説明

車輪取り付け補助装置

【課題】 容易に規定トルクで車輪を取り付けることができるようにすることを目的とする。
【解決手段】 車輪取り付け補助装置において、駆動手段は、各車輪を独立に駆動する。駆動制御手段は、駆動手段を制御する。駆動制御手段は、所定の指示に応じて駆動装置を駆動し、該駆動されている車輪のトルク検出手段により検出されたトルクが所定値以上になった場合に、駆動手段による該車輪の駆動を停止する。駆動手段は、車輪を締結する締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向と逆方向に車輪を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪取り付け補助装置、特に、車体に装着される車輪の取り付けを容易に行う技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
通常タイヤの取り付けは、ナットやボルトなどトルクをかけることにより締結を行う締結部材により、ホイールをハブに締結することにより行う。このタイヤを取り付けるためのナットやボルトなどの締結部材には、それぞれ規定トルクがある。このため、タイヤを取り付けるためのナットやボルトなどの締結部材を締結する場合には、トルクレンチなど締め付けトルクを管理することができる締結用具が必要となる。また、例えば、特許文献1には隣り合うホイールナットに嵌合し、一方を回転駆動するホイールナット用脱着機が開示されており、また、特許文献2にはナット数の変更に伴って複数のナットランナが円周上から離間する位置に退避可能なナットランナを備えたタイヤ組み付け装置が開示されており、さらに、特許文献3には予め回転駆動軸に設けたクラッチ機構にナットの締付け力を設定して回転体を回転させてナットを締付けるタイヤ用チューブワッシャ・ナットの締付け方法について開示されている。
【特許文献1】特開平5−286302号公報
【特許文献2】特開2000−210824号公報
【特許文献3】特開2002−254333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このようなトルクレンチなどの締結用具を用意することは、タイヤを取り付ける者にコストの負担を課してしまうだけでなく、このような締結用具を車両に常時積んでいなければならず、煩雑である。また、仮にトルクレンチなどの締結用具があったとしても、規定トルクがわからなければその規定トルクを調べなければならず、やはり煩雑というほかない。また、特許文献1に記載するようなホイールナット用脱着機には、ナットを規定トルクで締結するための具体的手段が記載されておらず、特許文献2に記載するタイヤ組み付け装置では、やはりタイヤを取り付ける者にコストの負担を課してしまうだけでなく、このようなタイヤ組み付け装置を車両に積むことは非常に困難であり、また、特許文献3に記載するタイヤ用チューブワッシャ・ナットの締付け方法についてもナットの締結力を設定したクラッチ機構を回転駆動軸に設けたものを別途用意しなければならなかった。
【0004】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、車輪の取り付けを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車輪取り付け補助装置は、各車輪を独立に駆動する駆動手段と、駆動手段を制御する駆動制御手段と、車輪に生じるトルクを検知するトルク検知手段と、を有する。駆動制御手段は、所定の指示に応じて駆動装置を駆動し、該駆動されている車輪のトルク検出手段により検出されたトルクが所定値以上になった場合に、駆動手段による該車輪の駆動を停止する。ここで「車輪」とは、タイヤ部分とホイール部分の一方だけでもよく、両方が備わっていてもよいものとする。「各車輪を独立に駆動する駆動手段」とは、例えばインホイールモータのように各車輪に設けられた駆動手段などをいう。「トルク検知手段」とは、例えば駆動手段がインホイールモータのように電気で各車輪を駆動するものであれば、各車輪を駆動するための電流や電力を検知することによりトルクを検知するものであってもよく、また、車輪の軸または車輪の軸に接続されたギアなどの駆動部材に設けられたトルクセンサや歪みセンサによりトルクを検知するものであってもよい。「所定の指示に応じて」とは、例えば、車輪指定ボタンなどの車輪指定手段により、駆動する車輪の指定の入力を受け付けた場合に、指定の入力を受け付けた車輪を駆動する場合などである。「駆動を停止」とは、モーターなどの駆動手段から車輪への回転駆動力の付与を中止する場合を含み、またブレーキなどにより車輪の回転を停止させる場合も含む。この態様によると、トルクレンチなどの締結用具を用意する必要がなく、車輪の取り付けを容易にすることができる。
【0006】
駆動手段は、車輪を締結する締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向と逆方向に車輪を駆動してもよい。ここで、「車輪を締結する締結手段」とは、例えばボルトやナットなどをいう。この態様によると、確実に締結手段により車輪を締結することができる。
【0007】
