車載表示装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法
【構成】 輝度制御装置10はコンピュータ12を含み、コンピュータ12のCPU12aは、第1カメラ14の撮影画像から運転者の視線方向を検出する。また、第2カメラ16の撮影画像から運転者の視認可能な範囲の輝度分布を算出する。さらに、視線方向から運転者の注視輝度を検出する。運転者が車載表示装置20を見ている場合には、その後に車外等に移動される視線方向における輝度を考慮して、その車載表示装置20の輝度が制御される。また、視線が車外から車載表示装置20に移動された場合には、その車載表示装置20の輝度は、それまで見ていた位置の注視輝度と同等にされる。したがって、眼の順応が速い。また、視線が車外に向けられている場合には、その車載表示装置20の輝度は、低下される。したがって、反射やグレアによる影響がほとんどない。
【効果】 輝度の適切な制御により、快適な運転環境を提供できる。
【効果】 輝度の適切な制御により、快適な運転環境を提供できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車載表示装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法に関し、特にたとえば、自動車に装備される、車載表示装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車載表示装置の輝度制御装置の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示される運転操作補助装置では、運転者の顔画像が撮影され、撮影によって得られた顔画像データに基づいて、顔の向きと視線方向とが検出される。顔の動きが少ない場合には、視線方向が所定のメータ視認角の範囲内にあるかどうかを判断する。視線方向の角度が所定のメータ視認角の範囲にある場合、つまり視線が下方を向いている場合には、運転者のメータディスプレイの確認動作であると判断して、メータディスプレイの明るさを、その情報が視認し易くなる程度まで増大させる。たとえば、メータディスプレイの表示輝度を高めたり、その表示コントラストを高めたりする。また、運転者の顔の向きが左右に大きく変化した場合には、前方障害物の確認動作等であると判断して、補助灯の照射方向をその顔の向きに合わせる。
【0003】
また、この種の車載表示装置の輝度制御装置の他の例が特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示された照明制御システムでは、車外が所定の明るさよりも暗い場合に、前席搭乗者が車内機器の照明を煩わしく感じないように通常の第1の明るさから、より暗い第2の明るさに車内機器を暗くし、前席搭乗車の視線が向けられた機器について、第2の明るさから第1の明るさにして、その機器を視認しやすくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3228086号[B60Q 1/18,B60K 35/00,B60Q 1/08]
【特許文献2】特開2006−21591号[B60Q 3/02,B60K 35/00,B60Q 3/04]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示の技術では、視線がメーンディスプレイなどの車内機器に向けられると、基本的には、その明るさを大きくするようにするだけである。したがって、暗い車外を見ている状態から明るい車内機器の表示を見た状態に変化すると、その明暗の差が大きい場合には、眼が適応するまでに時間がかかり、前方を見ていない時間が長くなってしまうおそれがある。また、明るい車内機器の表示を見た後に、視線が車外に戻されると、その明暗の差が大きい場合には、眼が適応するまで時間がかかり、前方が見えにくくなってしまうおそれがある。また、特許文献1および特許文献2では、単に車外が暗いかどうかを判断するだけであり、運転者が見ている方向ないし場所の明るさを判断していないため、車内機器の明るさを適切に調整できない場合がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、車載装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法を提供することである。
【0007】
また、この発明の他の目的は、適切に明るさを調整できる、車載装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、運転者の視線方向を検出する視線検出手段、視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、視線検出手段によって検出された視線方向と、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置である。
【0010】
第1の発明では、自動車内に設けられる車載表示装置(20)の輝度制御装置(10)は、輝度分布検出手段(12a、S3)、視線検出手段(12a、S9)、注視判断手段(12a、S15)、注視輝度検出手段(12a、S11)、および輝度制御手段(12a、S23、S27、S33、S41)を備える。輝度分布検出手段は、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する。視線検出手段は、運転者の視線方向を検出する。注視判断手段は、視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する。注視輝度検出手段は、視線検出手段によって検出された視線方向と、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する。つまり、視線方向から運転者が見ている方向ないし位置(場所)を検出し、輝度分布のうちの対応する位置の輝度を注視輝度として検出するのである。輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する。たとえば、変化前の輝度と一致ないしほぼ一致させるように、車載表示装置の輝度が制御される。
【0011】
第1の発明によれば、変化の前の注視輝度に基づいて車載表示装置の輝度を制御するので、たとえば、変化の前後で輝度の差を少なくすることができ、したがって、適切に明るさを調整することができる。このため、快適な運転環境を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布を記憶する確率分布記憶手段をさらに備え、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視している状態が継続しているとき、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、確率分布記憶手段に記憶された確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する。
【0013】
第2の発明では、輝度制御装置は、確率分布記憶手段(12b)をさらに備える。確率分布記憶手段は、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布を記憶する。たとえば、確率分布は、運転者が視認可能な範囲において、運転中にどこをどのくらい(時間長)見ているかを示す。輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視している状態が継続しているとき(S15およびS17で“YES”)、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、確率分布記憶手段に記憶された確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する。したがって、たとえば、予測される移動後の注視位置の注視輝度に近付けるように、車載表示装置の輝度が制御される。
【0014】
第2の発明によれば、車載表示装置を見ている状態から車外のような他の場所などを見る場合に、移動後の注視輝度に合わせるように当該車載表示装置に輝度を制御するので、運転者の眼を比較的早く順応させることができる。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に相関する値に車載表示装置の輝度を設定する。
【0016】
第3の発明では、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき(ステップS7で“NO”)、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に相関する値に車載表示装置の輝度を設定する。たとえば、注視輝度に相関する値は、注視輝度と一致ないしほぼ一致する値や注視輝度の所定割合の値である。これによって、視線を変化させる前に見ていた場所や位置の輝度に近付けるように、車載表示装置の輝度を制御する。
【0017】
第3の発明によれば、視線を変化させる前に見ていた場所や位置の輝度に近付けるように、車載表示装置の輝度を制御するので、運転者の眼の順応を速くさせることができるので、車載表示装置を見ている時間すなわち前方を見ていない時間を出来る限り少なくすることができる。
【0018】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに従属し、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態であるとき、車載表示装置の輝度を低下させる。
【0019】
第4の発明では、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態であるとき(ステップS15で“NO”)、つまり運転者が前方(車外)を見ている場合には、車載表示装置の輝度を低下させる。
【0020】
第4の発明によれば、運転者が前方を見ている場合には、車載表示装置の輝度を低下されるので、その照明がフロントガラスに反射したり、グレアが発生したりするのを回避することができる。したがって、快適な運転環境を提供することができる。
【0021】
第5の発明は、第1ないし第4の発明に従属し、輝度分布および注視輝度は、所定時間分の平均値である。
【0022】
第5の発明によれば、所定時間分の平均値を用いるので、一時的な変化の影響を受けずに、車載表示装置の輝度を制御することができる。
【0023】
第6の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、運転者の視線方向を検出する視線検出手段、視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、および運転者が車載装置を注視している状態が継続しているとき、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置である。
【0024】
第7の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、運転者の視線方向を検出する視線検出手段、視線検出手段によって検出された視線方向と、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および注視輝度検出手段によって検出された注視輝度と、運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置である。
【0025】
第8の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、輝度制御装置のプロセッサに、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向と、輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラムである。
【0026】
第9の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、輝度制御装置のプロセッサに、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、および運転者が車載装置を注視している状態が継続しているとき、輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布と、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラムである。
【0027】
第10の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、輝度制御装置のプロセッサに、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向と、輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度と、運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラムである。
【0028】
第11の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、(b)運転者の視線方向を検出し、(c)ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、(d)ステップ(b)によって検出された視線方向と、ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出し、そして(e)運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前にステップ(d)によって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法である。
【0029】
第12の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、(b)運転者の視線方向を検出し、(c)ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、そして(d)運転者が車載装置を注視している状態が継続しているとき、ステップ(a)によって検出された輝度分布と、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法である。
【0030】
第13の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、(b)運転者の視線方向を検出し、(c)ステップ(b)によって検出された視線方向と、ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出し、そして(d)ステップ(c)によって検出された注視輝度と、運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法である。
【0031】
第6−第13の発明についても、第1の発明と同様に、適切に明るさを制御することができ、快適な運転環境を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、運転者の視線が変化する前の注視輝度に基づいて車載表示装置の輝度を制御するので、変化の前後における明るさの違いを少なくするように輝度を制御することができる。つまり、適切に明るさを制御して、快適な運転環境を提供することができる。
【0033】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1はこの発明の一実施例の車載表示装置の輝度制御装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1に示す輝度制御装置を適用する自動車内の様子を示す図解図である。
【図3】図3は実験用映像の内容および実験条件を示す表である。
【図4】図4は実験用の補助画面の例を示す図解図である。
【図5】図5は実験結果を示すグラフである。
【図6】図6は他の実験結果を示すグラフである。
【図7】図7はその他の実験結果を示すグラフである。
【図8】図8は図1に示す第2カメラの撮影画像に基づく環境輝度分布を説明するための図解図である。
【図9】図9は自動車の運転者の注視位置の確率分布(重み)を説明するための図解図である。
【図10】図10は図1に示したRAMのメモリマップの例を示す図解図である。
【図11】図11はパネル輝度レベルに対応する輝度値を示す表および分布輝度時間平均に対応するパネル目標輝度レベルを示す表である。
【図12】図12は注視モードに応じた注視輝度時間平均に対応するパネル目標輝度レベルを示す表である。
【図13】図13は図1に示すCPUの輝度制御処理の一部を示すフロー図である。
【図14】図14は図1に示すCPUの輝度制御処理の他の一部であって、図13に後続するフロー図である。
【図15】図15は図1に示すCPUの輝度制御処理のその他の一部であって、図13に後続するフロー図である。
【図16】図16はこの実施例の輝度制御装置の動作例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照して、この実施例の車載表示装置の輝度制御装置10は、コンピュータ12を含み、コンピュータ12には、第1カメラ14、第2カメラ16およびデータベース(DB)18が接続される。
【0036】
なお、この実施例では、分かり易く示すために、DB18を設けるようにしてあるが、DB18に代えて、コンピュータ12に内蔵されるHDDやROM(図示せず)またはコンピュータ12に装着されるSDカードなどのメモリカード(図示せず)を用いるようにしてもよい。
【0037】
コンピュータ12は、PCなどの汎用のコンピュータであり、CPU12aおよびRAM12bを含む。第1カメラ14は、赤外線カメラであり、運転者の視線方向を検出するために用いられる。また、第2カメラ16は、モノクロカメラであり、運転者が視認可能な範囲についての輝度分布を検出するために用いられる。したがって、第2カメラ16としては、第1カメラ14と比べて解像度(たとえば、30万画素)の比較的低いものを用いることができる。DB18には、後述する、注視位置の確率分布(図8参照)および各種のテーブルデータ(図9、図10参照)が記憶される。
【0038】
図2(A)および図2(B)は、図1に示した第1カメラ14および第2カメラ16の設置状況などを説明するための図解図である。図2(A)に示すように、或る自動車100には、車載表示装置20が設けられる。たとえば、車載表示装置20は、インストルメントパネル(インパネ)102の表示装置20a、カーナビゲーション・システム(カーナビ)の表示画面104aおよび操作パネル104bの表示装置20bおよび空調の操作パネル106の表示装置20cを含む。ただし、カーオーディオがカーナビとは別で設けられる場合には、その表示画面および操作パネルの表示装置も含まれる。
【0039】
図2(A)示すように、第1カメラ14は、インパネ102の左端の上側に設置される。ただし、運転の邪魔にならなければ、インパネ102の中央の上側に設置し、運転者の顔を正面から撮影可能に設置してもよい。また、図2(B)に示すように、第2カメラ16は、たとえば、運転席の上部であり助手席側に設置される。図示は省略するが、第2カメラ16は、助手席の上部であり、運転席側に設置されてもよい。
【0040】
このような車載表示装置20の輝度制御装置10では、従来、車外の明るさを検知するとともに、運転者の視線を検出し、運転者が車外を見て運転している場合には、車載表示装置20の輝度を低下させて、フロントガラスにインパネ102などの表示内容が映ってしまうのを防止する。そして、運転者が車載表示装置20を見たときには、当該車載表示装置20の輝度を高めて、表示内容を見易くしてある。
【0041】
しかし、車外の明るさは、単に明るいか暗いかを判断するだけであり、運転者が注視しているところの輝度(注視輝度)、および暗いところから明るいところを見る場合やその逆の場合の眼の適応速度については何ら考慮されていない。ただし、注視輝度とは、運転者が見ている(注視している)方向ないし位置(場所)の輝度を意味する。具体的には、運転者が車載表示装置10以外(車外を含む)を見ている場合には、その視線方向における輝度であり、運転者が車載表示装置20を見ている場合には、その照明についての輝度である。
