説明

車輌用アンテナ装置

【課題】車体構成物を用いたアンテナ装置を合理的に構成する。
【解決手段】導体で成るボディ2に対して、開閉自在に導体で成るトランクリッド1を支持し、トランクリッド1が閉じ姿勢にある場合に、トランク空間の開口縁2Sとトランクリッド1とに平行する姿勢のアンテナエレメントAを備える。このアンテナエレメントAの第1給電ポイントP1に同軸ケーブルCの芯線Caを接続し、トランクリッド1の第2給電ポイントP2に同軸ケーブルCの網線Cbを接続することにより、トランクリッド1と開口縁2Sとの隙間をスロットSとするスロットアンテナ型のアンテナ装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用アンテナ装置として特許文献1には、第1車体部(図面ではトランクリッド)と第2車体部(図面ではボディ)との間に位置に形成される間隙を利用したスロットアンテナが記載されている。このスロットアンテナでは、ループ状の間隙に設定されたタップ点でアンテナ信号が引き出される。このタップ点では第1車体部と第2車体部との少なくとも一方が無線周波数ケーブルに容量結合(文献中では容量接続)している点が記載されている。
【0003】
この特許文献1では、容量結合する具体例として、第1車体部と第2車体部との間にスペーサを第2車体部に備えた構成を有している。このスペーサはT字形の断面を有する導電部が形成され、このスペーサの導電部は、電気的絶縁層により第2車体部に絶縁する状態で容量結合する。導電部はRFプラグを介して導体に接続され、このRFプラグには同軸ケーブルが接続している。
【0004】
また、車輌アンテナ装置として特許文献2には、車輌を構成する2つの導電性パネルの隙間をスロットアンテナのスロットとして用い、スロットの所定部位に給電ポイントを設けている点が記載されている。
【0005】
この特許文献2では、アンテナの具体例として、導電性パネルの一方にボンネットパネルを用い、導電性パネルの他方にフロントサイドパネル等を用い、給電ポイントにおいて給電線を構成する同軸ケーブルの中心導体と対応するパネルとを容量結合し、同軸ケーブルを構成する外部導体と対応するパネルとを容量結合する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005‐244981号公報
【特許文献2】特開2008‐131253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1あるいは特許文献2に記載されるように、車体の一部をアンテナとして用いるものでは、車体の外壁として構成されるパネル等の導体をアンテナとして活用できる。スロットアンテナは、スロットとの名称が示す通り導体に細長い孔が形成され、この孔を挟む位置に給電ポイントを形成することによりアンテナとして機能させる構造のものであり、長い孔を必要とする。
【0008】
しかしながら、例えば、トランクリッドと、このトランクリッドに対して間隙を隔てた位置のボディとを用いてスロットアンテナを構成した場合、トランクリッドを開放した場合にはアンテナとして機能しなくなり、送受信不能に陥るものとなる。
【0009】
特許文献1と特許文献2とにはスロットアンテナが示されているが、車体構成物を1つのアンテナエレメントとして機能させるアンテナ装置も考えられ、これを実現する構成も望まれている。
【0010】
本発明の目的は、車体構成物を用いたアンテナ装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、周波数帯に対応したエレメント長のアンテナエレメントを、導体で成る車体構成物に近接配置することにより、このアンテナエレメントと車体構成物とを容量結合させると共に、第1給電ポイントを前記アンテナエレメントに形成し、第2給電ポイントを前記アンテナエレメントから離間する位置の前記車体構成物に形成している点にある。
【0012】
この構成によると、アンテナエレメントで、そのエレメント長に対応した周波数に対応する電波の送受信が可能となり、アンテナエレメントに容量結合する車体構成物と、これに離間する車体構成物とで電波の送受信も可能となる。その結果、車体構成物を用いたアンテナ装置が構成された。
【0013】
本発明は、前記アンテナエレメントが線状に形成されている点にある。
【0014】
