説明

軟質共重合ポリエステル

【課題】 カレンダーロール剥離性の良好な軟質ポリエステルを提供する。
【解決手段】 (a)テレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比が1.05〜1.25、酸価が200〜550mmol/kgの連続的に製造されたポリエチレンテレフタレートオリゴマー成分、(b)テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分及び(c)エチレングリコール成分、又は(d)エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分、並びに(e)数平均分子量が500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分をエステル化及び/又はエステル交換反応させた後、重縮合を行って得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種成形材料用に使用される軟質共重合ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルは、透明性に優れ、機械的特性に優れていることから、広くボトルやシートの材料として利用されている。ポリエステルは、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化及び/又はエステル交換反応を経て、減圧下、ジオール成分を反応系外に取り出して重縮合反応を行うことにより得られる。この時、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分又は1,4−ブタンジオール成分を用いれば、それぞれ、PETやポリブチレンテレフタレート(PBT)のホモポリマーが得られるが、PETやPBTを構成するこれらのモノマー成分以外のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分を添加することにより、種々の共重合ポリエステルが得られる。特にポリオキシテトラメチレングリコールを共重合すると柔軟性が付与でき、これに更に別のモノマーを共重合して非晶化すると、軟質塩ビ樹脂に似た軟質共重合ポリエステルを得ることができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、このような原料を一括で仕込む一般的な製造方法で得られた軟質共重合ポリエステルは、可塑剤を含まないため、軟質塩ビ樹脂の代表的な加工法であるカレンダー加工を行うと、ロール剥離性に問題があり、シート状の成形物を得ることが難しかった。また、柔軟性が良好な共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は室温、すなわち25℃以下の場合が多く、成形後もガラス転移温度以上の温度に長期間さらされることとなって、軟質共重合ポリエステル中のオリゴマーのブリードアウトが起こり、その一部が微細な結晶となり、成形物表面の光沢が失われるといった問題が生じていた。
【特許文献1】特許第3270185号公報
【特許文献2】特開2000−302888号公報
【特許文献3】特開2002−363271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カレンダー加工性(ロール剥離性)が良好な軟質ポリエステルを提供することにある。さらに、ポリエステルオリゴマーのブリードアウトがしにくく、光沢低下の少ない軟質ポリエステルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも下記の(a)、(b)、(c)、及び(e)成分をエステル化及びエステル交換反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステルに関するものである。
(a)テレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比が1.05〜1.25、酸価が200〜550mmol/kgの連続的に製造されたポリエチレンテレフタレートオリゴマー成分、
(b)テレフタル酸以外のジカルボン酸成分:20〜80モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)、
(c)エチレングリコール成分:24〜200モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)。
【0006】
また、本発明は、少なくとも下記の(a)、(d)、及び(e)成分をエステル化及びエステル交換反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステルに関するものである。
(a)テレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比が1.05〜1.25、酸価が200〜550mmol/kgの連続的に製造されたポリエチレンテレフタレートオリゴマー成分、
(d)エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分:20〜70モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、ロール剥離性が良好なため、カレンダー加工性に優れる。また、ガラス転移温度以上の温度にさらされても、オリゴマーのブリードアウトが起こりにくく、成形物表面の光沢の低下が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