【0042】
たとえば、車載表示装置20を含む車室内照明による運転時の視認性の妨害要因としては、車室内照明がフロントガラスに写り込む「反射」、周辺視野に中心視野よりも明るい領域が存在することにより中心視野の視認性が妨害される「グレア」、機器画面(この実施例では、表示装置20a、20b、20c)と車外など運転中に注視する異なる領域間の輝度の差異によって視認性が悪化する「順応」などが知られている。
【0043】
ここで、「順応」とは、眼の網膜が受ける輝度の変化に対応して視覚系の性質がなじむ過程(順応過程)、およびなじんだ状態(順応状態)をいう。ただし、この実施例においては、単に「順応」という場合には、主として「順応過程」を意味することとする。
【0044】
このうち、「反射」と「グレア」については、基本的に機器画面を見ていないときに同時に照射されている照明による妨害要因であるのに対して、「順応」による妨害は車外注視時と異なるタイミングで注視した領域と車外の輝度の差異の効果が残存することによるものである。「反射」および「グレア」については、基本的に機器画面を見ていないときに生じることから、たとえば視線情報を活用して運転者が車外を注視しているときには照明を切るなどの方法によって回避できる可能性が高い。実際に、視線と連動して非注視時の照明レベルを下げることで視認性の向上を目指したシステムが背景技術で示した特許文献2に開示されている。したがって、後述する実験の目的のひとつは、運転者の視線方向に着目し、運転者が注視していないときに照明、すなわち車載表示装置20の輝度レベルを落とすことで、暗視野(車外)に対する視認性が向上することを確認することにある。
【0045】
一方で、「順応」による妨害は、暗い車外から視線を移して明るい機器画面を注視したり、或いは逆に明るい機器画面から車外に視線を戻したりする際に生じる。そのため、車外に合わせて機器画面の輝度を調整することで妨害の程度が軽減されると考えられる。順応特性を考慮した車載ディスプレイの制御として、輝度と彩度を補正することによって晴天の積雪時のような高輝度視環境下においても視認し易い車載ディスプレイを実現する方式について検討されている例がある(坂口,樋口,中野,山本:“目の順応特性を考慮した車載ディスプレイの表示”,豊田中央研究所 R&D レビュー,33,2,pp.37-45(1998))。この方法では、人間の視覚の順応特性に基づいて、明るい車外に対して主観的明るさの変化が抑えられるようにディスプレイ輝度を補正することで視認性を向上させている。
【0046】
しかし、夜間運転時のように、車外が相対的に低輝度である場合には、暗い車外に合わせたレベルまで表示ディスプレイの輝度を低下させると機器自体の視認性が損なわれる可能性が高い。したがって、後述する実験では、視線に連動して表示ディスプレイの輝度を段階的に調整することで、運転者の視認性を確保しながら、運転者が車外に視線を戻した際に発生する「順応」による妨害を抑制する手法も視野に入れるようにした。また、複数の視線連動パターンについて、視認性との関連を被験者実験により検討した。
【0047】
簡単に説明すると、実験では、運転者の視覚認知が困難となる夜間運転時を対象として、視線計測技術と車室内照明制御(車載表示装置20の輝度制御)とを組み合わせることで、車内・車外双方の視認性が高く運転者にとって快適な運転環境を実現することを目指して、照明環境と視認能力の関連性について調べた。また、実験では、夜間運転シーンを撮影した車両前方の映像(主画面)と、機器パネルを模した図形表示(補助画面)とを暗室環境において液晶モニタ(図示せず)により被験者に提示し、照明パターンの違いによる主画面および補助画面上での検出課題の成績、応答時間の差異について評価した。
【0048】
この実施例の実験では、3台の液晶モニタが机上に水平に並べて配置される。このうち、中央の液晶モニタ(主画面)は、運転時の車外環境(運転者がフロントガラスを通して視認可能な範囲の様子)を、その両サイドの液晶モニタ(補助画面)は、それぞれカーナビ・計器類等(スピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計、距離計、カーオーディオ、ヒータやエアコンの操作装置など)の車内機器(車載表示装置20)を想定したものである。被験者は、キーボードによる入力が可能な状態で、中央の液晶モニタの画面に対面するように椅子に座る。
【0049】
また、刺激制御には、PC(OS:Windows(登録商標))が使用され、刺激作成には、Adobe(登録商標)Flash CS4が使用される。刺激提示には、上述したように、3台の液晶モニタが使用される。ただし、各液晶モニタの表示解像度は、1920×1200dpiである。また、主画面として使用する液晶モニタの明るさについては、ブライトネスは最小に設定され、コントラストは実際の運転状況に合わせて調整され、最大輝度は28.38cd/m2に設定される。一方、補助画面として使用する液晶モニタの明るさについては、ブライトネスおよびコントラストは最大に設定され、最大輝度は386.50cd/m2に設定される。さらに、被験者の反応を取得するために、キーボードのテンキーが用いられる。ただし、主画面を用いた刺激検出課題(主課題)の反応取得には、「0」ボタンが使用され、補助画面を用いた文字弁別課題(副課題)の反応取得には、「4」、「6」ボタンが使用される。
【0050】
後述する実験条件に応じて、補助画面の表示輝度を変化させながら、主画面に提示した標的に対して早く正確に応答することを求める検出課題を行った。また、実験中では、音声によって指示された時区間においては、継続して被験者毎に指定した一方の補助画面を注視することを各被験者に求めた。
【0051】
また、図示は省略するが、実験では、実際の夜間運転シーンを模擬するため、京都府−奈良県−大阪府を結ぶ国道163号において平日夜間22時−23時頃に撮影した車両前方の映像を使用し、検出課題の標的として映像上に人型の標的を灰色で重畳した。被験者には、標的を確認したら、「0」ボタンを押すように指示した。両端の補助画面の表示内容は実験条件に応じて調整した。補助画面に対する注視を確実にするため、液晶モニタには「E」または「F」の文字を表示(提示)し、被験者に弁別課題を課した。
【0052】
図3(A)には、実験に使用した運転シーンの映像についての内容がテーブルで示される。各シーンともに、交通量の少ないシーンと交通量の多いシーンとを約4分間ずつ組み合わせた約8分間の映像となっている。後述するように、被験者毎に、4種類の異なる補助画面の照明パターンについて実験を行った。各照明パターンについて図3(A)に示した運転シーンの映像の一つを重複無く選択して1人の被験者が同じ運転シーンの映像を繰り返し見ることがないようにした。
【0053】
なお、運転シーンの際による成績の違いを相殺するために、補助画面の照明パターンと運転シーンの映像の組み合わせを被験者毎に入れ替えた。
【0054】
次に、主画面上での検出課題のために運転シーンの映像に重畳して表示した標的について説明する。提示する標的は、上述したように、灰色(無彩色)の人型図形であり、表示する輝度は16−48の範囲で場面の明るさに応じて設定される。ただし、システムの輝度は、0(最小)−255(最大)で設定される。標的の提示回数は、各実験条件(図3(B)参照)において36回であり、主画面の上下を除いて、左、右または中央の3つの領域に12回ずつ標的を提示した。また、補助画面を注視した直後に標的を提示する回数が各領域で同じ(3回)となるように調整した。
【0055】
なお、各実験条件で、被験者に補助画面への注視を求める指示音は計9回提示された。ただし、注視のタイミングおよび場面の状況は、各場面で異なる。
【0056】
続いて、補助画面の提示内容について説明する。補助画面では、実験条件に応じて照明パターンを切り替える。視覚刺激として、正方形の表示枠内にアルファベット1文字(EまたはF)を表示した画像を提示した。被験者は、主画面上での検出課題を行いながら、指示音が提示されると、補助画面に視線を移動させ、提示された画像に表示されているアルファベット(E,F)を判別して、キーボードで応答するとともに、指示音が消えるまで同画面を注視することが求められた。指示音としては、Windows標準のチャイム音を使用し、1回あたり10秒間提示した。また、アルファベットが表示された画像は、指示音の提示が開始されてから200ms後に表示され、指示音が消されると同時に消去される。視覚刺激の提示位置すなわちアルファベットが表示された画像の表示位置は、補助画面中の高さ1/3,2/3の位置、幅1/3,2/3の位置の組み合わせで、計4か所のうちから1か所をランダムに決定した。ただし、アルファベットの表示された画像の輝度は実験条件毎に異なる。実験条件の一部では、被験者に対する注視指示と時間的に同期させて補助画面の輝度を変化させる視線連動条件として、図4(A)ないし図4(C)には、補助画面の表示例が示される。簡単に説明すると、図4(A)には、高輝度の場合の補助画面が示される。図4(B)には、低輝度の場合の補助画面が示される。そして、図4(C)には、中輝度(高輝度と低輝度との中間の輝度)の場合の補助画面が示される。
【0057】
実験条件は、図3(B)に示すように、4つの場合(Bright-Off, Dark-Off, Dark-On, Gaze)に設定した。図3(B)に示すように、各実験条件では、補助画面の明るさ、視線随伴および視線随伴時輝度変化についての異なる内容が設定される。Bright-Offの条件では、補助画面の明るさが「高輝度」であり、視線随伴が「なし」であり、視線随伴時輝度変化も「なし」である。また、Dark-Offの条件では、補助画面の明るさが「低輝度」であり、視線随伴が「なし」であり、さらに、視線随伴時輝度変化も「なし」である。さらに、Dark-Onの条件では、補助画面の明るさが「低輝度」であり、視線随伴が「あり(高輝度)」であり、さらに、視線随伴時輝度変化は「なし」である。さらにまた、Gazeの条件では、補助画面の明るさが「低輝度」であり、視線随伴が「あり(中輝度)」であり、さらに、視線随伴時輝度変化も「あり」である。
【0058】
ただし、視線随伴については、「なし」では試行中補助画面の明るさ(輝度)を一定とし、「あり」では注視時に注視した側の補助画面全体が明るくなるように輝度が変化される。ただし、注視していない方の補助画面(非注視画面)の輝度は変化させない。また、Gazeの条件では、補助画面の注視開始から2000ms後に、その補助画面の輝度を落として、暗視野(主画面)に視線を戻した際の順応による妨害の緩和を狙った。
【0059】
なお、各実験条件とも被験者が主画面を注視している間は、補助画面に標的を表示していない。
【0060】
上述したように、主画面には実際の夜間運転場面の動画が提示され、補助画面にはアルファベットの「E」または「F」が表示された画像が提示され、被験者は、それぞれをキーボードで応答する。実験課題は、次の通りである。
【0061】
(1)主画面に提示される刺激の検出
被験者は、運転者として動画を観察し、標的を検出したら、できるだけ速く、正確に、左手親指で「0」ボタンを押す。
【0062】
(2)補助画面に提示される刺激の弁別
指示音が鳴ると補助画面にアルファベットが表示された画像が提示される。被験者は、指示音が鳴っている間、アルファベットが表示された画像を注目し、アルファベットが「E」であるか、「F」であるかを弁別し、キーボードで応答する。また、指示音が鳴っている間は、主画面には刺激は提示されない。
【0063】
ただし、被験者は、健常な成人8名(男性5名、女性3名)で、左右いずれの補助画面を注視させるかは、被験者毎に入れ替え、4名ずつでバランスを取った。
【0064】
主画面での検出課題(主課題)の成績が図5(A)に示され。図5(A)には、検出課題の成績として、各実験条件についての正答率(%)がグラフで示される。この図5(A)から分かるように、補助画面を常時高輝度で点灯するBright−Offの条件では、他の条件と比較して、成績が低い(比率p<0.05)。これは、主画面を注視している際にも、常時補助画面が点灯を続いていることによる「グレア」または「反射」の影響が大きいためと考えられる。
【0065】
また、主課題における反応時間が図5(B)に示される。ただし、反応時間は標的を提示してからボタンが押されるまでの時間であり、平均値が求められる。図5(B)から分かるように、Bright−Offの条件では、他の条件と比較して、反応時間が最も長い。ただし、各条件間における有意差は認められない。
【0066】
さらに、主課題における難易度についての主観評価が図6(A)に示される。図6(A)に示すように、Bright−Offの条件が最も難易度が高く、Bright−Offの条件とGazeの条件との間には有意差が認められる。この結果からも「グレア」または「反射」によって視認が妨げられていることが伺える。
【0067】
一方で、被験者が補助画面を注視した際の輝度が異なるDark−Offの条件とDark−Onの条件との間では、主画面で検出課題の成績に有意差は認められなかった。このことは、主課題の妨害要因の中で、主画面の注視時の補助画面の照明の影響である「グレア」または「反射」が支配的であることを意味する。
【0068】
しかしながら、図6(B)および図7(A)に示すように、補助画面の快適性および補助画面の主課題への影響についての主観評価においては、両者に有意な差異が認められた。すなわち、補助画面の注視時に高輝度となるDark−Onの条件に比べて、注視時にも低輝度を維持するDark−Offの条件の方が、快適性が高く、補助画面の主課題への影響も少ないと評価された。Dark−Onの条件では、明るい画面(補助画面)を注視した直後に暗視野(主画面)に視線を移す必要があり、順応によって主画面の視認が困難になっている可能性がある。
【0069】
なお、図6(B)および図7(A)では、(Bright−Off、Dark−On)の条件と、(Dark−Off、Gaze)の条件との間の各組合せについて有意差が認められた。
【0070】
図7(B)は、補助画面でのアルファベットの判別課題における、各条件についての反応時間を示すグラフである。ここでは、照明の視線連動を行うDark−OnおよびGazeの条件の方が、視線連動を行わないBright−Off、Dark−Offの条件に比べて反応時間が長くなる傾向がみられた。この実施例の実験における各被験者の補助画面への視線移動と照明条件の切り替えのタイミングのずれが、視認性に影響を与えている可能性がある。
【0071】
以上より、実験全体において、Bright−Offの条件における検出課題の成績が最も低く、直接検出課題の刺激を提示していない補助画面の輝度が主画面の検出課題に影響を与えることが確認された。この要因としては、周辺視野により明るい領域が存在することによって中心視野の視覚認知が困難となる「グレア」、および周辺の照明光が主画面に写り込む「反射」の両方が考えられる。実際の夜間運転時においても、車載表示装置20を含む車室内照明や対向車のヘッドライトなど高照度の照明によって暗い路面状態の把握が困難であったり、それらの照明のフロントガラスへの写り込みによって同様に車外の様子を観察(目視)することが困難であったりすることは日常的に経験される。周辺視野の高輝度の照明(補助画面)によって主画面が見づらくなっているということについては、図7(A)に示した主観評価においても明らかにされた。このため、不要時に車載表示装置20の照度を低下させる設計は合理的であり、運転者の注視方向を検出することで、当該運転者が車外に注目している通常の運転時に車室内照明(車載表示装置20)の明るさ(輝度)を低下させる制御が有効であることが示唆された。
【0072】
一方で、これらの車載表示装置20は情報提供装置であり、運転者が快適に視認できる必要がある。実験の結果、注視時のみ補助画面の輝度を上げるDark−Onの条件では、常時高輝度を維持するBright−Offの条件に比べて主課題の成績は上昇しているものの、補助画面の快適性および補助画面の主課題への影響に関する主観評価においては、Dark−Offの条件よりも評価が低かった。Dark−Onの条件では、被験者が補助画面を注視している際には、Bright−Offの条件と同じ高輝度状態となるため、主画面との輝度水準の差が評価の低下につながったと考えられる。すなわち、視線に連動した輝度制御により写り込み(反射)およびグレアの影響は抑制できるものの、高輝度のモニタを注視している限り、直後の暗視野の視認に困難を覚えた被験者が多かったと言える。Dark−Offの条件のように、注視時の輝度が低ければ、順応の問題は生じ難くなるが、逆に補助画面の視認性が低下する可能性がある。
【0073】
この点を考慮し、上述の実験で検討したGazeの条件では、補助画面内の提示情報への適切な視線移動が重要となる注視初期においては比較的高い輝度を保ちながら、注視後は輝度を下げて暗視野への順応を促進することを意図した。これは実験の運転シーンに当てはめて考えると、グレアやフロントガラスへの反射を抑制するために、車載表示装置20全体の光量は抑えながらも、注視対象の表示装置20a、20b、20cの輝度は高めに設定して視認性を高める。また、注視後の輝度を段階的に小さくする時間的制御を加えることで、暗視野(路面などの車外)に視線を戻した際の妨害を生じ難くすることに対応する。上述の実験の結果、Gazeの条件では、Dark−Offの条件に比べて、注視時の平均輝度が高いにも拘わらず、最も平均成績が高く、その効果が確認できた。このことは、注視状態に応じた時間的な制御を考慮した照明パターンがグレアおよび順応による影響を抑制できる可能性を示唆した結果であると言える。
【0074】
以上をまとめると、視線に連動して補助画面の光量を調節することは、車外の注視時において、グレアおよび写り込みによる妨害(反射)を抑制するために有効である。また、順応による妨害を回避するために、補助画面の注視時にその輝度を下げると、補助画面の視認性が低下するが、視線情報による注視の確認と連動して輝度を調整することで、視認性と順応抑制とのバランスをとることができる可能性が高い。
【0075】
したがって、この実施例の輝度調整装置10では、グレアおよび反射の影響を回避するとともに、運転者の眼の順応を考慮して、車載表示装置20の輝度を制御するようにしてある。ここで、簡単に説明するが、自動車100が夜間の或る場所(昼まであってもトンネル内のような暗視野の場所も含む)を走行しているものとする。
【0076】
運転者が車外を見ている場合には、注視輝度が比較的低いため、グレアおよび反射の影響を回避するために、車載表示装置20の輝度を低下させる。ただし、運転者が、車載表示装置20から暗い車外に視線を戻した場合には、その後に、車載表示装置20の輝度を低下させる。また、運転者が車外から車載表示装置20を見たときには、それまでに見ていた方向ないし位置の輝度(注視輝度)と同程度に当該車載表示装置20の輝度が設定される。さらに、運転者が車載表示装置20を継続して見ている(注視している)場合には、その後に視線を移動させると予測される方向ないし位置の輝度(予測される注視輝度)と一致ないしほぼ一致するように(近付けるように)、当該車載表示装置20の輝度が設定される。以下、具体的に説明する。
【0077】
まず、グレアおよび反射の影響を回避したり、運転者の眼の順応を考慮したりするためには、運転者がいずれの方向を見ているかを知る必要がある。つまり、運転者の視線方向(注視位置)を検出(追跡)する必要がある。この実施例では、第1カメラ14で運転者の顔画像を撮影し、その撮影された顔画像から当該運転者の視線を検出する。視線検出方法としては、本願出願人が先に出願し、既に出願公開されている技術(特開2008−102902号)を用いることができる。簡単に説明すると、運転者の顔画像から眼球の中心を推定するとともに虹彩中心を抽出し、推定した眼球中心と抽出した虹彩中心とを結ぶ3次元直線の方向を、運転者の視線方向として検出する。ただし、視線検出は、所定時間(たとえば、1フレーム=1/15秒)毎に実行される。
【0078】
なお、詳細な説明は省略するが、運転者の頭部の位置は予め計測されており、また、視線方向は、運転者が正面を見ている方向を基準方向とした場合において、当該基準方向を示すベクトルに対して縦方向(垂直方向)および横方向(水平方向)になす角度で表される。
【0079】