この構成によると、銅線のような線状材を用いることでアンテナエレメントを構成することも可能となり、狭いスペースにも配置できる。
【0015】
本発明は、前記車体構成物が、車体に開閉自在に支持された開閉体と、閉じ位置にある前記開閉体に隙間を挟んで対向する位置のボディとで構成され、
前記アンテナエレメントは、前記開閉体の開放時に開放する空間内で、前記開閉体が閉じ位置にある状態で前記開閉体又は前記ボディに近接することにより容量結合する位置に配置されても良い。
【0016】
この構成では、閉じ位置にある開閉体とボディとの隙間をスロットとするスロットアンテナを構成でき、開閉体を開放した場合には、アンテナエレメントがアンテナとして機能できることから、開閉体を開放した場合でも送受信が遮断されることがない。
【0017】
本発明は、前記開閉体がトランクリッドであり、前記アンテナエレメントが前記トランクリッドと前記ボディとの間の前記隙間に沿って配置されると共に、トランクリッド又は前記ボディの一方に前記第2給電ポイントが形成されても良い。
【0018】
この構成では、トラックリッドとボディとの間の隙間にアンテナエレメントを配置することにより、トランクリッドとボディとのうちアンテナエレメントが容量結合するものと、トランクリッドとボディのうち第2給電ポイントが形成されたものとが隙間を挟んで対向する位置関係となり、このトランクリッドとボディとをスロットアンテナとして機能させることが可能となる。
【0019】
本発明は、前記車体構成物が、空気の流通を許すように複数のバーが隙間を隔てて配置されたグリルであり、このグリルより車体内部側に前記アンテナエレメントが配置されても良い。
【0020】
この構成では、グリルのバーにアンテナエレメントを容量結合させることが可能となり、複数のバーの隙間をスロットとするスロットアンテナを構成することも可能となる。
【0021】
本発明は、前記車体構成物が、車体フレームと、絶縁性の樹脂製のバンパーカバーの内部において前記車体フレームから離間する位置に支持されるリーンホースとで構成され、前記アンテナエレメントが前記リーンホースに容量結合する位置に配置され、前記第2給電ポイントが前記車体フレームに形成されても良い。
【0022】
この構成では、アンテナエレメントに容量結合するリーンホースと、これに隙間を挟んで対向する車体フレームとでスロットアンテナを構成することも可能となる。
【0023】
本発明は、対象とする帯域の波長をλとして、前記アンテナエレメントのエレメント長がλ/4の長さに設定されても良い。
【0024】
この構成によると、アンテナエレメントのエレメント長さ設定により、対象とする帯域の波長の電波の送受信を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の閉じ位置と開放位置とにあるトランクリッドを示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のトランクリッドとレドームとの位置関係を示す図である。
【図3】第1実施形態のアンテナ装置のVSWR値を示すグラフである。
【図4】第1実施形態の別実施形態のトランクリッドとレドームとの位置関係を示す図である。
【図5】第2実施形態のアンテナ装置の配置及び構成を示す図である。
【図6】第2実施形態のアンテナ装置のVSWR値を示すグラフである。
【図7】第3実施形態のアンテナ装置の配置及び構成を示す図である。
【図8】第3実施形態のアンテナ装置のVSWR値を示すグラフである。
【図9】第4実施形態のアンテナ装置の配置及び構成を示す図である。
【図10】第5実施形態のアンテナ装置の配置及び構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、車輌としての乗用車の車体の後端部位に開閉自在に鋼板のように導体で成るトランクリッド1(開閉体・車体構成物の一例)が備えられている。このトランクリッド1と、鋼板のように導体で成るボディ2(車体構成物の一例・フェンダーでも良い)との間の隙間にアンテナエレメントAを備えることにより、このアンテナエレメントAと、トランクリッド1と、ボディ2とで電波の送受信が可能な車輌用アンテナ装置が構成されている。
【0027】
トランク空間Tは、ボディ2によって両側部と後端部とが取り囲まれる位置に配置され、このトランク空間Tは開放部により上方に開放する構造を有している。ボディ2に一端側が支持されたヒンジアーム3の端部にトランクリッド1が連結し、トランクリッド1が開放部を閉じる閉じ位置と、開放部を開放する開放位置とに切換自在に支持されている。図面には示していないが、トランクリッド1を閉じ状態を維持するラッチ機構が備えられている。
