説明

軌道のレールの管理寸法測定方法、およびその装置

【課題】測定位置に関する情報および管理寸法をセットにして取得することによって、測定作業の省力化を十分に図り得る、軌道のレールの管理寸法測定方法、およびその装置を提供する。
【解決手段】軌道のレールの管理寸法測定装置10は、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲット21と、左右のレール51、52の測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2と第3の反射ターゲット22、23と、第1〜第3の反射ターゲットを角度を変えてフラッシュ撮影することによって第1〜第3の反射ターゲットの像を含む複数の画像を撮影するデジタルカメラ30と、撮影した画像のデータを解析処理するコントローラ40と、を有している。コントローラは、測定位置に関する情報を識別するとともに、写真測量の原理によってふく進量dなどの管理寸法を算出し、測定位置に関する情報および管理寸法をセットにして取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道のレールの管理寸法測定方法、および軌道のレールの管理寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道事業者は、軌道における左右のレールについて、列車の安全な運行や乗客の不快感の低減のために、種々の管理寸法を定期的に測定し、必要に応じて保守を行っている。管理の対象となる管理寸法としては、軌道変位や、ロングレールの伸縮量やふく進量などがある。軌道変位(軌道狂い、軌道不整とも称される)としては、左右レールの間隔である「軌間変位」、左右レールの高さの差である「水準変位」、レールの長手方向の位置においてレールの上下方向の変位である「高低変位」、レールの長手方向の位置においてレールの左右方向の変位である「通り変位」などがある。ふく進とは、レールが長手方向に移動することをいい、列車の走行状態、レールの締結状態などが相互に関連しあって発生する。ロングレールは一般的に200メートル以上の長さを有し、ふく進量を測定することは、座屈変形を防止するために重要なことである。このため、ロングレール毎に複数個所(例えば、3点または5点)に設定された測定位置のそれぞれにおいてふく進量を測定している。
【0003】
レールの管理寸法、例えば、ふく進量を測定する手法としては、水糸方式が周知であるが、軌道の全長にわたる多数の測定位置において、現場作業員が手作業で行わなければならず、測定作業が非常に煩雑である。このため、ふく進量の測定作業を行うための測定装置が提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載された測定装置は、測定位置に配置したターゲットを撮影した写真の画像を、演算処理装置のディスプレイ上に表示する。作業者は、ディスプレイ上に表示された画像の中から、ターゲットに含まれる指標の像を探し出し、その像の中心に位置するドットを各指標の座標位置として登録する。その後、登録された各指標の座標に基づいて、ふく進量を算出している。
【特許文献1】特開2003−075116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ふく進量は軌道の全長にわたる多数の測定位置において測定しなければならないが、特許文献1に記載された技術では、撮影した写真が多数の測定位置のうちのいずれの位置において撮影したものであるかを認識することができない。このため、現地で、「xx枚目の写真はyyキロポストにて撮影」のようなメモなどを取っておき、写真と測定位置との関連付けを、作業者が手作業によって行う必要がある。このため、測定作業の省力化を十分に図ることができていないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、測定位置に関する情報および管理寸法をセットにして取得することによって、測定作業の省力化を十分に図り得る、軌道のレールの管理寸法測定方法、およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための軌道のレールの管理寸法測定方法は、軌道における左右のレールについて管理の対象となる管理寸法を写真測量を利用して測定する、軌道のレールの管理寸法測定方法であって、
前記レールに沿う複数の測定位置のそれぞれに、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲットを配置し、
前記左レールにおける測定対象部位のそれぞれに、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2の反射ターゲットを配置し、
前記右レールにおける測定対象部位のそれぞれに、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第3の反射ターゲットを配置し、
