説明

軟弱地盤の改良工法

【課題】改良すべき改良地盤とその周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤の改良工法であって、軟弱地盤の改良に伴う改良地盤周辺部の地下水の低下を抑制しつつ、軟弱地盤を効果的に硬質地盤へと改良。
【解決手段】改良すべき軟弱地盤Aとその周辺部Bの地盤とを跨るように砂層Cや有機土層Dが存在する軟弱地盤Aを真空圧を利用して硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法であって、軟弱地盤A上面を気密シート31で覆い、この気密シート31下に真空圧を負荷することで軟弱地盤Aにその周辺部の地盤Bと隔離された減圧領域を造り出し、この圧力差によって軟弱地盤A中の間隙水を強制排水し、硬質地盤へと改良する工程に先立って、気密シート31のシート端末31a上に限界盛土高さに盛土32を施工することで、シート端末31aを埋設固定する軟弱地盤Aと周辺部の地盤Bとの境界部分の地盤Eを圧密化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良すべき改良地盤とその周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤の改良に伴う周辺部の地下水の低下を抑制しつつ、軟弱地盤を効果的に硬質地盤へと改良することができる軟弱地盤の改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の改良工法としては、改良する軟弱地盤上面を気密シートで被覆して前記改良地盤中に真空圧を負荷して前記軟弱地盤中にその周辺部と隔離された減圧領域を造り出すと共に、前記軟弱地盤上に盛土を施して盛土荷重を負荷することで、軟弱地盤を硬質地盤へと改良するようにしたものがある。
【0003】
具体的には、図4に示すように、軟弱地盤A中に所定の間隔をおいて複数の鉛直ドレーン材1を上端部1aを残して打設し、次いで、これら各鉛直ドレーン材1の上端部1aに接触するように水平ドレーン2を配置し、次いで、この水平ドレーン材2に真空タンク4を介して真空ポンプ5に繋がる集水管3を接続し、さらに改良地盤A上面を前記鉛直ドレーン材1の上端部1a、水平ドレーン材2及び集水管3とともに気密シート6で被覆する。この後、前記集水管3に真空タンク4を介して接続する真空ポンプ5を稼働させるのである。
【0004】
これにより、真空ポンプ5からの真空圧は、真空タンク4、集水管3、水平ドレーン材2および鉛直ドレーン材1を介して改良地盤Aへと伝播し、鉛直ドレーン材1を中心にその周囲の地盤を減圧状態の領域(減圧領域という)とする。真空圧は、減圧領域となった鉛直ドレーン材1周りの地盤から、さらに外側周りの地盤へと伝播してゆき、この結果、鉛直ドレーン材1へと向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0005】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材1周囲の地盤に含まれる間隙水は鉛直ドレーン材1に向かって吸い出され、鉛直ドレーン材1、水平ドレーン材2及び集水管3を排水経路として排水され、これに伴って鉛直ドレーン材1周囲の地盤のさらに外側周りの地盤も減圧領域となる。
【0006】
こうして、鉛直ドレーン材1を中心にしてその周囲の地盤に減圧領域が広がり、やがて改良地盤A全域が減圧領域となり、同時に鉛直ドレーン材1を中心にして圧密、強度増加が進行し、改良地盤A全域の圧密、強度増加が行われることになる。
【0007】
以上の如くして、硬質地盤へと改良がなされる一方で、気密シート3上に盛土7を施す。これにより、該盛土7の荷重が改良地盤Aに載荷され、該改良地盤Aの圧密脱水が進行することになり、盛土7による改良地盤Aの圧密脱水と前述の圧力差による吸い出しとが共働して、改良地盤Aの圧密沈下が促進されるのである(特許文献1参照)。
【0008】
ところが、上述の強制圧密脱水工法では真空圧により改良地盤Aの地下水を強制排水しているので、改良すべき改良地盤Aとその周辺部の地盤Bとを跨るように透水性の高い砂層や有機土層が存在している場合には、図4中太矢印で示すように、前記砂層や有機土層を通して周辺部の地盤B内の地下水が改良地盤A側へと流れ込んで周辺部の地盤Bの地下水位が低下し、この影響により軟弱な周辺部の地盤Bも圧密が促進されて沈下等が誘発されることになる。
【0009】
地下水の排水を原因とする沈下の場合、その影響範囲が時間とともに拡大し、地盤改良の品質保持のため、十分な圧密時間を必要とする強制圧密脱水工法にあっては逆作用となるので、改良地盤の周辺部に対する影響を出来るだけ少なくする対策が必要とされる。
【0010】
本発明者は、このような技術的課題に鑑み、軟弱地盤の改良に伴う周辺部の地下水の低下を抑制しつつ、軟弱地盤を効果的に硬質地盤へと改良することができる軟弱地盤の改良工法を提案している(特許文献2及び3参照)。