はじめに、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(a)成分について説明する。
(a)成分は、連続的に製造されたポリエチレンテレフタレートオリゴマー(以下、「PETオリゴマー」と略す)成分である。
【0009】
PETオリゴマー中のテレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比は1.05〜1.25である。PETオリゴマー中のテレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比をこの範囲にすることによって、エチレングリコール由来のジエチレングリコールなどの副生物量を抑制すると共に、PETオリゴマーの酸価を適度な範囲に保つことができる。このモル比の下限値は1.08以上がより好ましく、また、このモル比の上限値は1.21以下がより好ましい。
【0010】
PETオリゴマーの酸価は末端カルボキシル基として200〜550mmol/kgである。PETオリゴマーの酸価をこの範囲にする事によって、その後添加するエチレングリコール成分及びジカルボン酸成分またはジオール成分のエステル化及びエステル交換反応による共重合化を適度に進めると共に、反応中のポリオキシテトラメチレングリコール成分の分解を抑制することができる。PETオリゴマーの酸価の下限値は250mmol/kg以上が好ましく、また、この酸価の上限値は450mmol/kg以下が好ましい。
【0011】
本発明のPETオリゴマーは、常法、すなわちテレフタル酸とエチレングリコールのスラリーを既にPETオリゴマーが存在するエステル化反応器に連続的に供給し、250〜265℃でエステル化反応を行い、発生する水とエチレングリコールの一部を留去すると共に、PETオリゴマーを連続的にエステル化反応器より取り出すことによって連続的に製造されたものである。連続エステル化反応の際には、特に触媒は必要ないが、副生物を抑える目的で、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなど塩基性の塩類を極微量加えてもよい。
【0012】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(b)成分について説明する。
(b)成分は、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分である。
(b)成分の使用量は、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、20〜80モル部である。(b)成分をこの範囲で使用することによって、ガラス転移温度を大きく下げることなく共重合ポリエステルの結晶性を十分に落とす事が出来ると共に、共重合ポリエステルのロール剥離性が向上する傾向にある。
【0013】
(b)成分としては、テレフタル酸以外のジカルボン酸であれば特に制限されないが、例えば、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などが挙げられる。中でも、イソフタル酸及びアジピン酸の少なくとも一種が特に好ましい。
【0014】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(c)成分について説明する。
(c)成分は、エチレングリコール成分であり、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、24〜200モル部の範囲で使用する。(c)成分をこの範囲で使用することによって、ガラス転移温度を大きく下げることなく共重合ポリエステルの結晶性を十分に落とす事が出来ると共に、共重合ポリエステルのロール剥離性が向上する傾向にある。
【0015】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(d)成分について説明する。
(d)成分は、エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分である。
(d)成分の使用量は、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、20〜70モル部である。(d)成分をこの範囲で使用することによって、ガラス転移温度を大きく下げることなく共重合ポリエステルの結晶性を十分に落とす事が出来ると共に、共重合ポリエステルのロール剥離性が向上する傾向にある。
【0016】
(d)成分としては、エチレングリコールおよびポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分であれば特に制限されないが、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。中でも、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。
【0017】
次に、本発明の軟質共重合ポリエステルに用いられる(e)成分について説明する。
(e)成分は、数平均分子量が500〜2500のポリテトラメチレングリコール成分であり、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、1〜15モル部の範囲で使用する。(e)成分をこの範囲で使用することによって、共重合性を損なうことなく、柔軟性及び透明性の優れた軟質共重合ポリエステルが得られる傾向にある。(e)成分の使用量の下限値は5モル部以上が好ましく、また、この使用量の上限値は11モル部以下が好ましい。
