説明

車載ハンズフリー装置

【課題】車両機器の動作状態に応じて車室内で発生する雑音の影響を簡単な構成で抑制することができる車載ハンズフリー装置を提供する。
【解決手段】制御回路2は、車両機器であるワイパー16、サンルーフ17、運転席側の窓18が動作したことを検出したときは、音声コントローラ9に設定されているHFパラメータを車両機器の動作状態に対応してメモリ26に記憶されているHFパラメータに変更する。これにより、車両機器の動作に応じて車室内に騒音が発生するにしても、騒音による影響を抑制してクリアな音質でハンズフリー通話を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に位置する携帯電話機との間で通信する音声信号の特性をハンズフリーパラメータで調整する調整手段を備えた車載ハンズフリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている車載ハンズフリー装置では、車両内の騒音の影響を抑制するためにハンズフリーパラメータを設定することにより携帯電話機との間の音声信号を適切に調整するようにしている。
【特許文献1】特開2000−321080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようなハンズフリーパラメータは、ワイパーやサンルーフの非動作状態で測定した実験結果に基づいて設定していることから、それらの車両機器が動作した場合は、車両機器が動作することにより発生する雑音の影響を受けて、デフォルトのハンズフリーパラメータの設定では音質劣化などにより通話相手との間でクリアな音質でハンズフリー通話を行うことができないという問題がある。
【0004】
このような問題に対処するために、音声認識のための雑音成分を除去する技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載されているものでは、音声認識判定性能向上のため、雑音成分を基から除去するという方法であることから、車両機器の動作状態に応じて変化する雑音を除去するためのコストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両機器の動作状態に応じて車室内で発生する雑音の影響を簡単な構成で抑制することができる車載ハンズフリー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、車両機器の動作に応じた騒音が車室内に発生した場合であっても、動作した車両機器に対応したハンズフリーパラメータに変更するので、騒音による影響を抑制してクリアな音質でハンズフリー通話を行うことができる。
請求項2の発明によれば、複数の車両機器が同時に動作した場合の騒音による影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を地図表示装置としての機能を含むカーナビゲーション装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、カーナビゲーション装置の電気的構成を示すブロック図である。カーナビゲーション装置(車載ハンズフリー装置に相当)1は、マイコンを主体として構成された制御回路2、車両の現在位置を検出するための位置検出器3、地図データ入力器4、操作スイッチ群5、外部メモリインターフェイス(I/F)6、カラー液晶ディスプレイ等からなる表示装置7、スピーカ8が接続された音声コントローラ9、マイク10から入力された音声を認識する音声認識装置11、リモコン12との間でコマンド等の送受信を行うリモコンセンサ13、例えばVICS(登録商標)センタ15からの種々の交通情報を収受するVICS受信機14、車両機器としてのワイパー16、サンルーフ17、運転席側の窓18の動作状態を取得する通信入出力器19、Bluetooth(登録商標)(以下、BTと称する)通信機能付き携帯電話機20との間でBT通信を行うBT通信インターフェイス(I/F)21から構成されている。
【0008】
位置検出器3は、車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ22、車両の走行距離を検出する距離センサ23、人工衛星からの送信電波に基づいて車両の現在位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機24を有している。各センサ22〜24は、それぞれ性質の異なる誤差を有している。このため、制御回路2は、各センサ22〜24の検出値を補間しながら用いることにより、車両の現在位置、進行方向、速度、走行距離、現在時刻等を高精度で検出するようになっている。なお、精度によっては、位置検出器3を上述したセンサ22〜24の一部のみで構成してもよい。また、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0009】
地図データ入力器4は、地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。
【0010】
上記地図データは、道路形状、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むとともに、その道路地図を表示装置7の画面上に表示するためのデータを含んでいる。各道路については、一方通行又は進入禁止が設定されている場合には、その交通規則情報も併せて記録されている。
【0011】
目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの電話番号や住所、緯度および経度等のデータが含まれるとともに、施設を示すランドマーク等を、表示装置7の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0012】
