説明

車輛検出モジュール及び交通流監視システム

【課題】外乱の影響なく正確・安定に対象地点の車両を捉えトンネル内の危険な地点を、進入・走行中の車両へ情報提供する車両検出モジュール及び交通流監視システムの提供。
【解決手段】各車両検出モジュール3は、道路に向け水平に超音波パルスを送波する超音波発振器、エコーを経時的に検出する超音波センサ、及び車線最近端からのエコー検出までの時間tから車線最遠端からのエコー検出までの時間tの区間[t,t]で検出されるエコー強度が検出下限レベル以上となると車両検出信号を出力する車両判定手段を具備する。交通流監視装置5は、各モジュール3毎に車両検出信号の度数を判定時間加算し、各モジュール3毎に検出度数に従い渋滞レベルを出力する。道路情報報知装置6は、各モジュール3の地点と渋滞レベルの渋滞情報を、交通流監視区間内又はその前方地点の車両に対し報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路渋滞を監視するための交通流監視システムとそれに使用される車輛検出モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の交通流の監視は、道路に設置されたカメラ映像から管制員が交通流を判定する方法や、道路パトロールカーにより道路監視員が交通流を判定する方法などの人的判定方法が採られている。かかる人的判定方法では、常時、管制員や道路監視員を配置する必要があるため、人件費などのコストが嵩むという問題がある。そこで、近年は自動的に道路の交通流を監視する交通流監視システムの研究・開発が行われている。
【0003】
従来の交通流監視システムは、カメラにより道路状況を撮影し得られた画像を画像処理することによって交通流の判定を行うもの、光センサを用いて車輛を検出することによって交通流の判定を行うもの、及び超音波を用いて車輛を検出することによって交通流の判定を行うものが知られている。
【0004】
撮影し得られた画像を画像処理することによって交通流の判定を行う交通流監視システムに関連する技術としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものが公知である。
【0005】
特許文献1に記載のシステムは、監視カメラで撮影した画像を画像処理することによって車輛認識を行い、交通渋滞を判定する停止低速車輛検出装置である。このシステムでは、道路に設置されたカメラにより、一定時間(例えば、0.1秒)毎に道路上の所定の範囲を撮影する。この画像から、画像解析を行うことによって車輛を抽出する。そして、検出された車輛の位置データに基づいて、走行軌跡データを生成し、この走行軌跡データから交通量、車群速度などの交通状態量を算出し、交通渋滞を判定する。
【0006】
特許文献2に記載のシステムは、道路の交通状態をカメラにより監視し、交通流の渋滞を検知する道路監視システムである。このシステムでは、監視する道路に沿って、複数の監視カメラを所定の間隔で設ける。各監視カメラにより撮影された画像は、監視センタに送られて監視用のモニタ装置に表示される。また、当該監視画像に基づき、渋滞判定手段によって、各監視カメラ毎に交通流の渋滞が判定される。そして、道路情報表示手段が、判定結果の情報から渋滞区間を判定し、渋滞状況を示すメッセージ情報を情報表示装置に表示する。
【0007】
特許文献3に記載のシステムは、道路を含む領域をカメラで撮像して得られた画像に基づいて、広範囲な交通状況を判定する交通状況判定システムである。このシステムでは、道路に設置されたビデオカメラで道路を含む領域を撮像し、撮像時点の異なる撮像画像の対応する画素ブロックを特定する。次いで、これらの画素ブロックの位置変化に基づいて、画素ブロックの動きベクトルを算出する。次いで、算出された動きベクトルの方向が略一致する隣接の画素ブロックを連結した連結ブロックを特定する。次いで、連結ブロックの各画素ブロックの動きベクトルに基づいて、連結ブロックの動きベクトルを算出する。また、連結ブロックの画素ブロック数に基づいて動きベクトルの分布密度を算出する。そして、分布密度又は連結ブロックの動きベクトルに基づいて、交通状況を判定する。
【0008】
光センサにより車輛を検出して交通流の判定を行う交通流監視システムに関連する技術としては、例えば、特許文献4に記載のものが公知である。
【0009】
特許文献4に記載のシステムは、トンネル内の停止車輛・渋滞などの車輛の交通状況を判別し、車輛の運転手に通知する交通状況判断システムである。このシステムでは、トンネル内の道路側に送受信ケーブル対を設置し、当該送受信ケーブル対に一定の間隔(例えば、100m間隔)で、光センサ等の車輛検知手段及びバンドパス・フィルタからなる光検知部を設ける。各バンドパス・フィルタは、それぞれ異なる周波数帯の電波を通過させるものとする。また、送受信ケーブル対の一端に、電波を発信する発信器とスペクトル・アナライザを接続する。発信器は、複数の周波数帯の電波を送受信ケーブル対に送信する。各光センサは、トンネルを通過する車輛のヘットライトを検知すると、バンドパス・フィルタに電波を流す。例えば、トンネル端から100m,200m,300m,400mの地点に、それぞれ光検知部を設け、各光検知部のバンドパス・フィルタの通過帯域を、a〜aHz,b〜bHz,c〜cHz,d〜dHzとする。また、発信器が送受信ケーブル対に送信する電波の周波数帯を、a〜aHz,b〜bHz,c〜cHz,d〜dHzとする。車輛が100m地点の光検知部の手前に来ると、100m地点の光検知部の光センサが導通し、a〜aHzの電波が送受信ケーブル対に流れる。これをスペクトル・アナライザにより検出することで、車輛が100m地点の光検知部の手前を通過したことを検出できる。同様にして、200m,300m,400mの地点の光検知部の手前を車輛が通過したことも検出できる。
【0010】
超音波を用いて車輛を検出することによって交通流の判定を行う交通流監視システムに関連する技術としては、例えば、特許文献5に記載のものが公知である。
特許文献5に記載のシステムは、超音波センサを使用してトンネル内の交通渋滞を監視するトンネル監視システムである。このシステムでは、トンネルの天井部に、トンネルの全長に亘って、所定の間隔をおいて複数の超音波センサを設置する。各超音波センサは、超音波の発射・受信領域が自動車検知領域で互いに境界を接し、自動車走行方向の縦間隔が普通の自動車の長さよりも短くなるように設置されている。自動車がトンネルに進入するとき、第1の超音波センサによって自動車が検知され、当該自動車がトンネル出口に至るまで、後に続く超音波センサで次々と切り替えることによって当該自動車の検知が可能となる。これにより、自動車の速度を検知することができ、トンネル内の渋滞を判別することが可能となる。
【0011】
また、超音波センサを用いて車輛を検出する技術として、他に、特許文献6に記載の技術も公知である。
【0012】
特許文献6に記載の走行車輛識別装置は、道路を走行する車輛の車長を検出し、検出した車長から、その車輛の大型/小型の車種を識別する、超音波センサ式の走行車輛識別装置である。この装置では、道路の沿道方向の3地点以上の多地点それぞれの一側に、道路の他側に向って超音波を出力し、走行する車輛により反射した超音波を受波する超音波送受波器構成の超音波センサを設置する。各地点の超音波センサの受波信号は、コンピュータ構成の本体処理装置に入力される。本体処理装置は、各地点の超音波センサから選択して組合わされた各2地点の超音波センサ毎に、両地点の超音波センサの受波信号のレベル変化から、車輛の両地点の通過タイミングのずれ及び両地点それぞれの通過時間を検出する。また、各2地点の超音波センサ毎に、通過タイミングのずれ及び両地点それぞれの通過時間の検出結果と、両地点の超音波センサの設置間隔とに基づき、車輛の計測車長を算出する。そして、各計測車長の平均により車輛の検出車長を決定して車輛の大型/小型の車種を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−26301号
【特許文献2】特開2002−222486号
【特許文献3】特開2006−330942号
【特許文献4】特開2007−213459号
【特許文献5】特許第3838975号
【特許文献6】特開2003−217077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
