説明

車載緊急通報装置

【課題】乗員の様子を緊急通報センターのオペレータに適切に通報する。
【解決手段】車載緊急通報装置21は、運転席撮影カメラ25、運転席後方撮影カメラ26、助手席撮影カメラ27及び助手席後方撮影カメラにより撮影された複数の画像のうち衝突を検出したGセンサに対応する撮影カメラにより撮影された画像を他よりも優先して緊急通報センター8に送信する。緊急通報を必要としない乗員を撮影した画像を優先して緊急通報センター8に送信してしまうことはなく、緊急通報を必要とする乗員を撮影した画像を優先して緊急通報センター8に送信することができ、緊急通報を必要とする乗員の様子を緊急通報センター8のオペレータに適切に通報することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の所定部位に配置されている衝突検出手段が衝突を検出してエアバック展開手段により展開されるエアバックに拘束される乗員を撮影可能な撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像を通信手段からセンターに送信させる制御手段とを備えた車載緊急通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載緊急通報装置として、例えば車両前端部に配置されているGセンサが衝突を検出してエアバックが展開されると、展開されたエアバックに拘束される乗員を撮影カメラが撮影し、撮影カメラにより撮影された画像を緊急通報センターに送信するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−303384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エアバックは、例えば衝突の衝撃が大きいときには複数のインフレータを同時に点火したり衝突の衝撃が小さいときには複数のインフレータを時間差で点火したりするなど種々の動作態様があり、また、エアバックシステムの構成やシートベルトを着用しているか否かに応じても動作態様が相違し、展開されてから収縮されるまでの時間を見積もることが難しいという事情がある。
【0005】
このような事情から、車両が衝突した直後に撮影カメラが撮影を開始し、撮影カメラにより撮影された画像を緊急通報センターに送信する構成では、エアバックが展開されたままの状態、つまり、エアバックに拘束された乗員を撮影した画像を緊急通報センターに送信してしまう場合があり、緊急通報を必要とする乗員の様子を緊急通報センターのオペレータに適切に通報することができないという問題がある。
【0006】
また、例えば運転席前部エアバック、運転席側部エアバック、助手席前部エアバック及び助手席側部エアバックというように複数のエアバックが配置されていると共に、運転席撮影カメラ、運転席後方撮影カメラ、助手席撮影カメラ及び助手席後方撮影カメラというように複数の撮影カメラが配置されている構成では、複数の撮影カメラにより撮影された複数の画像を送信する際に優先順序を設定しておかないと、緊急通報を必要とする乗員を撮影した画像ではなく、緊急通報を必要としない乗員を撮影した画像を優先して緊急通報センターに送信してしまう場合があり、この場合も、緊急通報を必要とする乗員の様子を緊急通報センターのオペレータに適切に通報することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、緊急通報を必要とする乗員を撮影した画像をセンターに適切に送信することができ、緊急通報を必要とする乗員の様子をセンターのオペレータに適切に通報することができる車載緊急通報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、車両の互いに異なる所定部位に配置されている複数の衝突検出手段のうちいずれかが衝突を検出すると、エアバック展開手段により複数のエアバックのうちいずれか展開され、展開されたエアバックに乗員が拘束される。ここで、制御手段は、複数の衝突検出手段のうち衝突を検出した衝突検出手段を識別し、乗員を撮影する複数の撮影手段により撮影された複数の画像のうち当該識別した衝突検出手段に対応する撮影手段により撮影された画像を他よりも優先して通信手段からセンターに送信させる。
【0009】
