説明

軟組織修復にコラゲナーゼを使った組織癒合法

【課題】軟骨および他の軟組織の欠損部ならびに損傷部を治療、修復する改良法が求められている
【解決手段】本発明は、罹病または損傷部位に隣接する軟骨または線維軟骨組織からの細胞放出を増強する非侵襲的手段として局所投与コラゲナーゼの使用法を提供する。これらの組織から病巣または創傷部へのその後の細胞移動、それに続く適切な細胞外マトリックスの沈着が、病巣の閉鎖または組織裂孔の癒合を生じる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明が関連する技術分野は、軟組織を治療し、修復する方法での使用のための組成物、さらに詳細には、軟組織を治療または修復することを目的とした組織癒合のためのコラゲナーゼ組成物とかかる組成物の使用法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
組織治癒は、細胞、マトリックス成分および生体因子が関与する複雑な過程である。組織への損傷の原因が、損傷であっても、疾病であっても、組織治癒の主要要素は、周囲組織から創傷部もしくは病巣への天然の細胞(native cells)の移動であり、当該創傷部もしくは病巣で、当該細胞は、互いの相互作用、適切な生体因子の発現または新規細胞外マトリックス(ECM)の沈着のいずれによっても、治癒過程に関与できる。大半の組織では、これは、損傷後応答による即時大量マトリックス分解によって達成される。血管が新生された組織の場合、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、例えばコラゲナーゼが、好中球およびマクロファージ細胞の浸潤によって当該領域に放出される。これらの作用物質は、分解組織を除去し、隣接する健康な組織の周囲でECMも分解する。これが、修復部位への必要な細胞の移動を可能にする。よって、望ましくない組織の除去は、創傷領域でのマトリックス分解に直結する。関節軟骨および半月板のいわゆる「白色ゾーン」などの無血管組織では、血管通過浸潤細胞がないこと、当該無血管組織を囲むコラゲナーゼマトリックスが硬いこと、および天然のコラゲナーゼが比較的低濃度であることから、周囲組織からの天然の軟骨細胞または線維軟骨細胞(fibrochondrocytes)の治癒部位への移動はごくわずかである。その結果、かかる組織は、急性損傷または長期組織変性後、それほど治癒しないことがしばしばある。軟骨病巣の場合、マトリックス変性が非効率的であるため、時には、線維組織が欠損した裂孔を埋める。しかし、かかる線維組織は、天然の組織の取替品としては機械的に適さない。
【0003】
大型の関節軟骨病巣の修復には、自己軟骨組織の移植が開発されている。現行法は、典型的には、健康な非荷重軟骨表面からの骨軟骨組織プラグ(plug(s) of osteochondral tissue)の採取と、その後の当該欠損部位への移植を含む。当該移植組織は、しばしば、天然の軟骨下骨と一体化するが、当該方法は、しばしば、天然の軟骨と移植軟骨の間の周囲接触面での一体化不良をきたす。
【0004】
マイクロフラクチャーとして知られている技術は、小関節欠損部での線維軟骨組織の内部増殖の促進に使用されている。この手法は、下にある軟骨下骨への小穴の穿孔を含み、その効果は、当該欠損部位への骨髄幹細胞および治癒物質の放出であると主張されている。その結果、総じて線維性である組織が形成される。この方法は、組織充填効果を生じるが、新組織は、真の軟骨ではないため、長期の関節荷重に耐えることができない。この欠点に対処するために、いわゆる自己軟骨細胞移植(ACI)法が開発された。しかし、当該方法の長期臨床有益性が、なおも確定される必要がある。
【0005】
軟骨一体化の問題を克服するために、椎間板、軟骨および半月板の修復における組織癒合の促進に、レーザーによる熱溶接処置を使用する試みがなされている。この技術の第一の欠点は、当該処置が著しく熱を生じ、組織の再構築の活力源である局所細胞の死滅をしばしば起こす点である。熱駆動組織溶接と細胞生存能力との間の適切なバランスを達成するのは、明らかに困難である。
【0006】
白色ゾーン半月板損傷部の場合、裂傷部辺縁は、固定具または縫合糸で緊密に保持される場合でさえ、めったに癒合しない。現在、外科的切除が、かかる損傷部のケアの標準であるが、これは、下にある関節軟骨の長期変性をしばしばもたらす。同様の難点は、いわゆる三角線維軟骨複合体(TFCC)、即ち手関節底部の半月板様構造、の修復、ならびに、靭帯、腱および椎間板損傷部の修復で認められる。
【0007】
従って、軟骨および他の軟組織の欠損部ならびに損傷部を治療し、修復する改良法が、この技術分野に求められていることが分かる。
【0008】
〔発明の概要〕
半月板軟骨および関節軟骨、および他の軟組織の欠損部ならびに損傷部の治療を目的とした新規組織癒合法が開示される。本発明の方法では、治療有効量のコラゲナーゼ組成物が、欠損もしくは損傷部位の軟組織に塗布される。コラゲナーゼは、コラーゲン、ECMに特異的な豊富タンパクを分解する酵素で、一般に細胞に有害ではない。
【0009】
本発明の方法では、コラゲナーゼは、一時的に塗布され、欠損もしくは損傷表面でコラーゲンを消化し、それによって、軟骨細胞または線維軟骨細胞を動員する。次に、当該細胞は、欠損もしくは損傷部位に移動し、当該部位で、当該細胞は増殖し、新たな細胞外マトリックスを沈着させ、それによって、組織を癒合することができる、と考えられる。血管治癒メカニズムとは対照的に、この結果起こる無血管組織の治癒が、本明細書では、組織癒合と称される。本手法は、体内または体外で実施されることができる。体外法では、損傷を受けた軟組織が、患者から取り出され、コラゲナーゼ組成物で処理され、その後、当該患者に再度植え込まれる。
