説明

車載タンク及び粉体輸送用バルク車

【課題】 ハッチが形成されている部分及び残留空気排出パイプの車載タンクへの装着部分の清掃が容易な車載タンクを提供する。
【解決手段】内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンクであって、前記車載タンクの上面に設けられたハッチ14の周縁部に絞り加工により形成された立設部30と、立設部30に接して溶接された短管部材32とを備えると共に、前記車載タンク12後端上部表面に対して、一端部が略垂直に溶接された短管と、短管の他端部に一端部が装着される屈曲管と、屈曲管の他端部に一端部が装着される残留空気排出パイプとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製粉された小麦粉などの食用の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンク、粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法及び該車載タンクを装備した粉体輸送用バルク車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルク状の粉体、例えば、製粉された小麦粉などの食用の粉体(以下、小麦粉を例にして説明する)を製粉工場から製パン工場等の顧客の加工工場に輸送する際には、従来は、25kg詰めの袋などに小麦粉を袋詰めしてから、この袋詰めされた小麦粉をトラックなどで輸送していたが、近年では、大量に購入する顧客を中心に、袋詰めをすることなく小麦粉をバルク状の粉体のままでタンクローリの車載タンクに投入して積載し、この車載タンクに積載された小麦粉を輸送するケースが増えている。そして、このようなバルク状の粉体を輸送するタンクローリをバルク車と称している。
【0003】
このバルク車による輸送によって、小麦粉を袋詰めすることなく輸送して、顧客の加工工場のサイロ(貯蔵タンク)に直接納入することが可能になり、一時に大量の小麦粉(8〜10トン)を輸送することができるとともに、製粉工場における袋詰め工程や顧客の加工工場における袋からの取り出し作業などが不要になり、輸送コストを大幅に削減することができるので、近年ではこの輸送方法が多く用いられている。
【0004】
このバルク状の小麦粉を輸送するバルク車は、例えば、図5に示すようなバルク車130であって、このバルク車130の車載タンク132に小麦粉を積載して輸送する。この図5においては、バルク車130の車載タンク132に製粉工場で小麦粉を投入する方法と、顧客の工場で小麦粉を排出する方法の双方が同時に描かれている。すなわち、製粉工場でバルク車130に小麦粉を投入するときには、例えば、製粉工場において製粉された小麦粉を積込場所である2階に搬送し、1階に駐車するバルク車130の車載タンク132に蛇腹状の搬送チューブ134を介して自然落下させ、バルク車130の車載タンク132に投入して積み込む。
【0005】
この小麦粉の積み込みでは、小麦粉は、例えば、2本の蛇腹状の搬送チューブ134によって、バルク車130の車載タンク132の上面に設けられた前方側及び後方側の2個の投入ハッチ136から投入され、中央の投入ハッチ136から風抜きがなされる。この例に限ることなく、小麦粉の投入・風抜きは適宜どの投入ハッチ136を用いてもよい。また、顧客の工場において、サイロに小麦粉を排出するときには、排出ハッチ137の排出口138から排出し、搬送チューブ140を通して空気輸送でサイロまで搬送する。この際に、油圧シリンダ(図示しない)で車載タンク132の前部を押し上げて車載タンク132を傾け、バルク車130に搭載されたコンプレッサーまたは顧客工場に設置されたコンプレッサー(ともに図示しない)を駆動し、発生した圧縮エアーを車載タンク132の前端上部に導入することでタンク内部を加圧し、さらに排出ハッチ137の内側に配置された流動板から空気を噴出させて排出ハッチの内側の小麦粉を流動化させ排出口138から排出する(特許文献1参照)。
【0006】
ここで、車載タンク132から小麦粉を排出する際には、車載タンク132内に空気を送り込み車載タンク132内に所定の圧力を加えている。小麦粉の排出が終了した場合には、排出ハッチ137の排出口138を閉じるが、車載タンク132内には、所定の圧力を有する空気が残存しているため、車載タンク132内の圧力を通常の状態に戻す必要がある。従って、車載タンク132を後方から見た図6に示すように、車載タンク132には、残留空気を排出するための残留空気排出パイプ150が屈曲管152を介して装着されている。
【特許文献1】特開2004−99147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のバルク車においては、車載タンク132の上部に形成されているハッチ136は、車載タンク132の上部を構成する上部胴板に設けられた下穴に短管部材を差し込んだ構造を有するため、車載タンク132の内壁の短管部材と上部胴板とが接続されている部分に隅部が形成され、この部分に付着した小麦粉を剥離し清掃することが困難であり、また清掃が確実に行われているか否かの確認も困難であった。更に、残留空気排出パイプ150は、図7に示すように、車載タンク132の上部に直に溶接された屈曲管152にクランプ154により装着されているため、屈曲管152の内部に小麦粉が付着した場合、該屈曲管152の内部を清掃すること及び清掃状況を確認することが困難であった。
【0008】