ただし、視線方向の検出方法は、上記の技術に限定される必要はなく、他の任意の公知技術を用いることができる。
【0080】
また、この実施例では、運転者の視線方向(注視位置)の輝度(注視輝度)の検出や移動後の視線が向けられる場所や位置(注視位置)の注視輝度を予測するために、第2カメラ16の撮影画像から輝度分布(以下、「環境輝度分布」という)を検出する。この実施例では、第2カメラ16は、運転者が運転中に視認可能な範囲(注視全範囲)を撮影可能に設定されている。詳細な説明は省略するが、たとえば、注視全範囲は、運転者がフロントガラスを通して見る車外およびインパネ102、カーナビの表示画面104aとその操作パネル104bおよび空調の操作パネル106を含むダッシュボードを含む範囲である。
【0081】
また、詳細な説明は省略するが、上述したように、運転者の頭部の位置は予め測定されており、また、視線方向に対応づけて注視全範囲における注視位置を特定できるように、視線方向と注視位置とを対応付けたテーブル(図示せず)が予めコンピュータ12やDB18に記憶されている。ただし、視線方向から特定される注視位置は、後述する複数の小領域Rijを含み、注視輝度は、複数の小領域Rijの輝度Tij(後述する)の平均値を算出することにより求められる。
【0082】
この実施例では、環境輝度分布を検出するために、注視全範囲はマトリックス状の小領域Rに分割され、各小領域Rの輝度が求められる。たとえば、図8に示すように、注視全範囲は、縦100×横100の小領域Rに分割される。ただし、各小領域Rを識別するための行番号を変数iで表し、列番号を変数jで表す。また、図8からも分かるように、左上の小領域Rijの変数iおよび変数jが1であり、右下の小領域Rijの変数iおよび変数jが100である。上述したように、この実施例では、第2カメラ16では、30万画素(640×480ピクセル)の撮影画像が得られるため、1つの小領域Rijの輝度は、7×5ピクセル分の輝度の平均値で算出される。ただし、隣接する小領域Rijの境界上のピクセルの輝度は、その両方の小領域Rijの輝度の算出に用いられる。
【0083】
さらに、注視全範囲について、注視位置の確率分布(重み)が設定されている。これは、運転者が運転中にどこ(注視位置)をどれくらい(時間長さ)見ているかの確率であり、注視全範囲の小領域Rij毎に、重み付けがなされている。詳細な説明は省略するが、注視位置の確率分布は、運転者が実際に運転している場合に、単位時間(たとえば、60秒)内にどこをどれくらい見ているかを検出することにより、求められる。図9に示すように、図8に示した小領域Rijに対応して、重みwijがそれぞれ割り当てられる。重みwijの総和は1であり、運転者が運転中に見る確率が高い小領域Rijほど、重みwijが大きい。
【0084】
したがって、上述したように、運転者が車外(前方)を見て運転している場合には、検出された視線方向から比較的低い注視輝度が検出される。したがって、車載表示装置20の輝度が低下される。つまり、「反射」や「グレア」による影響が回避される。ただし、運転者が車載表示装置20から車外に視線を向けた場合には、それまでに見ていた車載表示装置20の輝度に合わせて、車載表示装置20の輝度が制御された後に、その輝度が低下される。この実施例では、運転者が視線を変化させたときには、視線を変化させる直前の注視輝度vgを含む過去数秒間(この実施例では、5秒間)の注視輝度vgの時間平均(注視輝度時間平均)vg/に基づいて車載表示装置20の輝度が制御される。ただし、“/”は平均を意味し、表記の都合上、文字の横に表示してあるが、実際には、文字上に“−”が表示される(図11参照)。以下、同様である。
【0085】
同様に、運転者が車外から車載表示装置20に視線を向けると、それまでに見ていた車外などの輝度に合わせて、車載表示装置20の輝度を制御する。このとき、上述したように、注視輝度時間平均vg/に基づいて車載表示装置20の輝度が制御される。したがって、上述したように、運転者が暗い車外から車載表示装置20を見た(注視)した場合であっても、明暗の差が少ないため、運転者の眼の順応が比較的速い。このため、車載表示装置20の内容を見る時間を比較的短くすることができ、前方を見ていない時間を出来る限り少なくするのである。
【0086】
さらに、運転者が表示装置20を継続的に見ている場合には、注視位置の確率分布を用いることにより、その後、視線を移動させると予測される方向ないし位置(車外を含む)の輝度に、車載表示装置20の輝度を近付けるように制御することにより、視線を変化させた場合に、運転者の眼が比較的早く順応するようにしてある。
【0087】
具体的には、第2カメラ16で撮影画像から得られた環境輝度分布と、注視位置の確率分布とから注視全範囲について平均した輝度(分布平均輝度)vdを算出する。具体的には、分布平均輝度vdは、数1に従って算出される。ただし、小領域Rijの輝度をTijとする。また、上述したように、変数i,jは、それぞれ1から100までの整数である。
【0088】
[数1]
【0089】
このように算出された分布平均輝度vdに近付けるように、車載表示装置20の輝度を制御する。ただし、この実施例では、現フレームの直前(1つ前)のフレームを含む過去数秒間(この実施例では、5秒間)の分布平均輝度vdの平均値(以下、「分布輝度時間平均」という)vd/を用いるようにしてある。
【0090】
図10は図1に示したRAM12bのメモリマップ300の例を示す図解図である。図10に示すように、RAM12bは、プログラム記憶領域302およびデータ記憶領域304を含む。プログラム記憶領域302は、車載表示装置20の輝度制御プログラムを記憶し、輝度制御プログラムは、全体処理プログラム302a、視線検出プログラム302b、注視輝度検出プログラム302c、環境輝度分布検出プログラム302d、分布輝度算出プログラム302e、および輝度レベル制御プログラム302fなどによって構成される。
【0091】
全体処理プログラム302aは、この実施例の輝度制御処理のメインルーチンを実行するためのプログラムである。視線検出プログラム302bは、上述したように、第1カメラ14の撮影画像から視線方向を検出するためのプログラムである。注視輝度検出プログラム302cは、視線検出プログラム302に従って検出された視線方向から注視全範囲のうちの注視位置を特定し、特定した注視位置の注視輝度vgを検出するとともに、その時間平均である注視輝度時間平均vg/を算出するためのプログラムである。
【0092】
環境輝度分布検出プログラム302dは、第2カメラ16の撮影画像から、注視全範囲における小領域Rij毎の輝度Tijを算出し、環境輝度分布を求めるためのプログラムである。分布輝度算出プログラム302eは、環境輝度分布検出プログラム302で検出された環境輝度分布と、後述する確率分布データ304eが示す注視位置の確率分布とから、数1に従って分布平均輝度vdを算出するとともに、その時間平均である分布輝度時間平均vd/を算出するためのプログラムである。輝度レベル制御プログラム302fは、車載表示装置20のパネル輝度レベルLを制御するためのプログラムである。
【0093】
図示は省略するが、プログラム記憶領域302には、輝度制御処理に必要な他のプログラムも記憶される。
【0094】
データ記憶領域304には、顔画像データバッファ304a、環境輝度データバッファ304b、注視輝度データバッファ304cおよび分布平均輝度データバッファ304dに設けられる。また、データ記憶領域304には、確率分布データ304e、視線データ304f、注視輝度時間平均データ304g、分布輝度時間平均データ304h、テーブルデータ304iおよび輝度レベルデータ304jが記憶される。さらに、データ記憶領域304には、注視フラグ304kが設けられる。
【0095】
顔画像データバッファ304aは、第1カメラ14の撮影画像に対応する画像データを毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、画像データバッファ304aは、現フレームおよび数秒分(たとえば、5秒分)の画像データを記憶可能であり、記憶領域が一杯になると、現フレームの画像データが記憶されるときに、最も古い画像データが削除される。
【0096】
環境輝度データバッファ304bは、環境輝度検出プログラム302dに従って検出された環境輝度分布のデータ(環境輝度分布データ)を毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、環境輝度データバッファ304bは、現フレームを含む数秒分(たとえば、5秒分)の環境輝度分布データを記憶可能であり、記憶領域が一杯になると、現フレームの環境輝度分布データが記憶されるときに、最も古い環境輝度分布データが削除される。
【0097】
注視輝度データバッファ304cは、注視輝度検出プログラム302cに従って検出された注視輝度vgについてのデータ(注視輝度データ)を毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、注視輝度データバッファ304cは、現フレームおよび数秒分(たとえば、5秒)の注視輝度データを記憶可能であり、数秒分の注視輝度データが記憶された後では、現フレームの注視輝度データが記憶されるとき、最も古い注視輝度データが削除される。
【0098】
分布平均輝度データバッファ304dは、分布輝度算出プログラム302eに従って算出された分布平均輝度vdについてのデータ(分布平均輝度データ)を毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、分布平均輝度データバッファ304dは、現フレームを含む数秒分(たとえば、5秒)の分布平均輝度データを記憶可能であり、記憶領域が一杯になると、現フレームの分布平均輝度データが記憶されるとき、最も古い分布平均輝度データが削除される。
【0099】
確率分布データ304eは、図9に示したような注視位置の確率分布についてのデータである。上述したように、注視位置の確率分布すなわち重みwijは、予め運転者について計測された結果から各小領域Rijに割り当てられ、重みwijの総和が1である。視線データ304fは、視線検出プログラム302bに従って検出された視線方向についてのデータである。
【0100】
注視輝度時間平均データ304gは、注視輝度データバッファ304cに記憶された注視輝度データが示す注視輝度vgの現フレームの1つ手前のフレームを含む過去数秒分についての時間平均(注視輝度時間平均vg/)についてのデータである。分布輝度時間平均データ304hは、分布平均輝度データバッファ304dに記憶された分布平均輝度データが示す分布平均輝度vdの現フレームの1つ手前のフレームを含む過去数秒分についての時間平均(分布輝度時間平均vd/)についてのデータである。
【0101】
テーブルデータ304iは、図11および図12に示す各テーブル18a、18b、18c、18dについてのデータであり、DB18から読み出してRAM12bに記憶される。ここで、各テーブル18a−18dについて説明する。
【0102】
図11(A)に示すように、テーブル18aは、パネル輝度レベルLに対応する輝度(cd/m2)を示す。この実施例では、パネル輝度レベルLは5段階(1−5)で表され、各レベルLに対応する輝度の数値が記述される。この実施例では、一般的に用いられている車載表示装置20の最大輝度(400cd/m2)および最低輝度(25cd/m2)を超えない範囲で、5段階で輝度を変化させるように、テーブル18aは設定される。図11(A)に示すように、パネル輝度レベルLが1である場合には、輝度は25(cd/m2)である。また、パネル輝度レベルLが2である場合には、輝度は75(cd/m2)である。さらに、パネル輝度レベルLが3である場合には、輝度は150(cd/m2)である。さらにまた、パネル輝度レベルLが4である場合には、輝度は300(cd/m2)である。そして、パネル輝度レベルLが5である場合には、輝度は400(cd/m2)である。したがって、パネル輝度レベルLが決まると、車載表示装置20(表示装置20a、20b、20c)の輝度が決定される。
【0103】
図11(B)に示すように、テーブル18bは、分布輝度時間平均vd/(cd/m2)の範囲に対応して、パネル目標輝度レベルLdが記述される。この実施例では、テーブル18bは、運転者が車載表示装置20を注視している場合に参照され、パネル目標輝度レベルLdでパネル輝度レベルLが決定される。たとえば、分布輝度時間平均vd/(cd/m2)が100以上200未満である場合には、パネル目標輝度レベルLdは3に決定される。このとき、たとえば、現在のパネル輝度レベルLが1または2である場合には、パネル輝度レベルLが1上昇される。また、たとえば、現在のパネル輝度レベルLが4または5である場合には、パネル輝度レベルLが1下降される。したがって、予測される注視輝度に一致ないしほぼ一致するように、車載表示装置20(ここでは、着目する表示装置20a、20b、20c)の輝度が制御される。したがって、その後に、運転者が車外(前)に視線を戻した場合にも、注視輝度が大幅に変化することが無く、順応による妨害がほとんど残らない。
【0104】
図12(A)に示すように、テーブル18cは、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の範囲に対応して、パネル目標輝度レベルLTが記述される。この実施例では、テーブル18cは、装置注視モードがTRUEの場合に参照され、運転者が車載表示装置20を注視していない状態から注視した場合に、パネル目標輝度レベルLTでパネル輝度レベルLが決定される。ここで、装置注視モードは、運転者が車載表示装置20を注視している状態であるどうかを示す。したがって、装置注視モードがTRUEである場合には、運転者が車載表示装置20を注視している状態であることを示す。一方、装置注視モードがFALSEである場合には、運転者が車載表示装置20を注視していない状態であることを示す。ただし、装置注視モードは、表示装置20a、20b、20c毎に設定される。たとえば、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)が100以上200未満である場合には、パネル目標輝度レベルLTは3に決定され、これがパネル輝度レベルLに設定される。したがって、図11(A)に示すように、車載表示装置20(ここでは、着目する表示装置20a、20b、20c)の輝度が150(cd/m2)に設定される。つまり、視線の変化の前後で明暗の差が少なくされる。他の場合についても同様である。
【0105】
この実施例では、運転者が車載表示装置20を注視していない状態から注視した場合には、テーブル18cを用いることにより、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)に一致ないしほぼ一致させるように、車載表示装置20の輝度を設定するようにしてある。しかし、車載表示装置20の性能によっては、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)に一致ないしほぼ一致させるように、輝度を追従させることができない場合もある。したがって、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の所定割合(たとえば、5〜7割)で車載表示装置20の輝度を設定するようにしてもよい。かかる場合にも、注視輝度に基づいて車載表示装置20の輝度を制御することができ、運転者の眼の順応を速くさせることができる。
【0106】
このように、図11(A)、(B)および図12(A)に示すように、テーブル18a−18cを設定し、これらを用いるので、運転者の眼の順応を考慮するとともに、現在の注視輝度および予測される注視輝度に応じて、車載表示装置20の輝度を設定することができる。つまり、注視輝度と運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置20の輝度を制御することができる。
【0107】
また、図12(B)に示すように、テーブル18dは、テーブル18cと同様に、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の範囲に対応して、パネル目標輝度レベルLFが記述される。このテーブル18cは、装置注視モードがFALSEの場合に参照され、運転者が車載表示装置20を注視していない場合に、パネル目標輝度レベルLFでパネル輝度レベルLが決定される。たとえば、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)が100以上200未満である場合には、パネル目標輝度レベルLFは2に決定され、これがパネル輝度レベルLに設定される。したがって、図11(A)に示すように、車載表示装置20(ここでは、すべての表示装置20a、20b、20c)の輝度が75(cd/m2)に設定される。つまり、図11(A)に示すテーブル18aに対応して図12(B)に示すようテーブル18dを設定し、運転者が車載表示装置20を注視していない場合には、このテーブル18dを用いて、注視輝度に応じて車載表示装置20の輝度が低下されるため、反射およびグレアを回避(抑制)することができる。
【0108】
図12(A)および図12(B)から分かるように、テーブル18dに示す注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の数値および数値範囲は、テーブル18cに示す注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の数値および数値範囲よりも大きく設定されている。このため、装置注視モードがFALSEの場合には、車載表示装置20の輝度が低下されるように制御されるのである。
【0109】
なお、テーブル18a−18dは、単なる一例であり、これに限定されるべきではない。採用される製品によって、適宜数値や数値範囲は可変的に設定される。場合によっては、表示装置20a、20b、20cのそれぞれに、個別のテーブル18a−18dのセットを用意する必要がある。ただし、テーブル18aとテーブル18bとの対応関係、テーブル18aとテーブル18cとの対応関係、テーブル18aとテーブル18dとの対応関係、およびテーブル18cとテーブル18dとの数値および数値範囲の大小関係は、維持される必要がある。また、パネル輝度レベルLやパネル目標輝度レベルLd、LT、LFは、2つ以上のレベルであれば、さらに多くのレベルで分割してもよい。
【0110】
図10に戻って、輝度レベルデータ304jは、輝度レベル制御プログラム302fに従って設定ないし更新されるパネル輝度レベルLを示すデータである。注視フラグ304kは、車載表示装置20を注視しているかどうかを判別するためのフラグである。この実施例では、3つの表示装置20a、20b、20cが設けられるため、注視フラグ304kは、3ビットのレジスタで構成される。
【0111】
たとえば、レジスタの最上位ビットが表示装置20aに割り当てられ、最下位ビットが表示装置20cに割り当てられ、真ん中のビットが表示装置20bに割り当てられる。表示装置20a、20b、20cが注視されている場合(装置注視モード=TRUE)には、対応するビットにデータ値「1」が設定される。一方、表示装置20a、20b、20cが注視されていない場合(装置注視モード=FALSE)には、対応するビットにデータ値「0」が設定される。したがって、表示装置20aが注視されている場合には、レジスタの値は“100”を示す。また、表示装置20bが注視されている場合には、レジスタの値は“010”を示す。さらに、表示装置20cが注視されている場合には、レジスタの値は“001”を示す。さらにまた、運転者が車外(前方)を見ており、表示装置20a−20cが注視されていない場合には、レジスタの値は“000”を示す。
【0112】
図示は省略するが、データ記憶領域304には、輝度制御処理に必要な他のデータが記憶されたり、輝度制御処理に必要な他のフラグやタイマ(カウンタ)が設けられたりする。
【0113】