【0028】
図1及び図2に示すように、開放部の開口縁2Sに沿って柔軟なゴム材で成るウエザストリップ4が備えられ、開口縁2Sに沿う位置(ウエザストリップ4に沿う位置)にアンテナエレメントAが備えられている。トランクリッド1の外端1Eより内側で内面(下面)には、強度向上のためトランクリッド1の略全周に亘って膨出部1Aが形成されている。
【0029】
図2(b)に示すようにアンテナエレメントAは、樹脂製のレドーム6に収められている。このレドーム6には絶縁性の樹脂6Aが充填され、このレドーム6の一端に形成された導体で成る金属製のベース部6Bに電気的に導通するようにホルダ7が支持されている。このホルダ7に対して給電線としての同軸ケーブルCが支持されている。
【0030】
アンテナエレメントAは、L字状に屈曲成形した銅合金等の導電体の線状材を用いて線状に形成され、このアンテナエレメントAの端部の第1給電ポイントP1に同軸ケーブルCの芯線Caが電気的に導通するように接続している。また、同軸ケーブルCの網線Cbがホルダ7に電気的に導通するように接続し、ベース部6Bに一体形成されたフランジ部6C(第2給電ポイントP2として機能する)が金属製のビス8によりトランクリッド1の膨出部1Aに電気的に導通するように固定されている。これにより同軸ケーブルCの網線Cbは、ホルダ7とベース部6Bとを介してトランクリッド1に電気的に導通する。
【0031】
つまり、アンテナエレメントAのうち、同軸ケーブルCの芯線Caが電気的に導通する位置が第1給電ポイントP1であり、レドーム6のフランジ部6Cがボディ2に連結する位置が第2給電ポイントP2となる。
【0032】
このようにレドーム6を取り付けることにより、トランクリッド1が閉じ位置にある状態で、このアンテナエレメントAの先端側がトランクリッド1の外端1Eと平行姿勢になる。これと同時に、このアンテナエレメントAの先端側がボディ2の開口縁2Sに対して近接する位置で平行姿勢となる。このような位置関係により、アンテナエレメントAがボディ2に対して容量結合する状態に達し、トランクリッド1とボディ2との間の隙間をスロットSとするスロットアンテナとして機能させることが可能となる。
【0033】
更に、この車輌用アンテナ装置では、図1(b)、図2(a)に示す如く、トランクリッド1を開放位置に操作した場合には、ボディ2とアンテナエレメントAとが離間するものの、アンテナエレメントAが側方に開放する空間に配置される形態となり、モノポールアンテナとして機能させて送受信を実現する。
【0034】
このアンテナエレメントAは、屈曲していることから図2(b)に示すように長さL1とL2との和がエレメント長となる。そして、対象とする帯域の上限の波長をλとしてアンテナエレメントAのエレメント長が、λ/4の長さに設定されている。尚、同軸ケーブルCの他方の端部には受信機や送受信機等が備えられ、地上デジタルテレビ放送を受信することや、ITSでの通信を実現する。また、エレメント長は対象とする帯域の下限の波長や、帯域の中央等の波長をλとしてλ/4の長さに設定しても良い。
【0035】
図3に第1実施形態に示すアンテナ装置のVSWR特性を示し、同図のグラフでは横軸に周波数を取り、縦軸にVSWR値を取っている。また、同図に示す計測ポイントM1、M2、M3における周波数とVSWR値とを示している。
【0036】
これらの図から、第1実施形態のアンテナ装置では、計測ポイントM1における周波数が470.00MHzでVSWR値が2.56であり、計測ポイントM2における周波数が620.00MHzでVSWR値が1.19であり、計測ポイントM3における周波数が770.00MHzでVSWR値が1.97であり、計測ポイントM1から計測ポイントM3の周波数帯におけるVSWR値が3未満の良好な値であることが理解できる。
【0037】
〔第1実施形態の別実施形態〕
この別実施形態は、図4に示すように、ボディ2に第2給電ポイントP2を形成し、これに同軸ケーブルCの網線Cbを接続し、同軸ケーブルCの芯線CaをアンテナエレメントAの端部の第1給電ポイントP1に接続する形態でも実施可能である。尚、第1実施形態と同じ機能を有するものには、第1実施形態と共通する番号・符号を附している。
【0038】
