車高調整装置
【課題】 本発明は、不特定な人の乗降であっても乗降性を向上させる車高調整装置の提供を目的とする。
【解決手段】 車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報(体格情報(身長、座高等)、年齢情報、性別情報、服装情報(衣服、靴、帽子、装身具)および身体の不自由情報(足に関する不自由情報、腰に関する不自由情報、車椅子に乗っている状態、杖をついている状態))をカメラ2により撮像されたユーザ画像から画像処理装置3によって取得し、その取得された身体情報に基づいて車高調整する際の調整量を乗降前に制御することを特徴とする車高調整装置。
【解決手段】 車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報(体格情報(身長、座高等)、年齢情報、性別情報、服装情報(衣服、靴、帽子、装身具)および身体の不自由情報(足に関する不自由情報、腰に関する不自由情報、車椅子に乗っている状態、杖をついている状態))をカメラ2により撮像されたユーザ画像から画像処理装置3によって取得し、その取得された身体情報に基づいて車高調整する際の調整量を乗降前に制御することを特徴とする車高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが乗降する際の車高調整の調整量を制御する車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員が降りやすいように車高を調整する装置についての開発が行われ、それに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、非常口ドアの開放作動に応答してエアばねのエアを放出して車高を下げることによって、非常口の地上高を低くし、乗客の降車を容易にするバス用エアサスペンション装置が開示されている。
【特許文献1】実開平1−102006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1に開示された従来技術は、ドアの開放作動に応答して車高を下げている。しかしながら、車両というものはオーナー以外にも不特定の人が乗る乗り物であるため、たとえバスよりも車高の低い乗用車等の車両であったとしても、車高を下げたからといって、必ずしもすべての人が降りやすくなるとは限らない。
【0004】
そこで、本発明は、不特定な人の乗降であっても乗降性を向上させる車高調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報をユーザから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された身体情報に基づいて車高調整する際の調整量を乗降前に制御する制御手段とを備えることを特徴とする車高調整装置が提供される。
【0006】
本局面において、調整量には車高調整位置または車高調整速度がある。また、身体情報はユーザを撮像した撮像画像の画像処理によって取得されるものであってよく、その身体情報には、体格情報、身体の不自由情報、服装情報または年齢情報が含まれるものであってよい。本局面によれば、ユーザから取得された車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報に基づいて車高調整する際の調整量が乗降前に制御されるので、不特定な人の乗降であってもその人の身体情報に合った最適な乗降性にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不特定な人の乗降であっても乗降性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明における車高調整装置の一実施例を示すシステム構成図である。
【0009】
カメラ2は、例えば、CCD(ステレオ)カメラである。カメラ2は、車内の人、車両周囲の人や車等の撮像対象物を撮像可能なように車内もしくは車外に搭載される。例えば、車内のルームミラー付近や車外のサイドミラー付近に設置される。カメラ2が撮像した撮像画像は、画像データとして画像処理装置3に送信される。画像処理装置3は、カメラ2による撮像画像を画像処理することにより、人や車等の立体的な撮像対象物を抽出するとともに、その人の身体情報を抽出して取得する。画像処理装置3は、取得した身体情報を電子制御装置(以下、ECU1という)にデータとして送信する。
【0010】
画像処理装置3は、例えば、身体に関するテンプレート(目テンプレート、口テンプレート、足角度テンプレート、腰角度テンプレート、体型テンプレート、服装テンプレート等)を用いて、カメラ2による撮像画像から身体情報を抽出する画像処理を行う。つまり、その撮像画像と上述のテンプレートとの相関がとられることによって、抽出すべき正しい身体情報が取得可能となる。テンプレートを用いずに、直接、撮像画像から身体情報を取得してもよい。
【0011】
身体情報には、例えば、体格情報(身長、座高、身体の縦幅(お腹が出ている大きさ)、身体の横幅等)、年齢情報、性別情報、服装情報(衣服、靴、帽子、装身具等)および身体の不自由情報(足部や腰部等の不自由である部位に関する情報、病状や怪我の状態、車椅子に乗っている状態、杖をついている状態等)がある。これら具体的な身体情報は、画像処理装置3により抽出された身体や顔の情報から公知技術である個人認証技術等を用いて推定可能である。もしくは、生体センサ(体温センサ、脳波センサ、心拍数センサ等)、指紋検出センサ、視線検出センサ、声紋検出用マイク等を用いても推定可能である。
【0012】
例えば、身体の不自由情報は、画像データ(好ましくは、動画データ)に基づいて推定された身体の重心位置を用いて判定される。例えば、健常者であれば左右対称のリズムで歩いていることが動画データから観測され得るが、片足が不自由であると左右対称のリズムにはならないため、その違いによって足の不自由状態が判定される。また、例えば、健常者であれば背筋を伸ばして歩いていることが観測され得るが、腰が不自由であると腰が曲がった状態が観測され、その違いによって腰の不自由状態が判定される。また、車椅子に乗っている状態であると検出されれば、足が不自由であると判定される。身体の熱をサーモグラフで検知することによって、温度が他の身体部位と異なる患部等の身体の不自由状態を特定することも可能である。
【0013】
なお、画像処理装置3を用いて、乗降しようとする人の態様や車両周囲の状況を検出することも可能である。例えば、体格情報、乗員の着座状態、人の車両への接近速度(歩行速度、車椅子移動速度)、人が所持している物やその物の扱い状況(傘をさしている状態、杖をついている状態等)、雨が降っている状態(降雨、水たまりの有無)、自車両と他の車両や人との相対距離も検出可能である。これらの態様や状況は、画像処理装置3を用いずとも、レーザーレーダ、ミリ波レーダ,超音波レーダ、降雨を検出する雨滴センサ等を用いて検出することも可能である。
【0014】
ドアコントロール装置7は、ユーザのドアの開閉操作を検知するドアスイッチや、ドアのロック・アンロックを制御する制御装置を備える。ドアスイッチは、車外のドアアウトサイドハンドル(ドアノブ)や車内のドアインサイドハンドルの操作に連動してON/OFFする。例えば、リレースイッチを設けたアウトサイドハンドル及びインサイドハンドルの移動量が所定の閾値を超えた場合に、ドアの開操作が行われたとして、ドアスイッチがONする。アンロック状態でなければ、ON/OFFしないようにしてもよい。
【0015】
また、ドアコントロール装置7は、スマートキーエントリーシステムを備えていてもよい。スマートキーエントリーシステムとは、スマートキー(IDコードを内蔵する電子キー)をポケットやバッグに携帯しておけば、ドアアウトサイドハンドルを握るだけでドアロックを解錠できるシステムである。つまり、スマートキーを所持するユーザ(その車両のオーナーやそのオーナーからスマートキーを貸与された者)が車両周囲の所定の検知範囲内に入ると、スマートキーに内蔵されたIDコードをワイヤレスで取得し、車両側に付与されたIDコードと一致するか否かを判断してドアロックの解錠許否を行うシステムである。したがって、スマートキーシステムによれば、スマートキーを所持するユーザが、車両周囲にいるということを検知することができる。また、ユーザのドアの開閉操作を遠隔的に行えることができるとともに、ユーザのドアの開閉操作も上記のハンドル操作と同様に検知できることとなる。例えば、ドアの開操作信号を受信した場合に、ドアスイッチがONする。
【0016】
認識データ記憶装置4には、「カメラ2を介して画像処理装置3等によって取得された身体情報や人の態様」と「車高調整する際の調整量」との対応関係を示すデータマップが記憶されている。データマップは状況に応じて複数あってもよい。例えば、乗車時、着座時及び降車時のそれぞれの状況毎に異なるデータマップが記憶されている。
【0017】
図2は、そのデータマップの一例を示す図である。画像処理装置3等によって取得された「身長」「年齢」「体重(体格から推定)」「接近速度」「身体の不自由状態」「服装」「天候」「車両周囲」のそれぞれに対して、車高調整する際の調整量である「車高調整位置」「車高調整速度」が規定されている。
【0018】
画像処理装置3等によって取得・検出された上記の「身長」等は、例えば、以下のように所定の範囲でさらに分けられている。「身長」は「高=180cm以上」「並=160cm以上180cm未満」「低=160cm未満」に、「年齢」は「高年層=70才以上」「若年層=15才以上70才未満」「幼年層=15才未満」に、「体重」は「太い=80kg以上」「普通=50kg以上80kg未満」「やせ=50kg未満」に、「接近速度」は「ゆっくり=3m/s未満」「速い=3m/s以上」に、「身体の不自由状態」は「健常者」「足障害」「腰障害」に、「服装」は「乗降しやすい」「乗降しにくい」に、「天候」は「晴れ」「雨」に、「車両周囲」は「障害物あり」「障害物なし」に、分けられる。
【0019】
車高調整する際の車高調整位置は、いま、車両上下方向について「上」「標準」「下」の3つに分けて規定されている。「標準=標準上下位置」「下=標準上下位置に対し10cm下に調整」「上=標準上下位置に対し10cm上に調整」を表す。