前記駆動制御手段は、前記駆動手段により車輪を微低速で駆動させてもよい。ここで、「微低速」とは、車輪を取り付ける作業の確実性を確保できる程度に低速の車輪の回転の速度をいい、例えば1回転/秒以下の速度などをいう。この態様によれば、車輪の取り付けを確実に行うことができる。また、指定車輪制御部は、指定の入力を受け付けた車輪を2分の1回転/秒以下で駆動手段により駆動させてもよい。なお、この際、効率よく車輪を取り付けるために、指定車輪制御部は、指定の入力を受け付けた車輪を3分の1回転/秒以上で回転させてもよい。
【0008】
本発明の別の態様もまた、車輪取り付け補助装置である。この装置は、各車輪を独立に、回転することを抑止する抑止手段と、抑止手段を制御する抑止制御手段と、車輪に生じるトルクを検知するトルク検知手段と、を有する。抑止制御手段は、車輪に与えられる外力による車輪の回転を抑止し、該回転を抑止された車輪のトルク検知手段により検知されたトルクが所定値以上になった場合に、該車輪に生じるトルクを低減するように抑止手段を制御する。ここで、「抑止手段」とは、インホイールモータのように各車輪に設けられ各車輪を駆動することにより車輪の回転を抑止するものや、ブレーキなどにより車輪の回転を抑止するものなどをいう。「車輪に与えられる外力」とは、モーターやエンジンなどの車両に備えられた駆動手段により与えられる車輪への力以外の力をいい、例えば、車輪を車両に取り付けるために車輪締結を行うナットやボルトを締結する際に車輪に与えられる回転方向への力などをいう。「車輪の回転の抑止」とは、車輪の締結を行う締結手段を締結するなどの外力が与えられた際に、車輪が回転しない程度に車輪の回転を抑止することをいい、「該車輪に生じるトルクを低減するように抑止手段を制御する」とは、車輪の回転を抑止するための車輪の駆動を停止する場合や、車輪の回転を抑止するために車輪に与えられるトルクを、車輪の締結を行う締結手段を締結するなどの外力が与えられた際に車輪が回転する程度に低減する場合も含まれる。この態様によると、トルクレンチなどの締結用具を用意する必要がなく、車輪の取り付けを容易にすることができる。
【0009】
抑止手段は、車輪を締結する締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向への車輪の回転を抑止してもよい。この態様によると、確実に締結手段により車輪を締結することができる。
【0010】
本車輪取り付け補助装置は、車輪の回転角度を検知する角度検知手段をさらに有してもよい。抑止手段は車輪を駆動するものであって、抑止制御手段は、角度検知手段により検知された車輪の回転角度に基づいて、車輪が回転した方向と逆方向に車輪を駆動するよう抑止手段を制御することにより車輪の回転を抑止してもよい。ここで、「車輪の回転角度に基づいて」とは、車輪が回転した角度を打ち消すように、車輪を駆動するような場合を含む。
【0011】
抑止制御手段は、該回転を抑止された車輪のトルク検知手段により検知されたトルクが所定値以上になった場合に、締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向に該車輪を駆動することにより、該車輪に生じるトルクを低減してもよい。この態様によると、より確実にナットやボルトなどの締結手段を規定トルクで締結することができる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容易に車輪を取り付けることができる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態(以下「実施形態」と記載する。)にかかる車両制御装置を搭載した車両10の全体構成を示す図である。車両10は、左前輪14FL,右前輪14FR,左後輪14RL,右後輪14RR(以下、必要に応じこれらを総称して「車輪14」と表記する。)のそれぞれのホイールにモータを内蔵したインホイールモータ方式の電気自動車を示す。インホイールモータ方式の電気自動車は、各輪独立して制御可能であるという特徴がある。また、単一のモータの出力を各ホイールに分配する方式に比べて、伝達系の部品やその設置スペースを省略することができ、また伝達による損失もなくすこともできる。モータを内蔵した車輪14の構造は、図2を参照して後述する。
【0016】
車輪14には、左前輪モータ16FL,右前輪モータ16FR,左後輪モータ16RL,右後輪モータ16RR(以下、必要に応じこれらを総称して「モータ16」と表記する。)が設けられている。モータ16に対応して車体側に設置される左前輪アンプ22FL,右前輪アンプ22FR,左後輪アンプ22RL,右後輪アンプ22RR(以下、必要に応じこれらを総称して「アンプ22」と表記する。)には、車体12に搭載されたバッテリ24から直流電力が供給される。アンプ22は、インバータを含んで構成され、供給された直流電力を三相交流電圧に変換してモータ16に供給する。モータ16は、交流電圧により回転駆動され、これによって車輪14を回転させ、車両10を走行させる。モータ16は、惰性走行時、車輪の回転により発生する回生ブレーキによって制動力を発揮することもできる。回生された電力は、バッテリ24に充電される。
【0017】