【0018】
また、ポリオキシテトラメチレングリコール成分の数平均分子量が500〜2500の範囲であることによって、共重合性を損なうことなく、柔軟性及び透明性の優れた軟質共重合ポリエステルが得られる傾向にある。数平均分子量の下限値は650以上が好ましく、また、上限値は2000以下が好ましい。
【0019】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、前述の(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(e)成分をエステル化及びエステル交換反応させた後、重縮合して得られるポリエステル、又は、(a)成分、(d)成分、及び(e)成分をエステル化及びエステル交換反応させた後、重縮合して得られるポリエステルである。
本発明の軟質共重合ポリエステルは、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分、又は(a)成分及び(d)成分を使用しているので、部分的にPETの繰り返し単位がブロック的に組み込まれた共重合ポリエステルとなり、ロール剥離性が向上するものと考えられる。
【0020】
(b)成分及び(c)成分は個々に反応器に供給してもよいし、(b)成分が固体の場合には、これらを混合してスラリー状にして反応器に供給することもできる。スラリー状で反応器に供給する場合には、(b)成分に対する(c)成分のモル比は1.2〜2.5であることが好ましい。(b)成分に対する(c)成分のモル比がこの範囲の場合に、安定なスラリーとして供給できる傾向にある。このモル比の下限値は1.4以上がより好ましく、また、上限値は2.2以下がより好ましい。スラリーの供給方法は、特に制限されないが、スラリー量に応じて、反応混合物の温度が220〜260℃に保てるよう10〜120分かけて行うのが好ましく、これにより供給時に反応混合物の温度が下がって固化することが無く、スラリー供給後の反応混合物の酸価を低くすることができる傾向にある。
【0021】
また、(e)成分は熱分解を起こす可能性もあるため、ヒンダードフェノール系、亜リン酸系、チオエーテル系などの一般的な安定剤の一種又はこれらの組合せと共に用いることが好ましい。これらの安定剤は重縮合反応の進行に問題がないよう、(e)成分100質量部に対して10質量部以下で用いるのが好ましい。また、(e)成分は、酸によるテトラヒドロフランへの分解も起こりやすいので、(e)成分以外の成分をエステル化及び/又はエステル交換反応させた後に、反応混合物に添加するのが望ましい。これにより、(e)成分の分解を抑え、効果的に共重合ポリエステルのガラス転移温度を下げることができる傾向にある。また、(e)成分は反応混合物の温度が220〜260℃を保てる速度で添加することが好ましい。反応混合物が固化するのを防ぐことができる傾向にあるからである。
【0022】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分、又は(a)成分及び(d)成分を基本構成成分とするものであるが、さらに(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体成分を使用することにより、オリゴマーのブリードアウトを抑制することができ、成形物表面の経時的な光沢低下を抑制することができる傾向にある。
【0023】
一般的に、テレフタル酸成分及びエチレングリコール成分が構成単位として含まれる共重合ポリエステルでは、これら以外のジカルボン酸成分やジオール成分が複数種類含まれていても、エステル化反応、エステル交換反応あるいは重縮合反応の過程で、その組成に見合ったある一定の確率で、エチレンテレフタレート環状三量体が副生する。この環状三量体は結晶性であり、その融点は約320℃であり、一般的なPETを溶融・成形した場合にも、環状三量体が樹脂から遊離して粉状の溶融しにくい異物となる場合がある。共重合ポリエステルの場合には、PETに比べてガラス転移温度が低いため、室温以下でもゴム状態にあり、溶融状態にならなくてもポリエステル分子鎖を縫って環状三量体が滲みだし、樹脂表面に微小な結晶をつくり、光沢性が徐々に失われていく。
【0024】
本発明の共重合ポリエステルでは、(f)成分を共重合することによって、共重合ポリエステル分子鎖の一部及び環状三量体がイオン結合によって拘束され、環状三量体のブリードアウトを阻害しているものと考えられる。
(f)成分は、他の成分と同様に(e)成分を添加する前に、エステル化及びエステル交換反応を十分に行っておくのが好ましい。これにより、(e)成分のテトラヒドロフランへの分解を抑え、効果的に共重合ポリエステルのガラス転移温度を下げることができる傾向にある。
【0025】
(f)成分の使用量は、特に制限されないが、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、0.3〜2.5モル部が好ましい。(f)成分の使用量がこの範囲である場合に、上述の効果が得られる傾向にある。
(f)成分としては、特に限定されないが、例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)などが挙げられる。
【0026】
本発明の共重合ポリエステルにおいては、前述した(a)〜(f)成分以外にも、必要に応じて、反応混合物の重縮合を妨げない限り、三官能以上のモノマー、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物などの多価カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールを使用することができる。