【0020】
車高調整する際の車高調整速度は、いま、3段階で規定されている。例えば、「速い=10cm/秒」「標準=7cm/秒」「遅い=5cm/秒」の速度で車高調整することを表す。
【0021】
なお、画像処理装置3等によって取得・検出された「身長」等を上記のように分けたが、その分けた範囲は特に限定しない。また、調整する際の車高調整位置及び速度の規定のしかたも、上記のように、「上」「標準」「下」や「速い」「標準」「遅い」のように3段階に分けたが、その段階数は特に限定しない。細かく分けるほど、よりきめ細かい車高調整制御が可能となる。また、データマップ上の位置や速度の数値を書き換え可能にすることによって、オーナーやユーザ等が希望する値にいつでも修正することができる。
【0022】
調整位置や調整速度等の車高調整する際の調整量は、車高調整用アクチュエータ5の作動に応じて変化する。また、その調整量は、調整可動部に取付けられたセンサによって検出される。車高調整用アクチュエータ5は、ECU1からの駆動制御信号に従って作動する。ECU1は、画像処理装置3等により取得された身体情報や人の態様を受信すると、認識データ記憶装置4に記憶された図2のようなデータマップを用いて、調整位置や調整速度等の車高調整する際の調整量を決定する。そして、ECU1は、その決定された調整量になるように車高調整用アクチュエータ5に対し駆動制御信号を送信する。例えば、ユーザの身体情報である身長が190cmと測定された場合、図2のようなデータマップに基づいて、車高調整位置を「上」とし、車高調整速度を「速く」するような駆動制御信号が送信される。
【0023】
なお、本発明は、特に車高調整を実現する機構について詳細に特定するものではなく、エア式や油圧式といったハードウェア構成等、如何なる構成や特徴を有する車高調整機構に対しても適用可能である。そこで、当業者には明らかである車高調整を実現する機構については詳しい説明を省略する。
【0024】
それでは、本発明における車高調整装置の動作例について以下に説明する。
【0025】
[第1の実施例]図3は乗車する際の車高調整装置が身長に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。まず、ステップ10において、図12(a)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことが検知される(若しくは、ドアコントロール装置7のドアスイッチにより乗降ドアの開操作が検知される(以下でも同様))と、スマートキー内蔵のIDコードに基づいてその車両のオーナーであるか否かを確認する(ステップ11)。オーナーであれば、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者を同乗者とみなしてその同乗者の有無を判定する。(ステップ12)。画像処理装置3により同乗者がいないと判定されれば、ECU1は、事前に登録されているオーナー設定の車高調整位置や車高調整速度になるよう乗車前に車高調整用アクチュエータ5に駆動制御信号を出力する(ステップ13)。画像処理装置3により同乗者がいると判定されれば、ECU1は、画像処理装置3を用いて同乗者の身長測定をする(ステップ14)。そして、ECU1は、同乗者の身長測定結果と事前に登録されているオーナー身長とに基づいて一番背の低い人が座りやすい車高調整位置になるよう乗車前に車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ15)。座りやすい車高調整位置とは、図2で例示したデータマップで規定された車高調整位置である。例えば、一番背の低い人の身長が140cmと測定された場合、図2の「低」に該当するので、ECU1は、車高調整位置を「下」の意味するところである「標準上下位置に対し10cm下」の位置になるように制御する。なお、事前に登録されたオーナー設定値を用いずに、同乗者とともにオーナーの身長測定も行った上で最適な車高調整位置に制御するようにしてもよい。
【0026】
車高調整する際の調整量は車両のタイプによっても異なってくる。お尻をシートにのせてから乗車する車高の低いセダンタイプのような車両であれば、ユーザのお尻の高さの測定値とシートの座部の高さが合うように車高調整することによって乗車しやすくなる。一方、車両に足をかけてから乗車する車高の高いバンやワゴンタイプのような車両であれば、足の上げた高さ(実際に上げたときの測定値や直立している状態からの推定値)と足がかけられる車両部位(ステップやフロア)高さが合うように車高調整することによって乗車しやすくなる。
【0027】
[第2の実施例]図4は乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(b)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ20)、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者に身体の不自由があるか否かを判定する(ステップ21)。画像処理装置3は、身体の不自由がありと判定すれば、不自由な部位の特定をする(ステップ22)。
【0028】
足に障害があると判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「足障害」の欄に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、足の患部に負担がかからないようにするために車高を下げるような駆動制御信号を送信する(ステップ23)。腰に障害があると判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「足障害」の欄に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、腰に負担がかからないようにするために車高を上げるような駆動制御信号を送信する(ステップ24)。
【0029】
ステップ21において身体の不自由さがないと判断された場合、所定の車高調整標準位置に設定される(ステップ25)。なお、標準位置に設定するようなことはせずに、何も調整制御しないようにしてもよい。
【0030】
したがって、身体の不自由部位に応じて車両のタイプに合わせて最適な車高調整位置に制御することにより、乗降性が向上し、身体に過度な負担がかかるおそれもなくなる。特に、身障者やお年寄りにとっては優しい装置となる。
【0031】
[第3の実施例]第2の実施例は、身体の不自由部位に応じて車高調整位置を制御する例であったが、車高調整速度を制御するようにしてもよい。図5は乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。まず、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ30)、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者に身体の不自由があるか否かを判定する(ステップ31)。
【0032】
画像処理装置3により身体の不自由がありと判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「健常者」ではない欄(ここでは、「足障害」もしくは「腰障害」の欄)に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、車高調整標準速度より遅くなる駆動制御信号を送信する(ステップ32)。
【0033】
画像処理装置3により身体の不自由がないと判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「健常者」の欄に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、車高調整標準速度の駆動制御信号を送信する(ステップ33)。
【0034】
したがって、車両に手をかけている場合もあるので、乗車前にゆっくりと車高調整をすることによって、乗車しやすくなる。なお、身体の不自由情報に基づいて「乗車中に」車高調整する際の車高調整速度を制御するようにしてもよい。車高調整標準速度よりも遅い速度で車高調整をすることによって、不自由な部位に負担がかからないようにする(例えば、腰を痛めているときは、腰にひびかぬようにする)ことも可能である。
【0035】
[第4の実施例]服装には、乗降動作しにくいものと乗降動作しやすいものがある。例えば、ズボンなどの足を広げることができる服装の場合であれば乗降動作しやすいが、タイトスカートや和服などの足をあまり広げることができない服装やハイヒールを履いている場合には乗降動作しにくい。そこで、本第4の実施例では、車高調整装置はユーザが身につけている服装に応じて車高調整位置を制御する。
【0036】
図6は乗車する際の車高調整装置がユーザの服装に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(c)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ40)、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者が身につけている服装を識別する(ステップ41)。
【0037】
ECU1は、乗降動作のしやすい服装と判断された場合には、図2のデータマップに基づいて、車高調整位置が標準位置となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ42)。なお、車高位置調整を制御しないようにしてもよい。
【0038】
ECU1は、乗降動作のしにくい服装と判断された場合には、図2のデータマップに基づいて、その服装に合わせて車高調整位置を標準位置に対し上げるまたは下げるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ43)。
【0039】