前記第1〜第3の反射ターゲットを角度を変えてフラッシュ撮影することによって前記第1〜第3の反射ターゲットの像を含む複数の画像を撮影し、
撮影した前記画像のデータを解析処理することによって、測定位置に関する情報を識別するとともに、前記左レールにおける測定対象部位の三次元座標、および前記右レールにおける測定対象部位の三次元座標を算出し、
前記左右のレールにおける測定対象部位のそれぞれの三次元座標から前記管理寸法を算出し、測定位置に関する情報および前記管理寸法をセットにして取得する。
【0007】
また、上記目的を達成するための軌道のレールの管理寸法測定装置は、軌道における左右のレールについて管理の対象となる管理寸法を写真測量を利用して測定する、軌道のレールの管理寸法測定装置であって、
前記レールに沿う複数の測定位置のそれぞれに配置され、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲットと、
前記左レールにおける測定対象部位のそれぞれに配置され、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2の反射ターゲットと、
前記右レールにおける測定対象部位のそれぞれに配置され、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第3の反射ターゲットと、
前記第1〜第3の反射ターゲットを角度を変えてフラッシュ撮影することによって前記第1〜第3の反射ターゲットの像を含む複数の画像を撮影する撮像手段と、
撮影した前記画像のデータを解析処理する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、測定位置に関する情報を識別するとともに、前記左レールにおける測定対象部位の三次元座標、および前記右レールにおける測定対象部位の三次元座標を算出し、前記左右のレールにおける測定対象部位のそれぞれの三次元座標から、前記管理寸法を算出し、測定位置に関する情報および前記管理寸法をセットにして取得する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定位置に関する情報および管理寸法をセットにして取得することによって、測定作業の省力化を十分に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、軌道のレールの管理寸法としてのふく進量dを測定する例を示す概念図、図2は、軌道におけるレールの管理寸法測定装置10を示すブロック図である。図3は、第4の反射ターゲット24を兼用する第1の反射ターゲット21の一例を示す図、図4(A)(B)は、第2と第3の反射ターゲット22、23の一例を示す図、図5は、第5の反射ターゲット25の一例を示す図である。
【0011】
図1および図2を参照して、軌道におけるレールの管理寸法測定装置10(以下、単に「管理寸法測定装置10」と言う)は、軌道における左右のレール51、52について管理の対象となる管理寸法を写真測量を利用して測定する。
【0012】
管理寸法測定装置10は、概説すれば、レール51、52に沿う複数の測定位置のそれぞれに配置され、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲット21と、左レール51における測定対象部位のそれぞれに配置され、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2の反射ターゲット22と、右レール52における測定対象部位のそれぞれに配置され、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第3の反射ターゲット23と、第1〜第3の反射ターゲット21、22、23を角度を変えてフラッシュ撮影することによって第1〜第3の反射ターゲット21、22、23の像を含む複数の画像を撮影するデジタルカメラ30(撮像手段に相当する)と、撮影した画像のデータを解析処理するコントローラ40(制御手段40に相当する)と、を有している。コントローラ40は、測定位置に関する情報を識別するとともに、左レール51における測定対象部位の三次元座標、および右レール52における測定対象部位の三次元座標を算出する。コントローラ40は、左右のレール51、52における測定対象部位のそれぞれの三次元座標から、管理寸法を算出し、測定位置に関する情報および管理寸法をセットにして取得する。
【0013】