これにより、複数の撮影手段により撮影された複数の画像のうち衝突を検出した衝突検出手段に対応する撮影手段により撮影された画像を他よりも優先してセンターに送信するので、緊急通報を必要としない乗員を撮影した画像を優先してセンターに送信してしまうことはなく、緊急通報を必要とする乗員を撮影した画像を優先してセンターに送信することができ、緊急通報を必要とする乗員の様子をセンターのオペレータに適切に通報することができる。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、制御手段は、複数の撮影手段により撮影された複数の画像のうち当該識別した衝突検出手段に対応する撮影手段により撮影された画像を他よりも優先して通信手段からセンターに送信させた後に、通信手段からセンターに送信させていない画像を予め設定されている優先順序にしたがって通信手段からセンターに送信させる。これにより、例えば運転者が予め優先順序を設定しておくことにより、センターに送信していない画像を当該優先順序にしたがってセンターに送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す機能ブロック図
【図2】フローチャート(その1)
【図3】フローチャート(その2)
【図4】本発明の第2の実施形態を示す機能ブロック図
【図5】フローチャート(その3)
【図6】フローチャート(その4)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。車載緊急通報装置1は、制御部2(本発明でいう制御手段)、無線通信部3(本発明でいう通信手段)、音声通話部4、撮影カメラ5(本発明でいう撮影手段)、画像メモリ6及びエアバック収縮判定部7(本発明でいうエアバック収縮判定手段)を備えて構成されている。制御部2は、マイクロコンピュータを主体として、CPU、RAM、ROM、I/Oバスなどを備えて構成され、車載緊急通報装置1の動作全般を制御する。また、制御部2は、計時機能を有している。
【0013】
無線通信部3は、緊急通報センター8(本発明でいうセンター)との間で広域通信網を介して無線通信を行う。音声通話部4は、運転者が発した音声をマイクロホン9から入力音声として入力すると、その入力した入力音声を音声処理した送話音声を無線通信部3に出力すると共に、無線通信部3から受話音声を入力すると、その入力した受話音声を音声処理した出力音声をスピーカ10から出力する。撮影カメラ5は、運転席に座っている運転者を撮影可能な部位に配置されている。画像メモリ6は、撮影カメラ5が撮影した画像を一時的に記憶する。
【0014】
Gセンサ11(本発明でいう衝突検出手段)は、例えば車両前端部の車体フレームなどに配置されており、車両前端部が例えば先行車両や障害物などに衝突して規定値以上の加速度を検出すると、衝突検出信号をエアバック制御部12(本発明でいうエアバック展開手段、エアバック収縮手段)に出力する。エアバック13は、例えばステアリングなどに取付けられて運転席前部に配置されている。
【0015】
エアバック制御部12は、Gセンサ11から衝突検出信号を入力すると、衝突検出信号を入力した時点から例えば10ミリ秒後にインフレータを点火し、エアバック13にガスを注入してエアバック13を展開させ、エアバック13の展開を完了した時点から例えば数10ミリ秒後にガスを排出してエアバック13を収縮させる。運転席に座っている運転者は、エアバック13が展開されることによりエアバック13に拘束され、展開されたエアバック13が収縮されることによりエアバック13から開放される。また、エアバック制御部12は、このようにしてエアバック13を展開させると同時に、エアバック展開信号を制御部2に出力する。
【0016】
エアバック収縮判定部7(本発明でいうエアバック収縮判定手段)は、展開されたエアバック13が収縮されて当該エアバック13の容積が所定容積まで低減したか否を判定し、展開されたエアバックの容積が所定容積まで低減したか否かを判定し、展開されたエアバックの容積が所定容積まで低減した旨を検出すると、収縮検出信号を制御部2に出力する。ここでいう所定容積とは、運転席に座っている運転者がエアバック13から十分に開放される容積であり、展開されたエアバック13の容積が所定容積まで低減した状態では、撮影カメラ5はエアバック13から開放された運転者の様子を十分に撮影することが可能である。
【0017】
