説明

車載用表示装置

【課題】異なる方向の環境光の影響を把握し、入力映像に適した制御をする車載用の表示装置を得る。
【解決手段】入力映像信号情報部3は、複数の映像入力信号を切替えて映像信号を出力し、この映像の輝度を用いて映像特徴を求める。環境判定部4は、異なる方向の照度を用いて画面を観視する使用者の照度の観視環境情報を求める。環境適応設定部5は、環境判定部4からの観視環境情報と入力映像信号情報部3からの映像特徴とを基に、画面8の輝度調整用の輝度設定値及び映像信号の画質調整用の画質設定値を求める。輝度制御部6は、環境適応設定部5からの輝度設定値を用いて画面8の輝度を調整する。映像信号処理部7は、環境適応設定部5からの画質設定値を用いて入力映像信号情報部3からの映像信号の画質を調整し、画面8に調整された映像信号を出力するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周辺の照度変化や表示画像の内容に従い、画質を調整する手段を有する表示装置に関するもので、特に、車載用の表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用や広告用など、明るさが激しく変化する環境で使用される表示装置は、例えば、昼間の明るい環境で設定された画質で夜間の暗い環境で視聴すると画面が明るすぎたり、夜間設定された画質で昼間の明るい環境で視聴すると画面が暗すぎたりして映像が見え難くなる。この対策として、従来の画像表示装置は、表示装置が使用される周辺照度を表示画面近傍に取り付けられた照度センサーで検出し、入力映像の輝度の最大値、最小値、平均値を求め、周辺照度に応じてブライトネスやコントラストを調整して、視認性の改善および高画質を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−285063号公報(第5〜6頁、第4〜6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像表示装置においては、表示面の周辺に照度センサーを設けており、表示面に入射する照度を測定し、表示装置周辺の明るさの環境に合わせて画面の明るさや画質を制御している。しかし、太陽光の方向の違い等による運転者の視線方向の明るさが変化する場合、車外の明るさに順応した運転者は車内の画像表示の内容を認識し難い場合があるといった問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、異なる方向の環境光の影響を把握し、入力映像に適した制御をする車載用の表示装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車載用表示装置は、入力映像信号情報部と、環境判定部と、環境適応設定部と、輝度制御部と、映像信号処理部とを備えるものである。入力映像信号情報部は、複数の映像入力信号を切替えて映像信号を出力し、この映像の輝度を用いて映像特徴を求める。環境判定部は、異なる方向の照度を用いて画面を観視する使用者の照度の観視環境情報を求める。環境適応設定部は、環境判定部からの観視環境情報と入力映像信号情報部からの映像特徴とを基に、画面の輝度調整用の輝度設定値及び映像信号の画質調整用の画質設定値を求める。輝度制御部は、環境適応設定部からの輝度設定値を用いて画面の輝度を調整する。映像信号処理部は、環境適応設定部からの画質設定値を用いて入力映像信号情報部からの映像信号の画質を調整し、画面に調整された映像信号を出力するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、異なる方向の照度から求めた観視環境情報と、映像信号の映像特徴とを基に画面の輝度及び画質を調整するので、環境光の影響を減少し、映像信号に適した表示を行う車載用の表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1の車載用表示装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1、5の車内の照度変化の測定例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1〜3の運転者の視線方向を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における観視環境照度値に対する基準輝度値の例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1〜5における映像信号の画像平均輝度レベルに対する輝度比の例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における観視環境照度値に対する画質調整レベルの例を表す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における画面に直射日光が入射した場合の画質調整レベルの変化例を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態2の車載用表示装置を示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態2〜5における観視環境照度値に対する基準輝度値の例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2〜5における観視環境照度値に対する画質調整レベルの例を表す図である。