図13−図15は、図1に示したCPU12aの輝度制御の全体処理を示すフロー図である。図13に示すように、CPU12aは、輝度制御処理を開始すると、ステップS1で、装置注視モードをFALSEに設定するとともに、パネル輝度レベルLに初期値(L=LINIT)を設定する。上述したように、装置注視モードは、表示装置20a、20b、20c毎に設定され、ステップS1では、すべての表示装置20a−20cに対して、装置注視モードがFALSEに設定される。つまり、ステップS1では、CPU12aは、注視フラグ304kをリセットし、レジスタの値が“000”に設定される。また、パネル輝度レベルLの初期値LINITは、この輝度制御装置10の設計者ないしプログラマ或いは運転者が設定した値であり、1−5のいずれかの値(たとえば、5)が設定される。
【0114】
続くステップS3では、環境輝度分布を計測する。つまり、CPU12aは、第2カメラ16からの撮影画像データから得られる画素毎の輝度を用いて小領域Rij毎の輝度Tijを算出することにより、環境輝度分布を求める。そして、CPU12aは、求めた環境輝度分布に対応する環境輝度分布データを環境輝度データバッファ304bに記憶する。図示は省略するが、第2カメラ16の撮影処理は、全体処理が開始されたときに、開始される。また、全体処理が開始されると、第1カメラ14の撮影処理も開始され、その撮影画像データは図示しないバッファ領域に毎フレーム記憶される。ただし、第1カメラ14の撮影画像データは現フレームおよび数秒分(たとえば、5秒分)記憶可能である。したがって、記憶領域が一杯になると、現フレームの撮影画像データを記憶するときに、最も古い撮影画像データが削除される。
【0115】
次のステップS5では、分布平均輝度vdを計算する。ここでは、ステップS3で計測した環境輝度分布(輝度Tij)と、確率分布データ304eが示す重みwijとから数1に従って分布平均輝度vdが算出され、対応する分布平均輝度データが分布平均輝度データバッファ304dに記憶される。そして、ステップS7で、分布輝度時間平均vd/を更新する。つまり、ステップS5で算出された現フレームの分布平均輝度vdを含む過去数秒分の分布平均輝度vdの平均値を算出し、算出された分布輝度時間平均vd/に対応する分布輝度時間平均データ304hをデータ記憶領域304に記憶(上書き)する。
【0116】
次に、ステップS9では、視線を検出する。つまり、CPU12aは、上述したように、第1カメラ14の撮影画像から運転者の視線方向を算出する。続いて、ステップS11では、注視輝度vgを計算する。ここでは、運転者の視線方向で決定される注視位置の注視輝度vgが、分布平均輝度データバッファ304dに記憶された現フレームの分布平均輝度データが示す分布平均輝度(輝度Tij)から算出される。そして、算出された注視輝度vgに対応する注視輝度データが注視輝度データバッファ304cに記憶される。
【0117】
さらに、ステップS13で、注視輝度時間平均vg/を更新する。ここでは、注視輝度データバッファ304cに記憶された現フレームの1つ手前のフレームの注視輝度vgを含む過去数秒分の注視輝度vgの平均値を算出し、算出された注視輝度時間平均vg/に対応する注視輝度時間平均データ304gをデータ記憶領域304に記憶(上書き)する。そして、ステップS15で、視線が対象装置を向いているかどうかを判断する。ここでは、CPU12aは、ステップS9で検出した視線方向に応じて、運転者が着目する表示装置(20a、20b、20c)を見ているかどうかを判断するのである。
【0118】
なお、ステップS15以降では、簡単のため、着目する表示装置(20a、20b、20c)の1つを対象装置とし、当該1つの対象装置についての処理のみを示している。したがって、実際には、ステップS15以降の処理は、各表示装置20a−20cについて実行されるのである。
【0119】
ステップS15で“YES”であれば、つまり視線が対象装置を向いている場合には、図14に示すステップS17に進む。一方、ステップS15で“NO”であれば、つまり視線が対象装置を向いていない場合には、図15に示すステップS35に進む。
【0120】
図14に示すステップS17では、当該対象装置についての装置注視モードがTRUEであるかどうかを判断する。ここでは、CPU12aは、注視フラグ304kを参照して、当該対象装置(表示装置20a、20b、20c)に割り当てられたビットのデータ値が「1」であるかどうかを判断する。後述するステップS35も同様である。ステップS17で“YES”であれば、つまり装置注視モードがTRUEであれば、対象装置を見ている状態が継続していると判断して、ステップS19で、分布輝度時間平均vd/からパネル目標輝度レベルLdを設定する。つまり、ステップS19では、CPU12aは、テーブルデータ304iに含まれるテーブル18bを参照して、ステップS7で算出した分布輝度時間平均データ304hが示す分布輝度時間平均vd/に対応するパネル目標輝度レベルLdを決定する。
【0121】
続いて、ステップS21では、パネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも大きく、かつパネル輝度レベルLが1(最低値)よりも大きいかどうかを判断する。ステップS21で“YES”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも大きく、かつパネル輝度レベルLが1よりも大きければ、ステップS23で、パネル輝度レベルLを1減算して(L=L−1)、ステップS3に戻る。つまり、ステップS23では、パネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdに一致される、または近づけられる。このことは、後述するステップS27についても同様である。
【0122】
一方、ステップS21で“NO”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLd以下である、または、パネル輝度レベルLが1である、或いは、その両方である場合には、ステップS25で、パネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも小さく、かつパネル輝度レベルLが5(最大値)よりも小さいかどうかを判断する。
【0123】
ステップS25で“NO”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLd以上、または、パネル輝度レベルLが5(最大値)である、或いは、その両方である場合には、そのままステップS3に戻る。つまり、かかる場合には、パネル輝度レベルLが最大値または最小値であり、増大または減少できないか、パネル輝度レベルLとパネル目標輝度レベルLdとが一致するため、パネル輝度レベルLを調整する必要がないのである。一方、ステップS25で“YES”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも小さく、かつパネル輝度レベルLが5よりも小さい場合には、ステップS27で、パネル輝度レベルLを1増加させて(L=L+1)、ステップS3に戻る。
【0124】
また、ステップS17で“NO”であれば、つまり当該対象装置についての注視モードがFALSEであれば、当該対象装置を注視していない状態から注視した状態に変化したと判断して、ステップS29で、当該対象装置についての装置注視モードをTRUEに設定する。つまり、ステップS29では、CPU12aは、注視フラグ304kにおいて、運転者が注視する表示装置20a、20b、20cに割り当てられたビットにデータ値「1」を設定し、他のビットにデータ値「0」を設定する。
【0125】
続くステップS31では、注視輝度時間平均vg/からパネル目標輝度レベルLTを決定する。ここでは、装置注視モードがTRUEであるため、CPU12aは、テーブルデータ304iに含まれるテーブル18cを参照して、パネル目標輝度レベルLTを決定する。そして、ステップS33では、パネル輝度レベルLにパネル目標輝度レベルLTを設定して(L=LT)、ステップS3に戻る。
【0126】
上述したように、視線が対象装置を向いていない場合には、ステップS15で“NO”となり、図15に示すステップS35で、装置注視モードがTRUEであるかどうかを判断する。ステップS35で“NO”であれば、つまり装置注視モードがFALSEであれば、対象装置を注視していない状態が継続していると判断して、そのままステップS39に進む。一方、ステップS35で“YES”であれば、つまり装置注視モードがTRUEであれば、対象装置を注視していた状態から当該対象装置を注視していない状態に変化したと判断して、ステップS37で、装置注視モードをFALSEに設定して、ステップS39に進む。
【0127】
ステップS39では、注視輝度時間平均vg/からパネル目標輝度レベルLFを決定する。ここでは、装置注視モードがFALSEであるため、CPU12aは、テーブルデータ304iに含まれるテーブル18dを参照して、パネル目標輝度レベルLFを決定する。そして、ステップS41で、パネル輝度レベルLにパネル目標輝度レベルLFを設定して、図13に示したステップS3に戻る。
【0128】
なお、図示は省略するが、ステップS23、S27、S33およびS41で、パネル輝度レベルLが設定されると、CPU12aは、図11に示すテーブル18aに基づいて、そのパネル輝度レベルLに対応する輝度(cd/m2)で発光するように、対象装置のコントローラないしドライバを駆動する。
【0129】
図16には、この実施例の輝度制御装置10を動作させた場合の例を示す。図16に示すように、区間Aおよび区間Cでは、注視対象は車載表示装置20(表示装置20a、20b、20c)以外である。区間Bでは、注視対象は表示装置20a、20b、20cのいずれかである。分布輝度時間平均vd/および注視輝度時間平均vg/は、図16に示すように、時間に従って変化したとものとする。上述したように、注視対象が変化するため、装置注視モードは、区間AではFALSEに設定され、区間Bに入ってからTRUEに設定(変化)され、その後、区間Cに入って再びFALSEに設定(変化)される。このような場合においては、パネル輝度レベルは、初期値LINIT(=5)から時間tに従って変化する。
【0130】
また、上述したように、装置注視モードがTRUEとFALSEとで、参照するテーブル(18c、18d)が異なる。したがって、装置注視モードがFALSEの場合には、図16の左側に示すように、注視輝度時間平均vg/に応じてパネル目標輝度レベルLFが決定される。一方、装置注視モードがTRUEの場合には、図16の右側に示すように、注視輝度時間平均vg/に応じてパネル目標輝度レベルLTが決定される。
【0131】
図16に示すように、区間Aおよび区間Cでは、上述したように、注視輝度時間平均vg/に応じて目標輝度レベルLFが決定され、パネル輝度レベルL(表示装置20a−20cの輝度)が設定(変化)される。したがって、反射やグレアの発生を抑制しながらも、急なパネル注視に備えて、注視輝度時間平均vg/が高い場合には、パネル輝度レベルLが上昇される。また、区間Bでは、装置注視モードになると、このとき、注視輝度時間平均vg/に応じてパネル目標輝度レベルLTが決定され、パネル輝度レベルLが設定される。したがって、まず見易い輝度に設定される。その後、当該装置以外(車外を含む)に視線を移動した後に、順応による妨害が残らないように、分布輝度時間平均vd/に応じてパネル目標輝度レベルLDが決定され、パネル輝度レベルLが段階的に設定(変化)される。
【0132】
ただし、図16に示す例では、区間Bにおいては、分布輝度時間平均vd/に応じて決定されるパネル目標輝度レベルLDは変化しない(LD=2)。このため、区間Bにおいては、パネル輝度レベルLは、装置注視モードがTRUEになったときに、パネル目標輝度レベルLTに応じて一旦上昇した後、パネル目標輝度レベルLDに近づくように低下され、その後、パネル目標輝度レベルLDに設定される。
【0133】
この実施例によれば、車載表示装置の発光による反射やグレアを回避するとともに、運転者の眼の順応を考慮して車載表示装置の輝度を制御するので、適切に明るさを調整できる。したがって、快適な運転環境を提供することができる。
【0134】
なお、この実施例では、インパネ全体で輝度が調整されるようにしたが、計測機器単位で輝度が調整されてもよい。
【0135】
また、この実施例では、モノクロ画像を撮影可能なカメラを用いて、環境輝度分布を検出するようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、輝度を検出可能な光センサアレイを設けるようにしてもよい。ただし、光センサとしてはLEDやフォトダイオードを用いることができる。
【0136】
さらに、この実施例では、運転者は予め決定され、当該運転者の頭部の位置も予め測定されており、その頭部の位置における視線方向に対応した注視位置を記載したテーブルを記憶しておくことにより、視線方向を検出および追跡可能としたが、これに限定される必要はない。たとえば、2台のカメラまたは1台のステレオカメラを設けることにより、異なる2つの方向から運転者の頭部ないし上半身を撮影した撮影画像に基づいて運転者の頭部の位置を算出することもできる。また、注視位置は、頭部の位置と視線方向とから算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0137】
10 …輝度制御装置
12 …コンピュータ
12a …CPU
12b …RAM
14,16 …カメラ
18 …データベース
【技術分野】
【0001】
この発明は車載表示装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法に関し、特にたとえば、自動車に装備される、車載表示装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車載表示装置の輝度制御装置の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示される運転操作補助装置では、運転者の顔画像が撮影され、撮影によって得られた顔画像データに基づいて、顔の向きと視線方向とが検出される。顔の動きが少ない場合には、視線方向が所定のメータ視認角の範囲内にあるかどうかを判断する。視線方向の角度が所定のメータ視認角の範囲にある場合、つまり視線が下方を向いている場合には、運転者のメータディスプレイの確認動作であると判断して、メータディスプレイの明るさを、その情報が視認し易くなる程度まで増大させる。たとえば、メータディスプレイの表示輝度を高めたり、その表示コントラストを高めたりする。また、運転者の顔の向きが左右に大きく変化した場合には、前方障害物の確認動作等であると判断して、補助灯の照射方向をその顔の向きに合わせる。
【0003】
また、この種の車載表示装置の輝度制御装置の他の例が特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示された照明制御システムでは、車外が所定の明るさよりも暗い場合に、前席搭乗者が車内機器の照明を煩わしく感じないように通常の第1の明るさから、より暗い第2の明るさに車内機器を暗くし、前席搭乗車の視線が向けられた機器について、第2の明るさから第1の明るさにして、その機器を視認しやすくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3228086号[B60Q 1/18,B60K 35/00,B60Q 1/08]
【特許文献2】特開2006−21591号[B60Q 3/02,B60K 35/00,B60Q 3/04]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示の技術では、視線がメーンディスプレイなどの車内機器に向けられると、基本的には、その明るさを大きくするようにするだけである。したがって、暗い車外を見ている状態から明るい車内機器の表示を見た状態に変化すると、その明暗の差が大きい場合には、眼が適応するまでに時間がかかり、前方を見ていない時間が長くなってしまうおそれがある。また、明るい車内機器の表示を見た後に、視線が車外に戻されると、その明暗の差が大きい場合には、眼が適応するまで時間がかかり、前方が見えにくくなってしまうおそれがある。また、特許文献1および特許文献2では、単に車外が暗いかどうかを判断するだけであり、運転者が見ている方向ないし場所の明るさを判断していないため、車内機器の明るさを適切に調整できない場合がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、車載装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法を提供することである。
【0007】
また、この発明の他の目的は、適切に明るさを調整できる、車載装置の輝度制御装置、輝度制御プログラムおよび輝度制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、運転者の視線方向を検出する視線検出手段、視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、視線検出手段によって検出された視線方向と、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置である。
【0010】
第1の発明では、自動車内に設けられる車載表示装置(20)の輝度制御装置(10)は、輝度分布検出手段(12a、S3)、視線検出手段(12a、S9)、注視判断手段(12a、S15)、注視輝度検出手段(12a、S11)、および輝度制御手段(12a、S23、S27、S33、S41)を備える。輝度分布検出手段は、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する。視線検出手段は、運転者の視線方向を検出する。注視判断手段は、視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する。注視輝度検出手段は、視線検出手段によって検出された視線方向と、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する。つまり、視線方向から運転者が見ている方向ないし位置(場所)を検出し、輝度分布のうちの対応する位置の輝度を注視輝度として検出するのである。輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する。たとえば、変化前の輝度と一致ないしほぼ一致させるように、車載表示装置の輝度が制御される。
【0011】
第1の発明によれば、変化の前の注視輝度に基づいて車載表示装置の輝度を制御するので、たとえば、変化の前後で輝度の差を少なくすることができ、したがって、適切に明るさを調整することができる。このため、快適な運転環境を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布を記憶する確率分布記憶手段をさらに備え、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視している状態が継続しているとき、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、確率分布記憶手段に記憶された確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する。
【0013】
第2の発明では、輝度制御装置は、確率分布記憶手段(12b)をさらに備える。確率分布記憶手段は、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布を記憶する。たとえば、確率分布は、運転者が視認可能な範囲において、運転中にどこをどのくらい(時間長)見ているかを示す。輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視している状態が継続しているとき(S15およびS17で“YES”)、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、確率分布記憶手段に記憶された確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する。したがって、たとえば、予測される移動後の注視位置の注視輝度に近付けるように、車載表示装置の輝度が制御される。
【0014】
第2の発明によれば、車載表示装置を見ている状態から車外のような他の場所などを見る場合に、移動後の注視輝度に合わせるように当該車載表示装置に輝度を制御するので、運転者の眼を比較的早く順応させることができる。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に相関する値に車載表示装置の輝度を設定する。