ここで、乗降性のしやすい服装・しにくい服装の判定は、服装に関する所定の基準に従って行われる。画像処理装置3は、服装テンプレート(ズボン、ロングスカート、ミニスカート、和服、ウェディングドレス、ハイヒール等)を有している。カメラ2による撮像画像と上述のテンプレートとの相関がとられることによって、抽出すべき正しい服装情報が取得可能となる。また、それらの服装情報のそれぞれに対し、乗降性の良否(例えば、乗降しにくい服装を、ロングスカート、ミニスカート、タイトスカート、和服、ウェディングドレス、ハイヒールとする)及び制御すべき車高調整位置をあらかじめ定めておく。
【0040】
このように定めておくことによって、例えば、以下のように車高調整位置が制御される。身につけている服装がロングスカートであると識別された場合、ECU1は車両下部のロッカー部によってロングスカートの裾が汚れないように車高調整位置を下げるように制御する。ミニスカートが識別された場合、お尻をシートにのせてから乗車する車高の低いセダンタイプのような車両であれば、ECU1は車高調整位置を上げるように制御する。足を広げることができないタイトスカートや和服やハイヒールが識別された場合、車両に足をかけてから乗車する車高の高いバンやワゴンタイプのような車両であれば、ECU1は車高調整位置を下げるように制御する。身につけている服装が乗車しやすいズボンと識別された場合、ECU1は車高調整位置を標準位置になるように制御する。
【0041】
したがって、ユーザの身につけている服装に合わせて最適な車高調整位置に制御することによって、乗車性が向上する。
【0042】
[第5の実施例]図7は乗車する際の車高調整装置がユーザの年齢に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(d)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ50)、スマートキー内蔵のIDコードに基づいてその車両のオーナーであるか否かを確認する(ステップ51)。オーナーであれば、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者を同乗者とみなしてその同乗者の有無を判定する。(ステップ52)。画像処理装置3により同乗者がいないと判定されれば、ECU1は、事前に登録されているオーナー設定の車高調整位置や車高調整速度になるよう乗車前に車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ53)。画像処理装置3により同乗者がいると判定されれば、ECU1は、画像処理装置3を用いて同乗者の年齢測定をする(ステップ54)。
【0043】
ECU1は、若年層と判断された場合には、図2のデータマップの若年層の欄に基づいて、標準速度で標準位置となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ55)。なお、幼年層と判断された場合には、図2のデータマップの幼年層の欄に基づいて、同様に、車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号が送信される
ECU1は、高年層と判断された場合には、図2のデータマップの高年層の欄に基づいて、標準速度よりも減速させて標準位置よりも下がるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ56)。
【0044】
したがって、年齢に応じて車高調整速度が制御されることにより、高齢者の場合にはゆっくり移動して驚かさないようにすることができる。速い調整速度でも気にならない若年層であれば、標準速度よりも上げて、調整速度が遅いことによるいらだち感をなくすことができる。また、年齢に応じて車高調整位置が制御されることにより、乗車性が向上する。特に、身体の動きが機敏ではない高齢者の場合、車高を下げることによって、短時間に容易に乗り込むことが可能となる。
【0045】
[第6の実施例]車高調整の際に、ユーザが車両に近づいてくるときの接近速度を検出して車高調整速度の制御をするようにしてもよい。図8は乗車する際の車高調整装置がユーザの車両への接近速度に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。まず、図12(e)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ60)、画像処理装置3はその検知された人の自車両への接近速度を動画データに基づいて測定する(ステップ61)。画像処理装置3を用いずとも、レーザーレーダ、ミリ波レーダ,超音波レーダ等を用いて測定するようにしてもよい。ECU1は、その接近速度が所定速度以上(例えば、3m/s以上)であるか否かを判断する(ステップ61)。
【0046】
所定速度以上でなければ、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「接近速度」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ62)。
【0047】
所定速度以上であれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「接近速度」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度よりも速くなるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ63)。
【0048】
つまり、ユーザの自車両への接近速度に基づいて、車高調整速度を決めている。ユーザの自車両への接近速度は、そのユーザの心理的な性急度合を表しているといえる。ユーザは、気持ちが急いているのに調整速度がゆっくりであると、いらだち感を覚えてしまう。そこで、接近速度が速ければ、気持ちが急いていると判定し調整速度を速める。接近速度が遅ければ、気持ちが急いてはいないと判定し調整速度を標準速度のまま(またはそれ以下)にする。したがって、このような調整速度の制御をすることによって、ユーザの心理状態に合った心地よさを実現することができる。もちろん、調整速度の制御だけでなく、車高調整位置の制御に上記の接近速度を用いてもよい。気持ちが急いているときに、最適な車高調整位置に制御されることによって、足を車両下部に引っ掛けるおそれもなく乗車することができる。
【0049】
また、自車両へ接近速度というものは、ユーザが乗車しようとしている状況において検出されるものである。しかし、車内でのユーザの動作速度を画像処理装置3等によって検出することによって、ユーザが降車しようとしている状況であっても、上記同様に考えることができる。車内でのユーザの動作速度とは、例えば、ユーザの頭部の動きや手振り等の振る舞う動きの速度である。つまり、車内でのユーザの動きを観測して、所定時間内の動作速度の平均値を算出し、その算出値が所定の動作速度以上であるのならば、調整速度を標準速度よりも速い速度に設定する。したがって、このような調整速度の制御をすることによって、ユーザの心理状態に合った心地よさを降車時でも実現することができる。もちろん、調整速度の制御だけでなく、車高調整位置の制御に上記の車内での動作速度を用いてもよい。気持ちが急いているときに、最適な車高調整位置に制御されることによって、つまずくおそれもなく降車することができる。
【0050】
[第7の実施例]車高調整の際に、乗車しようとする人の態様や車両周囲の状況を検出することによって、車高調整位置や車高調整速度を制御してもよい。図9は乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整位置を制御する一例を示す図である。まず、図12(f)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ70)、天候が何であるかが判断される(ステップ71)。雨が降っていると判定されると、ステップ72に移行する。降雨の判定は、カメラ2によって撮像された画像に基づいて画像処理確認された水たまりや降雨状況、または、雨滴センサによる検出値によって行われる。ステップ72では、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者が所持物として傘を持っているか否かを判断するとともにその傘をさしているか否かを判断する。傘をさしていると判断されれば、ECU1は、図2のデータマップの「天候」の欄に基づいて、乗車時に傘をしまいやすいように最適な車高調整位置になるように車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ73)。
【0051】
例えば、お尻をシートにのせてから乗車する車高の低いセダンタイプのような車両であれば、しっかりお尻をシートにのせて傘をしまいやすいように車高調整位置を晴れのときよりも下げるように制御する。なお、ステップ72で傘をさしていないと判断された場合というのは、雨が降っているにもかかわらず傘をささないでいる状態である。そのため、急いで足から乗車する場合もある。このような場合には車高調整位置を晴れのときより上げるように制御してもよい。これによって、車両に足をかけた状態では背筋が伸びることになり頭をぶつける心配もないので乗車しやすくなる。一方、車両に足をかけてから乗車する車高の高いバンやワゴンタイプのような車両であれば、傘をたたみながら足から乗車しようとする。そのため、車両に足をかけやすいように車高調整位置を晴れのときよりも下げるように制御する。
【0052】
[第8の実施例]第7の実施例は、車高調整位置を制御する例であったが、車高調整速度を制御するようにしてもよい。図10は乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。まず、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ80)、天候が何であるかが判断される(ステップ81)。雨が降っていると判定されると、ECU1は、図2のデータマップの「天候」の欄に基づいて、車高調整速度を標準速度よりも速くなるように車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ82)。したがって、雨が降っていて急いで乗り込みたいような状況では、車高調整速度を速く制御し、調整時間による待ち時間を短くし、ユーザにいらだちを感じさせることなく、乗車しやすくすることができる。
