説明

転がり軸受ユニット

【課題】保持器9Bのリム部10aと座板13Bとの擦れ合い部の摩擦を抑え、これらリム部10aや座板13Bが摩耗しにくい構造を実現する。
【解決手段】上記保持器9Bを、自己潤滑性を有する合成樹脂製とし、上記座板13Bと擦れ合い、上記リム部10bの外側面に、多数の凹部を設ける。これら各凹部内に捕集された潤滑剤が上記擦れ合い部に供給される為、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転動力を減速しつつ伝達する動力伝達装置に組み込む転がり軸受ユニットの改良に関する。具体的には、保持器の軸方向端面と座板の側面との擦れ合い面の摩耗を抑えられる構造の実現を図るものである。更に、必要に応じて、必要な機能を確保しつつ、偏心カム部の周囲に振れ回り部材を支持する為のころ軸受(ニードル軸受を含む、本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ)に十分な潤滑剤を流通させられる構造の実現を図る事も考慮している。
【背景技術】
【0002】
回転運動を大きく減速しつつ伝達する、減速機構を備えた動力伝達装置として、特許文献1に記載された構造が知られている。この動力伝達装置は、高速で回転する入力軸の回転運動を、外周縁に外歯を形成した振れ回り部材(外歯歯車)の振れ回り運動に変換し、この振れ回り運動を、ピンと内歯とを介して外径側部材(内歯歯車)に伝達し、この外径側部材を固定した出力軸を低速で回転させるものである。この様な動力伝達装置で、上記入力軸の回転を上記振れ回り部材の振れ回り運動に変化する部分を従来は、図10〜11に示す様に構成している。
【0003】
駆動源により回転駆動される回転軸1は、軸方向に離隔して配置された、それぞれが特許請求の範囲に記載した回転支持用転がり軸受である1対の円すいころ軸受2、2により、回転自在に支持されている。上記回転軸1の一部で、これら両円すいころ軸受2、2同士の間部分に、1対の偏心カム部3a、3bを固設(例えば一体形成)している。これら両偏心カム部3a、3bは、上記回転軸1の回転中心αに対し偏心した円筒状の外周面を有し、それぞれの外径が、この回転軸1のうちで上記両偏心カム部3a、3bに隣接する部分の外径よりも大きい。又、これら両偏心カム部3a、3bの中心軸β、γが上記回転軸1の回転中心αに対し偏心している方向は、この回転軸1の径方向に関して180度逆方向としている。
【0004】
又、上記両偏心カム部3a、3bの周囲に振れ回り部材4a、4bを、それぞれ円筒ころ軸受5a、5bにより、回転自在に支持している。これら両円筒ころ軸受5a、5bは、それぞれ、上記両偏心カム部3a、3bの外周面である内輪軌道6a、6bと、上記両振れ回り部材4a、4bの内周面である外輪軌道7a、7bとの間に、複数個ずつの円筒ころ8a、8bを配置して成る。これら各円筒ころ8a、8bはそれぞれ、保持器9a、9bにより転動自在に保持している。これら両保持器9a、9bは、M形保持器と呼ばれるもので、金属板を曲げ形成する事により、断面略M字形で全体を円筒状に形成している。そして、軸方向両端部に設けた円輪状のリム部10、10同士の間に、柱部11、11とポケットとを、円周方向に関して交互に配置している。そして、これら各ポケット内に上記各円筒ころ8a、8bを、転動自在に保持している。尚、円筒ころ軸受用の保持器としては、上述の様な金属板製のものの他、図12〜13に示す様な、合成樹脂製の保持器も例えば特許文献2〜3に記載されて、広く知られている。
【0005】
又、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面(互いに反対側の端面)と、前記両円すいころ軸受2、2を構成する内輪12、12の軸方向内端面(互いに対向する端面)との間に、座板13a、13bの内周縁部を挟持している。これら両座板13a、13bは、上記両円筒ころ軸受5a、5bを構成する上記両保持器9a、9bの軸方向の変位を抑える為に設けたもので、金属板を打ち抜く事により円輪状に形成している。即ち、上記両保持器9a、9bは、上記各円筒ころ8a、8bの自転中心が上記両偏心カム部3a、3bの中心軸β、γに対し傾斜する、所謂スキューに基づいて発生するスラスト力により、軸方向に変位する可能性がある。この様な場合にも、上記両保持器9a、9bの軸方向位置を適正位置に保持し、これら両保持器9a、9bに保持された上記各円筒ころ8a、8bの転動面が、上記内輪軌道6a、6b及び上記外輪軌道7a、7bから外れない様にすべく、上記両座板13a、13bを設けている。
【0006】
これら両座板13a、13bは、内周縁部の円周方向の一部のみを、図10の右下部及び左上部に示す様に、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面と上記両内輪12、12の軸方向内端面との間で挟持している。具体的には、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面のうちで、これら両偏心カム部3a、3bの偏心量が多くなった部分(前記回転軸1の回転中心αからの距離が大きくなった部分)と上記両内輪12、12の軸方向内端面との間で挟持している。そして、上記両座板13a、13bの内周縁の円周方向の残部と、上記両内輪12、12の軸方向内端面の外周縁及び上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面の外周縁との間に、図10の右上部及び左下部に示す様に、隙間14a、14bを形成している。