三官能以上のモノマーの使用量は、特に制限されないが、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、3モル部以下であることが好ましい。
【0027】
本発明においては、エステル化及びエステル交換反応の反応温度は、特に制限されないが、220〜260℃が好ましい。また、全ての成分のエステル化及びエステル交換反応が終了した時点で、反応混合物を重縮合反応器に移し、最終的には260〜285℃、1.0kPa以下の圧力下でエチレングリコールを反応器より留去することにより、重縮合反応を行う。
【0028】
なお、本願発明において、重縮合反応時に、マグネシウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、チタン化合物及びアンチモン化合物から選ばれる少なくとも一種の金属化合物を添加して反応することが好ましい。これらの金属化合物を用いることによって、共重合ポリエステル樹脂のロール剥離性が向上し、かつ成形物をガラス転移温度以上の温度にさらしても、表面光沢の低下を抑制することができる傾向にある。
本発明においては、PETオリゴマーを原料として使用しているため、PETの繰り返し単位がブロック的に組み込まれた共重合ポリエステルとなっており、重縮合触媒としてスズ化合物、チタン化合物及びアンチモン化合物から選ばれる少なくとも一種を使用すると、これらの金属化合物のエステル交換反応触媒能により、共重合ポリエステルのPETブロック部分及びオリゴマー部分のランダム化がある程度進み、ロール剥離性が向上すると共に、オリゴマーの結晶化が抑制されるものと考えられる。
【0029】
これらの金属化合物のうち、亜鉛化合物、スズ化合物、チタン化合物及びアンチモン化合物はそれ自身が重縮合触媒を兼ねるため、別途、重縮合触媒を添加する必要はないが、マグネシウム化合物及びマンガン化合物は重縮合触媒活性が低いため、別途、重縮合触媒を添加する必要がある。
また、重縮合触媒は、金属安定剤としてのリン酸化合物やキレート類などと共に用いることができるが、重縮合触媒の種類によってはエステル交換反応触媒能が低下し、軟質共重合ポリエステルのロール剥離性向上や光沢保持の効果が薄れる場合がある。
これらの金属化合物の添加量は、特に制限されないが、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して、金属原子として0.01〜0.4モル部が好ましい。金属化合物の添加量の下限値は0.02モル部以上がより好ましく、また、上限値は0.2モル部以下がより好ましい。
【0030】
本発明の軟質共重合ポリエステルのガラス転移温度は−10〜25℃である。ガラス転移温度がこの範囲内である場合に、柔軟性、ロール剥離性及び透明性が良好となる傾向にある。ガラス転移温度の下限値は−5℃以上が好ましく、また、上限値は15℃以下が好ましい。
また、本発明の軟質共重合ポリエステルの固有粘度〔η〕は0.80〜1.20dl/gである。固有粘度がこの範囲である場合に、軟質共重合ポリエステルが十分な樹脂強度を持ち、またカレンダーロールなどでの溶融成形に問題のない溶融粘度となる傾向にある。固有粘度の下限値は0.85dl/g以上が好ましく、また、上限値は1.15dl/g以下が好ましい。
【0031】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、前述の組成及び物性を満足する場合に、ロール剥離性が良好となる。PETオリゴマーを使用せず、全てのモノマー成分を一時期に反応器に仕込み、エステル化及び又はエステル交換反応を経て、重縮合反応を行った場合には、本発明と同じ種類のモノマー成分及び重縮合触媒を同じ量用いて反応を行ったとしても、得られた共重合ポリエステルのロール剥離性は不良となる。PETオリゴマーを使用せず、モノマー成分を一時的に反応器に仕込んで反応させた場合には、完全にランダム化された共重合ポリエステルとなるため、ロール剥離性が不良となるものと考えられる。
これに対して、本発明の軟質共重合ポリエステルは、PETオリゴマーを使用しているので、PETの繰り返し単位がブロック的に組み込まれた共重合ポリエステルとなっているため、ロール剥離性が向上するものと考えられる。
【0032】
また、(e)成分以外の成分をエステル化及び/又はエステル交換反応させた後、(e)成分を加えて重縮合して得られた軟質共重合ポリエステルの場合には、(e)成分を最後に添加するので、酸及び熱による(e)成分の分解が少なくなるため、好ましい。
【0033】
本発明の軟質共重合ポリエステルは、重縮合反応が終了した後、反応器よりストランド状で取り出し、8〜18℃の冷却水中で切断してペレット化することが好ましい。この温度範囲の冷却水を使用することにより、水切り後、ペレット同士が融着せず、またストランドが過度に冷却されて切断時に砕けることもない傾向にある。冷却水の温度の下限値は10℃以上がより好ましく、また、上限値は15℃以下がより好ましい。
【0034】
本発明の軟質共重合ポリエステルにおいては、ペレットとなった後の保管及び輸送でも融着が発生しないように、共重合ポリエステルペレットに対して0.4質量%以下の添加剤を使用することもできる。