本実施形態においては、管理寸法として、ふく進量dを例に挙げる。ふく進量を測定するための管理寸法測定装置10は、さらに、左右のレール51、52を間に挟んだ両側の不動点のそれぞれに設置されている基準杭71、72のそれぞれに配置され、第1の計測基準点61を光学的に区別可能に示す第4の反射ターゲット24、および第2の計測基準点62を光学的に区別可能に示す第5の反射ターゲット25を有している。デジタルカメラ30は、第1〜第3の反射ターゲット21、22、23の像に加えて第4と第5の反射ターゲット24、25の像を含む複数の画像を撮影する。コントローラ40は、第1の計測基準点61の三次元座標、および第2の計測基準点62の三次元座標をさらに算出する。コントローラ40は、第1と第2の計測基準点61、62の三次元座標から第1と第2の計測基準点61、62同士を結ぶ基準線63(図1の二点鎖線を参照)を算出し、基準線63からの移動量(ふく進量d)を管理寸法として算出する。以下、詳述する。
【0014】
図3を参照して、第1の反射ターゲット21は、任意形状(図示例では、矩形形状)のプレート81に、丸形状ないし円形状を有する反射体80を必要個数取り付けて構成してある。反射体80として、例えば、プレート81に貼り付け自在な反射シールを用いることができる。第1の反射ターゲット21が示す測定位置に関する情報としては、測定位置のID、キロポスト情報などが含まれる。第1の反射ターゲット21は、必要な個数の反射体80を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている。なお、本明細書において「光学的に区別可能」とは、必要な個数(1個以上)の反射体80を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、撮影した画像のデータから、他の反射ターゲットとは別の反射ターゲットであることが判別できることを意味している。第2〜第5の反射ターゲット22、23、24、25についても同様である。
【0015】
本実施形態では、第1の反射ターゲット21は、3行4列の最大12個の反射体80を取り付けることが可能である。図3の破線は、反射体80を取り付けなかった部分を示している。最大個数の範囲内で必要な個数の反射体80を配列して反射パターンを異ならせることによって、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示している。
【0016】
例えば、角部の4個の反射体80を必須とし、残りの8箇所に、最大4個まで欠損させて反射体80を取り付けるとした場合には、コード化できる測定位置の個数は、以下の表1に示すとおりとなる。
【0017】
【表1】

【0018】
図4(A)を参照して、左レール51用の第2の反射ターゲット22は、任意形状(図示例では、長方形状)のプレート82に、丸形状ないし円形状を有する反射体80を必要個数(図示例では、3個)取り付けて構成してある。図4(B)を参照して、右レール52用の第3の反射ターゲット23は、任意形状(図示例では、長方形状)のプレート83に、丸形状ないし円形状を有する反射体80を必要個数(図示例では、1個)取り付けて構成してある。第2と第3の反射ターゲット22、23も、必要な個数の反射体80を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている。
【0019】
第2の反射ターゲット22における真ん中の反射体80および第3の反射ターゲット23における反射体80は、不動点同士の間に張った水糸を基準線として、その基準線に対応する位置に取り付けてある。すなわち、2つの反射体80は、従来の水糸方式において左右のレール51、52に付与していたポンチ打刻点に代わるものであり、ふく進の基準点として用いる。
【0020】
左レール51に取り付けた反射体80の個数と、右レール52に取り付けた反射体80の個数とを異ならせてあるので、左レール51であるのか、右レール52であるのかの認識も簡単に行うことができる。
【0021】
本実施形態にあっては、第1の反射ターゲット21は、不動点に設置されている基準杭71に配置され、第4の反射ターゲット24を兼用している。第1の反射ターゲット21が第4の反射ターゲット24を兼用することによって、解析処理のための演算処理数を減らすことができる。
【0022】
第1の反射ターゲット21は、角部の4個の反射体80を必須とし、解析処理時に対角線同士の交点を算出することによって、この交点の座標を、第1の計測基準点61の座標としている。これによって、第1の計測基準点61は、第4の反射ターゲット24を兼用する第1の反射ターゲット21によって、光学的に区別可能となる。
【0023】
図5を参照して、第5の反射ターゲット25は、任意形状(図示例では、矩形形状)のプレート85に、丸形状ないし円形状を有する反射体80を必要個数取り付けて構成してある。第5の反射ターゲット25は、必要な個数の反射体80を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている。
【0024】
第5の反射ターゲット25は、第1の反射ターゲット21と同様に、角部の4個の反射体80を必須とし、解析処理時に対角線同士の交点を算出することによって、この交点の座標を、第2の計測基準点62の座標としている。これによって、第2の計測基準点62は、第5の反射ターゲット25によって、光学的に区別可能となる。
