説明

軌道検測装置

【課題】押圧専用バネを廃止することにより、軌道検測装置を移動させるに必要な力(移動搬力)を小さくする。
【解決手段】永久磁石のマグネット押圧力と軌間測定用センサ11に設けられたセンサ押圧用バネ11Fの反作用(バネ押圧力)を利用して固定アーム3に設けられたサイドローラ7を第1レールR1の側面に押圧する。これにより、軌道検測装置1の単純構造化及び軽量化が可能となるともに、押圧専用バネを廃止してバネによる押圧力を小さくすることができるので、移動搬力を小さくすることができる。延いては、移動(退避)時に、大きな衝撃力が軌道検測装置1に作用してしまうことを未然に防止できるので、移動時に軌道検測装置1が損傷してしまうことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行に敷設された第1レール及び第2レールの状態を検測する軌道検測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軌道検測装置として、例えば、特許文献1に記載の発明では、レール間の寸法(軌間寸法)を測定する際に基準となるレール(以下、第1レールという。)に沿って延びる基準アーム、及び基準アームから他方のレール(以下、第2レールという。)側に延びるアーム本体等から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−19919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1等に記載された現状の軌道検測装置では、検測時に軌道検測装置が両レールから離れることを防止すべく、基準アーム及びアーム本体に設けられたサイドローラを、押圧専用バネを用いて各レールの内側面に強く押し当てている。
【0005】
したがって、現状の軌道検測装置では、押圧専用バネによる押圧荷重を比較的大きな力に設定せざるを得ないため、軌道検測装置の大型化(重量化)を招いていた。
このため、従来の軌道検測装置では、軌道検測装置を軌道外に移動させる際には、二人以上の作業員にて移動作業を行う必要があるとともに、移動作業に多くの時間を要していたため、例えば、軌道上を電車と自動車とが併用している軌道の検測時において、自動車や電車が接近してきたときに、速やかに軌道検測装置を移動(退避)させることが難しい、という問題があった。
【0006】
また、押圧専用バネによる押圧荷重を比較的大きな力としていたため、軌道検測装置を移動させる際に、圧縮していた押圧専用バネが急激に伸張するため、大きな衝撃力が軌道検測装置に作用してしまい易く、軌道検測装置の損傷を招くおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、押圧専用バネを廃止することにより、上記の不具合を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、互いに平行に敷設された第1レール(R1)及び第2レール(R2)の状態を検測する軌道検測装置であって、第1レール(R1)に沿って延びる固定アーム(3)と、固定アーム(3)の長手方向中間部に固定され、第2レール(R2)に向けて延びる軌間アーム(9)と、軌間アーム(9)に設けられ、第2レール(R2)の側面に接触する軌間測定用センサ(11)と、軌間測定用センサ(11)を第2レール(R2)の側面に押圧する弾性力を発揮するとともに、その反作用により軌間アーム(9)を第1レール(R1)側に押圧するセンサ押圧用バネ(11F)と、固定アーム(3)の長手方向両端側に設けられ、反作用により第1レール(R1)の側面に押圧されるサイドローラ(7)と、第1レール(R1)と対向するように固定アーム(3)に設けられ、サイドローラ(7)と第1レール(R1)との接触面圧を上昇させる向きの磁力を発揮する磁石(15)とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、請求項1に記載の発明では、検測時に軌道検測装置が両レールから離れることを防止するための力(以下、この力を検測保持力という。)は、磁石(15)が発生する磁力及びセンサ押圧用バネ(11F)のバネ力である。ここで、センサ押圧用バネ(11F)のバネ力とは、軌間測定用センサ(11)を第2レール(R2)に向けて押圧する弾性力の反作用である。
【0010】