【図11】この発明の実施の形態2〜5における画面に直射日光が照射した場合の画質調整レベルが変化する例を示した図である。
【図12】この発明の実施の形態3の車載用表示装置を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3における光受光部の配置例を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態4の車載用表示装置を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態4の画面用光受光部の構成例を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態5の車載用表示装置を示す構成図である。
【図17】この発明の実施の形態5における照度比の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1の車載用表示装置を示す構成図である。照度検出部の画面用光受光部1は、車載表示装置の表示画面側の周辺に少なくとも1個設置され、画面周辺の明るさを計測する。また、これとは異なる方向の照度を検出するための照度検出部の車外用光受光部2は、運転者の運転視線方向の明るさや車外の明るさを計測する。例えば、ルームミラーの裏側に前向き(車両の進行方向)に取り付けられた場合は、主に運転者の運転視線方向の明るさを検知する。また、フロントガラスの下のダッシュボード上に上向きに取り付けられた場合は、主に車外の明るさを計測する。また、車載カメラからの輝度信号を用いて車外の明るさを計測しても良い。なお、一般的には、運転視線方向の明るさと車外の明るさとは対応しており、ある係数倍補正すれば良いため、車外用光受光部2は車外光を受光出来るところならばどこに設定しても良い。
【0010】
入力映像信号情報部3には、ナビ画像信号や、テレビ画像信号、車載カメラからのカメラ画像信号など車載用表示装置に表示する映像入力信号a、b、c等が入力され、これらの複数の映像入力信号を切替えて映像信号を出力し、この映像の平均輝度や最大輝度、最小輝度などの映像特徴を検出する。
【0011】
環境判定部4は、異なる方向の照度、ここでは、画面用光受光部1と車外用光受光部2から得られた照度を用いて、車載表示装置の画面を観視する使用者の観視環境を判定し、照度の観視環境情報として観視環境照度値Lを求める。また、画面用光受光部1から得られた照度条件を用い、直射日光等により画面が明るく照らされた場合、画面の反射が生じるとして画面反射判定も行う。環境適応設定部5は、環境判定部4から得られた観視環境情報と、画面反射判定情報と、映像信号の映像特徴とを基に、使用者の観視環境に適した輝度設定条件と、シャープネスや色味やコントラスト等の画質設定条件を求める。
【0012】
輝度制御部6は、環境適応設定部5からの輝度設定条件を基にバックライトの輝度を調整する。映像信号処理部7は、環境適応設定部5から出力された画質設定条件を基に入力映像信号情報部3からの映像信号を調整する。画面8は、輝度制御部6と映像信号処理部7からの信号に基づき、調整された画像を表示する。
【0013】
このように構成された車載用表示装置の動作を説明する。環境判定部4は、画面用光受光部1から得られる照度値Lと車外用光受光部2から得られる照度値Loutを基に観視環境照度値Lを求める。具体的には、下記の(1)式に示すように、画面用光受光部1と車外用光受光部2の照度に対し、任意の係数p、q、(p+q=1)を掛けて観視環境照度値Lを計算する。
p×L+q×Lout=L ・・・(1)
【0014】
図2は、8月の曇りの日に一般的なセダン形状の車を運転しながら、フロントガラスの下のダッシュボード上と、一般的にカーナビやカーステレオが装着される箇所のセンターコンソールでの照度変化とを測定した一例である。太線はダッシュボード上の照度であり、細線はセンターコンソールでの照度である。このように、照度測定位置によって照度計測値が異なる事が分かる。
【0015】
