説明

車載タンク及び粉体輸送用バルク車

【課題】 清掃作業の負担を軽減することができ、排出ハッチ支持部材や排出ハッチの固定を確かなものとする粉体輸送用バルク車の車載タンクを提供する。
【解決手段】内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車に搭載され、後端下部に粉体を排出する排出口17を有する排出ハッチ16を備えた車載タンク12であって、車載タンク12後端部の右側面寄りに設けられた第1ヒンジ部22と、第1ヒンジ部22に一端部が接続され、該第1ヒンジ部22を中心として略水平方向に回動可能に取付けられた車両の幅方向に延びる排出ハッチ支持部材24と、排出ハッチ支持部材24に、排出ハッチ16を略垂直方向に回動可能に取付ける第2ヒンジ部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製粉された小麦粉などの食用の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車の車載タンク、該車載タンクを備えた粉体輸送用バルク車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルク状の粉体、例えば、製粉された小麦粉などの食用の粉体(以下、小麦粉を例にして説明する)を製粉工場から製パン工場等の顧客の加工工場に輸送する際には、従来は、25kg詰めの袋などに小麦粉を袋詰めしてから、この袋詰めされた小麦粉をトラックなどで輸送していたが、近年では、大量に購入する顧客を中心に、袋詰めをすることなく小麦粉をバルク状の粉体のままでタンクローリの車載タンクに投入して積載し、この車載タンクに積載された小麦粉を輸送するケースが増えている。そして、このようなバルク状の粉体を輸送するタンクローリをバルク車と称している。
【0003】
このバルク車による輸送によって、小麦粉を袋詰めすることなく輸送して、顧客の加工工場のサイロ(貯蔵タンク)に直接納入することが可能になり、一時に大量の小麦粉(8〜10トン)を輸送することができるとともに、製粉工場における袋詰め工程や顧客の加工工場における袋からの取り出し作業などが不要になり、輸送コストを大幅に削減することができるので、近年ではこの輸送方法が多く用いられている。
【0004】
このバルク状の小麦粉を輸送するバルク車は、例えば、図6に示すようなバルク車130であって、このバルク車130の車載タンク132に小麦粉を積載して輸送する。この図6においては、バルク車130の車載タンク132に製粉工場で小麦粉を投入する方法と、顧客の工場で小麦粉を排出する方法の双方が同時に描かれている。すなわち、製粉工場でバルク車130に小麦粉を投入するときには、例えば、製粉工場において製粉された小麦粉を積込場所である2階に搬送し、1階に駐車するバルク車130の車載タンク132に蛇腹状の搬送チューブ134を介して自然落下させ、バルク車130の車載タンク132に投入して積み込む。
【0005】
この小麦粉の積み込みでは、小麦粉は、例えば、2本の蛇腹状の搬送チューブ134によって、バルク車130の車載タンク132の上面に設けられた前方側及び後方側の2個の投入ハッチ136から投入され、中央の投入ハッチ136から風抜きがなされる。この例に限ることなく、小麦粉の投入・風抜きは適宜どの投入ハッチ136を用いてもよい。また、顧客の工場において、サイロに小麦粉を排出するときには、排出ハッチ137の排出口138から排出し、搬送チューブ140を通して空気輸送でサイロまで搬送する。この際に、油圧シリンダ(図示しない)で車載タンク132の前部を押し上げて車載タンク132を傾け、バルク車130に搭載されたコンプレッサーまたは顧客工場に設置されたコンプレッサー(ともに図示しない)を駆動し、発生した圧縮エアーを車載タンク132の前端上部に導入することでタンク内部を加圧し、さらに排出ハッチ137の内側に配置された流動板から流動用エアー配管144(図7参照)を介して供給される空気を噴出させて排出ハッチの内側の小麦粉を流動化させて排出口138から排出する(特許文献1参照)。
【0006】
