説明

車載装置

【課題】車両同士の接触などの事象によって、記録される映像が確認できなくなることがない車載装置を提供する。
【解決手段】自車両の周辺を継続的に撮像し撮像信号を出力する正面カメラ15および後方カメラ16と、HDD12へ撮像信号を継続的に記録する継続記録部11aと、自車両とは異なる車両において所定の事象が発生したことを示す無線信号を受信する無線通信回路19と、無線信号を受信したことに応じて、HDD12に記録されている撮像信号のうち、所定の事象が発生した時から遡って所定期間の撮像信号をメモリカード18に記録する抽出記録部11bとを備える車載装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲の映像を撮像するカメラと、他の車両との間の距離が所定値未満に達するとカメラにより撮像された映像を記録する記録部と、を備えた車載装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような車載装置を利用することにより、車載装置が搭載された車両が他の車両と接触した場合に、記録部により記録された映像に基づいて、接触の詳細な状況を確認することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車載装置には、車両同士の接触などの事故により車載装置自身が破損してしまい、記録されるはずの映像が確認できなくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、自車両の周辺を継続的に撮像し撮像信号を出力する撮像手段と、第1記録媒体へ撮像信号を継続的に記録する第1記録手段と、自車両とは異なる車両において所定の事象が発生したことを示す無線信号を受信する受信手段と、無線信号を受信したことに応じて、第1記録媒体に記録されている撮像信号のうち、所定の事象が発生した時から遡って所定期間の撮像信号を第2記録媒体に記録する第2記録手段と、を備えることを特徴とする車載装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両同士の接触などの事象によって、記録される映像が確認できなくなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態における車載装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】事故検知部11cの動作を説明するための図である。
【図3】抽出記録部11bの動作を説明するための図である。
【図4】抽出記録部11bおよび事故検知部11cが実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態における車載装置の全体構成を示すブロック図である。車載装置1は車両2に搭載されている。車載装置1は、各部の制御を行う制御回路11を備える。制御回路11には、HDD12、DRAM13、ROM14、正面カメラ15、後方カメラ16、メモリカードインタフェース(I/F)17、無線通信回路19、衝撃センサ21、車両I/F22がそれぞれ接続されている。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成される。制御回路11は、DRAM13を作業エリアとしてROM14に格納された所定の制御プログラムを実行し、各種の制御を行う。正面カメラ15は車両2の前方を、後方カメラ16は車両2の後方をそれぞれ撮像し、制御回路11へ撮像信号を出力する。
【0010】
メモリカードI/F17にはメモリカード18を装着することが可能である。制御回路11はメモリカードI/F17を介して、メモリカード18の読み書きを行うことができる。無線通信回路19は、外部の装置と無線通信を行うための回路である。無線通信回路19は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communication)等により、数メートル〜数十メートル程度の比較的短距離の無線通信を行う。無線通信回路19には、無線通信を行うためのアンテナ20が接続されている。衝撃センサ21は、車載装置1に加えられた衝撃を検知し、衝撃の大きさを示す検知信号を制御回路11へ出力する。
【0011】
車両I/F22は、車載装置1が搭載された車両2からの情報を受信するためのインタフェースである。車両2は、ステア操作、アクセル操作、ブレーキ操作などの操作情報を車両I/F22へリアルタイムに送信する。
【0012】
制御回路11は、継続記録部11a、抽出記録部11b、および事故検知部11cを備える。これらの各機能部は、制御回路11がROM14に格納された制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。
【0013】