アンテナエレメントAの形状や、このアンテナエレメントAを収容するレドーム6の構成は第1実施形態と共通しているが、レドーム6をトランク空間Tに隣接する位置のボディ2の開口縁2Sに隣接して備える点で第1実施形態と構成が異なる。
【0039】
このように車輌用アンテナ装置を構成することにより、トランクリッド1が閉じ位置にある状態で、このアンテナエレメントAの先端側がトランクリッド1の外端1Eと平行姿勢となる。これと同時に、このアンテナエレメントAの先端側がボディ2の開口縁2Sに対して近接する位置で平行となる位置関係に配置される。このような位置関係により、アンテナエレメントAがトランクリッドに対して容量結合する状態に達し、トランクリッド1とボディ2との間の隙間をスロットSとするスロットアンテナとして機能させることが可能となる。
【0040】
このように、トランクリッド1とボディ2との中間位置にアンテナエレメントAを備える構成として、ラッチ機構を挟む位置の2箇所にアンテナエレメントAを配置する等、複数箇所にアンテナエレメントAを備えることでダイバーシティ作動させることも可能となる。
【0041】
また、この第1実施形態の別実施形態として、開閉体が車体の側面に備えられるドアで構成されて良く、開閉体が、車体後端に備えられたハッチで構成されても良い。
【0042】
〔第2実施形態〕
図5に示すように、乗用車の車体の前端位置でボディ2で囲繞される位置に空気を吸入する(空気の流通を許す)ラジエータグリル11が備えられ、この上部にボンネット12が配置されている。ラジエータグリルは、外周のフレーム11Aと、互いに平行姿勢で配置される複数のバー11Bと、複数のバー11Bを導通状態で連結するショートフレーム11Cとを樹脂で成形し、金属メッキが施されることにより表面が導体となる。
【0043】
ラジエータグリル11は、ボディ2に電気的に導通する金属製の主フレーム13に支持され、の後方位置にはラジエータ14が配置されている。ラジエータグリル11とラジエータ14との中間位置にアンテナエレメントAが配置されることで、ボディ2とラジエータグリル11とアンテナエレメントAとで車輌用アンテナ装置が構成されている。
【0044】
アンテナエレメントAは、樹脂製のレドーム6に収められている。このレドーム6には絶縁性の樹脂6Aが充填され、このレドーム6の一端に形成された金属製のベース部6Bに電気的に導通するようにホルダ7が支持され、このホルダ7に対して給電線としての同軸ケーブルCが支持されている。
【0045】
アンテナエレメントAは、直線状の銅合金等の導電体の線状材を用いて線状に形成され、このアンテナエレメントAの端部の第1給電ポイントP1に同軸ケーブルCの芯線Caが電気的に導通するように接続している。また、同軸ケーブルCの網線Cbがベース部6Bに電気的に導通するように接続し、ベース部6Bに一体形成されたフランジ部6C(第2給電ポイントP2として機能する)が金属製のビス8により主フレーム13に電気的に導通するように固定されている。これにより同軸ケーブルCの網線Cbは、ホルダ7とベース部6Bとを介してボディ2に電気的に導通する。
【0046】
このようにレドーム6を取り付けることにより、アンテナエレメントAがラジエータグリル11に容量結合する状態に達し、このラジエータグリル11の複数のバー11B同士の隙間をスロットSとするスロットアンテナ型のアンテナエレメントとして機能する。
【0047】
このアンテナエレメントAは、図5(c)に示す長さLがエレメント長となる。そして、対象とする帯域の上限の波長をλとしてアンテナエレメントAのエレメント長が、λ/4の長さに設定されている。尚、同軸ケーブルCの他方の端部には受信機や送受信機等が備えられ、地上デジタルテレビ放送を受信することや、ITSでの通信を実現する。また、エレメント長は対象とする帯域の下限の波長や、帯域の中央等の波長をλとしてλ/4の長さに設定しても良い。
【0048】
図6に第2実施形態に示すアンテナ装置のVSWR特性を示し、同図のグラフでは横軸に周波数を取り、縦軸にVSWR値を取っている。また、同図に示す計測ポイントM1、M2、M3における周波数とVSWR値とを示している。
【0049】
これらの図から、第2実施形態のアンテナ装置では、計測ポイントM1における周波数が470.00MHzでVSWR値が2.29であり、計測ポイントM2における周波数が620.00MHzでVSWR値が1.43であり、計測ポイントM3における周波数が770.00MHzでVSWR値が2.13であり、計測ポイントM1から計測ポイントM3の周波数帯におけるVSWR値が3未満の良好な値であることが理解できる。