尚、エアバック収縮判定部7は、撮影カメラ5により撮影された画像を画像解析し、例えば画像面積のうちエアバック13の色(白色など)の占有面積(ドット数)を計算してエアバック13の容積が所定容積まで低減したか否かを判定する構成であっても良いし、
ガスの流量を測定するセンサを設けることにより、エアバック13に注入されたガスの容積とエアバック13から排出されたガスの容積との差分を計算してエアバック13の容積が所定容積まで低減したか否かを判定する構成であっても良い。
【0018】
また、上記した車載緊急通報装置1は、自装置で車両位置を検出する機能または例えば車載ナビゲーション装置から当該車載ナビゲーション装置が検出した車両位置を入力する機能を備えており、エアバック制御部12からエアバック展開信号を入力すると、緊急通報センター8を発信先として無線通信部3から発信して緊急通報センター8に接続し、緊急通報センター8との間でデータ回線を接続することにより、車両位置を緊急通報センター8に送信すると共に、緊急通報センター8との間で音声回線を接続することにより、送話音声や受話音声を送受信する。
【0019】
次に、上記した構成の作用について、図2及び図3を参照して説明する。この場合、車載緊急通報装置1と緊急通報センター8とが音声とデータとを通信する態様としては、音声とデータとを同時に通信可能な態様と同時に通信不可能な態様とがあり、ここでは、
(1)音声とデータとを同時に通信可能な態様
(2)音声とデータとを同時に通信不可能な態様
について順次説明する。
【0020】
(1)音声とデータとを同時に通信可能な態様
最初に、車載緊急通報装置1と緊急通報センター8とが音声とデータとを同時に通信可能な態様について、図2を参照して説明する。制御部2は、車載緊急通報装置1が電源オン(例えばアクセサリスイッチオン)の状態では、エアバック制御部12からエアバック展開信号を入力したか否かを判定し、エアバック13が展開されたか否かを判定する(ステップS1)。ここで、制御部2は、車両前端部が例えば先行車両や障害物などに衝突してGセンサ11が規定値以上の加速度を検出し、エアバック制御部12からエアバック展開信号を入力し、エアバック13が展開された旨を検出すると(ステップS1にて「YES」)、計時を開始すると同時に(ステップS2)、緊急通報センター8を発信先として無線通信部3から発信して緊急通報センター8に接続し(ステップS8)、これ以降、撮影カメラ5の撮影を制御する処理と音声通話処理とを並列処理で行う。
【0021】
制御部2は、撮影カメラ5の撮影を制御する処理では、エアバック収縮判定部7から収縮検出信号を入力したか否かを判定し、エアバック13の容積が所定容積まで低減したか否かを判定すると共に(ステップS3)、計時を開始してからの経過時間、つまり、エアバック13が展開されてからの経過時間が所定時間に到達したか否かを判定する(ステップS4)。ここでいう所定時間は、少なくともエアバック13が展開されてから収縮されて当該エアバック13の容積が所定容積まで低減すると予測される時間よりも長い時間である。
【0022】
ここで、制御部2は、エアバック収縮判定部7から収縮検出信号を入力し、エアバック13の容積が所定容積まで低減したか旨を検出すると(ステップS3にて「YES」)、または、エアバック13が展開されてからの経過時間が所定時間に到達した旨を検出すると(ステップS4にて「YES」)、撮影カメラ5に撮影を開始させ(ステップS5)、撮影カメラ5が撮影した画像、つまり、運転席に座っている運転者を撮影した画像を画像メモリ6に一時的に記憶させる。この場合、画像メモリ6に一時的に記憶される画像は、撮影カメラ5が撮影を開始した時点ではエアバック13の容積が所定容積まで低減しているので、エアバック13に拘束された運転者を撮影した画像ではなく、エアバック13から開放された運転者を撮影した画像である。
【0023】
次いで、制御部2は、緊急通報センター8に接続しているか否か(画像を緊急通報センター8に送信可能であるか否か)を判定し(ステップS6)、緊急通報センター8に接続している旨を検出すると(ステップS6にて「YES」)、画像メモリ6に一時的に記憶させておいた画像、つまり、エアバック13から開放された運転者を撮影した画像を無線通信部3から緊急通報センター8に送信させる(ステップS7)。
【0024】