【0053】
[第9の実施例]車高調整の際に、車両のまわりには必ずしもその車両に乗り込もうとする人がいるわけではない。オーナー以外の同乗しようとする者がそのオーナーを車両のまわりで待っている場合もある。したがって、自車両のまわりに、他の車両が隣接して駐車していたり、小さな子供がいたりした場合、車高調整の際に自車両がそれらにぶつからないようにしなければならない。図11は乗車する際の車高調整装置が車両周囲の状況に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(g)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ90)、画像処理装置3はカメラ2によって車両の周囲(ユーザと車両との相対距離の範囲内)に人や車がいるか否かを判定する(ステップ91)。
【0054】
人や車両が周囲に存在しなければ、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「車両周囲」の「障害物なし」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ92)。
【0055】
人や車両が周囲に存在するならば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「車両周囲」の「障害物あり」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度よりも遅くなるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ93)。
【0056】
したがって、急に車高が変化することによって、周囲の人を驚かさないようにし、周囲の人や車にぶつからないようにすることができる。なお、車両の周囲に人や車がいるか否かを停車中に常時判定しているのは、バッテリーが上がってしまうおそれがある。それを防ぐため、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知した後に、画像処理装置3等の車両周囲を監視する装置の電源が投入され、周囲の監視を開始する。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0058】
上述の実施例では、乗車時を中心に詳説していたが、乗車した際の車高調整位置や速度等の車高調整量を認識データ記憶装置4等の記憶手段に記憶しておくことによって、同じ調整量にECU1が降車前に制御することによって、降車しやすくなる。もしくは、乗車しているユーザの身体状態や態様を、降車の際にあらためて上記のように取得することによって、ECU1が図2のような降車時のデータマップに基づいて最適な調整量に制御してもよい。ここで、降車の判定は、例えば、インサイドハンドルがON、かつ、車速0、かつ、パーキングレバースイッチON、かつ、イグニッションキーOFFが検出されることによって行われるようにすればよい。
【0059】
また、ECU1は、乗降前にユーザの身体情報等を画像処理装置3等により取得することによって、車高調整する際の調整量を乗降前に制御していた。しかし、スマートキーにIDコードとともにユーザの身体情報を内蔵させておき、IDコードの取得とともにその身体情報を取得することによって、その身体情報に合わせて乗降前に車高調整する際の調整量が制御されてもよい。
【0060】
また、上述の実施例の記載では、ユーザの所持物情報として傘を例に挙げたが、杖、竿、スキー等の所定長さ以上の長尺物であってもよい。図2のようなデータマップの中で、これらの長尺物の種類のそれぞれに対し、その長尺物の長さに最適な車高調整位置が規定される。そして、上述の実施例と同様に、そのデータマップに基づいて車高調整位置が制御される。例えば、スキーを持っていることが検出されれば、車両(ルーフのスキーキャリアやトランクスルー)にスキーを載せやすいようにもしくは下ろしやすいように車高を下げるように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明における車高調整装置の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】身体情報や人の態様と車高調整する際の調整量との対応関係を示すデータマップの一例である。
【図3】乗車する際の車高調整装置が身長に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。
【図4】乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。
【図5】乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。
【図6】乗車する際の車高調整装置がユーザの服装に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。
【図7】乗車する際の車高調整装置がユーザの年齢に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。
【図8】乗車する際の車高調整装置がユーザの車両への接近速度に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。
【図9】乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整位置を制御する一例を示す図である。
【図10】乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。
【図11】乗車する際の車高調整装置が車両周囲の状況に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。
【図12】乗車時の状況を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ECU
2 カメラ
3 画像処理装置
4 認識データ記憶装置
5 車高調整用アクチュエータ
7 ドアコントロール装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが乗降する際の車高調整の調整量を制御する車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員が降りやすいように車高を調整する装置についての開発が行われ、それに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、非常口ドアの開放作動に応答してエアばねのエアを放出して車高を下げることによって、非常口の地上高を低くし、乗客の降車を容易にするバス用エアサスペンション装置が開示されている。
【特許文献1】実開平1−102006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1に開示された従来技術は、ドアの開放作動に応答して車高を下げている。しかしながら、車両というものはオーナー以外にも不特定の人が乗る乗り物であるため、たとえバスよりも車高の低い乗用車等の車両であったとしても、車高を下げたからといって、必ずしもすべての人が降りやすくなるとは限らない。
【0004】
そこで、本発明は、不特定な人の乗降であっても乗降性を向上させる車高調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報をユーザから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された身体情報に基づいて車高調整する際の調整量を乗降前に制御する制御手段とを備えることを特徴とする車高調整装置が提供される。
【0006】
本局面において、調整量には車高調整位置または車高調整速度がある。また、身体情報はユーザを撮像した撮像画像の画像処理によって取得されるものであってよく、その身体情報には、体格情報、身体の不自由情報、服装情報または年齢情報が含まれるものであってよい。本局面によれば、ユーザから取得された車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報に基づいて車高調整する際の調整量が乗降前に制御されるので、不特定な人の乗降であってもその人の身体情報に合った最適な乗降性にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不特定な人の乗降であっても乗降性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明における車高調整装置の一実施例を示すシステム構成図である。
【0009】
カメラ2は、例えば、CCD(ステレオ)カメラである。カメラ2は、車内の人、車両周囲の人や車等の撮像対象物を撮像可能なように車内もしくは車外に搭載される。例えば、車内のルームミラー付近や車外のサイドミラー付近に設置される。カメラ2が撮像した撮像画像は、画像データとして画像処理装置3に送信される。画像処理装置3は、カメラ2による撮像画像を画像処理することにより、人や車等の立体的な撮像対象物を抽出するとともに、その人の身体情報を抽出して取得する。画像処理装置3は、取得した身体情報を電子制御装置(以下、ECU1という)にデータとして送信する。
【0010】
画像処理装置3は、例えば、身体に関するテンプレート(目テンプレート、口テンプレート、足角度テンプレート、腰角度テンプレート、体型テンプレート、服装テンプレート等)を用いて、カメラ2による撮像画像から身体情報を抽出する画像処理を行う。つまり、その撮像画像と上述のテンプレートとの相関がとられることによって、抽出すべき正しい身体情報が取得可能となる。テンプレートを用いずに、直接、撮像画像から身体情報を取得してもよい。
【0011】
