説明

軌道と道路両用作業車

【課題】軌道用作業車の機能を利用して道路整備作業も可能にすると同時に、駅構内における線路上の清掃なども同時に実施可能とし、軌道用作業が無い間であってもこれら高価な軌道用作業車の有効利用を可能にする。
【解決手段】エンジンを備え道路用走行輪で道路上を走行可能な車体1と、車体1の前後端部において、車体底部から軌道面へ向けてに昇降する昇降装置4f、4aと、昇降装置4f、4aのそれぞれの下端に軸支された線路軌道用走行輪3f、3aと、軌道10の道床7面に接する回転ブラシ51、57を有する、車体1に搭載された軌道バラスト整備装置5とを備え、回転ブラシ51、57は、道路清掃用の回転ブラシとしても機能できるようにされてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道と道路両用作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路用のゴムタイヤ走行輪と、線路用の鉄製走行輪とを備えた、一般に軌陸車と称される軌道用作業車が広く知られている(特許文献1、2)。
【0003】
上記軌道用作業車は、道路から線路へあるいは線路から道路へと移行する際には、道路と線路との交差部である踏み切りを利用するなどして双方への移行を行うようにされている。
【0004】
このように軌道用作業車は、目的地までは道路を利用して移動できるので、迅速な移動と必要な軌道工事が短時間に済ませることができるといった利点を有する。
【特許文献1】特開平11−209087号公報
【特許文献2】特開平6−305313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記軌道用作業車は、道路走行に関しては単にゴムタイヤ走行輪で走行するだけで道路に対する何らかの作業をする機能は有していなかった。
【0006】
従って、例えば道床締め固め工事や、道床整備工事など軌道作業のないときは上記軌道用作業車は車庫で待機させざるを得ない。このため、高価な軌道用作業車を長期間休止させなければならない場合もあり、その間経済的な無駄がかさむといった問題があった。
【0007】
また、ホームに沿った線路上には吸殻や新聞紙などのごみ類が散乱しやすい。従来ではこれらごみ類は駅職員の手作業で清掃除去されていた。しかし、この作業は時間がかかり効率も悪い問題があった。
【0008】
この発明は、上記問題を解消するため、軌道用作業車の機能を利用して道路整備作業も可能にすると同時に、駅構内における線路上の清掃なども同時に実施可能とし、軌道作業が無い間であってもこれら高価な軌道用作業車の有効利用を可能にすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、この発明の軌道と道路両用作業車は、エンジンを備え道路用走行輪で道路上を走行可能な車体と、前記車体の前後端部において、車体底部から軌道面へ向けて昇降する昇降装置と、該昇降装置のそれぞれの下端に軸支された線路軌道用走行輪と、前記軌道の道床面に接する回転ブラシを有する、前記車体に搭載された軌道バラスト整備装置とを備え、前記回転ブラシは、道路清掃用の回転ブラシとしても機能できるようにされてなるものである。
【0010】
上記において、軌道バラスト整備装置は、車体の進行方向に対し直交する軸線周囲に回転する回転ブラシと該回転ブラシから掻き出されたバラストを前記車体の幅方向へ搬送排出するコンベヤとを備えた均し部と、前記車体の幅方向両端から前記車体の前後軸方向へ延出して片持ち支持された二本一対の回転ブラシであって、前記片持ち支持部を中心として扇状に回動可能に支持されたバラスト集積部とを備え、前記均し部およびバラスト集積部における回転ブラシを、道路清掃用の回転ブラシと交換可能とすることにより道路清掃用の回転ブラシとして機能できるようにしてもよい。
【0011】
また、前記軌道バラスト整備装置の均し部を下方開口型のケーシングでカバーし、さらに該ケーシングの天板部を前記車体に搭載した集塵吸引装置に吸引ダクトで連通し、集塵機能を持たせることもできる。
【0012】
前記軌道バラスト整備装置の均し部を地表面方向へ向けて昇降可能に前記車体フレームに支持することもできる。
【0013】
前記車体に道床締め固め装置を前記軌道バラスト整備装置とは別に設けてもよい。この場合、前記軌道の道床締め固め装置を前記車体に対し着脱自在にすることもできる。
【0014】