【0010】
本発明の新規方法は、多くの長所を有する。本発明は、非自然治癒欠損部の修復において、移植物と天然の軟骨との間の結合メカニズムの提供に使用されることができる。本発明は、半月板の無血管領域など、他の軟骨組織の損傷部治癒の促進にも使用されることができる。さらに、提案されている組織癒合促進のためのコラゲナーゼ処理には、細胞死は問題でない。コラゲナーゼは、天然の、遍在的に発現される酵素で、細胞体そのものではなく、細胞外マトリックスコラーゲンのみを標的にする。そうであるため、各種の細胞は、細胞傷害性が既知のトリプシンなどの広範囲プロテアーゼとは異なり、コラゲナーゼへの高い耐性を示す。本発明の方法の使用は、自然治癒過程を促進、加速し、組織修復への外科処置の転帰を改善する。本発明の方法は、骨軟骨植込みまたは移植、白色ゾーン半月板損傷部の修復、TFCC損傷部の修復などを含めた多様な従来の外科処置における組織癒合に使用されることができる。
【0011】
本発明のこれらの長所および態様ならびに他の長所および態様は、以下の説明および添付図から、さらに明らかになる。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
上記のように、用語「組織癒合(tissue fusion)」は、本明細書で使用される場合、無血管組織の治癒を意味すると定義される。本発明の新規組織癒合法が利用されることができる軟組織修復処置は、多数存在する。
【0013】
本発明は、骨軟骨移植または植込み処置の有効性の改善に使用されることができる。本発明の方法におけるコラゲナーゼの使用は、軟骨欠損部の修復において、移植物と天然の軟骨との間で、結合を増強し、組織癒合を提供するために使用されることができる。
【0014】
熱溶接技術と異なり、組織癒合を促進するための本発明のコラゲナーゼ処理には、細胞死は問題ではない。コラゲナーゼは、天然の、遍在的に発現される酵素で、細胞体そのものではなく、細胞外マトリックスコラーゲンのみを標的にする。各種の細胞は、細胞傷害性が既知のトリプシンなどの広範囲プロテアーゼとは異なり、コラゲナーゼへの高い耐性を示す。
【0015】
白色ゾーン半月板裂傷の場合、コラゲナーゼ組成物は、当該損傷組織の各面に塗布され、前記マトリックスの局所消化を提供し、それによって、縫合に加えて、封埋細胞を放出し、機械的固定の限界を克服し、組織癒合および治癒改善を提供する。本発明の方法によって提供される局所消化は、半月板の白色ゾーン裂傷部の修復に、接着剤と併用されることもできる。コラゲナーゼは、当該接着剤と配合されるか、あるいは、当該接着剤の塗布の前に使用され、当該酵素のマトリックス消化を可能にしながら、十分に有効な裂傷部表面の付着および固定を提供することになる。コラゲナーゼは、最初に組織に塗布されることもでき、その後、再接近された裂傷部上に一層で当該接着剤が塗布され、固定を提供し、おそらく、滑液の裂傷部への進入を防止しながら、当該酵素を封入する作用を果たす。当該裂傷部の固定は、補助的な従来の半月板修復用具を使って実施されることもでき、コラゲナーゼの裂傷部表面への送達は、注射器、マイクロシリンジアレー、無針注射システムなどの従来の塗布技術を使って実施されることができ、あるいは、修復器具自体によって達成されることができる。必要に応じて、また、実際に使用する人が付随する短所を受け入れる意志がある場合、当該白色ゾーン裂傷部は、補助的な機械固定または接着剤を使用することなく、本発明のコラゲナーゼ組成物の直接塗布によって修復されることができる。
【0016】
本発明の実施において、ヒストリチクス菌(bacterium clostridium histolyticum)によって産生される1種類以上のコラゲナーゼを使用するのが特に好ましい。数名の著者らが、ヒストリチクス菌の発酵によって産生される少なくとも2種類の異なるコラゲナーゼを報告している。精製済みの個々のコラゲナーゼは、天然のコラーゲンに対して異なる活性を有する、と報告されている。いわゆる粗コラゲナーゼ調製物では、追加成分は、トリプシン、カゼイナーゼ(caseinase)およびクロストリパイン(clostripain)を含むことができる。これらの成分は、当該コラゲナーゼ調製物の特異性に影響を与える可能性がある。本発明に使用されるコラゲナーゼは、実際には哺乳動物のものまたは組換え体であることもできる。本発明の実施に使用されることができるコラゲナーゼは、コラゲナーゼ1(MMP-1)、コラゲナーゼ2(MMP-8)、コラゲナーゼ3 (MMP-13)を含む。
【0017】
本発明の実施には、治療有効量のコラゲナーゼが使用される。当該治療有効量は、有効に組織癒合を提供するのに十分な量になる。例えば、生体外の修復では、室温で10分間処理する場合、濃度は、266 U/mL〜273 U/mLであることができる。期間および温度に応じて、また、投与が生体内であるか、生体外であるかに応じて、濃度は変動してくる。
【0018】
