説明

軌道角運動量を持つ光を用いる光学過分極

核過分極化された造影剤を生成するディスペンサが提供される。ディスペンサは、複合物を受けるチャンバを有する。フォトニック過分極システムは、軌道角運動量を具備するOAMフォトニックビームを生成し、複合物における核過分極を生成するため、上記OAMフォトニックビームを上記チャンバへと向けるよう構成される。チャンバは、過分極化された複合物が出されることができる出力部を持つ。過分極が体外で生成されるので、生物組織におけるOAMフォトニックビームの浸透深度は、本発明に関しては無関係である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過分極化された造影剤の生成に関する。光学システムは、光学角運動量を具備するOAM光ビームを生成する。このOAMフォトニックビームは、MR検査において過分極化された造影剤として使用されることができる、複合物における核過分極を生成する。
【背景技術】
【0002】
斯かるフォトニックベースの過分極システムは、国際出願第WO2009/081360号から知られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知のフォトニックベースの過分極システムは、検査される患者の組織を通過するよう、軌道角運動量を具備する光を方向付ける光出力を持つ表面プローブを含む。既知の光ベースの過分極システムの別の実施形態では、カテーテルが提供される。フォトニックベースの過分極のこれらの既知の用途は、生物学的材料における過分極化された造影剤を生成し、生物学的(即ち人間又は動物の)組織に関して短い浸透深度のみを持つ。従って、これらの既知の用途は、内視鏡、侵襲的及び介入的な用途に限定される。
【0004】
本発明の目的は、非介入的な用途に適したフォトニックベースの過分極システムを持つディスペンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、ディスペンサにより実現され、このディスペンサは、
複合物を受けるチャンバと、
軌道角運動量を具備するOAMフォトニックビームを生成し、上記複合物において核過分極を生成するよう、上記OAMフォトニックビームを上記チャンバに向けるよう構成されるフォトニック過分極システムとを有し、
上記チャンバが、上記過分極化された複合物が出されることができる出力部を持つ。
【0006】
本発明は、軌道角運動量を具備するフォトニックビーム(OAM光ビーム)が、複合物、例えばチャンバにおける流体物質を過分極化するために使用されるという洞察に基づかれる。過分極化された複合物は、NMR又はMRI検査において造影剤として機能し、対象、例えば検査される患者に与えられる。OAMフォトニックビームのビーム経路、及びNMR又はMRI検査は、分離される。こうして、OAM光の浸透深度における任意の限定は、チャンバの寸法において考慮される。複合物の過分極が、OAMフォトニックビームに関して好適にアクセス可能なチャンバにおいて、即ちOAMフォトニックビームの軌道角運動量を保存する透過的ウィンドウを介して起こる。すると、過分極化された複合物は、チャンバの出力部を介して出され、検査される患者に対する造影剤として与えられることができる。別の実現において、過分極は、第1の過分極化された複合物から造影剤として使用される第2の受取複合物へと移される。過分極が体外で生成されるので、生物組織におけるOAMフォトニックビームの浸透深度は、本発明に関しては無関係である。チャンバは、複合物を受ける別々のコンテナとして実現されることができる。このコンテナにおいて、複合物は、OAMフォトニックビームにより過分極化され、次に造影剤として投与される。代替的に、チャンバは、注入管路の一体部分とすることができる。この管路に沿って、複合物が転送されて、OAMフォトニックビームにより過分極化され、造影剤として投与される。別々のコンテナとして、又は注入管路の一体部分として実現されるかに関係なく、チャンバは好ましくは、全ての方向において、数ミリメートルの寸法を持つ。斯かる大きさのチャンバは、OAMフォトニックビームの約1,000のスポットで容易に照射される。例えば1mmの30x30スポットが、1mmの深度にわたり複合物を過分極化するために用いられることができる。こうして、1〜10ml/sの過分極化された複合物が生成されることができる。本発明のこれら及び他の側面が、従属項において規定される実施形態を参照して更に説明されることになる。
【0007】