カメラにより道路状況を撮影し得られた画像を画像処理することによって交通流の判定を行う交通流監視システムでは、第1にカメラ設備を道路上に設置する必要があるため整備のコストが高いという問題がある。また、雨や霧、粉塵などにより道路上の視界が悪くなると、カメラ映像による車輛の検出が困難となり、かかる道路状況では十分な監視機能を果たすことができない。また、特許文献1,3のようにカメラ映像に撮像された車輛を抽出して自動車を自動検出することにより交通流の監視を行う場合、夜間やトンネル内のような暗所では、車輛全体を明確に撮像するための照明が別途必要になる。また、画像処理のための専用のコンピュータも必要となる。また、監視員により人的に見張る場合には、人件費が嵩むという問題がある。
【0015】
また、光センサを用いて車輛を検出することによって交通流の判定を行う交通流監視システムにおいても、雨や霧、粉塵などにより光学センサが曇ると、誤検出が発生するという問題がある。
【0016】
一方、超音波を用いて車輛を検出することによって交通流の判定を行う交通流監視システムの場合、車輛検出には超音波発信器と超音波受波器を備えた超音波センサが使用される。超音波は光に比べて広範囲に広がり比較的広い領域内を包括的に検知するのに適しており、また超音波受波器は光学センサに比べて汚れに対する検出性能の低下が少ない。従って、超音波センサは、雨・霧・粉塵のような外乱要因に対してロバスト(頑健)であり、また道路上の照度に関係なく車輛を検出することができ、設置コストもカメラに比べると安価であるため、交通流監視システムにおける車輛検出センサとしては優れている。
【0017】
しかし、超音波が広範囲に広がるという長所は、トンネル内においては、逆に多重反射を引き起こすという欠点にもなる。特許文献4に記載されたように、トンネル天井又は壁面に超音波センサを設置した構成とした場合、超音波センサから発射された超音波が路面で反射し、更にトンネル壁で反射するといった多重反射が生じ、超音波センサで受波される反響は複雑な波形となる。従って、車輛検出の精度が低下する、又は検出できない、又は誤検知するという問題がある。さらに、トンネル内においては、風の対流が発生しやすく、これによっても超音波が拡散し目的波が正確に捉えられないという問題がある。
【0018】
一方、特許文献6に記載されたように、超音波センサを車線の上方ではなく側方に設置する構成とすることも考えられる。この場合も、屋外の開空間であれば問題ないが、屋内やトンネルのような閉空間では前段落〔0016〕に記載の問題と同様の問題があった。
【0019】
そこで、本発明の目的は、トンネルのような閉空間において、外乱の影響を受けることなく正確、且つ安定的に対象ポイント(対象エリア)の車輛を捉え、これらの流れ(渋滞、平常)を認識することでトンネル内に危険なポイント(エリア)が存在することを、トンネルに進入、あるいは走行中の車輛へ情報提供することが可能な車輛検出モジュール及び交通流監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
車輛検出モジュールに係る本発明の第1の構成は、道路の側方に設置され、道路側方から道路方向に向けて水平方向に超音波パルスを送波する超音波発振器と、
前記超音波発信器から超音波パルスが送波された超音波のエコーを経時的に検出する超音波センサと、
前記超音波発振器から超音波パルスが送波された時点を基準とする経過時間をエコー時間tとした場合に、検出対象の車線の最近端からのエコーが検出される第1のエコー時間tから、検出対象の車線の最遠端からのエコーが検出される第2のエコー時間t(>t)までの時間区間[t,t](以下「エコー検出ウィンドウ」という。)において、前記超音波センサで検出されるエコーの強度が検出下限レベル以上となった場合に車輛検出信号を出力する車輛判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、道路側方から道路方向に向けて超音波を送波することで、路面及び壁面からの多重反射の影響を受けることがなくなる。また、超音波を送波してから経時的に連続して観測されるエコーに対して、エコー検出ウィンドウを設けて、そのエコー検出ウィンドウ内のエコーのみを車輛検出の判定に用いることで、目的とする距離範囲(車線)に車輛が存在するか否かを的確に判定・検出することができる。
【0022】
ここで、「エコー検出ウィンドウ」とは、検出対象の車線の最近端からのエコーが検出される時点から、検出対象の車線の最遠端からのエコーが検出される時点までのエコー時間の区間をいう。「検出下限レベル」とは、エコー強度が被検体(車輛)からの反射であるか否かを判定する閾値レベルをいう。検出下限レベルは、エコー時間tに対して一定の値でもよい。しかしながら、エコー強度は、送波源(車輛検出モジュール)から被検体(車輛)までの距離が長くなるに従って弱まるため、検出下限レベルもそのエコーの減衰曲線に比例した単調減少関数(エコー時間tに対する単調減少関数)とすることが好ましい。検出下限レベルの関数(単調減少関数)は、具体的には、例えば、後述の式(3a),(3b)のような関数が使用される。
【0023】
車輛検出モジュールに係る本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、前記第2のエコー時間tからその2倍のエコー時間2tまでの区間で、かつ当該区間(t,2t)の間に固定反射点が存在する場合にはその固定反射点より前の適宜な時点tを最遠検出端点とし、
前記最遠検出端点におけるエコーのS/N比が物体検出の判別可能限界値となるように、前記超音波発振器の送波強度及び/又は前記超音波センサのエコー受信感度が調節されていることを特徴とする。
【0024】
これにより、最遠検出端点でのエコーのS/N比を物体検出の判別可能限界値とすることで、最遠検出端点に相当する地点よりも遠方の物体からの多重反射の影響が除去される。また、エコー検出ウィンドウにおけるS/N比は物体検出に十分なレベルが確保される。従って、遠方の壁や物体からの乱反射が抑制されて精度よく車輛の検出を行うことが可能となる。
【0025】
ここで、「物体検出の判別可能限界値」とは、被検体(車輛)が存在する場合にそのエコーの検出が可能な限界値をいう。最遠検出端点tはエコー時間の区間(t,2t)の間であればよい。最遠検出端点tの下限をtとした理由は、t<tの場合、エコー検出ウィンドウの後端点tにおける反射波が判別可能限界値以下となり、誤検出が生じるからである。従って、誤検出を生じさせないという観点からは、最遠検出端点tは後端点tよりできるだけ後のほうが好ましい。一方、最遠検出端点tの下限を2tとした理由は、t>2tとした場合、検出ウィンドウに生じる被検体からのエコーの多重反射が検出されはじめるため、誤検出が生じるからである。従って、多重反射の影響をなくす観点からは、最遠検出端点tをあまり大きくしすぎるのも好ましくない。故に、最遠検出端点tは、多重反射の影響がなくかつ後端点tにおけるエコーのS/N比を必要十分に確保できるように、区間(t,2t)の間の適宜な点に設定される。但し、前記区間(t,2t)の間に固定反射点が存在する場合には、最遠検出端点tはその固定反射点よりも前の時点に設定する。
【0026】
例えば、後述の実施例においては、超音波センサ(規格を記述)へ12Vp−pの方形波を検出ウィンドウの区間に向け、バースト期間(400μs)で印加し音圧の出力を送出する。その後、対象物までの往路伝搬損失(前記エコーの減衰曲線)、対象物の超音波反射率(反射角度、材質による)、対象物からの復路伝搬損失(前記エコーの減衰曲線)の各減衰を経て、前記超音波センサで反射信号が受信される。この実施例においては、センサ出力端で0.05mVが最小検知レベルである。そして、受信アンプ(53dB)、フィルタ(−6dB)を経て、47dBの増幅された信号がA/D変換部へ入力されるが、この段階でノイズは信号に対し−6dB以下であることが望ましい。
【0027】
車輛検出モジュールに係る本発明の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、外部との通信を行う第1の通信インタフェースと、
前記第1の通信インタフェースを介して外部から入力される前記同期信号に従って、前記超音波発振器からの超音波パルスの送波タイミングを同期制御する同期制御手段と、
前記車輛判定手段が出力する前記車輛検出信号を、前記第1の通信インタフェースを介して外部に送信する検出信号送信手段と、を備え、