身体情報には、例えば、体格情報(身長、座高、身体の縦幅(お腹が出ている大きさ)、身体の横幅等)、年齢情報、性別情報、服装情報(衣服、靴、帽子、装身具等)および身体の不自由情報(足部や腰部等の不自由である部位に関する情報、病状や怪我の状態、車椅子に乗っている状態、杖をついている状態等)がある。これら具体的な身体情報は、画像処理装置3により抽出された身体や顔の情報から公知技術である個人認証技術等を用いて推定可能である。もしくは、生体センサ(体温センサ、脳波センサ、心拍数センサ等)、指紋検出センサ、視線検出センサ、声紋検出用マイク等を用いても推定可能である。
【0012】
例えば、身体の不自由情報は、画像データ(好ましくは、動画データ)に基づいて推定された身体の重心位置を用いて判定される。例えば、健常者であれば左右対称のリズムで歩いていることが動画データから観測され得るが、片足が不自由であると左右対称のリズムにはならないため、その違いによって足の不自由状態が判定される。また、例えば、健常者であれば背筋を伸ばして歩いていることが観測され得るが、腰が不自由であると腰が曲がった状態が観測され、その違いによって腰の不自由状態が判定される。また、車椅子に乗っている状態であると検出されれば、足が不自由であると判定される。身体の熱をサーモグラフで検知することによって、温度が他の身体部位と異なる患部等の身体の不自由状態を特定することも可能である。
【0013】
なお、画像処理装置3を用いて、乗降しようとする人の態様や車両周囲の状況を検出することも可能である。例えば、体格情報、乗員の着座状態、人の車両への接近速度(歩行速度、車椅子移動速度)、人が所持している物やその物の扱い状況(傘をさしている状態、杖をついている状態等)、雨が降っている状態(降雨、水たまりの有無)、自車両と他の車両や人との相対距離も検出可能である。これらの態様や状況は、画像処理装置3を用いずとも、レーザーレーダ、ミリ波レーダ,超音波レーダ、降雨を検出する雨滴センサ等を用いて検出することも可能である。
【0014】
ドアコントロール装置7は、ユーザのドアの開閉操作を検知するドアスイッチや、ドアのロック・アンロックを制御する制御装置を備える。ドアスイッチは、車外のドアアウトサイドハンドル(ドアノブ)や車内のドアインサイドハンドルの操作に連動してON/OFFする。例えば、リレースイッチを設けたアウトサイドハンドル及びインサイドハンドルの移動量が所定の閾値を超えた場合に、ドアの開操作が行われたとして、ドアスイッチがONする。アンロック状態でなければ、ON/OFFしないようにしてもよい。
【0015】
また、ドアコントロール装置7は、スマートキーエントリーシステムを備えていてもよい。スマートキーエントリーシステムとは、スマートキー(IDコードを内蔵する電子キー)をポケットやバッグに携帯しておけば、ドアアウトサイドハンドルを握るだけでドアロックを解錠できるシステムである。つまり、スマートキーを所持するユーザ(その車両のオーナーやそのオーナーからスマートキーを貸与された者)が車両周囲の所定の検知範囲内に入ると、スマートキーに内蔵されたIDコードをワイヤレスで取得し、車両側に付与されたIDコードと一致するか否かを判断してドアロックの解錠許否を行うシステムである。したがって、スマートキーシステムによれば、スマートキーを所持するユーザが、車両周囲にいるということを検知することができる。また、ユーザのドアの開閉操作を遠隔的に行えることができるとともに、ユーザのドアの開閉操作も上記のハンドル操作と同様に検知できることとなる。例えば、ドアの開操作信号を受信した場合に、ドアスイッチがONする。
【0016】
認識データ記憶装置4には、「カメラ2を介して画像処理装置3等によって取得された身体情報や人の態様」と「車高調整する際の調整量」との対応関係を示すデータマップが記憶されている。データマップは状況に応じて複数あってもよい。例えば、乗車時、着座時及び降車時のそれぞれの状況毎に異なるデータマップが記憶されている。
【0017】
図2は、そのデータマップの一例を示す図である。画像処理装置3等によって取得された「身長」「年齢」「体重(体格から推定)」「接近速度」「身体の不自由状態」「服装」「天候」「車両周囲」のそれぞれに対して、車高調整する際の調整量である「車高調整位置」「車高調整速度」が規定されている。
【0018】
画像処理装置3等によって取得・検出された上記の「身長」等は、例えば、以下のように所定の範囲でさらに分けられている。「身長」は「高=180cm以上」「並=160cm以上180cm未満」「低=160cm未満」に、「年齢」は「高年層=70才以上」「若年層=15才以上70才未満」「幼年層=15才未満」に、「体重」は「太い=80kg以上」「普通=50kg以上80kg未満」「やせ=50kg未満」に、「接近速度」は「ゆっくり=3m/s未満」「速い=3m/s以上」に、「身体の不自由状態」は「健常者」「足障害」「腰障害」に、「服装」は「乗降しやすい」「乗降しにくい」に、「天候」は「晴れ」「雨」に、「車両周囲」は「障害物あり」「障害物なし」に、分けられる。
【0019】
車高調整する際の車高調整位置は、いま、車両上下方向について「上」「標準」「下」の3つに分けて規定されている。「標準=標準上下位置」「下=標準上下位置に対し10cm下に調整」「上=標準上下位置に対し10cm上に調整」を表す。
【0020】
車高調整する際の車高調整速度は、いま、3段階で規定されている。例えば、「速い=10cm/秒」「標準=7cm/秒」「遅い=5cm/秒」の速度で車高調整することを表す。
【0021】
なお、画像処理装置3等によって取得・検出された「身長」等を上記のように分けたが、その分けた範囲は特に限定しない。また、調整する際の車高調整位置及び速度の規定のしかたも、上記のように、「上」「標準」「下」や「速い」「標準」「遅い」のように3段階に分けたが、その段階数は特に限定しない。細かく分けるほど、よりきめ細かい車高調整制御が可能となる。また、データマップ上の位置や速度の数値を書き換え可能にすることによって、オーナーやユーザ等が希望する値にいつでも修正することができる。
【0022】
調整位置や調整速度等の車高調整する際の調整量は、車高調整用アクチュエータ5の作動に応じて変化する。また、その調整量は、調整可動部に取付けられたセンサによって検出される。車高調整用アクチュエータ5は、ECU1からの駆動制御信号に従って作動する。ECU1は、画像処理装置3等により取得された身体情報や人の態様を受信すると、認識データ記憶装置4に記憶された図2のようなデータマップを用いて、調整位置や調整速度等の車高調整する際の調整量を決定する。そして、ECU1は、その決定された調整量になるように車高調整用アクチュエータ5に対し駆動制御信号を送信する。例えば、ユーザの身体情報である身長が190cmと測定された場合、図2のようなデータマップに基づいて、車高調整位置を「上」とし、車高調整速度を「速く」するような駆動制御信号が送信される。
【0023】
なお、本発明は、特に車高調整を実現する機構について詳細に特定するものではなく、エア式や油圧式といったハードウェア構成等、如何なる構成や特徴を有する車高調整機構に対しても適用可能である。そこで、当業者には明らかである車高調整を実現する機構については詳しい説明を省略する。
【0024】
それでは、本発明における車高調整装置の動作例について以下に説明する。
【0025】
[第1の実施例]図3は乗車する際の車高調整装置が身長に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。まず、ステップ10において、図12(a)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことが検知される(若しくは、ドアコントロール装置7のドアスイッチにより乗降ドアの開操作が検知される(以下でも同様))と、スマートキー内蔵のIDコードに基づいてその車両のオーナーであるか否かを確認する(ステップ11)。オーナーであれば、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者を同乗者とみなしてその同乗者の有無を判定する。(ステップ12)。画像処理装置3により同乗者がいないと判定されれば、ECU1は、事前に登録されているオーナー設定の車高調整位置や車高調整速度になるよう乗車前に車高調整用アクチュエータ5に駆動制御信号を出力する(ステップ13)。画像処理装置3により同乗者がいると判定されれば、ECU1は、画像処理装置3を用いて同乗者の身長測定をする(ステップ14)。そして、ECU1は、同乗者の身長測定結果と事前に登録されているオーナー身長とに基づいて一番背の低い人が座りやすい車高調整位置になるよう乗車前に車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ15)。座りやすい車高調整位置とは、図2で例示したデータマップで規定された車高調整位置である。例えば、一番背の低い人の身長が140cmと測定された場合、図2の「低」に該当するので、ECU1は、車高調整位置を「下」の意味するところである「標準上下位置に対し10cm下」の位置になるように制御する。なお、事前に登録されたオーナー設定値を用いずに、同乗者とともにオーナーの身長測定も行った上で最適な車高調整位置に制御するようにしてもよい。
【0026】
車高調整する際の調整量は車両のタイプによっても異なってくる。お尻をシートにのせてから乗車する車高の低いセダンタイプのような車両であれば、ユーザのお尻の高さの測定値とシートの座部の高さが合うように車高調整することによって乗車しやすくなる。一方、車両に足をかけてから乗車する車高の高いバンやワゴンタイプのような車両であれば、足の上げた高さ(実際に上げたときの測定値や直立している状態からの推定値)と足がかけられる車両部位(ステップやフロア)高さが合うように車高調整することによって乗車しやすくなる。
【0027】
[第2の実施例]図4は乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(b)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ20)、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者に身体の不自由があるか否かを判定する(ステップ21)。画像処理装置3は、身体の不自由がありと判定すれば、不自由な部位の特定をする(ステップ22)。