モータ16の出力は、車体12に搭載された電子制御装置200(以下、「ECU200」と表記する)により制御される。ECU200はアンプ22と通信可能に接続されており、モータ16に対する指令値をアンプ22に与える。アンプ22は、内蔵されているインバータをPWM制御して、指令値に応じたトルクを発揮するようにモータ16を制御する。モータ16には、左前輪回転センサ28FL、右前輪回転センサ28FR、左後輪回転センサ28RL、右後輪回転センサ28RR(以下、必要に応じこれらを総称して「回転センサ28」と表記する。)が搭載されており、これらの回転センサ28の出力は、ECU200に入力される。車輪の回転センサ28とは、たとえばレゾルバ、エンコーダ、ホール素子などのセンサをいう。
【0018】
モータ16の各々には、左前輪電流センサ20FL,右前輪電流センサ20FR,左後輪電流センサ20RL,右後輪電流センサ20RR,(以下、必要に応じこれらを総称して「電流センサ20」と表記する。)が設けられており、電流センサ20は、各モータの電流を検知する。検知した電流データはECU200に入力される。
【0019】
車輪14の各々には、左前輪速度センサ18FL,右前輪速度センサ18FR,左後輪速度センサ18RL,右後輪速度センサ18RR(以下、必要に応じこれらを総称して「車輪速度センサ18」と表記する。)が設けられている。車輪速度センサ18は、例えば微少角度位置変位毎のパルス信号を生成するレゾルバ等を用いて構成され、その信号はECU200に入力される。
【0020】
車両10には、駆動させる車輪の指定の入力を受け付ける駆動車輪指定ボタンを有する車輪指定入力部26が設けられ、指定車輪の入力を受け付けた場合には入力信号をECU200に入力する。ECU200は、指定車輪の入力信号の入力があった場合には、指定された車輪のモータ16に対する指令値をアンプ22に与え、指定された車輪を駆動する。
【0021】
図2は、第1の実施形態にかかる車輪14とモータ16の構造を模式的に示した図である。車輪14は、タイヤ102、ホイール104などから構成され、モータハウジング110に収容されたモータ16は、減速機構120に接続されている。減速機構120は、図2の左方にある図示しない車体から延びる懸架装置と結合されている。
【0022】
タイヤ102を装着したホイール104は、ナット106によりハブホイール108に固定される。ハブホイール108は、モータハウジング110から突出した出力軸112に固定され、出力軸112と共に回転する。モータハウジング110の車体側面には、モータ16のロータ116の回転を減速する歯車減速機118を収容した減速機構120が接続固定されている。モータ16の回転出力は、歯車減速機118を介して出力軸112、ホイール104に伝達され、この伝達された回転力によってホイール104がタイヤ102と共に回転駆動される。モータハウジング110は、図示しないサスペンションのバネ下重量の軽量化および耐久性、製造のし易さ等を考慮して、例えばアルミダイカストにより製造される。
【0023】
モータハウジング110は、図2に示すように、左右方向に2分割可能な椀型形状をなしており、ホイール104に面する側に、減速機構120側から延びる出力軸112を挿通可能な開口部122が形成されている。開口部122にはベアリング124が配置され、出力軸112をモータハウジング110に対して回転自在に軸支する。一方、モータハウジング110の減速機構120との接続側には、ロータ116を挿通可能な開口部126が形成されている。開口部126にはベアリング128が配置され、ロータ116をモータハウジング110に対して回転自在に軸支している。
【0024】
モータハウジング110の内壁面には、ステータ130が固定され、ステータ130の内周側にロータ116が配置される。ステータ130は、積層された電磁鋼板で形成される鉄心132aと、鉄心132aの各ティース部に巻回配置される3相のコイル132bとで構成される。
【0025】
ロータ116は、その軸長全体に亘って中心部に出力軸112を回転自在に挿通するための挿通孔116aが形成されている。出力軸112は挿通孔116aに配置された複数のベアリング134により、ロータ116に対して独立して回転自在に保持される。ロータ116は、ステータ130と対向する大径部分と、それに連なり減速機構120の内部まで延びる小径部分とからなる。大径部分の外周面には、複数の永久磁石136が配置される。こうして、コイル132bに順次所定のタイミングで電流を供給することにより、ステータ130に回転磁界を発生させ、ロータ116を回転させることができる。
【0026】
ロータ116の小径部分の先端部には、歯車減速機118の第1ギア138aと噛合するロータギア140が形成されている。第1ギア138aを支持するギアシャフト142は、複数のベアリング144によって軸支される。このギアシャフト142には、小径の第2ギア138bが固定され、第2ギア138bは、出力軸112に固定されている大径の第3ギア138cに噛合する。出力軸112は、減速機構120内部に配置されたベアリング146にも軸支され、スムーズな回転が確保されている。
【0027】
