説明

車載緊急通報装置

【課題】 専用の補助バッテリを必要とすることなく、緊急通報動作を最後の手順まで適切に完了する。
【解決手段】 車載緊急通報装置1は、緊急通報動作を開始した後に、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断した場合には、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を再開する。専用の補助バッテリを必要とすることなく、緊急通報信号をサービスセンター10へ送信する緊急通報動作を最後の手順まで適切に完了することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急通報信号をサービスセンターへ送信する送信手段と、緊急通報の開始トリガが発生した場合に緊急通報信号を前記送信手段からサービスセンターへ送信させる緊急通報動作を開始する制御手段とを備えた車載緊急通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両が障害物や人に衝突したりユーザが緊急通報ボタンを操作したりした場合に緊急通報信号をサービスセンターへ送信する車載緊急通報装置では、例えばエアバックが展開したことにより、バッテリから装置に供給されているバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下すると、バッテリ電圧が一時的に低下したことに伴って緊急通報信号をサービスセンターへ送信する緊急通報動作が中断されてしまうという問題がある。このような問題を解決することを目的として、従来では、バッテリとは別に専用の補助バッテリを搭載する構成がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−322677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されているものは、専用の補助バッテリを搭載することにより、緊急通報信号をサービスセンターへ送信する緊急通報動作を中断することなく最後の手順まで適切に完了することができるものの、その一方で、専用の補助バッテリを搭載する構成であるので、コストが高くなったり搭載スペースが必要になったりするなどの問題がある。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、専用の補助バッテリを必要とすることなく、緊急通報信号をサービスセンターへ送信する緊急通報動作を最後の手順まで適切に完了することができる車載緊急通報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明によれば、制御手段は、例えば車両が障害物や人に衝突したりユーザが緊急通報ボタンを操作したりして緊急通報の開始トリガが発生すると、緊急通報信号を送信手段からサービスセンターへ送信させる緊急通報動作を開始する。そして、制御手段は、緊急通報動作を開始した後に、バッテリから装置に供給されているバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断した場合には、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を再開する。
【0006】
これにより、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断したとしても、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を速やかに再開することになるので、従来のものとは異なって、専用の補助バッテリを必要とすることなく、緊急通報信号をサービスセンターへ送信する緊急通報動作を最後の手順まで適切に完了することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明によれば、制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、最初の手順から緊急通報動作を再開する。これにより、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断したとしても、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、最初の手順から緊急通報動作を速やかに再開することができる。また、この場合は、最初の手順から緊急通報動作を再開することにより、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順に該当する手順番号を書込んでおく必要がなく、書込み回数を低減することができ、簡易な構成で実現することができる。
【0008】
請求項3に記載した発明によれば、制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を再開する。これにより、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を速やかに再開することができる。また、この場合は、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を再開することにより、緊急通報動作を再開してから最後の手順を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0009】
請求項4に記載した発明によれば、制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を開始した直後に計時手段により計時されて得られた時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に計時手段により計時されて得られた時刻との差が所定時間未満である場合には緊急通報動作を再開し、これに対して、緊急通報動作を開始した直後に計時手段により計時されて得られた時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に計時手段により計時されて得られた時刻との差が所定時間未満でない場合には緊急通報動作を再開しない。
【0010】