車載タンク132内は、定期的に清掃を行なう必要があるが、車載タンク132内の清掃は、排出ハッチ137から車載タンク132内部に作業員が入ることにより行なわれる。ここで、排出ハッチ137は、周縁部に所定間隔で配置された図示しない締付けボルトにより、車載タンク132の開口に装着されている。そして、排出ハッチ137の上部は、ヒンジ142に接続されているため、締付けボルトを外すと、排出ハッチ137は、図7に示すようにヒンジ142を介して車載タンク132にぶら下がった状態になる。そのため、排出ハッチ137の上部にワイヤーを装着し、車載タンク132の上部に設置したウィンチ(図示省略)により、図8に示すように、排出ハッチ137の上部を上方に吊り上げた状態で作業員が車載タンク132内に入り込んで清掃作業を行なっている。
【特許文献1】特開2004−99147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、排出ハッチ137には、排出口138が設けられているため、排出ハッチ137の下部にワイヤーを装着し、車載タンク132の上部に設置したウィンチにより上方に吊り上げるのは困難である。即ち、排出ハッチ137を十分に吊り上げ、車載タンク132の開口を完全に露出させることができない。従って、作業員は、車載タンク132の下部から排出ハッチ137を避けて潜り込むような状態で作業を行なわなければならず、清掃作業の負担が大きかった。
【0008】
本発明の課題は、清掃作業負担を軽減することができる車載タンク及び該車載タンクを備えた粉体輸送用バルク車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉体輸送用バルク車の車載タンクは、内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車に搭載され、後端下部に前記粉体を排出する排出口を有する排出ハッチを備えた車載タンクであって、前記車載タンク後端部の一方の側面寄りに設けられた第1ヒンジ部と、前記第1ヒンジ部に一端部が接続され、該第1ヒンジ部を中心として略水平方向に回動可能に取付けられた車両の幅方向に延びる排出ハッチ支持部材と、前記車載タンク後端部に設けられ、前記排出ハッチ支持部材の他端部を前記車載タンクに係止する係止部材と、前記排出ハッチ支持部材に、前記排出ハッチを略垂直方向に回動可能に取付ける第2ヒンジ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粉体輸送用バルク車は、本発明の車載タンクを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉体輸送用バルク車の車載タンクは、車載タンク後端部の一方の側面寄りに設けられた第1ヒンジ部と、第1ヒンジ部に一端部が接続され、該第1ヒンジ部を中心として略水平方向に回動可能に取付けられた車両の幅方向に延びる排出ハッチ支持部材と、排出ハッチ支持部材に、排出ハッチを略垂直方向に回動可能に取付ける第2ヒンジ部とを備えているため、清掃作業の負担を軽減することができる。即ち、本願の車載タンクにおいては、第1ヒンジ部に接続された排出ハッチ支持部材に第2ヒンジ部を介して排出ハッチが接続されているため、排出ハッチ支持部材を略水平方向に回動させることによって、排出ハッチを完全に車載タンクから離すことができ、さらに、車載タンク後端部の一方の側面寄りに設けられた第1ヒンジ部と、第1ヒンジ部に一端部が接続され、該第1ヒンジ部を中心として略水平方向に回動可能に取付けられた車両の幅方向に延びる排出ハッチ支持部材と、排出ハッチ支持部材に、排出ハッチを略垂直方向に回動可能に取付ける第2ヒンジ部とを備えているため、排出ハッチの可動範囲を大幅に広げ、排出ハッチが清掃作業を妨げることを防止し、清掃作業の負担を軽減することができる。また、ハッチ支持部材を車載タンクに係止する係止部材を備えているため、第1ヒンジ部を車載タンクにしっかりと固定できるので、粉体輸送用バルク車が走行中であったりしてもハッチ支持部材や排出ハッチが不用意に動くことがなく安全性を高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態にかかる粉体輸送用バルク車の車載タンクについて説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる粉体輸送用バルク車の構成を示す図である。
【0013】
