説明

軌道下構造探査装置

【課題】 マクラギによる反射の影響を小さくする。
【解決手段】 軌道下構造探査装置20は、マクラギ16を備えた軌道14に沿って移動可能な台車22を有する。台車22には、軌道14の下方にむけて電波を放射する少なくとも1つの送信アンテナ10が設けてある。また、台車22には、一対の受信アンテナ12(12a、12b)が取り付けてある。送信アンテナ10と受信アンテナ12とは、軌道14に沿った方向に直列状に配置してある。また、送信アンテナ10と受信アンテナ12とは、軌道14に沿った方向に離間させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路の路盤の状態などを探査する軌道下構造探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路を構成している路盤中に設けた伏びが破損し、路盤中の土砂が伏びに流れ込んで路盤中に空洞が発生し、線路が陥没する危険を生ずることがある。このため、鉄道線路の路盤の状態を把握することは、線路の保守にとってきわめて重要なことである。しかし、軌道下の路盤の状態などは、目視によって確認することができない。そこで、本願出願人は、軌道下に向けて電波(電磁波)を放射し、その反射波から軌道下の路盤の状態などを検知することができる探査装置を開発した(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3089571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1に記載の探査装置は、図4に示したように、送信アンテナ10と一対の受信アンテナ12、12とを、軌道14に沿った方向と直行するように、すなわちレール18、18間においてマクラギ16の長手方向に沿って、隣接させて配置している。一方、近年、鉄道線路には、PCマクラギが多用されている。PCマクラギは、コンクリートの内部に鋼線を埋め込んだ構造をしており、電波を強く反射する。このため、特許文献1に記載の探査装置は、送信アンテナ10と受信アンテナ12とがマクラギ16の上方に位置した場合、送信アンテナ10から放射した電波の多くがマクラギ16によって反射され、マクラギ16によって反射された強い反射波が受信アンテナ12に入射する。また、送信アンテナ10と受信アンテナ12とがマクラギ16の存在しないマクラギ間に位置した場合、マクラギ16による反射がないため、受信アンテナ12に入射する反射波が弱くなる。したがって、特許文献1に記載の探査装置は、送信アンテナ10と受信アンテナ12とを軌道14に沿って走査した場合、受信アンテナ12に入射する反射波がマクラギ16の存在するところの強い反射波と、マクラギ16が存在しないところの弱い反射波とが周期的に変化する。このため、この反射波の周期的な変化の影響を除去する信号処理を行ったとしても、路盤などの深いところから得た反射波に基づく画像が乱れ、路盤中の伏びや空洞の反射画像を正しく表現することができず、軌道下の構造を正確に解析することが困難となる。
【0004】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、マクラギによる反射の影響を小さくすることを目的としている。
また、本発明は、軌道下の構造を正確に解析、把握できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明に係る軌道下構造探査装置は、マクラギを備えた軌道に沿って移動可能な台車と、前記台車に設けた少なくとも1つの送信アンテナと、前記台車に設けられ、前記軌道に沿った方向に前記送信アンテナと離間させて配置した複数の受信アンテナと、を備えていることを特徴としている。複数の受信アンテナは、軌道に沿った方向におけるマクラギとの相対位置を相互に異ならせるとよい。また、送信アンテナは、軌道に沿って複数設けることができる。この場合、複数の送信アンテナは、軌道に沿った方向におけるマクラギとの相対位置を相互に異なるようにする。
【発明の効果】
【0006】
上記のようになっている本発明は、送信アンテナと受信アンテナとが軌道に沿った方向、すなわちマクラギの長手方向と直交した方向に配置してある。しかも、送信アンテナと受信アンテナとを離間させて配置してある。したがって、送信アンテナがマクラギの上方に位置し、送信アンテナが放射した電波(送信波)がマクラギによって反射されたとしても、この反射波の受信アンテナへの入射を少なくすることができ、マクラギによる影響を小さくすることができる。このため、受信アンテナに入射する路盤からの反射波などの、軌道下の深いところからの反射波が相対的に大きくなる。したがって、軌道下の路盤などの良好な画像を得ることができ、路盤などの軌道下の構造を正確に解析、把握することができ、伏びや空洞が存在するか否かを正確に判断することができる。なお、送信アンテナと受信アンテナとの離間させる距離は、送信アンテナが放射する送信波の強度、探査しようとする深さによって異なり、例えば地表から1.5〜2mの深さからの反射波を十分に受信できる間隔(距離)に設定される。