これにより、緊急通報動作を開始した直後の時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の時刻との差が所定時間未満であれば、緊急通報の必要性が大きい状況で緊急通報動作を再開することになり、これに対して、緊急通報動作を開始した直後の時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の時刻との差が所定時間未満でなければ、緊急通報の必要性が小さい状況で緊急通報動作を再開しないことになるので、時刻を判断材料として緊急通報の必要性を判断した上で緊急通報の必要性が大きい状況に限って緊急通報動作を再開することができる。つまり、両者の時刻の差が所定時間未満であれば、緊急通報の対応が未だ済んでいない可能性が高く、これに対して、両者の時刻の差が所定時間未満でなければ、緊急通報の対応が既に済んでいる可能性が低いと判断することにより、緊急通報の必要性が大きい状況に限って緊急通報動作を再開することができる。
【0011】
請求項5に記載した発明によれば、制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を開始した直後に測位手段により測位されて得られた位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に測位手段により測位されて得られた位置との差が所定距離未満である場合には緊急通報動作を再開し、これに対して、緊急通報動作を開始した直後に測位手段により測位されて得られた位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に測位手段により測位されて得られた位置との差が所定距離未満でない場合には緊急通報動作を再開しない。
【0012】
これにより、緊急通報動作を開始した直後の位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の位置との差が所定距離未満であれば、緊急通報の必要性が大きい状況で緊急通報動作を再開することになり、これに対して、緊急通報動作を開始した直後の位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の位置との差が所定距離未満でなければ、緊急通報の必要性が小さい状況で緊急通報動作を再開しないことになるので、位置を判断材料として緊急通報の必要性を判断した上で緊急通報の必要性が大きい状況に限って緊急通報動作を再開することができる。つまり、両者の位置の差が所定距離未満であれば、緊急通報の対応が未だ済んでいない可能性が高く、これに対して、両者の位置の差が所定距離未満でなければ、緊急通報の対応が既に済んでいる可能性が低いと判断することにより、緊急通報の必要性が大きい状況に限って緊急通報動作を再開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、車載緊急通報装置の全体構成を機能ブロック図として示している。車載緊急通報装置1は、制御部2(本発明でいう制御手段)、無線通信部3(本発明でいう送信手段)、計時部4(本発明でいう計時手段)、測位部5(本発明でいう測位手段)、保存部6、衝突検出部7、操作検出部8及び音声処理部9を備えて構成されている。
【0014】
制御部2は、CPUを主体として構成され、車載緊急通報装置1の動作全般を制御し、緊急通報動作を複数の手順にしたがって段階的に順次実行する。無線通信部3は、制御部2から緊急通報指令が入力されると、緊急通報信号を無線通信網を介してサービスセンター10へ送信する。この場合、緊急通報信号には車両ID(ユーザID)や位置や時刻や緊急性の大小の指標などの情報が格納される。
【0015】
計時部4は、計時して得られた時刻を制御部2へ出力する。測位部5は、例えばGPS受信機を主体として構成され、GPS衛星から受信されたGPS電波に含まれているパラメータを演算して測位して得られた位置を制御部2へ出力する。尚、測位部5は、GPS電波に含まれているパラメータを演算して測位する構成に限らず、距離センサやジャイロスコープなどを併用して測位する構成であっても良い。
【0016】
保存部6は、最終状態保存部6a、時刻保存部6b及び位置保存部6cを備えており、最終状態保存部6aは、制御部2が緊急通報動作を開始したものの最後の手順まで完了していない旨を示す「緊急通報中」フラグ及び制御部2が緊急通報動作を待機している旨を示す「待機中」フラグのいずれかを切替えて保存し、時刻保存部6bは、計時部4により計時されて得られた時刻を保存し、位置保存部6cは、測位部5により測位されて得られた位置を保存する。
【0017】
衝突検出部7は、例えば車両が障害物や人に衝突した旨を検出すると、衝突検出信号を制御部2へ出力する。操作検出部8は、ユーザが緊急通報ボタンを操作した旨を検出すると、操作検出信号を制御部2へ出力する。尚、本実施形態では、車両が障害物や人に衝突した旨やユーザが緊急通報ボタンを操作した旨が緊急通報の開始トリガである。音声処理部9は、マイクロホン11に入力された送話音声やスピーカ12から出力される受話音声を音声処理する。この場合、車載緊急通報装置1が緊急通報信号をサービスセンター10へ送信したことにより、車載緊急通報装置1とサービスセンター10との間で通信回線が確立されると、ユーザは、マイクロホン11及びスピーカ12を使ってサービスセンター10に配置されているオペレータと会話することができ、口頭で救援を要請したり事故の程度を報告したりすることができるようになっている。
【0018】
電源制御部13は、車両に搭載されているバッテリ14から供給されているバッテリ電圧を車載緊急通報装置1へ供給し、車載緊急通報装置1は、バッテリ14から電源制御部13を介してバッテリ電圧が供給されることにより駆動する。また、電源制御部13は、バッテリ14から供給されているバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に低下すると、その旨を示すリセット信号を制御部2へ出力する。ここでいう所定レベルとは、車載緊急通報装置1が緊急通報動作を正常に実行することが可能な、つまり、緊急通報信号をサービスセンター10へ正常に送信することが可能な電圧レベルである。尚、上記した構成において、車載緊急通報装置1は、モジュールの形態で構成されていても良い。
【0019】
次に、上記した構成の作用について、図2を参照して説明する。
制御部2は、バッテリ14から電源制御部13を介してバッテリ電圧が車載緊急通報装置1に正常に供給されており、且つ、電源制御部13からリセット信号が入力されていない状態では、図2にフローチャートとして示す処理を実行する。
【0020】
すなわち、制御部2は、最終状態保存部6aに「緊急通報中」フラグ及び「待機中」フラグのいずれが保存されているかを判定する(ステップS1)。ここで、制御部2は、緊急通報動作を開始していない状態では、最終状態保存部6aに「待機中」フラグが保存されているので、最終状態保存部6aに「待機中」フラグが保存されている旨を検出すると、緊急通報の開始トリガが発生したか否かを判定する(ステップS2)。