【0028】
足に障害があると判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「足障害」の欄に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、足の患部に負担がかからないようにするために車高を下げるような駆動制御信号を送信する(ステップ23)。腰に障害があると判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「足障害」の欄に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、腰に負担がかからないようにするために車高を上げるような駆動制御信号を送信する(ステップ24)。
【0029】
ステップ21において身体の不自由さがないと判断された場合、所定の車高調整標準位置に設定される(ステップ25)。なお、標準位置に設定するようなことはせずに、何も調整制御しないようにしてもよい。
【0030】
したがって、身体の不自由部位に応じて車両のタイプに合わせて最適な車高調整位置に制御することにより、乗降性が向上し、身体に過度な負担がかかるおそれもなくなる。特に、身障者やお年寄りにとっては優しい装置となる。
【0031】
[第3の実施例]第2の実施例は、身体の不自由部位に応じて車高調整位置を制御する例であったが、車高調整速度を制御するようにしてもよい。図5は乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。まず、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ30)、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者に身体の不自由があるか否かを判定する(ステップ31)。
【0032】
画像処理装置3により身体の不自由がありと判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「健常者」ではない欄(ここでは、「足障害」もしくは「腰障害」の欄)に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、車高調整標準速度より遅くなる駆動制御信号を送信する(ステップ32)。
【0033】
画像処理装置3により身体の不自由がないと判定されれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「健常者」の欄に基づいて、車高調整用アクチュエータ5に対し、車高調整標準速度の駆動制御信号を送信する(ステップ33)。
【0034】
したがって、車両に手をかけている場合もあるので、乗車前にゆっくりと車高調整をすることによって、乗車しやすくなる。なお、身体の不自由情報に基づいて「乗車中に」車高調整する際の車高調整速度を制御するようにしてもよい。車高調整標準速度よりも遅い速度で車高調整をすることによって、不自由な部位に負担がかからないようにする(例えば、腰を痛めているときは、腰にひびかぬようにする)ことも可能である。
【0035】
[第4の実施例]服装には、乗降動作しにくいものと乗降動作しやすいものがある。例えば、ズボンなどの足を広げることができる服装の場合であれば乗降動作しやすいが、タイトスカートや和服などの足をあまり広げることができない服装やハイヒールを履いている場合には乗降動作しにくい。そこで、本第4の実施例では、車高調整装置はユーザが身につけている服装に応じて車高調整位置を制御する。
【0036】
図6は乗車する際の車高調整装置がユーザの服装に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(c)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ40)、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者が身につけている服装を識別する(ステップ41)。
【0037】
ECU1は、乗降動作のしやすい服装と判断された場合には、図2のデータマップに基づいて、車高調整位置が標準位置となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ42)。なお、車高位置調整を制御しないようにしてもよい。
【0038】
ECU1は、乗降動作のしにくい服装と判断された場合には、図2のデータマップに基づいて、その服装に合わせて車高調整位置を標準位置に対し上げるまたは下げるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ43)。
【0039】
ここで、乗降性のしやすい服装・しにくい服装の判定は、服装に関する所定の基準に従って行われる。画像処理装置3は、服装テンプレート(ズボン、ロングスカート、ミニスカート、和服、ウェディングドレス、ハイヒール等)を有している。カメラ2による撮像画像と上述のテンプレートとの相関がとられることによって、抽出すべき正しい服装情報が取得可能となる。また、それらの服装情報のそれぞれに対し、乗降性の良否(例えば、乗降しにくい服装を、ロングスカート、ミニスカート、タイトスカート、和服、ウェディングドレス、ハイヒールとする)及び制御すべき車高調整位置をあらかじめ定めておく。
【0040】
このように定めておくことによって、例えば、以下のように車高調整位置が制御される。身につけている服装がロングスカートであると識別された場合、ECU1は車両下部のロッカー部によってロングスカートの裾が汚れないように車高調整位置を下げるように制御する。ミニスカートが識別された場合、お尻をシートにのせてから乗車する車高の低いセダンタイプのような車両であれば、ECU1は車高調整位置を上げるように制御する。足を広げることができないタイトスカートや和服やハイヒールが識別された場合、車両に足をかけてから乗車する車高の高いバンやワゴンタイプのような車両であれば、ECU1は車高調整位置を下げるように制御する。身につけている服装が乗車しやすいズボンと識別された場合、ECU1は車高調整位置を標準位置になるように制御する。
【0041】
したがって、ユーザの身につけている服装に合わせて最適な車高調整位置に制御することによって、乗車性が向上する。
【0042】
[第5の実施例]図7は乗車する際の車高調整装置がユーザの年齢に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(d)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ50)、スマートキー内蔵のIDコードに基づいてその車両のオーナーであるか否かを確認する(ステップ51)。オーナーであれば、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者を同乗者とみなしてその同乗者の有無を判定する。(ステップ52)。画像処理装置3により同乗者がいないと判定されれば、ECU1は、事前に登録されているオーナー設定の車高調整位置や車高調整速度になるよう乗車前に車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ53)。画像処理装置3により同乗者がいると判定されれば、ECU1は、画像処理装置3を用いて同乗者の年齢測定をする(ステップ54)。
【0043】
ECU1は、若年層と判断された場合には、図2のデータマップの若年層の欄に基づいて、標準速度で標準位置となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ55)。なお、幼年層と判断された場合には、図2のデータマップの幼年層の欄に基づいて、同様に、車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号が送信される
ECU1は、高年層と判断された場合には、図2のデータマップの高年層の欄に基づいて、標準速度よりも減速させて標準位置よりも下がるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ56)。
【0044】
したがって、年齢に応じて車高調整速度が制御されることにより、高齢者の場合にはゆっくり移動して驚かさないようにすることができる。速い調整速度でも気にならない若年層であれば、標準速度よりも上げて、調整速度が遅いことによるいらだち感をなくすことができる。また、年齢に応じて車高調整位置が制御されることにより、乗車性が向上する。特に、身体の動きが機敏ではない高齢者の場合、車高を下げることによって、短時間に容易に乗り込むことが可能となる。
【0045】
[第6の実施例]車高調整の際に、ユーザが車両に近づいてくるときの接近速度を検出して車高調整速度の制御をするようにしてもよい。図8は乗車する際の車高調整装置がユーザの車両への接近速度に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。まず、図12(e)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ60)、画像処理装置3はその検知された人の自車両への接近速度を動画データに基づいて測定する(ステップ61)。画像処理装置3を用いずとも、レーザーレーダ、ミリ波レーダ,超音波レーダ等を用いて測定するようにしてもよい。ECU1は、その接近速度が所定速度以上(例えば、3m/s以上)であるか否かを判断する(ステップ61)。
【0046】
所定速度以上でなければ、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「接近速度」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ62)。
【0047】