また、制御部2は、緊急通報センター8を発信先として無線通信部3から発信して緊急通報センター8に接続した後では、上記した撮影カメラ5の撮影を制御する処理と並列して音声通話処理を行い(ステップS9)、運転者が発した音声がマイクロホン9に入力音声として入力されると、その入力された入力音声を音声通話部4により音声処理させた送話音声を無線通信部3から緊急通報センター8に送信させると共に、緊急通報センター8から受話音声が無線通信部3に受信されると、その受信された受話音声を音声通話部4により音声処理させた出力音声をスピーカ10から出力させる。
【0025】
すなわち、このような音声とデータとを同時に通信可能な態様では、車載緊急通報装置1は、運転者と緊急通報センター8に配属されているオペレータとの会話を確保しながら、エアバック13から開放された運転者を撮影した画像を緊急通報センター8に送信することができる。
【0026】
(2)音声とデータとを同時に通信不可能な態様
次に、車載緊急通報装置1と緊急通報センター8とが音声とデータとを同時に通信不可能な態様について、図3を参照して説明する。制御部2は、上記した(1)音声とデータとを同時に通信可能な態様と同様にして、エアバック13が展開された旨を検出すると(ステップS11にて「YES」)、計時を開始すると同時に(ステップS12)、緊急通報センター8を発信先として無線通信部3から発信して緊急通報センター8に接続し(ステップS19)、これ以降、撮影カメラ5の撮影を制御する処理(ステップS13〜S18)と音声通話処理(ステップS20)とを並列処理で行う。
【0027】
この場合、制御部2は、撮影カメラ5に撮影を開始させ(ステップS15)、緊急通報センター8に接続している旨を検出すると(ステップS16にて「YES」)、画像メモリ6に一時的に記憶させておいた画像を無線通信部3から緊急通報センター8に直ちに送信させるのではなく、その時点で音声通話を終了しているか否かを判定する(ステップS17)。そして、制御部2は、その時点で音声通話を終了していない旨を検出すると(ステップS17にて「NO」)、画像を無線通信部3から緊急通報センター8に直ちに送信させるのではなく待機し、音声通話を終了した旨を検出した後に(ステップS17にて「YES」)、画像メモリ6に一時的に記憶させておいた画像、つまり、エアバック13から開放された運転者を撮影した画像を無線通信部3から緊急通報センター8に送信させる(ステップS18)。
【0028】
すなわち、このような音声とデータとを同時に通信不可能な態様では、車載緊急通報装置1は、運転者と緊急通報センター8に配属されているオペレータとの会話を終了した後に、エアバック13から開放された運転者を撮影した画像を緊急通報センター8に送信することができる。
【0029】
尚、上記した構成において、撮影カメラ5が撮影する画像は、1フレームであっても良いし、複数フレームであっても良く、制御部2が1フレームを無線通信部3から緊急通報センター8に送信させることにより、緊急通報センター8が車載緊急通報装置1から受信した画像を静止画像として処理しても良いし、制御部2が複数フレームを無線通信部3から緊急通報センター8に連続送信させることにより、緊急通報センター8が車載緊急通報装置1から受信した画像を動画像として処理しても良い。
【0030】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、車載緊急通報装置1において、エアバック13が展開されると、展開されたエアバック13が収縮されてエアバック13の容積が所定容積まで低減してから撮影カメラ5が撮影を開始するように構成したので、エアバック13に拘束された運転者を撮影した画像を緊急通報センター8に送信してしまうことはなく、エアバック13から開放された運転者を撮影した画像を緊急通報センター8に送信することができ、緊急通報を必要とする運転者を撮影した画像を緊急通報センター8に適切に送信することができ、緊急通報を必要とする運転者の様子を緊急通報センターのオペレータに適切に通報することができる。また、展開されたエアバック13の容積が所定容積まで低減しなくともエアバック13が展開されてからの経過時間が所定時間に到達したときにも、撮影カメラ5が撮影を開始するように構成したので、展開されたエアバック13が例えば何らか不具合で収縮しない場合であっても、その状況を放置することなく、運転者を撮影した画像を緊急通報センター8に送信することができる。
【0031】