一方、センサ押圧用バネ(11F)のバネ力は、軌間測定用センサ(11)を第2レール(R2)に向けて押圧することを目的とする弾性力であって、軌間測定用センサ(11)の作動を阻害することがない程度の大きさとする必要があるので、センサ押圧用バネ(11F)のバネ力の大きさは、上記押圧専用バネによる検測保持力に比べて、通常、非常(桁外れ)に小さくなる。このため、請求項1に記載の発明では、検測保持力は、主に磁石(15)の磁力により賄われ、センサ押圧用バネ(11F)のバネ力が占める割合は非常に小さなものとなる。
【0011】
ところで、磁石(15)の磁力は、剪断方向(この例では、サイドローラ(7)と第1レール(R1)との接触面圧を上昇させる向きと直交する方向)においては、引力又は斥力の向きの力に比べて非常に小さい。
【0012】
そして、軌道検測装置を移動させる際には、軌道検測装置を上方側に移動させる必要があるが、この移動の向きは上記剪断方向とほぼ一致しているので、センサ押圧用バネ(11F)のバネ力が小さいことと相まって、軌道検測装置を移動させるに必要な力(以下、移動搬力という。)は、現状の軌道検測装置に比べて非常に小さくなる。
【0013】
したがって、軌道検測装置の小型軽量化を図りつつ、軌道検測装置を速やかに移動させることが可能になるとともに、移動搬力が小さくなるので、大きな衝撃力が軌道検測装置に作用してしまうことを未然に防止でき、移動時に軌道検測装置が損傷してしまうことを防止できる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、軌間アーム(9)を介して固定アーム(3)を第1レール(R1)側に押圧するバネ押圧力(Fs)は、磁石(15)の磁力による磁石押圧力(Fm)に比べて小さいことを特徴とする。これにより、請求項2に記載の発明では、移動搬力を確実に小さくすることができる。
【0015】
ところで、従来の軌道検測装置では、検測時に軌間寸法が大きく変動した場合に備えて、軌間測定用センサ用のローラ(以下、センサローラという。)及びレールの頭面に接触して回転する走行ローラを、アーム本体に対して移動可能に組み付けられたホルダ等に固定することにより、センサローラと走行ローラとをアーム本体に対して一体的に変位可能な構造を採用していた。
【0016】
このため、従来の軌道検測装置の構造が複雑となり、軌道検測装置の重量増を招いていたので、移動搬力を小さくする上で障害となっていた。
これに対して、請求項3に記載の発明では、第1レール(R1)の頭面に接触して回転する第1走行ローラ(5)と、第2レール(R2)の頭面に接触して回転する第2走行ローラ(19)とを備え、第1走行ローラ(5)及びサイドローラ(7)は、固定アーム(3)に対して不動であり、かつ、第2走行ローラ(19)は、軌間アーム(9)に対して不動であり、さらに、第1レール(R1)及び第2レール(R2)の軌間寸法が設計中心寸法である場合には、第2走行ローラ(19)は第2レール(R2)の頭面幅内の中央より外側に位置することを特徴としている。
【0017】
これにより、請求項3に記載の発明では、第1走行ローラ(5)、第2走行ローラ(19)及びサイドローラ(7)が固定構造となるので、軌道検測装置の構造を簡略化することが可能となり、軌道検測装置の重量減を図ることが可能となり、移動搬力を小さくすることができる。
【0018】
すなわち、検測時に軌間寸法が微少変動するものの、軌道上を走行する電車等の車輪には、レールの内側側面に接触する鍔状のフランジが設けられているので、軌間寸法が左右のフランジ間寸法より小さくなることは原理的に発生し得ない。
【0019】
一方、軌間寸法が、第1、第2走行ローラ(5、19)間寸法を遙かに超えた大きな寸法となることは非現実的であることから、第1、第2走行ローラ(5、19)間寸法を、第1レール(R1)及び第2レール(R2)の軌間寸法が設計中心寸法であるときに第2走行ローラ(19)が第2レール(R2)の頭面幅内の中央より外側に位置するような寸法とすれば、軌間寸法の変動を実用上十分に吸収することができる。
【0020】
なお、第1レール(R1)及び第2レール(R2)の外側にアスファルトや石材等からなる敷設路面がある路面電車軌道等では、両レール(R1、R2)の外側に石材等による壁が形成されている場合がある。
【0021】
しかし、路面電車軌道等においても、前述したように、軌間寸法が過度に小さくなることは原理的に発生し得ないので、路面電車軌道等であっても、第1、第2走行ローラ(5、19)をレールの頭部幅内で走行させることができる。
【0022】
ところで、特許文献1等に記載された現状の軌道検測装置では、第2走行ローラとセンサローラとが同一のブラケットに支持されているので、第2走行ローラとセンサローラとは軌間アームに対して一体的に変位する構成となっている。