本発明の更なる側面において、ディスペンサは、分極転移システムを含む。チャンバにおける複合物は、核又は電子過分極がOAMフォトニックビームにより生成されるソース複合物である。分極転移システムにおいて、この過分極化されたソース複合物から、核又は電子過分極が、受取複合物へと転送される。ソース複合物がOAMフォトニックビームにより過分極化されるが、後で加えられることができるとき、この受取複合物は存在する必要はない。通常、ソース複合物において過分極化された核は、受取複合物において過分極化された核とは異なる。特に、ソース複合物において、陽子(H)はOAMフォトニックビームにより過分極化され、この過分極は例えば、受取複合物の13C、15N、17O又は19F核へと転送される。特に、ソース複合物は、水とすることができる。水の陽子(1H)は、OAMフォトニックビームにより効果的に分極されることができる。OAMフォトニックビームとの相互作用の間、混合物に存在する場合、これらの核は、角運動量の保存を通して直接分極されることができる。
【0008】
ソース複合物からの過分極は、例えばオーバーハウザー効果又はダイナミック核分極(DNP)に基づき、分極転移システムにより、受取複合物へと転送される。代替的に、分極の転送は、同じ分子における相互作用の交換を介して実行されることもできる。即ち、例えば、既に強化された13C信号を同様に強化されたH信号の追加的な転送により強化することで実行される。この変形例において、ソース複合物及び受取複合物は実際同じである。しかし、分極は、同じ複合物におけるソース核から受取核へと内部的に移される。例えば、OAMフォトニックビームは、グルコースにおける陽子(H)を分極化し、次に、生成された分極は、グルコースの炭素13(13C)核へと転移される。過分極化された13Cを持つグルコースが、造影剤として与えるために実際的である溶液において希釈される。斯かる分極転移は、INEPTといったNMRパルスシークエンス及び当業者に知られる他のシーケンス(例えばSpin Dynamics. Basis of Nuclear Magnetic Resonance, M.H. Levitt, Wiley 2008参照)を利用する。特に好ましい実施形態において、これらのシーケンスは、分極転移シーケンスにおけるターゲット核(例えば13C)上にコヒーレンス(横断方向の磁化)を生成するRFパルスを除外するよう修正される。過分極化された種がMR検査又は撮像データ取得に関するターゲット位置に達するまで、ターゲット核へのRFパルスの適用は遅らされる。従って、分極は、磁気z軸に沿って保存され、長手方向緩和時間T1によってのみ影響を受ける。非対称のNMR信号を回避するため、MRデータ取得の間、位相サイクルスキームが適用されることができる。
【0009】
受取複合物の核の過分極は、ソース複合物の核より長い(長手方向の)寿命(T1)を持つ。その結果、受取複合物の過分極及び造影剤として検査される患者への投与の間でより長い時間が利用可能である。
【0010】
本発明の1つの側面によれば、ソース複合物は、OAMフォトニックビームとの相互作用により、効率的な過分極の適切な有害でない溶媒において、高い濃度で溶かされる。ここで、OAMフォトニックビームの軌道角運動量量子数は、光子から高い磁気回転比を持つスピンを含むソース複合物への軌道角運動量の転移を最適化するよう選択されることができる。ソース複合物におけるスピン分極は、NMR分極転移システムにより、低い磁気回転比を持つことができる溶解受取複合物へと転送される。こうして、大量の溶媒又は溶質が、過分極化されることができ、より少量の溶質に対して転送される過分極を持つことができる。その結果、過分極化された溶質が作られるが、これは、有害な濃度に達しないよう、溶媒において低い濃度でなされる。過分極化された溶液は、造影剤として使用される。関連する手法において、OAMフォトニックビームにより照射されるとき溶質ソース及び/又は受取複合物の最大濃度を増すため、上昇された温度でOAMフォトニックビームとの相互作用を用いて、この複合物は過分極化される。
【0011】
更に別の実現において、OAMフォトニックビームは最初に複合物におけるソース核を分極化し、次に、この分極は、同じ複合物における受取核へと移される。この例において、ソース複合物及び受取複合物は、一致する。
【0012】
更なる実現では、過分極の転移の必要がない。ここで、複合物は、高い濃度でのOAMフォトニックビームとの相互作用を用いて過分極化され、有害な濃度を越えることがないよう、受け側の(passive)溶質において簡単に希釈される。