前記軌道バラスト整備装置を、前記車体後端から突き出した姿勢位置から前記車体フレーム上へと折り畳み収納可能に搭載することもできる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の軌道と道路両用作業車は、軌道工事がない間は道路清掃用あるいは駅構内の軌道清掃用として有効利用できる。このため高価な軌道用作業車であっても軌道工事の無い間の経済的な無駄が防止できる。
【0016】
なお、軌道バラスト整備装置を道路清掃あるいは駅構内軌道の清掃用として機能させるため回転ブラシを道路用の回転ブラシと互換可能なようにすることが望ましい。
【0017】
軌道バラスト整備用の回転ブラシは、そのまま道路や駅構内軌道清掃用として使用することも可能である。しかし、バラスト整備用のブラシは高い剛性と強度を有するので、対象とする道路や軌道によっては清掃用に適さない場合があるからである。
【0018】
また、軌道バラスト整備装置の均し部をケーシングで覆えば、掻き出されたバラストの飛散が防止でき、さらにケーシング内部空間を吸塵装置へ連通して集塵可能な空間とすれば、軌道作業時や道路、構内軌道の清掃時に舞い上がる塵埃類の周囲飛散が防止できる。
【0019】
また、軌道バラスト整備装置の均し部を地表面へ向け昇降可能にすれば、軌道や道路の高さに応じて最適な位置にセットできる。したがって、よりきめの細かい整備ないしは清掃作業が可能となる。
【0020】
さらに車体に道床締め固め装置を別に設けてもよい。
【0021】
軌道作業時には道床のバラスト整備の際、道床の締め固め作業が平行して実施されることが多い。従ってこのような構成とすることで、道床の均らし作業と締め固め作業の二種の軌道作業が一台の作業車で同時に実施可能となる。
【0022】
そして、上記道床締め固め装置を車体に対し着脱自在にしておけば、道路整備作業時には取り外すことができる。したがってその分車体重量を軽くでき、道路作業時の無駄な運行消費が防げる。
【0023】
また、上記において、前記軌道バラスト整備装置を車体後部から車体上へと折り畳み収納可能としておけば、道路走行時の車体の地表に対する投影占有面積が小さくなり、それだけ移動が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の側面図、図2は同じく平面図、図3は背面図、図4は軌道走行状態を示す側面図である。
【0025】
図1において、軌道と道路両用作業車(以下、単に作業車という)は、図から明らかなように従来知られているトラックが使用される。このトラックとしては、例えば2トントラックや4トントラックなどが好適に使用される。そして、作業車の車体1には、トラックが本来備えているエンジン例えばディーゼルエンジン(図示せず)を備え、運転席11および荷台12を備えている。また、道路用走行輪として例えばゴムタイヤ2、2を有し、これにより道路10上を走行可能とされている。
【0026】
車体1の前後には軌道用走行輪、たとえば鉄製走行輪3f、3aが設けられている。この鉄製走行輪3f、3aは昇降装置4f、4aでゴムタイヤ2の接地面より下方へ突き出すようにされている。そして、突き出した後は、図4に示すように軌道レール9上を走行できるようにされている。
【0027】
昇降装置は前部昇降装置4fと後部昇降装置4aとに分かれ、前部昇降装置4fは、図5〜図7にも示すように車体フレーム13に設けた支持軸41f周囲に回転可能に軸支されたブラケット42と、このブラケット42を回転付勢するピストンシリンダ装置43fとを備えている。ブラケット42の下縁に軸受44が設けられ、この軸受けに前部の鉄製走行輪3fが軸支されている。
【0028】
ピストンシリンダ装置43fの一端45fは支持軸41fから径方向へ離れたブラケット42上に連接されている。また、ピストンシリンダ装置43fの他端46fは車体フレーム13に軸支されている。
【0029】
従って、ピストンシリンダ装置43fを伸縮させるとブラケット42は支持軸41f周囲に回転する。そして、鉄製走行輪3fが図5〜図7に示すように上昇位置(図5)より、レール軌道9に乗る(図6〜図7)位置まで下降する。
【0030】
同様に後部昇降装置4aは、図8〜図10にも示すように、車体フレーム13に設けた支持軸41a周囲に回転するリンクレバー47と、このリンクレバー47を回転付勢するピストンシリンダ装置43aとを備えて構成されている。
【0031】
リンクレバー47の下部に車軸48が固定され、この車軸48に後部の鉄製走行輪3aが軸支されている。
【0032】