【0011】
特許文献2に記載の発明は、図5に示すように、改良すべき改良地盤Aとその周辺部の地盤Bとを跨るように砂層Cや有機土層Dが存在する軟弱地盤Aの改良に先だって周辺部の地盤B内に鉛直ドレーン材11を打設して鉛直供給路を造成し、この鉛直供給路内に止水材12を含む水を投入して前記鉛直供給路を通して周辺部の地盤B内に止水材12を含む水を供給するようにしたので、前記鉛直供給路内に投入された止水材12が、鉛直供給路周辺の砂層Cや有機土層Dに水流に従って拡散し、止水ゾーン13を形成する。
【0012】
止水材12により形成された止水ゾーン13は、周辺部の地盤B内の地下水が砂層Cや有機土層Dを通して移動するのを阻害し、改良地盤A内の地下水を強制排水するのに伴う周辺部の地盤B内の地下水の低下を抑えることができ、軟弱地盤の改良に伴う周辺部の地盤Bの沈下を効果的に抑制できる。
【0013】
一方、特許文献3に記載の発明は、図6に示すように、改良すべき改良地盤Aと周辺部の地盤Bとを跨るように砂層Cや有機土層Dが存在する軟弱地盤の改良工法において、改良地盤A内に第1の鉛直ドレーン材11を配置し、改良地盤A内に第1の真空ポンプP1からの真空圧を負荷して前記改良地盤A内に隔離された減圧領域を造り出し、間隙水を強制排水して前記改良地盤Aを硬質地盤へと改良するときに、改良地盤周辺部近傍に第2の鉛直ドレーン材101を、改良地盤周辺部の地盤Bに第3の鉛直ドレーン材104を夫々配置し、前記第2の鉛直ドレーン材101内に第2の真空ポンプP2からの真空圧を負荷させ、周辺部近傍からの間隙水を強制排水させ、これを第3の鉛直ドレーン材104へと排水させることで水流Sを形成することを特徴とするものである。
【0014】
この発明において、第2の鉛直ドレーン材101を通して前記改良地盤A内の該改良地盤周辺部近傍からの間隙水を第3の鉛直ドレーン材104へと排水することで形成される水流Sは、砂層Cや有機土層Dを通して改良地盤周辺部の地盤B中の地下水が改良地盤A側へと流れ込むのを効果的に阻止するので、改良地盤周辺部の地盤B中の地下水が改良地盤A側へ流れ込んで周辺部の地盤Bの圧密が促進されて沈下等が誘発される恐れを解消することができる。また、水流Sによって改良地盤周辺部の地盤B中の地下水が改良地盤A側へと流れ込むのが効果的に阻止されるので、真空圧を利用した硬質地盤への地盤改良がより効果的に進行するという効果を奏する。
【0015】
ところが、上記特許文献2に記載の改良工法を実施する場合、改良地盤周辺部の地盤B内に鉛直ドレーン材11を打設して鉛直供給路を造成し、次いでこの鉛直供給路内に止水材12を含む水を投入して前記鉛直供給路を通して改良地盤周辺部の地盤B内に止水材12を含む水を供給するという止水ゾーン13を形成するための特別な装置及び工程が必要があり、上記特許文献3に記載の改良工法を実施する場合には、改良地盤周辺部近傍に第2の鉛直ドレーン材101を、改良地盤周辺部の地盤Bに第3の鉛直ドレーン材104を夫々配置し、次いで、前記第2の鉛直ドレーン材101内に第2の真空ポンプP2からの真空圧を負荷させ、周辺部近傍からの間隙水を強制排水させ、これを第3の鉛直ドレーン材104へと排水させるという水流Sを形成するための特別な装置及び工程が必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3270968号掲載公報
【特許文献2】国際公開第2005/113901号
【特許文献3】特開2010−84406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者は、上記事情に鑑み、改良すべき改良地盤と周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤、特には砂層や有機土層が3〜5mという比較的浅い層に存在する場合に効果的であり、施工が簡単でありながら、しかも改良地盤周辺部から改良地盤内への地下水の移動を確実に阻害することができ、改良地盤の地下水の強制排水に伴う改良地盤周辺部の地盤内の地下水の低下を効果的に抑えることができる軟弱地盤の改良工法について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0018】
すなわち本発明は、改良すべき改良地盤とその周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤、特には砂層や有機土層が3〜5mという比較的浅い層に存在する軟弱地盤に好適な軟弱地盤の改良工法であって、軟弱地盤の改良に伴う改良地盤周辺部の地下水の低下を抑制しつつ、軟弱地盤を効果的に硬質地盤へと改良することができる軟弱地盤の改良工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的達成のため、本発明は、改良すべき軟弱地盤とその周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤を真空圧を利用して硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法であって、