【0013】
本発明の中で別の実施形態では、チャンバは、フローセル又は平坦なキュベットである。フローセルは、過分極化された複合物の安定したフローが生成される連続的なフローモードで作動されることができる。別の例において、フローセルは、過分極化された複合物が別々のバッチにおいて提供されるよう制御するため、出力ポートに出力弁を具備する。過分極化された複合物の別々のバッチ供給をより正確に制御するため、好ましくは、入力弁も、フローセルの入力ポートに提供される。例えば、フローセルは、いわゆるラボ・オン・ア・チップとしてセットアップされることができる。この手法は、過分極化された物質を投与する装置の急激な小型化を可能にする。ラボ・オン・ア・チップは、10〜100μmの寸法を持つチャネルを用いて、ナノリットル10−9lからアトリットル10−18lという小さな量の流体を操作するマイクロ流体に基づかれる概念である。ラボ・オン・ア・チップは、高い分解能及び感度で分離及び検出を実行するため、解析を実行するのに非常に小さな量のサンプル及び反応物を伴い用いられることができる。ラボ・オン・ア・チップの更なる詳細は、G.M. Whitesidesによる論文「The origins and the future of microfluidics」、Nature 442 (2006) 368-373に記載される。OAMフォトニックビーム過分極及びラボ・オン・ア・チップNMRの一体化は、化学又は生物学的サンプルの高感度の選択的な分光特徴化を可能にする。
【0014】
フォトニックOAMビームとの相互作用後、過分極化された複合物は、従来のコントラスト強調撮像(CE−CT、CE−MRI)においても用いられる技術を用いて、検査される患者に与えられることができる。ある実施形態において、フローセルは、バッチモードにおいて又は連続的なフローモードにおいて作動するよう制御されることができるバルブシステムを用いて、投与ユニットに結合される。バッチモードにおいて、過分極化された物質のボーラスが、従来のコントラスト強調(CE)MR撮像手順と同様に、投与される。例えば注入される。例えば、投与ユニットは、フローセルの出力ポートに結合される。例えばパワーインジェクター又は注入システムといった投与ユニットは、例えば検査される患者といった対象に過分極化された複合物を与える。代替的に、投与ユニットは、フローセルの入力ポートに結合されることができる。すると、投与ユニットは、制御された態様でフローセルに複合物を供給する。ここで、フォトニックOAMビームは、過分極を生成し、この過分極化された複合物は、検査される患者に与えられる。
【0015】
更なる例において、過分極化された物質のボリュームフローレートを増加させるため、並列に作動する複数のフローセルが提供される。
【0016】
本発明の更なる利点は、特に13C複合物に適用されるとき、OAMフォトニックビームに基づかれる過分極処理が、13C複合物における13C核の特定の標識位置に対してほとんど影響を受けない点にある。従って、本発明のこの側面は、過分極化されることができる特定の複合物に関する限定を取り除く。即ち、本発明は、13C過分極化された核で標識化されることができる特定の代謝的に関連する複合物に関する制約を課さない。斯かる代謝的に関連する複合物の例は、グルコース、ピルビン酸塩、重炭酸塩、乳酸塩、グルタミン、コリン等である。更に、ペルフルオロカーボン及びPFOB(臭化過フルオロオクチル)といった薬又は人工血液物質が、注入の前に過分極化されることができる。従って、本発明は、広い種類の代謝及び生理的処理の過分極化されたコントラスト強調磁気共鳴撮像を用いる検査を可能にする。
【0017】
本発明は、本発明のディスペンサを具備する磁気共鳴検査システムにも関する。関連する側面によれば、磁気共鳴検査システム及びディスペンサは、磁気共鳴検査システムのRF及び傾斜システムの動作をディスペンサのRF分極サブシステムの動作と同期化させるよう制御する同期化部を具備する。磁気共鳴検査システムにおいて妨害するRF及び傾斜磁場パルスがないとき、投与ユニットにおいて過分極化された受取核を励起するべく、分極ユニットのRF(B1)場が起動されるよう、この同期は構成される。代替的に、例えばアルミニウム又は銅のRF及び/又は傾斜スクリーンが、磁気共鳴検査システムのRF及び/又は傾斜磁場から過分極化された第2の核を保護するために提供されることができる。
【0018】