ピストンシリンダ装置43aの一端45aは支持軸41aから径方向へ離れたリンクレバー47上に連接されている。また、ピストンシリンダ装置43aの他端46aは車体フレーム13に軸支されている。
【0033】
従って、ピストンシリンダ装置43aを伸縮させるとリンクレバー47が支持軸41a周囲に回転する。そして、鉄製走行輪3aはレール軌道9に対する上昇位置(図8)より、レール軌道9に乗る位置まで下降する(図9〜図10)。
【0034】
そして、図4に示すように鉄製車輪3f、3aが下降したときの支持高さHが、道路走行用のゴムタイヤ2、2の支持高さhより高くなるようにされている。
【0035】
これにより作業車1は軌道9上を走行可能とされている。
【0036】
鉄製走行輪3f、3aにはそれぞれ油圧駆動モーター31f(図11)、31a(図2、図1)が設けられている。
【0037】
作業車の車体1には作業用エンジンおよび油圧ポンプ装置32、油圧制御装置33が搭載され、昇降装置4f、4aのピストンシリンダ装置43f、43aを始め、鉄製走行輪3f、3aの油圧駆動モーター31f、31aなどを駆動するようにされている。
【0038】
制御装置33は、図示のように車体外面に設けるほか、作業車1の運転席12などの内部或いは、作業車外からのリモートコントロール装置として備えることもできる。
【0039】
なお、この軌道走行用の鉄製走行輪3f、3aは広軌道,狭軌道など軌道の幅に合うように調節できるような構成にすることができる。
【0040】
上記の動力源の構成例として、油圧装置の場合を示したがエンジンや油圧ポンプ装置32に替えてエンジンで駆動される発電ユニット(図示せず)とし、油圧制御装置33に替えて電気制御装置(図示せず)を設け、さらに鉄製走行輪3f、3aの駆動装置を電動モーターとすることで、電気的に駆動されるようにすることもできる。
【0041】
車体1の後部には、軌道バラスト整備装置5が搭載されている。この軌道バラスト整備装置5は、図4に示すように軌道の道床7の表面を均す均し部5aと軌道の道床7の両側法面8(図12)を整形するバラスト集積部5bとを備えている。
【0042】
均し部5aは、作業車1の進行方向に対して直交する軸線周囲に回転する回転ブラシ51と、この回転ブラシ51の回転によって掻き出されたバラスト(図示せず)を作業車1の車体幅方向へ搬送排出するベルトコンベヤ52とを有している。
【0043】
このベルトコンベヤ52は、図3、図12に示すように無端ゴムベルト52aを駆動ローラー52bと従動ローラー52cとの間に巻き掛け、アイドルローラー52d、52dで張り調整するように構成されている。無端ゴムベルト52aの側面には積載物のこぼれ落ちを防ぐカバー52e、52eが設けられている。
【0044】
この均し部5aにおける回転ブラシ51は、道床に基準面より高く積まれたバラストを掻き出す。従って、掻き出されたバラストが周囲に飛散しないよう周囲が下方開放型のケーシング54で覆われている。
【0045】
そして、均し部5aは、軌道面に対して昇降可能なようにピストンシリンダ装置55を介して支持枠56に支持されている。
【0046】
さらに、図示例のケーシング54の天板部54aには、吸引ダクト61が連通され、車体1に搭載された吸引装置6により塵埃が吸引除去されるようにされている。
【0047】
次に、バラスト集積部5bは、車体1の幅方向両端から車体1の前後軸方向へ延出する回転ブラシ57、57を有している。この回転ブラシ57、57は支持枠56に片持ち支持されている。なお、回転ブラシ57、57の基部57aには、図示は省略されているが油圧モーターと回転ブラシ57のチャック装置が設けられている。そして、基部57aは支持枠56に設けた縦軸56a、56aに回転自在に軸支されている。
【0048】
支持枠56と基部57a、57aとの間にピストンシリンダ装置58、58が架設されている。このピストンシリンダ装置58a、58aを伸縮させることで、回転ブラシ57 、57は図2あるいは図11に矢印A…Aで示すように縦軸56aを軸として水平面内で扇状に回動するようにされている。
【0049】
また、回転ブラシ57、57の基部57aは側面視が図1、図4に示すようにL字型のレバー57b、57bの互いに延出された辺の先端同士を横軸59で連接した構造とされている。そしてL字型のレバー57b、57bの他の対向辺間にピストンシリンダ装置58bが架設されている。
【0050】
従って、ピストンシリンダ装置58bを伸縮させることで、回転ブラシ57、57は図4に矢印Bで示すように横軸59を中心として垂直面内で回動するようにされている。