【0025】
複数個の反射体80を備える第5の反射ターゲット25にあっては、反射体80同士の間の寸法は既知であり、ふく進量を算出するときの基準長さの参照点となる。第1の反射ターゲット21、または第2の反射ターゲット22における反射体80同士の間の寸法を既知としてもよいし、第1、第2、第5の反射ターゲット21、22、25のすべてにおける反射体80同士の間の寸法を既知としてもよい。
【0026】
第1の反射ターゲット21のみによって測定位置に関する情報をコード化する例について説明したが、第1の反射ターゲット21と、他の反射ターゲット22、23、25との組み合わせによって、測定位置に関する情報をコード化してもよい。コード化できる測定位置の個数を簡単に増やすことができる。例えば、第5の反射ターゲット25が16個のコードを表現できるとすると、163×16=2068個の測定位置に関する情報をコード化することができる。反射体80の数や、反射ターゲットの数を増やすことによって、コード化できる数に制限はない。
【0027】
各反射ターゲット21〜25における反射体80の配列形態は、図示した例に限定されず、適宜の形態をとることができる。第1の反射ターゲット21や第5の反射ターゲット25は、反射体80を1行に配列したものでもよい。この場合には、両端の2個の反射体80を必須とし、解析処理時に両端の2個の反射体80を結ぶ線分の中点を算出することによって、この中点の座標を、第1、第2の計測基準点61、62の座標とすることができる。
【0028】
反射体80をプレートに取り付けることによって第1〜第5の反射ターゲット21〜25を形成したが、丸穴を形成したプレートをプレート形状の反射体80に重ねることによって形成することもできる。
【0029】
反射ターゲット21〜25をフラッシュ撮影することによって、反射体80は光を反射してくっきりとした像を作る。像の位置を正確に測定できることから、ふく進量を高精度に測定することが可能となる。フラッシュ撮影のときには、デジタルカメラ30のシャッター速度を速く、かつ、絞りを絞って写す。暗い背景の中に、反射体80が白くくっきりと浮き上がるように写すことができるからである。また、測定精度を上げるために、できるだけいろいろな方向・角度から反射ターゲット21〜25を撮影することが好ましい。反射体80の像は、ある程度の大きさを有しており、解析処理の際には、像の近傍の一定領域を切り出す。そして、像の明度分布から画像処理技法によって像の重心位置を算出し、反射体80の座標を決定している。
【0030】
図2を参照して、コントローラ40は、CPUやメモリ43を主体として構成している。コントローラ40は、デジタルカメラ30において記憶した画像のデータを入力する画像データ入力部41と、画像のデータを処理し写真測量の原理によって演算処理を行う解析処理部42と、測定位置に関する情報および管理寸法をセットにしてデータファイル化して記憶するメモリ43と、プリントまたはディスプレイに算出結果等を出力する出力部44と、を有している。
【0031】
次に、ふく進量の測定手順を図6および図7を参照しつつ説明する。
【0032】
図6は、ふく進量の測定手順を示すメインフローチャート、図7は、図6に示されるデータ解析処理における手順を示すフローチャートである。
【0033】
図6を参照して、ふく進量を測定するときには、まず、各反射ターゲット21〜25を配置する(ステップS10)。具体的には、レール51、52に沿う複数の測定位置のそれぞれに、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲット21を配置する。左レール51における測定対象部位のそれぞれに、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2の反射ターゲット22を配置する。右レール52における測定対象部位のそれぞれに、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第3の反射ターゲット23を配置する。左右のレール51、52を間に挟んだ両側に設定された不動点のそれぞれに設置されている基準杭71、72のそれぞれに、第1の計測基準点61を光学的に区別可能に示す第4の反射ターゲット24、および第2の計測基準点62を光学的に区別可能に示す第5の反射ターゲット25を配置する。第4の反射ターゲット24は、第1の反射ターゲット21が兼用している。第1〜第3、第5の反射ターゲット21、22、23、25は、レール51、52を新たに敷設するときに配置したり、既設のレール51、52に後付けで配置したりする。第2の反射ターゲット22における真ん中の反射体80および第3の反射ターゲット23における反射体80は、不動点同士の間に張った水糸を基準線として、その基準線に対応する位置に取り付けてある。
【0034】