本発明の実施におけるコラゲナーゼに使用されることができるキャリアは、従来使用されている医薬品用キャリアを含み、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、生理食塩水、多血小板血漿またはフィブリン糊を含むゲルまたは液体を含むことができる。各種タイプの生分解性外科用メッシュ、織布、フェルト、または、不織布も、本コラゲナーゼ組成物用キャリアとして使用されることができる。かかるメッシュは、当該メッシュを浸潤する新規沈着組織として吸収され、それによって、ECM沈着の一層の増加のための容積を作り出す。本発明のキャリアに使用されることができるポリマーおよびコポリマーの例は、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)、ポリ(イプシロン-カプロラクトン)(poly(epsilon-caprolactone))、ポリ(トリメチレンカーボネート)、およびポリ(パラ-ジオキサノン)などのホモポリマー;ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(イプシロン-カプロラクトン-コ-グリコリド)(poly(epsilon-caprolactone-co-glycolide))、およびポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)などのコポリマーを含む。当該ポリマーは、統計的に無作為なコポリマー、セグメント化コポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであることができる。他のポリマーは、アルブミン;カゼイン;グリセロールの脂肪酸エステル、グリセロールモノステアレートおよびグリセロールジステアレートなどのロウ;デンプン、架橋デンプン;グルコース、フィコール(ficoll)およびポリスクロースなどの単糖;ポリビニルアルコール;ゼラチン;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル-エチルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酸化型再生セルロース、および酢酸セルロースなどの変性セルロース;アルギン酸ナトリウム;ヒアルロン酸および誘導体;ポリビニルピロリドン;無水ポリマレイン酸エステル;ポリオルソエステル;ポリエチレンイミン;ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールおよびエトキシポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドなどのグリコール;ポリ(1,3ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コ-セバシン酸無水物;N,N-ジエチルアミノアセテート;ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー、および、それらの配合物を含む。例えば、当該キャリアは、増殖因子、タンパク、医薬品または他の大型分子の局所送達に適するいずれかの物質を含むことができる。
【0019】
生体適合性非吸収性キャリアによっても、本コラゲナーゼ組成物を送達することができる。この実施形態では、当該キャリアは、本コラゲナーゼ組成物によって放出される細胞の浸潤に、および、新規ECMの沈着に持続マトリックスを提供する。非吸収性メッシュも、修復組織に持続的な補強を提供することができる。かかる非吸収性キャリア用材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリエステルを含むことができる。
【0020】
前記コラゲナーゼキャリアは、調合され、半吸収性とされることもできる。即ち、当該キャリアの一部分が吸収性で、他の部分が非吸収性となる。かかるメッシュの成分は、本明細書に含まれる材料のリストから選択されることができる。かかるキャリアは、修復部位の持続的な機械的補強に加えて、新規組織の浸潤の容積を漸増させることによって、吸収性キャリアの長所と非吸収性キャリアの長所とを併せ持つ。
【0021】
各種剤形(dosage forms)のコラゲナーゼは、無菌性となり、各種の周知の滅菌および/または無菌技術が使用され、必要な無菌性を得ることができる。適切な剤形の選択は、手法のタイプおよび組織のタイプ、ならびに、欠損部または損傷部の性質に左右されることになる。
【0022】
本発明のコラゲナーゼ組成物は、フィブリン糊(自己または同種異系)、シアノアクリレート、イソシアネート、ポリウレタンなどの従来の生体適合性接着剤、および、それらの等価物も含有することができる。
【0023】
コラゲナーゼを軟組織損傷修復部位近くに制限し、同時に起こる隣接組織におけるコラーゲン消化を最小限に抑えるのが望ましい。しかし、修復部位への完全封入は、不可能であると思われる。本発明の別の実施形態は、コラゲナーゼ塗布部位を囲む領域に、十分に有効な量のコラゲナーゼスカベンジャーを提供することである。当該スカベンジャーは、好ましくは、コラーゲン溶液で、そのコラーゲン分子は、修復部位を漏出したいずれかのコラゲナーゼによって攻撃され、それによって、漏出コラゲナーゼを中和する。当該スカベンジャー溶液は、同種異系コラーゲン、異種コラーゲン、または、コラーゲン組織から抽出された自己コラーゲンを含むことができる。
【0024】
本発明は、大きな亀裂および病巣を有効に治療することができるが、幅約1センチメートルよりも大きくない軟骨亀裂および小軟骨病巣の治療に特に有効であると考えられる。かかる場合、健康な軟骨組織を含む病巣周囲は、1種類以上のコラゲナーゼに曝露される。これは、様々な方法、例えば、欠損部の辺縁へのコラゲナーゼ水溶液の直接注入、あるいは、欠損部内コラゲナーゼ装填インプラントの固定によって達成されることができる。修復組織の定着を補助するために、患者は、固定されるか、あるいは、運動を制限して位置されてよい。
【0025】
骨軟骨自家移植片の組織一体化の増強