【0051】
従って、回転ブラシ57、57は、ピストンシリンダ装置58a、58bをそれぞれ適宜操作することで縦軸56a、横軸59を回転中心として任意方向へ首振り運動可能とされている。
【0052】
そして、軌道整備作業時には図12の右半部分に示すように道床7の法面8に合わせて傾斜させる。また、道路掃除時には図3に示すように道路10の表面に沿わせ進行方向に対して車体の側方へ張出させる。
【0053】
また、均し部5aとバラスト集積部5bを支持する支持枠56は車体1に設けたヒンジ部14を中心として車体の幅方向軸を中心として回動可能にされている。そして、油圧モーター15によって、図1または図4に矢印Cで示すように回動し、図に一点差線の仮想線で示すように車体1の荷台フレーム13上に収納できるようにされている。
【0054】
上記において均し部5a、バラスト集積部5bにおける各回転ブラシ51、57はいずれも消耗が激しいため交換が容易な構造とされ、その交換用回転ブラシとしてバラスト整備に適したものと、道路や軌道の清掃に適したものとが用意される。
【0055】
バラスト整備用の回転ブラシとしては、例えばブリッスル(ブラシの毛部分)が金属線条で構成された高剛性、高強度なものが使用される。道路や軌道清掃用としてはブリッスルが棕櫚や竹繊維の天然繊維、または合成繊維のフィラメントで構成された弾性に富むやわらかいものが使用される。
【0056】
車体1には、上記のバラスト整備装置5のほかに、道床締め固め装置17が搭載されている。この道床締め固め装置17は、図4および図11に示すように、車体1の側方へ張り出す伸縮アーム18と道床方向に対して昇降する伸縮ロッド19と、この伸縮ロッド19の道床に対面する端部に設けられた道床締め固めプレート20とを備えている。
【0057】
道床締め固めプレート20には、起振装置21が付設されている。そして、振動する道床締め固めプレート20を、伸縮アーム19で道床表面に押さえ付けることで道床、特に図12の左半部に示すように道床7と法面8の境の肩部を締め固めるようにされている。
【0058】
この道床締め固め装置17は、車体1に着脱自在に取り付けられており、作業車を道路清掃用として使用する場合は、図1〜図3に示すように取り外せるようにされている。
【0059】
また、作業車の車体1には、図示は省略されているが、作業用エンジンおよび油圧ポンプ装置32の搭載箇所に、散水装置および水タンクが着脱自在に搭載可能とされている。
【0060】
次に上記作業車の作動について説明する。
【0061】
まず、軌道用作業車として使用する場合は、図1に一点鎖線の仮想線で示すように軌道バラスト整備装置5を車体1のフレーム13上に折り畳み収納する。この状態で道路を走行し、軌道工事現場最寄りの踏み切りへ向かう。踏み切りに至ればハンドル操作により車体1を線路方向へ向ける。次いで昇降装置4f、4aのピストンシリンダ装置43f、43aを駆動させてブラケット42、リンクレバー47を下方へ回動させる。鉄製走行輪3a、3bを線路上に圧接し、さらにピストンシリンダ装置43f、43aを駆動させ図4に示すように車体1を持ち上げる。その結果、ゴムタイヤ2、2は地表面から浮く。
【0062】
この状態となれば作業車は、鉄製走行輪3a、3bで軌道走行が可能となる。以後は、鉄製走行輪3a、3bを駆動輪として線路上を軌道工事の施工現場へ向かう。
【0063】
工事現場では、軌道バラスト整備装置5をヒンジ部14周りに回転させて、車体1の後方へ張り出す。
【0064】
次いで、ピストンシリンダ装置55により均し部5aの全体高さを道床面に合わせて調整する。また、回転ブラシ57、57の左右方向および上下方向角を道床法面の傾斜角に合わせて調整する。これら準備が終われば回転ブラシ51、57を回転させる。そして、必要に応じて散水装置で山水しながら図4、図11に示すように作業車を矢印Xで示す方向へゆっくりと進行させる。
【0065】
バラスト集積部5bでは作業車のゆっくりした進行に伴い、回転ブラシ57、57によって法面の余剰バラストが、線路上へと集められる。これによって正確な法面が形成されていく。
【0066】
均し部5aでは、線路上へ集められたバラストや、もともと線路上に余剰に積み上げられていたバラストが、回転ブラシ51でベルトコンベヤ52上へ跳ね上げられる。
【0067】