【0021】
さて、制御部2は、例えば車両が障害物や人に衝突したことに応じて衝突検出部7から衝突検出信号が入力されたりユーザが緊急通報ボタンを操作したことに応じて操作検出部8から操作検出信号が入力されたりして緊急通報の開始トリガが発生した旨を検出すると(ステップS2にて「YES」)、その時点で計時部4により計時されて得られた時刻を計時部4から取得して時刻保存部6bに保存させ(ステップS3,S4)、その時点で測位部5により測位されて得られた位置を測位部5から取得して位置保存部6cに保存させる(ステップS5,S6)。
【0022】
次いで、制御部2は、最終状態保存部6aに「緊急通報中」フラグを保存させ(ステップS7)、緊急通報信号を無線通信部3から無線通信網を介してサービスセンター10へ送信させることにより、緊急通報動作を開始する(ステップS8)。そして、制御部2は、このようにして緊急通報動作を開始した後では、緊急通報動作の全ての手順を完了したか否かを判定すると共に(ステップS9)、電源制御部13からリセット信号が入力されたか否かを判定する(ステップS10)。
【0023】
さて、緊急通報の開始トリガが発生した直後では、例えばユーザの身体を保護するためにエアバックが展開する場合があり得る。ここで、エアバックが展開することがなくバッテリ14から装置に供給されているバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下することがないと、電源制御部13がリセット信号を制御部2へ出力することはない。制御部2は、緊急通報動作を開始した後に、電源制御部13からリセット信号が入力されることなく、緊急通報動作の全ての手順を完了した旨を検出すると(ステップS9にて「YES」)、最終状態保存部6aに「待機中」フラグを保存させ(ステップS11)、一連の処理を終了する。
【0024】
これに対して、エアバックが展開したことに伴ってバッテリ14から装置に供給されているバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下すると、上記したように電源制御部13がリセット信号を制御部2へ出力する。制御部2は、緊急通報動作を開始した後に、緊急通報動作の全ての手順を完了するよりも前に、電源制御部13からリセット信号が入力された旨を検出すると(ステップS10にて「YES」)、この場合は、最終状態保存部6aに「待機中」フラグを保存させることなく、一連の処理を終了する。
【0025】
さて、これ以降、例えばエアバックの展開が正常に完了すると、所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下していたバッテリ電圧の電圧レベルは、所定レベル未満から所定レベル以上に正常に復帰することになる。制御部2は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰したことに伴って電源制御部13からリセット信号が入力されなくなると、図2にフローチャートとして示す処理を再度実行する。
【0026】
ここで、制御部2は、緊急通報動作の開始したものの全ての手順を完了していない状態では、上記したように最終状態保存部6aに「待機中」フラグではなく「緊急通報中」が保存されているので、最終状態保存部6aに「緊急通報中」フラグが保存されている旨を検出すると、その時点で計時部4により計時されて得られた時刻を計時部4から再度取得する(ステップS12)。そして、制御部2は、緊急通報の開始トリガが発生した直後に計時部4から取得された時刻と今回に取得された時刻との差が所定時間未満であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0027】
次いで、制御部2は、緊急通報の開始トリガが発生した直後に計時部4から取得された時刻と今回に取得された時刻との差が所定時間未満である旨を検出すると(ステップS13にて「YES」)、その時点で測位部5により測位されて得られた位置を測位部5から再度取得する(ステップS14)。そして、制御部2は、緊急通報の開始トリガが発生した直後に測位部5から取得された位置と今回に取得された位置との差が所定距離未満であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0028】
次いで、制御部2は、緊急通報の開始トリガが発生した直後に測位部5から取得された位置と今回に取得された位置との差が所定距離未満である旨を検出すると(ステップS15にて「YES」)、ユーザにより緊急通報動作の再開をキャンセルする操作が行われているか否かを判定し(ステップS16)、ユーザにより緊急通報動作の再開をキャンセルする操作が行われていない旨を検出すると(ステップS16にて「YES」)、緊急通報信号を無線通信部3から無線通信網を介してサービスセンター10へ送信させることにより、最初の手順から緊急通報動作を再開し(ステップS17)、上記したステップS9,S10を実行する。
【0029】
尚、制御部2は、緊急通報の開始トリガが発生した直後に計時部4から取得された時刻と今回に取得された時刻との差が所定時間未満でない旨を検出すると(ステップS13にて「NO」)、また、緊急通報の開始トリガが発生した直後に測位部5から取得された位置と今回に取得された位置との差が所定距離未満でない旨を検出すると(ステップS15にて「NO」)、さらに、ユーザにより緊急通報動作の再開をキャンセルする操作が行われた旨を検出すると(ステップS16にて「NO」)、最初の手順から緊急通報動作を再開することなく、最終状態保存部6aに「待機中」フラグを保存させ(ステップS11)、一連の処理を終了する。
【0030】
ところで、上記した一連の処理において、緊急通報の開始トリガが発生した直後に計時部4から取得された時刻と今回に取得された時刻との差が所定時間未満であると共に、緊急通報の開始トリガが発生した直後に測位部5から取得された位置と今回に取得された位置との差が所定距離未満である場合に限って、最初の手順から緊急通報動作を再開するのは、以下の理由によるものである。すなわち、緊急通報の開始トリガが発生した時点からバッテリ電圧が所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した時点までの時間が長いと、また、緊急通報の開始トリガが発生した位置からバッテリ電圧が所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した位置までの距離が長いと、緊急通報の対応が既に済んでいる場合があり、緊急通報の対応が既に済んでいる状況で最初の手順から緊急通報動作を再開してしまうという不必要な処理を行うことを未然に回避するためである。尚、本実施形態では、時刻と位置とを判断材料として緊急通報の対応が既に済んでいるか否かを判断する場合を説明したが、時刻のみを判断材料とする構成であっても良いし、位置のみを判断材料とする構成であっても良い。