前記軟弱地盤上面を気密シートで覆い、この気密シート下に真空圧を負荷することで前記軟弱地盤にその周辺部の地盤と隔離された減圧領域を造り出し、この圧力差によって前記軟弱地盤中の間隙水を強制排水し、硬質地盤へと改良する工程に先立って、
前記気密シートのシート端末上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷することで、前記シート端末を埋設固定する前記軟弱地盤とその周辺部の地盤との境界部分の地盤を圧密化することを特徴とする軟弱地盤の改良工法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の軟弱地盤の改良工法にあっては、改良すべき軟弱地盤とその周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤を真空圧を利用して硬質地盤へと改良する工法であり、前記軟弱地盤上面を覆う気密シート下に真空圧を負荷することで前記軟弱地盤を硬質地盤へと改良するのに先立って、前記気密シートのシート端末が埋設固定される前記軟弱地盤とその周辺部の地盤との境界部分の地盤を前記気密シートのシート端末上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷することで圧密するようになっている。このため、軟弱地盤と周辺部との境界部分の地盤、特には軟弱地盤とその周辺部の地盤とを跨るように存在する砂層や有機土層の圧密化が進行し、周辺部の地盤からの地下水の移動が阻害されるようになる。
【0021】
この結果、気密シート下に真空圧を負荷して改良地盤にその周辺部の地盤と隔離された減圧領域を造り出し、この圧力差によって前記軟弱地盤中の間隙水を強制排水して前記軟弱地盤を硬質地盤へと改良する工程を実施するときに、周辺部の地盤からの地下水の移動が阻害されるようになっているため、周辺部の地盤内の地下水が改良する軟弱地盤側へと流れ込んで周辺部の地盤の地下水位が低下し、この影響により軟弱な周辺部の地盤Bも圧密が促進されて沈下等が誘発されることになるという弊害の発生が未然に防止されることになる。
【0022】
加えて、本発明の軟弱地盤の改良工法にあっては、軟弱地盤とその周辺部の地盤との境界部分の地盤、特には軟弱地盤とその周辺部の地盤とを跨るように存在する砂層や有機土層の圧密化が進行し、周辺部の地盤からの地下水の移動が阻害されることから、気密シート下に真空圧を負荷して改良地盤にその周辺部の地盤と隔離された減圧領域を造り出し、これにより前記軟弱地盤中の間隙水を強制排水して前記軟弱地盤を硬質地盤へと改良する工程が、より効果的に進行するという効果を奏することにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の軟弱地盤の改良工法を施工した軟弱地盤の断面を示す模式図。
【0024】
【図2】本発明の軟弱地盤の改良工法を施工した軟弱地盤の断面を示す平面図。
【0025】
【図3】本発明の軟弱地盤の改良工法を施工した別形態の軟弱地盤の断面の要部拡大図。
【0026】
【図4】従来の軟弱地盤の改良工法を施工した軟弱地盤の断面を示す模式図。
【0027】
【図5】従来の別の軟弱地盤の改良工法を施工した軟弱地盤の断面を示す模式図。
【0028】
【図6】従来のさらに別の軟弱地盤の改良工法を施工した軟弱地盤の断面を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の軟弱地盤の改良工法を図面に示す好ましい一実施形態に従ってさらに詳しく説明する。図1に示すように、本発明の軟弱地盤の改良工法(以下、本件工法という)は、改良すべき軟弱地盤Aとその周辺部の地盤Bとを跨るように砂層Cや有機土層Dが存在する軟弱地盤、特には砂層Cや有機土層Dが3〜5mという比較的浅い層に存在する軟弱地盤に効果的に適用することができる。
【0030】
本件工法は、前記軟弱地盤A上面を気密シート31で覆い、この気密シート31下に真空圧を負荷することで前記軟弱地盤にその周辺部の地盤Bと隔離された減圧領域を造り出し、これにより前記軟弱地盤A中の間隙水を排水し、該軟弱地盤Aを硬質地盤へと改良するものである。
【0031】
気密シート31下に真空圧を負荷する方法としては特に限定されない。真空圧を負荷する方法としては、例えば本発明者が提案している特許第3270968号掲載公報、特許第3138909号掲載公報、特開2003−55951号公報、特開2004−316068号公報及び特開2004−150026号公報に記載されている方法が、従来のサンドマットを用いた従来工法に比べて、より確実に真空圧を改良地盤中に負荷することができ、より効果的な改良が実現できるという点で好ましい。
【0032】