本発明の更なる側面において、磁場は、ディスペンサにおいて適用される。特に、本発明のこの側面において、転移経路は、チャンバから、この磁場を通り進む。このチャンバにおいて、OAMフォトニックビーム及び(オプションの)分極転送システムが存在し、このシステムにおいて、過分極が、ソース複合物から受取複合物へと移される。磁場のこの方向は、OAMフォトニックビームにより生成される分極の好ましい方向である。例えばディスペンサが、磁気共鳴検査システムの主磁石のフリンジ場に配置されるとき、これは実現される。特に、0.2Tから0.5T又は更には1.0Tまでの磁場が、生成された分極を維持し、磁気共鳴検査システムにおいて実現するのが容易である。これらの磁場強度は、図2の例に示されるように、主磁石のフリンジ場において利用可能である。ディスペンサにおける磁場は、過分極化された複合物がOAMフォトニックビームから転送されるとき、過分極が維持されることを維持する。NMRパルスシークエンスが高い磁気回転比スピンから低い磁気回転比スピンへとスピン分極を転送するのに使用される実施形態に関して、NMR分極転移シーケンスにおける磁場の空間不均一性の効果を回避するため、小さなボリュームの使用が有利である。実際、OAMフォトニックビームは例えば、20〜50μmの入射スポットを持ち、最高1000のスポットが、約10ccの総ボリュームにおいて異なる位置での分極を実現するために並列に用いられることができる。斯かる小さなボリュームにおいて、磁場の空間不均一性は重要ではなく、OAM過分極後NMR分極転移に関して、主磁石のフリンジ場が用いられることができる。代替的に、ディスペンサは、チャンバにおいて磁場を生成するそれ自身の磁石システムを具備する。
【0019】
本発明の更なる適用において、水は、適切な光学波長での、例えば近赤外スペクトルにおけるOAMフォトニックビームにより過分極化され、与えられる。例えば、ボーラスとして注入又は点滴される。動脈の入力機能の検出及びT1の定量化は、組織における潅流の定量化を可能にする。SNRを改良するために複数のボーラス注入が用いられることができる。なぜなら、水信号は、T1で減衰し、又はMRIパルスシークエンスにより圧壊されることができるからである。この技術は、(過分極化された水の注入後)DCE−MRIと容易に組み合わせられることができ、こうして、組み合わせられた潅流及び透過性マップが得られることができる。
【0020】
等張性食塩液の静脈内投与に関してインジェクターが用いられる。この食塩液は、OAM分極に基づき過分極化される。分極の合理的な程度(>20%)での10ml/sのボリュームフローレートが、容易に実現されることができる。第1の実現は、関心領域の2D又は3Dでの動的なスキャン取得、過分極化された水ボーラスの通過の監視;磁化の急速な減衰を防止するため、低フリップ角の3D傾斜エコーシーケンスの使用;キーホール及びVIPRといったプロファイル共有技術との組合せ、及び高分解能4D画像を可能にする圧縮センシングを用いる再構成とを含む。参照画像が、2つのモードにおいて得られることができる。等しい信号レベルを確実にするため、注入に対して遅延される複数の水ボーラス及び取得モード、又は分極された水の半定常状態注入モードである。
【0021】
この方法の追加的な適用は、入力機能の定量化を可能にする。到着時間及びボーラス分散に関する正確な情報を得るため、インジェクター及び撮像デバイスに対する時間スタンプを用いる。
【0022】
第2の実現は、特に潅流撮像に関する減算技術を含む。例えば、
1.B0(正(強調)信号)に沿った磁化を持つ過分極化された水、対ベースライン信号(熱平衡MRI)。
2.B0(正強調信号)に沿った磁化を持つ過分極化された水、対B0の反対の磁化(負強調信号)。後者は、OAM分極方法の極性効果が原因で可能である。典型的な読み出し戦略は、フロー方向に反対のスライスオーダーを持つ単一のショットEPIを含む。
【0023】
両方法は、反復的なボーラス・モード(「パルス化」)において、又は分極された水の安定した供給(「連続的」)を用いて、適用されることができる。これは、動脈のスピン標識化に関して使用される技術と同様である。
【0024】
腕から関心領域(脳、rentals)への典型的な通過時間は、6〜12秒である。従って、1.5秒のT1の場合、熱平衡(非分極)磁化の3〜10xの残余信号レベルが実現可能である。脳における潅流検査に対して、熱平衡磁化の反転(及び減算)を用いると、約1%の信号差が、測定され、許容可能なSNRレベルを得るには、複数の平均が必要とされる(3〜4分のスキャン時間)。OAM過分極は、およそオーダー1つ分のスキャン時間の削減を可能にする。こうして、運動アーチファクトに対する感度が減らされ、又は追加的な平均によってSNRを増加させることが可能にされる。