なお、この時、散水していれば塵埃類の飛散が有効に防止される。さらに集塵装置6を作動させていれば、回転ブラシ51で掻き起こされた塵埃類は吸引ダクト61へ吸引され周囲への飛散が防止される。これらにより作業環境が良好に維持される。
【0068】
コンベヤべルト52は、その余剰のバラストを線路側方へと排出し、これにより作業車の進行に伴って道床の断面形状が正確に形作られていく。
【0069】
次いで、締め固め装置17では、締め固めプレート20が、振動しながら道床を押さえつけ、締め固めて行く。
【0070】
これにより道床は連続的に整備されていく。
【0071】
このようにして所定の軌道整備作業が終了すれば、各回転ブラシ51、57および吸塵装置6を停止させる。再びバラスト整備装置5をヒンジ14回りに矢印C方向へ回転させて車体1上に折り畳み、鉄製車輪3f、3aによる走行で、最寄りの踏み切りへと向かう。
【0072】
踏み切りでは、鉄製走行輪3f、3aを上昇させれば、相対的にゴムタイヤ2,2が下降して接地するので、以後は道路走行が可能となる。
【0073】
次に、道路清掃を行う場合は、図1〜図3に示すように道床締め固め装置17を車体から取り外し、また、散水装置や水タンクなども不要であれば取り外して車体を軽くする。
【0074】
また、必要に応じ均し部5aの回転ブラシ55および、バラスト集積部5bの回転ブラシ57を道路清掃用に適したやわらかい材質の回転ブラシに交換する。
【0075】
次いで、作業車を運転して目的の道路へと向かう。目的の道路へ到着すれば、バラスト整備装置5を道路に対面するように矢印C方向へ回転させる。次いで、均し部5aの路面に対する高さをピストンシリンダ装置55で調整する。また、回転ブラシ57,57を道路幅に合わせて必要な角度だけ拡開させる。そして、均し部5aの回転ブラシ55および集積部5bの回転ブラシ57を回転させて作業車を矢印X方向へとゆっくり進行させる。
【0076】
道路上の塵埃はブラシ55で掻き揚げられ、吸塵装置6により除去される。従って、作業車の通過した後の道路面は、きれいに清掃される。
【0077】
なお、道路清掃では、均し部5aの回転ブラシ55だけを使い、バラスト集積部5bの回転ブラシ57、57のいずれか一方または両者を使用しなくてもよく、これらの使用状態は道路幅や道路表面の状態により適宜選択できる。
【0078】
そして、作業終了後はバラスト整備装置5をヒンジ14回りに油圧モーターにより矢印C方向へ回転させて車体1上に折り畳むのである。
【0079】
また、駅構内軌道の清掃を行う場合は、駅の最寄りの踏み切りで鉄製走行輪3f、3aを線路上へ降ろし、軌道走行可能として駅構内へと進み、そこで道路清掃と同じ要領で、例えばやわらかい材質の回転ブラシを用いて軌道内清掃を行うのである。
【0080】
軌道上に散乱する吸殻、新聞紙などのごみ類は軽いので、道路清掃で使用される回転ブラシで容易に掻きあげられ、直ちにこれらは吸引ダクト61から吸引除去される。そして、この時に使用される回転ブラシはやわらかい材質なため、バラストを掻き出すことなくごみ類だけがきれいに除去される。
【0081】
この発明の作業車1は、一台の作業車でありながら軌道整備と道路・軌道清掃の両方の実施が可能である。従って、軌道工事が無い場合でも、高価な設備を遊休させる無駄が省け装置の経済的利用が図れる。
【0082】
また、従来では機械的な実施が困難であった駅構内の軌道上の清掃もきわめて容易にかつ短時間で行えるなど種々の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の側面図である。
【図2】この発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の平面図である。
【図3】この発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の背面図である。
【図4】この発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の軌道走行状態を示す側面図である。
【図5】前部鉄製走行輪の昇降装置の上昇時の説明図である。
【図6】前部鉄製走行輪の昇降装置の上下中間位置における説明図である。
【図7】前部鉄製走行輪の昇降装置の下降時の説明図である。
【図8】後部鉄製走行輪の昇降装置の上昇時の説明図である。
【図9】後部鉄製走行輪の昇降装置の上下中間位置における説明図である。
【図10】後部鉄製走行輪の昇降装置の下降時の説明図である。
【図11】この発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の軌道走行状態を示す平面図である。