入力手段である操作スイッチ群5は、表示装置7の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチや、表示装置7の画面上に設けられるタッチパネルスイッチを含んで構成されており、これらのメカニカルスイッチやタッチパネルスイッチにより、時間地図表示開始スイッチ、基点設定スイッチ、詳細度指定スイッチ、また、時間地図表示状態から距離地図表示への切換指令をするための距離地図切換スイッチ、時間地図と距離地図とを同時に表示させるための同時表示スイッチなどが構成されている。
【0013】
ユーザー(ドライバ)は、この操作スイッチ群5を用いて、目的地、目的地の検索に必要な情報(目的地検索条件)、通過点などの入力、後述する有効化経路および有効化地点および表示装置7の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺(詳細度)変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、音量調整等)を行う各種のコマンドの入力を行う。
【0014】
また、リモコン12には複数の操作スイッチが設けられており、スイッチ操作によりリモコン12からリモコンセンサ13を介して各種の指令信号が制御回路2に送信される。なお、操作スイッチ群5とリモコン12は、何れの操作によっても制御回路2に同様の機能を実行させることができる。
【0015】
外部メモリI/F6は、例えばフラッシュメモリカード等のメモリ媒体に対応するものであり、ナビゲーションに関するものとしては、例えば経路案内時に制御回路2が設定した目的地までの経路のデータ、車両が通過した経路のデータ等を、例えばメモリカードのような記録媒体に書き込んで記憶するために使用される。
【0016】
表示装置7の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)が表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示される。さらに、ユーザーが目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示される。
【0017】
音声認識装置11は、マイク10を介して入力される音声と内部に記憶する認識用の辞書データとを照合し、入力された音声を認識する。音声コントローラ9は、音声認識装置11を制御して音声認識結果を制御回路2に出力するとともに、認識された音声をスピーカ8を介してトークバック出力する。また、制御回路2からの音声出力指令に基づいて音声出力信号をスピーカ8に出力する。スピーカ8から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、上記のトークバック音声に加えて、本発明に関連してハンズフリー用の音声などである。
【0018】
制御回路2を構成するマイコンは、CPU(調整手段、検出手段に相当)25、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等からなるメモリ(記憶手段に相当)26、I/O27などを備えている。CPU25がROM(またはフラッシュメモリ)に記憶されたプログラムを実行することにより、制御回路2は、目的地設定手段、経路探索手段、経路案内手段などとして機能する。経路探索手段としての機能は、車両の出発地(現在位置)から目的地までの推奨する走行経路を自動計算するものであり、その手法としては例えばダイクストラ法が用いられている。
【0019】
経路案内手段としての機能は、走行経路に沿って移動可能なように、表示装置7の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ね合わせて表示する機能である。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は地図上を移動し、地図は車両の位置に応じてスクロール表示される。このとき、車両の現在地を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
【0020】
カーナビゲーション装置1はハンズフリー機能を備えており、メモリ26には、送話音声の音質を調整するためのハンズフリーパラメータ(以下、HFパラメータと称する)が記憶されている。このHFパラメータは、例えば送話ボリューム、ノイズキャンセル量、ボイスSW抑圧量、ボイスSW抑圧時間、送話音声検出レベル、受話音声検出レベルなどから構成されている。HFパラメータとしては、デフォルトの通常用HFパラメータに加えて、雨用HFパラメータ、サンルーフ用HFパラメータ、窓用HFパラメータ、サンルーフ+窓用HFパラメータが設定されており、制御回路2は、車両機器の動作状態に応じてそれらのパラメータのうちの1つを設定可能となっている。これらのパラメータは車両毎に設定されるものであり、車室内の騒音の特性を実験で測定することにより設定される。
【0021】
次に、上記した構成の作用について、図2を参照して説明する。
図2は、制御回路2の動作のうち本発明に関連した動作を示すフローチャートである。
制御回路2は、まず、通常用HFパラメータを音声コントローラ9に設定してから(S1)、ワイパー16が動作していないか(S2)、サンルーフ17が開いていないか(S3)、運転席側の窓18が開いていないか(S4)を判断する。何れも「YES」の場合は、音声コントローラ9には通常用HFパラメータが設定される。
【0022】
従って、運転者がカーナビゲーション装置1のハンズフリー機能を利用して携帯電話機20で通話相手とハンズフリー通話する場合は、音声コントローラ9は、通常用HFパラメータで携帯電話機20との間の音声信号を調整する。この通常用HFパラメータは、ワイパー16が動作しておらず、サンルーフ17及び窓18が閉じた状態で発生する車室内の騒音の影響を抑制するように携帯電話機20との間の音声信号を調整するものである。
【0023】
さて、雨が降ってきたために運転者がワイパー16を駆動すると、制御回路2は、ワイパー16が動作したと判断し(S2:NO)、雨用HFパラメータに変更する(S5)。この雨用HFパラメータは、ワイパー16が動作することにより車室内に進入する騒音の影響を抑制するように設定されている。従って、ワイパー16が動作することにより発生する騒音による音質劣化を抑制してクリアな音質でハンズフリー通話を行うことができる。