本発明の課題は、ハッチが形成されている部分及び残留空気排出パイプを装着する部分における清掃とその状況を容易に確認可能な粉体輸送用バルク車の車載タンク、該粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法及び該車載タンクを装備した粉体輸送用バルク車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉体輸送用バルク車の車載タンクは、内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンクであって、前記車載タンクの上面に設けられたハッチの周縁部に絞り加工により形成された立設部と、前記立設部の外周部に、内周部を接して溶接された短管部材と、前記車載タンク後端上部表面に対して、一端部が略垂直に溶接された短管と、前記短管の他端部にクランプにより一端部が装着される屈曲管と、前記屈曲管の他端部にクランプにより一端部が装着される残留空気排出パイプとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法は、内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法であって、前記車載タンクを構成する上部胴板に長手方向に交差する方向の所定の曲率を付与する曲率付与工程と、所定の曲率を付与された前記上部胴板に所定の大きさの下穴を形成する下穴形成工程と、前記下穴の周縁部に絞り加工により立設部を形成する立設部形成工程と、前記立設部の外周部に、短管部材の内周部を接して溶接する溶接工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の粉体輸送用バルク車は、本発明の車載タンクを装備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粉体輸送用バルク車の車載タンクによれば、車載タンクの上面に設けられたハッチ部分が、ハッチの周縁部に絞り加工により形成された立設部と、立設部の外周部に内周部を接して溶接された短管部材とにより構成されていると共に、車載タンク後端上部表面に対して、一端部が略垂直に溶接された短管と、短管の他端部にクランプにより一端部が装着される屈曲管と、屈曲管の他端部にクランプにより一端部が装着される残留空気排出パイプとを備えているため、車載タンクのハッチ部分及び残留空気排出パイプが装着される部分の清掃及び清掃の確認を容易に行うことができる。即ち、従来の車載タンクにおいては、車載タンク内において上部胴板と短管部材とが接する隅部に小麦粉が付着し、清掃が困難であったが、本願の車載タンクにおいては、車載タンクのハッチの周縁部に絞り加工により形成された立設部が設けられ、隅部が存在しないため清掃及び清掃の確認を容易に行うことができる。更に、従来の車載タンクには、屈曲管が溶接されていたため、屈曲管の内部の清掃及び清掃状況の確認が困難であったが、本願の車載タンクにおいては、車載タンクの表面に対して略垂直に短管が溶接されているため、見通しの悪い部分が存在せず、容易に短管内部の清掃及び清掃状況の確認を行なうことができる。
【0013】
また、本発明の粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法によれば、ハッチ部分の清掃及び清掃の確認を容易に行うことができる車載タンクを製造することができる。
【0014】
また、本発明の粉体輸送用バルク車によれば、粉体輸送用バルク車が装備する車載タンクのハッチの周縁部に絞り加工により形成された立設部が設けられ、隅部が存在せず、かつ、車載タンクに溶接された直線形状を有する短管を介して残留空気排出パイプが装着されているため、清掃及び清掃の確認を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態にかかる粉体輸送用バルク車の車載タンクについて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る粉体輸送用バルク車の構成を示す図である。
【0016】
図1に示す粉体輸送用バルク車10は、前述したように、バルク状の小麦粉を輸送するためのタンクローリであって、車体の上部に小麦粉を収納する車載タンク12が設けられており、この車載タンク12の上面に設けられた前後2つのハッチ(投入ハッチ)14から小麦粉を供給して積載する。この際に小麦粉が投入されるハッチ14の間に設けられたハッチ(空気抜きハッチ)14を開放して、小麦粉と共に送られる空気の風抜きが行なわれる。なお、小麦粉が投入されるハッチ14は、前後2つのハッチに限定されるものではなく、積み込み工場の形態等に応じて、任意のハッチ14が投入ハッチとして用いられる。例えば、前方及び中央のハッチ14を投入ハッチとし、後方のハッチ14を空気抜きハッチとしてもよく、中央及び後方のハッチ14を投入ハッチとし、前方のハッチ14を空気抜きハッチとしてもよい。
【0017】
また、車載タンク12から小麦粉を排出する際には、車載タンク12内に小麦粉が残らないように、油圧シリンダ(図示しない)によって車載タンク12の前部を押し上げて車載タンク12を傾け、バルク車10に搭載されたコンプレッサーまたは積み込み工場に設置されたコンプレッサー(ともに図示しない)を駆動し、発生した圧縮エアーを車載タンク12の前端上部に導入することでタンク内部を加圧し、さらに排出ハッチ16の側壁から図示しない流動用エアー配管を介して供給される流動用エアーを排出ハッチ16の内側に配置された図示しない流動板から噴出させて排出ハッチ16の内側の小麦粉を流動化させての排出口17から排出する。
【0018】
図2は、車載タンク12のアルミ製の胴板の板取りの要領を示す図である。図2に示すように車載タンク12の胴部は、車両前後方向に延びる上部胴板20、側部胴板22,24により構成されており、車載タンク12の上部胴板20にハッチ14が、車両前後方向に所定間隔で形成されている。
【0019】
図3は、ハッチの中心を通る位置における車両幅方向の断面図である。車載タンク12の上面に設けられたハッチ14は、その周縁部に絞り加工により形成された円周状の立設部30と、内周部を立設部30の外周部に接して溶接された短管部材32を備えて構成されている。即ち、車載タンク12の上部胴板20内壁面から立設部30に連続する部分34は、所定の曲率、例えば、曲率半径R=20mmを有する面形状を有する。従って、この部分に小麦粉が付着した場合においても、清掃及びその確認を容易に行なうことができる。なお、所定の曲率は、曲率半径R=20mm等に限定されるものではなく、隅部を有さない面形状となる曲率であればよい。その曲率半径としてはR=10〜30mmが好適である。