図3に示すように、運転中の運転者の視線方向は車外に向いているために車外の光の影響を受けており、運転者は車外光に順応している。そのため、車載用表示装置の画面に光が直接当たっていなくても、車外の環境にあわせた画質設定にする場合は、(1)式において、p=0とし、q=1とすると良い。車内の影響も考慮する場合は、pとqの比率を変える。なお、pとqの比率は、一般的には、車の形状と表示装置を設置する場所に依存する。窓ガラスが広く表示装置がダッシュボードに近く車外光の影響を受けやすい車では、例えば、p=0.4、q=0.6であったり、逆に、窓ガラスが狭く表示装置が奥まった所にある車は、車内光の影響を受けやすくなるため、例えば、p=0.6、q=0.4であったりする。
【0016】
環境適応設定部5では、図4に示すように、(1)式から得られる観視環境照度値Lから基準となる基準輝度値(例えば0〜255階調)を求める。これは、観視環境照度値Lが明るい程、画面の輝度を上げて明るくして画面を見やすくするためである。また、環境適応設定部5では、入力映像信号情報部3において求められた画像の平均輝度に対し、輝度を例えば0〜255階調にした画像平均輝度レベルAPL(Average Picture Level)を用い、図5に示すように輝度比も求める。これは、背景に白色が多い入力映像の場合は、画像平均輝度レベルが高くなり、画面から受ける光の量が増えることでまぶしさ感が高まるので、その分輝度比を下げて画面を見やすくするためである。この輝度比を基準輝度値に掛けることで最適な最大表示輝度が計算され、輝度制御部6へ出力されてバックライトの輝度が制御される。
【0017】
また、環境適応設定部5は、図6に示すように観視環境照度値に対して、映像信号処理のための画質調整レベルを決定し、映像信号処理部7に出力する。映像信号処理部7では、シャープネス、黒レベル調整やガンマ補正などのコントラスト調整、色調整などの画質調整を行う。図6は、例えば縦軸をシャープネスの強度とした場合の変化の例を示している。観視環境照度値の上昇に対してシャープネスを強くして輪郭を強調し、見やすくする。このように観視環境照度値の上昇に対して各種の画質調整レベルが高くなるように設定し、見やすくする。
【0018】
なお、図4〜6ではグラフで示したがテーブルであっても、演算式であっても良い。また、この観視環境照度値は、輝度を決めたときの観視環境照度値Lに限るわけではなく、調整する画質項目それぞれに変えても良い。例えば、観視環境照度値を2つ計算し、輝度調整向けにはp=0、q=1として輝度調整用観視環境照度値を求める。また、画面の黒レベル調整向けには、表示面付近の明るさの影響を受けるために、p=1、q=0として黒レベル調整用観視環境照度値を求める。すなわち、異なる観視環境照度値を用いることにより、画面照度の比率を高めて、この値をもとに黒レベルを決めても良い。
【0019】
画面用光受光部1から得られる照度が所定値(画面反射判定照度値)を超えた場合は、環境判定部4は画面に直射日光が入射したと判断して、画面反射判定結果を環境適応設定部5に出力する。環境適応設定部5は、図7に示すように画質調整レベルを上げ、映像信号処理パラメータを直射日光の場合の画質レベル設定へ変える。映像信号処理部7は、この情報を基に画質調整を行う。
【0020】
なお、画面用光受光部1と車外用光受光部2は、それぞれ1つである必要はない。例えば、画面用光受光部は、画面の上と下などに増やすことで画面の光受光精度を高めることが出来る。
【0021】
このように構成された車載表示装置においては、環境判定部4は画面用光受光部1と車外用光受光部2のように異なる方向の照度値から観視環境照度値Lを求めるため、運転者の視線方向の影響を考慮した明るさ環境を計測することが出来る。また、入力映像信号情報部3では、ナビ画像信号やテレビ信号やカメラ信号など車載用表示装置に表示する映像信号から平均輝度等の映像特徴を検出する。環境適応設定部5は、これら観視環境照度値Lと映像特徴とを基に環境に適した輝度設定条件を求め、また、その観視環境にあったシャープネスや色味、コントラスト等の画質設定条件も求める。輝度制御部6と映像信号処理部7は、環境適応設定部5からの輝度設定条件と画質設定条件とを基に映像信号を処理して画面8の画像を調整する。このように、異なる方向の照度から求めた観視環境照度値Lと、映像信号の映像特徴とを基に車載用表示装置の画面の輝度及び画質を調整するので、環境光の影響を減少し、映像信号に適した表示を行う車載用の表示装置が得られる。
【0022】