以上のように、ロータ116の回転力は、歯車減速機118によって減速されて出力軸112へと伝達されホイール104に伝わり、最終的にタイヤ102を回転駆動する。
【0028】
図3は、ECU200のうち、車輪14に与えられるトルクに対する制御に関与する部分の構成を示す機能ブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0029】
トルク検出部202は、電流センサ20から送られてくる情報に基づいて、車輪14にに与えられるトルクを検出する。規定トルク記憶部204には、車輪14についての規定トルクまたは規定トルクに対応する電流値が記憶されている。なお、車輪14についての規定トルクは、車輪を締結するナットなどの締結部材の規定締め付けトルクと、ナットの車輪中心からの距離などから算出される。車輪駆動制御部206は、トルク検出部202からの情報と規定トルク記憶部204からの情報に基づいて車輪14に与えられるトルクが規定トルク以上であるかを判断し、その判断に基づいて、車輪のモータ16に対する指令値をアンプ22に与え、その車輪の駆動を制御する。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る車輪指定部の一例を示す図である。本実施形態においては、タッチパネル方式の液晶画面90を車輪指定部とする。液晶画面90は、車両内部のセンターパネル(図示せず)に設けられており、駆動車輪指定モードボタン(図示せず)を押すことにより、駆動車輪指定モード画面92を表示する。この駆動車輪指定モード画面92には、左前輪ボタン94FL、右前輪ボタン94FR、左後輪ボタン94RL、右後輪ボタン94RRが表示されている(以下必要に応じて、左前輪ボタン94FL、右前輪ボタン94FR、左後輪ボタン94RL、右後輪ボタン94RRを総称して「車輪指定ボタン94」と呼ぶ。)。なお、液晶画面以外でも、所定ストロークを押し込む通常のボタンでもよい。また、車輪指定部を設ける場所は、車両10の内部でもよく、また車輪14の付近に設けても良い。
【0031】
これらの車輪指定部は、複数の車輪のうちいずれかのの車輪が指定された場合に、他の車輪が指定できないようにする指定禁止手段や、他の車輪が指定されても車輪を駆動できないように制御する駆動禁止手段を有していても良い。例えば、左前輪ボタン94FLに触れると、左前輪が駆動を開始し、左前輪が駆動している間は右前輪ボタン94FR、左後輪ボタン94RL、右後輪ボタン94RRに触れてもこれらの車輪が回転しないように制御するような場合である。これにより、複数の車輪が駆動することを防止することにより車両10が走行してしまうことを防止することができ、安全に車輪の取り付けを行うことができる。
【0032】
図5は、第1の実施形態にかかる車輪取り付け補助制御を示すフローチャートである。図4に示す車輪指定部などにより、ECU200が駆動する車輪の指定の入力を受け付けた場合には(S11)、ECU200は車両の速度がゼロであるかを判断する(S12)。車輪速度センサ18は、検知した車輪速度データをECU200に入力する。ECU200は入力された車輪速度データに基づき、車両の速度がゼロであるか否かを判断する。車両の速度がゼロでない場合には、このフローを終了する。
【0033】
なお、車両の速度がゼロであるか否か、すなわち車両の停止の検知は、車両のエンジンが停止していることを検知することによっても行うことができる。この場合、例えば、車両のイグニッションキー(図示せず)がオフとなっていることを検知することにより、エンジンの停止を検知することができる。また、インホイール・モーターなど電力により走行する車両では、例えば、インホイール・モーターなど車輪を駆動するモータの電流がゼロであることなどを検知することによって、車両の停止の検知を行うことができる。エンジンの停止の検知信号は、ECU200に入力される。
【0034】
また、車両の速度がゼロでない場合(S12のN)には、車両の速度がゼロでないための警告を報知してもよく、後述する他の車輪保持制御においても同様である。警告の報知は、車両10の内部の運転席周辺に設けられたLED(発光ダイオード)(図示せず)を点灯させてもよく、車両10の内部のセンターパネルに設けられた液晶画面にその旨を表示してもよく、また車両10の内部に設けられたスピーカーから音声により伝えてもよい。
【0035】
車両の速度がゼロである場合(S12のY)には、ECU200は、指定された車輪のモータ16に対する指令値をアンプ22に与え、指定された車輪を駆動する(S13)。これにより、車輪のナットなどの締結部材に、レンチなどの締結用具をはめ、そのレンチなどがレンチの中心を軸に回転しないように押さえておくだけで、車輪のナットの締結を行うことができる。すなわち、レンチなどの締結用具及びナットなどの締結部材を作業者により回転させる必要がないので、容易に車輪の取り付けを行うことができる。
【0036】
この際、車輪を締結するナットなどの締結部材が車輪の締結を行うために回転される回転方向と逆方向に車輪を駆動してもよい。これにより確実に締結部材を車輪に締結することができる。
【0037】