使用される添加剤としては、ペレット同士の融着を防止するものであれば特に制限されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属塩、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂の粉末、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、耐光剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、シリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート樹脂等の粉末が好ましい。
【0035】
また、添加剤の平均粒子径は、特に制限されないが、0.3〜20μmが好ましい。平均粒子径をこの範囲である場合に、添加物の凝集が無く、フィルム等に成形した場合ブツが少なく、ブロッキング防止効果も大きくなる傾向にある。添加剤の平均粒子径の下限値は0.5μm以上がより好ましく、また上限値は15μm以下がより好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づき詳細に説明する。実施例及び比較例において、共重合ポリエステルの評価は下記の方法を用いた。
(1)酸価(mmol/kg)
ベンジルアルコール中1/20NのNaOH・ベンジルアルコール溶液にて滴定した。
(2)組成分析
PETオリゴマー中のエチレングリコール成分及びテレフタル酸成分量については、水酸化テトラメチルアンモニウムのメタノール溶液を加えて熱分解し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0037】
(3)固有粘度[η](dl/g)
25℃のフェノール/テトラクロロエタン等質量混合溶媒中で測定した。
(4)ガラス転移温度 Tg(℃)
JIS K−7121に準じて、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の昇温速度で測定したショルダー値をガラス転移温度(℃)とした。
【0038】
(5)透明性及び粘着時間
共重合ポリエステル100gに対して0.5gの離型剤(アライドシグナル社製AC−316A)をドライブレンドした後、6インチロール試験機で、回転数8.2−10.2rpm(前−後)、160℃で5分間混練した後、ロールから剥離させて0.8mm厚のシートとし、透明性を下記の基準で5段階評価し、4以上を透明性良好とした。
「5」:ほぼ透明で、シートを透かして向こう側の文字や図柄が鮮明に識別できる。
「4」:ほぼ透明だが、評価「5」より劣る。
「3」:濁りがある。
「2」:やや白濁し、シートを透かして向こう側の文字や図柄は辛うじて識別できるものの、透明性を要する用途には不適である。
「1」:白濁し、シートを透かして向こう側の文字や図柄の識別はできない。
このシートを再び、同一条件のロール試験機で混練を行い、通算混練時間が30分になるまで5分毎にロールから剥離させ、ある一点でもロールから剥がれなくなった部分が生じた時間を粘着時間(分)とし、15分後もロールから全面問題なく剥離する場合をロール剥離性良好、20分後もロールから全面問題なく剥離する場合をロール剥離性非常に良好とした。
【0039】
(5)シート表面光沢
共重合ポリエステルペレットを鏡面仕上げした型枠に入れ、温度制御が出来るプレス機で、150℃、5.0MPaで15分間プレスし、3.0mm×150mm×150mmの樹脂板を作製した。樹脂板は60℃にて10日間オーブン内で加温し、熱処理前後の75°光沢度をハンディ型光沢計(日本電色工業製PG−1)で測定した。熱処理後の光沢保持率(熱処理後光沢/熱処理前光沢×100)が50%以上のものを光沢性保持良好とした。
【0040】
実施例1
PETオリゴマーが存在するエステル化反応器に、テレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比が1.20のスラリーを連続的に供給し、温度260℃で発生する水とエチレングリコールの一部を反応系外に留去しつつ反応させ、テレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比が1.15、酸価が350mmol/kgのPETオリゴマーを連続的に得た。このPETオリゴマー160kg(テレフタル酸成分789mol、エチレングリコール成分907mol)を別のエステル化反応器に移液し、255℃にてイソフタル酸59.0kg(355mol)、エチレングリコール44.1kg(710mol)及びトリメチロールプロパン0.212kg(1.58mol)のスラリーを70分かけて添加した。15分後、数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレングリコール78.9kg(78.9mol)及び安定剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン5.92kgを255℃で25分かけて添加した。5分後、重縮合触媒として三酸化アンチモン180g(0.617mol)及びトリエチルフォスフェート12.0g(0.066mol)を添加し、15分後260℃にて、反応混合物を重縮合反応器に移液した。5分後に減圧を開始し、最終的には0.09kPaで、エチレングリコールを反応系外に留去しながら260℃で重縮合を行い、120分後所定の軸トルクに達したので、減圧をといて重縮合反応を停止した。0.2MPaの窒素圧力をかけ、反応器より樹脂をストランド状にして取り出し、13℃の冷却水中で切断し、共重合ポリエステル1のペレットを得た。
