説明

車載用ナビゲーション装置

【目的】車速パルス信号及びジャイロセンサの検出信号の動作状態の確認を安全に行える車載用ナビゲーション装置を提供する。
【構成】車載用ナビゲーション装置10は、外部の車速センサからの車速パルス信号S1と、内蔵のジャイロセンサ1の検出信号S2と、を制御部3に入力して、自車の相対位置を推定する慣性航法システムを搭載し、制御部3にて出力制御されるとともに発音手段として車室内の左右に配置された左/右スピーカ4,5又は内蔵のブザー6を備え、操作部7による所定の操作でセンサ信号入力確認のためのテストモードに切り替るテストモード切替手段と、前記テストモード切替手段にてテストモードに切り替ると、制御部3が、車速パルス信号S1の周波数の変化又はジャイロセンサ1の検出信号S2電圧Vの変化に対応して、左/右スピーカ4,5又はブザー6の出力を変化させてジャイロセンサの動作状態を音で報知する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置の採用する慣性航法システムに用いられているセンサの動作状態の確認手段を備えるナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーション装置では、自車の現在位置を推定するために、GPS信号を受信して絶対位置を推定する衛星測位システムと、内蔵したジャイロセンサ(角速度センサの一つ)からの検出信号(ジャイロ信号とも称する)で車両の旋回角度を算出するとともに、車両の電子システムに備わる車速センサからの速度に比例するパルス周波数の車速パルス信号を用いて車両の速度、走行距離を求めて相対位置を推定する慣性航法システムと、を備えて、地図データベースとのマップマッチングによって自車位置を推定している。
【0003】
そのため、車両に車載用ナビゲーション装置(脱着自在で持ち運び可能なポータブルナビゲーション装置を含む。)を設置して起動させる時に、当該車両の電子システムからの前記車速パルス信号が正しく制御部に入力されているか否か、また、内蔵の前記ジャイロセンサからの検出信号が正しく制御部に入力されているかを確認する必要があり、従来からセンサ信号確認手段が内蔵されている。
【0004】
この従来のセンサ信号確認手段の多くは、ユーザが通常使うのと異なる動作モードであるサービスモード或いは確認モードと称されるテストモードを設けて提供されている。これらの動作モード(以後、テストモードとも称する。)には、特殊なキー操作の組み合わせ等(誤って通常使用時に本テストモードに入らないための手段)で入るようになっている。
【0005】
そして、前記テストモードに入ると、GPSの動作、GPSアンテナの接続状態、ジャイロセンサの動作確認(ジャイロ信号の正常確認)、車速パルス信号の入力状態、バック信号の状態等を表示装置の画面に表示するようになっている。
【0006】
車載用ナビゲーション装置の上記確認手段に関する最近の公知文献としては、下記[特許文献1]に「ナビゲーションシステムの故障診断装置」の発明が開示されている。
【0007】
これは、ナビゲーションシステムに採用されている方位角センサ(典型としてジャイロセンサ)の自己診断を行う装置であり、外部(車両)からの舵角検出信号と車速信号とを用い、自システム内部に内蔵されている前記方位角センサの故障診断を行うナビゲーションシステムの故障診断装置であって、前記舵角信号と車速信号とによって算出する方位角レファレンスと、前記方位角センサの検出する方位角計測値とを比較し、所定値を超える誤差が発生した場合に、自システムの前記方位角センサ(ジャイロセンサ)に故障が発生していると診断する構成を特徴とする。
【0008】
【特許文献1】特開2000−186938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術の課題として、前記車速パルス信号とジャイロ信号に関しては、実際に車両を走行させないと入力が発生せず、運転者が一名で確認を行おうとする場合には、走行させながらカーナビゲーション装置の画面を見る必要があり、操作性が損なわれる場合があるという点が挙げられる。
【0010】
地図を液晶などの表示装置の画面に表示する車載用ナビゲーション装置のように、表示装置の画面が大きく視認性が高い場合は、その運転の危険性は低下するが、矢印表示または音声、もしくはその両方でガイダンスを行うようなTBT(TURN BY TURN)ナビゲーション装置では、表示が小さく(矢印は単純なため、視認し易く小さな表示でも問題無いため)、センサ信号の状態を数値で表示しても視認性が悪くなる。
【0011】