所定速度以上であれば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「接近速度」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度よりも速くなるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ63)。
【0048】
つまり、ユーザの自車両への接近速度に基づいて、車高調整速度を決めている。ユーザの自車両への接近速度は、そのユーザの心理的な性急度合を表しているといえる。ユーザは、気持ちが急いているのに調整速度がゆっくりであると、いらだち感を覚えてしまう。そこで、接近速度が速ければ、気持ちが急いていると判定し調整速度を速める。接近速度が遅ければ、気持ちが急いてはいないと判定し調整速度を標準速度のまま(またはそれ以下)にする。したがって、このような調整速度の制御をすることによって、ユーザの心理状態に合った心地よさを実現することができる。もちろん、調整速度の制御だけでなく、車高調整位置の制御に上記の接近速度を用いてもよい。気持ちが急いているときに、最適な車高調整位置に制御されることによって、足を車両下部に引っ掛けるおそれもなく乗車することができる。
【0049】
また、自車両へ接近速度というものは、ユーザが乗車しようとしている状況において検出されるものである。しかし、車内でのユーザの動作速度を画像処理装置3等によって検出することによって、ユーザが降車しようとしている状況であっても、上記同様に考えることができる。車内でのユーザの動作速度とは、例えば、ユーザの頭部の動きや手振り等の振る舞う動きの速度である。つまり、車内でのユーザの動きを観測して、所定時間内の動作速度の平均値を算出し、その算出値が所定の動作速度以上であるのならば、調整速度を標準速度よりも速い速度に設定する。したがって、このような調整速度の制御をすることによって、ユーザの心理状態に合った心地よさを降車時でも実現することができる。もちろん、調整速度の制御だけでなく、車高調整位置の制御に上記の車内での動作速度を用いてもよい。気持ちが急いているときに、最適な車高調整位置に制御されることによって、つまずくおそれもなく降車することができる。
【0050】
[第7の実施例]車高調整の際に、乗車しようとする人の態様や車両周囲の状況を検出することによって、車高調整位置や車高調整速度を制御してもよい。図9は乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整位置を制御する一例を示す図である。まず、図12(f)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ70)、天候が何であるかが判断される(ステップ71)。雨が降っていると判定されると、ステップ72に移行する。降雨の判定は、カメラ2によって撮像された画像に基づいて画像処理確認された水たまりや降雨状況、または、雨滴センサによる検出値によって行われる。ステップ72では、画像処理装置3はカメラ2によって撮像された車両の周囲にいる者が所持物として傘を持っているか否かを判断するとともにその傘をさしているか否かを判断する。傘をさしていると判断されれば、ECU1は、図2のデータマップの「天候」の欄に基づいて、乗車時に傘をしまいやすいように最適な車高調整位置になるように車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ73)。
【0051】
例えば、お尻をシートにのせてから乗車する車高の低いセダンタイプのような車両であれば、しっかりお尻をシートにのせて傘をしまいやすいように車高調整位置を晴れのときよりも下げるように制御する。なお、ステップ72で傘をさしていないと判断された場合というのは、雨が降っているにもかかわらず傘をささないでいる状態である。そのため、急いで足から乗車する場合もある。このような場合には車高調整位置を晴れのときより上げるように制御してもよい。これによって、車両に足をかけた状態では背筋が伸びることになり頭をぶつける心配もないので乗車しやすくなる。一方、車両に足をかけてから乗車する車高の高いバンやワゴンタイプのような車両であれば、傘をたたみながら足から乗車しようとする。そのため、車両に足をかけやすいように車高調整位置を晴れのときよりも下げるように制御する。
【0052】
[第8の実施例]第7の実施例は、車高調整位置を制御する例であったが、車高調整速度を制御するようにしてもよい。図10は乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。まず、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ80)、天候が何であるかが判断される(ステップ81)。雨が降っていると判定されると、ECU1は、図2のデータマップの「天候」の欄に基づいて、車高調整速度を標準速度よりも速くなるように車高調整用アクチュエータ5に駆動信号を出力する(ステップ82)。したがって、雨が降っていて急いで乗り込みたいような状況では、車高調整速度を速く制御し、調整時間による待ち時間を短くし、ユーザにいらだちを感じさせることなく、乗車しやすくすることができる。
【0053】
[第9の実施例]車高調整の際に、車両のまわりには必ずしもその車両に乗り込もうとする人がいるわけではない。オーナー以外の同乗しようとする者がそのオーナーを車両のまわりで待っている場合もある。したがって、自車両のまわりに、他の車両が隣接して駐車していたり、小さな子供がいたりした場合、車高調整の際に自車両がそれらにぶつからないようにしなければならない。図11は乗車する際の車高調整装置が車両周囲の状況に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。まず、図12(g)のように、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知すると(ステップ90)、画像処理装置3はカメラ2によって車両の周囲(ユーザと車両との相対距離の範囲内)に人や車がいるか否かを判定する(ステップ91)。
【0054】
人や車両が周囲に存在しなければ、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「車両周囲」の「障害物なし」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度となるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ92)。
【0055】
人や車両が周囲に存在するならば、ECU1は、認識データ記憶装置4に記憶された図2のデータマップの「車両周囲」の「障害物あり」の欄に基づいて、車高調整速度が標準速度よりも遅くなるように車高調整用アクチュエータ5の駆動制御信号を送信する(ステップ93)。
【0056】
したがって、急に車高が変化することによって、周囲の人を驚かさないようにし、周囲の人や車にぶつからないようにすることができる。なお、車両の周囲に人や車がいるか否かを停車中に常時判定しているのは、バッテリーが上がってしまうおそれがある。それを防ぐため、スマートキーを持った人が受信エリア内に入ったことを検知した後に、画像処理装置3等の車両周囲を監視する装置の電源が投入され、周囲の監視を開始する。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0058】
上述の実施例では、乗車時を中心に詳説していたが、乗車した際の車高調整位置や速度等の車高調整量を認識データ記憶装置4等の記憶手段に記憶しておくことによって、同じ調整量にECU1が降車前に制御することによって、降車しやすくなる。もしくは、乗車しているユーザの身体状態や態様を、降車の際にあらためて上記のように取得することによって、ECU1が図2のような降車時のデータマップに基づいて最適な調整量に制御してもよい。ここで、降車の判定は、例えば、インサイドハンドルがON、かつ、車速0、かつ、パーキングレバースイッチON、かつ、イグニッションキーOFFが検出されることによって行われるようにすればよい。
【0059】
また、ECU1は、乗降前にユーザの身体情報等を画像処理装置3等により取得することによって、車高調整する際の調整量を乗降前に制御していた。しかし、スマートキーにIDコードとともにユーザの身体情報を内蔵させておき、IDコードの取得とともにその身体情報を取得することによって、その身体情報に合わせて乗降前に車高調整する際の調整量が制御されてもよい。
【0060】
また、上述の実施例の記載では、ユーザの所持物情報として傘を例に挙げたが、杖、竿、スキー等の所定長さ以上の長尺物であってもよい。図2のようなデータマップの中で、これらの長尺物の種類のそれぞれに対し、その長尺物の長さに最適な車高調整位置が規定される。そして、上述の実施例と同様に、そのデータマップに基づいて車高調整位置が制御される。例えば、スキーを持っていることが検出されれば、車両(ルーフのスキーキャリアやトランクスルー)にスキーを載せやすいようにもしくは下ろしやすいように車高を下げるように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明における車高調整装置の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】身体情報や人の態様と車高調整する際の調整量との対応関係を示すデータマップの一例である。
【図3】乗車する際の車高調整装置が身長に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。
【図4】乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。
【図5】乗車する際の車高調整装置が身体の不自由状態に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。
【図6】乗車する際の車高調整装置がユーザの服装に応じて車高調整位置を制御する一例を示すフロー図である。