なお、表1には、PETオリゴマー中のテレフタル酸成分を100モル部に換算した場合の仕込みのモル部を示す。ただし、安定剤については、ポリオキシテトラメチレングリコール成分を100質量部に換算した場合の仕込みの質量部を示す。
【0041】
得られた共重合ポリエステル1の固有粘度[η]は0.98dl/g、Tgは−1℃であった。
6インチロール試験機で共重合ポリエステル1の透明性とロール剥離性の評価を行った。また、プレス機にて作製した樹脂板で熱処理前後の光沢保持性を評価した。これらの結果を表1に示した。共重合ポリエステル1は柔軟性に富み、透明性、ロール剥離性及び光沢保持率が良好であった。
【0042】
実施例2〜10
仕込み組成を表1のように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステルのペレットを得た。評価結果を表1に示す。
【0043】
比較例1
テレフタル酸131kg(789mol)、イソフタル酸59.0kg(355mol)、エチレングリコール100kg(1617mol)、トリメチロールプロパン0.212kg(1.58mol)、数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレングリコール78.9kg(78.9mol)及び安定剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン5.92kgをエステル化反応器に仕込み、300kPaの窒素圧をかけ、発生する水を反応系外に留去しつつ、温度を260℃まで引き上げ、150分エステル化反応を行った。反応器に窒素を導入して大気圧に戻し、重縮合触媒として三酸化アンチモン180g(0.617mol)及びトリエチルフォスフェート12.0g(0.066mol)を添加した。15分後260℃にて、反応混合物を重縮合反応器に移液した。5分後に減圧を開始し、最終的には0.08kPaで、エチレングリコールを反応系外に留去しながら260℃で重縮合を行い、120分後所定の軸トルクに達したので、減圧をといて重縮合反応を停止した。0.2MPaの窒素圧力をかけ、反応器より樹脂をストランド状にして取り出し、13℃の冷却水中で切断し、共重合ポリエステル9のペレットを得た。得られた共重合ポリエステル9の固有粘度[η]は0.92dl/g、Tgは−5℃であった。
【0044】
6インチロール試験機で共重合ポリエステル9の透明性とロール剥離性の評価を行った。また、プレス機にて作製した樹脂板で熱処理前後の光沢保持性を評価した。これらの結果を表2に示した。共重合ポリエステル9は、柔軟性に富み、透明性及び光沢保持率は良好であったが、ロール剥離性は悪かった。共重合ポリエステル11は、組成的には実施例1の共重合ポリエステル1と同じであるが、PETオリゴマーを使用せず、原料を一括仕込みして反応を行ったため、ロール剥離性が不良となった。
【0045】
比較例2
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル12のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル12は柔軟性に富み、光沢保持率は良好であったが、透明性とロール剥離性に問題があった。共重合ポリエステル12は、原料として分子量の高いポリオキシテトラメチレングリコールを使用し、重縮合触媒として二酸化ゲルマニウムを使用したため、透明性が不良となった。
【0046】
比較例3
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル13のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル13は柔軟性がなく、ロール剥離性と光沢保持率は良好であったが、透明性に問題があった。共重合ポリエステル13は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が少なく、Tgが高いため、ロール剥離性はよいものの加工時の混練状態が悪く、透明性が不良となった。
【0047】
比較例4
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル14のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル14は柔軟性があり、透明性と光沢保持率は良好であったが、ロール剥離性が劣っていた。共重合ポリエステル14は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が多く、触媒として二酸化ゲルマニウムを使用したため、ロール剥離性が不良となった。
【0048】
比較例5
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、比較例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル15のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル樹脂15は、柔軟で、透明性及び光沢保持率は良好であったが、ロール剥離性は悪かった。共重合ポリエステル15は、組成的には実施例6の共重合ポリエステル5と同じであるが、PETオリゴマーを使用せず、原料を一括仕込みして反応を行ったため、ロール剥離性が不良となった。
【0049】
比較例6