また、画面用光受部1から得られる照度データをもとに、画面への直射日光等による入射を判断して画質を調整するので、直射光によるコントラスト低下にあわせた画質設定が可能となる。このように、運転環境にあった観視環境が計測でき、直接光が画面に入るような場合でも視認性を重視した画質設定を行うことが可能となる。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態1の車載表示装置では、環境適応設定部5は、入力映像信号情報部3からの映像信号の映像の輝度を用いて画質を調整していた。しかし、表示されているコンテンツの種類(テレビ画像、ナビ画像、車載カメラ画像等)によって、表示装置を見る人が求める画質条件は異なる。例えば、テレビ画像は、美しさや自然さが求められるが、ナビ画像や車載カメラ画像は、文字が読みやすく、表示されているものが何かがわかるなどの視認性が求められる。これらは、特に明るい環境下では異なる画質を必要とするため、同じ環境下であっても同じ画質設定では両方の要求を満たすことは難しい。そこで、本実施の形態2においては、入力映像信号情報部からのナビ画像やTV信号やカメラ信号といった映像種類を更に用いて、基準輝度値を変えたり、画質調整レベルを変えたりすることにより、コンテンツに適したより見やすい車載表示装置について述べる。
【0024】
図8は、この発明の実施の形態2の車載表示装置を示す構成図である。この車載表示装置の画質制御は、入力映像信号情報部31以外は、実施の形態1の構成と同じである。入力映像信号情報部31は、入力した映像信号の平均輝度といった映像特徴だけでなく、入力信号のコンテンツの映像種類情報(ナビ画像信号、TV信号、カメラ信号等)を環境判定部と環境適応設定部へ入力する。具体的な方法として、ユーザがコンテンツを切り替えたときのスイッチの信号から映像種類を判断したり、入力信号の画像の動き(一般的にナビ画面なら動きは緩やかでTVは速い等)や音声信号などから判断したりしても良い。
【0025】
このように構成された車載用表示装置の動作を説明する。環境判定部4は、映像入力信号a、b、c等に対して、画面用光受光部1と車外用光受光部2の照度の両方から、任意の係数を掛けて(1)式と同様に観視環境照度値Lを計算する。
【0026】
図3に示すように、ナビ使用中の運転中の運転者の視線方向は、車外に向いているために車外の光の影響を受ける。一方、車を停車させてテレビ映像を見るときは、視線を画面へ向けた状態になるため、画面周辺の光の影響を受ける。そこで、環境判定部4は、入力映像信号情報部からの種類情報により、2つの受光部の影響を考慮し、(1)式から観視環境照度値Lを計算し、環境適応設定部5へ出力する。
【0027】
つまり、運転中は車外光の影響を受けるので、ナビ画面であることを環境判定部4に入力し、qを高めに設定して観視環境照度値Lを求める(車外光の照度値に近くなる)。一方、車を停車させてテレビ映像を見る場合は、注視点はナビ画面にあり表示装置周辺の明るさに影響するために、テレビ映像であることを環境判定部4に入力し、pを高めに設定して観視環境照度値Lを求める(センターコンソールの照度値に近くなる)。なお、映像信号の種類情報にかかわらず観視環境照度値Lを求めても良いし、映像信号ごとに観視環境照度値Lを求めても良い。
【0028】
なおここでは例として3つの映像入力信号に対して記載しているが、入力信号は3つに限るものではない。また、画面用光受光部1と車外用光受光部2は、それぞれ1つである必要はない。例えば、車外用の光受光部として、後方の車外用の光受光部を具備したり、バックカメラからの画像の輝度情報から明るさを求めたり、画面用受光部も画面の上と下など増やしたりすることで、視線方向の照度計測精度を高めることが出来る。
【0029】
環境判定部4により計算された観視環境照度値Lは、環境適応設定部5に入力される。図9に示すように、環境適応設定部5は、入力映像信号情報部31からの映像種類を用いて観視環境照度値Lに対する基準輝度値を求める。例えば、映像入力信号a(例えばナビ画像)が入力された時は、映像入力信号b(例えばTV信号)が入力された場合よりも基準輝度を高めに設定する。これは、ナビ画面を見やすくするためである。
【0030】
なお、基準輝度値と図5の輝度比から求める最大表示輝度の計算は、実施の形態1と同様に行う。
【0031】
また、図10に示すように、環境適応設定部5は、入力映像信号情報部31から入力される映像の種類によりシャープネスや色味、コントラストの画質条件設定を選択することにより、視認性を重視するのか、美しさや自然さを重視した画質設定にするのかを自動で選択することが出来、それにあわせた画質調整レベルを決定し、映像信号処理部7に出力する。すなわち、映像入力信号a(例えばナビ画面)に対し映像入力信号b(例えばTV信号)は、画質調整レベルを下げる。これにより、テレビ映像を表示しているときに視認性を高める画質変換をすると不自然な画像になることを防いだり、逆に、ナビ画面のときに処理が控えめなテレビ映像の画質変換をすると視認性が悪くなるような不具合を防ぐことができたりする。
【0032】
また、図11に示すように、画面用光受光部1から得られる照度が所定値(画面反射判定照度値)を超えた場合は、映像信号の種類によって直射日光に反応して画質を変化させるか、させないかの選択を行う。
【0033】