前記検出信号送信手段は、前記超音波発振器により超音波パルスの送波が行われている時間帯に前記車輛検出信号を送信することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、同期信号は、マスター部のタイマによって生成される。例えば、車輛検出モジュールから前記最遠検出端点までをX(m)とした場合、超音波の往復時間(温度T(℃)において)は、t(ms)となるため、前記超音波パルスの送波はt(ms)毎に行うことが可能となる。(送波は出来る限り、短時間周期で行うことで、対象物の検出精度が向上する。)データ送信は有線/無線に関わらず、車輛検出モジュールが何らかの電気的信号を外部へ向け送出するが、超音波信号受信期間(検出ウィンドウの対象物からの反射信号検知時間)以外でデータ送信を行えば、通信インタフェース(デジタル回路)から超音波計測回路(アナログ回路)へのノイズ混入の問題が無くなるため(たとえ混入しても動作に問題はないため)、ノイズ低減のための、電源・アース回路の構成の単純化、及び車輛検出モジュールのサイズを小型化でき、シンプル、低コストで実現することが可能となる。
【0029】
車輛検出モジュールに係る本発明の第4の構成は、前記第3の構成において、自己の動作状態をマスターモード又はスレーブモードの何れかに設定する動作モード設定手段と、
外部との通信を行う第2の通信インタフェースと、
動作状態がマスターモードの場合、前記第2の通信インタフェースを介して前記同期信号を出力する同期信号発生手段と、
動作状態がマスターモードの場合、前記第2の通信インタフェースを介して自己又は他の車輛検出モジュールの前記第1の通信インタフェースから送信されてくる前記車輛検出信号を受信する検出信号受信手段と、
前記検出信号受信手段により受信される前記各車輛検出信号を記憶する検出信号記憶手段と、
所定の時間毎に、前記検出信号記憶手段に記憶された各車輛検出信号を、データ送信信号として前記第2の通信インタフェースを介して外部へ出力する検出情報出力手段と、を備え、
前記同期制御手段は、マスターモードの車輛検出モジュールの前記同期信号発生手段から送信され前記第1の通信インタフェースを介して入力される前記同期信号に従って、前記超音波発振器からの超音波パルスの送波の同期制御を行うものであり、
前記検出信号送信手段は、前記車輛判定手段が出力する前記車輛検出信号を、前記第1の通信インタフェースを介してマスターモードの車輛検出モジュールの前記検出信号受信手段に送信するものであることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、マスターモードの車輛検出モジュールは、複数の車輛検出モジュールの中で1つのみ存在し、通信ラインを介して系全体のタイミング制御を行う。そのタイミング制御が前記同期制御であり、同期制御の信号は一斉に全ての車輛検出モジュールのセンサ部へ同報される。全ての車輛検出モジュールのセンサー部では、前記同期制御の信号を受信すると同時に計測を開始し、それぞれが固定されたインタバルの時間ウェイトし、時分割(タイムスライス)でマスター部へデータを送信する。
【0031】
交通流監視システムに係る本発明の第1の構成は、交通流の検出を行う交通流監視区間の道路に沿って設置された請求項3に記載の車輛検出モジュールを複数個備えるとともに、
前記各車輛検出モジュールから送信されてくる車輛検出信号に基づき、交通流監視区間の道路の渋滞情報を判定する交通流監視装置と、判定結果を報知する道路情報報知装置と、を備えた交通流監視システムであって、
前記交通流監視装置は、
前記各車輛検出モジュールのそれぞれについて、当該車輛検出モジュールから送信された車輛検出信号の度数を所定の判定時間だけ加算する度数累算手段と、
前記各車輛検出モジュールのそれぞれについて、前記度数累算手段により出力される累算された前記車輛検出信号の度数(以下「累計検出度数」という。)又はその累計検出度数を判定時間全体の移動平均化した検出率に従って、2乃至複数の段階の渋滞レベルを出力する渋滞レベル判定手段と、
前記各車輛検出モジュールの位置する道路上の地点と、それに対する前記渋滞レベルとを対応させた渋滞情報を、前記交通流監視区間内又はそれよりも前方の道路地点の車輛に対して報知する報知出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、前記交通流監視装置では、マスターモードの車輛検出モジュールから受信した車輛検出度数の積算カウンタでカウントする。前記カウンタは、2乃至複数のカウンタから構成され、各カウンタは各々異なる時間幅の積算値をカウントする。これにより、早い変化を検出するフィルター(ハイパス)から、ゆっくりとした変化を検出するフィルター(ローパス)までを多段階に検出し、これを検出率として算出する。実施においては、トンネルにおける車輛の流入量、流出量のボリューム、変化量により、前記カウンタのファクターを設定する。
【0033】
交通流監視システムに係る本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、交通流の検出を行う交通流監視区間の道路に沿って設置された請求項4に記載の車輛検出モジュールを複数個備え、
前記交通流監視装置は、マスターモードの前記車輛検出モジュールから送信されてくる、前記各車輛検出モジュールが出力する車輛検出信号に基づき、交通流監視区間の道路の渋滞情報を報知することを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、交通流監視システムを構成する複数の車輛検出モジュールは、2乃至複数の近傍のセンサでグループ化され、各グループの単位をエリアとして定義する。各エリアは、危険区間の単位あるいは一定の距離間隔で定義される。各エリアでは、複数のセンサで構成されるが、それぞれのセンサの検出度数のうち最も危険度が高いものをエリアの検出度数として採用する。また、各エリアの複数のセンサは、故障時に各がバックアップとして機能する。
【0035】
交通流監視システムに係る本発明の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記報知出力手段は、前記交通流監視区間内又はそれよりも前方の道路地点に設置された電光表示板に前記渋滞情報を表示することを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、前記報知出力手段は、トンネルに進入する車輛に対し、トンネル進入前にトンネル内で渋滞が発生していること(危険発生)を報知する。トンネル内においては、カーブの手前、トンネル出口信号の前方等、停止車輛の目視が困難なエリアで、前方に渋滞(危険)の発生を報知する。実施例においては、トンネル入り口50m前、トンネル内5箇所に報知出力手段を設置している。
【0037】
交通流監視システムに係る本発明の第4の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、渋滞レベル判定手段により低い渋滞レベルと判定された車輛検出モジュールに対しては、前記判定時間を短く設定し、渋滞レベル判定手段により高い渋滞レベルと判定された車輛検出モジュールに対しては、前記判定時間を長く設定する判定時間設定手段を備えていることを特徴とする。
【0038】
この構成により、たとえ現実の渋滞状況と判定とが異なるような誤り判定がされたとしても、危険回避方向に判定がされるため、走行中の車輛の事故防止効果をより高めることができる。例えば、後述の実施例においては、渋滞レベル判定手段により低い渋滞レベルと判定された車輛検出モジュールに対しては、渋滞開始時の危険の発生をリアルタイムに伝えるために、判定時間幅を10秒〜15秒程度の範囲で設定した前記カウンタによる前記検出率をを用いている。また、渋滞レベル判定手段により高い渋滞レベルと判定された車輛検出モジュールに対しては、渋滞解消時の危険状況の解除を遅延させるために、時間幅を30秒〜60秒程度に設定した前記カウンタによる前記検出率を用いている。
【発明の効果】
【0039】
交通流監視システムの目的は、トンネルに入ろうとする、あるいはトンネルを通行中の車輛に対し、トンネル内の状況(危険な状況、安全な状況)を前期エリア毎に報知するものである。本発明により、後述する実施例におけるトンネルのような場合には、下記の効果を達成することができる。
【0040】
1.トンネル出口付近の信号から渋滞長が伸び、トンネル内のカーブ区間に渋滞末尾が至り、見通しの悪い地点で車輛が停止しているが、後続車が追突しなくなる。
【0041】
2.トンネル内を通行する車輛が突然の車輛トラブル、あるいは落下物による通行不能な状況発生により車輛が停止するが、事故が発生しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1に係る交通流監視システム2の構成図である。
【図2】図1の車輛検出モジュール3のセンサ部の構成を表すブロック図である。