この点、前記[特許文献1]に開示された「ナビゲーションシステムの故障診断装置」の発明は、ジャイロセンサの故障診断手段が主として記載されているのみで、診断後にどのようにユーザ(当該車両の運転手)に故障発生を知らせて動作を確認させるかの手段については、「故障アラームを(イ)警告ランプの点灯や(ロ)ディスプレイへの表示によってユーザに知らせる」との記載のみである。
【0012】
この[特許文献1]の故障診断装置を搭載したナビゲーション装置でも、前記車速パルス信号の動作状態の確認は対象になっておらず、方位角センサ(ジャイロセンサ)とは同列には論じ得ないと考えられる。また、[特許文献1]では、前提として、別途に外部(車両側)から舵角センサの信号をレファレンスとして取り込む必要があり、車載用ナビゲーション装置としては特別の設置条件の負担が増すことになる。果たしてどの程度の車両が舵角センサ信号を利用しているかは不明である。
【0013】
また、配線接続ミスが存在する場合に、誤配線の信号によっては故障診断装置によっても配線ミスが探知されず暫くの間配線ミスが表に現れない場合が有り得る。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、車載用ナビゲーション装置における慣性航法システムにて用いられる車両の電子システムの車速センサからの車速パルス信号及びジャイロセンサの検出信号(ジャイロ信号)の動作状態を走行中に報知する安全なテストモード確認手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、少なくとも外部の車速センサからの車速パルス信号S1と、内蔵のジャイロセンサ1の検出信号S2と、を制御部3に入力して、装着される車の相対位置を推定する慣性航法システムを備えた車載用ナビゲーション装置において、前記制御部3にて出力制御されるとともに車室内に配置される発音手段と、所定の操作により前記制御部3をセンサ信号入力確認のためのテストモードに切り替るテストモード切替手段と、を設け、前記制御部3は、前記テストモード切替手段にてテストモードに切り替えられると、前記車速センサからの車速パルス信号S1の周波数の変化または前記ジャイロセンサ1の検出信号S2電圧Vの変化に対応して、前記発音手段の出力を変化させてセンサ動作状態を音で報知させることを特徴とする車載用ナビゲーション装置10提供することにより、上記課題を解決する。
【0016】
なお、上記発音手段としては、車室内の左右に配置された左/右スピーカ4,5または内蔵のブザー6が想定される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、上記のように構成されているため、ナビゲーション装置の車両への設置後の起動時に、車速パルス信号S1とジャイロセンサ1の検出信号S2の出力状態の試験結果を走行中に音で安全に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。なお、前述のテストモード切替手段とジャイロセンサの動作状態を音で報知させる動作確認手段は、マイクロコンピュータを主体とする制御部のCPUがメモリ装置に記憶された制御プログラムによってソフトウェアで実現される。
【0019】
図1は本発明に係る車載用ナビゲーション装置の構成を説明するためのブロック図である。図2は本発明に係る車載用ナビゲーション装置における車速パルス信号の動作確認手段としての制御部の処理フロー図である。図3は本発明に係る車載用ナビゲーション装置におけるジャイロセンサの動作確認手段としての制御部の処理フロー図である。図4はジャイロセンサの検出信号例を示す図である。
【0020】
図1において、本発明の車載用ナビゲーション装置10は、少なくとも装着される車両側の電子システムに一般に備わる図示されない車速センサからの車速パルス信号S1と、内蔵のジャイロセンサ1の検出信号S2と、を制御部3に入力して、装着された車の相対位置を推定する慣性航法システムを搭載する車載用ナビゲーション装置であり、前記制御部3にて出力制御されるとともに車室内の左右に配置された左/右スピーカ4,5または内蔵のブザー6を備え、操作部7による所定の操作でセンサ信号入力確認のためのテストモードに切り替るテストモード切替手段と、前記テストモード切替手段にてテストモードに切り替ると、前記制御部3が、前記車速パルス信号S1の周波数の変化または前記ジャイロセンサ1の検出信号S2電圧Vの変化に対応して、前記左/右スピーカ4,5または前記ブザー6の出力を変化させてセンサ動作状態を音で報知するセンサ入力信号動作確認手段と、を備える構成となっている。
【0021】