図1に示す粉体輸送用バルク車10は、前述したように、バルク状の小麦粉を輸送するためのタンクローリであって、車体の上部に小麦粉を収納する車載タンク12が設けられており、この車載タンク12の上面に設けられた前後2つのハッチ(投入ハッチ)14から小麦粉を供給して積載する。この際に小麦粉が投入されるハッチ14の間に設けられたハッチ(空気抜きハッチ)14を開放して、小麦粉と共に送られる空気の風抜きが行なわれる。なお、小麦粉が投入されるハッチ14は、前後2つのハッチに限定されるものではなく、積み込み工場の形態等に応じて、任意のハッチ14が投入ハッチとして用いられる。例えば、前方及び中央のハッチ14を投入ハッチとし、後方のハッチ14を空気抜きハッチとしてもよく、中央及び後方のハッチ14を投入ハッチとし、前方のハッチ14を空気抜きハッチとしてもよい。
【0014】
また、車載タンク12から小麦粉を排出する際には、車載タンク12内に小麦粉が残らないように、油圧シリンダ(図示しない)によって車載タンク12の前部を押し上げて車載タンク12を傾け、バルク車10に搭載されたコンプレッサーまたは積み込み工場に設置されたコンプレッサー(ともに図示しない)を駆動し、発生した圧縮エアーを車載タンク12の前端上部に導入することでタンク内部を加圧し、さらに排出ハッチ16の側壁から流動用エアー配管21(図3参照)を介して供給される流動用エアーを排出ハッチ16の内側に配置された図示しない流動板から噴出させて排出ハッチ16の内側の小麦粉を流動化させて排出口17から排出する。
【0015】
図2は、実施の形態にかかる車載タンク後端部の側面図であり、図3は、車載タンク12を後方から見た図である。車載タンク12の後端下部には、図2に示すように、排出口17を備えた排出ハッチ16が設けられている。また、図3に示すように、車載タンク12の後端部の右側面寄りには、第1ヒンジ部22が第1ヒンジ部取付部材23により取付けられている。なお、本実施の形態にかかる車載タンク12おいては、図3に示すように、車載タンク12後端部の右側面寄りに第1ヒンジ部22が取付けられているが、後端部の左側面寄りに第1ヒンジ部22が取付けられるようにしてもよい。
【0016】
また、第1ヒンジ部22には、図3に示すように、車両幅方向に延びる略U字形状を有する排出ハッチ支持部材24が接続されている。即ち、排出ハッチ支持部材24のU字形状の開放端が、第1ヒンジ部22に接続され、排出ハッチ支持部材24は、第1ヒンジ部22を中心とし車載タンク12に対して略水平方向に回動可能に接続されている。
【0017】
また、排出ハッチ支持部材24には、図3に示すように、第2ヒンジ部取付部材28により第2ヒンジ部26が取付けられている。そして、排出ハッチ16の上部に取付けられた排出ハッチ取付部材30により、排出ハッチ16が第2ヒンジ部26に取付けられている。即ち、排出ハッチ支持部材24と排出ハッチ16とが、第2ヒンジ部26を介して接続されている。従って、排出ハッチ16は、第2ヒンジ部26により車載タンク12に対して略垂直方向に回動可能となっている。なお、本実施の形態にかかる車載タンク12においては、第2ヒンジ部26、第2ヒンジ部取付部材28及び排出ハッチ取付部材30として、アルミニウム製の部材を用いているが、それらの材質は適宜様々なものを使用できる。
【0018】
また、排出ハッチ支持部材24は、係止部材32により車載タンク12に係止される。即ち、車載タンク12の表面に設けられた係止部材32により、排出ハッチ支持部材24のU字形状の開放端に対向する他端部を係止することによって、排出ハッチ支持部材24が車載タンク12に係止される。なお、本実施の形態にかかる車載タンクにおいては、排出ハッチ支持部材24の形状をU字形状としているが、排出ハッチ支持部材24の形状はU字形状に限られるものではなく、例えば、I字形状等、その他の形状を有していてもよい。また、本実施の形態にかかる車載タンク12においては、係止部材32として掛け金を用いているが、排出ハッチ支持部材24を車載タンク12に係止可能なものであれば、どのような部材を用いてもよい。この係止部材32を備えることにより、排出ハッチ支持部材24や排出ハッチ16の固定を確かなものとすることができる。
【0019】
また、排出ハッチ16が備える排出口17には、図2に示すように、吐出配管18が接続されており、その先の粉体流出口15には、図示しない搬送チューブが接続されている。排出口17から排出された粉体は、インジェクタ配管19を介して供給されるエアーと共に、吐出配管18及び搬送チューブを介してサイロに搬送される。更に、車載タンク12の後端底部には、排出ハッチ16を車載タンク12に装着する際、排出ハッチ16を車載タンク12に係止するための排出ハッチ係止部材20が設けられている。なお、図2においては、排出ハッチ係止部材20による排出ハッチ16の係止を解除した状態を示し、図3においては、排出ハッチ係止部材20による係止が解除され、排出ハッチ16が自重により回動した状態を示している。