特許第3270968号掲載公報に記載の改良工法は、軟弱地盤上面を気密シートで被覆して前記軟弱地盤中に真空圧を負荷して、前記軟弱地盤中にその周辺部と隔離された減圧領域を造り出す方法であり、図1及び図2に示すように、改良地盤A中に上端部を残して所定の間隔をおいて複数の鉛直ドレーン材21を打設することにより、地盤A中に複数の鉛直排水壁を造成し、次いで、各鉛直ドレーン材21の上端部21aと接触するように真空ポンプPと真空タンク24、集水管23を介して繋がる水平ドレーン材22を配置し、次いで、軟弱地盤A上を鉛直ドレーン材21の上端部21a、水平ドレーン材22及び集水管23とともに気密シート31で覆い、次いで、前記真空ポンプPを稼働させて前記気密シート31下に真空圧を負荷して負圧の状態を造り出すという方法である。
【0033】
特許第3138909号掲載公報に記載の改良工法は、特許第3270968号掲載公報に記載の工法を改良したものであり、真空ポンプPを間欠的に稼働させてより改良効率を高めたものである。
【0034】
また、特開2003−55951号公報、特開2004−316068号公報及び特開2004−150026号公報にに示すように、真空圧を負荷して軟弱地盤中にその周辺部と隔離された減圧領域を造り出すことにより、軟弱地盤内から吸い出された間隙水を前記真空圧の伝播経路とは別の排水経路を通じて排出するようにしてもよい。
【0035】
図1及び図2に示す形態では、軟弱地盤A中に所定の間隔をおいて設置した各鉛直ドレーン材21の上端部21aに接触させた水平ドレーン材22に真空ポンプPと真空タンク24を介して繋がる集水管23を接続すると共に、前記集水管23の下側で軟弱地盤A内に軟弱地盤A外へと通じる排水タンク25を配置して、真空ポンプPから、真空タンク24、集水管23、水平ドレーン材22及び鉛直ドレーン材21へと続く真空圧の伝播経路とは別の排水経路、すなわち鉛直ドレーン材21から、水平ドレーン材22及び集水管23を通じて集水された軟弱地盤A内からの間隙水を前記排水タンク25へと排水するのである。
【0036】
この場合、図1及び図2に示すように、集水管23と排水タンク25とは、重力を利用して水と空気とを分離するセパレータ26を介して接続し、このセパレータ26によって前記集水管23内の間隙水を前記排水タンク25へと導水するようにするのが望ましい。また、排水タンク25内には排水ポンプ27を内蔵させることができ、この場合、前記排水タンク25内の間隙水を改良地盤A外に繋がる排水管28を通じて改良地盤A外へと強制的に排出することになり、より効率的な排水が可能となる。
【0037】
また、図1及び図2に示すように、地盤改良に際しては、軟弱地盤A上に盛土29を施して盛土荷重を載荷することもできる。盛土29は気密シート31上に施す。これにより、該盛土29の圧密載荷重によって改良地盤Aの圧密脱水がより効率よく行われ、圧力差による吸い出しと共働して、改良地盤Aの圧密沈下が促進されることになる。尚、図1及び図2に示す形態では、気密シート31上に盛土29を施したが、これに限定されない。
【0038】
本件工法は、上述の気密シート下への真空圧の負荷に先だって、気密シートのシート端末を埋設固定する軟弱地盤と周辺部との境界部分の地盤上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷することで前記境界部分の地盤の圧密するようになっている。図1及び図2に示す形態では、軟弱地盤A上面を覆う気密シート31のシート端末31aを軟弱地盤Aと周辺部Bとの境界部分の地盤E内に埋設固定し、このシート端末31a上に限界盛土高さまで盛土32を施している。
【0039】
図1に示すように、気密シート31のシート端末31a上に限界盛土高さに盛土32を施工したとき、軟弱地盤Aと周辺部Bとの境界部分の地盤Eには、シート端末31a上の盛土32による載荷重が図1中太矢印に示すように伝播し、該地盤Eの圧密が進行することになる。特に境界部分の地盤Eには、軟弱地盤Aと周辺部Bとを跨るように砂層Cや有機土層Dが存在している。これら砂層Cや有機土層Dは含水比が高いことから、周辺部Bの地下水の軟弱地盤A側への流入経路となるのであるが、反面、砂層Cや有機土層Dは、圧密載荷重によって圧密が進行し易いことから、盛土32による載荷重が伝播すると、これら砂層Cや有機土層Dの圧密が速やかに進行し、周辺部Bの地下水(図1中矢印)の流路が閉ざされることになるのである。
【0040】
図3に示す形態では、気密シート31のシート端末31a上に土嚢、石材及びコンクリートブロックなどの荷重33を積み上げて限界盛土高さに相当するだけの荷重を軟弱地盤Aと周辺部Bとの境界部分の地盤Eに載荷し、その載荷重が図3中太矢印に示すように境界部分の地盤Eに伝播し、地盤Eの圧密化が図られているのである。
【0041】