例えば、ナビ画面は、視認性を高めることが重要であるために、図11の映像入力信号aのときのように、100000[lx]の照度までは画質調整レベルを徐々に上昇させ、100000[lx]を超えると直射日光があたったと判断して、画質調整レベルを大きく上げて視認性の高い画質設定にする。これに対して、停車してテレビ映像を視聴する場合は、図11の映像入力信号bの画質設定レベルを選択する。視認性よりも画像の美しさや自然さを高めることが重要であるため、輝度制御部6のバックライト調整の輝度変化、映像信号処理部7による画質設定の変化が少ない設定とする。
【0034】
このように、直射日光により画面反射判定照度値が所定の値を超えたときでも、テレビ画像(映像入力信号b)では、画質調整レベルの急激な調整をせずに自然な感じを保ち、逆に、ナビ画面(映像入力信号a)では急激な処理を行うことで視認性を上げる。このように、それぞれのコンテンツの要求画質への自動処理が可能となる。
【0035】
このように構成された、車載表示装置においては、環境判定部4は画面用光受光部1及び車外用光受光部2のように異なる方向の照度値と、入力映像信号情報部31からの映像種類情報とにより、運転者の視線方向や使用目的に合った観視環境照度値Lを求める事が出来る。また、入力映像信号情報部31は、ナビ画像信号やテレビ信号やカメラ信号など車載用表示装置に表示する映像種類情報と、映像信号の平均輝度等の映像特徴とを検出し、環境適応設定部5は、これら観視環境照度値Lと、映像種類情報と、映像特徴とを基に環境に適した輝度設定条件を求めると共に、その観視環境にあったシャープネスや色味、コントラスト等の画質設定条件を求め、輝度制御部6と映像信号処理部7は、環境適応設定部5からの輝度設定条件と画質設定条件とを基に映像信号を処理して画面8の画像を調整するので、コンテンツに適した表示を行う車載用表示装置が得られる。
【0036】
また、映像信号情報による映像種類にあわせて、視認性を重視した画質設定にするのか、美しさや自然さを重視した画質設定にするのかが自動で選択されるため、テレビ映像を表示しているときは画質の切り替えを控え、運転中におけるナビ画面やカメラ画像を見ながらの運転時などでは視認性の高い画質への切り替えを瞬時に行うことが可能となる。そのため、コンテンツに合った見やすい車載用表示装置が得られる。また、画面用光受部1から得られる照度データをもとに、画面に直接入射する光によるコントラスト低下にあわせた画質設定がコンテンツごとに設定可能となるので、更に自然に見やすくなる。
【0037】
実施の形態3.
実施の形態1、2の車載表示装置は、車外用光受光部2を有していたが、本実施の形態3においては、使用者方向への画面の反射を検知する指向性の反射光受光部を備えることにより、画面の見易さを改善する車載表示装置について述べる。
【0038】
図12はこの発明の実施の形態3の車載表示装置を示す構成図である。本実施の形態による車載表示装置の画質制御は、実施の形態2の図8の車載表示装置の車外用光受光部2のかわりに、照度検出部として使用者方向への画面の反射を検知する指向性の反射光受光部11を備えるものである。具体的な設置場所は、例えば図13に示すように、広範囲の感知エリアを有する画面用光受光部1と同様に画面8上の周辺に配置する。また、使用者20に対し、使用者方向への日光21の鏡面反射を検知する方向に向けて指向性の反射光受光部11を設置する。
【0039】
環境判定部4は、画面用光受光部1と反射光受光部11から得られた照度条件を基に表示装置を使用する人の光環境を判定する。これ以外は、実施の形態2の図8の車載表示装置と同じである。
【0040】
このように構成された車載用表示装置の動作を説明する。環境判定部4は、映像入力信号a、b、c等に対して、下記の(2)式に示すように、画面用光受光部1からの照度Lと、反射光受光部11からの照度Lrefに対し、任意の係数r、s、(r+s=1)を掛けて観視環境照度値Lを計算する。なお、環境やコンテンツに応じて、画面用光受光部1から得られる照度値Lと反射光受光部11から得られる照度値Lrefのどちらかを選択してもよい。この場合は、r又はsのどちらかが1の場合と同じである。
r×L+s×Lref=L ・・・(2)
【0041】
図3に示すように、運転中の運転者の視線方向は、車外に向いているために車外の光の影響を受ける。一方、車を停車させてテレビ映像を見るときは、視線を画面へ向けた状態になるため、画面周辺の光に影響を受ける。そこで、環境判定部4は、入力映像信号情報部からの種類情報により、2つの受光部の影響を考慮して係数rとsを選択し、観視環境照度値Lを求め、環境適応設定部5へ出力する。なお、映像信号の種類情報にかかわらず観視環境照度値Lを求めても良いし、映像信号ごとに観視環境照度値Lを求めても良い。
【0042】
環境判定部4により求められた観視環境照度値Lは、環境適応設定部5に入力される。図9から求める観視環境照度値に対する基準輝度値、図5の輝度比から求める最大表示輝度の計算、及び、図10から求める画質設定値は、実施の形態2と同じである。