【0023】
一方、センサローラは、軌間寸法の変動に時間差無く追従する必要があるので、仮に、現状の軌道検測装置のごとく、第2走行ローラとセンサローラとが軌間アームに対して一体的に変位する構成であると、軌間アームに対して変位する部位(つまり、センサローラ及び第2走行ローラ)の質量が大きくなってしまうので、センサローラを軌間寸法の変動に時間差無く追従するには、センサ押圧用バネのバネ力を大きくせざるを得ない。
【0024】
しかし、センサ押圧用バネのバネ力を大きくすると、実質的に押圧専用バネを設けた場合と同様な構成となるので、速やかに軌道検測装置を移動(退避)させることが難しい。
これに対して、請求項3に記載の発明では、第2走行ローラ(19)が軌間アーム(9)に対して固定された構造であるので、軌間アーム(9)に対して変位する部位の質量を現状の軌道検測装置に比べて小さくすることができる。
【0025】
したがって、請求項3に記載の発明では、センサローラ(11A)を軌間寸法の変動に時間差無く追従するに必要なバネ押圧力(Fs)を小さくすることができるので、速やかに軌道検測装置を移動(退避)させることができる。
【0026】
したがって、請求項3に記載の発明によれば、検測時に軌間寸法が変動した場合であっても、その変動を吸収可能としつつ、軌道検測装置の構造を簡略化することができるので、軌道検測装置の重量減を図ることにより、移動搬力を小さくすることができる。
【0027】
なお、「軌間寸法の設計中心寸法」とは、検測対象となる軌道(レール)を敷設する際に予め設計段階で定められた軌間寸法をいう。

因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る軌道検測装置の上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る軌道検測装置の特徴を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る軌道検測装置における第1走行ローラ5部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る軌道検測装置における軌間測定用センサ11部分の拡大上面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る軌道検測装置における第1走行ローラ5部分の拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係る軌道検測装置における第2走行ローラ19部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
軌道検測装置1は、図1に示すように、互いに平行に敷設された第1レールR1及び第2レールR2の状態を検測する装置であり、以下に本発明に係る軌道検測装置の実施形態を図面と共に説明する。
【0030】
ここで、「第1レールR1及び第2レールR2の状態」とは、具体的には、両レールR1、R2の鉛直方向の不整(高低狂い)及び水平方向の不整(通り狂い)、並びに両レールR1、R2の軌間寸法不整等を意図しており、通常、高低狂い及び通り狂いの不整検測(測定)は、「正矢法」により行われる。
【0031】
なお、本願発明は軌間寸法不整を測定するための軌間測定用センサを中心とした発明であるので、本明細書では、「正矢法」やその他の測定用センサ等に関する詳細説明は省略する。
【0032】
1.本実施形態に係る軌道検測装置の構造
固定アーム3は、第1レールR1に沿って延びる金属製の部材であり、この固定アーム3の長手方向両端側には、第1レールR1の頭面に接触しながら回転する第1走行ローラ5、及び第1レールR1の側面に接触しながら回転するサイドローラ7が組み付け固定されている。
【0033】
すなわち、固定アーム3は角筒(角パイプ)状の部材であり、その長手方向両端側のうち上端面及び下端面には、図3に示すように、第1走行ローラ5が組み付けられる矩形穴3Aが設けられ、水平方向に対向する一対の側面には、第1走行ローラ5を回転可能に支持する軸受3Bは圧入固定されている。
【0034】
また、サイドローラ7は、上記一対の側面のうち第2レールR2側の側面に溶接又はネジ等の機械的締結手段により固定されたステー3Cに軸受7Aを介して回転可能に組み付けられている。このため、第1走行ローラ5及びサイドローラ7は、固定アーム3に対して不動の位置で回転することができる。
【0035】