継続記録部11aは、正面カメラ15が出力する撮像信号と、後方カメラ16が出力する撮像信号と、をHDD12へ継続的に記録する。継続記録部11aは更に、車両2が送信する操作情報を、撮像信号と同様にHDD12へ継続的に記録する。HDD12の記録容量が不足し撮像信号および操作情報を記録することができなくなった場合には、継続記録部11aは、HDD12に記録されている撮像信号および操作情報を最も古いものから順に削除して記憶容量を確保する。
【0014】
抽出記録部11bは、事故検知部11cにより事故が検知されたことに応じて、事故の発生前後の所定期間分の撮像信号をメモリカード18へ記録する。抽出記録部11bは、事故の発生前の撮像信号をHDD12から読み出すことにより取得する。また、事故の発生後の撮像信号の記録は、事故の検知後に正面カメラ15および後方カメラ16から出力される撮像信号を直接メモリカード18へ記録することにより行う。事故検知部11cが自車両の事故を検知した場合には、抽出記録部11bは更に事故の発生前の所定期間分の操作情報をメモリカード18へ記録する。抽出記録部11bは、事故発生前の操作情報をHDD12から読み出すことにより取得する。
【0015】
事故検知部11cは、自車両もしくは自車両の周辺に存在する車両に事故が発生したことを検知する。自車両の事故は、衝撃センサ21が出力した検知信号により検知される。具体的には、衝撃センサ21が検知した衝撃の大きさが所定の大きさ以上であった場合、事故検知部11cは自車両に事故が発生したと判断する。自車両の周辺に存在する車両の事故は、無線通信回路19が受信した無線信号により検知される。
【0016】
事故検知部11cは、自車両に発生した事故を検知した場合、無線通信回路19から事故が発生したことを示す無線信号を出力する。この無線信号には、事故が発生したことを示す情報の他に、例えば自動車登録番号などの自車両を特定するための情報が含まれる。無線信号を受信した車載装置1は、撮像信号と共に無線信号に含まれている事故車両を特定するための情報をメモリカード18へ記録する。
【0017】
図2は、事故検知部11cの動作を説明するための図である。図2には、道路上を車両C1,C2,C3,C4,C5が走行する様子が示されている。車両C2,C3,C4は矢印D1の方向に向かって走行しており、車両C5は矢印D2の方向に向かって走行している。また、車両C1は、矢印D2の方向に向かって走行中に、矢印D1の方向へ左折しようとしている。車両C1,C3,C4,C5はそれぞれ本実施形態による車載装置1を搭載しているものとする。
【0018】
図2に示すように、車両C1が左折中に車両C2と接触した場合の事故検知部11cの動作について説明する。この接触により、車両C1に搭載されている車載装置1の事故検知部11cが、衝撃センサ21の検出した衝撃の大きさによって、車両C1に事故が発生したことを検知する。事故検知部11cは、車両C1の周辺の車両へ、車両C1に事故が発生したことを示す無線信号を送信する。この無線信号は特に宛先を定めない、いわゆるブロードキャスト信号である。
【0019】
車両C1の周辺に存在する車両C3,C4,C5にそれぞれ搭載されている車載装置1は、この無線信号を受信する。これらの車載装置1の事故検知部11cは、この無線信号により、自車両の周辺に存在する車両C1に事故が発生したことを検知する。これらの車載装置1の抽出記録部11bは、この検知により、以下に説明する動作を開始する。
【0020】
図3は、抽出記録部11bの動作を説明するための図である。なお図3では、説明の簡単のため車両C3についてのみ説明を行うが、それ以外の車両C4,C5についても同様の処理が行われる。また、車両C1についても、無線信号の送信後、同様の処理が行われる。
【0021】
車両C3に搭載されている車載装置1の継続記録部11aは、正面カメラ15および後方カメラ16が出力する撮像信号をHDD12へ継続的に記録している。図3において、符号M3で示すバーが、HDD12へ継続的に記録される撮像信号を表している。また、図3では、車両C1に事故が発生した時刻を時刻t1で表している。
【0022】
抽出記録部11bは、車両C1の事故の検知に応じて、時刻t1と、時刻t1から所定期間P1(例えば15秒)だけ遡った時刻t2と、の間の撮像信号をメモリカード18へ記録する。この撮像信号はHDD12に既に記録されているので、抽出記録部11bはHDD12からこの撮像信号を読み出してメモリカード18へ記録すればよい。抽出記録部11bは更に、時刻t1から所定期間P2(例えば10秒)が経過した時刻t3まで、正面カメラ15および後方カメラ16が出力する撮像信号をメモリカード18へ記録する。すなわち、抽出記録部11bは、車両C1の事故の検知に応じて、時刻t2から時刻t3までの撮像信号MSをメモリカード18へ記録する。
【0023】