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル16のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル16は、柔軟性はあったが、透明性、ロール剥離性及び光沢保持率が劣っていた。共重合ポリエステル16は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が多く、原料として分子量の高いポリオキシテトラメチレングリコールを使用し、重縮合触媒として二酸化ゲルマニウムを使用したため、透明性、ロール剥離性及び光沢保持率が不良となった。
【0050】
比較例7
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル17のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル17は、柔軟性がなく、ロール剥離性及び光沢保持率は良いものの、透明性が劣っていた。共重合ポリエステル17は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が少なく、Tgの高い樹脂となったので、ロール剥離性はよいが、加工時の混練状態が悪く、透明性が不良となった。
【0051】
比較例8
仕込み組成を表2に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル18のペレットを得た。評価結果を表2に示す。
共重合ポリエステル18は、柔軟性に富み、透明性及び光沢保持率は良かったものの、ロール剥離性が劣っていた。共重合ポリエステル18は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が多すぎるため、ロール剥離性が不良となった。
【0052】
実施例11
実施例1と同じ手法で得たPETオリゴマー158kg(テレフタル酸成分780mol、エチレングリコール成分897mol)をエステル化反応器に移液し、255℃にて5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル3.46kg(11.7mol)を添加し、次いでイソフタル酸58.3kg(351mol)、エチレングリコール43.6kg(702mol)及びトリメチロールプロパン0.209kg(1.56mol)のスラリーを70分かけて添加した。15分後、数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレングリコール78.0kg(78.0mol)及び安定剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン5.86kgを255℃で25分かけて添加した。5分後、重縮合触媒として三酸化アンチモン180g(0.617mol)及びトリエチルフォスフェート12.0g(0.066mol)を添加し、15分後260℃にて、反応混合物を重縮合反応器に移液した。5分後に減圧を開始し、最終的には0.12kPaで、エチレングリコールを反応系外に留去しながら260℃で重縮合を行い、120分後所定の軸トルクに達したので、減圧をといて重縮合反応を停止した。0.2MPaの窒素圧力をかけ、反応器より樹脂をストランド状にして取り出し、13℃の冷却水中で切断し、共重合ポリエステル19のペレットを得た。得られた共重合ポリエステル19の固有粘度[η]は0.97dl/g、Tgは0℃であった。
【0053】
6インチロール試験機で共重合ポリエステル19の透明性とロール剥離性の評価を行った。また、プレス機にて作製した樹脂板で熱処理前後の光沢保持性を評価した。これらの結果を表3に示した。共重合ポリエステル19は、柔軟性に富み、透明性、ロール剥離性及び光沢保持率が良好であった。
【0054】
実施例12〜22
仕込み組成を表3に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル20のペレットを得た。評価結果を表3に示す。
【0055】
比較例9
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、比較例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル31のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル樹脂31は、柔軟で、透明性及び光沢保持率は良好であったが、ロール剥離性は悪かった。共重合ポリエステル31は、組成的には実施例11の共重合ポリエステル19と同じであるが、PETオリゴマーを使用せず、原料を一括仕込みして反応を行ったため、ロール剥離性が不良となった。
【0056】
比較例10
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル32のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル32は、柔軟で、ロール剥離性及び光沢保持率が良好であったが、透明性が悪かった。共重合ポリエステル32は、原料として分子量の高いポリオキシテトラメチレングリコールを使用したため、透明性が不良となった。
【0057】
比較例11
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル33のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル33は、柔軟性がなく、ロール剥離性及び光沢保持率が良好であったが、透明性が悪かった。共重合ポリエステル33は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が少なく、Tgが高いため、ロール剥離性はよいものの加工時の混練状態が悪く、透明性が不良となった。