【0043】
なお、図11に示すように、反射光受光部11から得られる照度が所定値を超えた場合は、環境判定部4は画面で鏡面反射した光が運転者に向かっていると判定し、画面反射判定として画面鏡面反射判定結果を環境適応設定部5に出力する。環境適応設定部5では、鏡面反射光を想定した輝度設定値ならびに画質調整レベルを上げ、映像信号処理パラメータの設定を行う。具体的には、ガンマ特性、色変換、シャープネス処理、輝度のレベルを上げることで視認性を向上させる。
【0044】
なお、環境判定部4は、画面用光受光部1から得られる照度が所定値を超えた場合は第1回目の画面反射判定結果を環境適応設定部5に出力し、更に、反射光受光部11から得られる照度が所定値を超えた場合は、第2回目の画面反射判定結果として画面鏡面反射判定結果を環境適応設定部5に出力しても良い。環境適応設定部5は、これらの判定結果を用いて、画面に日光が当たって明るくなった場合と、更に日光が鏡面反射して使用者方向に反射する場合との輝度及び画質を調整する。なお、これはコンテンツの映像種類に応じて変化の割合を変えても良い。
【0045】
なお、本実施の形態は、実施の形態2の図8の車外用光受光部2のかわりに反射光受光部11を備えたが、実施の形態1の図1の車外用光受光部2のかわりに、反射光受光部11を備え、実施の形態1と同様に輝度及び画質を調整しても良い。
【0046】
このように構成された、車載表示装置においては、環境判定部4は画面用光受光部1及び反射光受光部11のように異なる方向の照度値と、入力映像信号情報部31からの映像種類情報とにより、運転者の視線方向や使用目的に合った観視環境照度値Lを求める事が出来、これに基づいて輝度設定条件と画質設定条件を変えるので見やすい画質へ処理を行うことが出来る。また、画面の鏡面反射の影響を把握し、反射光光受部11から得られる照度データをもとに、画面で鏡面反射する反射光によるコントラスト低下にあわせた画質設定が可能となるので、視認性に優れた車載表示装置が得られる。
【0047】
実施の形態4.
実施の形態1〜3の車載表示装置は、2個の光受光部を有するものであったが、本実施の形態4においては、1個の光受光部を用いることにより、最適な表示を行う車載表示装置について述べる。
【0048】
図14はこの発明の実施の形態4の構成を示す構成図である。本実施の形態による車載表示装置の画質制御は、実施の形態2における車外用光受光部2の無い構成、又は、実施の形態3における反射光受光部11の無い構成であるが、画面用光受光部12は異なる方向の照度を測定できるものである。画面用光受光部12は、例えば、車載表示装置周辺の照度を広範囲に測定したり、或る一定方向、例えば、車外方向の照度や使用者方向への画面の反射を検知したりする。この方法には、いくつかあるが、例えば、図15に示すように、画面用光受光部12の受光エリア12a〜cを複数に分割して、エリアごとの照度を求めることにより、広範囲の照度と、例えば、使用者方向への日光21の鏡面反射を検知する方向の照度を求める事が出来る。また、画面用光受光部12の上面にシャッターを設け、シャッターの開く方向を調整することにより、複数方向の光の照度を測定しても良い。また、指向性の受光部を用い、これを左右に動かす事により、複数方向の照度を測定したり、左右の照度を積算して広範囲の照度としたりしても良い。
【0049】
このように構成された車載用表示装置の動作を説明する。環境判定部4は、映像入力信号a、b、c等に対して、下記の(3)式に示すように、画面用光受光部12が測定した或る方向の照度Lと、同じ画面用光受光部12が測定した他の方向の照度Lに対し、任意の係数t、u、(t+u=1)を掛けて観視環境照度値Lを計算する。
t×L+u×L=L ・・・(3)
【0050】
なお、Lとして車載用表示装置周辺の照度を広範囲に測定し、Lとして車外方向の光を測定する場合は、実施の形態2と同様な画像処理を行う。また、Lとして車載用表示装置周辺の照度を広範囲に測定し、Lとして使用者方向への日光21の鏡面反射を検知する方向の照度を測定する場合は、実施の形態3と同様な画像処理を行う。
【0051】
このように構成された、車載表示装置においては、光受光部の数を減少させる事が出来るため、視認性に優れた車載表示装置が安価に得られる。また、図15において、運転者は受光エリア12aの照度を用いることにより、日光の影響を低減した車載表示装置が得られるが、同様に助手席の人は、受光エリア12cの照度を用いることにより日光の影響を低減した車載表示装置が得られる。さらに、後部座席の人は、受光エリア12bの照度を用いることにより日光の影響を低減した車載表示装置が得られる。このように使用する座席に応じて使用者の日光の影響を低減し、視認性に優れた車載表示装置が得られる。
【0052】
実施の形態5.