【0007】
複数の受信アンテナを、軌道に沿った方向におけるマクラギとの相対位置が相互に異なるように配置すると、台車を軌道に沿って移動させた際に、いずれかの受信アンテナをマクラギ間に位置するようにできる。このため、マクラギ間に位置する受信アンテナは、マクラギを通過しない深い位置からの反射波が入射し、深い位置の良好な画像を得ることができる。そして、送信アンテナを軌道に沿って複数設け、これらを軌道に沿った方向においてマクラギとの相対位置を相互に異ならせることにより、いずれかの送信アンテナをマクラギ間に配置でき、マクラギによる反射を受けない電波をマクラギの下方に送信することができる。したがって、軌道下の深い位置からのより強い反射波を受信アンテナに入射することができ、深い位置の良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る軌道下構造探査装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る軌道下構造探査装置の要部の説明図である。図1において、軌道下構造探査装置20は、矢印24のように、軌道14上を軌道14に沿って移動可能な台車22を備えている。台車22には、1つの送信アンテナ10と一対の受信アンテナ12(12a、12b)とが設けてある。送信アンテナ10は、周波数が1GHz程度の電波(送信波)を軌道14の下方に向けて放射する。また、各受信アンテナ12は、送信アンテナ10が放射した送信波の反射波を同時に受信するようになっている。
【0009】
軌道14は、2本のレール18と、2本のレール18の間隔(軌間)を一定に保持する多数のマクラギ16とを備えている。そして、送信アンテナ10と一対の受信アンテナ12とは、軌道14に沿った方向に直列状に配置してある。また、送信アンテナ10と受信アンテナ12とは、2本のレール18間のほぼ中央に位置するように台車22に取り付けてある。さらに、送信アンテナ10、受信アンテナ12は、偏波方向が軌道14に沿った方向となっていて、軌道14に沿った方向における長さがマクラギ16間の間隔Bより小さくしてある。
【0010】
受信アンテナ12aは、送信アンテナ10と距離Lだけ離間させて配置してある。送信アンテナ10と受信アンテナ12aとの離間は、送信アンテナ10が放射した送信波の、マクラギ16による反射の影響、すなわち受信アンテナ12に入射するマクラギ16からの反射波を小さくするためである。したがって、距離Lは、大きいほどマクラギ16による反射の影響を小さくできるが、送信アンテナ10が放射する送信波の強さ、軌道下をどのくらいの深さまで探査するかなどによって適宜に設定される。
【0011】
一方、受信アンテナ12bは、受信アンテナ12aの前方側に配置してある。受信アンテナ12a、12bは、実施形態の場合、隣接して配置してあって、軌道14に沿った方向におけるマクラギ16に対する相対位置が相互に異なるようにしてある。すなわち、台車22を軌道14に沿って移動(走行)させた場合に、受信アンテナ12a、12bのいずれか一方は、マクラギ16による影響の少ない反射波を受信できるようになっている。
【0012】
軌道下構造探査装置20は、図2に示したように、所定周波数(実施形態の場合、1GHz)の送信波を生成する発振器30を備えている。発振器30の出力側には、カプラ32が設けてある。送信アンテナ10は、カプラ32に接続してあって、発振器30の生成した信号がカプラ32を介して与えられ、その信号を電磁波からなる送信波に変換して軌道14の下方に向けて放射する。
【0013】
また、カプラ32には、受信アンテナ12a、12bに対応して設けたミキサ34(34a、34b)が接続してある。各受信アンテナ12a、12bは、対応する増幅器36(36a、36b)を介して対応するミキサ34a、34bに接続してある。受信アンテナ12a、12bは、それぞれが同時に反射波を受信し、受信した反射波を回路のエネルギー(電力)に変換して受信信号として出力する。各増幅器36は、受信アンテナ12からの受信信号を増幅してミキサ34に入力する。ミキサ34a、34bは、カプラ32を介して入力する発振器30からの信号と増幅器36からの信号とを混合し、対応する中間周波増幅器38(38a、38b)に出力する。
【0014】