【0031】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、車載緊急通報装置1において、緊急通報動作を開始した後に、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断した場合には、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、最初の手順から緊急通報動作を再開するように構成したので、従来のものとは異なって、専用の補助バッテリを必要とすることなく、緊急通報信号をサービスセンター10へ送信する緊急通報動作を最後の手順まで適切に完了することができる。また、この場合は、このように最初の手順から緊急通報動作を再開することにより、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順に該当する手順番号を書込んでおく必要がなく、書込み回数を低減することができ、簡易な構成で実現することができる。
【0032】
また、緊急通報動作を開始した直後の時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の時刻との差が所定時間未満であり、且つ、緊急通報動作を開始した直後の位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の位置との差が所定距離未満である場合に限って、最初の手順から緊急通報動作を再開するように構成したので、時刻及び位置を判断材料として緊急通報の必要性を判断した上で緊急通報の必要性が大きい状況に限って緊急通報動作を再開することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図3及び図4を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。上記した第1の実施形態は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、最初の手順から緊急通報動作を再開するものであるが、これに対して、この第2の実施形態は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を再開するものである。
【0034】
すなわち、車載緊急通報装置21は、上記した第1の実施形態で説明した保存部6に代わって保存部23を備えて構成されており、保存部23は、最終状態保存部23a、時刻保存部23b、位置保存部23c及び手順番号保存部23dを備えている。手順番号保存部23dは、制御部22が緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順に該当する手順番号を保存する。
【0035】
この場合も、制御部22は、バッテリ14から電源制御部13を介してバッテリ電圧が車載緊急通報装置21に正常に供給されており、且つ、電源制御部13からリセット信号が入力されていない状態では、図4にフローチャートとして示す処理を実行する。
【0036】
この場合は、制御部22は、緊急通報の開始トリガが発生した旨を検出すると(ステップS2にて「YES」)、その時点で計時部4により計時されて得られた時刻を計時部4から取得して時刻保存部6bに保存させ(ステップS3,S4)、その時点で測位部5により測位されて得られた位置を測位部5から取得して位置保存部6cに保存させ(ステップS5,S6)、手順番号として「0」を設定した後に(ステップS21)、最終状態保存部6aに「緊急通報中」フラグを保存させる(ステップS7)。
【0037】
そして、制御部22は、緊急通報信号を無線通信部3から無線通信網を介してサービスセンター10へ送信させることにより、緊急通報動作を開始し(ステップS8)、手順番号に該当する手順を実行し(ステップS22)、その時点で設定されている手順番号に該当する手順を完了した後では、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、
緊急通報動作の全ての手順を完了したか否かを判定すると共に(ステップS9)、電源制御部13からリセット信号が入力されたか否かを判定する(ステップS10)。
【0038】
ここで、制御部22は、緊急通報動作の全ての手順を完了していなく(ステップS9にて「NO」)、且つ、電源制御部13からリセット信号が入力されていない旨を検出すると(ステップS10にて「「NO」)、手順番号をインクリメントし(ステップS23)、手順番号を手順番号保存部23dに保存させ(ステップS24)、そのインクリメントされた手順番号に該当する手順を実行し(ステップS22)、上記した処理を繰返して実行する。そして、制御部22は、電源制御部13からリセット信号が入力されることなく、緊急通報動作の全ての手順を完了した旨を検出すると(ステップS9にて「YES」)、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、最終状態保存部6aに「待機中」フラグを保存させ(ステップS11)、一連の処理を終了する。
【0039】
これに対して、制御部22は、緊急通報動作の全ての手順を完了するよりも前に、電源制御部13からリセット信号が入力された旨を検出すると(ステップS10にて「YES」)、この場合は、最終状態保存部6aに「待機中」フラグを保存させることなく、一連の処理を終了する。
【0040】
そして、これ以降、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰したことに伴って電源制御部13からリセット信号が入力されなくなると、制御部22は、上記した第1の実施形態で説明したステップS12〜S16を実行し、手順番号として手順番号保存部23dに保存させた手順番号、つまり、上記したように緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順に該当する手順番号を設定し(ステップS25)、緊急通報動作を再開し(ステップS17)、上記したステップS22以降を実行する。