特定の事例において、従来の骨軟骨自家移植片処置は、治療可能な欠損部サイズを限定する可能性がある。ある制限では、放出細胞数は、欠損部を埋めるのに十分な細胞外マトリックスを生成できない場合がある。しかし、本コラゲナーゼ法は、骨軟骨移植および自家骨軟骨移植(Mosaicplasty)などの骨軟骨自家移植技術の有効な補完手段になる。これらの技術の長期成功は、軟骨細胞の生存能力だけでなく、当該インプラントの周囲組織との周辺の一体化にも左右される。本発明は、軟骨細胞の外側移動とその後の天然の組織および移植組織の一体化とを促進する。当該技術は、移植プラグに隣接する天然の組織への注入、または当該組織の外側表面へのコーティングを含む。次に、放出された軟骨細胞は、当該組織/移植物接触面に浸潤し、適切な軟骨細胞外マトリックスを生成し、それによって、当該組織と移植物の表面とを癒合させる。任意に、ドナープラグは、欠損部への配置前に、コラゲナーゼ溶液に部分的にまたは完全に浸漬されることができる。
【0026】
関節軟骨修復のさらなる実施形態では、オステオバイオロジックス・インコーポレーティッド(OsteoBiologics Inc.)製の市販TruFit骨軟骨プラグなど、合成材料が使用され、軟骨欠損部に充填されることができる。TruFit骨軟骨プラグは、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、硫酸カルシウムおよびPGA繊維を含めた生分解性材料の多孔質複合体を含む。かかる用具は、実質的に多孔質で、関節軟骨のインプラントへの内部増殖を可能にする。コラゲナーゼ組成物は、当該プラグの軟骨接触部分内および/または当該部分上に注入される。植込み後、コラゲナーゼの放出は、軟骨欠損部周囲を消化する働きをし、それによって、細胞を放出し、かつ、当該多硬質インプラントに浸潤し、新規軟骨組織を沈着させる能力を増強する。
【0027】
軟骨欠損部修復に向けた移植または植込み処置において、目的は、前記インプラント周囲の軟骨内へのコラゲナーゼ放出を引き起こすことである。しかし、当該インプラント最上部表面からのコラゲナーゼの放出は、同時に起こる、周囲のコラーゲン組織の部分消化のために、特定の場合、望ましくないことがある。したがって、当該インプラントの最上部表面上にバリアを用いるのが必要であると思われる。例えば、円筒形プラグが使用される場合、当該表面バリアは、軟骨欠損部周囲への半径方向のコラゲナーゼ放出を可能にするが、膝関節へのコラゲナーゼの軸方向の放出を防止すると思われる。
【0028】
白色ゾーン半月板裂傷の修復
好ましい実施形態では、白色ゾーン半月板裂傷は、組織裂孔の各面をコラゲナーゼに曝露することによって治療される。次に、当該裂傷の各面は、従来の機械的固定法、例えば、従来の縫合糸、ネジ、有刺部材、びょうなどの使用によって接合される。裂傷半月板の各面は、上記のような線維軟骨細胞の放出およびECM産生を介して、新たに生じた天然の組織によって癒合される。
【0029】
白色ゾーン半月板修復の別の実施形態は、薄い、多孔質の、コラゲナーゼを浸み込ませた布または他の足場の間置(interposition)を含む。前記裂傷面の間の機械的間置時、この用具は、損傷組織にコラゲナーゼを放出し、その後、放出される線維軟骨細胞、および、その後に生成される細胞外マトリックス用の足場として作用する。好ましくは、裂傷の従来の機械的閉鎖法も利用され、例えば、裂傷を機械的に閉鎖するために縫合糸、植込み可能な半月板修復用具、または、用具/縫合糸複合型半月板修復用具を用いる。この方法は、裂傷の各面が互いに間近に近づき、好ましくは、互いに密着し、それによって、新規ECMの沈着を引き起こすのに必要とされる細胞移動距離を最小化するのを確実にする。機械的固定に適すると思われる既知の市販の半月板修復用具は多数存在し、特定の固定用具の選択は、外科医の裁量と好みに任される。
【0030】
TFCC裂傷の修復
膝関節の白色ゾーン半月板の裂傷と同様に、手関節の三角線維軟骨複合体(TFCC)の多くの損傷部は、自然治癒しない。これらの損傷部は、創傷表面のコラゲナーゼ処理とその後の機械的固定を使い、新しい天然の組織の産生によって治癒するという半月板裂傷に類似の方法で治療される。
【0031】
自己軟骨細胞植込み(Autologous Chondrocyte Implantation(「ACI」))を使った修復増強
上記の骨軟骨移植および植込み術に加えて、本発明のコラゲナーゼ組成物が使用され、いわゆる自己軟骨細胞植込み(ACI)の有効性を増強することができる。自己軟骨細胞を有するコラゲナーゼ組成物を含むことによって、軟骨欠損部周囲が部分的に消化され、それによって、本軟骨植込みまたは移植について述べられた方法と同様の方法で、周囲の天然の組織とのACI植込み物の周囲の一体化を増強することができる。
【0032】
腱および靭帯の修復
一部の腱および靭帯が比較的無血管性であることは、既知である。例えば、前十字靭帯(anterior cruciate ligament(ACL))は、あまり新生血管形成がなく、そのため、特に高齢患者では、治癒能力が制限されている。同様に、回旋腱板の腱は、高齢患者において顕著に無血管性であることがしばしばで、これらの腱の修復は、多くが不成功に終わることが既知である。これは、修復対象の腱の低い治癒能力が原因である。本発明のコラゲナーゼ組成物は、腱または靭帯修復処置に使用され、腱細胞が治癒過程に関与することができるように、当該腱細胞を動員することができる。例えば、屈筋腱の修復処置は、次の方法で実施される。即ち、コラゲナーゼ組成物は、裂傷をきたした腱の端部に塗布される。当該腱端部は、従来から既知の中心縫合技術(core suture technique)を使って再接近された後、当該修復部周囲の腱外側縫合(epitendinous suturing)が実施される。
【0033】
体外修復処置