なお、一対の第1走行ローラ5のうち一方の第1走行ローラ5には、第1走行ローラ5の回転角度を積算しながら計測することにより、軌道検測装置1の走行距離を検出する距離センサ5Aが設けられており、この距離センサ5Aは固定アーム3の側面に固定されたカバー5Bにより覆われて保護されている。
【0036】
また、固定アーム3の長手方向中央部には、図1に示すように、第1、2レールR1、R2間を渡すように、固定アーム3から第2レールR2側に向けて延びる軌間アーム9が、ネジ等の機械的締結手段により固定された状態で組み付けられており、この軌間アーム9の長手方向端部のうち第2レールR2側には、第1、2レールR1、R2の軌間寸法を測定する軌間測定用センサ11が組み付けられている。
【0037】
軌間測定用センサ11は、センサローラ11A、ロッド11B、センサ部11C等から構成されている。そして、センサローラ11Aは、図2に示すように、第2レールR2のうち第1レールR1側の側面に接触しながら回転するコロであり、このセンサローラ11Aは、保持プレート11Dを介してロッド11Bの先端に組み付けられている。
【0038】
ロッド部11Bは、軌間アーム9の長手方向と平行な方向(以下、軌間方向という。)に延びるとともに、軌間方向に変位可能な棒状の部材であり、センサ部11Cは、ロッド11Bの変位量を検出するリニアポテンショセンサである。そして、軌間測定用センサ11はロッド11Bの変位量を検出することにより、第1、2レールR1、R2の軌間寸法を測定する。
【0039】
因みに、センサ部11Cの出力電圧は、軌間アーム9に組み付けられた制御部13に入力されており、この制御部13及び軌間測定用センサ11には、軌間アーム9に着脱可能に組み付けられたバッテリ(図示せず。)から電力が供給されている。
【0040】
また、保持プレート11Dは、図4に示すように、軌間アーム9を挟んで両側に配設されたリニアガイド(直動案内)11Eを介して軌間アーム9に支持されている。このため、ロッド部11B及びセンサローラ11Aは、ガタツクこと無く滑らかに軌間方向のみに変位することができる。
【0041】
因みに、本実施形態に係るリニアガイド11Eは、棒状の直動(LM)レール11G及びLMレール11G上に移動するLMブロック11H等から構成されている。そして、保持プレート11DはLMブロック11Hに固定され、一方、LMレール11Gは、軌間アーム9の長手方向に沿うように配置された状態でその長手方向両端側がL字状のステー11J、11Kにより軌間アーム9に固定されている。
【0042】
また、保持プレート11Dを挟んでセンサローラ11Aと反対側には、センサ押圧用バネ11Fが配設されており、このセンサ押圧用バネ11Fは、保持プレート11Dを介してセンサローラ11Aを第2レールR2の側面に押圧する弾性力(以下、この力をバネ押圧力Fsという。)をセンサローラ11Aに作用させる。
【0043】
そして、本実施形態に係るセンサ押圧用バネ11Fは、軌間アーム9を挟んで両側に配設された圧縮コイルバネにより構成されており、各センサ押圧用バネ11Fは、LMブロック11Hとステー11Jとにより挟まれた状態で、センサ押圧用バネ11Fを長手方向に貫通するLMレール11Gにより支持されている。
【0044】
つまり、センサ押圧用バネ11Fは、その長手方向一端側(図4の右端側)がLMブロック11Hに接触することによりセンサローラ11Aにバネ押圧力Fsを作用させ、一方、長手方向他端側(図4の左端側)がステー11Jに接触することによりバネ押圧力Fsの反作用(第2レールR2側から第1レールR1側に向かう向きの弾性力)を軌間アーム9に作用させる。
【0045】
このため、バネ押圧力Fsの反作用は、軌間アーム9及び固定アーム3を介して固定アーム3の長手方向両端側に設けられたサイドローラ7に伝達されることとなるため、サイドローラ7はバネ押圧力Fsの反作用を受けて第1レールR1の側面に押圧される。
【0046】
また、第1レールR1の長手方向においてサイドローラ7を挟んで両側には、図5に示すように、サイドローラ7と第1レールR1との接触面圧を上昇させる向きの磁力を発揮する永久磁石15が配設されている。
【0047】
このため、サイドローラ7は、バネ押圧力Fsに加えて、永久磁石15の磁力(以下、この力をマグネット押圧力Fmという。)によっても第1レールR1の側面に押圧されることとなる。
【0048】
そこで、本実施形態では、バネ押圧力Fsがマグネット押圧力Fmに比べて小さくなり、かつ、バネ押圧力Fsとマグネット押圧力Fmとの和が、検測時に軌道検測装置1が両レールR1、R2から離れることを防止するために十分な大きさとなるように設定している。