次に、デジタルカメラ30によって、第1〜第3、第5の反射ターゲット21、22、23、25を角度を変えてフラッシュ撮影することによって第1〜第3、第5の反射ターゲット21、22、23、25の像を含む複数の画像を撮影する(ステップS20)。
【0035】
次に、コントローラ40は、撮影した画像のデータを解析処理することによって、測定位置に関する情報を識別するとともに、左レール51における測定対象部位の三次元座標、右レール52における測定対象部位の三次元座標、第1の計測基準点61の三次元座標、および第2の計測基準点62の三次元座標を算出する。コントローラ40は、第1と第2の計測基準点61、62の三次元座標から第1と第2の計測基準点61、62同士を結ぶ基準線63を算出し、左右のレール51、52における測定対象部位のそれぞれの三次元座標から、基準線63からの移動量(ふく進量)を管理寸法として算出する。これにより、測定位置に関する情報およびふく進量をセットにして取得する(ステップS30)。
【0036】
1つの測定位置における複数画像のデータ解析処理が終了すると、次の測定位置における複数画像のデータ解析処理が進行する。すべての測定位置における複数画像のデータ解析処理が終了するまで、測定位置に関する情報およびふく進量をセットにした取得が自動的に継続される(ステップS40)。
【0037】
その後、過去に取得した統計データと比較して、必要に応じて保守を行う。
【0038】
データ解析処理における手順は、一般的な写真測量と同様である。図7を参照しながら、概説する。
【0039】
まず、画像のデータから、反射ターゲット21〜25に相当する部分を自動抽出する(ステップS51)。反射体80を用いているので、明度差が顕著に現れるので、反射ターゲット21〜25の抽出を容易に行い得る。
【0040】
反射ターゲット21〜25の種別を認識する(ステップS52)。つまり、第4の反射ターゲット24を兼用する第1の反射ターゲット21であるのか、第2の反射ターゲット22であるのか、第3の反射ターゲット23であるのか、および第5の反射ターゲット25であるのかを認識する。ステップS51およびS52の処理は、ラベリングと称される。
【0041】
1つの測定位置において撮影した複数の画像間で反射ターゲット21〜25のマッチングを行う(ステップS53)。デジタルカメラ30によって撮影した位置の座標を算出し(ステップS54)、各反射ターゲット21〜25の三次元座標等を算出する(ステップS55)。具体的には、第1の反射ターゲット21から測定位置に関するコードデータを識別し、第2の反射ターゲット22から左レール51の測定対象部位の三次元座標を算出し、第3の反射ターゲット23から右レール52の測定対象部位の三次元座標を算出し、第1の反射ターゲット21(=第4の反射ターゲット24)から第1の計測基準点61の三次元座標を算出し、第5の反射ターゲット25から第2の計測基準点62の三次元座標を算出する。
【0042】
バンドル調整によって全体を同時に、もっとも矛盾のないように補正を行った後(ステップS56)、第1と第2の計測基準点61、62の三次元座標から第1と第2の計測基準点61、62同士を結ぶ仮想的な基準線63を算出作成し、基準線63から左レール51の測定対象部位までのふく進量、基準線63から右レール52の測定対象部位までのふく進量を算出する(ステップS57)。
【0043】
そして、測定位置に関するコードデータと、左右のレール51、52のそれぞれのふく進量とをデータファイル化して(ステップS58)、メインフローに戻る。
【0044】
上述したように、本実施形態にあっては、測定位置に関する情報および管理寸法としてのふく進量をセットにして取得することによって、ふく進量の測定作業の省力化を十分に図ることができる。また、反射ターゲット21〜25を用いているので、解析処理の対象点を明確に定めることができ、作業者がターゲットの座標を指示する場合に比較して、解析処理を高精度かつ自動的に行うことができる。したがって、ふく進量を高精度に測定でき、処理に要する時間を大幅に削減できる。
【0045】
なお、管理寸法としてふく進量を例に挙げた実施形態について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。
【0046】
例えば、左右のレール51、52の間隔である「軌間変位」や、左右のレール51、52の高さの差である「水準変位」は、ある地点における左右のレール51、52の相対位置によって算出できる管理寸法である。この種の管理寸法を測定するにあたっては、左レール51の第2の反射ターゲット22および右レール52の第3の反射ターゲット23がレール51、52の長手方向に対して直交する方向に予め配置してあるので、第1と第2の計測基準点61、62を光学的に区別可能に示す第4と第5の反射ターゲット24、25は設ける必要がない。
【0047】