コラゲナーゼ組成物は、体外処置にも用いられることができる。例えば、患者の半月板が外科的に部分的または完全に取り出された後、本明細書に述べられている方法を使った、コラゲナーゼによる半月板裂傷表面の治療が実施される。コラゲナーゼ処理後、当該半月板が再度植込まれる。この手法の長所は、関節鏡処置で遭遇されるように、コラゲナーゼ送達の正確さが、半月板損傷部位に十分に、障害なく進入することによって改善されることができる点である。また、この技術を使用する場合、組織は、再植込み前に、徹底的にゆすがれ、残留コラゲナーゼをすべて除去し、それによって、コラゲナーゼへの他の組織の曝露を最小限に抑えることができる。
【0034】
以上概略を述べられた原理を応用することによって、コラゲナーゼを使った本発明の方法のさらなる適用が想定される。かかる適用は、以下の事項を含むが、それらに制約されない。即ち、本方法が使用され、椎間板(IVD)修復において亀裂欠損部の組織結合を提供することができる。本発明の方法が使用され、靭帯および腱などの線維軟骨構造の修復のための組織結合を提供することもできる。
【0035】
組織癒合の提供にコラゲナーゼを用いた本発明の方法は、多くの長所を有する。本方法は、特異な生体組織の一体化を増強する戦略を提供する。本方法は、損傷または罹病の軟骨および線維軟骨組織を治療する方法も提供する。かかる軟骨および組織が限られた自然治癒能力を有することは既知である。本方法は、白色ゾーン半月板およびTFCCなどの無血管組織の裂傷および裂孔を癒合させる。本方法は、裂傷半月板などの損傷または罹病した組織の外科的除去も、必要としない。半月板を温存するために本発明の方法を利用することは、下にある膝軟骨の寿命を引き延ばす。本発明は、関節鏡で実施されることができる方法を提供する。本方法は、組織/インプラント接触面の癒合によって、自己軟骨細胞植込み技術の転帰を改善できる。
【0036】
以下の実施例は、それらに制約されるものではないが、本発明の原理および実施の説明に役立つ。
【0037】
〔実施例1〕
膝関節の半月板は、緻密な線維性コラーゲン構造を有し、細胞数が比較的少なく、自然治癒能力が非常に限られている。半月板の無血管(白色-白色)部分では、治癒が特に困難である。以下の実験が実施され、コラゲナーゼ塗布を単独、シアノアクリレート接着剤およびフィブリンシーラントとの組み合わせの両方で使用することによって、半月板組織修復が検討された。シアノアクリレート接着剤は、コラゲナーゼが裂傷への細胞移動を可能にする間に、修復対象の表面の安定な物理的接近を提供できる強力な接着剤であるという理由で、当該シアノアクリレート接着剤は選択された。前記フィブリン糊シーラントは、シアノアクリレートよりも低い接着強度を有するが、生体適合性接着剤であるので、これも検討された。
【0038】
材料および方法
仔ウシの膝関節が新鮮な状態で入手され、無菌条件下で半月板が取り出された。当該半月板は、コラゲナーゼ処理およびインキュベーションの前にDMEMおよびゲンタマイシンの溶液中、4℃で一晩保存された。8-mm生検用パンチが使用され、各半月板から4個のサンプルが打抜かれた。次に、サンプルは、2 mmの厚さに整えられ、3-mm生検用パンチが使用され、8-mmの円形物の中心から切片が抜き取られた。コラゲナーゼ溶液は、塩化カルシウム入りD-PBS中で凍結乾燥コラゲナーゼ(ウォージントン・バイオケミカル社(Worthington Biochemical),タイプ2(Type 2), CLSS-2,273 U/mg)を元に戻す(reconstituting)ことによって調製された。サンプルが当該コラゲナーゼ溶液(1 mg/mL)に10分間浸され、その後、PBS中で徹底的にゆすがれた。コラゲナーゼ処理のみを受ける被験品は、再度集められ、37℃、5%CO2下で6週間インキュベートされた。シアノアクリレート接着剤(Dermabond Topical Skin Adhesive、2-オクチルシアノアクリレート、高粘度、エシコン(Ethicon)、カタログ番号DPP6)単独での、または、コラゲナーゼとの組合せでの処理の対象となるサンプルは、再度集められ、当該接着剤1滴が、8-mmの円形物の最上部表面に置かれ、引き伸ばされ、当該表面を完全に覆う薄層が形成された。フィブリンシーラント(Crosseal Fibrin Sealant(ヒト)、エシコン(Ethicon))1滴が、コラゲナーゼ処理(塗布可能な場合)後の、抜き取られたサンプルの中心部分に塗布され、その後、中心の芯部が戻された。
【0039】
6週間後、被験品は、ホルマリンに固定され、パラフィン封埋処理された。パラフィン切片は、H&E染色され、光学顕微鏡検査によって検討された。等級0(治癒なし)〜3(完治)までの等級が使用され、当該切片中に観察される治癒状況が評価された。
【0040】
結果
コラゲナーゼ処理被験品の組織構造は、その群のサンプルのうちの数個が、明らかに完治していることを示した。5群の被験群および未処理対照の平均組織構造スコア(average histology scores)は、表1に含まれる。大半のコラゲナーゼ処理被験品は、2または3と等級分けされた。
【表1】

【0041】
数個のコラゲナーゼ処理被験品は、明らかに完治した(等級3)。生じていた裂傷表面は、もはや残りの組織と区別できない。
【0042】
Dermabond処理被験品はすべて、Dermabond塗布面から離れた表面にある程度の明らかな治癒を示した。Dermabond処理表面では、被験品は、典型的には治癒しなかった。
【0043】
フィブリン糊単独処理被験品は、認められる治癒の程度が異なった。ある被験品では、組織の治癒は、完全であるように見えたが、他の被験品では、組織の明らかな修復が見られなかった。