実施の形態4の車載表示装置は、照度検出部には1個の光受光部を用いて複数方向の照度を測定していたが、本実施の形態5においては、予め複数個の光受光部を用いて複数方向の照度を測定しておき、複数の方向の照度から求めた照度比を用いて、1個の光受光部からの照度値を換算することにより、擬似的に複数方向からの照度に置き換えた観視環境照度値を算出し、最適な表示を行う車載表示装置について述べる。
【0053】
図16はこの発明の実施の形態5の構成を示す構成図である。本実施の形態による車載表示装置の画質制御は、実施の形態2における車外用光受光部2の無い構成である
【0054】
まず、複数個の光受光部を用いて複数方向の照度を測定する。これにより、例えば、図2に示すような結果が得られる。これを用いて、図17に示すように、センターコンソールに対するダッシュボードの輝度比vを求める。この場合は、およそ3倍(v≒3)である。運転中の車外の照度Loutは、センターコンソール付近に設置された画面用光受光部から得られた照度Lの3倍の照度値として換算する。なお、画面用光受光部から得られた照度値と視線方向(車外光)の照度値は、3倍に限ったものではなく、車ごとに画面受光部と視線方向の照度の関係を測定することで、任意に設定ができる。
【0055】
このようにして、運転者の視線方向の照度環境を算出する。つまり、画面用光受光部1から得られる照度値Lに対して、車外用光受光部2から得られる照度値Loutは(4)式のように近似できる。
out=v×L ・・・(4)
【0056】
これを(1)式に代入し、下記の(5)式に示すように、画面用光受光部1の照度Lに対し、任意の係数p、q、(p+q=1)を掛けて観視環境照度値Lを計算する。その後、実施の形態2と同様な画像処理を行う。
p×L+q×v×L=L ・・・(5)
【0057】
なお、本実施の形態では、画面周辺に配置された画面用光受光部1を用いたが、例えば、ダッシュボード上などに配置された車外用光受光部2を用いても良い。この場合Lは(6)式のように近似でき、輝度比wはおよそ1/3倍(w≒1/3)である。
=w×Lout ・・・(6)
【0058】
これを(1)式に代入し、下記の(7)式に示すように、車外用光受光部2の照度Loutに対し、任意の係数p、q、(p+q=1)を掛けて観視環境照度値Lを計算する。その後、実施の形態2と同様な画像処理を行えば良い。
p×w×Lout+q×Lout=L ・・・(7)
【0059】
なお、実施の形態2の図11と同様に、L、又は、(6)式によってLoutから換算されたL用い、これが所定値を超えたときに画面反射判定を行い、映像信号の種類によって画質の調整を変えても良い。
【0060】
このように構成された、車載表示装置においては、予め複数個の光受光部を用いて複数方向の照度を測定しておき、これらから照度比を求めて観視環境照度値Lを計算すれば良いため、画面近傍に通常の光受光部が1個あれば良い。そのため、コンテンツに合わせ視認性に優れた車載表示装置が安価に得られる。また、車両に取り付けられている照度センサーがある場合はこれから照度を求めたり、車載カメラがある場合はカメラ信号の輝度情報から車外の明るさを求めたりすれば良い。これらの場合は、予め求めておいた照度比から観視環境照度値Lを求めて画像調整を行えば良いので、車載表示装置には照度センサーが不要となり、コンテンツに合わせ視認性に優れた車載表示装置が更に安価に得られる。
【符号の説明】
【0061】
1 画面用光受光部
2 車外用光受光部
3 入力映像信号情報部
4 環境判定部
5 環境適応設定部
6 輝度制御部
7 映像信号処理部
8 画面
11 反射光受光部
12 画面用光受光部
20 使用者
21 日光
31 入力映像信号情報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像入力信号を切替えて映像信号を出力し、この映像の輝度を用いて映像特徴を求める入力映像信号情報部と、