【0016】
第3の発明では、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき(ステップS7で“NO”)、変化前に注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に相関する値に車載表示装置の輝度を設定する。たとえば、注視輝度に相関する値は、注視輝度と一致ないしほぼ一致する値や注視輝度の所定割合の値である。これによって、視線を変化させる前に見ていた場所や位置の輝度に近付けるように、車載表示装置の輝度を制御する。
【0017】
第3の発明によれば、視線を変化させる前に見ていた場所や位置の輝度に近付けるように、車載表示装置の輝度を制御するので、運転者の眼の順応を速くさせることができるので、車載表示装置を見ている時間すなわち前方を見ていない時間を出来る限り少なくすることができる。
【0018】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに従属し、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態であるとき、車載表示装置の輝度を低下させる。
【0019】
第4の発明では、輝度制御手段は、運転者が車載表示装置を注視していない状態であるとき(ステップS15で“NO”)、つまり運転者が前方(車外)を見ている場合には、車載表示装置の輝度を低下させる。
【0020】
第4の発明によれば、運転者が前方を見ている場合には、車載表示装置の輝度を低下されるので、その照明がフロントガラスに反射したり、グレアが発生したりするのを回避することができる。したがって、快適な運転環境を提供することができる。
【0021】
第5の発明は、第1ないし第4の発明に従属し、輝度分布および注視輝度は、所定時間分の平均値である。
【0022】
第5の発明によれば、所定時間分の平均値を用いるので、一時的な変化の影響を受けずに、車載表示装置の輝度を制御することができる。
【0023】
第6の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、運転者の視線方向を検出する視線検出手段、視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、および運転者が車載装置を注視している状態が継続しているとき、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置である。
【0024】
第7の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、運転者の視線方向を検出する視線検出手段、視線検出手段によって検出された視線方向と、輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および注視輝度検出手段によって検出された注視輝度と、運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置である。
【0025】
第8の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、輝度制御装置のプロセッサに、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向と、輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラムである。
【0026】
第9の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、輝度制御装置のプロセッサに、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、および運転者が車載装置を注視している状態が継続しているとき、輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布と、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラムである。
【0027】
第10の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、輝度制御装置のプロセッサに、運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、視線検出ステップによって検出された視線方向と、輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度と、運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラムである。
【0028】
第11の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、(b)運転者の視線方向を検出し、(c)ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、(d)ステップ(b)によって検出された視線方向と、ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出し、そして(e)運転者が車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前にステップ(d)によって検出された注視輝度に基づいて、車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法である。
【0029】
第12の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、(b)運転者の視線方向を検出し、(c)ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、運転者が車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、そして(d)運転者が車載装置を注視している状態が継続しているとき、ステップ(a)によって検出された輝度分布と、運転者の視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法である。
【0030】
第13の発明は、自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、(b)運転者の視線方向を検出し、(c)ステップ(b)によって検出された視線方向と、ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、運転者の注視輝度を検出し、そして(d)ステップ(c)によって検出された注視輝度と、運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法である。
【0031】
第6−第13の発明についても、第1の発明と同様に、適切に明るさを制御することができ、快適な運転環境を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、運転者の視線が変化する前の注視輝度に基づいて車載表示装置の輝度を制御するので、変化の前後における明るさの違いを少なくするように輝度を制御することができる。つまり、適切に明るさを制御して、快適な運転環境を提供することができる。
【0033】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1はこの発明の一実施例の車載表示装置の輝度制御装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1に示す輝度制御装置を適用する自動車内の様子を示す図解図である。
【図3】図3は実験用映像の内容および実験条件を示す表である。
【図4】図4は実験用の補助画面の例を示す図解図である。
【図5】図5は実験結果を示すグラフである。
【図6】図6は他の実験結果を示すグラフである。
【図7】図7はその他の実験結果を示すグラフである。
【図8】図8は図1に示す第2カメラの撮影画像に基づく環境輝度分布を説明するための図解図である。
【図9】図9は自動車の運転者の注視位置の確率分布(重み)を説明するための図解図である。
【図10】図10は図1に示したRAMのメモリマップの例を示す図解図である。
【図11】図11はパネル輝度レベルに対応する輝度値を示す表および分布輝度時間平均に対応するパネル目標輝度レベルを示す表である。
【図12】図12は注視モードに応じた注視輝度時間平均に対応するパネル目標輝度レベルを示す表である。
【図13】図13は図1に示すCPUの輝度制御処理の一部を示すフロー図である。
【図14】図14は図1に示すCPUの輝度制御処理の他の一部であって、図13に後続するフロー図である。
【図15】図15は図1に示すCPUの輝度制御処理のその他の一部であって、図13に後続するフロー図である。
【図16】図16はこの実施例の輝度制御装置の動作例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照して、この実施例の車載表示装置の輝度制御装置10は、コンピュータ12を含み、コンピュータ12には、第1カメラ14、第2カメラ16およびデータベース(DB)18が接続される。
【0036】
なお、この実施例では、分かり易く示すために、DB18を設けるようにしてあるが、DB18に代えて、コンピュータ12に内蔵されるHDDやROM(図示せず)またはコンピュータ12に装着されるSDカードなどのメモリカード(図示せず)を用いるようにしてもよい。
【0037】
コンピュータ12は、PCなどの汎用のコンピュータであり、CPU12aおよびRAM12bを含む。第1カメラ14は、赤外線カメラであり、運転者の視線方向を検出するために用いられる。また、第2カメラ16は、モノクロカメラであり、運転者が視認可能な範囲についての輝度分布を検出するために用いられる。したがって、第2カメラ16としては、第1カメラ14と比べて解像度(たとえば、30万画素)の比較的低いものを用いることができる。DB18には、後述する、注視位置の確率分布(図8参照)および各種のテーブルデータ(図9、図10参照)が記憶される。
【0038】
図2(A)および図2(B)は、図1に示した第1カメラ14および第2カメラ16の設置状況などを説明するための図解図である。図2(A)に示すように、或る自動車100には、車載表示装置20が設けられる。たとえば、車載表示装置20は、インストルメントパネル(インパネ)102の表示装置20a、カーナビゲーション・システム(カーナビ)の表示画面104aおよび操作パネル104bの表示装置20bおよび空調の操作パネル106の表示装置20cを含む。ただし、カーオーディオがカーナビとは別で設けられる場合には、その表示画面および操作パネルの表示装置も含まれる。
【0039】
図2(A)示すように、第1カメラ14は、インパネ102の左端の上側に設置される。ただし、運転の邪魔にならなければ、インパネ102の中央の上側に設置し、運転者の顔を正面から撮影可能に設置してもよい。また、図2(B)に示すように、第2カメラ16は、たとえば、運転席の上部であり助手席側に設置される。図示は省略するが、第2カメラ16は、助手席の上部であり、運転席側に設置されてもよい。
【0040】
このような車載表示装置20の輝度制御装置10では、従来、車外の明るさを検知するとともに、運転者の視線を検出し、運転者が車外を見て運転している場合には、車載表示装置20の輝度を低下させて、フロントガラスにインパネ102などの表示内容が映ってしまうのを防止する。そして、運転者が車載表示装置20を見たときには、当該車載表示装置20の輝度を高めて、表示内容を見易くしてある。
【0041】
しかし、車外の明るさは、単に明るいか暗いかを判断するだけであり、運転者が注視しているところの輝度(注視輝度)、および暗いところから明るいところを見る場合やその逆の場合の眼の適応速度については何ら考慮されていない。ただし、注視輝度とは、運転者が見ている(注視している)方向ないし位置(場所)の輝度を意味する。具体的には、運転者が車載表示装置10以外(車外を含む)を見ている場合には、その視線方向における輝度であり、運転者が車載表示装置20を見ている場合には、その照明についての輝度である。
【0042】
たとえば、車載表示装置20を含む車室内照明による運転時の視認性の妨害要因としては、車室内照明がフロントガラスに写り込む「反射」、周辺視野に中心視野よりも明るい領域が存在することにより中心視野の視認性が妨害される「グレア」、機器画面(この実施例では、表示装置20a、20b、20c)と車外など運転中に注視する異なる領域間の輝度の差異によって視認性が悪化する「順応」などが知られている。
【0043】
ここで、「順応」とは、眼の網膜が受ける輝度の変化に対応して視覚系の性質がなじむ過程(順応過程)、およびなじんだ状態(順応状態)をいう。ただし、この実施例においては、単に「順応」という場合には、主として「順応過程」を意味することとする。
【0044】
このうち、「反射」と「グレア」については、基本的に機器画面を見ていないときに同時に照射されている照明による妨害要因であるのに対して、「順応」による妨害は車外注視時と異なるタイミングで注視した領域と車外の輝度の差異の効果が残存することによるものである。「反射」および「グレア」については、基本的に機器画面を見ていないときに生じることから、たとえば視線情報を活用して運転者が車外を注視しているときには照明を切るなどの方法によって回避できる可能性が高い。実際に、視線と連動して非注視時の照明レベルを下げることで視認性の向上を目指したシステムが背景技術で示した特許文献2に開示されている。したがって、後述する実験の目的のひとつは、運転者の視線方向に着目し、運転者が注視していないときに照明、すなわち車載表示装置20の輝度レベルを落とすことで、暗視野(車外)に対する視認性が向上することを確認することにある。
【0045】
一方で、「順応」による妨害は、暗い車外から視線を移して明るい機器画面を注視したり、或いは逆に明るい機器画面から車外に視線を戻したりする際に生じる。そのため、車外に合わせて機器画面の輝度を調整することで妨害の程度が軽減されると考えられる。順応特性を考慮した車載ディスプレイの制御として、輝度と彩度を補正することによって晴天の積雪時のような高輝度視環境下においても視認し易い車載ディスプレイを実現する方式について検討されている例がある(坂口,樋口,中野,山本:“目の順応特性を考慮した車載ディスプレイの表示”,豊田中央研究所 R&D レビュー,33,2,pp.37-45(1998))。この方法では、人間の視覚の順応特性に基づいて、明るい車外に対して主観的明るさの変化が抑えられるようにディスプレイ輝度を補正することで視認性を向上させている。
【0046】
しかし、夜間運転時のように、車外が相対的に低輝度である場合には、暗い車外に合わせたレベルまで表示ディスプレイの輝度を低下させると機器自体の視認性が損なわれる可能性が高い。したがって、後述する実験では、視線に連動して表示ディスプレイの輝度を段階的に調整することで、運転者の視認性を確保しながら、運転者が車外に視線を戻した際に発生する「順応」による妨害を抑制する手法も視野に入れるようにした。また、複数の視線連動パターンについて、視認性との関連を被験者実験により検討した。
【0047】
簡単に説明すると、実験では、運転者の視覚認知が困難となる夜間運転時を対象として、視線計測技術と車室内照明制御(車載表示装置20の輝度制御)とを組み合わせることで、車内・車外双方の視認性が高く運転者にとって快適な運転環境を実現することを目指して、照明環境と視認能力の関連性について調べた。また、実験では、夜間運転シーンを撮影した車両前方の映像(主画面)と、機器パネルを模した図形表示(補助画面)とを暗室環境において液晶モニタ(図示せず)により被験者に提示し、照明パターンの違いによる主画面および補助画面上での検出課題の成績、応答時間の差異について評価した。
【0048】
この実施例の実験では、3台の液晶モニタが机上に水平に並べて配置される。このうち、中央の液晶モニタ(主画面)は、運転時の車外環境(運転者がフロントガラスを通して視認可能な範囲の様子)を、その両サイドの液晶モニタ(補助画面)は、それぞれカーナビ・計器類等(スピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計、距離計、カーオーディオ、ヒータやエアコンの操作装置など)の車内機器(車載表示装置20)を想定したものである。被験者は、キーボードによる入力が可能な状態で、中央の液晶モニタの画面に対面するように椅子に座る。
【0049】
また、刺激制御には、PC(OS:Windows(登録商標))が使用され、刺激作成には、Adobe(登録商標)Flash CS4が使用される。刺激提示には、上述したように、3台の液晶モニタが使用される。ただし、各液晶モニタの表示解像度は、1920×1200dpiである。また、主画面として使用する液晶モニタの明るさについては、ブライトネスは最小に設定され、コントラストは実際の運転状況に合わせて調整され、最大輝度は28.38cd/m2に設定される。一方、補助画面として使用する液晶モニタの明るさについては、ブライトネスおよびコントラストは最大に設定され、最大輝度は386.50cd/m2に設定される。さらに、被験者の反応を取得するために、キーボードのテンキーが用いられる。ただし、主画面を用いた刺激検出課題(主課題)の反応取得には、「0」ボタンが使用され、補助画面を用いた文字弁別課題(副課題)の反応取得には、「4」、「6」ボタンが使用される。
【0050】
後述する実験条件に応じて、補助画面の表示輝度を変化させながら、主画面に提示した標的に対して早く正確に応答することを求める検出課題を行った。また、実験中では、音声によって指示された時区間においては、継続して被験者毎に指定した一方の補助画面を注視することを各被験者に求めた。
【0051】
また、図示は省略するが、実験では、実際の夜間運転シーンを模擬するため、京都府−奈良県−大阪府を結ぶ国道163号において平日夜間22時−23時頃に撮影した車両前方の映像を使用し、検出課題の標的として映像上に人型の標的を灰色で重畳した。被験者には、標的を確認したら、「0」ボタンを押すように指示した。両端の補助画面の表示内容は実験条件に応じて調整した。補助画面に対する注視を確実にするため、液晶モニタには「E」または「F」の文字を表示(提示)し、被験者に弁別課題を課した。
【0052】
図3(A)には、実験に使用した運転シーンの映像についての内容がテーブルで示される。各シーンともに、交通量の少ないシーンと交通量の多いシーンとを約4分間ずつ組み合わせた約8分間の映像となっている。後述するように、被験者毎に、4種類の異なる補助画面の照明パターンについて実験を行った。各照明パターンについて図3(A)に示した運転シーンの映像の一つを重複無く選択して1人の被験者が同じ運転シーンの映像を繰り返し見ることがないようにした。
【0053】
なお、運転シーンの際による成績の違いを相殺するために、補助画面の照明パターンと運転シーンの映像の組み合わせを被験者毎に入れ替えた。
【0054】
次に、主画面上での検出課題のために運転シーンの映像に重畳して表示した標的について説明する。提示する標的は、上述したように、灰色(無彩色)の人型図形であり、表示する輝度は16−48の範囲で場面の明るさに応じて設定される。ただし、システムの輝度は、0(最小)−255(最大)で設定される。標的の提示回数は、各実験条件(図3(B)参照)において36回であり、主画面の上下を除いて、左、右または中央の3つの領域に12回ずつ標的を提示した。また、補助画面を注視した直後に標的を提示する回数が各領域で同じ(3回)となるように調整した。
【0055】
なお、各実験条件で、被験者に補助画面への注視を求める指示音は計9回提示された。ただし、注視のタイミングおよび場面の状況は、各場面で異なる。
【0056】