【0058】
比較例12
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル34のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル34は、柔軟で、透明性及び光沢保持率が良好であったが、ロール剥離性が悪かった。共重合ポリエステル34は、ポリオキシテトラメチレングリコールの使用量が多すぎ、ロール剥離性が不良となった。
【0059】
比較例13
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、比較例1と同様の操作を行い、共重合ポリエステル35のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル35は、組成的には実施例17の共重合ポリエステル25と同じであるが、PETオリゴマーを使用せず、原料を一括仕込みして反応を行ったため、ロール剥離性が不良となった。
【0060】
比較例14
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル36のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル36は、柔軟で、ロール剥離性及び光沢保持率が良好であったが、透明性が劣っていた。共重合ポリエステル36は、分子量の高いポリオキシテトラメチレングリコールを使用したため、透明性が不良となった。
【0061】
比較例15
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル37のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル37は、柔軟性がなく、ロール剥離性及び光沢保持率が良好であったが、透明性が劣っていた。共重合ポリエステル37は、ポリオキシテトラメチレングリコールを使用量が少なく、透明性が不良となった。
【0062】
比較例16
仕込み組成を表4に示すように変更すること以外は、実施例11と同様の操作を行い、共重合ポリエステル38のペレットを得た。評価結果を表4に示す。
共重合ポリエステル38は、ネオペンチルグリコールの使用量が多く、また固有粘度が低いため、ロール剥離性が不良となった。
【0063】
なお、表1〜4中の安定剤1〜3は、それぞれ以下の化合物である。
安定剤1:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
安定剤2:3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン
安定剤3:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(e)成分をエステル化及びエステル交換反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステル。
(a)テレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比が1.05〜1.25、酸価が200〜550mmol/kgの連続的に製造されたポリエチレンテレフタレートオリゴマー成分、
(b)テレフタル酸以外のジカルボン酸成分:20〜80モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)、
(c)エチレングリコール成分:24〜200モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)。
【請求項2】
少なくとも下記の(a)成分、(d)成分、及び(e)成分をエステル化及びエステル交換反応させた後、重縮合して得られる、ガラス転移温度が−10〜25℃、固有粘度〔η〕が0.80〜1.20dl/gである軟質共重合ポリエステル。
(a)テレフタル酸成分に対するエチレングリコール成分のモル比が1.05〜1.25、酸価が200〜550mmol/kgの連続的に製造されたポリエチレンテレフタレートオリゴマー成分、
(d)エチレングリコールとポリオキシテトラメチレングリコール以外のジオール成分:20〜70モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)、
(e)数平均分子量500〜2500のポリオキシテトラメチレングリコール成分:1〜15モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)。
【請求項3】
さらに(f)5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジエステル誘導体成分:0.3〜2.5モル部(ポリエチレンテレフタレートオリゴマー中のテレフタル酸成分100モル部に対して)をエステル化及びエステル交換反応させて得られる請求項1又は2記載の軟質共重合ポリエステル。
【請求項4】
(e)成分以外の成分をエステル化及び/又はエステル交換反応させた後、(e)成分を加えて重縮合して得られる請求項1又は2記載の軟質共重合ポリエステル。


【公開番号】特開2006−274183(P2006−274183A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99363(P2005−99363)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】