以上の処理により、メモリカード18には車両C3の2つのカメラが撮像した事故発生前後の映像が記録されることとなる。図2には、車両C3の後方カメラ16が撮像可能な範囲と、車両C4およびC5の正面カメラ15が撮像可能な範囲と、を破線で示している。すなわち、この破線で示した範囲の映像が、各々の車両に搭載された車載装置1のメモリカード18に記録されることとなる。図2に示すように、これらの映像は車両C1の事故の様子をそれぞれ異なる視点から撮像したものである。
【0024】
なお、車両C1に事故が発生した時刻と、車両C1から送信される無線信号を各車両に搭載されている車載装置1が受信した時刻と、は厳密には異なる。しかしながら、この2つの時刻の差はごく小さいため、2つの時刻を同一視しても特に問題ない。ゆえに、事故検知部11cが無線信号に事故の発生時刻の情報を含ませると共に、受信した無線信号に含まれる時刻の情報から時刻t1を決定してもよいし、単純に無線信号を受信した時刻を時刻t1としてもよい。
【0025】
なお、上述の説明ではメモリカード18への撮像信号の記録についてのみ述べているが、車両C1においては操作情報についても同様に時刻t2〜t1の期間の記録が行われる。
【0026】
図4は、抽出記録部11bおよび事故検知部11cが実行する処理のフローチャートである。この処理は、制御回路11がROM14に格納された制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。図2に示した車両C1,C3,C4,C5にそれぞれ搭載されている全ての車載装置1が、図4に示す処理を実行する。まずステップS10では、事故検知部11cが、無線通信回路19により無線信号の受信が行われたか否かを判定する。無線信号が受信された場合には肯定判定がなされ、ステップS60へ進む。他方、無線信号を受信していない場合にはステップS30へ進む。
【0027】
ステップS30では、事故検知部11cが、衝撃センサ21により所定量以上の衝撃が検出されたか否かを判定する。衝撃センサ21により所定量以上の衝撃が検出されなかった場合には否定判定がなされ、ステップS10へ戻る。他方、所定量以上の衝撃が検出された場合にはステップS40へ進む。ステップS40では、事故検知部11cが、無線通信回路19を通じて自車両の周辺へ無線信号を送信する。ステップS50では、抽出記録部11bが、HDD12に記録されている操作情報のうち、時刻t2〜t1(図3)の間に記録された操作情報を、メモリカード18へ記録する。
【0028】
ステップS60では、抽出記録部11bが、HDD12に記録されている撮像信号のうち、時刻t2〜t1(図3)の間に記録された撮像信号を、メモリカード18へ記録する。ステップS70では、抽出記録部11bが、正面カメラ15および後方カメラ16が出力する撮像信号を、時刻t3(図3)になるまでメモリカード18へ記録し続ける。
【0029】
上述した第1の実施の形態による車載装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)自車両とは異なる車両において事故が発生したことを示す無線信号を無線通信回路19が受信したことに応じて、抽出記録部11bが、HDD12に記録されている撮像信号のうち、事故が発生した時から遡って所定期間の撮像信号をメモリカード18に記録する。これにより、車両同士の接触などの事象によって、記録される映像が確認できなくなることがない。
【0030】
(2)無線通信回路19は、事故が発生した車両を特定可能な情報を含む無線信号を受信する。これにより、記録された撮像信号に対応する車両を後に特定することが容易となる。
【0031】
(3)抽出記録部11bは、無線信号を受信したことに応じて、事故が発生した時から遡って所定期間の撮像信号と共に、事故が発生した時から後の所定期間の撮像信号をメモリカード18へ記録する。これにより、事故の様子をより詳細に確認することが可能となる。
【0032】
(4)撮像信号を記録する車載装置1は、事故が発生した車両とは異なる車両、すなわち、事故の当事者ではない第三者の車両に搭載されている。これにより、記録された撮像信号の客観性が高くなり、より的確に事故の様子を判断することが可能となる。
【0033】
(5)無線信号を受信した全ての車載装置1が撮像信号をメモリカード18へ記録する。これにより、互いに異なる視点から撮像された多数の撮像信号を、カメラの数を増やすことなく記録することができる。
【0034】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0035】
(変形例1)
第1の実施の形態では、事故検知部11cは衝撃センサ21が出力する検知信号に基づいて事故の発生を検知していた。事故発生の検知方法は、これに限定されない。例えば、自車両2が車両I/F22へエアバッグの動作を示す情報を出力するようにし、事故検知部11cはエアバッグの動作に基づいて事故の発生を検知するようにしてもよい。この場合、車載装置1は衝撃センサ21を備えていなくてもよい。
【0036】
(変形例2)