【0025】
PULSARといった既知の技術(X. GolayらによるMagnetic Resonance in Medicine 2005, 53 : 15-21)と同様、潅流の自由定量化をモデル化することを可能にするため、複数の時間点が取得されることができる。供給動脈に飽和パルスを選択的に適用することにより、局所的な潅流が評価されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】磁気共鳴検査システムと共動する、本発明のディスペンサの概略的な表現を示す図である。
【図2】本発明のディスペンサの分極転送システムにおいて使用されるパルスシークエンスのグラフィカル表現を示す図である。
【図3】スピンI(例えばH)からスピンS(例えば13C)へ分極を転送するための修正されたINEPTシーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のこれら及び他の側面が、添付の図面を参照し、以下に記載される実施形態を参照して説明されることになる。
【0028】
図1は、磁気共鳴検査システム2と共動する、本発明のディスペンサ1の概略的な表現を示す。ディスペンサ1のチャンバ11は、キュベット11として形成される。フォトニック過分極システム3は、レーザー31及び軌道角運動量を具備するOAMフォトニックビーム32を形成する光分極部33を含む。このOAMフォトニックビームは、溶質の形でソース複合物を含むキュベット11に向けられる。その結果、キュベットにおいて、過分極化されたソース複合物が形成される。この過分極化されたソース複合物は、分極転送システム4に供給される。分極転送システム4において、溶媒に対して溶質として加えられる受取複合物へと、例えば、核分極転送により、溶質ソース複合物の過分極が転送される。過分極化された溶質受取複合物の過分極化された溶液は、検査される患者5に与えられるよう、投与ユニット(図示省略)に適用される。人間の患者の代わりに、動物、特に齧歯動物が検査されることができる。この例の分極転送システム4は、分極しているOAMフォトニックビームがスイッチオフにされたあと、又は過分極化された複合物がOAMフォトニックビームと相互作用する領域から移動したあと、過分極化された複合物の過分極化された分子又は核に関するスピン方向を維持するため安定した磁場を生成するよう、それ自身の磁石44と適合される。ソレノイドRFコイル43を含むRFサブシステムは、ソース複合物から受取複合物へと、又は同じ複合物に含まれるソース核から受取核へと、例えばグルコースにおける1Hから13Cへと分極を移すため、RF EM場を生成することができる。
【0029】
図1に示される本発明のディスペンサは、複合物のフローを制御するため、複数の弁12、13、41、42と適合される。キュベットの入力弁12は、キュベットへの溶質の流入を制御する。キュベットにおいて、OAMフォトニックビームとの相互作用により過分極が生成される。キュベットの出力弁13は、分極転送システムに対する過分極化された溶質の流出を制御する。分極転送システムも、その入力ポートに入力弁41を持ち、その出力ポートに出力弁42を持つ。
【0030】
磁気共鳴検査システム2は、例えば傾斜磁場パルスの適用、RF励起、反転又は再フォーカスパルスを制御するため、即ち取得シーケンスを実行するため、磁気共鳴検査システムを作動させるための複数の機能を実行するそれ自身のMRコントローラ21を持つ。また、MRコントローラは、磁気共鳴信号のピックアップを制御し、これらの磁気共鳴信号の転送及び処理を制御し、これらの信号からの磁気共鳴画像の再構成を制御する。ディスペンサ1は、ディスペンサ1の様々な機能を制御する分極コントローラ14を具備する。MRコントローラ21及び分極コントローラ14は、特に取得シーケンスにおける分極システム4のRF場と、磁気共鳴検査システムから読み出される信号とによる干渉を回避するため、磁気共鳴検査システム2及びディスペンサ1の間の時間同期を提供するよう通信する。1つのオプションは、MRコントローラにより制御される磁気共鳴検査システムの動作にディスペンサも制御させることである。代替的に、分極コントローラは、磁気共鳴検査システムの動作を起動させるために使用されることができる。
【0031】
