説明

車載用発電装置

【課題】 車載用発電装置の騒音低減と搭載場所の制限を低減しつつ車載用発電装置の耐久性を維持すること。
【解決手段】 エンジン20と、エンジン20により駆動する発電機21と、少なくともエンジン20の内部にエンジンオイルを流通させる潤滑油回路30と、エンジン20及び発電機21を覆う筐体40と、潤滑油回路30の一部を構成し、筐体40の外部側に露出してエンジンオイルの放熱を行う放熱フィン34と、を備えて一体に構成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関により駆動する発電機を備えた車載用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境変化の高まりを受け、燃料の消費量や排気ガスの排出量を低減可能な車両の開発が進んでいる。このような車両として、内燃機関及び電動モータの両方を駆動源とするハイブリッド車(以下、HV車と称する)や、電動モータのみを駆動源として利用する電気自動車(以下、EV車と称する)等があり、これらについては種々の改良を加えたものが知られている。
【0003】
EV車の一例としては、特許文献1に示されたものがある。このEV車は、空調装置駆動用の小型エンジンを有しており、空調のためにバッテリが消費されないように構成されている。このように、バッテリよりも安価な小型エンジンにより空調を行うことにより、EV車の駆動系の低廉価を図りつつ、走行可能距離の延長が可能なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のEV車は、小型ながらエンジンを搭載しているが、小型エンジンの騒音対策については、何ら開示されていない。特に、小型エンジンを駆動させてバッテリを充電する場合等、使用者の操作によらずに小型エンジンが駆動する場合は、使用者にとって不快感を与えるおそれがある。
【0006】
一方、特許文献1に記載のEV車は、小型エンジンを冷却するためラジエータが用いられている。このラジエータは、従来の駆動用エンジンを冷却するラジエータと同様の構成であり、従って、小型エンジンを搭載できる場所もエンジンルーム内と限られてしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、車載用発電装置の騒音低減と搭載場所の制限を低減しつつ車載用発電装置の耐久性を維持することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために本発明に講じられた特長構成は、内燃機関と、前記内燃機関により駆動する発電機と、少なくとも前記内燃機関の内部に潤滑油を流通させる潤滑油回路と、前記内燃機関及び前記発電機を覆う筐体と、前記潤滑油回路の一部を構成し、前記筐体の外部側に露出して前記潤滑油の放熱を行う放熱手段と、を備えて一体に構成されていることである。
【0009】
本特徴構成によれば、内燃機関及び発電機は筐体に覆われている。従って、内燃機関及び発電機から発生する騒音は筐体により、筐体外部へ伝達することを抑制できる。この筐体はできる限り密閉することにより、より効率的に騒音の筐体外部への伝達が抑制できるが、筐体の内部空間は密封状態となる。一方、内燃機関の耐久性維持のため、内燃機関から発生する熱を筐体外部に放熱し、過度な温度上昇を抑制する必要がある。そこで本特徴構成では、内燃機関内部を流通する潤滑油に内燃機関の熱を吸熱させ、筐体外部側に露出している放熱手段にて放熱させることにより、内燃機関の過度な温度上昇を抑制できる。従って、本特徴構成では、車載用発電装置の騒音低減と耐久性向上とを両立できる。
【0010】
一方、本特徴構成では、車載用発電装置は放熱手段を含め一体に構成されている。従って、車載用発電装置の搭載場所はエンジンルーム内に限定されることはなく、放熱手段による放熱が可能な場所であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車載用発電装置を備えたEV車の平面模式図である。
【図2】本発明に係る車載用発電装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施形態を、図面に基づき説明する。
【0013】
図1に基づいて、車載用発電装置10を搭載したEV車の車両1の全体構成を説明する。
【0014】
車両1の前後には、図示されないサスペンションを介して組み付けられた前輪2と後輪3とが、それぞれ左右一対配置される。この車両1は、前輪2が駆動輪であり、モータ13が駆動すると、その動力がドライブシャフト4を介して前輪2に伝達される。なお、車両1は前輪駆動車に限らず、後輪駆動車や4輪駆動車であっても構わない。
【0015】
車両1の下部にはモータ13の電源となるバッテリ11が搭載され、その後方に充電器14が備えられている。充電器14は、例えば一般家庭用のコンセントと接続できるように構成され、充電器14を介してバッテリ11が充電される。なお、充電器14の接続先は一般家庭用のコンセントに限られるものではなく、高速充電用の専用装置等に接続される形態としても良い。
【0016】