また、撮影カメラ5により撮影された画像を画像解析してエアバック13の容積が所定容積まで低減したか否かを判定するように構成すれば、エアバック13に注入されたガスの容積を測定するセンサやエアバック13から排出されたガスの容積を測定するセンサなどを必要とすることなく、エアバック13の容積が所定容積まで低減したか否かを判定することができる。一方、エアバック13に注入されたガスの容積とエアバック13から排出されたガスの容積との差分を計算してエアバック13の容積が所定容積まで低減したか否かを判定するように構成すれば、実際にエアバック13に注入されたガスの容積と実際にエアバック13から排出されたガスの容積との差分に基づいてエアバック13が所定容積まで低減したか否かを判定することができ、エアバック13が所定容積まで低減したか否かを実際のガスの注入・排出の状況に応じて精度良く判定することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図4ないし図6を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。上記した第1の実施形態は、運転者を保護する1つのエアバックが配置されている構成であるが、これに対して、この第2の実施形態は、運転者の他に同乗者をも保護する複数のエアバックが配置されている構成である。
【0033】
すなわち、車載緊急通報装置21は、制御部22(本発明でいう制御手段)、無線通信部23(本発明でいう通信手段)、音声通話部24、撮影カメラ25〜28(本発明でいう撮影手段)、画像メモリ29、エアバック収縮判定部30〜33(本発明でいうエアバック収縮判定手段)を備えて構成されている。この場合、運転席撮影カメラ25は、運転席に座っている運転者を撮影可能な部位に配置されており、運転席後方撮影カメラ26は、運転席の後部座席に座っている同乗者を撮影可能な部位に配置されている。また、助手席撮影カメラ27は、助手席に座っている同乗者を撮影可能な部位に配置されており、助手席後方撮影カメラ28は、助手席の後部座席に座っている同乗者を撮影可能な部位に配置されている。
【0034】
運転席前方Gセンサ34(本発明でいう衝突検出手段)及び助手席前方Gセンサ36(本発明でいう衝突検出手段)は、例えば車両前端部の車体フレームなどに配置されており、運転席側方Gセンサ35(本発明でいう衝突検出手段)及び助手席側方Gセンサ37(本発明でいう衝突検出手段)は、それぞれ運転席側部及び助手席側部に配置されている。これらGセンサ34〜37は、それぞれ車両が衝突して規定値以上の加速度を検出すると、衝突検出信号をエアバック制御部38(本発明でいうエアバック展開手段、エアバック収縮手段)に出力する。
【0035】
上記した撮影カメラ25,27はGセンサ34〜37に対応している。具体的には、運転席撮影カメラ25は運転席前方Gセンサ34及び運転席側方Gセンサ35に対応しており、運転席前方Gセンサ34及び運転席側方Gセンサ35のいずれかが衝突を検出した場合であれば、運転席撮影カメラ25の撮影範囲である運転席に座っている運転者が他の同乗者よりも損傷する可能性が高く、運転席撮影カメラ25により撮影される画像が緊急通報に必要な画像となる。また、助手席撮影カメラ27は助手席前方Gセンサ36及び助手席側方Gセンサ37に対応しており、助手席前方Gセンサ36及び助手席側方Gセンサ37のいずれかが衝突を検出した場合であれば、助手席撮影カメラ27の撮影範囲である助手席に座っている同乗者が運転者や他の同乗者よりも損傷する可能性が高く、助手席撮影カメラ27により撮影される画像が緊急通報に必要な画像となる。
【0036】
運転席前部エアバック39、運転席側部エアバック40、助手席前部エアバック41及び助手席側部エアバック42は、それぞれ運転席前部、運転席側部、助手席前部及び助手席側部に配置されており、エアバック制御部38は、Gセンサ34〜37のうちいずれかから衝突検出信号を入力すると、エアバック39〜42の全てにガスを注入してエアバック39〜42の全てを展開させ、展開を完了した時点から例えば数10ミリ秒後にガスを排出してエアバック39〜42の全てを収縮させる。
【0037】
また、エアバック制御部38は、エアバック39〜42の全てを展開させると同時に、エアバック展開信号を制御部22に出力すると共に、この場合は、Gセンサ34〜37のうち衝突検出信号を入力したGセンサを識別するGセンサ識別信号を制御部22に出力する。尚、エアバック制御部38は、例えばGセンサ34〜37が検出した加速度に応じてエアバック39〜42の全てを同時に展開させても良いし、時間差を与えて展開させても良いし。エアバック収縮判定部30〜33は、それぞれ対応するエアバック39〜42の容積が所定容積まで低減したか否を判定する。