【0044】
未処理対照被験品の治癒も、様々であり、1個は完治を示し、2個は部分的治癒を示し、他の1個は治癒を示さなかった。
【0045】
コラゲナーゼとDermabondの両方で処理された組織の治癒も様々であった。被験品のうちの2個は、部分修復を示したが、一方、3個目はまったく治癒を示さなかった。
【0046】
コラゲナーゼとフィブリン糊とで処理された被験品は、修復について1または2のスコアとなった。
【0047】
〔実施例2〕
コラゲナーゼ処理後の半月板組織の修復:慢性裂傷モデルを使った生体外試験の概要
実施例1で実施された調査は、仔牛の半月板組織の急性裂傷のコラゲナーゼ処理が、生体外での組織修復の改善を生じることを示した。膝関節半月板は、緻密な線維性コラーゲン構造を有し、細胞数が比較的少なく、治癒能力が非常に限られている。半月板の無血管(白色-白色)部分では、治癒が特に困難である。さらに、慢性裂傷は、急性裂傷よりも治癒する可能性が低い場合があり、成熟組織も、血管分布が減少するため、治癒の可能性が低いと思われる。下記の調査の目的は、コラゲナーゼの使用による、慢性裂傷を有する成熟半月板組織の修復の実行可能性を検討することであった。
【0048】
材料および方法
成熟ウシの膝関節が新鮮な状態で入手され、無菌条件下で半月板が取り出された。当該半月板は、組織に裂傷を作り出す前に、DMEMおよびゲンタマイシンの溶液中、4℃で一晩保存された。8-mm生検用パンチが使用され、各半月板から8個のサンプルが打抜かれた。次に、サンプルは、2 mmの厚さに整えられ、3-mm生検用パンチが使用され、各8-mmの円形物の中心から切片が抜き取られた。当該中心切片と円形物部分とは分けて保持され、すべて、10%ウシ胎仔血清(FBS)およびゲンタマイシン補充DMEM増殖培地を含む12穴培養平板中に置かれた。当該平板は、37℃下、5%CO2中で1週間インキュベートされ、当該培地は、1週間に2回交換された。
【0049】
1週間の慢性裂傷期間終了時、コラゲナーゼ溶液は、塩化カルシウム入りD-PBS中で凍結乾燥コラゲナーゼ(ウォージントン・バイオケミカル社(Worthington Biochemical),タイプ2(Type 2), CLSS-2,273 U/mg)を元に戻すことによって調製された。被験品は、当該コラゲナーゼ溶液(1 mg/mL)に10分間浸され、その後、PBS中で徹底的にゆすがれた。対照被験品は、PBS中でゆすがれるのみであった。全被験品は、再度集められ、10%FBSおよびゲンタマイシンを含むDMEM中、37℃下、5%CO2中で3週間および6週間インキュベートされた。当該培地は、1週間に2回交換された。
【0050】
3週間および6週間終了時、被験品は、ホルマリンに固定され、パラフィン封埋処理された。パラフィン切片は、H&E染色され、光学顕微鏡検査によって検討された。等級0(治癒なし)〜3(完治)までの等級が使用され、当該切片中に観察される治癒が評価された。
【0051】
結果
被験品の組織構造は、最初の3週間のインキュベーション中、修復がほとんど起こっていないことを示した。データは、表2に示される。
【表2】

【0052】
コラゲナーゼ処理被験品および対照被験品の平均組織構造スコアの間に有意差がなかった。3週間目の被験品はいずれも、3(完治)には等級付けされておらず、1個のコラゲナーゼ処理被験品のみが、2に等級付けされた。対照被験品は、いずれも、1を超えるスコアを得なかった。
【0053】
6週間目には、コラゲナーゼ処理群に組織構造スコアの改善傾向が見られた(3週間平均値1に対して平均値1.25)が、対照被験品スコアは、増加しなかった(3週間平均値0.67に対して平均値0.57)。6週間目のコラゲナーゼ処理被験品と未処理対照との間の差は、統計的に有意でなかった(p=0.059)が、明確な、コラゲナーゼによる改善された修復傾向を示した。
【0054】
考察および結論
結果は、治療法としてコラゲナーゼが使用される場合、慢性裂傷モデルを使った成熟組織においてさえ、組織治癒の改善傾向を示した。半月板組織の治療にコラゲナーゼが使用されると、6週間目に顕著な治癒改善傾向が認められた。この調査に使用されたコラゲナーゼ処理法は、先に仔牛組織の急性裂傷モデルに対して使用された場合と同一であった。
【0055】
〔実施例3〕
組織癒合促進にコラゲナーゼを使ったヒト患者への外科処置
患者は、半月板裂傷と診断される。当該患者は、従来通り、関節鏡手術の準備がなされ、従来の麻酔薬と従来の麻酔処置で麻酔される。手術部位への進入と関節鏡挿入のために、当該患者の膝関節内に従来のポータルが挿入される。従来の重力供給法、または、別法として、膝関節への、および、膝関節からの流量を制御する機械的ポンプを使って、生理食塩水流が膝関節に注入される。外科医は、患者の半月板の裂傷を観察することができる。半月板は次のようにして修復される。即ち、半月板裂傷の相対する辺縁が、治癒増強のために、小型のやすりまたは電動シェーバーを使って任意に整えられる。本コラゲナーゼ組成物が当該裂傷表面に塗布され、半月板裂傷は、縫合糸、吸収性びょうまたは半月板修復用具を含めた様々な従来の組織接近用具のうち1種類以上を使って閉鎖される。別法として、本コラゲナーゼ組成物は、接着剤を含む。当該患者の膝関節から、器具、関節鏡およびカニューレが外され、食塩水流が停止される。当該膝関節は、排液され、ポータル用切開部は、縫合によって従来通り閉鎖される。医師による経過観察は、組織癒合を示す当該裂傷の治癒を示す。
【0056】
