説明

車載装置用通信システム

【課題】 車両内に複数の携帯型メール端末が持ち込まれた場合でも、各メール端末に着信したメールの内容を表示端末で自動的に表示可能にすること。
【解決手段】 携帯電話機3は、車両内において受信したメールをカーナビユニット1へ携帯電話ケーブル2を介して転送するようになっており、カーナビユニット1は転送されてきたメールの内容を表示器1aに表示する。携帯電話機3は、車両内に他のメール端末(携帯電話機4及び通信機能を備えたPDA5)が持ち込まれた状態で、それらとの間にブルートゥースインタフェース部を通じた無線通信リンクを自動的に確立し、各メール端末に対して、着信メールを自身に転送するように指令する。これにより、各メール端末は、着信したメールを携帯電話機3へ自動的に転送するようになり、当該メールは、さらに携帯電話機3からカーナビユニット1へ転送されて、その内容が表示器1aに表示される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両内の携帯型メール端末に着信したメールの内容を当該車両に搭載された表示端末に転送して表示するようにした車載装置用通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えばカーナビゲーションシステムの中には、携帯電話機(PHS電話機を含む概念である)をワイヤード接続するためのハードウエア構成を備え、車両の運転中において当該携帯電話機へのメール着信があった場合に、そのメールの内容をカーナビゲーションシステム側へ転送すると共に、地図画面表示用の表示器にメールの内容を表示するという通信機能を備えたものが提供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような通信機能を備えたシステムでは、ワイヤード接続された携帯電話機への着信メールのみしか表示できないという制約がある。これに対して、近年では、例えば個人用と仕事用とに使い分けるために2台の携帯電話機を所持したり、携帯電話機とは別に通信機能を備えたモバイル情報端末(PDA(PersonalDigital Assistants )、ノートパソコンなど)を所持したユーザが珍しくなくなっており、このようなユーザは、各携帯電話機或いはモバイル情報端末毎に異なるメールアドレスを保持することになる。このため、車両内に、ワイヤード接続された携帯電話機以外の携帯電話機やモバイル情報端末が持ち込まれた場合、それらに着信したメールの内容を表示器に表示できないという問題点があり、その着信メールを車両運転中に容易に確認することが不可能であった。
【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、車両内に複数の携帯型メール端末が持ち込まれた場合でも、各メール端末に着信したメールの内容を表示端末で自動的に表示可能となる車載装置用通信システムを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1に記載した手段を採用できる。この手段によれば、車両内に持ち込まれた携帯型メール端末にメールが着信したときには、そのメール内容が当該車両に搭載された表示端末に転送されて表示される。また、車両内に上記携帯型メール端末以外の第2の携帯型メール端末が持ち込まれた場合には、近距離無線通信システムによって、当該メール端末と既存の携帯型メール端末との間での無線通信リンクが自動的に確立される。このような状態で、第2の携帯型メール端末にメールが着信したときには、そのメールが、無線通信システムによる無線通信リンク及び既存の携帯型メール端末を通じて表示端末に転送されると共に、その内容が表示される。従って、車両内に複数の携帯型メール端末が持ち込まれた場合でも、面倒な操作を伴うことなく各メール端末に着信したメールの内容を表示端末で自動的に表示できるようになる。
【0006】請求項2に記載した手段によれば、近距離無線通信システムを、既存の携帯型メール端末と表示端末との間でのメール転送にも利用できるから、それら携帯型メール端末及び表示端末間をワイヤード接続する必要がなくなる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図1には本実施例による車載装置用通信システムの全体構成が概略的に示されている。この図において、カーナビユニット1(本発明でいう表示端末に相当)は、カーナビゲーションシステムの中核をなすもので、これに設けられた表示器1a上で道路地図画面やメニュー画面などを表示する構成となっている。このカーナビユニット1には、携帯電話用ケーブル2を介して携帯電話機3(携帯型メール端末に相当)を接続可能になっており、その接続状態では、携帯電話機3に着信したメールがカーナビユニット1側に転送されると共に、そのメールの内容が表示器1aに表示される構成となっている。
【0008】携帯電話機3には、ブルートゥース( Bluetooth(登録商標))インタフェース部が内蔵されており、車両内にブルートゥースインタフェース部が内蔵された他の携帯電話機4(第2の携帯型メール端末に相当)や通信機能を備えたPDA5(第2の携帯型メール端末に相当)が持ち込まれたときに、それらとの間で無線通信リンク(ACL(Asynchronous Connection-Less)リンク)を自動的に確立してパケット通信を行う構成となっている。具体的には、上記携帯電話機3及び4、PDA5をブルートゥース端末とした無線通信リンクにおいては、携帯電話機3がマスタとして機能し、他の携帯電話機4やPDA5がスレーブとして機能する。この場合、携帯電話機4及びPDA5は、携帯電話機3の所持者が保有するものであるが、マスタとして機能する携帯電話機3には、携帯電話機4及びPDA5と第三者が所持するブルートゥース端末との識別を行う設定がなされており、これにより第三者が所持した他のブルートゥース端末との間での通信を拒絶するようになっている。尚、上記各ブルートゥース端末(携帯電話機3及び4、PDA5)に備えられたブルートゥースインタフェース部及びこれらにより形成される無線通信リンクが本発明でいう近距離無線通信システムに相当する。
【0009】図2には携帯電話機3による制御内容が概略的に示され、図3にはカーナビユニット1、携帯電話機3及び4、PDA5間の通信シーケンスが概略的に示されており、以下これらについて説明する。図2において、携帯電話機3は、自身に備えられたブルートゥースインタフェース部を通じてスレーブとなる周辺の特定ブルートゥース端末(携帯電話機4、PDA5)の探索を行い、特定のブルートゥース端末が存在する場合には、当該端末との間の無線通信リンク(ACLリンク)を確立する(ステップS1)。このような無線通信リンクの確立は、図3に示すように、携帯電話機4及びPDA5が携帯電話機2側からの探索(受信確認通知)に応答(受信確認)することに基づいて行われる。