【0038】
次に、上記した構成の作用について、図5及び図6を参照して説明する。この場合も、
(1)音声とデータとを同時に通信可能な態様
(2)音声とデータとを同時に通信不可能な態様
について順次説明する。
【0039】
(1)音声とデータとを同時に通信可能な態様
最初に、車載緊急通報装置21と緊急通報センター8とが音声とデータとを同時に通信可能な態様について、図5を参照して説明する。制御部22は、車載緊急通報装置21が電源オンの状態では、エアバック制御部38からエアバック展開信号を入力したか否かを判定し、エアバック39〜42のうちいずれかが展開されたか否かを判定する(ステップS21)。ここで、制御部22は、エアバック制御部38からエアバック展開信号を入力し、エアバック39〜42のうちいずれかが展開された旨を検出すると(ステップS21にて「YES」)、計時を開始すると同時に(ステップS22)、緊急通報センター8を発信先として無線通信部23から発信して緊急通報センター8に接続し(ステップS32)、これ以降、撮影カメラ25〜28の撮影を制御する処理と音声通話処理とを並列処理で行う。
【0040】
制御部22は、撮影カメラ25〜28の撮影を制御する処理では、この場合は、エアバック制御部38から入力したGセンサ識別信号に基づいてGセンサ34〜37のうち衝突を検出したGセンサを識別し(ステップS23)、エアバック39〜42のうちいずれかの容積が所定容積まで低減したか否かを判定すると共に(ステップS24)、計時を開始してからの経過時間、つまり、エアバック39〜42のうちいずれかが展開されてからの経過時間が所定時間に到達したか否かを判定する(ステップS25)。
【0041】
ここで、制御部22は、エアバック収縮判定部30〜33のいずれから収縮検出信号を入力し、エアバック39〜42のうちいずれかの容積が所定容積まで低減した旨を検出すると(ステップS24にて「YES」)、撮影カメラ25〜28のうち容積が所定容積まで低減したエアバックに対応する撮影カメラに撮影を開始させ(ステップS30)、撮影カメラが撮影した画像を画像メモリ29に一時的に記憶させる。そして、制御部22は、全ての撮影カメラが撮影したか否かを判定し(ステップS31)、全ての撮影カメラが撮影していない旨を検出すると(ステップS31にて「NO」)、上記したステップS24,S25に戻る。つまり、制御部22は、エアバック39〜42のうちいずれかの容積が所定容積まで低減した旨を検出する毎に、撮影カメラ25〜28のうち容積が所定容積まで低減したエアバックに対応する撮影カメラに撮影を開始させる。
【0042】
また、制御部22は、エアバック39〜42のうちいずれかが展開されてからの経過時間が所定時間に到達した旨を検出すると(ステップS25にて「YES」)、その時点で撮影を開始させていない撮影カメラに撮影を開始させ(ステップS26)、撮影カメラが撮影した画像を画像メモリ29に一時的に記憶させる。そして、制御部22は、全ての撮影カメラが撮影したか否かを判定し(ステップS27)、全ての撮影カメラが撮影していない旨を検出すると(ステップS27にて「NO」)、上記したステップS26に戻る。
【0043】
次いで、制御部22は、全ての撮影カメラが撮影した旨を検出すると(ステップS27,S31にて「YES」)、緊急通報センター8に接続しているか否かを判定し(ステップS28)、緊急通報センター8に接続している旨を検出すると(ステップS28にて「YES」)、画像メモリ29に一時的に記憶させておいた画像を無線通信部23から緊急通報センター8に送信させる(ステップS29)。
【0044】
この場合、制御部22は、撮影カメラ25〜28により撮影された画像が画像メモリ29に記憶されているので、撮影カメラ25〜28により撮影された画像のうち衝突を検出したGセンサに対応する撮影カメラにより撮影された画像を他よりも優先して無線通信部23から緊急通報センター8に送信させる。つまり、制御部22は、運転席前方Gセンサ34が衝突を検出した場合であれば、運転席前方Gセンサ34に対応する運転席撮影カメラ25により撮影された画像を他よりも優先して無線通信部23から緊急通報センター8に送信させ、また、助手席前方Gセンサ36が衝突を検出した場合であれば、助手席前方Gセンサ36に対応する助手席撮影カメラ27により撮影された画像を他よりも優先して無線通信部23から緊急通報センター8に送信させる。
