上述した態様a)とは逆に、左側の主候補点Pmが走行車線21Lの内側エッジをプロットし、右側の主候補点Pmが内側誘導線22の内側エッジをプロットしていると判定しているため、右側の主候補点Pmの点列に対する横位置シフト量Δc(Δc←(W1−W2)/2)のみを設定して、ステップS28へ進む。又、態様d)では、左側の主候補点Pmが走行車線21Lの内側エッジをプロットし、右側の主候補点Pmが轍25の内側エッジをプロットしていると判定しているため、左側の主候補点Pmの点列に対する横位置シフト量Δc(Δc←(W1−W2)/2)のみを設定して、ステップS28へ進む。
【0073】
そして、ステップS28へ進むと、フレーム画像上の主候補点Pmの座標(x,y)のy横軸(横軸)方向の切片である横位置cを横位置シフト量Δcで補正して新たな横位置(切片)に関する係数cを設定する(c←c+Δc)。
【0074】
次いで、ステップS29へ進み、主候補点Pmの点列の各座標(x,y)に基づき、最小二乗法により、最もフィットする曲線近似となる車線モデル式を次式から求めて、ステップS30へ進む。尚、ステップS30の処理は後述する。
【0075】
y=ax+bx+c
ここで、係数aは車線の曲率に関するパラメータ、係数bは自車両Mの中央(正確には、両カメラ1a,1bの中間)を通る仮想線Lo(図11参照)に対する自車両Mの傾き(ヨー角)に関する角度パラメータである。又、横位置を示す係数cは自車両Mの中央(正確には、両カメラ1a,1bの中間)を原点とするy軸方向のオフセット量(原点からの横位置)であり、本実施形態では、左側を負値(−)、右側を正値(+)としている。従って、左側の車線モデル式の係数cは負値(−)となり、右側の車線モデル式の係数cは正値(+)となる。
【0076】
一方、前回の演算時に予測モデル式が設定されていないと判定されて、ステップS11からステップS23へ分岐し、或いは主候補点Pmが設定されなかったと判定して、ステップS19からステップS23へ分岐すると、左右の第1候補点P1間のレーン幅と、標準レーン幅W1、狭レーン幅W2とを比較し、第1候補点P1が走行車線21L,21Rの内側エッジをプロットしたものか、二重白線の内側誘導線22のエッジをプロットしたものかを調べて、車線種を設定する。
【0077】
次いで、ステップS27へ進み、第2候補点P2がプロットされているか否かを調べ、プロットされている場合は、第2候補点P2が走行車線21L,21R側にあると推定し、第1候補点P1の点列に対する横位置シフト量Δc(Δc←(W1−W2)/2)を設定して、ステップS28へ進む。この場合、左側車線の第1候補点P1の点列に対する横位置シフト量Δcは、負値(−)に設定され、右側車線の第1候補点P1の点列に対する横位置シフト量Δcは、正値(+)に設定される。
【0078】
又、第2候補点P2がプロットされていない場合は、横位置シフト量Δcを0として(Δc←0)、ステップS28へ進む。ステップS28へ進むと、フレーム画像上の第1候補点P1の座標(x,y)のy横軸(横軸)方向の切片である横位置cを横位置シフト量Δcで補正して新たな横位置(切片)に関する係数cを設定する。この場合、本実施形態では、左側を負値(−)、右側を正値(+)に設定しているため、左車線用二次モデル式LpL(y=aLx+bLx+cL)の場合は、cL←cL−Δcとなり、右車線用二次モデル式LpR(y=aRx+bRx+cR)の場合は、cR←cR+Δcとなる。
【0079】
そして、ステップS29へ進み、第1候補点P1の点列の各座標(x,y)に基づき、最小二乗法により、最もフィットする曲線近似となる車線モデル式(y=ax+bx+c)の係数a,b,c(すなわち、左側車線のモデル式(y=aLx+bLx+cL)の係数aL,bL,cL、及び右側車線のモデル式(y=aRx+bRx+cR)の係数aR,bR,cRを求める。
【0080】
その後、ステップS30で、上述したステップS29で設定した係数a,b,cに基づき、この係数a,b,cを演算周期分だけ時間補正して予測値(時間進み予測値)a’,b’,c’を設定してルーチンを抜ける。
【0081】
このように、本実施形態では、前回の演算時に求めた走行車線を予測する二次モデル式(y=a’x+b’x+c’)に基づいて、予測標準線LpL,LpR及び左右の予測補助線Lp2を求め、この各予測線LpL,LpR,Lp2と、当該二次モデル式に基づき、今回、車線のエッジをプロットした各候補点P1,P2,P0のx座標を、予測モデル式(y=a’x+b’x+c’)に代入して予測y座標を求め、この予測y座標と各候補点P1,P2,P0のy座標とを比較し、両者の一致度、及び各候補点P1,P2,P0の候補点数等から、候補点群を分類して、基本点列となる左右の主候補点Pmを求めるようにしたので、この各主候補点Pmを高い精度で設定することができる。