軟弱地盤Aと周辺部Bとの境界部分の地盤Eの種類は様々である。特に砂層Cや有機土層Dの種類、含水比の大小、大きさ、形状も、様々に異なっている。このため、境界部分の地盤Eに限界盛土高さに相当するだけの荷重を載荷する必要がない場合もある。本件工法において、「限界盛土高さに相当する荷重」とは、式:Hc=Ns・c/γで現される限界高さ(critical height of slope)によって計算される荷重を上限とし、その上限値よりも小さな荷重であるが、これを載荷することで砂層Cや有機土層Dの圧密を進行させて、周辺部Bの地下水の流路を遮断できるものも含まれる。
【0042】
尚、本件工法を適用するに当たり、気密シートのシート端末上に限界盛土高さに盛土等を施し、その荷重によって軟弱地盤とその周辺部との境界部分の地盤を圧密化する場合、盛土等による荷重は、地盤E周囲に分散し易く地盤Eの深部へ伝播する伝播率は低いため、3〜5mという比較的浅い軟弱地盤の改良や、砂層Cや有機土層Dが3〜5mという比較的浅い層に存在する軟弱地盤の改良に好適である。
【0043】
尚、気密シートのシート端末上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷することで、前記シート端末を埋設固定する前記軟弱地盤と周辺部との境界部分の地盤を圧密化する方法としては、図1〜図3に示す形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更して実施することができる。例えば気密シートのシート端末上のほぼ全域に渡って樋を配置し、この樋内に別の地盤改良区画から排水された改良地盤からの間隙水を入れ、この水の荷重によって、境界部分の地盤Eの圧密化を図ることもできる。
【符号の説明】
【0044】
21・・・ 鉛直ドレーン材
21a・・・鉛直ドレーン材上端部
22・・・ 水平ドレーン材
23・・・ 集水管
24・・・ 真空タンク
P・・・ 真空ポンプ
25・・・ 排水タンク
31 ・・・気密シート
31a・・・シート端末
32・・・ 盛土
33・・・ 荷重
A・・・ 軟弱地盤
B・・・ 周辺部の地盤
C・・・ 砂層
D・・・ 有機土層
E・・・ 境界部分の地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良すべき軟弱地盤とその周辺部の地盤とを跨るように砂層や有機土層が存在する軟弱地盤を真空圧を利用して硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法であって、
前記軟弱地盤上面を気密シートで覆い、この気密シート下に真空圧を負荷することで前記軟弱地盤にその周辺部の地盤と隔離された減圧領域を造り出し、この圧力差によって前記軟弱地盤中の間隙水を強制排水し、硬質地盤へと改良する工程に先立って、
前記気密シートのシート端末上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷することで、前記シート端末を埋設固定する前記軟弱地盤とその周辺部の地盤との境界部分の地盤を圧密化することを特徴とする軟弱地盤の改良工法。
【請求項2】
気密シートのシート端末上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷する工程は、シート端末上に限界盛土高さまで盛土を施すことにより行うことを特徴とする請求項1に記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項3】
気密シートのシート端末上に限界盛土高さに相当する荷重を載荷する工程は、シート端末上に限界盛土高さに相当する荷重の土嚢、石材及びコンクリートブロックの中から選ばれるいずれか1つ、又はこれらを組み合わせたものを配置することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の軟弱地盤の改良工法。
【請求項4】
気密シート下に真空圧を負荷する工程は、鉛直ドレーン材を上端部を残して軟弱地盤中に所定の間隔をおいて打設して該軟弱地盤中に鉛直排水路を造成し、次いで、前記鉛直ドレーン材上端部と接触するように真空ポンプと繋がる水平ドレーン材を配置し、次いで、軟弱地盤上を鉛直ドレーン材の上端部及び水平ドレーン材とともに気密シートで覆い、次いで、前記真空ポンプを作動させて前記気密シート下に真空圧を負荷して負圧の状態を造り出すことにより実施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟弱地盤の改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−72585(P2012−72585A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217296(P2010−217296)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(595107508)丸山工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】