【図3】図1の車輛検出モジュール3のマスター部の構成を表すブロック図である。
【図4】図1の交通流監視システム2における各信号のタイミングを表す図である。
【図5】渋滞判定処理部11による渋滞判定の一例を説明する図である。
【図6】道路情報表示板6による表示の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る交通流監視システム2の交通流監視装置5の構成を表す図である。
【図8】各車輛検出モジュールMにおいて検出される検出率R(ave10)(t)の時間変化の例である。
【図9】車輛検出モジュールMにおいて検出される検出率R(ave10)(t),R(ave30)(t)の時間変化の例である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0044】
図1は、本発明の実施例1に係る交通流監視システム2の構成図である。本実施例1の交通流監視システム2は、道路1上の車輛の流れを検出して、道路渋滞が発生した場合には、渋滞前方の車輛に渋滞の発生を報知するシステムである。この交通流監視システム2は、例えば、見通しの悪いトンネル内の交通流監視などに適用される。
【0045】
図1において、道路1は上下2車線の道路であり、図1中のWで示された区間が交通流監視区間である。交通流監視システム2は、道路1の側方に設けられた複数の車輛検出モジュール3と、双方向通信ケーブル4と、交通流監視装置5と、道路情報表示板6とを備えている。道路情報表示板6は、監視区間における交通流の判定結果を報知する道路情報報知装置である。
【0046】
車輛検出モジュール3は、水平方向に超音波を送波してその反射波(超音波エコー)によって車輛の検出を行うモジュールである。各車輛検出モジュール3は、センサ部3aとマスター部3bとを備えている。尚、各車輛検出モジュール3の道路1側にグレーで表された監視エリアZは、それぞれの車輛検出モジュール3が車輛の検出を行う領域である。
【0047】
双方向通信ケーブル4には、各車輛検出モジュール3及び交通流監視装置5が、それぞれのモジュール又は装置に内蔵された通信インタフェース20a,20b,10(図1、図2、図3参照)を介して接続されている。これら各モジュール又は装置は、双方向通信ケーブル4を介して相互に通信を行うことができる。
【0048】
交通流監視装置5は、各車輛検出モジュール3から出力される車輛検出に関する情報に基づいて、交通流監視区間W内で渋滞が発生しているか否かを自動判定する装置である。また、道路情報表示板6は、交通流監視区間Wより手前の道路1に設置されており、交通流監視装置5の判定結果に基づいて渋滞の発生を表示することで、道路1を走行する車輛に対して前方の渋滞の発生を報知する。
【0049】
また、交通流監視装置5は、通信インタフェース10、渋滞判定処理部11、報知出力部12を備えている。通信インタフェース10は、交通流監視装置5と各車輛検出モジュール3との間での通信を行うためのインタフェースである。渋滞判定処理部11は、各車輛検出モジュール3が車輛を検出した時間を積算し、積算結果に従って、渋滞発生の有無を判別する。また、報知出力部12は、渋滞判定処理部11が出力する判別を道路情報表示板6に送信する。これら交通流監視装置5の各部の動作の詳細に関しては後述する。尚、渋滞判定処理部11は本発明における積算手段、渋滞レベル判定手段、及び判定時間設定手段として機能する。
【0050】
この交通流監視システム2では、各車輛検出モジュール3は同様の構成を有しているが、各車輛検出モジュール3のうちの1つがマスターモード、他がスレーブモードとして機能する。マスターモード/スレーブモードの切り替えは、各車輛検出モジュール3に内蔵されたマスターモードスイッチ41(図3参照)によって行われる。マスターモードスイッチ41は、手動スイッチでもよいが、交通流監視装置5から遠隔操作可能な電子スイッチとしてもよい。マスターモードの車輛検出モジュール3は、すべての車輛検出モジュール3の車輛検知動作のタイミングを制御するとともに、すべての車輛検出モジュール3の車輛検知時間をそれぞれ集計して交通流監視装置5へ送信する機能を有する。
【0051】
図2は、図1の車輛検出モジュール3のセンサ部3aの構成を表すブロック図である。センサ部3aは、マスターモード/スレーブモードを問わず、すべての車輛検出モジュール3で機能する。車輛検出モジュール3のセンサ部3aは、通信インタフェース20a、同期信号受信部21、タイマ22、発信器23、送波アンプ24、超音波発信素子25、超音波受信素子27、受信アンプ28、キャリブレーション部29、A/D変換部30、車輛判定部31、ウィンドウ設定部32、検出信号積算部33、検出信号送信部34及び発信スイッチ36を備えている。
【0052】
通信インタフェース20aは、この車輛検出モジュール3と他の車輛検出モジュール3及び交通流監視装置5との間での通信を行うためのインタフェースである。同期信号受信部21は、通信インタフェース20aを介して伝送される同期信号を受信し、タイマ22のリセット及び起動を行うタイマ起動トリガを発生する。
【0053】
タイマ22は、タイマ起動トリガが入力されると、カウントを開始して、一定時間だけ送波制御信号を出力する。
【0054】
発信器23は、車輛検出のために発信する超音波の周波数の信号を発信する発信器である。発信スイッチ36は、発信器23からの出力のオン/オフを行うスイッチである。送波アンプ24は、発信器23が出力する信号を所定のゲイン(利得)で増幅する。超音波発信素子25は、送波アンプ24により増幅された信号で振動子を駆動し、監視エリアZに向けて超音波を発振する。超音波受信素子27は、監視エリアZから反射されて返ってくる反響波を受波し、電気信号(以下「受波信号」という。)に変換する素子である。受信アンプ28は、超音波受信素子27が出力する受波信号を所定のゲインで増幅するとともに、一定の帯域のみの周波数を切り出す。
【0055】
キャリブレーション部29は、送波アンプ24のゲインと受信アンプ28のゲインを最適値に設定する。キャリブレーション部29は、送波アンプ24,受信アンプ28のゲインをそれぞれ手動で設定するような構成であってもよいし、受信アンプ28の出力から自動的に各ゲインを調整するような構成としてもよい。自動調整とする場合には、例えば、監視エリアZ内の車輛通過位置にターゲットの車輛を置いた状態で超音波発信素子25から超音波を送波して、その超音波エコーを超音波受信素子27で受信し、受信アンプ28からの出力が所定の値となるように各ゲインの調整を行うようにすればよい。
【0056】
A/D変換部30は、受信アンプ28から出力される受波信号を、デジタル値に変換する。車輛判定部31は、デジタル化した受波信号に基づき、監視エリアZ内に車輛がそん財するか否かを判定する。ウィンドウ設定部32は、車輛判定部31が車輛の存在判定を行うための時間ウィンドウ(以下「エコー検出ウィンドウ」という。)を設定する。
【0057】
検出信号積算部33は、車輛判定部31により判定された車輛検出時間を積算する。この検出信号積算部33は、内部に積算カウンタとトリガカウンタの2つのカウンタを備えている。積算カウンタは、車輛検出時間を積算するためのカウンタであり、トリガカウンタは送波制御信号が出力された回数をカウントするカウンタである。
【0058】
検出信号送信部34は、検出信号積算部33で積算された車輛検出時間を、車輛検出信号として通信インタフェース20aを介してマスターモードの車輛検出モジュール3のマスター部3bへ送信する。
【0059】
図3は、図1の車輛検出モジュール3のマスター部3bの構成を表すブロック図である。車輛検出モジュール3のマスター部3bは、通信インタフェース20b、同期信号生成部40、マスターモードスイッチ41、タイマ42、検出信号受信部43、検出信号メモリ44、及び検出情報出力部45を備えている。
【0060】
同期信号生成部40は、各車輛検出モジュール3の超音波の発振・検出のタイミングを同期させる同期信号を一定の周期T毎に生成する。この同期信号は、通信インタフェース20bを介してスレーブモードの各車輛検出モジュール3に送信される。また、同期信号が出力される周期Tは、自由に設定することができるが、本実施例の場合、40msecとする。
【0061】
タイマ42は、同期信号生成部40で同期信号を生成するためのクロックを出力する。本実施例では、このクロックの間隔は400μsecとする。マスターモードスイッチ41は、タイマ42の出力をオン/オフするスイッチである。車輛検出モジュール3がマスターモードの場合には、マスターモードスイッチ41が導通状態、スレーブモードの場合には、非導通状態に設定される。