【0041】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、車載緊急通報装置21において、緊急通報動作を開始した後に、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断した場合には、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰すると、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を再開するように構成したので、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、専用の補助バッテリを必要とすることなく、緊急通報信号をサービスセンター10へ送信する緊急通報動作を最後の手順まで適切に完了することができる。また、この場合は、このように緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を再開することにより、緊急通報動作を再開してから最後の手順を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
車載緊急通報装置は、その一部がナビゲーション装置の構成要件から構成されていても良い。緊急通報の開始トリガは、車両が障害物や人に衝突した旨やユーザが緊急通報ボタンを操作した旨以外のものであっても良い。
所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下していたバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に正常に復帰した後に、緊急通報動作を開始した直後の時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の時刻との差が所定時間未満であるか否かを判定することなく、また、緊急通報動作を開始した直後の位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後の位置との差が所定距離未満であるか否かを判定することなく、さらに、ユーザにより緊急通報動作の再開をキャンセルする操作が行われているかいないかを判定することなく、緊急通報動作を速やかに再開する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す機能ブロック図
【図2】フローチャート
【図3】本発明の第2の実施形態を示す機能ブロック図
【図4】図2相当図
【符号の説明】
【0044】
図面中、1は車載緊急通報装置、2は制御部(制御手段)、3は無線通信部(送信手段)、4は計時部(計時手段)、5は測位部(測位手段)、10はサービスセンター、14はバッテリ、21は車載緊急通報装置、22は制御部(制御手段)である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急通報信号をサービスセンターへ送信する送信手段と、緊急通報の開始トリガが発生した場合に緊急通報信号を前記送信手段からサービスセンターへ送信させる緊急通報動作を開始する制御手段とを備えた車載緊急通報装置であって、
前記制御手段は、緊急通報動作を開始した後に、バッテリから装置に供給されているバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル以上から所定レベル未満に一時的に低下したことに伴って緊急通報動作を中断した場合には、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した後に、緊急通報動作を再開することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車載緊急通報装置において、
前記制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した後に、最初の手順から緊急通報動作を再開することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項3】
請求項1に記載した車載緊急通報装置において、
前記制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した後に、緊急通報動作を中断する直前までに完了した手順の次の手順から緊急通報動作を再開することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載した車載緊急通報装置において、
計時する計時手段を備え、
前記制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した後に、緊急通報動作を開始した直後に前記計時手段により計時されて得られた時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に前記計時手段により計時されて得られた時刻との差が所定時間未満である場合には緊急通報動作を再開し、緊急通報動作を開始した直後に前記計時手段により計時されて得られた時刻とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に前記計時手段により計時されて得られた時刻との差が所定時間未満でない場合には緊急通報動作を再開しないことを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載した車載緊急通報装置において、
測位する測位手段を備え、
前記制御手段は、バッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した後に、緊急通報動作を開始した直後に前記測位手段により測位されて得られた位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に前記測位手段により測位されて得られた位置との差が所定距離未満である場合には緊急通報動作を再開し、緊急通報動作を開始した直後に前記測位手段により測位されて得られた位置とバッテリ電圧の電圧レベルが所定レベル未満から所定レベル以上に復帰した直後に前記測位手段により測位されて得られた位置との差が所定距離未満でない場合には緊急通報動作を再開しないことを特徴とする車載緊急通報装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−244137(P2006−244137A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58950(P2005−58950)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】