続いて、補助画面の提示内容について説明する。補助画面では、実験条件に応じて照明パターンを切り替える。視覚刺激として、正方形の表示枠内にアルファベット1文字(EまたはF)を表示した画像を提示した。被験者は、主画面上での検出課題を行いながら、指示音が提示されると、補助画面に視線を移動させ、提示された画像に表示されているアルファベット(E,F)を判別して、キーボードで応答するとともに、指示音が消えるまで同画面を注視することが求められた。指示音としては、Windows標準のチャイム音を使用し、1回あたり10秒間提示した。また、アルファベットが表示された画像は、指示音の提示が開始されてから200ms後に表示され、指示音が消されると同時に消去される。視覚刺激の提示位置すなわちアルファベットが表示された画像の表示位置は、補助画面中の高さ1/3,2/3の位置、幅1/3,2/3の位置の組み合わせで、計4か所のうちから1か所をランダムに決定した。ただし、アルファベットの表示された画像の輝度は実験条件毎に異なる。実験条件の一部では、被験者に対する注視指示と時間的に同期させて補助画面の輝度を変化させる視線連動条件として、図4(A)ないし図4(C)には、補助画面の表示例が示される。簡単に説明すると、図4(A)には、高輝度の場合の補助画面が示される。図4(B)には、低輝度の場合の補助画面が示される。そして、図4(C)には、中輝度(高輝度と低輝度との中間の輝度)の場合の補助画面が示される。
【0057】
実験条件は、図3(B)に示すように、4つの場合(Bright-Off, Dark-Off, Dark-On, Gaze)に設定した。図3(B)に示すように、各実験条件では、補助画面の明るさ、視線随伴および視線随伴時輝度変化についての異なる内容が設定される。Bright-Offの条件では、補助画面の明るさが「高輝度」であり、視線随伴が「なし」であり、視線随伴時輝度変化も「なし」である。また、Dark-Offの条件では、補助画面の明るさが「低輝度」であり、視線随伴が「なし」であり、さらに、視線随伴時輝度変化も「なし」である。さらに、Dark-Onの条件では、補助画面の明るさが「低輝度」であり、視線随伴が「あり(高輝度)」であり、さらに、視線随伴時輝度変化は「なし」である。さらにまた、Gazeの条件では、補助画面の明るさが「低輝度」であり、視線随伴が「あり(中輝度)」であり、さらに、視線随伴時輝度変化も「あり」である。
【0058】
ただし、視線随伴については、「なし」では試行中補助画面の明るさ(輝度)を一定とし、「あり」では注視時に注視した側の補助画面全体が明るくなるように輝度が変化される。ただし、注視していない方の補助画面(非注視画面)の輝度は変化させない。また、Gazeの条件では、補助画面の注視開始から2000ms後に、その補助画面の輝度を落として、暗視野(主画面)に視線を戻した際の順応による妨害の緩和を狙った。
【0059】
なお、各実験条件とも被験者が主画面を注視している間は、補助画面に標的を表示していない。
【0060】
上述したように、主画面には実際の夜間運転場面の動画が提示され、補助画面にはアルファベットの「E」または「F」が表示された画像が提示され、被験者は、それぞれをキーボードで応答する。実験課題は、次の通りである。
【0061】
(1)主画面に提示される刺激の検出
被験者は、運転者として動画を観察し、標的を検出したら、できるだけ速く、正確に、左手親指で「0」ボタンを押す。
【0062】
(2)補助画面に提示される刺激の弁別
指示音が鳴ると補助画面にアルファベットが表示された画像が提示される。被験者は、指示音が鳴っている間、アルファベットが表示された画像を注目し、アルファベットが「E」であるか、「F」であるかを弁別し、キーボードで応答する。また、指示音が鳴っている間は、主画面には刺激は提示されない。
【0063】
ただし、被験者は、健常な成人8名(男性5名、女性3名)で、左右いずれの補助画面を注視させるかは、被験者毎に入れ替え、4名ずつでバランスを取った。
【0064】
主画面での検出課題(主課題)の成績が図5(A)に示され。図5(A)には、検出課題の成績として、各実験条件についての正答率(%)がグラフで示される。この図5(A)から分かるように、補助画面を常時高輝度で点灯するBright−Offの条件では、他の条件と比較して、成績が低い(比率p<0.05)。これは、主画面を注視している際にも、常時補助画面が点灯を続いていることによる「グレア」または「反射」の影響が大きいためと考えられる。
【0065】
また、主課題における反応時間が図5(B)に示される。ただし、反応時間は標的を提示してからボタンが押されるまでの時間であり、平均値が求められる。図5(B)から分かるように、Bright−Offの条件では、他の条件と比較して、反応時間が最も長い。ただし、各条件間における有意差は認められない。
【0066】
さらに、主課題における難易度についての主観評価が図6(A)に示される。図6(A)に示すように、Bright−Offの条件が最も難易度が高く、Bright−Offの条件とGazeの条件との間には有意差が認められる。この結果からも「グレア」または「反射」によって視認が妨げられていることが伺える。
【0067】
一方で、被験者が補助画面を注視した際の輝度が異なるDark−Offの条件とDark−Onの条件との間では、主画面で検出課題の成績に有意差は認められなかった。このことは、主課題の妨害要因の中で、主画面の注視時の補助画面の照明の影響である「グレア」または「反射」が支配的であることを意味する。
【0068】
しかしながら、図6(B)および図7(A)に示すように、補助画面の快適性および補助画面の主課題への影響についての主観評価においては、両者に有意な差異が認められた。すなわち、補助画面の注視時に高輝度となるDark−Onの条件に比べて、注視時にも低輝度を維持するDark−Offの条件の方が、快適性が高く、補助画面の主課題への影響も少ないと評価された。Dark−Onの条件では、明るい画面(補助画面)を注視した直後に暗視野(主画面)に視線を移す必要があり、順応によって主画面の視認が困難になっている可能性がある。
【0069】
なお、図6(B)および図7(A)では、(Bright−Off、Dark−On)の条件と、(Dark−Off、Gaze)の条件との間の各組合せについて有意差が認められた。
【0070】
図7(B)は、補助画面でのアルファベットの判別課題における、各条件についての反応時間を示すグラフである。ここでは、照明の視線連動を行うDark−OnおよびGazeの条件の方が、視線連動を行わないBright−Off、Dark−Offの条件に比べて反応時間が長くなる傾向がみられた。この実施例の実験における各被験者の補助画面への視線移動と照明条件の切り替えのタイミングのずれが、視認性に影響を与えている可能性がある。
【0071】
以上より、実験全体において、Bright−Offの条件における検出課題の成績が最も低く、直接検出課題の刺激を提示していない補助画面の輝度が主画面の検出課題に影響を与えることが確認された。この要因としては、周辺視野により明るい領域が存在することによって中心視野の視覚認知が困難となる「グレア」、および周辺の照明光が主画面に写り込む「反射」の両方が考えられる。実際の夜間運転時においても、車載表示装置20を含む車室内照明や対向車のヘッドライトなど高照度の照明によって暗い路面状態の把握が困難であったり、それらの照明のフロントガラスへの写り込みによって同様に車外の様子を観察(目視)することが困難であったりすることは日常的に経験される。周辺視野の高輝度の照明(補助画面)によって主画面が見づらくなっているということについては、図7(A)に示した主観評価においても明らかにされた。このため、不要時に車載表示装置20の照度を低下させる設計は合理的であり、運転者の注視方向を検出することで、当該運転者が車外に注目している通常の運転時に車室内照明(車載表示装置20)の明るさ(輝度)を低下させる制御が有効であることが示唆された。
【0072】
一方で、これらの車載表示装置20は情報提供装置であり、運転者が快適に視認できる必要がある。実験の結果、注視時のみ補助画面の輝度を上げるDark−Onの条件では、常時高輝度を維持するBright−Offの条件に比べて主課題の成績は上昇しているものの、補助画面の快適性および補助画面の主課題への影響に関する主観評価においては、Dark−Offの条件よりも評価が低かった。Dark−Onの条件では、被験者が補助画面を注視している際には、Bright−Offの条件と同じ高輝度状態となるため、主画面との輝度水準の差が評価の低下につながったと考えられる。すなわち、視線に連動した輝度制御により写り込み(反射)およびグレアの影響は抑制できるものの、高輝度のモニタを注視している限り、直後の暗視野の視認に困難を覚えた被験者が多かったと言える。Dark−Offの条件のように、注視時の輝度が低ければ、順応の問題は生じ難くなるが、逆に補助画面の視認性が低下する可能性がある。
【0073】
この点を考慮し、上述の実験で検討したGazeの条件では、補助画面内の提示情報への適切な視線移動が重要となる注視初期においては比較的高い輝度を保ちながら、注視後は輝度を下げて暗視野への順応を促進することを意図した。これは実験の運転シーンに当てはめて考えると、グレアやフロントガラスへの反射を抑制するために、車載表示装置20全体の光量は抑えながらも、注視対象の表示装置20a、20b、20cの輝度は高めに設定して視認性を高める。また、注視後の輝度を段階的に小さくする時間的制御を加えることで、暗視野(路面などの車外)に視線を戻した際の妨害を生じ難くすることに対応する。上述の実験の結果、Gazeの条件では、Dark−Offの条件に比べて、注視時の平均輝度が高いにも拘わらず、最も平均成績が高く、その効果が確認できた。このことは、注視状態に応じた時間的な制御を考慮した照明パターンがグレアおよび順応による影響を抑制できる可能性を示唆した結果であると言える。
【0074】
以上をまとめると、視線に連動して補助画面の光量を調節することは、車外の注視時において、グレアおよび写り込みによる妨害(反射)を抑制するために有効である。また、順応による妨害を回避するために、補助画面の注視時にその輝度を下げると、補助画面の視認性が低下するが、視線情報による注視の確認と連動して輝度を調整することで、視認性と順応抑制とのバランスをとることができる可能性が高い。
【0075】
したがって、この実施例の輝度調整装置10では、グレアおよび反射の影響を回避するとともに、運転者の眼の順応を考慮して、車載表示装置20の輝度を制御するようにしてある。ここで、簡単に説明するが、自動車100が夜間の或る場所(昼まであってもトンネル内のような暗視野の場所も含む)を走行しているものとする。
【0076】
運転者が車外を見ている場合には、注視輝度が比較的低いため、グレアおよび反射の影響を回避するために、車載表示装置20の輝度を低下させる。ただし、運転者が、車載表示装置20から暗い車外に視線を戻した場合には、その後に、車載表示装置20の輝度を低下させる。また、運転者が車外から車載表示装置20を見たときには、それまでに見ていた方向ないし位置の輝度(注視輝度)と同程度に当該車載表示装置20の輝度が設定される。さらに、運転者が車載表示装置20を継続して見ている(注視している)場合には、その後に視線を移動させると予測される方向ないし位置の輝度(予測される注視輝度)と一致ないしほぼ一致するように(近付けるように)、当該車載表示装置20の輝度が設定される。以下、具体的に説明する。
【0077】
まず、グレアおよび反射の影響を回避したり、運転者の眼の順応を考慮したりするためには、運転者がいずれの方向を見ているかを知る必要がある。つまり、運転者の視線方向(注視位置)を検出(追跡)する必要がある。この実施例では、第1カメラ14で運転者の顔画像を撮影し、その撮影された顔画像から当該運転者の視線を検出する。視線検出方法としては、本願出願人が先に出願し、既に出願公開されている技術(特開2008−102902号)を用いることができる。簡単に説明すると、運転者の顔画像から眼球の中心を推定するとともに虹彩中心を抽出し、推定した眼球中心と抽出した虹彩中心とを結ぶ3次元直線の方向を、運転者の視線方向として検出する。ただし、視線検出は、所定時間(たとえば、1フレーム=1/15秒)毎に実行される。
【0078】
なお、詳細な説明は省略するが、運転者の頭部の位置は予め計測されており、また、視線方向は、運転者が正面を見ている方向を基準方向とした場合において、当該基準方向を示すベクトルに対して縦方向(垂直方向)および横方向(水平方向)になす角度で表される。
【0079】
ただし、視線方向の検出方法は、上記の技術に限定される必要はなく、他の任意の公知技術を用いることができる。
【0080】
また、この実施例では、運転者の視線方向(注視位置)の輝度(注視輝度)の検出や移動後の視線が向けられる場所や位置(注視位置)の注視輝度を予測するために、第2カメラ16の撮影画像から輝度分布(以下、「環境輝度分布」という)を検出する。この実施例では、第2カメラ16は、運転者が運転中に視認可能な範囲(注視全範囲)を撮影可能に設定されている。詳細な説明は省略するが、たとえば、注視全範囲は、運転者がフロントガラスを通して見る車外およびインパネ102、カーナビの表示画面104aとその操作パネル104bおよび空調の操作パネル106を含むダッシュボードを含む範囲である。
【0081】
また、詳細な説明は省略するが、上述したように、運転者の頭部の位置は予め測定されており、また、視線方向に対応づけて注視全範囲における注視位置を特定できるように、視線方向と注視位置とを対応付けたテーブル(図示せず)が予めコンピュータ12やDB18に記憶されている。ただし、視線方向から特定される注視位置は、後述する複数の小領域Rijを含み、注視輝度は、複数の小領域Rijの輝度Tij(後述する)の平均値を算出することにより求められる。
【0082】
この実施例では、環境輝度分布を検出するために、注視全範囲はマトリックス状の小領域Rに分割され、各小領域Rの輝度が求められる。たとえば、図8に示すように、注視全範囲は、縦100×横100の小領域Rに分割される。ただし、各小領域Rを識別するための行番号を変数iで表し、列番号を変数jで表す。また、図8からも分かるように、左上の小領域Rijの変数iおよび変数jが1であり、右下の小領域Rijの変数iおよび変数jが100である。上述したように、この実施例では、第2カメラ16では、30万画素(640×480ピクセル)の撮影画像が得られるため、1つの小領域Rijの輝度は、7×5ピクセル分の輝度の平均値で算出される。ただし、隣接する小領域Rijの境界上のピクセルの輝度は、その両方の小領域Rijの輝度の算出に用いられる。
【0083】
さらに、注視全範囲について、注視位置の確率分布(重み)が設定されている。これは、運転者が運転中にどこ(注視位置)をどれくらい(時間長さ)見ているかの確率であり、注視全範囲の小領域Rij毎に、重み付けがなされている。詳細な説明は省略するが、注視位置の確率分布は、運転者が実際に運転している場合に、単位時間(たとえば、60秒)内にどこをどれくらい見ているかを検出することにより、求められる。図9に示すように、図8に示した小領域Rijに対応して、重みwijがそれぞれ割り当てられる。重みwijの総和は1であり、運転者が運転中に見る確率が高い小領域Rijほど、重みwijが大きい。
【0084】
したがって、上述したように、運転者が車外(前方)を見て運転している場合には、検出された視線方向から比較的低い注視輝度が検出される。したがって、車載表示装置20の輝度が低下される。つまり、「反射」や「グレア」による影響が回避される。ただし、運転者が車載表示装置20から車外に視線を向けた場合には、それまでに見ていた車載表示装置20の輝度に合わせて、車載表示装置20の輝度が制御された後に、その輝度が低下される。この実施例では、運転者が視線を変化させたときには、視線を変化させる直前の注視輝度vgを含む過去数秒間(この実施例では、5秒間)の注視輝度vgの時間平均(注視輝度時間平均)vg/に基づいて車載表示装置20の輝度が制御される。ただし、“/”は平均を意味し、表記の都合上、文字の横に表示してあるが、実際には、文字上に“−”が表示される(図11参照)。以下、同様である。
【0085】
同様に、運転者が車外から車載表示装置20に視線を向けると、それまでに見ていた車外などの輝度に合わせて、車載表示装置20の輝度を制御する。このとき、上述したように、注視輝度時間平均vg/に基づいて車載表示装置20の輝度が制御される。したがって、上述したように、運転者が暗い車外から車載表示装置20を見た(注視)した場合であっても、明暗の差が少ないため、運転者の眼の順応が比較的速い。このため、車載表示装置20の内容を見る時間を比較的短くすることができ、前方を見ていない時間を出来る限り少なくするのである。
【0086】
さらに、運転者が表示装置20を継続的に見ている場合には、注視位置の確率分布を用いることにより、その後、視線を移動させると予測される方向ないし位置(車外を含む)の輝度に、車載表示装置20の輝度を近付けるように制御することにより、視線を変化させた場合に、運転者の眼が比較的早く順応するようにしてある。
【0087】
具体的には、第2カメラ16で撮影画像から得られた環境輝度分布と、注視位置の確率分布とから注視全範囲について平均した輝度(分布平均輝度)vdを算出する。具体的には、分布平均輝度vdは、数1に従って算出される。ただし、小領域Rijの輝度をTijとする。また、上述したように、変数i,jは、それぞれ1から100までの整数である。
【0088】
[数1]
【0089】
このように算出された分布平均輝度vdに近付けるように、車載表示装置20の輝度を制御する。ただし、この実施例では、現フレームの直前(1つ前)のフレームを含む過去数秒間(この実施例では、5秒間)の分布平均輝度vdの平均値(以下、「分布輝度時間平均」という)vd/を用いるようにしてある。
【0090】
図10は図1に示したRAM12bのメモリマップ300の例を示す図解図である。図10に示すように、RAM12bは、プログラム記憶領域302およびデータ記憶領域304を含む。プログラム記憶領域302は、車載表示装置20の輝度制御プログラムを記憶し、輝度制御プログラムは、全体処理プログラム302a、視線検出プログラム302b、注視輝度検出プログラム302c、環境輝度分布検出プログラム302d、分布輝度算出プログラム302e、および輝度レベル制御プログラム302fなどによって構成される。
【0091】
全体処理プログラム302aは、この実施例の輝度制御処理のメインルーチンを実行するためのプログラムである。視線検出プログラム302bは、上述したように、第1カメラ14の撮影画像から視線方向を検出するためのプログラムである。注視輝度検出プログラム302cは、視線検出プログラム302に従って検出された視線方向から注視全範囲のうちの注視位置を特定し、特定した注視位置の注視輝度vgを検出するとともに、その時間平均である注視輝度時間平均vg/を算出するためのプログラムである。
【0092】
環境輝度分布検出プログラム302dは、第2カメラ16の撮影画像から、注視全範囲における小領域Rij毎の輝度Tijを算出し、環境輝度分布を求めるためのプログラムである。分布輝度算出プログラム302eは、環境輝度分布検出プログラム302で検出された環境輝度分布と、後述する確率分布データ304eが示す注視位置の確率分布とから、数1に従って分布平均輝度vdを算出するとともに、その時間平均である分布輝度時間平均vd/を算出するためのプログラムである。輝度レベル制御プログラム302fは、車載表示装置20のパネル輝度レベルLを制御するためのプログラムである。
【0093】
図示は省略するが、プログラム記憶領域302には、輝度制御処理に必要な他のプログラムも記憶される。
【0094】
データ記憶領域304には、顔画像データバッファ304a、環境輝度データバッファ304b、注視輝度データバッファ304cおよび分布平均輝度データバッファ304dに設けられる。また、データ記憶領域304には、確率分布データ304e、視線データ304f、注視輝度時間平均データ304g、分布輝度時間平均データ304h、テーブルデータ304iおよび輝度レベルデータ304jが記憶される。さらに、データ記憶領域304には、注視フラグ304kが設けられる。
【0095】
顔画像データバッファ304aは、第1カメラ14の撮影画像に対応する画像データを毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、画像データバッファ304aは、現フレームおよび数秒分(たとえば、5秒分)の画像データを記憶可能であり、記憶領域が一杯になると、現フレームの画像データが記憶されるときに、最も古い画像データが削除される。