中間周波増幅器38は、ミキサ34によって生成された中間周波を増幅し、出力側に設けてある2チャンネル(2ch)同時A/D変換器40に出力する。2チャンネル同時A/D変換器40は、中間周波増幅器38a、38bの出力したアナログ信号をデジタル信号に変換し、出力側に接続してある画像合成部42に送出する。画像合成部42は、2チャンネル同時A/D変換器40の出力信号に基づいて、受信アンテナ12a、12bの受信した反射波による画像を1つの画像に合成し、出力側に設けた表示部44に軌道下の構造を示す画像を表示する。
【0015】
このようになっている実施形態に係る軌道下構造探査装置20は、受信アンテナ12が軌道14に沿った方向に送信アンテナと離間させて配置してあるため、送信アンテナ10が放射した送信波(電波)のマクラギ16による反射波の受信アンテナ12に入射する量を少なくすることができる。すなわち、マクラギ16による強い反射波の影響を小さくすることができる。このため、軌道14の下方の路盤などからの反射波の強度が相対的に大きくなり、路盤の構造などの良好な画像を得ることができる。したがって、軌道下の構造を正確に解析、把握することができ、路盤中に設けた伏びや、路盤中に生じた空洞、路盤のゆるみなどを精度よく検知することができる。しかも、実施形態に係る軌道下構造探査装置20は、一対の受信アンテナ12a、12bを軌道14に沿った方向に配置し、マクラギ16との相対位置が相互に異なっているため、台車22を軌道14に沿って移動させた場合に、受信アンテナ12a、12bのいずれか一方がマクラギ16を透過しない反射波を受信することができ、軌道下の構造のより鮮明な画像を得ることができる。
【0016】
なお、前記の実施形態は、本発明の一態様であって、これに限定されるものではない。例えば、受信アンテナ12を3つ以上直列に配置してもよい。また、送信アンテナ10を複数、例えば図3に示したように、一対設けてもよい。
【0017】
この場合、一対の送信アンテナ10a、10bを軌道14に沿った方向に配置し、軌道14に沿った方向においてマクラギ16との相対位置を相互に異ならせることが望ましい、このようにすれば、いずれかの送信アンテナ10の放射する送信波を、マクラギ16を介さずに軌道14の下方に放射することができる。なお、送信アンテナ10を複数設けた場合、図2に示したカプラ32と複数の送信アンテナ10との間に切替え回路を設け、複数の送信アンテナ10を順次切り替えてカプラ32に接続する。すなわち、複数の送信アンテナ10は、時分割で送信波を放射する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る軌道下構造探査装置の要部の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る軌道下構造探査装置の概略ブロック図である。
【図3】他の実施形態に係る軌道下構造探査装置の要部の説明図である。
【図4】従来の軌道下構造探査装置のアンテナの配置を説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
10、10a、10b………送信アンテナ、12a、12b………受信アンテナ、14………軌道、16………マクラギ、18………レール、20………軌道下構造探査装置、22………台車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクラギを備えた軌道に沿って移動可能な台車と、
前記台車に設けた少なくとも1つの送信アンテナと、
前記台車に設けられ、前記軌道に沿った方向に前記送信アンテナと離間させて配置した複数の受信アンテナと、
を備えていることを特徴とする軌道下構造探査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道下構造探査装置において、
前記複数の受信アンテナは、前記軌道に沿った方向における前記マクラギとの相対位置が相互に異なっていることを特徴とする軌道下構造探査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の軌道下構造探査装置において、
前記送信アンテナは、前記軌道に沿って複数設けられ、前記軌道に沿った方向における前記マクラギとの相対位置が相互に異なっていることを特徴とする軌道下構造探査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−10551(P2007−10551A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193601(P2005−193601)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】