第1の実施の形態において事故検知部11cが検知対象とする事象は、衝撃センサ21により検知可能な事故に限定されない。また、事故検知部11cが、いわゆる交通事故など、車両などの損傷を伴う事故以外の事象を検知するようにしてもよい。例えば、車両の急激な方向転換などを事故検知部11cが検知するようにしてもよい。
【0037】
(変形例3)
自車両の事故を検知した場合に、自車両に関する操作情報および撮像信号を自車両のメモリカード18へ記録しないようにしてもよい。また、メモリカード18へ操作情報を記録する代わりに、無線信号へ操作情報を含ませるようにしてもよい。この場合、無線信号を受信した各車載装置が、無線信号に含まれる操作情報をメモリカード18へ記録するように構成できる。
【0038】
(変形例4)
第1の実施の形態では、車載装置1が正面カメラ15と後方カメラ16という2つのカメラを備えていたが、1つのカメラを備えるようにしてもよいし、3つ以上のカメラを備えるようにしてもよい。
【0039】
(変形例5)
複数のカメラを備えている場合に、全てのカメラの撮像信号をメモリカード18へ記録するのではなく、事故の様子が映っている撮像信号のみをメモリカード18へ記録するようにしてもよい。例えば、無線信号に経度や緯度から成る自車両の位置情報が含まれるようにし、事故が発生した車両の位置に対応するカメラの撮像信号のみをメモリカード18へ記録させてもよい。
【0040】
(変形例6)
第1の実施の形態において、HDD12は撮像信号を継続的に記録するための記録媒体として用いられていた。HDD12と同様に撮像信号を継続的に記録可能な記録媒体であれば、HDD以外の記録媒体を用いてもよい。またメモリカード18は、事故発生前後の撮像信号を記録するための記録媒体として用いられていたが、これについても同様に、メモリカード以外の記録媒体であってもよい。また、これらの記録媒体は同一の記録媒体であってもよい。すなわち、継続記録部11aが記録対象とする記録媒体と、抽出記録部11bが記録対象とする記録媒体と、が同一の記録媒体であってもよい。
【0041】
(変形例7)
車載装置1が衝撃センサ21を備えていない場合であっても本発明を適用することが可能である。この場合、車載装置1以外の装置が事故の検知ならびに無線信号の送信を行うようにすればよい。例えば、路側に設置された装置が事故を検知し、付近に存在する車両へ無線信号を送信するようにしてもよい。また、車載装置1が事故の検知ならびに無線信号の送信を行う場合に、路側に設置された装置が車両から送信された無線信号の中継を行うようにしてもよい。
【0042】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 車載装置
2 自車両
11 制御回路
12 HDD
15 正面カメラ
16 後方カメラ
18 メモリカード
19 無線通信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺を継続的に撮像し撮像信号を出力する撮像手段と、
第1記録媒体へ前記撮像信号を継続的に記録する第1記録手段と、
自車両とは異なる車両において所定の事象が発生したことを示す無線信号を受信する受信手段と、
前記無線信号を受信したことに応じて、前記第1記録媒体に記録されている前記撮像信号のうち、前記所定の事象が発生した時から遡って所定期間の前記撮像信号を第2記録媒体に記録する第2記録手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
自車両において前記所定の事象が発生したことを検出する検出手段と、
前記検出手段による前記検出に応じて前記無線信号を送信する送信手段とを更に備えることを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載装置において、
前記所定の事象が発生したことを示す信号が自車両から入力される入力手段と、
前記入力手段に対する前記入力に応じて前記無線信号を送信する送信手段とを更に備えることを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載装置において、
前記受信手段は、前記車両を特定可能な情報を含む前記無線信号を受信することを特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載装置において、
前記第2記録手段は、前記無線信号を受信したことに応じて、前記所定の事象が発生した時から遡って所定期間の前記撮像信号と共に、前記所定の事象が発生した時から後の所定期間の前記撮像信号を第2記録媒体に記録することを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−155623(P2012−155623A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15659(P2011−15659)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】