【0096】
環境輝度データバッファ304bは、環境輝度検出プログラム302dに従って検出された環境輝度分布のデータ(環境輝度分布データ)を毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、環境輝度データバッファ304bは、現フレームを含む数秒分(たとえば、5秒分)の環境輝度分布データを記憶可能であり、記憶領域が一杯になると、現フレームの環境輝度分布データが記憶されるときに、最も古い環境輝度分布データが削除される。
【0097】
注視輝度データバッファ304cは、注視輝度検出プログラム302cに従って検出された注視輝度vgについてのデータ(注視輝度データ)を毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、注視輝度データバッファ304cは、現フレームおよび数秒分(たとえば、5秒)の注視輝度データを記憶可能であり、数秒分の注視輝度データが記憶された後では、現フレームの注視輝度データが記憶されるとき、最も古い注視輝度データが削除される。
【0098】
分布平均輝度データバッファ304dは、分布輝度算出プログラム302eに従って算出された分布平均輝度vdについてのデータ(分布平均輝度データ)を毎フレーム記憶するためのバッファである。この実施例では、分布平均輝度データバッファ304dは、現フレームを含む数秒分(たとえば、5秒)の分布平均輝度データを記憶可能であり、記憶領域が一杯になると、現フレームの分布平均輝度データが記憶されるとき、最も古い分布平均輝度データが削除される。
【0099】
確率分布データ304eは、図9に示したような注視位置の確率分布についてのデータである。上述したように、注視位置の確率分布すなわち重みwijは、予め運転者について計測された結果から各小領域Rijに割り当てられ、重みwijの総和が1である。視線データ304fは、視線検出プログラム302bに従って検出された視線方向についてのデータである。
【0100】
注視輝度時間平均データ304gは、注視輝度データバッファ304cに記憶された注視輝度データが示す注視輝度vgの現フレームの1つ手前のフレームを含む過去数秒分についての時間平均(注視輝度時間平均vg/)についてのデータである。分布輝度時間平均データ304hは、分布平均輝度データバッファ304dに記憶された分布平均輝度データが示す分布平均輝度vdの現フレームの1つ手前のフレームを含む過去数秒分についての時間平均(分布輝度時間平均vd/)についてのデータである。
【0101】
テーブルデータ304iは、図11および図12に示す各テーブル18a、18b、18c、18dについてのデータであり、DB18から読み出してRAM12bに記憶される。ここで、各テーブル18a−18dについて説明する。
【0102】
図11(A)に示すように、テーブル18aは、パネル輝度レベルLに対応する輝度(cd/m2)を示す。この実施例では、パネル輝度レベルLは5段階(1−5)で表され、各レベルLに対応する輝度の数値が記述される。この実施例では、一般的に用いられている車載表示装置20の最大輝度(400cd/m2)および最低輝度(25cd/m2)を超えない範囲で、5段階で輝度を変化させるように、テーブル18aは設定される。図11(A)に示すように、パネル輝度レベルLが1である場合には、輝度は25(cd/m2)である。また、パネル輝度レベルLが2である場合には、輝度は75(cd/m2)である。さらに、パネル輝度レベルLが3である場合には、輝度は150(cd/m2)である。さらにまた、パネル輝度レベルLが4である場合には、輝度は300(cd/m2)である。そして、パネル輝度レベルLが5である場合には、輝度は400(cd/m2)である。したがって、パネル輝度レベルLが決まると、車載表示装置20(表示装置20a、20b、20c)の輝度が決定される。
【0103】
図11(B)に示すように、テーブル18bは、分布輝度時間平均vd/(cd/m2)の範囲に対応して、パネル目標輝度レベルLdが記述される。この実施例では、テーブル18bは、運転者が車載表示装置20を注視している場合に参照され、パネル目標輝度レベルLdでパネル輝度レベルLが決定される。たとえば、分布輝度時間平均vd/(cd/m2)が100以上200未満である場合には、パネル目標輝度レベルLdは3に決定される。このとき、たとえば、現在のパネル輝度レベルLが1または2である場合には、パネル輝度レベルLが1上昇される。また、たとえば、現在のパネル輝度レベルLが4または5である場合には、パネル輝度レベルLが1下降される。したがって、予測される注視輝度に一致ないしほぼ一致するように、車載表示装置20(ここでは、着目する表示装置20a、20b、20c)の輝度が制御される。したがって、その後に、運転者が車外(前)に視線を戻した場合にも、注視輝度が大幅に変化することが無く、順応による妨害がほとんど残らない。
【0104】
図12(A)に示すように、テーブル18cは、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の範囲に対応して、パネル目標輝度レベルLTが記述される。この実施例では、テーブル18cは、装置注視モードがTRUEの場合に参照され、運転者が車載表示装置20を注視していない状態から注視した場合に、パネル目標輝度レベルLTでパネル輝度レベルLが決定される。ここで、装置注視モードは、運転者が車載表示装置20を注視している状態であるどうかを示す。したがって、装置注視モードがTRUEである場合には、運転者が車載表示装置20を注視している状態であることを示す。一方、装置注視モードがFALSEである場合には、運転者が車載表示装置20を注視していない状態であることを示す。ただし、装置注視モードは、表示装置20a、20b、20c毎に設定される。たとえば、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)が100以上200未満である場合には、パネル目標輝度レベルLTは3に決定され、これがパネル輝度レベルLに設定される。したがって、図11(A)に示すように、車載表示装置20(ここでは、着目する表示装置20a、20b、20c)の輝度が150(cd/m2)に設定される。つまり、視線の変化の前後で明暗の差が少なくされる。他の場合についても同様である。
【0105】
この実施例では、運転者が車載表示装置20を注視していない状態から注視した場合には、テーブル18cを用いることにより、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)に一致ないしほぼ一致させるように、車載表示装置20の輝度を設定するようにしてある。しかし、車載表示装置20の性能によっては、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)に一致ないしほぼ一致させるように、輝度を追従させることができない場合もある。したがって、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の所定割合(たとえば、5〜7割)で車載表示装置20の輝度を設定するようにしてもよい。かかる場合にも、注視輝度に基づいて車載表示装置20の輝度を制御することができ、運転者の眼の順応を速くさせることができる。
【0106】
このように、図11(A)、(B)および図12(A)に示すように、テーブル18a−18cを設定し、これらを用いるので、運転者の眼の順応を考慮するとともに、現在の注視輝度および予測される注視輝度に応じて、車載表示装置20の輝度を設定することができる。つまり、注視輝度と運転者の眼の順応とに基づいて、車載表示装置20の輝度を制御することができる。
【0107】
また、図12(B)に示すように、テーブル18dは、テーブル18cと同様に、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の範囲に対応して、パネル目標輝度レベルLFが記述される。このテーブル18cは、装置注視モードがFALSEの場合に参照され、運転者が車載表示装置20を注視していない場合に、パネル目標輝度レベルLFでパネル輝度レベルLが決定される。たとえば、注視輝度時間平均vg/(cd/m2)が100以上200未満である場合には、パネル目標輝度レベルLFは2に決定され、これがパネル輝度レベルLに設定される。したがって、図11(A)に示すように、車載表示装置20(ここでは、すべての表示装置20a、20b、20c)の輝度が75(cd/m2)に設定される。つまり、図11(A)に示すテーブル18aに対応して図12(B)に示すようテーブル18dを設定し、運転者が車載表示装置20を注視していない場合には、このテーブル18dを用いて、注視輝度に応じて車載表示装置20の輝度が低下されるため、反射およびグレアを回避(抑制)することができる。
【0108】
図12(A)および図12(B)から分かるように、テーブル18dに示す注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の数値および数値範囲は、テーブル18cに示す注視輝度時間平均vg/(cd/m2)の数値および数値範囲よりも大きく設定されている。このため、装置注視モードがFALSEの場合には、車載表示装置20の輝度が低下されるように制御されるのである。
【0109】
なお、テーブル18a−18dは、単なる一例であり、これに限定されるべきではない。採用される製品によって、適宜数値や数値範囲は可変的に設定される。場合によっては、表示装置20a、20b、20cのそれぞれに、個別のテーブル18a−18dのセットを用意する必要がある。ただし、テーブル18aとテーブル18bとの対応関係、テーブル18aとテーブル18cとの対応関係、テーブル18aとテーブル18dとの対応関係、およびテーブル18cとテーブル18dとの数値および数値範囲の大小関係は、維持される必要がある。また、パネル輝度レベルLやパネル目標輝度レベルLd、LT、LFは、2つ以上のレベルであれば、さらに多くのレベルで分割してもよい。
【0110】
図10に戻って、輝度レベルデータ304jは、輝度レベル制御プログラム302fに従って設定ないし更新されるパネル輝度レベルLを示すデータである。注視フラグ304kは、車載表示装置20を注視しているかどうかを判別するためのフラグである。この実施例では、3つの表示装置20a、20b、20cが設けられるため、注視フラグ304kは、3ビットのレジスタで構成される。
【0111】
たとえば、レジスタの最上位ビットが表示装置20aに割り当てられ、最下位ビットが表示装置20cに割り当てられ、真ん中のビットが表示装置20bに割り当てられる。表示装置20a、20b、20cが注視されている場合(装置注視モード=TRUE)には、対応するビットにデータ値「1」が設定される。一方、表示装置20a、20b、20cが注視されていない場合(装置注視モード=FALSE)には、対応するビットにデータ値「0」が設定される。したがって、表示装置20aが注視されている場合には、レジスタの値は“100”を示す。また、表示装置20bが注視されている場合には、レジスタの値は“010”を示す。さらに、表示装置20cが注視されている場合には、レジスタの値は“001”を示す。さらにまた、運転者が車外(前方)を見ており、表示装置20a−20cが注視されていない場合には、レジスタの値は“000”を示す。
【0112】
図示は省略するが、データ記憶領域304には、輝度制御処理に必要な他のデータが記憶されたり、輝度制御処理に必要な他のフラグやタイマ(カウンタ)が設けられたりする。
【0113】
図13−図15は、図1に示したCPU12aの輝度制御の全体処理を示すフロー図である。図13に示すように、CPU12aは、輝度制御処理を開始すると、ステップS1で、装置注視モードをFALSEに設定するとともに、パネル輝度レベルLに初期値(L=LINIT)を設定する。上述したように、装置注視モードは、表示装置20a、20b、20c毎に設定され、ステップS1では、すべての表示装置20a−20cに対して、装置注視モードがFALSEに設定される。つまり、ステップS1では、CPU12aは、注視フラグ304kをリセットし、レジスタの値が“000”に設定される。また、パネル輝度レベルLの初期値LINITは、この輝度制御装置10の設計者ないしプログラマ或いは運転者が設定した値であり、1−5のいずれかの値(たとえば、5)が設定される。
【0114】
続くステップS3では、環境輝度分布を計測する。つまり、CPU12aは、第2カメラ16からの撮影画像データから得られる画素毎の輝度を用いて小領域Rij毎の輝度Tijを算出することにより、環境輝度分布を求める。そして、CPU12aは、求めた環境輝度分布に対応する環境輝度分布データを環境輝度データバッファ304bに記憶する。図示は省略するが、第2カメラ16の撮影処理は、全体処理が開始されたときに、開始される。また、全体処理が開始されると、第1カメラ14の撮影処理も開始され、その撮影画像データは図示しないバッファ領域に毎フレーム記憶される。ただし、第1カメラ14の撮影画像データは現フレームおよび数秒分(たとえば、5秒分)記憶可能である。したがって、記憶領域が一杯になると、現フレームの撮影画像データを記憶するときに、最も古い撮影画像データが削除される。
【0115】
次のステップS5では、分布平均輝度vdを計算する。ここでは、ステップS3で計測した環境輝度分布(輝度Tij)と、確率分布データ304eが示す重みwijとから数1に従って分布平均輝度vdが算出され、対応する分布平均輝度データが分布平均輝度データバッファ304dに記憶される。そして、ステップS7で、分布輝度時間平均vd/を更新する。つまり、ステップS5で算出された現フレームの分布平均輝度vdを含む過去数秒分の分布平均輝度vdの平均値を算出し、算出された分布輝度時間平均vd/に対応する分布輝度時間平均データ304hをデータ記憶領域304に記憶(上書き)する。
【0116】
次に、ステップS9では、視線を検出する。つまり、CPU12aは、上述したように、第1カメラ14の撮影画像から運転者の視線方向を算出する。続いて、ステップS11では、注視輝度vgを計算する。ここでは、運転者の視線方向で決定される注視位置の注視輝度vgが、分布平均輝度データバッファ304dに記憶された現フレームの分布平均輝度データが示す分布平均輝度(輝度Tij)から算出される。そして、算出された注視輝度vgに対応する注視輝度データが注視輝度データバッファ304cに記憶される。
【0117】
さらに、ステップS13で、注視輝度時間平均vg/を更新する。ここでは、注視輝度データバッファ304cに記憶された現フレームの1つ手前のフレームの注視輝度vgを含む過去数秒分の注視輝度vgの平均値を算出し、算出された注視輝度時間平均vg/に対応する注視輝度時間平均データ304gをデータ記憶領域304に記憶(上書き)する。そして、ステップS15で、視線が対象装置を向いているかどうかを判断する。ここでは、CPU12aは、ステップS9で検出した視線方向に応じて、運転者が着目する表示装置(20a、20b、20c)を見ているかどうかを判断するのである。
【0118】
なお、ステップS15以降では、簡単のため、着目する表示装置(20a、20b、20c)の1つを対象装置とし、当該1つの対象装置についての処理のみを示している。したがって、実際には、ステップS15以降の処理は、各表示装置20a−20cについて実行されるのである。
【0119】
ステップS15で“YES”であれば、つまり視線が対象装置を向いている場合には、図14に示すステップS17に進む。一方、ステップS15で“NO”であれば、つまり視線が対象装置を向いていない場合には、図15に示すステップS35に進む。
【0120】
図14に示すステップS17では、当該対象装置についての装置注視モードがTRUEであるかどうかを判断する。ここでは、CPU12aは、注視フラグ304kを参照して、当該対象装置(表示装置20a、20b、20c)に割り当てられたビットのデータ値が「1」であるかどうかを判断する。後述するステップS35も同様である。ステップS17で“YES”であれば、つまり装置注視モードがTRUEであれば、対象装置を見ている状態が継続していると判断して、ステップS19で、分布輝度時間平均vd/からパネル目標輝度レベルLdを設定する。つまり、ステップS19では、CPU12aは、テーブルデータ304iに含まれるテーブル18bを参照して、ステップS7で算出した分布輝度時間平均データ304hが示す分布輝度時間平均vd/に対応するパネル目標輝度レベルLdを決定する。
【0121】
続いて、ステップS21では、パネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも大きく、かつパネル輝度レベルLが1(最低値)よりも大きいかどうかを判断する。ステップS21で“YES”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも大きく、かつパネル輝度レベルLが1よりも大きければ、ステップS23で、パネル輝度レベルLを1減算して(L=L−1)、ステップS3に戻る。つまり、ステップS23では、パネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdに一致される、または近づけられる。このことは、後述するステップS27についても同様である。
【0122】
一方、ステップS21で“NO”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLd以下である、または、パネル輝度レベルLが1である、或いは、その両方である場合には、ステップS25で、パネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも小さく、かつパネル輝度レベルLが5(最大値)よりも小さいかどうかを判断する。
【0123】
ステップS25で“NO”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLd以上、または、パネル輝度レベルLが5(最大値)である、或いは、その両方である場合には、そのままステップS3に戻る。つまり、かかる場合には、パネル輝度レベルLが最大値または最小値であり、増大または減少できないか、パネル輝度レベルLとパネル目標輝度レベルLdとが一致するため、パネル輝度レベルLを調整する必要がないのである。一方、ステップS25で“YES”であれば、つまりパネル輝度レベルLがパネル目標輝度レベルLdよりも小さく、かつパネル輝度レベルLが5よりも小さい場合には、ステップS27で、パネル輝度レベルLを1増加させて(L=L+1)、ステップS3に戻る。
【0124】
また、ステップS17で“NO”であれば、つまり当該対象装置についての注視モードがFALSEであれば、当該対象装置を注視していない状態から注視した状態に変化したと判断して、ステップS29で、当該対象装置についての装置注視モードをTRUEに設定する。つまり、ステップS29では、CPU12aは、注視フラグ304kにおいて、運転者が注視する表示装置20a、20b、20cに割り当てられたビットにデータ値「1」を設定し、他のビットにデータ値「0」を設定する。
【0125】
続くステップS31では、注視輝度時間平均vg/からパネル目標輝度レベルLTを決定する。ここでは、装置注視モードがTRUEであるため、CPU12aは、テーブルデータ304iに含まれるテーブル18cを参照して、パネル目標輝度レベルLTを決定する。そして、ステップS33では、パネル輝度レベルLにパネル目標輝度レベルLTを設定して(L=LT)、ステップS3に戻る。
【0126】
上述したように、視線が対象装置を向いていない場合には、ステップS15で“NO”となり、図15に示すステップS35で、装置注視モードがTRUEであるかどうかを判断する。ステップS35で“NO”であれば、つまり装置注視モードがFALSEであれば、対象装置を注視していない状態が継続していると判断して、そのままステップS39に進む。一方、ステップS35で“YES”であれば、つまり装置注視モードがTRUEであれば、対象装置を注視していた状態から当該対象装置を注視していない状態に変化したと判断して、ステップS37で、装置注視モードをFALSEに設定して、ステップS39に進む。
【0127】