上記ジャイロセンサ1は現在多く用いられている左右2つの圧電セラミックスを利用した角加速度センサが好ましい。その方式は種々あるが、何れも車両の旋回方向と旋回角速度に応じて符号と大きさが異なる電圧を出力電圧差分として出力する。例えば図4には右旋回時及び左旋回時のジャイロセンサ1のセンサの出力電圧Vの時間変化を示している。
【0022】
上記車速パルス信号S1は速度計やアンチロックブレーキシステムに用いられている車速センサ(車輪速度センサ)からの速度(車輪の回転数)に比例する周波数fのパルス信号(一般に車輪1回転当たり4〜数千個のパルス信号)である。
【0023】
上記テストモード切替手段の操作部7による所定の操作は、例えば特定の操作キーを数秒間押し続けることで制御部3のマイクロコンピュータが判定することで実現される。
【0024】
上記発音手段としての車室内の左右に配置された左/右スピーカ4,5は本ナビゲーション装置専用のスピーカでもよいが、車両に通常搭載されているオーディオ装置のスピーカを利用するのが経済的であり好ましい。
【0025】
さて、上記のような構成の本発明の車載用ナビゲーション装置10の要旨は、車速パルス信号S1の周波数fやジャイロセンサ1の検出信号S2の電圧Vに対応して(例えば比例して)発音手段としてのブザー6の出力を変化させて鳴らしたり、左スピーカ4と右スピーカ5のテスト音(例えばピーッという連続音または断続音)の出力を変化させることにより、表示部8の画面を見なくても車速センサやジャイロセンサ1からの信号が正しく入力されているか、換言すればセンサが正常に動作しているかを音で聴いて確認できるようにした点にある。
【0026】
上記車速パルス信号S1については、周波数fに比例してブザー6の断続音の間隔を変えたり、音程を変化させて、車両の速度変化に応じて信号が正しく制御部3に入力していること(配線の接続が正しいこと)を知らせることもできる。
【0027】
上記ジャイロセンサ1の検出信号S2については、進行方向に対して車両が向きを変えた方向側のスピーカ(右旋回なら右スピーカ5)から、直進時出力電圧との出力電圧差分(角加速度の大きさ)の電圧Vによって音の断続間隔や周波数を変えて知らせるようにするのが好ましい例である。
【0028】
なお、本センサ入力信号動作確認手段は、従来から行われている確認動作をスタートさせた時点(特定の操作キーを押して表示をリセットする等)からのピーク値をホールドして表示し、車両を走行させた後に停車して走行した時点での動作値を示す方法と併用してもよい。この場合、停止後に正確な動作値が読み出せるメリットがある上に、本装置の特徴である、走行時点で結果がすぐに通知される利点が相まって、より使いやすく正確な確認が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明に係る車載用ナビゲーション装置における車速パルス信号の動作確認手段としての制御部の処理フロー図である。
【図3】本発明に係る車載用ナビゲーション装置におけるジャイロセンサの動作確認手段としての制御部の処理フロー図である。
【図4】ジャイロセンサの検出信号例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ジャイロセンサ
3 制御部
4 左スピーカ
5 右スピーカ
6 ブザー
7 操作部
8 表示部
10 車載用ナビゲーション装置
S1 車速パルス信号
S2 ジャイロセンサの検出信号
V 検出信号S2の電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外部の車速センサからの車速パルス信号と、内蔵のジャイロセンサの検出信号と、を制御部に入力して、装着される車の相対位置を推定する慣性航法システムを備えた車載用ナビゲーション装置において、
前記制御部にて出力制御されるとともに車室内に配置される発音手段と、所定の操作により前記制御部をセンサ信号入力確認のためのテストモードに切り替るテストモード切替手段と、を設け、前記制御部は、前記テストモード切替手段にてテストモードに切り替えられると、前記車速センサからの車速パルス信号の周波数の変化または前記ジャイロセンサの検出信号電圧の変化に対応して、前記発音手段の出力を変化させてセンサ動作状態を音で報知させることを特徴とする車載用ナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−98354(P2006−98354A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287763(P2004−287763)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】