また、レール51、52の長手方向の位置においてレール51、52の上下方向の変位である「高低変位」、レール51、52の長手方向の位置においてレール51、52の左右方向の変位である「通り変位」は、一般的に、「10m弦正矢法」と称される測定方法によって測定されている。「10m弦正矢法」は、10メートルの長さの糸(弦)をレール51、52に沿って張り、弦の中央位置(したがって、両端から5メートルの位置)においてレール51、52との上下方向の離れ寸法、および左右方向の離れ寸法を測定するものである。この種の管理寸法を測定するにあたっては、左レール51に第2の反射ターゲット22を5メートルの間隔で3個配置し、右レール52に第3の反射ターゲット23を5メートルの間隔で3個配置し、これらの反射ターゲット22、23の三次元座標から、「高低変位」「通り変位」を測定することができる。この管理寸法を測定するにあたっても、左レール51の第2の反射ターゲット22および右レール52の第3の反射ターゲット23がレール51、52の長手方向に対して直交する方向に予め配置してあるので、第1と第2の計測基準点61、62を光学的に区別可能に示す第4と第5の反射ターゲット24、25は設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】軌道のレールの管理寸法としてのふく進量を測定する例を示す概念図である。
【図2】軌道におけるレールの管理寸法測定装置を示すブロック図である。
【図3】第4の反射ターゲットを兼用する第1の反射ターゲットの一例を示す図である。
【図4】図4(A)(B)は、第2と第3の反射ターゲットの一例を示す図である。
【図5】第5の反射ターゲットの一例を示す図である。
【図6】ふく進量の測定手順を示すメインフローチャートである。
【図7】図6に示されるデータ解析処理における手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 管理寸法測定装置、
21 第1の反射ターゲット、
22 第2の反射ターゲット、
23 第3の反射ターゲット、
24 第4の反射ターゲット、
25 第5の反射ターゲット、
30 デジタルカメラ(撮像手段)、
40 コントローラ(制御手段)、
51 左レール、
52 右レール、
61 第1の計測基準点、
62 第2の計測基準点、
63 第1と第2の計測基準点同士を結ぶ基準線、
71 基準杭、
72 基準杭、
80 反射体、
d ふく進量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道における左右のレール(51、52)について管理の対象となる管理寸法を写真測量を利用して測定する、軌道のレールの管理寸法測定方法であって、
前記レール(51、52)に沿う複数の測定位置のそれぞれに、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲット(21)を配置し、
前記左レール(51)における測定対象部位のそれぞれに、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2の反射ターゲット(22)を配置し、
前記右レール(52)における測定対象部位のそれぞれに、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第3の反射ターゲット(23)を配置し、
前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)を角度を変えてフラッシュ撮影することによって前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)の像を含む複数の画像を撮影し、
撮影した前記画像のデータを解析処理することによって、測定位置に関する情報を識別するとともに、前記左レール(51)における測定対象部位の三次元座標、および前記右レール(52)における測定対象部位の三次元座標を算出し、
前記左右のレール(51、52)における測定対象部位のそれぞれの三次元座標から前記管理寸法を算出し、測定位置に関する情報および前記管理寸法をセットにして取得する、軌道のレールの管理寸法測定方法。
【請求項2】
前記左右のレール(51、52)を間に挟んだ両側の不動点のそれぞれに設置されている基準杭(71、72)のそれぞれに、第1の計測基準点(61)を光学的に区別可能に示す第4の反射ターゲット(24)、および第2の計測基準点(62)を光学的に区別可能に示す第5の反射ターゲット(25)を配置し、
前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)の像に加えて前記第4と第5の反射ターゲット(24、25)の像を含む複数の画像を撮影し、
前記画像のデータを解析処理することによって、前記第1の計測基準点(61)の三次元座標、および前記第2の計測基準点(62)の三次元座標をさらに算出し、
前記第1と第2の計測基準点(61、62)の三次元座標から前記第1と第2の計測基準点(61、62)同士を結ぶ基準線(63)を算出し、前記基準線(63)からの移動量を前記管理寸法として算出する、請求項1に記載の軌道のレールの管理寸法測定方法。