バッテリ11とモータ13との間には、インバータや昇圧回路を備えたパワーコントロールユニット(以下、PCUと称す)が電気的に接続されている。バッテリ11からの直流電流は、PCU12で昇圧され交流電流に変換されることにより、モータ13を駆動できるように構成されている。車両1の減速時に、モータ13が発電機として機能し、モータ13で発電された電力がPCU12を介してバッテリ11への回生充電が行なわれるように構成すると好ましい。
【0017】
車載用発電装置10は、バッテリ11と電気的に接続された状態で配置される。バッテリ11の蓄電量が一定量まで減少すると、図示しないECUが車載用発電装置10による発電を開始するよう指令を発し、バッテリ11への充電が行なわれる。車載用発電装置10で充電している間は、車載用発電装置10からPCU12経由で直接モータ13に電力を供給してもよいし、バッテリ11に一端蓄電するようにしても良い。更には、車載用発電装置10から直接モータ13に電力を供給しつつ、発電された電力の一部をバッテリ11に蓄電するようにすることを可能である。車載用発電装置10による発電は、バッテリ11が満充電になったとECUが判断したら終了する。
【0018】
次に、図2に基づいて車載用発電装置10の構成を説明する。
【0019】
車載用発電装置10は、筐体40の内部に発電機21と、発電機21の駆動源となるエンジン20とを備える。エンジン20の内部には、クランクシャフト22が設けられ、エンジン20が駆動するとクランクシャフト22が回転する。このクランクシャフト22は、エンジン20の外部まで延在し、図示しない発電機21のロータシャフトと一体回転するように構成される。なお、クランクシャフト22とロータシャフトとは1つのシャフト部材にて構成しても良い。
【0020】
エンジン20には、オイルポンプ31が設けられ、オイルポンプ31が駆動するとエンジン20の内部にエンジンオイル(潤滑油)を供給する。エンジン20内部にエンジンオイルが供給されることにより、エンジン20内部の潤滑が行なわれると共に、エンジン20から発生する熱をエンジンオイルに吸熱させる。
【0021】
エンジン20を流通したエンジンオイルは、排出側油路32を介してオイルタンク33に導入される。オイルタンク33は、筐体40の外部に設けられている。また、オイルタンク33には放熱フィン34が備えられ、エンジン20の熱を吸熱したエンジンオイルの熱を、放熱フィン34を介して外気と接触させて放熱する。放熱フィン34は、オイルタンク33の面のうち、筐体40と対向する面以外の面に設け、外気と放熱フィン34とが効率良く接触できるように配置する。また、オイルタンク33は、車載用発電装置10の下部に搭載されると良い。すなわち、発電機21の作動要求がなくなり、エンジン20及びオイルポンプ31が停止した場合、エンジンオイルが重力によりオイルタンク33に貯留し、発電機21の停止中に放熱フィン34によりエンジンオイルを冷却できる。
【0022】
放熱フィン34により放熱されたオイルタンク33内のエンジンオイルは、供給側油路35を介して再びオイルポンプ31に導入される。
【0023】
このように構成された車載用発電装置10は、筐体40により筐体40の内部空間を密封状態に近づけて、エンジン20及び発電機21から発生する騒音を筐体40の外部へ伝達することを抑制できる。一方、エンジン20から発生する熱は、エンジンオイルに熱伝達させて筐体40の外部にて冷却することができるため、エンジン20の過度な温度上昇を抑制できる。
【0024】
また、本実施形態の車載用発電装置10は放熱フィン34を含め一体に構成(ユニット構成)されているため、搭載場所がエンジンルーム内に制限されず、放熱フィン34により放熱できる場所であれば良い。放熱フィン34により放熱できる場所として、例えば、車両の車室の床下内に配置することや、トランクルームの下部に配置することが考えられる。
【符号の説明】
【0025】
1・・・車両
2・・・前輪
3・・・後輪
4・・・ドライブシャフト
10・・・車載用発電装置
11・・・バッテリ
12・・・PCU
13・・・モータ
14・・・充電器
20・・・エンジン(内燃機関)
21・・・発電機
22・・・クランクシャフト
30・・・潤滑油回路
31・・・オイルポンプ
32・・・排出側油路
33・・・オイルタンク
34・・・放熱フィン
35・・・供給側油路
40・・・筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関により駆動する発電機と、
少なくとも前記内燃機関の内部に潤滑油を流通させる潤滑油回路と、
前記内燃機関及び前記発電機を覆う筐体と、
前記潤滑油回路の一部を構成し、前記筐体の外部側に露出して前記潤滑油の放熱を行う放熱手段と、を備えて一体に構成されている車載用発電装置。
【請求項2】
前記放熱手段は、前記潤滑油を貯留するオイルタンクと、前記オイルタンクに配置される放熱フィンと、を備える請求項1に記載の車載用発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−185103(P2011−185103A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48370(P2010−48370)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】