【0050】
〔第2実施形態の別実施形態〕
この第2実施形態では空気を吸入するラジエータグリル11を車体構成物として利用してアンテナ装置を構成していたが、車体の前端位置に備えられるラジエータグリル11に代えて、車体後端位置において空気を送り出すグリルや、車体側面位置において空気の吸入や空気の排出を行うグリルを車体構成物として利用して車輌用アンテナ装置を構成することも可能である。
【0051】
〔第3実施形態〕
図7に示すように、乗用車の車体の前端位置又は後端位置において絶縁性の樹脂で形成されるバンパーカバー21の内部に鋼材で成るリーンホース22が配置され、このリーンホース22は鋼材で成る中間フレーム23を介して車体フレーム24に電気的に導通するように連結されている。
【0052】
リーンホース22と車体フレーム24との間には隙間Sが形成されている。そして、リーンホース22に近接する位置にアンテナエレメントAが配置されることにより車輌用アンテナ装置が構成されている。
【0053】
アンテナエレメントAは、樹脂製のレドーム6に収められている。このレドーム6には絶縁性の樹脂6Aが充填され、このレドーム6の一端に形成された金属製のベース部6Bに電気的に導通するようにホルダ7が支持され、このホルダ7に対して給電線としての同軸ケーブルCが支持されている。
【0054】
アンテナエレメントAは、直線状の銅合金等の導電体の線状材を用いて線状に形成され、このアンテナエレメントAの端部の第1給電ポイントP1に同軸ケーブルCの芯線Caが電気的に導通するように接続している。また、同軸ケーブルCの網線Cbがベース部6Bに電気的に導通するように接続し、ベース部6Bに一体形成されたフランジ部6C(第2給電ポイントP2として機能する)が金属製のビス8により車体フレーム24に電気的に導通するように固定されている。これにより同軸ケーブルCの網線Cbは、ホルダ7とベース部6Bとを介して車体フレーム24に電気的に導通する。
【0055】
このようにレドーム6を取り付けることにより、アンテナエレメントAがリーンホース22に容量結合する状態に達し、リーンホース22とアンテナエレメントAとを容量結合させる。これにより、リーンホース22と車体フレーム24との隙間をスロットSとするスロットアンテナ型のアンテナエレメントとして機能する。
【0056】
このアンテナエレメントAは、図7(a)に示す長さLがエレメント長となる。そして、対象とする帯域の上限の波長をλとしてアンテナエレメントAのエレメント長が、λ/4の長さに設定されている。尚、同軸ケーブルCの他方の端部には受信機や送受信機等が備えられ、地上デジタルテレビ放送を受信することや、ITSでの通信を実現する。また、エレメント長は対象とする帯域の下限の波長や、帯域の中央等の波長をλとしてλ/4の長さに設定しても良い。
【0057】
特に、このアンテナ装置では、リーンホース22の長手方向で、アンテナエレメントAと中間フレーム23とが離間配置され、これらの離間距離Dが、リーンホース22の長手方向でアンテナエレメントAのエレメント長Lと一致(略一致するものでも良い)する値に設定されている。このように離間距離Dとエレメント長Lとを一致させることによりアンテナエレメントAと中間フレーム23との間の部位でも共振を得て良好な送受信を実現する。
【0058】
図8に第3実施形態に示すアンテナ装置のVSWR特性を示し、同図のグラフでは横軸に周波数を取り、縦軸にVSWR値を取っている。また、同図に示す計測ポイントM1、M2、M3における周波数とVSWR値とを示している。
【0059】
これらの図から、第2実施形態のアンテナ装置では、計測ポイントM1における周波数が470.00MHzでVSWR値が3.17であり、計測ポイントM2における周波数が620.00MHzでVSWR値が1.45であり、計測ポイントM3における周波数が770.00MHzでVSWR値が3.33であり、計測ポイントM1から計測ポイントM3の周波数帯におけるVSWR値が良好な値であることが理解できる。
【0060】
〔第4実施形態〕