【0045】
そして、制御部22は、撮影カメラ25〜28により撮影された画像のうち衝突を検出したGセンサに対応する撮影カメラにより撮影された画像を他よりも優先して無線通信部23から緊急通報センター8に送信させた後に、緊急通報センター8に送信させていない画像をエアバックの容積が所定容積まで低減した順序あるいは予め設定されている優先順序にしたがって無線通信部23から緊急通報センター8に送信させる。
【0046】
(2)音声とデータとを同時に通信不可能な態様
次に、車載緊急通報装置1と緊急通報センター8とが音声とデータとを同時に通信不可能な態様について、図6を参照して説明する。制御部22は、上記した(1)音声とデータとを同時に通信可能な態様と同様にして、エアバック39〜42のうちいずれかが展開された旨を検出すると(ステップS41にて「YES」)、計時を開始すると同時に(ステップS42)、緊急通報センター8を発信先として無線通信部23から発信して緊急通報センター8に接続し(ステップS53)、これ以降、撮影カメラ25〜28の撮影を制御する処理(ステップS43〜S52)と音声通話処理(ステップS54)とを並列処理で行う。
【0047】
この場合も、制御部22は、全ての撮影カメラが撮影した旨を検出した後に(ステップS47,S52にて「YES」)、緊急通報センター8に接続している旨を検出すると(ステップS48にて「YES」)、画像メモリ29に一時的に記憶させておいた画像を無線通信部23から緊急通報センター8に直ちに送信させるのではなく、その時点で音声通話を終了しているか否かを判定する(ステップS49)。そして、制御部22は、その時点で音声通話を終了していない旨を検出すると(ステップS49にて「NO」)、画像を無線通信部23から緊急通報センター8に直ちに送信させるのではなく待機し、音声通話を終了した旨を検出した後に(ステップS49にて「YES」)、画像メモリ29に一時的に記憶させておいた画像を無線通信部23から緊急通報センター8に送信させる(ステップS18)。
【0048】
この場合も、制御部22は、撮影カメラ25〜28により撮影された画像のうち衝突を検出したGセンサに対応する撮影カメラにより撮影された画像を他よりも優先して無線通信部23から緊急通報センター8に送信させ、その後に、緊急通報センター8に送信させていない画像をエアバックの容積が所定容積まで低減した順序あるいは予め設定されている優先順序にしたがって無線通信部23から緊急通報センター8に送信させる。
【0049】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、車載緊急通報装置21において、運転席撮影カメラ25、運転席後方撮影カメラ26、助手席撮影カメラ27及び助手席後方撮影カメラにより撮影された複数の画像のうち衝突を検出したGセンサに対応する撮影カメラにより撮影された画像を他よりも優先して緊急通報センター8に送信するように構成したので、緊急通報を必要としない乗員を撮影した画像を優先して緊急通報センター8に送信してしまうことはなく、緊急通報を必要とする乗員を撮影した画像を優先して緊急通報センター8に送信することができ、緊急通報を必要とする乗員の様子を緊急通報センター8のオペレータに適切に通報することができる。
【0050】
また、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、エアバックの容積が所定容積まで低減してから撮影カメラが撮影を開始するように構成したので、エアバック39〜42に拘束された乗員を撮影した画像を緊急通報センター8に送信してしまうことはなく、エアバック39〜42から開放された乗員を撮影した画像を緊急通報センター8に送信することができ、乗員の様子を緊急通報センター8のオペレータに適切に通報することができる。また、緊急通報センター8に送信していない画像をエアバックの容積が所定容積まで低減した順序にしたがって緊急通報センター8に送信するように構成したので、緊急通報センター8に送信していない画像をエアバック39〜42から開放された乗員を撮影した順序にしたがって緊急通報センター8に送信することができる。さらに、緊急通報センター8に送信していない画像を予め設定されている優先順序にしたがって緊急通報センター8に送信するように構成したので、例えば運転者が予め優先順序を設定しておくことにより、緊急通報センター8に送信していない画像を当該優先順序にしたがって緊急通報センター8に送信することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