本発明は、本発明の詳細な実施形態に関して提示、説明されているが、特許請求する発明の精神および範囲を逸脱することなく、形式および詳細の各種変更が実施可能であることを、当業者によって理解される。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 軟組織を治療するための組織癒合法において、
コラゲナーゼ組成物を提供する段階と、
患者の軟組織の欠損部または損傷部に前記コラゲナーゼ組成物を塗布し、それによって、前記欠損部または前記損傷部の治癒を促進する段階と、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、生体内で塗布される、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼを塗布する前に、前記患者から前記軟組織を取り出す段階と、
コラゲナーゼ処理後に、前記軟組織を前記患者に植え込んで戻す段階と、
をさらに含む、方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、MMP-1、MMP-8、およびMMP-13から成る群から選択される、方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、ヒストリチクス菌によって産生される少なくとも1種類のコラゲナーゼを含む、方法。
【0058】
(6) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、骨軟骨移植術における自己ドナー組織の軟骨部分の周囲に塗布される、方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、軟骨欠損修復処置における合成骨軟骨プラグに塗布される、方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、トリプシン、カゼイン、クロストリパイン、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの配合物から成る群のうち少なくとも1種類の要素をさらに含む、方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記組成物が、接着剤をさらに含む、方法。
【0059】
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記損傷部が、半月板裂傷部であり、
接着剤が、修復部位の封鎖、および、前記修復部位を囲む領域へのコラゲナーゼ漏出の防止に使用される、方法。
(11) 実施態様1に記載の方法において、
前記損傷部が、半月板裂傷部であり、
前記半月板裂傷部の面が、コラゲナーゼの塗布後に機械的修復法によって付着される、方法。
(12) 実施態様11に記載の方法において、
前記機械的修復法が、縫合技術を含む、方法。
(13) 実施態様11に記載の方法において、
前記機械的修復法が、前記裂傷部を横断して挿入される有刺用具またはネジ山付き用具であって、前記裂傷部の前記面を共に保持する、用具を含む、方法。
(14) 実施態様11に記載の方法において、
前記機械的修復法が、縫合糸/用具複合型半月板修復システムを含む、方法。
【0060】
(15) 実施態様1に記載の方法において、
コラゲナーゼを塗布した部位を囲む領域にコラゲナーゼスカベンジャー溶液を塗布する段階、
をさらに含む、方法。
(16) 実施態様10に記載の方法において、
コラゲナーゼを塗布した部位を囲む領域にコラゲナーゼスカベンジャー溶液を塗布する段階、
をさらに含む、方法。
(17) 実施態様11に記載の方法において、
前記コラゲナーゼを塗布した部位を囲む領域にコラゲナーゼスカベンジャー溶液を塗布する段階、
をさらに含む、方法。
(18) 実施態様15に記載の方法において、
前記コラゲナーゼスカベンジャー溶液が、コラーゲン溶液を含む、方法。
【0061】
(19) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、生理食塩水、多血小板血漿、フィブリン糊、およびそれらの配合物を含むゲルまたは液体を含む生理食塩水から成る群から選択されるキャリアをさらに含む、方法。
(20) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、生分解性外科用メッシュ、織布、フェルト、および、不織布から成る群から選択されるキャリアを含む、方法。
(21) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、およびそれらの配合物から成る群から選択されるポリマーを含む非吸収性キャリアをさらに含む、方法。
(22) 実施態様1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、生体適合性基質に塗布され、前記基質が、前記欠損部または前記損傷部に塗布される、方法。
(23) 実施態様1に記載の方法において、
前記組織が、靭帯であり、
前記靭帯への損傷が、裂傷であり、
前記靭帯が、外科用縫合糸を使って修復される、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織を治療するための組織癒合法において、
コラゲナーゼ組成物を提供する段階と、
患者の軟組織の欠損部または損傷部に前記コラゲナーゼ組成物を塗布し、それによって、前記欠損部または前記損傷部の治癒を促進する段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、生体内で塗布される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼを塗布する前に、前記患者から前記軟組織を取り出す段階と、