【図12】この発明の実施の形態における軌道と道路両用作業車の軌道走行状態を示す背面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 …軌道と道路両用作業車の車体
2 …道路用走行輪としてのゴムタイヤ
3f…前部鉄製走行輪
3a…後部鉄製走行輪
4f…前部昇降装置
4a…後部昇降装置
5 …軌道バラスト整備装置
5a…均し部
5b…バラスト集積部
6 …吸引装置
9 …軌道レール
10 …道路
11 …運転席
12 …荷台
13 …車体フレーム
32 …作業用エンジンおよび油圧ポンプ装置
33 …油圧制御装置
41f…前部支持軸
41a…後部支持軸
43f…前部ピストンシリンダ装置
43a…後部ピストンシリンダ装置
47 …リンクレバー
48 …車軸
51 …回転ブラシ
52 …ベルトコンベヤ
54 …下方開放型のケーシング
55 …ケーシング用ピストンシリンダ装置
56 …支持枠
57 …回転ブラシ
61 …吸引ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備え道路用走行輪で道路上を走行可能な車体と、前記車体の前後端部において、車体底部から軌道面へ向けて昇降する昇降装置と、該昇降装置のそれぞれの下端に軸支された線路軌道用走行輪と、前記軌道の道床面に接する回転ブラシを有する、前記車体に搭載された軌道バラスト整備装置とを備え、前記回転ブラシは、道路清掃用の回転ブラシとして機能できるようにされてなる軌道と道路両用作業車。
【請求項2】
前記軌道バラスト整備装置が、車体の進行方向に対し直交する軸線周囲に回転する回転ブラシと該回転ブラシから掻き出されたバラストを前記車体の幅方向へ搬送排出するコンベヤとを備えた均し部と、前記車体の幅方向両端から前記車体の前後軸方向へ延出して片持ち支持された二本一対の回転ブラシであって、前記片持ち支持部を中心として扇状に回動可能に支持されたバラスト集積部とを備え、前記均し部およびバラスト集積部における回転ブラシは、道路清掃用の回転ブラシと交換可能とされてなる請求項1に記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項3】
前記軌道バラスト整備装置の均し部が下方開口型のケーシングでカバーされてなる請求項1または2に記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項4】
前記車体に集塵吸引装置が搭載され、前記下方開口型のケーシングの天板部に前記集塵吸引装置の吸引ダクトが連通されてなる請求項3に記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項5】
前記軌道バラスト整備装置の均し部が地表面方向へ向けて昇降可能に前記車体フレームに支持されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項6】
道床締め固め装置が前記軌道バラスト整備装置とは別に前記車体に搭載されている請求項1〜5のいずれかに記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項7】
前記道床締め固め装置が、車体の側方へ張り出す伸縮アームと、道床方向に伸縮する伸縮ロッドと、この伸縮ロッドの道床側端に設けられた道床締め固めプレートと、該道床締め固めプレートに付設された起振装置とを備えてなる請求項6に記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項8】
前記軌道の道床締め固め装置が前記車体に対し着脱自在に付設されている請求項6または7に記載の軌道と道路両用作業車。
【請求項9】
前記軌道バラスト整備装置が、前記車体後端から突き出した姿勢位置から前記車体フレーム上へと変移可能に搭載されてなる請求項1〜8のいずれかに記載の軌道と道路両用作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−307437(P2006−307437A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127717(P2005−127717)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(591158449)
【Fターム(参考)】