図9に示すように、乗用車の車体の前端位置又は後端位置において絶縁性の樹脂で形成されるバンパーカバー21の内部に鋼材で成るリーンホース22が配置されている。このリーンホース22は鋼材で成る中間フレーム23を介して鋼材で成る車体フレーム24に電気的に導通するように連結されている。リーンホース22より低い位置となるバンパーカバー21の下部位置で、このバンパーカバー21の内面側に平行姿勢で複数の導体26が備えられている。尚、リーンホース22と中間フレーム23と車体フレーム24とは導体として機能する。
【0061】
複数の導体26は銅板等の良導体で成り、バンパーカバー21の内面に対して接着剤等により貼り付ける形態で固定されている。そして、複数の導体26に近接する位置にアンテナエレメントAが配置されることにより車輌用アンテナ装置が構成されている。
【0062】
アンテナエレメントAは、樹脂製のレドーム6に収められている。このレドーム6には絶縁性の樹脂6Aが充填され、このレドーム6の一端に形成された金属製のベース部6Bに電気的に導通するようにホルダ7が支持され、このホルダ7に対して給電線としての同軸ケーブルCが支持されている。
【0063】
アンテナエレメントAは、直線状の銅合金等の導電体の線状材を用いて線状に形成され、このアンテナエレメントAの端部の第1給電ポイントP1に同軸ケーブルCの芯線Caが電気的に導通するように接続する。また、同軸ケーブルCの網線Cbがベース部6Bに電気的に導通するように接続し、ベース部6Bに一体形成されたフランジ部6C(第2給電ポイントP2として機能する)が金属製のビス8によりリーンホース22に電気的に導通するように固定されている。これにより同軸ケーブルCの網線Cbは、ホルダ7とベース部6Bとを介してリーンホース22に電気的に導通する。
【0064】
このようにレドーム6を取り付けることにより、アンテナエレメントAが複数の導体26と容量結合する状態に達し、この複数の導体26の隙間をスロットSとするスロットアンテナ型のアンテナエレメントとして機能する。
【0065】
このアンテナエレメントAは、図9(a)に示す長さLがエレメント長となる。そして、対象とする帯域の上限の波長をλとしてアンテナエレメントAのエレメント長が、λ/4の長さに設定されている。尚、同軸ケーブルCの他方の端部には受信機や送受信機等が備えられ、地上デジタルテレビ放送を受信することや、ITSでの通信を実現する。また、エレメント長は対象とする帯域の下限の波長や、帯域の中央等の波長をλとしてλ/4の長さに設定しても良い。
【0066】
〔第5実施形態〕
図10に示すように、乗用車の車体の前端位置において絶縁性の樹脂で形成されるバンパーカバー21の内部に鋼材で成るリーンホース22が配置されている。このリーンホース22は鋼材で成る中間フレーム23を介して車体フレーム24に電気的に導通するように連結されている。リーンホース22より低い位置となるバンパーカバー21に形成された導風孔に複数のバー28が平行姿勢で配置されている。尚、リーンホース22と中間フレーム23と車体フレーム24とは導体として機能する。
【0067】
複数のバー28は、樹脂材でグリル状に形成され金属メッキが施されることにより表面が導体となる。そして、複数のバー28に近接する位置にアンテナエレメントAが配置されることにより車輌用アンテナ装置が構成されている。
【0068】
アンテナエレメントAは、樹脂製のレドーム6に収められている。このレドーム6には絶縁性の樹脂6Aが充填され、このレドーム6の一端に形成された金属製のベース部6Bに電気的に導通するようにホルダ7が支持され、このホルダ7に対して給電線としての同軸ケーブルCが支持されている。
【0069】
アンテナエレメントAは、直線状の銅合金等の導電体の線状材を用いて線状に形成され、このアンテナエレメントAの端部の第1給電ポイントP1に同軸ケーブルCの芯線Caが電気的に導通するように接続している。また、同軸ケーブルCの網線Cbがベース部6Bに電気的に導通するように接続し、ベース部6Bに一体形成されたフランジ部6C(第2給電ポイントP2として機能する)が金属製のビス8によりリーンホース22に電気的に導通するように固定されている。これにより同軸ケーブルCの網線Cbは、ホルダ7とベース部6Bとを介してリーンホース22に電気的に導通する。
【0070】
このようにレドーム6を取り付けることにより、アンテナエレメントAが複数のバー28と容量結合する状態に達し、この複数のバー28の隙間をスロットSとするスロットアンテナ型のアンテナエレメントとして機能する。
【0071】