コラゲナーゼ処理後に、前記軟組織を前記患者に植え込んで戻す段階と、
をさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、MMP-1、MMP-8、およびMMP-13から成る群から選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、ヒストリチクス菌によって産生される少なくとも1種類のコラゲナーゼを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、骨軟骨移植術における自己ドナー組織の軟骨部分の周囲に塗布される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、軟骨欠損修復処置における合成骨軟骨プラグに塗布される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、トリプシン、カゼイン、クロストリパイン、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの配合物から成る群のうち少なくとも1種類の要素をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記組成物が、接着剤をさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記損傷部が、半月板裂傷部であり、
接着剤が、修復部位の封鎖、および、前記修復部位を囲む領域へのコラゲナーゼ漏出の防止に使用される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記損傷部が、半月板裂傷部であり、
前記半月板裂傷部の面が、コラゲナーゼの塗布後に機械的修復法によって付着される、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記機械的修復法が、縫合技術を含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、
前記機械的修復法が、前記裂傷部を横断して挿入される有刺用具またはネジ山付き用具であって、前記裂傷部の前記面を共に保持する、用具を含む、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、
前記機械的修復法が、縫合糸/用具複合型半月板修復システムを含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
コラゲナーゼを塗布した部位を囲む領域にコラゲナーゼスカベンジャー溶液を塗布する段階、
をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、
コラゲナーゼを塗布した部位を囲む領域にコラゲナーゼスカベンジャー溶液を塗布する段階、
をさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法において、
前記コラゲナーゼを塗布した部位を囲む領域にコラゲナーゼスカベンジャー溶液を塗布する段階、
をさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、
前記コラゲナーゼスカベンジャー溶液が、コラーゲン溶液を含む、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、生理食塩水、多血小板血漿、フィブリン糊、およびそれらの配合物を含むゲルまたは液体を含む生理食塩水から成る群から選択されるキャリアをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、生分解性外科用メッシュ、織布、フェルト、および、不織布から成る群から選択されるキャリアを含む、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼ組成物が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、およびそれらの配合物から成る群から選択されるポリマーを含む非吸収性キャリアをさらに含む、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、
前記コラゲナーゼが、生体適合性基質に塗布され、前記基質が、前記欠損部または前記損傷部に塗布される、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、
前記組織が、靭帯であり、
前記靭帯への損傷が、裂傷であり、
前記靭帯が、外科用縫合糸を使って修復される、方法。

【公開番号】特開2008−178670(P2008−178670A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−320712(P2007−320712)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(507083478)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (47)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Mitek,Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive,Raynham,Massachusetts 02767 United States of America
【Fターム(参考)】