【請求項3】
前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)は、必要な個数の反射体(80)を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている請求項1または請求項2に記載の軌道のレールの管理寸法測定方法。
【請求項4】
前記第4と第5の反射ターゲット(24、25)は、必要な個数の反射体(80)を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている請求項2に記載の軌道のレールの管理寸法測定方法。
【請求項5】
前記第1の反射ターゲット(21)は、前記基準杭(71)に配置され、第4の反射ターゲット(24)を兼用する請求項2または請求項4に記載の軌道のレールの管理寸法測定方法。
【請求項6】
軌道における左右のレール(51、52)について管理の対象となる管理寸法を写真測量を利用して測定する、軌道のレールの管理寸法測定装置であって、
前記レール(51、52)に沿う複数の測定位置のそれぞれに配置され、測定位置に関する情報を光学的に区別可能に示す第1の反射ターゲット(21)と、
前記左レール(51)における測定対象部位のそれぞれに配置され、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第2の反射ターゲット(22)と、
前記右レール(52)における測定対象部位のそれぞれに配置され、測定対象部位を光学的に区別可能に示す第3の反射ターゲット(23)と、
前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)を角度を変えてフラッシュ撮影することによって前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)の像を含む複数の画像を撮影する撮像手段(30)と、
撮影した前記画像のデータを解析処理する制御手段(40)と、を有し、
前記制御手段(40)は、測定位置に関する情報を識別するとともに、前記左レール(51)における測定対象部位の三次元座標、および前記右レール(52)における測定対象部位の三次元座標を算出し、前記左右のレール(51、52)における測定対象部位のそれぞれの三次元座標から、前記管理寸法を算出し、測定位置に関する情報および前記管理寸法をセットにして取得する、軌道のレールの管理寸法測定装置。
【請求項7】
前記左右のレール(51、52)を間に挟んだ両側の不動点のそれぞれに設置されている基準杭(71、72)のそれぞれに配置され、第1の計測基準点(61)を光学的に区別可能に示す第4の反射ターゲット(24)、および第2の計測基準点(62)を光学的に区別可能に示す第5の反射ターゲット(25)をさらに有し、
前記撮像手段(30)は、前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)の像に加えて前記第4と第5の反射ターゲット(24、25)の像を含む複数の画像を撮影し、
前記制御手段(40)は、前記第1の計測基準点(61)の三次元座標、および前記第2の計測基準点(62)の三次元座標をさらに算出し、前記第1と第2の計測基準点(61、62)の三次元座標から前記第1と第2の計測基準点(61、62)同士を結ぶ基準線(63)を算出し、前記基準線(63)からの移動量を前記管理寸法として算出する、請求項6に記載の軌道のレールの管理寸法測定装置。
【請求項8】
前記第1〜第3の反射ターゲット(21、22、23)は、必要な個数の反射体(80)を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている請求項6または請求項7に記載の軌道のレールの管理寸法測定装置。
【請求項9】
前記第4と第5の反射ターゲット(24、25)は、必要な個数の反射体(80)を配置することによって形成される反射パターンを異ならせることによって、光学的に区別可能に形成されている請求項7に記載の軌道のレールの管理寸法測定装置。
【請求項10】
前記第1の反射ターゲット(21)は、前記基準杭(71)に配置され、第4の反射ターゲット(24)を兼用する請求項7または請求項9に記載の軌道のレールの管理寸法測定装置。

【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−38827(P2010−38827A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204418(P2008−204418)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000134903)株式会社ニシヤマ (33)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【Fターム(参考)】