【0062】
検出信号受信部43は、スレーブモードの各車輛検出モジュール3から送信されてくる車輛検出信号を受信する。検出信号メモリ44は、検出信号受信部43が受信した車輛検出信号を、各車輛検出モジュール3ごとに記憶する。
【0063】
検出情報出力部45は、所定の時間毎に、検出信号メモリ44に保存・蓄積された各車輛検出モジュール3ごとの車輛検出信号を、交通流監視装置5に送信する。
【0064】
以上のように構成された本実施例の交通流監視システム2について、以下その動作を説明する。図4は、図1の交通流監視システム2における各信号のタイミングを表す図である。
【0065】
まず、図1の各車輛検出モジュール3のうち、1つをマスターモードとし、その他をスレーブモードに設定する。本実施例では、マスターモード/スレーブモードの設定は、交通流監視装置5から設定切換信号を各車輛検出モジュール3に出力し、設定切換信号を受信した各車輛検出モジュール3が自己の動作モードを設定するか又は各車輛検出モジュール3において手動で動作モードを設定することによって行われることとする。スレーブモードに設定された車輛検出モジュール3では、マスターモードスイッチ41が非導通(オフ)状態となる。一方、マスターモードに設定された車輛検出モジュール3では、マスターモードスイッチ41が導通(オン)状態となる。
【0066】
時刻tにおいて、マスターモードの車輛検出モジュール3のマスター部3b内の同期信号生成部40が、パルス状の同期信号を出力する(図4(a)参照)。同期信号は、通信インタフェース20bから双方向通信ケーブル4を通して各車輛検出モジュール3のセンサ部3aに送信される。当然、当該マスターモードの車輛検出モジュール3のセンサ部3a内のタイマ22にも送信される。各車輛検出モジュール3内の同期信号受信部21は、同期信号を受信するとそれをタイマ22に送信する。
【0067】
各車輛検出モジュール3内のタイマ22は、同期信号を受信すると一定の時間幅Tのパルス(時間区間t〜tのパルス)からなる送波制御信号を、発信スイッチ36、車輛判定部31、検出信号積算部33及び検出信号送信部34に出力する(図4(b)参照)。送波制御信号の時間幅Tは自由に設定してよいが、本実施例ではT=400μsecに設定されている。
【0068】
発信スイッチ36は、送波制御信号が出力される期間だけ、発信器23の出力をオン状態とする。これにより、発信器23から所定の周波数の発振信号が送波アンプ24に出力され、送波アンプ24はこれを増幅して超音波発信素子25に出力し、超音波発信素子25は、監視エリアZに超音波を送波する。送波される超音波のタイミングは、図4(c)に示したようになる。
【0069】
監視エリアZに送波された超音波は、監視エリアZ内の反射物により反射され、その反響が超音波受信素子27で受波される。超音波受信素子27は、検出用の超音波を受波すると、その強度に比例する受波信号を受信アンプ28に出力する(図4(d)参照)。
【0070】
例えば、図4(d)において、反射ピークAは、道路1の脇に設置された柵又は車道脇を通行する自転車などによる反射により生じるピークである。反射ピークBは、車道の手前の車線(以下「監視車線」という。)を通過する車輛による反射により生じるピークである。反射ピークCは、車道の向こう側の対向車線を通過する車輛による反射により生じるピークである。尚、反射ピークXは超音波発信素子25から発振された超音波が直接入射することによって生じたピークである。
【0071】
受信アンプ28は、超音波発信素子25から超音波が送波される時間区間を除く時間区間において、超音波受信素子27が出力する受波信号を増幅するとともに、フィルタリングすることで所定の周波帯の成分(すなわち、発振した超音波の周波数を中心とする周波数成分)に波形整形する。A/D変換部30は、増幅された受波信号をA/D変換し、車輛判定部31に出力する。
【0072】
車輛判定部31は、A/D変換部30から入力されるデジタル化された受波信号に基づいて、監視エリアZに車輛がいるか否かを判定する。ここで、車輛判定部31は、デジタル化された受波信号のうち、エコー検出ウィンドウ内の信号値が閾値以上か否かを判定する。そして、閾値以上の信号があれば車輛が存在するとして検出信号積算部33に検出信号を出力する。
【0073】
エコー検出ウィンドウは、図4(e)に示したように、時間区間t〜tのウィンドウである。すなわち、時刻tは、車輛検出モジュール3に近い側の監視車線の端で反射された超音波エコーが超音波受信素子27に入波する時刻、時刻tは、車輛検出モジュール3に遠い側の監視車線の端で反射された超音波エコーが超音波受信素子27に入波する時刻である。このようなエコー検出ウィンドウを設けて、このウィンドウ内のみで車輛の有無を判定することで、側道を通過する歩行者、自転車、自動二輪車からの超音波エコー、側道に設置されたガードレールや鉄柵からの超音波エコー、監視車線の対向車線を通過する車輛からの超音波エコー等の外乱要因を除去し、監視車線上に車輛が存在するか否かを正確に判定することが可能となる。
【0074】
時間区間t〜tは、車輛検出モジュール3から監視車線までの距離と監視車線の幅によって適宜設定される。例えば、車輛検出モジュール3から監視車線までの距離を0.7m、車線幅を5.5m、音速を343.7m/secとした場合、t=4msec、t=32msecのように設定する。
【0075】
また、車輛判定部31が閾値判定する際の閾値は、図4(d)の点線で示したように、時間と共に減衰する曲線とされる。この閾値曲線は、超音波の到達距離による減衰曲線に比例した曲線とされている。
【0076】
具体的には、以下のようになる。音源から音響パワーWの超音波が放射されたとき、距離rの点の音圧pは、式(1)のように表される。
【0077】
【数1】

ここで、ρは空気の密度、cは音速、Dは音源の受音点方向への指向性利得である。D/4πrは、音波が空気中を広がるための音圧の減衰を表す。また、βは、減衰定数とよばれ、気体の断熱圧縮、空気の粘性や摩擦により熱に変換されて失われるエネルギーの割合に関係する量である。空気の場合、超音波の周波数fが100kHz付近では、
【0078】
【数2】

となる。従って、閾値曲線Th(r)は、超音波の式(1)に比例する曲線に設定すればよく、式(3a)のようになる。
【0079】
【数3】

ここで、Cは定数、cは音速、tは時間である。
【0080】
車輛判定部31が検出信号積算部33に検出信号を出力すると、検出信号積算部33は内部の積算カウンタの値を1だけ増加させる。
【0081】
以上のような動作により、1サイクル分の車輛検出動作が終了する。この車輛検出動作サイクルを1サイクル繰り返す毎に、検出信号積算部33の内部のトリガカウンタは1ずつ増加していく。カウンタ値が一定の値Nまで達すると、検出信号積算部33は、その時点の積算カウンタの値(車輛検出信号)を出力し、その後、積算カウンタの値とトリガカウンタの値を0にリセットする。これにより、検出信号積算部33は、一定の時間間隔T(=N)で、各時間間隔Tの時間帯内で車輛が検出された積算度数(車輛検出度数)を出力することになる(積算カウンタの値の値をNとすれば、実際の車輛検出時間はNにより簡単に換算できる)。
【0082】
尚、積算度数を決めるカウント値Nの値は適宜決めることができる。例えば、T=40msec、1回の積算時間を1秒とすれば、N=1/0.04=25となる。
【0083】
検出信号積算部33は、車輛検出信号を検出信号送信部34に出力し、検出信号送信部34はその車輛検出信号を通信インタフェース20a及び双方向通信ケーブル4を介してマスターモードの車輛検出モジュール3のマスター部3bへ送信する。このとき、検出信号送信部34が車輛検出信号の送信を行うタイミングは、図4(f)に示したように、超音波発信素子25から超音波が発振されている期間内とされる(図4(f)では、時間区間t〜tの間)。このように、超音波発信素子25から超音波が発振されている期間内に双方向通信ケーブル4での通信を行うようにすることで、超音波エコーの検出中に、検出信号に通信ノイズが重畳することを避けることができ、超音波エコーの検出中のS/Nが改善される。
【0084】
マスターモードの車輛検出モジュール3のマスター部3bにおいて、検出信号受信部43は、各車輛検出モジュール3のセンサ部3a(自己のセンサ部3aも含む。)から伝送される車輛検出信号を受信し、検出信号メモリ44に出力する。検出信号メモリ44は、それぞれの車輛検出モジュール3により計測された車輛検出信号を記憶する。そして、検出情報出力部45は、検出信号メモリ44に記憶された各車輛検出モジュール3の車輛検出度数を、一定の時間(例えば、10秒)ごとに合計して合計車輛検出度数のデータを交通流監視装置5へ送信する。この送信のタイミングについても、図4(g)に示したように、超音波発信素子25から超音波が発振されている期間内とされる(図4(g)では、時間区間t〜tの間)。