【0024】
雨が止んだことによりワイパー16を停止した場合は、制御回路2は、ワイパー16が停止したと判断し(S2:YES)、通常用HFパラメータを再度設定する(S1)。
制御回路2は、サンルーフ17が開いており(S3:NO)、さらに運転席側の窓18が開いている場合は(S6:YES)、サンルーフ+窓用のHFパラメータに変更する(S7)。このサンルーフ+窓用のHFパラメータは、サンルーフ17及び窓18が開いていることにより車室内で発生する騒音の影響を抑制するように設定されている。
【0025】
サンルーフ17は開いているものの、窓18が閉じている場合は(S6:NO)、サンルーフ用HFパラメータに変更する(S8)。このサンルーフ用HFパラメータは、サンルーフが開いていることにより車室内で発生する騒音の影響を抑制するように設定されている。
サンルーフ17は閉じており、窓18のみが開いている場合は(S4:NO)、窓用HFパラメータに変更する(S9)。この窓用HFパラメータは、窓18が開いていることにより車室内で発生する騒音の影響を抑制するように設定されている。
【0026】
制御回路2は、上記した一連の処理により車両機器の動作に対応して最適なHFパラメータを決定し、音声コントローラ9に設定する。従って、これ以降にマイク10により入力した音声信号は変更されたHFパラメータにしたがって調整された状態で携帯電話機20に送信されると共に、携帯電話機20から受信した音声信号はHFパラメータにしたがって調整された状態でスピーカ8に出力されるので、車両機器が動作したことにより通常とは異なる騒音が車室内で発生するような状態であっても、騒音の影響を抑制して通話相手とクリアな音質でハンズフリー通話を行うことができる。
【0027】
このような実施形態によれば、制御回路2は、車両機器であるワイパー16、サンルーフ17、運転席側の窓18の動作状態に応じて、音声コントローラ9に設定されているHFパラメータを車両機器の動作状態に対応してメモリ26に記憶されているHFパラメータに変更するようにしたので、HFパラメータが固定されている従来例のものと違って、車両機器の動作に応じて車室内に騒音が発生するにしても、騒音による影響を抑制してクリアな音質でハンズフリー通話を行うことができる。この場合、動作した車両機器を検出し、その車両機器に対応したHFパラメータに変更するのみでよいので、簡単な構成で実施することができる
また、複数の車両機器が動作した場合は、複数の車両機器に対応したHFパラメータに変更するようにしたので、複数の車両機器が同時に動作した場合の騒音による影響を抑制することができる。
【0028】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
運転席側の窓18の動作に応じたHFパラメータを設定するようにしたが、他の窓の開閉の組み合わせに応じてHFパラメータを設定するようにしてもよい。
ワイパー16の動作速度、或いはサンルーフ17の開放割合、窓18の開放割合によって車室内で発生する騒音の影響が異なることから、HFパラメータとしては、車両機器の中間動作状態に応じて設定するようにしてもよい。
【0029】
車両の速度に応じて車室内で発生する騒音の影響が異なることから、HFパラメータとしては、車両機器の動作状態と車両速度との組合わせに応じて設定するようにしてもよい。
ワイパー16、サンルーフ17、窓18以外の車両機器に対応したHFパラメータを設定するようにしてもよい。
カーナビゲーション装置1と携帯電話機20との間の近距離無線通信は、BT以外の通信であってもよいし、ケーブルで直接接続するようにしてもよい。
カーナビゲーション装置1から独立して車載ハンズフリー装置を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図
【図2】制御回路の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0031】
図面中、1はカーナビゲーション装置(車載ハンズフリー装置)、2は制御回路、25はCPU(調整手段、検出手段)、26はメモリ(記憶手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に位置する携帯電話機との間で通信する音声信号の特性をハンズフリーパラメータで調整する調整手段を備えた車載ハンズフリー装置において、
車両機器の動作状態を検出する検出手段と、
前記車両機器が動作した状態に対応したハンズフリーパラメータを記憶した記憶手段と、を備え、
前記調整手段は、前記検出手段が車両機器の動作を検出した場合は、ハンズフリーパラメータを前記車両機器に対応して前記記憶手段に記憶されているハンズフリーパラメータに変更することを特徴とする車載ハンズフリー装置。
【請求項2】
前記記憶手段には、複数の車両機器が同時に動作した状態に対応したハンズフリーパラメータが記憶され、
前記調整手段は、前記複数の車両機器が同時に動作した場合は、前記記憶手段に前記複数の車両機器に対応して前記記憶手段に記憶されているハンズフリーパラメータに変更することを特徴とする請求項1記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項3】
前記車両機器は、ワイパー、サンルーフ、窓の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の車載ハンズフリー装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−74734(P2010−74734A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242608(P2008−242608)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】