【0010】次いで、探索結果に基づいて周辺ブルートゥース端末リストを作成する(ステップS2)。尚、このリストは、デバイス探索毎に上書きして作成されるもので、無線通信リンクが確立されたブルートゥース端末が存在しない場合にも作成される。周辺ブルートゥース端末リストの作成後には、そのリストに基づいて他のブルートゥース端末が存在しているか否かを判断し(ステップS3)、存在しない場合には、自身(携帯電話機3)がメールを受信したときに当該メールをカーナビユニット1へ携帯電話ケーブル2を通じて転送する処理を行うためのステップS4を実行した後にステップS1へリターンする。
【0011】これに対して、他のブルートゥース端末がある場合(ステップS3で「YES」)、つまり、携帯電話機4及びPDA5の少なくとも一方との無線通信リンクが確立した状態にあるときには、そのブルートゥース端末に対して、各々に着信したメールを自身(携帯電話機3)へ転送するように指示する命令を送信する(ステップS5)。このようなメール転送指示のタイミング例を図3に示す。尚、このような転送指示命令の形態は種々考えられるが、基本的には、携帯電話機4及びPDA5中に、メール転送先アドレス(携帯電話機3のメールアドレス)を書き込むと共に、メール着信時に上記転送先アドレスへの自動転送コマンドを実行するように設定するという手段、或いは上記のようなメールの自動転送を、メールソフトに設けられたフィルタ機能により実現する手段を採用すれば良い。
【0012】ステップS5の実行後には、自身当てのメールを受信するまで若しくは携帯電話機4若しくはPDA5からの転送メールを受信するまで待機し(ステップS6、S7)、何れかを受信したときには、その受信メールをカーナビユニット1へ携帯電話ケーブル2を通じて転送するステップS8を実行した後にステップS1へリターンする。このようなメール転送のタイミング例を図3に示す。この図3に示したように、メールの転送を受けたカーナビユニット1は、受信したメールの内容を表示器1aに表示する。
【0013】以上要するに、上記した本実施例の構成によれば、携帯電話機3は、車両内において携帯電話用ケーブル2を介してカーナビユニット1に接続されるものであり、この携帯電話機3にメールが着信したときには、そのメール内容がカーナビユニット1へ携帯電話用ケーブル2を通じて転送されて表示器1aに表示される。また、車両内に上記携帯電話機3以外のメール端末である携帯電話機4やPDA5が持ち込まれた場合には、ブルートゥースインタフェース部により構成された近距離無線通信システムによって、マスタとなる携帯電話機3とスレーブとなる携帯電話機4やPDA5との間で無線通信リンクが自動的に確立される。このような状態で、携帯電話機4或いはPDA5にメールが着信したときには、そのメールが、上記無線通信リンクを通じて携帯電話機3に転送されると共に、この携帯電話機3から携帯電話用ケーブル2を通じてカーナビユニット1へ転送されて表示器1aに表示される。従って、車両内に複数の携帯型メール端末(携帯電話機3及び4、PDA5)が持ち込まれた場合でも、各メール端末に着信したメールの内容をカーナビユニット1の表示器1aで自動的に表示できるようになる。この場合、上記のようなメールの自動表示を行うためには、携帯電話機3をカーナビゲーションユニット1に対し携帯電話ケーブル2により接続するだけで良いから、面倒な操作を伴うことがなくなる。
【0014】尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。カーナビユニット1と携帯電話機3との間の通信を携帯電話ケーブル2を通じて行う構成としたが、カーナビユニット1側にもブルートゥースインタフェース部を設けることにより、カーナビユニット1及び携帯電話機3の通信をもブルートゥースによる近距離無線通信システムにより行う構成としても良い。この構成によれば、携帯電話機3とカーナビユニット1との間をワイヤード接続する必要がなくなって、その操作のための手間が減ることになる。表示端末の例としてカーナビユニット1を挙げたが、他の車載装置に備えられている表示装置を表示端末として利用したり、メール専用の表示端末を設けても良い。第2の携帯型メール端末の例として、携帯電話機4やPDA5を挙げたが、通信機能を備えたノートパソコンなども対象となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略的なシステム構成図
【図2】携帯電話機による制御内容を概略的に示すフローチャート
【図3】作用説明用の通信シーケンス図
【符号の説明】
1はカーナビユニット(表示端末)、1aは表示器、2は携帯電話用ケーブル、3は携帯電話機(携帯型メール端末)、4は携帯電話機(第2の携帯型メール端末)、5はPDA(第2の携帯型メール端末)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両内に持ち込まれた携帯型メール端末に着信したメールの内容を当該車両に搭載された表示端末に転送して表示するようにした車載装置用通信システムにおいて、前記車両内に第2の携帯型メール端末が持ち込まれた状態で当該メール端末と既存の前記携帯型メール端末との間で無線通信リンクを自動的に確立する近距離無線通信システムを備え、前記第2の携帯型メール端末に着信したメールを前記無線通信システム及び前記既存の携帯型メール端末を通じて前記表示端末に転送して表示する構成としたことを特徴とする車載装置用通信システム。
【請求項2】 前記近距離無線通信システムは、前記既存の携帯型メール端末と前記表示端末との間でのメール転送も行うように構成されることを特徴とする請求項1記載の車載装置用通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−256341(P2003−256341A)
【公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−50010(P2002−50010)
【出願日】平成14年2月26日(2002.2.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】