このアンテナエレメントAは、図10(a)に示す長さLがエレメント長となる。そして、対象とする帯域の上限の波長をλとしてアンテナエレメントAのエレメント長が、λ/4の長さに設定されている。尚、同軸ケーブルCの他方の端部には受信機や送受信機等が備えられ、地上デジタルテレビ放送を受信することや、ITSでの通信を実現する。また、エレメント長は対象とする帯域の下限の波長や、帯域の中央等の波長をλとしてλ/4の長さに設定しても良い。
【0072】
このように本発明のアンテナ装置は、アンテナエレメントAに第1給電ポイントP1を形成し、トランクリッド1、ボディ2、リーンホース22等の車体構成物に第2給電ポイントP2を形成することにより、アンテナエレメントAに容量結合する部材をアンテナエレメントとして機能させ、車体外面に突出する形態でアンテナエレメントを備えずとも受信や送信を可能にする。
【0073】
また、アンテナエレメントAを車体構成物に近接配置することで容量結合させることで、車体構成物の隙間をスロットSとするスロットアンテナとしてアンテナ装置を構成することが可能となる。更に、ラジエータグリル11のバー11Bの隙間をスロットSとして機能させることや、リーンホース22と車体フレーム24との間の隙間をスロットSとして機能させることによりスロットアンテナを構成できるものにしている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、アンテナ装置を構成するに、車輌の外壁を構成する導体全般を利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 開閉体・トランクリッド
2 ボディ
11 グリル(ラジエータグリル)
11B バー
21 バンパーカバー
22 リーンホース
24 車体フレーム
P1 第1給電ポイント
P2 第2給電ポイント
A アンテナエレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯に対応したエレメント長のアンテナエレメントを、導体で成る車体構成物に近接配置することにより、このアンテナエレメントと車体構成物とを容量結合させると共に、第1給電ポイントを前記アンテナエレメントに形成し、第2給電ポイントを前記アンテナエレメントから離間する位置の前記車体構成物に形成している車輌用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナエレメントが線状に形成されている請求項1記載の車輌用アンテナ装置。
【請求項3】
前記車体構成物が、車体に開閉自在に支持された開閉体と、閉じ位置にある前記開閉体に隙間を挟んで対向する位置のボディとで構成され、
前記アンテナエレメントは、前記開閉体の開放時に開放する空間内で、前記開閉体が閉じ位置にある状態で前記開閉体又は前記ボディに近接することにより容量結合する位置に配置されている請求項1又は2記載の車輌用アンテナ装置。
【請求項4】
前記開閉体がトランクリッドであり、前記アンテナエレメントが前記トランクリッドと前記ボディとの間の前記隙間に沿って配置されると共に、トランクリッド又は前記ボディの一方に前記第2給電ポイントが形成されている請求項3記載の車輌用アンテナ装置。
【請求項5】
前記車体構成物が、空気の流通を許すように複数のバーが隙間を隔てて配置されたグリルであり、このグリルより車体内部側に前記アンテナエレメントが配置されている請求項1又は2記載の車輌用アンテナ装置。
【請求項6】
前記車体構成物が、車体フレームと、絶縁性の樹脂製のバンパーカバーの内部において前記車体フレームから離間する位置に支持されるリーンホースとで構成され、前記アンテナエレメントが前記リーンホースに容量結合する位置に配置され、前記第2給電ポイントが前記車体フレームに形成されている請求項1又は2記載の車輌用アンテナ装置。
【請求項7】
対象とする帯域の波長をλとして、前記アンテナエレメントのエレメント長がλ/4の長さに設定されている請求項2記載の車輌用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−66706(P2011−66706A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215922(P2009−215922)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】