また、車輪の駆動は、例えば、1回転/秒以下の速度などの非常に低い回転速度で行う。これにより、車輪の取り付けを確実に行うことができる。また、車輪の駆動は、さらに低速である2分の1回転/秒以下で駆動手段により駆動させてもよい。なお、この際、効率よく車輪を取り付けるために、指定車輪制御部は、指定の入力を受け付けた車輪を3分の1回転/秒以上で回転させてもよい。
【0038】
車輪を駆動すると、ECU200は、電流センサ20からモータ16に流れる電流についての電流データの入力を受け、この電流データから指定車輪に生じるトルクを演算し、この演算した値が車輪の規定トルクT0より大きいかを判断する(S14)。指定車輪に生じるトルクが規定トルクT0より小さいと判断した場合には(S14のN)、ECU200は、指定車輪の駆動を維持しながら、電流センサ20からモータ16に流れる電流についての電流データの入力を再度受ける。
【0039】
指定車輪に生じるトルクが規定トルクT0より大きいと判断した場合には(S14のY)、ECU200は、指定された車輪のモータ16に対する指令値をアンプ22に与え、指定車輪の駆動を停止する(S15)。「駆動を停止」とは、モーターなどの駆動手段から車輪への回転駆動力の付与を中止する場合を含み、またブレーキなどにより車輪の回転を停止させる場合も含む。駆動が停止されると、本フローを終了する。
【0040】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施形態にかかる実車輪取り付け補助制御を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態と重複する説明は省略する。ECU200は、車両10に設けられた車輪交換モードボタン(図示せず)などの入力により、車輪取り付けモードの入力を受け付ける(S21)。なお、この車輪交換モードボタンは、車両10の内部に設けてもよく、また車輪14の周辺に設けても良い。車輪取り付けモードの入力を受け付けると、ECU200は、前述と同様に車両の速度がゼロであるかを判断する(S12)。
【0041】
車両の速度がゼロであると判断すると(S12のY)、ECU200は、回転センサ28から各車輪の回転角度データの入力を受ける。取り付け対象となっている車輪は、車輪を取り付けるためのナットなどの締結部材をレンチなどの締結用具により締結することなどにより、車輪に回転方向への外力が与えられ、これにより車輪が停止位置から回転を始める。ECU200は、入力された車輪の回転角度データから、各車輪のうちいずれかの車輪の回転角度が所定の角度θ0よりも大きいかを判断する(S23)。各車輪の回転角度が所定の角度θ0よりも小さいと判断した場合には(S23のN)、ECU200は、回転センサ28から再度、各車輪の回転角度のデータの入力を受ける。
【0042】
各車輪のうちいずれかの車輪の停止位置からの回転角度が所定の角度θ0より大きいと判断した場合には(S23のY)、ECU200は、回転角度が所定の角度θ0より大きいと判断された車輪について、回転した角度分を反対方向に回転させるように、モータ16を駆動することにより、車輪回転角度補正動作を行う(S24)。
【0043】
車輪回転角度補正動作中に、ECU200は、電流センサ20から、モータに流れる電流についての電流データの入力を受ける。ECU200は、入力された電流データから車輪の回転トルクを演算し、車輪の回転トルクが所定の回転トルクT1よりも大きいかを判断する(S25)。この車輪の回転トルクが所定の回転トルクT1よりも小さいと判断した場合には(S25のN)、ECU200は、車輪の回転角度の補正が終了したかを判断する(S26)。車輪の回転角度補正が終了したかは、ECU200が回転センサ28から車輪の回転角度のデータの入力を受け、車輪が回転する前の停止位置までもどったかを判断することにより行う。
【0044】
車輪の回転角度の補正が終了していないと判断した場合には(S26のN)、ECU200は、電流センサ20から、モータに流れる電流についての電流データの入力を再度受ける。車輪の回転角度の補正が終了していると判断した場合には(S26のY)、ECU200は、車輪回転角度補正動作を終了するようにモータ16を制御し(S27)、回転センサ28から各車輪の回転角度データの入力を再度受ける。
【0045】
この車輪の回転トルクが所定の回転トルクT1よりも大きいと判断した場合には(S25のY)、ECU200は、車輪回転角度補正動作を終了するようにモータ16を制御する(S28)。この場合の「車輪回転角度補正動作を終了」とは、モータ16から車輪への回転駆動力の付与を中止する場合を含み、また、電流センサ20から入力された電流データから演算された車輪の回転トルクが所定の回転トルクT1よりも小さくなるように、モータ16から車輪への回転駆動力の付与を低減する場合を含む。回転角度補正動作が終了すると、本フローを終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、車輪に与えられるトルクを検知することにより規定の締め付けトルクでナットなどの締結部材を締結することができ、トルクレンチなどの締結用具を用意する必要がなく、車輪の取り付けを容易にすることができる。
【0047】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、そのような変形例について述べる。