画像を緊急通報センターに送信すると同時に、衝突直前の車速、ブレーキ操作情報、衝突方向及び衝撃などの衝突に関する情報を緊急通報センターに送信する構成であっても良い。
第2の実施形態において、いずれかのGセンサが衝突を検出したときに複数のエアバックの全てを展開させる構成に限らず、複数のエアバックのうち衝突を検出したGセンサの配置部位に応じて選択したエアバックのみを展開させる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
図面中、1は車載緊急通報装置、2は制御部(制御手段)、3は無線通信部(通信手段)、5は撮影カメラ(撮影手段)、7はエアバック収縮判定部(エアバック収縮判定手段)、8は緊急通報センター(センター)、11はGセンサ(衝突検出手段)、12はエアバック制御部(エアバック展開手段、エアバック収縮手段)、13はエアバック、21は車載緊急通報装置、22は制御部(制御手段)、23は無線通信部(通信手段)、25〜28は撮影カメラ(撮影手段)、30〜33はエアバック収縮判定部(エアバック収縮判定手段)、34〜37はGセンサ(衝突検出手段)、38はエアバック制御部(エアバック展開手段、エアバック収縮手段)、39〜42はエアバックである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の互いに異なる所定部位に配置されている複数の衝突検出手段のうちいずれかが衝突を検出してエアバック展開手段により展開される複数のエアバックのうちいずれかに拘束される乗員を撮影可能な複数の撮影手段と、
前記複数の撮影手段により撮影された複数の画像を通信手段からセンターに送信させる制御手段とを備えた車載緊急通報装置であって、
前記制御手段は、前記複数の衝突検出手段のうち衝突を検出した衝突検出手段を識別し、前記複数の撮影手段により撮影された複数の画像のうち当該識別した衝突検出手段に対応する撮影手段により撮影された画像を他よりも優先して前記通信手段からセンターに送信させることを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車載緊急通報装置において、
前記制御手段は、前記複数の撮影手段により撮影された複数の画像のうち当該識別した衝突検出手段に対応する撮影手段により撮影された画像を他よりも優先して前記通信手段からセンターに送信させた後に、前記通信手段からセンターに送信させていない画像を予め設定されている優先順序にしたがって前記通信手段からセンターに送信させることを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項3】
請求項1に記載した車載緊急通報装置において、
前記制御手段は、前記複数の撮影手段により撮影された複数の画像のうち当該識別した衝突検出手段に対応する撮影手段により撮影された画像を他よりも優先して前記通信手段からセンターに送信させた後に、前記通信手段からセンターに送信させていない画像を前記エアバックの容積が所定容積まで低減した順序にしたがって前記通信手段からセンターに送信させることを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載した車載緊急通報装置において、
前記制御手段は、音声と画像とを同時に通信不可能な態様では、音声通話を終了した旨を検出した後に、前記撮影手段により撮影された画像を前記通信手段からセンターに送信させることを特徴とする車載緊急通報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−14728(P2012−14728A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204517(P2011−204517)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2007−68740(P2007−68740)の分割
【原出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】