【0085】
交通流監視装置5では、マスターモードの車輛検出モジュール3から各車輛検出モジュール3で検出された合計車輛検出度数のデータが送信されてくると、渋滞判定処理部11は、それらの合計車輛検出度数に基づいて交通流監視区間Wにおける渋滞の判定を行う。
【0086】
本実施例の交通流監視装置5においては、具体的には、渋滞判定処理部11は、以下のようにして渋滞判定を行う。まず、k番目の車輛検出モジュール3(以下「車輛検出モジュールM」という。)の時刻tにおける合計車輛検出度数をTs,k(t)とする。渋滞判定処理部11は、時刻tにおいて車輛検出モジュールMの監視エリアZにおける渋滞判定を行う場合、時刻t−t〜tまでの合計車輛検出度数Ts,k(t)の時間積算値STs,k(t)を次式(4)により計算する。ここで、tは判定時間である。
【0087】
【数4】

【0088】
尚、渋滞判定処理部11は、検出率STs,k(t)/tを計算するようにしてもよい。
【0089】
そして、渋滞判定処理部11は、時間積算値STs,k(t)が所定の渋滞発生開始閾値STを超えた場合に、その監視エリアZにおいて「渋滞」が発生したと判定する。更に、混雑度判定閾値ST(<ST)に対して、ST<STs,k(t)<STの場合には「混雑」、STs,k(t)<STの場合には「平常」と判定する。一方、「渋滞」と判定されている監視エリアZにおいて、前記時間積算値STs,k(t)が所定の渋滞解消閾値STを下回った場合、その監視エリアZにおいて「渋滞」が解消されたと判定する。ここで、渋滞解消閾値STは渋滞発生開始閾値STよりも小さい値(ST<ST)に設定される。
【0090】
渋滞発生開始閾値ST、渋滞解消閾値ST、及び混雑度判定閾値STは適宜実態に合わせて自由に変更可能であるが、具体例を示せば、例えば、ST/tを20%(0.2)、ST/tを35%(0.35)、ST/tを50%(0.5)のように設定できる。
【0091】
このように、時間積算値STs,k(t)を用いて渋滞判定を行うことで、各車輛の減速・加速の揺らぎにより頻繁に渋滞と渋滞解消とが切り替わる事態を避けることができる。また、渋滞解消閾値STを渋滞発生開始閾値STよりも小さい値に設定することで、渋滞であるにもかかわらず誤って渋滞が解消されたと判定される事態を避けることができる。
【0092】
例えば、図1のように交通流監視区間W内に車輛検出モジュールM〜Mが設置されている場合を考える。時刻tにおいて、各車輛検出モジュールM〜Mの時間積算値STs,1(t)〜STs,9(t)が図5(a)の状態であったとする。この場合、いずれの時間積算値も渋滞発生開始閾値STよりも小さいので、渋滞は発生していないと判定される。
【0093】
更に、渋滞判定処理部11は、判定時間tを可変として、時間積算値STs,k(t)が渋滞解消閾値STよりも小さいと判定された車輛検出モジュールMに対しては、判定時間tを短く設定し、渋滞発生開始閾値STより大きいと判定された車輛検出モジュールMに対しては、判定時間tを長く設定するようにしてもよい。例えば、時間積算値STs,k(t)が渋滞解消閾値STよりも小さい時には、渋滞開始時の危険の発生を各車輛にリアルタイムに伝えるため、判定時間tを10秒〜15秒程度の短い時間に設定する。また、時間積算値STs,k(t)が渋滞発生開始閾値STより大きい時には、渋滞解消時の危険状況の解除を遅延させるために、時間幅を30秒〜60秒程度の長い時間に設定する。これにより、フェイルセーフが働くため、走行中の車輛の事故防止効果をより高めることができる。
【0094】
時刻tからtに移り、時刻tにおいて、各車輛検出モジュールM〜Mの時間積算値STs,1(t)〜STs,9(t)が図5(b)の状態に変化したとする。この場合、車輛検出モジュールM〜Mの時間積算値STs,6(t)〜STs,9(t)が渋滞発生開始閾値STを超えたため、車輛検出モジュールM〜Mに対応する監視エリアZで渋滞が発生したと判定される。
【0095】
時刻tからtに移り、時刻tにおいて、各車輛検出モジュールM〜Mの時間積算値STs,1(t)〜STs,9(t)が図5(c)の状態に変化したとする。この場合、車輛検出モジュールM,Mの時間積算値STs,6(t),STs,7(t)は渋滞解消閾値STを下回ったため、車輛検出モジュールM,Mに対応する監視エリアZの渋滞は解消されたと判定される。しかし、車輛検出モジュールM,Mの時間積算値STs,8(t),STs,9(t)は渋滞解消閾値STよりも依然として大きいため、車輛検出モジュールM,Mに対応する監視エリアZの渋滞は解消されていないと判定される。
【0096】
時刻tからtに移り、時刻tにおいて、各車輛検出モジュールM〜Mの時間積算値STs,1(t)〜STs,9(t)が図5(d)の状態に変化したとする。この場合、すべての車輛検出モジュールM〜Mの時間積算値STs,1(t)〜STs,9(t)が渋滞解消閾値STを下回ったため、全区間の渋滞は解消されたと判定される。
【0097】
以上のようにして、渋滞判定処理部11は渋滞の判定を行うと、報知出力部12はその結果を、道路情報表示板6に送信する。道路情報表示板6においては、検出率に応じ3段階(「平常」、「混雑」、「渋滞」)で情報出力する。道路情報表示板6は、例えば、図6のように、各車輛検出モジュール3の位置する道路1上の地点とそれに対する渋滞レベルとを対応させた渋滞情報を表示する。
【0098】
図6の道路情報表示板6は電光掲示板により構成されている。電光掲示板の表示面の左側には、各地点の交通渋滞の情報を図形として表示する渋滞地点表示領域50と、前方の渋滞情報の警告を文字表示する警告表示領域51とを有する。渋滞地点表示領域50には、2本の平行線52,52が前方の道路1を表しており、この平行線52,52に挟まれた9つの矩形53が、各車輛検出モジュール3の位置する道路1上の地点の渋滞レベルを色により表す指示標である。「渋滞」(検出率50%以上)の地点では矩形53は赤色で表示され、「混雑」(検出率20〜50%)の地点では矩形53は黄色で表示され、「平常」(検出率20%未満)の地点では矩形53は緑色で表示される。何れかの地点で渋滞が発生した場合には、警告表示領域51に、「この先渋滞あり 追突注意」という警告文字が表示される。これにより、交通流監視区間W内の渋滞情報が、交通流監視区間Wよりも前方の道路地点の車輛に対して報知される。
【0099】
尚、本実施例では道路情報表示板6を交通流監視区間W内の前方のみに設置した例を示したが、道路情報表示板6は、交通流監視区間W内にも設置しても良い。これにより、交通流監視区間W内の道路地点の車輛に対しても、渋滞情報を報知することができる。
【実施例2】
【0100】
実施例2では、交通流監視装置5の他の構成例を示す。尚、本実施例の交通流監視システム2の交通流監視装置5以外の構成は、実施例1で説明したものと同様であるため、説明は省略する。
【0101】
図7は、本発明の実施例2に係る交通流監視システム2の交通流監視装置5の構成を表す図である。交通流監視装置5は、通信インタフェース10、渋滞判定処理部11、及び報知出力部12を備えており、これは図1の場合と同様である。本実施例においては、
渋滞判定処理部11は、車輛検出信号記憶部60、度数累算部61、及び渋滞レベル判定部62を備えている。
【0102】
車輛検出信号記憶部60は、各車輛検出モジュール3から送信されてくる各時刻の車輛検出信号の度数(車輛検出度数)を記憶する。本実施例では、車輛検出信号記憶手段60は、3つのシフトレジスタ60a,60b,60cにより構成されている。各シフトレジスタ60a,60b,60cは、各車輛検出モジュール3に対応して10段のレジスタで構成されている。すなわち、車輛検出モジュール3の数をN(図1の例では、N=9)とすれば、各シフトレジスタ60a,60b,60cは10段のシフトレジスタを並列にN個備えている。また、各シフトレジスタ60a,60b,60cは、この順番で直列に接続されている。
【0103】
度数累算部61は、車輛検出信号記憶部60に記憶された各車輛検出モジュール3で検出された車輛検出度数を所定の判定時間だけ加算する。本実施例における度数累算部61は、4つの累算器61a,61b,61c,61dにより構成されている。累算器61a,61b,61cは、それぞれ、シフトレジスタ60a,60b,60cの各段の合計車輛検出時間を、車輛検出モジュール3ごとに累算する。また、累算器61dは、累算器61a,61b,61cにより得られた車輛検出モジュール3ごとの累算値を、車輛検出モジュール3ごとに更に累算する。