【0049】
なお、マグネット押圧力Fmはバネ押圧力Fsの2倍以上の大きさであり、具体的には、マグネット押圧力Fmの合計は約6kgfであり、バネ押圧力Fsの合計は約2.2kgfである。
【0050】
また、永久磁石15は、第1レールR1の側面と対向するように固定アーム3に組み付けられた樹脂製の案内部材15Aに埋設されており、これら案内部材15Aは、固定アーム3に固定された金属製のステー15Bにネジ固定されている。
【0051】
因みに、第1レールR1の側面には、図2に示すように、水平方向の不整(通り狂い)を計測するための通り測定用センサ17が設けられており、この通り測定用センサ17は、サイドローラ7と同一側から第1レールRの側面に接触するセンサローラ17A及びこのセンサローラ17Aを第1レールR1に押圧するセンサ押圧用バネ17Bを有している。
【0052】
したがって、サイドローラ7を第1レールR1に押圧する現実の力(検測保持力)は、バネ押圧力Fsとマグネット押圧力Fmとの和からセンサ押圧用バネ17Bのバネ押圧力(本実施形態では、約1kgf)を差し引いた大きさである。
【0053】
また、軌間アーム9の長手方向端部のうち固定アーム3と反対側の端部には、図2に示すように、第2レールR2の頭面に接触して回転する第2走行ローラ19が、軌間アーム9に対して不動として組み付けられている。
【0054】
そして、第2走行ローラ19の固定位置は、第1レールR1及び第2レールR2の軌間寸法Woが設計中心寸法である場合には、図6に示すように、第2走行ローラ19と第2レールR2との接触箇所が、第2レールR2の頭面幅Wr内の中央より外側に位置するように設定されている。
【0055】
2.本実施形態に係る軌道検測装置の使用方法
本実施形態に係る軌道検測装置1の使用方法は、例えば特許文献1等に示された従来の軌道検測装置と同様である。
【0056】
すなわち、第1走行ローラ5が第1レールR1の頭面に接触し、第2走行ローラ19が第2レールR2の頭面に接触し、かつ、サイドローラ7が第1レールR1の側面に接触し、軌間測定用センサ11等のセンサローラそれぞれが各レールに接触した状態で、作業員が押し棒21(図1参照)を押すことにより、軌道検測装置1を走行させる。
【0057】
これにより、軌間測定用センサ11等のセンサローラの変位を示す信号が制御部13に入力されていくと同時に、その内容が記録されていく。
3.本実施形態に係る軌道検測装置の特徴
本実施形態では、上述したように、マグネット押圧力Fm及びバネ押圧力Fsが、検測時に軌道検測装置1が両レールから離れることを防止するための力、つまり検測保持力となる。
【0058】
一方、バネ押圧力Fsは、軌間測定用センサ11を第2レールR2に向けて押圧することを目的とする弾性力であって、軌間測定用センサ11の作動を阻害することがない程度の大きさとする必要があるので、センサ押圧用バネ11Fのバネ力の大きさは、通常、非常に小さくなる。このため、本実施形態では、検測保持力は、主に永久磁石15にマグネット押圧力Fmにより賄われ、センサ押圧用バネ11Fのバネ力が占める割合が小さくなる。
【0059】
ところで、永久磁石15の磁力は、剪断方向(この例では、サイドローラ7と第1レールR1との接触面圧を上昇させる向きと直交する方向)においては、引力又は斥力の向きの力に比べて非常に小さい。
【0060】
そして、軌道検測装置1を移動(退避)させる際には、軌道検測装置1を上方側に移動させる必要があるが、この移動の向きは上記剪断方向とほぼ一致しているので、センサ押圧用バネ11Fのバネ力が小さいことと相まって、軌道検測装置1を移動させるに必要な力(移動搬力)は小さくなる。
【0061】
したがって、軌道検測装置1の小型軽量化を図りつつ、軌道検測装置1を速やかに移動させることが可能になるとともに、移動搬力が小さくなるので、大きな衝撃力が軌道検測装置1に作用してしまうことを未然に防止でき、移動時に軌道検測装置1が損傷してしまうことを防止できる。
【0062】
ところで、従来の軌道検測装置では、上述したように、その構造が複雑であり、かつ、軌道検測装置1の重量も大きいものであったので、移動搬力を小さくすることが困難であった。
【0063】
これに対して、本実施形態では、第1走行ローラ5、第2走行ローラ19及びサイドローラ7が固定された構造であるので、軌道検測装置1の構造を簡略化することが可能となる。したがって、軌道検測装置1の軽量化を図ることができるので、移動搬力を小さくすることができる。