【図7】乗車する際の車高調整装置がユーザの年齢に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。
【図8】乗車する際の車高調整装置がユーザの車両への接近速度に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。
【図9】乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整位置を制御する一例を示す図である。
【図10】乗車する際の車高調整装置が天候に応じて車高調整速度を制御する一例を示す図である。
【図11】乗車する際の車高調整装置が車両周囲の状況に応じて車高調整速度を制御する一例を示すフロー図である。
【図12】乗車時の状況を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ECU
2 カメラ
3 画像処理装置
4 認識データ記憶装置
5 車高調整用アクチュエータ
7 ドアコントロール装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報をユーザから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された身体情報に基づいて車高調整する際の調整量を乗降前に制御する制御手段とを備えることを特徴とする車高調整装置。
【請求項2】
前記調整量は、車高調整位置または車高調整速度である請求項1記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記身体情報は、前記ユーザを撮像した撮像画像の画像処理によって取得される請求項1記載の車高調整装置。
【請求項4】
前記身体情報は、体格情報、身体の不自由情報、服装情報または年齢情報を含む請求項1記載の車高調整装置。
【請求項5】
前記乗降前の判断は、乗降ドアの開操作を検知する検知手段の検知結果に基づいて行われる請求項1記載の車高調整装置。
【請求項6】
前記体格情報は身長に関する情報を含み、
前記制御手段は、前記身長が所定値より高い場合には低い場合よりも車高調整位置を高く制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項7】
前記体格情報は身長に関する情報を含み、
前記制御手段は、乗降するユーザが複数いる場合、その複数のユーザの中で最も身長の低いユーザに合わせて車高調整位置を制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項8】
前記身体の不自由情報は、足及び腰の少なくとも一つに関する情報を含む、請求項4記載の車高調整装置。
【請求項9】
前記制御手段は、足が不自由の場合は腰が不自由な場合よりも車高調整位置を低く制御する請求項8記載の車高調整装置。
【請求項10】
前記服装情報の前記ユーザが身につけた服装について、服装に関する所定の基準に従ってその服装の乗降性の良否を判定する判定手段を備え、
前記制御手段は、前記判定手段による判定結果に従って車高調整位置を制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記年齢情報の年齢が所定年齢以上の場合には該所定年齢より若い場合よりも車高調整速度を遅く制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項12】
前記ユーザの動作速度を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された動作速度が所定値以上の場合に車高調整する際の車高調整量を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項13】
前記ユーザの動作速度を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記ユーザの車両への接近速度が所定速度より速い場合には遅い場合よりも車高調整速度を速く制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項14】
前記動作速度は自車両への接近速度である請求項12または13記載の車高調整装置。
【請求項15】
前記動作速度は車内での身体の動作速度である請求項12または13記載の車高調整装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記ユーザと車両との相対距離に基づいて車高調整速度を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項17】
前記制御手段は、降雨状態を検知した場合に前記調整量を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項18】
前記降雨状態は、前記取得手段により取得された前記ユーザの傘の使用状態に基づいて検知される請求項17記載の車高調整装置。
【請求項19】
前記取得手段が前記ユーザの所持物情報を取得して、
前記制御手段は、前記所持物情報の態様に基づいて前記調整量を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項20】
前記制御手段は、前記ユーザが所定長さ以上の長尺物である場合、該長尺物の長さに基づいて車高調整位置を制御する請求項19記載の車高調整装置。
【請求項1】
車両での乗降性に影響を及ぼす身体情報をユーザから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された身体情報に基づいて車高調整する際の調整量を乗降前に制御する制御手段とを備えることを特徴とする車高調整装置。
【請求項2】
前記調整量は、車高調整位置または車高調整速度である請求項1記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記身体情報は、前記ユーザを撮像した撮像画像の画像処理によって取得される請求項1記載の車高調整装置。
【請求項4】
前記身体情報は、体格情報、身体の不自由情報、服装情報または年齢情報を含む請求項1記載の車高調整装置。
【請求項5】
前記乗降前の判断は、乗降ドアの開操作を検知する検知手段の検知結果に基づいて行われる請求項1記載の車高調整装置。
【請求項6】
前記体格情報は身長に関する情報を含み、
前記制御手段は、前記身長が所定値より高い場合には低い場合よりも車高調整位置を高く制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項7】
前記体格情報は身長に関する情報を含み、
前記制御手段は、乗降するユーザが複数いる場合、その複数のユーザの中で最も身長の低いユーザに合わせて車高調整位置を制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項8】
前記身体の不自由情報は、足及び腰の少なくとも一つに関する情報を含む、請求項4記載の車高調整装置。
【請求項9】
前記制御手段は、足が不自由の場合は腰が不自由な場合よりも車高調整位置を低く制御する請求項8記載の車高調整装置。
【請求項10】
前記服装情報の前記ユーザが身につけた服装について、服装に関する所定の基準に従ってその服装の乗降性の良否を判定する判定手段を備え、
前記制御手段は、前記判定手段による判定結果に従って車高調整位置を制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記年齢情報の年齢が所定年齢以上の場合には該所定年齢より若い場合よりも車高調整速度を遅く制御する請求項4記載の車高調整装置。
【請求項12】
前記ユーザの動作速度を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された動作速度が所定値以上の場合に車高調整する際の車高調整量を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項13】
前記ユーザの動作速度を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記ユーザの車両への接近速度が所定速度より速い場合には遅い場合よりも車高調整速度を速く制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項14】
前記動作速度は自車両への接近速度である請求項12または13記載の車高調整装置。
【請求項15】
前記動作速度は車内での身体の動作速度である請求項12または13記載の車高調整装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記ユーザと車両との相対距離に基づいて車高調整速度を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項17】
前記制御手段は、降雨状態を検知した場合に前記調整量を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項18】
前記降雨状態は、前記取得手段により取得された前記ユーザの傘の使用状態に基づいて検知される請求項17記載の車高調整装置。
【請求項19】
前記取得手段が前記ユーザの所持物情報を取得して、
前記制御手段は、前記所持物情報の態様に基づいて前記調整量を制御する請求項1記載の車高調整装置。
【請求項20】
前記制御手段は、前記ユーザが所定長さ以上の長尺物である場合、該長尺物の長さに基づいて車高調整位置を制御する請求項19記載の車高調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−143121(P2006−143121A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338964(P2004−338964)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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