【0082】
又、その際、例えば二重白線の出口(終了端)、或いは先行車の路面に映し出された陰影31aや、先行車のリヤに形成された隠線31bの境界を走行車線と誤認識してプロットした場合に、このようなノイズ成分をを主候補点Pmが設定される前に修正するようにしたので、主候補点Pmのプロットされている車線を高い精度で推定することができる。
【0083】
更に、この左右の主候補点Pmが、車線種(走行車線、或いは内側誘導線)を正しくプロットしているか否かを、この左右の主候補点Pmの、予め設定されている標準レーン幅W1と狭レーン幅W2とに対する分散、及び一致度に基づいて検証しているので、車線をより高精度で推定することができる。
【0084】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、車線推定装置は、自車両Mが車線を逸脱しようとしたときに警告を発するレーンキープ制御に適用することも出来る。更に、撮像手段1はメインカメラ1aとサブカメラ1bとからなるステレオカメラである必要はなく、単眼カメラであっても良い。撮像手段1として、単眼カメラを用いた場合は、例えば周知のモーションステレオ法により三次元情報を得る。更に、曲線近似処理部9dで求める曲線近似式は、二次式に限らず三次式であっても良い。
【符号の説明】
【0085】
1…撮像手段、
9…車線推定部、
9a…予測線設定部、
9b…車線候補点設定部、
9c…予測線一致判定部、
9d…曲線近似処理部、
9e…車線位置設定部、
9f…固定データメモリ、
21L,21R…走行車線、
22…内側誘導線、
25…轍、
31…大型車両、
LpL,LpR…予測標準線、
Lp2…予測補助線、
Ls…仮想線、
M…自車両、
P0…第0候補点、
P1…第1候補点、
P2…第2候補点、
Pm…主候補点、
W1…標準レーン幅、
W2…狭レーン幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて該車両の外部環境を撮像する撮像手段と、
予め設定されている複数の車線種毎のレーン幅データを記憶する記憶手段と、
前記撮像手段で撮像した画像に基づいて走行車線と路面との車線境界を検出し、該車線境界に車線候補点を点列状にプロットする車線候補点設定手段と、
前回の演算時に求めた仮想線を求める曲線近似式に基づき、該曲線近似式を演算周期分の時間進み補正して車線予測線を求め、該車線予測線と前記車線候補点の点列との一致度を調べ、一致度の高い点列を成す前記車線候補点を主候補点として設定する予測線一致判定手段と、
前記主候補点の点列に基づいて前記車線境界を推定する前記仮想線の曲線近似式を設定し、該仮想線と前記記憶手段に記憶されている前記レーン幅とに基づき該仮想線の車線種を推定する曲線近似処理手段と
を備えることを特徴とする車線推定装置。
【請求項2】
前記予測線一致判定手段は、前記撮像手段で撮像した前記外部環境の画像に基づいて先行車を検出し、且つ前記予測線と前記車線候補点の点列との一致度が設定値よりも低い場合、該候補点に前記先行車によって形成されるノイズ成分をプロットした車線候補点が存在すると判定し、前記先行車との車間距離、及び一致度に基づき異常な値を示す前記車線候補点の点列を削除する
ことを特徴とする請求項1記載の車線推定装置。
【請求項3】
前記予測線一致判定手段は、前記車線予測線として二重白線の走行車線を推定する第1予測線と該走行車線の内側に描かれている内側誘導線を推定する第2予測線とが求められている場合、近方では前記第2予測線に前記候補点が多く点在しており、遠方では前記第1予測線に前記候補点が多く点在している場合、遠方に前記内側誘導線の終了端有りと判定し、該終了端よりも遠方の前記第1予測線に点在している前記車線候補点を削除し、或いは第1予測線に点在している前記候補点を削除すると共に第2予測線に点在している前記候補点を前記第1予測線側へシフトさせる
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の車線推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−73924(P2012−73924A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219649(P2010−219649)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】