分極システムは、修正されたINEPTのような核分極転送方法に基づき作動する。図3を参照されたい。変形例は、例えば13C核において、長手軸に沿って、即ちチャンバにおける磁場の方向に沿って、受取複合物の分極を維持するための手段にある。磁気共鳴検査システムにおいて造影剤として適用されるときのみ、過分極化された核が、横断方向の要素に対して反転される。パルスシークエンスの第1の例が図3のトレースに示されるような、修正されたINEPTシーケンスが、例えば31C、15N、17Oといった低い磁気回転比を持つ核の弱い磁気共鳴信号を強化するため、例えばH、19F又は31Pといった高い磁気回転比を持つ核の磁化を用いる。高い磁気回転比(例えばH)を持つソース複合物の核スピンが、z軸に沿って方向付けられ、x軸の周りで90°にわたり回転される。こうして、ソース複合物の横断方向の磁化が生成される。ソース複合物の高い磁気回転比を持つ核及び受取複合物の低い磁気回転比を持つ核の間のJ結合により、磁化が、この複合物から受取複合物へと移される。この転移は、修正されたINEPTシーケンスにより強化される。90xパルスによる初期励起後、スピンシステムはJ/4に対して等しい自由歳差運動間隔τに関して進化するため残され、この複合物及び受取複合物の核スピンは、z軸に沿って受取複合物の再フォーカス磁化を維持する180xパルスにより再フォーカスされる。代替的な修正されたINEPTにおいて、ソース複合物及び受取複合物の両方の磁化を平衡状態へと駆動する、反復されるリストアパルスが適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核過分極化された造影剤を生成するディスペンサであって、
複合物を受けるチャンバと、
軌道角運動量を具備するOAMフォトニックビームを生成し、前記複合物において核過分極を生成するよう、前記OAMフォトニックビームを前記チャンバに向けるよう構成されるフォトニック過分極システムとを有し、
前記チャンバが、前記過分極化された複合物が出されることができる出力部を持つ、ディスペンサ。
【請求項2】
前記チャンバから前記過分極化されたソース複合物を受け、
受取複合物を受け、
前記ソース複合物から前記受取複合物へと前記過分極を移す、分極転移システムを有する、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記チャンバが、流体の通過のためのフローセルである、請求項1又は2に記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記チャンバが平坦なキュベットである、請求項1又は2に記載のディスペンサ。
【請求項5】
前記チャンバにおいて、磁場が印加される、請求項1又は2に記載のディスペンサ。
【請求項6】
前記チャンバにおいて前記磁場を生成するための磁石を含む、請求項5に記載のディスペンサ。
【請求項7】
前記フローセルが、入力弁を持つ入力ポート及び/又は出力弁を持つ出力ポートを持つ、請求項3に記載のディスペンサ。
【請求項8】
磁気共鳴検査システムであって、
静的な磁場を生成する主磁石と、
RFパルスを生成するRFシステムと、
傾斜磁場パルスを生成する傾斜システムと、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のディスペンサと、
前記傾斜システム及び前記RFシステムと前記RF分極サブシステムとの動作を同期化させる同期制御部とを有する、磁気共鳴検査システム。
【請求項9】
請求項5に記載のディスペンサを含み、前記ディスペンサの前記チャンバが、前記主磁場において又は前記主磁石の漂遊磁場において配置される、請求項8に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項10】
前記傾斜システム及び前記ディスペンサの間に配置される傾斜シールドを具備する、請求項8に記載の磁気共鳴検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−519419(P2013−519419A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552498(P2012−552498)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050480
【国際公開番号】WO2011/101765
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】