【0064】
ところで、検測時に軌間寸法が変動するものの、軌道上を走行する電車等の車輪には、周知のごとく、フランジが設けられているので、軌間寸法が左右のフランジ間寸法より小さくなることは原理的に発生し得ない。
【0065】
一方、軌間寸法が、第1、第2走行ローラ5、19間寸法を遙かに超えた大きな寸法となることは非現実的であることから、第1、第2走行ローラ5、19間寸法を、第1レールR1及び第2レールR2の軌間寸法が設計中心寸法であるときに第2走行ローラ19が第2レールR2の頭面幅内の中央より外側に位置するような寸法とすれば、軌間寸法の変動を実用上十分に吸収することができる。
【0066】
したがって、本実施形態によれば、検測時に軌間寸法が変動した場合であっても、その変動を吸収可能としつつ、軌道検測装置1の構造を簡略化することができるので、軌道検測装置1の重量減を図ることにより、移動搬力を小さくすることができる。
【0067】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、磁石を永久磁石15にて構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電磁石にて磁石を構成してもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、マグネット押圧力Fmはバネ押圧力Fsの2倍以上としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
1…軌道検測装置、3…固定アーム、3A…矩形穴、3B…軸受、3C…ステー、
5…第1走行ローラ、5A…距離センサ、5B…カバー、7…サイドローラ、
9…軌間アーム、11…軌間測定用センサ、11A…センサローラ、
11B…ロッド、11C…センサ部、11D…保持プレート、
11E…リニアガイド、11F…センサ押圧用バネ、11G…LMレール、
11H…LMブロック、11J、11K…ステー、13…制御部、15…永久磁石、
15A…案内部材、15B…ステー、17…通り測定用センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に敷設された第1レール及び第2レールの状態を検測する軌道検測装置であって、
前記第1レールに沿って延びる固定アームと、
前記固定アームの長手方向中間部に固定され、前記第2レールに向けて延びる軌間アームと、
前記軌間アームに設けられ、前記第2レールの側面に接触する軌間測定用センサと、
前記軌間測定用センサを前記第2レールの側面に押圧する弾性力を発揮するとともに、その反作用により前記軌間アームを前記第1レール側に押圧するセンサ押圧用バネと、
前記固定アームの長手方向両端側に設けられ、前記反作用により前記第1レールの側面に押圧されるサイドローラと、
前記第1レールと対向するように前記固定アームに設けられ、前記サイドローラと前記第1レールとの接触面圧を上昇させる向きの磁力を発揮する磁石と
を備えることを特徴とする軌道検測装置。
【請求項2】
前記軌間アームを介して前記固定アームを前記第1レール側に押圧するバネ押圧力は、前記磁石の磁力による磁石押圧力に比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の軌道検測装置。
【請求項3】
前記第1レールの頭面に接触して回転する第1走行ローラと、
前記第2レールの頭面に接触して回転する第2走行ローラとを備え、
前記第1走行ローラ及び前記サイドローラは、前記固定アームに対して不動であり、かつ、前記第2走行ローラは、前記軌間アームに対して不動であり、
さらに、前記第1レール及び前記第2レールの軌間寸法が設計中心寸法である場合には、前記第2走行ローラは前記第2レールの頭面幅内の中央より外側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の軌道検測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11517(P2013−11517A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144438(P2011−144438)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(591256701)日本機械保線株式会社 (3)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】