【0104】
渋滞レベル判定部62は、各車輛検出モジュール3のそれぞれについて、判定時間内における車輛検出度数の累算値(以下「累計検出度数」という。)又はその累計検出度数を判定時間全体の移動平均化した検出率に従って、渋滞レベルを判定し出力する。渋滞レベル判定部62は、閾値設定部62a、渋滞発生判定部62b、及び渋滞解除判定部62cを備えている。閾値設定部62aは、渋滞判定のための閾値を記憶し、渋滞発生判定部62b及び渋滞解除判定部62cに対して当該判定閾値を設定する。渋滞発生判定部62bは、検出度数又は検出率に従って、渋滞の発生レベルを判定する。渋滞解除判定部62cは、検出度数又は検出率に従って、渋滞の解除レベルを判定する。
【0105】
報知出力部12は、渋滞発生判定部62b及び渋滞解除判定部62cの判定結果に従って、道路情報表示板6に対して、各道路区間の渋滞レベルを出力する。
【0106】
以上のような構成の本実施例に係る交通流監視装置5の動作を以下説明する。
【0107】
実施例1で説明したとおり、各車輛検出モジュールM(k=1,…,N)からは、一定の時間間隔T=Nで車輛検出度数Ts,k(t)(tは時刻)が送信されてくる。
【0108】
交通流監視装置5の通信インタフェース10は、時間間隔Tで送信されてくるこれらN個の車輛検出度数Ts,k(t)をシフトレジスタ60aに逐次入力する。シフトレジスタ60aは、車輛検出度数Ts,k(t)を逐次シフトさせながら記憶する。シフトレジスタ60aは10段であるため、時間t〜t−10Tの間の車輛検出度数Ts,k(t)(k=1,…,N)を記憶することができる。更に、シフトレジスタ60aには10段のシフトレジスタ60b,60cが直列接続されており、これら3つのシフトレジスタ60a,60b,60cにより、時間t〜t−30Tの間の車輛検出度数Ts,k(t)(k=1,…,N)が記憶される。
【0109】
累算器61aは、シフトレジスタ60aに記憶された車輛検出度数Ts,k(t)を累算して累計検出度数STs,k(10)(t)を算出し、渋滞発生判定部62bに出力する。すなわち、累計検出度数STs,k(10)(t)は以下のように表される。
【0110】
【数5】

【0111】
例えば、T=1secであれば、累計検出度数STs,k(10)(t)は車輛検出度数Ts,k(t)の10秒間の累計値となる。
【0112】
累算器61bは、シフトレジスタ60bに記憶された車輛検出度数Ts,k(t)を累算し、累算器61cは、シフトレジスタ60cに記憶された車輛検出度数Ts,k(t)を累算する。更に、累算器61dは、累算器61a,61b,61cにより出力される各累計値を累算して累計検出度数STs,k(30)(t)を算出し、渋滞解除判定部62cに出力する。すなわち、累計検出度数STs,k(30)(t)は以下のように表される。
【0113】
【数6】

【0114】
例えば、T=1secであれば、累計検出度数STs,k(10)(t)は車輛検出度数Ts,k(t)の30秒間の累計値となる。
【0115】
尚、本実施例においては、一例として、累計検出度数STs,k(10)(t)及びSTs,k(30)(t)を使用しているが、これらの累計度数の累計回数は、実情に応じて適宜変更してもよい。
【0116】
閾値設定部62aには、混雑判定閾値Rcrowd及び渋滞判定閾値Rjam(>Rcrowd)が記憶されている。
【0117】
渋滞発生判定部62bは、それぞれの車輛検出モジュールM(k=1,…,N)ごとに、累計検出度数STs,k(10)(t)を累算時間10Tで割って検出率R(ave10)(t)を算出し、この検出率R(ave10)(t)と混雑判定閾値Rcrowd及び渋滞判定閾値Rjamとを比較する。そして、R(ave10)(t)<Rcrowdの場合には「平常」、Rcrowd≦R(ave10)(t)<Rjamの場合には「混雑」、Rjam≦R(ave10)(t)の場合には「渋滞」と判定し、その判定結果L(k)(t)を報知出力部12に出力する。ここで、L(k)(t)=0のときは「平常」、L(k)(t)=1のときは「混雑」、L(k)(t)=2のときは「渋滞」とする。
【0118】
渋滞解除判定部62cは、それぞれの車輛検出モジュールM(k=1,…,N)ごとに、累計検出度数STs,k(30)(t)を累算時間30Tで割って検出率R(ave30)(t)を算出し、この検出率R(ave30)(t)と混雑判定閾値Rcrowd及び渋滞判定閾値Rjamとを比較する。そして、R(ave30)(t)<Rcrowdの場合には「平常」、Rcrowd≦R(ave30)(t)<Rjamの場合には「混雑」、Rjam≦R(ave30)(t)の場合には「渋滞」と判定し、その判定結果L(k)(t)を報知出力部12に出力する。ここで、L(k)(t)=0のときは「平常」、L(k)(t)=1のときは「混雑」、L(k)(t)=2のときは「渋滞」とする。
【0119】
【数7】

【0120】
報知出力部12は、車輛検出モジュールM(k=1,…,N)のそれぞれに対して、前時点の渋滞判定値L(k)(t−T)、渋滞発生判定部62bが出力する判定結果L(k)(t)、及び渋滞解除判定部62cが出力する判定結果L(k)(t)に基づいて、(表1)のテーブルに従って、現時点の渋滞判定値L(k)(t)を決定し、道路情報表示板6へ出力する。ここで、L(k)(t)=0のときは「平常」、L(k)(t)=1のときは「混雑」、L(k)(t)=2のときは「渋滞」とする。
【0121】
【表1】

【0122】
すなわち、前時点の渋滞判定値L(k)(t−T)が「平常」(=0)の場合において、渋滞発生判定部62bが出力する判定結果L(k)(t)が「混雑」(=1)のときに、車輛検出モジュールMに対する渋滞判定値L(k)(t)を「混雑」(=1)に変更する。また、前時点の渋滞判定値L(k)(t−T)が「平常」(=0)又は「混雑」(=1)の場合において、渋滞発生判定部62bが出力する判定結果L(k)(t)が「渋滞」(=2)のときには、車輛検出モジュールMに対する渋滞判定値L(k)(t)を「渋滞」(=2)に変更する。
【0123】
一方、前時点の渋滞判定値L(k)(t−T)が「渋滞」(=2)の場合において、渋滞発生判定部62bが出力する判定結果L(k)(t)が「混雑」(=1)又は「平常」(=0)で且つ渋滞解除判定部62cが出力する判定結果L(k)(t)が「混雑」(=1)のときに、渋滞判定値L(k)(t)を「混雑」(=1)に変更する。また、前時点の渋滞判定値L(k)(t−T)が「渋滞」(=2)又は「混雑」(=1)の場合において、渋滞発生判定部62bが出力する判定結果L(k)(t)が「平常」(=0)で且つ渋滞解除判定部62cが出力する判定結果L(k)(t)が「平常」(=0)のときに、渋滞判定値L(k)(t)を「平常」(=0)に変更する。
【0124】
この場合、安全性を確保するために、交通量の増加時(平常→混雑→渋滞への変化方向)は、渋滞発生判定部62bが出力する判定結果L(k)(t)が、渋滞解除判定部62cが出力する判定結果L(k)(t)よりも優先され、交通量の減少時(渋滞→混雑→平常への変化方向)は、上記L(k)(t)よりもL(k)(t)が優先される。
【0125】
図8に、各車輛検出モジュールMにおいて検出される検出率R(ave10)(t)の時間変化の例を示す。この例では、図1に示したように車輛検出モジュールM〜Mが配置されており、実施例においては、車輛検出モジュールMの進行方向前方に信号機が存在する。信号機が赤になると、まず、車輛検出モジュールMから出力される検出率R(ave10)(t)が上昇して極大(ピーク)となり、信号機が青になると共に徐々に減少していく。車輛検出モジュールMに遅れて、車輛検出モジュールM,M,M,M,…の順に遅れてピークが生じるが、信号機から離れるに従って、ピーク値は小さくなって行き、200m程度で一定速度(ノロノロ運転)の渋滞状態となる。渋滞長は、トンネルへの車両流入量と車両流出量の関係で決まる。加えて、実施例においては、トンネルは内部でSの字にカーブしており、車両流入量が一定値を超えた場合に、このカーブ付近においても車両走行速度が低下し自然渋滞が発生する。
【0126】