ステップS39では、注視輝度時間平均vg/からパネル目標輝度レベルLFを決定する。ここでは、装置注視モードがFALSEであるため、CPU12aは、テーブルデータ304iに含まれるテーブル18dを参照して、パネル目標輝度レベルLFを決定する。そして、ステップS41で、パネル輝度レベルLにパネル目標輝度レベルLFを設定して、図13に示したステップS3に戻る。
【0128】
なお、図示は省略するが、ステップS23、S27、S33およびS41で、パネル輝度レベルLが設定されると、CPU12aは、図11に示すテーブル18aに基づいて、そのパネル輝度レベルLに対応する輝度(cd/m2)で発光するように、対象装置のコントローラないしドライバを駆動する。
【0129】
図16には、この実施例の輝度制御装置10を動作させた場合の例を示す。図16に示すように、区間Aおよび区間Cでは、注視対象は車載表示装置20(表示装置20a、20b、20c)以外である。区間Bでは、注視対象は表示装置20a、20b、20cのいずれかである。分布輝度時間平均vd/および注視輝度時間平均vg/は、図16に示すように、時間に従って変化したとものとする。上述したように、注視対象が変化するため、装置注視モードは、区間AではFALSEに設定され、区間Bに入ってからTRUEに設定(変化)され、その後、区間Cに入って再びFALSEに設定(変化)される。このような場合においては、パネル輝度レベルは、初期値LINIT(=5)から時間tに従って変化する。
【0130】
また、上述したように、装置注視モードがTRUEとFALSEとで、参照するテーブル(18c、18d)が異なる。したがって、装置注視モードがFALSEの場合には、図16の左側に示すように、注視輝度時間平均vg/に応じてパネル目標輝度レベルLFが決定される。一方、装置注視モードがTRUEの場合には、図16の右側に示すように、注視輝度時間平均vg/に応じてパネル目標輝度レベルLTが決定される。
【0131】
図16に示すように、区間Aおよび区間Cでは、上述したように、注視輝度時間平均vg/に応じて目標輝度レベルLFが決定され、パネル輝度レベルL(表示装置20a−20cの輝度)が設定(変化)される。したがって、反射やグレアの発生を抑制しながらも、急なパネル注視に備えて、注視輝度時間平均vg/が高い場合には、パネル輝度レベルLが上昇される。また、区間Bでは、装置注視モードになると、このとき、注視輝度時間平均vg/に応じてパネル目標輝度レベルLTが決定され、パネル輝度レベルLが設定される。したがって、まず見易い輝度に設定される。その後、当該装置以外(車外を含む)に視線を移動した後に、順応による妨害が残らないように、分布輝度時間平均vd/に応じてパネル目標輝度レベルLDが決定され、パネル輝度レベルLが段階的に設定(変化)される。
【0132】
ただし、図16に示す例では、区間Bにおいては、分布輝度時間平均vd/に応じて決定されるパネル目標輝度レベルLDは変化しない(LD=2)。このため、区間Bにおいては、パネル輝度レベルLは、装置注視モードがTRUEになったときに、パネル目標輝度レベルLTに応じて一旦上昇した後、パネル目標輝度レベルLDに近づくように低下され、その後、パネル目標輝度レベルLDに設定される。
【0133】
この実施例によれば、車載表示装置の発光による反射やグレアを回避するとともに、運転者の眼の順応を考慮して車載表示装置の輝度を制御するので、適切に明るさを調整できる。したがって、快適な運転環境を提供することができる。
【0134】
なお、この実施例では、インパネ全体で輝度が調整されるようにしたが、計測機器単位で輝度が調整されてもよい。
【0135】
また、この実施例では、モノクロ画像を撮影可能なカメラを用いて、環境輝度分布を検出するようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、輝度を検出可能な光センサアレイを設けるようにしてもよい。ただし、光センサとしてはLEDやフォトダイオードを用いることができる。
【0136】
さらに、この実施例では、運転者は予め決定され、当該運転者の頭部の位置も予め測定されており、その頭部の位置における視線方向に対応した注視位置を記載したテーブルを記憶しておくことにより、視線方向を検出および追跡可能としたが、これに限定される必要はない。たとえば、2台のカメラまたは1台のステレオカメラを設けることにより、異なる2つの方向から運転者の頭部ないし上半身を撮影した撮影画像に基づいて運転者の頭部の位置を算出することもできる。また、注視位置は、頭部の位置と視線方向とから算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0137】
10 …輝度制御装置
12 …コンピュータ
12a …CPU
12b …RAM
14,16 …カメラ
18 …データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向と、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および
前記運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項2】
前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布を記憶する確率分布記憶手段をさらに備え、
前記輝度制御手段は、前記運転者が前記車載表示装置を注視している状態が継続しているとき、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、前記確率分布記憶手段に記憶された確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、請求項1記載の車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項3】
前記輝度制御手段は、前記運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に相関する値に前記車載表示装置の輝度を設定する、請求項1または2記載の車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項4】
前記輝度制御手段は、前記運転者が前記車載表示装置を注視していない状態であるとき、前記車載表示装置の輝度を低下させる、請求項1ないし3のいずれかに記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記輝度分布および前記注視輝度は、現時点を含む過去所定時間分の平均値である、請求項1ないし4のいずれかに記載の車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項6】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、および
前記運転者が前記車載装置を注視している状態が継続しているとき、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項7】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向と、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および
前記注視輝度検出手段によって検出された注視輝度と、前記運転者の眼の順応とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項8】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、
前記輝度制御装置のプロセッサに、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向と、前記輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および
運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度に基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラム。
【請求項9】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、
前記輝度制御装置のプロセッサに、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、および
前記運転者が前記車載装置を注視している状態が継続しているとき、前記輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布と、前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラム。
【請求項10】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、
前記輝度制御装置のプロセッサに、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向と、前記輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および
前記注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度と、前記運転者の眼の順応とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラム。
【請求項11】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、
(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、
(b)前記運転者の視線方向を検出し、
(c)前記ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、
(d)前記ステップ(b)によって検出された視線方向と、前記ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出し、そして
(e)運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記ステップ(d)によって検出された注視輝度に基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法。
【請求項12】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、
(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、
(b)前記運転者の視線方向を検出し、
(c)前記ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、そして
(d)前記運転者が前記車載装置を注視している状態が継続しているとき、前記ステップ(a)によって検出された輝度分布と、前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法。
【請求項13】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、
(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、
(b)前記運転者の視線方向を検出し、
(c)前記ステップ(b)によって検出された視線方向と、前記ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出し、そして
(d)前記ステップ(c)によって検出された注視輝度と、前記運転者の眼の順応とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法。
【請求項1】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向と、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および
前記運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項2】
前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布を記憶する確率分布記憶手段をさらに備え、
前記輝度制御手段は、前記運転者が前記車載表示装置を注視している状態が継続しているとき、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、前記確率分布記憶手段に記憶された確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、請求項1記載の車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項3】
前記輝度制御手段は、前記運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記注視輝度検出手段によって検出された注視輝度に相関する値に前記車載表示装置の輝度を設定する、請求項1または2記載の車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項4】
前記輝度制御手段は、前記運転者が前記車載表示装置を注視していない状態であるとき、前記車載表示装置の輝度を低下させる、請求項1ないし3のいずれかに記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記輝度分布および前記注視輝度は、現時点を含む過去所定時間分の平均値である、請求項1ないし4のいずれかに記載の車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項6】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断手段、および
前記運転者が前記車載装置を注視している状態が継続しているとき、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布と、前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項7】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置であって、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出手段、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出手段、
前記視線検出手段によって検出された視線方向と、前記輝度分布検出手段によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出手段、および
前記注視輝度検出手段によって検出された注視輝度と、前記運転者の眼の順応とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御手段を備える、車載表示装置の輝度制御装置。
【請求項8】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、
前記輝度制御装置のプロセッサに、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向と、前記輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および
運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度に基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラム。
【請求項9】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、
前記輝度制御装置のプロセッサに、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断する注視判断ステップ、および
前記運転者が前記車載装置を注視している状態が継続しているとき、前記輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布と、前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラム。
【請求項10】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御プログラムであって、
前記輝度制御装置のプロセッサに、
運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出する輝度分布検出ステップ、
前記運転者の視線方向を検出する視線検出ステップ、
前記視線検出ステップによって検出された視線方向と、前記輝度分布検出ステップによって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出する注視輝度検出ステップ、および
前記注視輝度検出ステップによって検出された注視輝度と、前記運転者の眼の順応とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する輝度制御ステップを実行させる、輝度制御プログラム。
【請求項11】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、
(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、
(b)前記運転者の視線方向を検出し、
(c)前記ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、
(d)前記ステップ(b)によって検出された視線方向と、前記ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出し、そして
(e)運転者が前記車載表示装置を注視していない状態から注視している状態に変化したとき、変化前に前記ステップ(d)によって検出された注視輝度に基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法。
【請求項12】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、
(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、
(b)前記運転者の視線方向を検出し、
(c)前記ステップ(b)によって検出された視線方向に基づいて、前記運転者が前記車載表示装置を注視しているかどうかを判断し、そして
(d)前記運転者が前記車載装置を注視している状態が継続しているとき、前記ステップ(a)によって検出された輝度分布と、前記運転者の前記視認可能な範囲についての注視位置の確率分布とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法。
【請求項13】
自動車内に設けられる車載表示装置の輝度制御装置の輝度制御方法であって、
(a)運転者の視認可能な範囲の輝度分布を検出し、
(b)前記運転者の視線方向を検出し、
(c)前記ステップ(b)によって検出された視線方向と、前記ステップ(a)によって検出された輝度分布とから、前記運転者の注視輝度を検出し、そして
(d)前記ステップ(c)によって検出された注視輝度と、前記運転者の眼の順応とに基づいて、前記車載表示装置の輝度を制御する、輝度制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【公開番号】特開2012−162126(P2012−162126A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22571(P2011−22571)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
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