異なる方向の照度を用いて画面を観視する使用者の照度の観視環境情報を求める環境判定部と、
前記環境判定部からの観視環境情報と前記入力映像信号情報部からの映像特徴とを基に、前記画面の輝度調整用の輝度設定値及び前記映像信号の画質調整用の画質設定値を求める環境適応設定部と、
前記環境適応設定部からの輝度設定値を用いて前記画面の輝度を調整する輝度制御部と、
前記環境適応設定部からの画質設定値を用いて前記入力映像信号情報部からの映像信号の画質を調整し、前記画面に調整された映像信号を出力する映像信号処理部とを備えた車載用表示装置。
【請求項2】
前記入力映像信号情報部は、前記映像信号の映像種類を更に求め、
前記環境判定部は、前記前記入力映像信号情報部からの映像種類を基に、前記異なる方向の照度を用いて観視環境情報を求め、
前記環境適応設定部は、この観視環境情報と、前記前記入力映像信号情報部からの映像種類と、前記映像特徴とを用いて、輝度設定値及び画質設定値を求める請求項1記載の車載用表示装置。
【請求項3】
前記環境判定部は、前記異なる方向の照度として、前記画面の周辺の明るさを検出する画面用光検出部からの照度及び車外の明るさを検出する車外用光検出部からの照度、又は、前記画面用光検出部からの照度及び前記使用者の方向への前記画面の光の反射を検出する反射光検出部からの照度を用いる請求項1又は2記載の車載用表示装置。
【請求項4】
前記環境判定部は、前記画面用光検出部からの照度又は前記反射光検出部からの照度が所定値を超えたときに画面反射判定情報を更に求め、
前記環境適応設定部は、前記環境判定部からの画面反射判定情報を更に用いて、輝度設定値及び画質設定値を求める請求項3記載の車載用表示装置。
【請求項5】
複数の映像入力信号を切替えて映像信号を出力し、この映像の輝度を用いて映像特徴を求める入力映像信号情報部と、
周辺の明るさを検出する照度検出部の照度とこれと異なる方向の照度との照度比を予め求めておき、この照度比と前記照度検出部の照度とを用いて画面を観視する使用者の照度の観視環境情報を求める環境判定部と、
前記環境判定部からの観視環境情報と前記入力映像信号情報部からの映像特徴とを基に、前記画面の輝度調整用の輝度設定値及び前記映像信号の映像の画質調整用の画質設定値を求める環境適応設定部と、
前記環境適応設定部からの輝度設定値を用いて前記画面の輝度を調整する輝度制御部と、
前記環境適応設定部からの画質設定値を用いて前記入力映像信号情報部からの映像信号の画質を調整し、前記画面に調整された映像信号を出力する映像信号処理部とを備えた車載用表示装置。
【請求項6】
前記入力映像信号情報部は、前記映像信号の映像種類を更に求め、
前記環境判定部は、前記前記入力映像信号情報部からの映像種類を基に、前記照度比と前記照度検出部の照度とを用いて観視環境情報を求め、
前記環境適応設定部は、この観視環境情報と、前記前記入力映像信号情報部からの映像種類と、前記映像特徴とを用いて、輝度設定値及び画質設定値を求める請求項5記載の車載用表示装置。
【請求項7】
前記環境判定部は、前記照度検出部からの照度が所定値を超えたときに画面反射判定情報を更に求め、
前記環境適応設定部は、前記環境判定部からの画面反射判定情報を更に用いて、輝度設定値及び画質設定値を求める請求項6記載の車載用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−203342(P2011−203342A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68417(P2010−68417)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】