図9に、車輛検出モジュールMにおいて検出される検出率R(ave10)(t),R(ave30)(t)の時間変化の例を示す。渋滞が発生すると、まず検出率R(ave10)(t)が立ち上がり、それに遅れて検出率R(ave30)(t)が立ち上がる。また、立ち上がり方も、検出率R(ave10)(t)の方が、累計回数が少ないために急峻であり、検出率R(ave30)(t)の方が緩やかである。一方、立ち下がりも、検出率R(ave10)(t)よりも検出率R(ave30)(t)の方が遅れて且つ緩やかである。従って、渋滞発生の検出は、検出率R(ave10)(t)を用いて閾値判定により行い、渋滞解除の判定は検出率R(ave30)(t)を用いて閾値判定により行う。尚、閾値Rcrowd,Rjamについては渋滞発生の検出と渋滞解除の検出とで同じ閾値を使用している。
【0127】
例えば、図9の例では、時刻tにおいて、検出率R(ave10)(t)が混雑判定閾値Rcrowdを越えるため、時刻tにおいて渋滞判定値L(9)(t)は「平常」(=0)から「混雑」(=1)に変更される。また、時刻tにおいて、検出率R(ave10)(t)が渋滞判定閾値Rjamを越えるため、時刻tにおいて渋滞判定値L(9)(t)は「混雑」(=1)から「渋滞」(=2)に変更される。
【0128】
一方、渋滞解除のほうは、時刻tにおいて、検出率R(ave30)(t)が渋滞判定閾値Rjamを下回った時点において、はじめて渋滞判定値L(9)(t)は「渋滞」(=2)から「混雑」(=1)に解除される。また、時刻tにおいて、検出率R(ave30)(t)が混雑判定閾値Rcrowdを下回った時点において、はじめて渋滞判定値L(9)(t)は「混雑」(=1)から「平常」(=0)に解除される。
【0129】
このように、渋滞解除の判定に使用する検出率の累算回数を、重訂発生の判定に使用する検出率の累算回数よりも大きくすることで、誤った渋滞解除の判定がされることが防止され、交通の安全が図られる。
【符号の説明】
【0130】
1 道路
2 交通流監視システム
3,M 車輛検出モジュール
3a センサ部
3b マスター部
4 双方向通信ケーブル
5 交通流監視装置
6 道路情報表示板
10 通信インタフェース
11 渋滞判定処理部
12 報知出力部
W 交通流監視区間
Z 監視エリア
20a,20b 通信インタフェース
21 同期信号受信部
22 タイマ
23 発信器
24 送波アンプ
25 超音波発信素子
27 超音波受信素子
28 受信アンプ
29 キャリブレーション部
30 A/D変換部
31 車輛判定部
32 ウィンドウ設定部
33 検出信号積算部
34 検出信号送信部
36 発信スイッチ
40 同期信号生成部
41 マスターモードスイッチ
42 タイマ
43 検出信号受信部
44 検出信号メモリ
45 検出情報出力部
50 渋滞地点表示領域
51 警告表示領域
52 平行線
53 矩形
60 車輛検出信号記憶部
60a,60b,60c シフトレジスタ
61 度数累算部
61a,61b,61c,61d 累算器
62 渋滞レベル判定部
62a 閾値設定部
62b 渋滞発生判定部
62c 渋滞解除判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の側方に設置され、道路側方から道路方向に向けて水平方向に超音波パルスを送波する超音波発振器と、
前記超音波発信器から超音波パルスが送波された超音波のエコーを経時的に検出する超音波センサと、
前記超音波発振器から超音波パルスが送波された時点を基準とする経過時間をエコー時間tとした場合に、検出対象の車線の最近端からのエコーが検出される第1のエコー時間tから、検出対象の車線の最遠端からのエコーが検出される第2のエコー時間t(>t)までの時間区間[t,t](以下「エコー検出ウィンドウ」という。)において、前記超音波センサで検出されるエコーの強度が検出下限レベル以上となった場合に車輛検出信号を出力する車輛判定手段と、
を備えた車輛検出モジュール。
【請求項2】
前記第2のエコー時間tからその2倍のエコー時間2tまでの区間で、かつ当該区間(t,2t)の間に固定反射点が存在する場合にはその固定反射点より前の適宜な時点tを最遠検出端点とし、
前記最遠検出端点におけるエコーのS/N比が物体検出の判別可能限界値となるように、前記超音波発振器の送波強度及び/又は前記超音波センサのエコー受信感度が調節されていることを特徴とする請求項1記載の車輛検出モジュール。
【請求項3】
外部との通信を行う第1の通信インタフェースと、
前記第1の通信インタフェースを介して外部から入力される前記同期信号に従って、前記超音波発振器からの超音波パルスの送波タイミングを同期制御する同期制御手段と、
前記車輛判定手段が出力する前記車輛検出信号を、前記第1の通信インタフェースを介して外部に送信する検出信号送信手段と、
を備え、
前記検出信号送信手段は、前記超音波発振器により超音波パルスの送波が行われている時間帯に前記車輛検出信号を送信することを特徴とする請求項1又は2記載の車輛検出モジュール。
【請求項4】
自己の動作状態をマスターモード又はスレーブモードの何れかに設定する動作モード設定手段と、
外部との通信を行う第2の通信インタフェースと、
動作状態がマスターモードの場合、前記第2の通信インタフェースを介して前記同期信号を出力する同期信号発生手段と、
動作状態がマスターモードの場合、前記第2の通信インタフェースを介して自己又は他の車輛検出モジュールの前記第1の通信インタフェースから送信されてくる前記車輛検出信号を受信する検出信号受信手段と、
前記検出信号受信手段により受信される前記各車輛検出信号を記憶する検出信号記憶手段と、
所定の時間毎に、前記検出信号記憶手段に記憶された各車輛検出信号を、データ送信信号として前記第2の通信インタフェースを介して外部へ出力する検出情報出力手段と、
を備え、
前記同期制御手段は、マスターモードの車輛検出モジュールの前記同期信号発生手段から送信され前記第1の通信インタフェースを介して入力される前記同期信号に従って、前記超音波発振器からの超音波パルスの送波の同期制御を行うものであり、
前記検出信号送信手段は、前記車輛判定手段が出力する前記車輛検出信号を、前記第1の通信インタフェースを介してマスターモードの車輛検出モジュールの前記検出信号受信手段に送信するものであること
を特徴とする請求項3記載の車輛検出モジュール。
【請求項5】
交通流の検出を行う交通流監視区間の道路に沿って設置された請求項3に記載の車輛検出モジュールを複数個備えるとともに、
前記各車輛検出モジュールから送信されてくる車輛検出信号に基づき、交通流監視区間の道路の渋滞情報を判定する交通流監視装置と、判定結果を報知する道路情報報知装置と、
を備えた交通流監視システムであって、
前記交通流監視装置は、
前記各車輛検出モジュールのそれぞれについて、当該車輛検出モジュールから送信された車輛検出信号の度数を、所定の判定時間だけ累算する度数累算手段と、
前記各車輛検出モジュールのそれぞれについて、前記度数累算手段により出力される累算された前記車輛検出信号の度数(以下「累計検出度数」という。)又はその累計検出度数を判定時間全体の移動平均化した検出率に従って、2乃至複数の段階の渋滞レベルを出力する渋滞レベル判定手段と、を備え、
前記道路情報報知装置は、前記各車輛検出モジュールの位置する道路上の地点と、それに対する前記渋滞レベルとを対応させた渋滞情報を、前記交通流監視区間内又はそれよりも前方の道路地点の車輛に対して報知することを特徴とする交通流監視システム。
【請求項6】
交通流の検出を行う交通流監視区間の道路に沿って設置された請求項4に記載の車輛検出モジュールを複数個備え、
前記交通流監視装置は、マスターモードの前記車輛検出モジュールから送信されてくる、前記各車輛検出モジュールが出力する車輛検出信号に基づき、交通流監視区間の道路の渋滞レベルを出力することを特徴とする請求項5記載の交通流監視システム。
【請求項7】
前記道路情報報知装置は、前記交通流監視区間内又はそれよりも前方の道路地点に設置された電光表示板であることを特徴とする請求項5又は6記載の交通流監視システム。
【請求項8】
渋滞レベル判定手段により低い渋滞レベルと判定された車輛検出モジュールに対しては、前記判定時間を短く設定し、渋滞レベル判定手段により高い渋滞レベルと判定された車輛検出モジュールに対しては、前記判定時間を長く設定する判定時間設定手段を備えていること
を特徴とする請求項5乃至7の何れか一記載の交通流監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−231317(P2010−231317A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75850(P2009−75850)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(305001928)光陽無線株式会社 (1)
【Fターム(参考)】