【0048】
図6のS28における「車輪回転角度補正動作を終了」とは、回転を抑止された電流センサ20から入力された電流データから演算された車輪の回転トルクが所定値以上になった場合に、ナットなどの締結部材が車輪の締結を行うために回転される回転方向にモータ16が車輪を駆動することにより、車輪に生じるトルクを低減することもできる。これにより、より確実に車輪回転角度の補正動作を終了できる。
【0049】
実施の形態では、各輪独立して制御可能なインホイールモータ方式の車両について説明したが、各車輪に対応したモータが車体側に設けられている車両にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態にかかる車両制御装置を搭載した車両の全体構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態にかかる車輪とモータの構造を模式的に示した図である。
【図3】ECUのうち、車輪に与えられるトルクに対する制御に関与する部分の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】第1の実施形態にかかる車輪指定部の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態にかかる車輪取り付け補助制御を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態にかかる車輪取り付け補助制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 車両、 12 車体、 14 車輪、 16 モータ、 18 車輪速度センサ、 20 電流センサ、 22 アンプ、 24 バッテリ、 26 車輪指定入力部、 200 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車輪を独立に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
車輪に生じるトルクを検知するトルク検知手段と、を有し、
前記駆動制御手段は、所定の指示に応じて車輪を駆動し、該駆動されている車輪の前記トルク検出手段により検出されたトルクが所定値以上になった場合に、前記駆動手段による該車輪の駆動を停止することを特徴とする車輪取り付け補助装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、車輪を締結する締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向と逆方向に車輪を駆動することを特徴とする請求項1に記載の車輪取り付け補助装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記駆動手段により車輪を微低速で駆動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車輪取り付け補助装置
【請求項4】
各車輪を独立に、回転することを抑止する抑止手段と、
前記抑止手段を制御する抑止制御手段と、
車輪に生じるトルクを検知するトルク検知手段と、を有し、
前記抑止制御手段は、車輪に与えられる外力による車輪の回転を抑止し、前記トルク検知手段により検知された、該回転を抑止された車輪に生じるトルクが所定値以上になった場合に、該車輪に生じるトルクを低減するように前記抑止手段を制御することを特徴とする車輪取り付け補助装置。
【請求項5】
前記抑止手段は、車輪を締結する締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向への車輪の回転を抑止することを特徴とする請求項4に記載の車輪取り付け補助装置。
【請求項6】
車輪の回転角度を検知する角度検知手段をさらに有し、
前記抑止手段は車輪を駆動するものであって、前記抑止制御手段は、前記角度検知手段により検知された車輪の回転角度に基づいて、前記車輪が回転した方向と逆方向に車輪を駆動するよう前記抑止手段を制御することにより車輪の回転を抑止することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車輪取り付け補助装置。
【請求項7】
前記抑止制御手段は、該回転を抑止された車輪の前記トルク検知手段により検知されたトルクが所定値以上になった場合に、締結手段が車輪の締結を行うために回転される回転方向に該車輪を駆動することにより、該車輪に生じるトルクを低減することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の車輪取り付け補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−82580(P2006−82580A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266459(P2004−266459)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】