【0020】
図4は、図3に示す車載タンクの側面図である。排出ハッチ16は、通常、排出ハッチ16の周縁部に所定間隔で設けられた複数の締付けボルト(図示省略)により車載タンク12の開口部に装着されている。従って、締付けボルトを外し、さらに、排出ハッチ係止部材20による排出ハッチ16の係止を解除した場合、図4において矢印で示すように、排出ハッチ16は、自重により第2ヒンジ部26を中心として略垂直方向に回動し、排出ハッチ支持部材24に吊り下げられた状態になる。この図4に示す状態で、係止部材32による排出ハッチ支持部材24の係止を解除し、排出ハッチ支持部材24を第1ヒンジ部22を中心として略水平方向に回動させることにより、図5に示す状態にすることができる。
【0021】
図5は、排出ハッチ支持部材24を略水平方向に回動させた状態を示す図である。排出ハッチ支持部材24に排出ハッチ16が吊り下げられた状態で、排出ハッチ支持部材24を、例えば、図5に示すように、第1ヒンジ部22により車載タンク12に対して略垂直になる位置まで回動させることによって、排出ハッチ16を車載タンク12から完全に離脱させることができる。即ち、排出ハッチ16により閉塞されていた車載タンク12の開口部が、図5に示すように完全に開放された状態になる。従って、車載タンク12内に作業員が入り込む等の清掃作業を行なう際、排出ハッチ16により作業員の清掃作業が妨げられることがなく、清掃作業における作業員の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかる粉体輸送用バルク車の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる車載タンクを後方側面から見た状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる車載タンクを後方正面から見た状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる車載タンクの排出ハッチの係止が解除された状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる車載タンクが備える排出ハッチ支持部材を略水平方向に回動させた状態を示す図である。
【図6】従来の粉体輸送用バルク車の構成を示す図である。
【図7】従来の車載タンクが備える排出ハッチの状態を説明するための図である。
【図8】従来の排出ハッチの可動範囲を説明するための図である。
【符号の説明】
【0023】
10・・・粉体輸送用バルク車、12・・・車載タンク、14・・・ハッチ、15・・・粉体流出口、16・・・排出ハッチ、17・・・排出口、18・・・吐出配管、19・・・インジェクタ配管、20・・・排出ハッチ係止部材、21・・・流動用エアー配管、22・・・第1ヒンジ部、23・・・第1ヒンジ部取付部材、24・・・排出ハッチ支持部材、26・・・第2ヒンジ部、28・・・第2ヒンジ部取付部材、30・・・排出ハッチ取付部材、32・・・係止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車に搭載され、後端下部に前記粉体を排出する排出口を有する排出ハッチを備えた車載タンクであって、
前記車載タンク後端部の一方の側面寄りに設けられた第1ヒンジ部と、
前記第1ヒンジ部に一端部が接続され、該第1ヒンジ部を中心として略水平方向に回動可能に取付けられた車両の幅方向に延びる排出ハッチ支持部材と、
前記車載タンク後端部に設けられ、前記排出ハッチ支持部材の他端部を前記車載タンクに係止する係止部材と、
前記排出ハッチ支持部材に、前記排出ハッチを略垂直方向に回動可能に取付ける第2ヒンジ部と
を備えることを特徴とする粉体輸送用バルク車の車載タンク。
【請求項2】
請求項1記載の車載タンクを備えたことを特徴とする粉体輸送用バルク車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−179377(P2008−179377A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12762(P2007−12762)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】