【0020】
図4は、実施の形態に係る車載タンクにおける残留空気排出パイプ46の装着状態を示す図である。図4に示すように、車載タンク12には、短管40の一端部が、車載タンク12の後端上部表面に対して略垂直に溶接されており、該短管40の他端部に対してL字形状を有する屈曲管44の一端部がクランプ42により装着され、該屈曲管44の他端部に対して残留空気排出パイプ46の一端部がクランプ42により接続されている。なお、残留空気排出パイプの先端には、図示しない排出バルブが接続されており、該排出バルブを操作することにより車載タンク12内に残留している空気の外部への排出や外部空気の取り入れが行なわれる。
【0021】
ここで、短管40は、図4に示すように、車載タンク12の後端上部表面に対して一端部が略垂直に溶接され、かつ、直線形状を有しているものであるため、従来の屈曲管(図7参照)のように見通しの悪い部分が存在しない。従って、残留空気排出パイプ46及び屈曲管44を車載タンク12から取外した場合、車載タンク12に溶接されているのは、直線形状を有する短管40のみとなるため、短管40の内部の清掃及びその状況を容易に確認することができる。なお、短管40と車載タンク12の溶接箇所にも適切な曲率の曲面が採用されていた方がよい。
【0022】
次に、本発明の実施の形態に係る粉体輸送用車載タンクの製造方法について説明する。先ず、車載タンク12を構成する上部胴板20をロール曲げ加工することにより長手方向に交差する方向の所定の曲率を付与する(曲率付与工程)。そして所定の曲率が付与された上部胴板20に所定の大きさの円形の下穴を車両の前後方向に所定の間隔をあけて3つ形成する(下穴形成工程)。
【0023】
次に、上部胴板20に形成されたそれぞれの下穴の周縁部に上下一対の型によるプレス機を用いた絞り加工により円周状の立設部30を形成する(立設部形成工程)。そして短管部材32の内周部を立設部30の外周部に接して溶接して、立設部30の長さを延長する(溶接工程)。その後上部胴板20に側部胴板22,24を溶接して胴部を形成し、胴部の前部にタンク前部、胴部の後部にタンク後部をそれぞれ溶接して、車載タンク12を製造する。なお、このようにして製造された車載タンク12は、車両に搭載され、粉体輸送用バルク車が製造される。
【0024】
本実施の形態に係る粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法によれば、ハッチ部分の清掃及び清掃の確認を容易に行うことができる車載タンクを製造することができる。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係る粉体輸送用バルク車によれば、粉体輸送用バルク車が装備する車載タンクのハッチの周縁部に絞り加工により形成された立設部が設けられ、隅部が存在しないと共に、車載タンクに残留空気排出パイプを装着する際に車載タンクに溶接されているのは、直線形状を有する短管のみであるため、清掃及び清掃の確認を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態にかかる粉体輸送用バルク車の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる車載タンクの胴部を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる車載タンクのハッチの構造を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる車載タンクへの残留空気排出パイプの装着状態を説明するための図である。
【図5】従来の粉体輸送用バルク車の構成を示す図である。
【図6】従来の車載タンクへの残留空気排出パイプの装着状態を説明するための図である。
【図7】従来の残留空気排出パイプの装着状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
10・・・粉体輸送用バルク車、12・・・車載タンク、14・・・ハッチ、16・・・排出ハッチ、17・・・排出口、20・・・上部胴板、22,24・・・側部胴板、30・・・立設部、32・・・短管部材、34・・・立設部30に連続する部分、40・・・短管、42・・・クランプ、44・・・屈曲管、46・・・残留空気排出パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンクであって、
前記車載タンクの上面に設けられたハッチの周縁部に絞り加工により形成された立設部と、
前記立設部の外周部に、内周部を接して溶接された短管部材と、
前記車載タンク後端上部表面に対して、一端部が略垂直に溶接された短管と、
前記短管の他端部にクランプにより一端部が装着される屈曲管と、
前記屈曲管の他端部にクランプにより一端部が装着される残留空気排出パイプと
を備えることを特徴とする粉体輸送用バルク車の車載タンク。
【請求項2】
内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法であって、
前記車載タンクを構成する上部胴板に長手方向に交差する方向の所定の曲率を付与する曲率付与工程と、
所定の曲率を付与された前記上部胴板に所定の大きさの下穴を形成する下穴形成工程と、
前記下穴の周縁部に絞り加工により立設部を形成する立設部形成工程と、
前記立設部の外周部に、短管部材の内周部を接して溶接する溶接工程と
を含むことを特徴とする粉体輸送用バルク車の車載タンクの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車載タンクを装備したことを特徴とする粉体輸送用バルク車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179376(P2008−179376A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12761(P2007−12761)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】