具体的には、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面のうちで、これら両偏心カム部3a、3bの偏心量が少なくなった部分(前記回転軸1の回転中心αからの距離が小さくなった部分)の外周縁と、上記両座板13a、13bの内周縁との間に、上記両隙間14a、14bを設けている。これら両隙間14a、14bは、上記両円筒ころ軸受5a、5bに潤滑剤を流通させる為のもので、それぞれが図14〜15に示す様な三日月形である。上記両隙間14a(14b)の円周方向位置は、前記回転軸1の回転に伴う、上記両偏心カム部3a、3bの回転に伴って、図16の(A)→(B)→(C)→(D)→(A)に示す様に円周方向に移動し、前記各円筒ころ8a、8bの公転運動に伴って、上記両円筒ころ軸受5a(5b)の全周に亙って潤滑剤を供給可能にする。
【0007】
上記各円筒ころ8a、8bのスキューに基づいて上記両保持器9a、9bが軸方向に変位する傾向になった場合も、上記両座板13a、13bの存在に基づき、この変位を抑える。即ち、何れかの保持器9a(9b)が、他の保持器9b(9a)から離れる方向に変位する傾向になると、当該保持器9a(9b)のリム部10と上記座板13a(13b)とが当接して、それ以上この保持器9a(9b)が軸方向に変位するのを阻止する。これに対して、何れかの保持器9a(9b)が、他の保持器9b(9a)に近付く方向に変位する傾向になると、当該保持器9a(9b)のリム部10とこの他の保持器9b(9a)のリム部10とが当接して、それ以上この保持器9a(9b)が軸方向に変位するのを阻止する。そして、何れの場合も、上記両保持器9a、9bに保持された前記各円筒ころ8a、8bの転動面が、前記内輪軌道6a、6b及び前記外輪軌道7a、7bから外れない様にする。
【0008】
上記両リム部10、10と上記両座板13a、13bとの擦れ合い部の潤滑は、上記両円筒ころ軸受5a、5bを潤滑する為に、上記両内輪軌道6a、6bと上記両外輪軌道7a、7bとの間の空間15、15内に充填した潤滑剤により、或いは、上記両円筒ころ軸受5a、5bを潤滑剤中に浸漬する、所謂油浴により行う。上記両空間15、15内に潤滑剤を充填する場合、この潤滑剤の充填量は、これら両空間15、15の実容積(上記両内輪軌道6a、6bと上記両外輪軌道7a、7bとの間に存在する円筒状空間の全容積から、上記各円筒ころ8a、8b及び上記両保持器9a、9bの容積を減じたもの)の70〜90%程度とする事が一般的である。充填量が90%よりも多いと外部への漏洩量が過大になり、同じく70%よりも少ないと、潤滑が不十分となる。充填される潤滑剤としては、鉱油系、PAG系(ポリアルキレングリコール系)の潤滑油や、リチウム石けんと鉱油系の基油とから構成されるグリースで、NLGI混和ちょう度がNo.00〜No.0の液状グリースが、使用可能である。上記各擦れ合い部には、この様な、上記両空間15、15に充填した潤滑剤が入り込み、これら各擦れ合い部を潤滑する、
【0009】
上記両円筒ころ軸受5a、5bの潤滑を何れの方法により行うにしても、上述の様な従来構造の場合、次に述べる様な、2通りの問題を生じる。第一に、上記両保持器9a、9bのリム部10、10と上記両座板13a、13bとの擦れ合い部の摩擦が大きくなり易く、これらリム部10、10や座板13a、13bが摩耗し易い。即ち、これらリム部10、10と座板13a、13bとは、金属同士の接触となる為、擦れ合い面に十分量の潤滑剤が存在しないと、金属接触に基づく、著しい摩耗が発生する可能性がある。前記特許文献1に記載された発明の構造の場合、回転軸に潤滑油の供給孔を形成する事で、各部への潤滑油の供給量を確保する様にしているが、潤滑油の供給量が不足した場合に摩耗防止を図る事はできない。これに対して、偏心カム部3a、3bの周囲に振れ回り部材4a、4bを回転自在に支持する為の円筒ころ軸受を構成する保持器として、特許文献2、3には、前述の図12〜13に示す様な合成樹脂製の保持器の構造が記載されている。保持器を合成樹脂製にすれば、潤滑剤が不足する様な状況下でも、擦れ合い部で金属同士の接触が発生せず、この擦れ合い部での摩耗を抑えられる。但し、本発明の対象となる、動力伝達装置に組み込む転がり軸受ユニットの場合、保持器と座板との擦れ合い部のストローク(擦れ合い長さ)が短く、外部からこの擦れ合い部に潤滑剤を取り込みにくい為、単に保持器を合成樹脂製としただけでは、潤滑剤の供給量が不足した場合に於ける摩耗防止を十分に図る事はできない。
【0010】
上記従来構造の第二の問題として、上記両円筒ころ軸受5a(5b)への潤滑剤の供給を、油浴、或いは、給油ポンプから吐出した潤滑油を強制的に流通させる構造を採用した場合に、上記両円筒ころ軸受5a(5b)への潤滑油の供給量を確保する事が難しい。この理由は、前記両隙間14a、14bの開口面積を確保する事が難しい為である。即ち、これら両隙間14a、14bは、図14〜15から明らかな通り、円周方向の長さ寸法Lは或る程度確保できるが、径方向の幅寸法Wを確保する事は難しい。この為、著しい場合には、上記両隙間14a、14b部分がラビリンスシール的に機能する等により、これら両隙間14a、14bを通過する潤滑油の量を確保しにくい。特に、比較的表面張力が大きく、従って比較的強固な油膜を形成できる、PAG(ポリアルキレングリコール)等の潤滑油を使用すると、上記両隙間14a、14bを通過する潤滑油の不足が顕著になり易い。上記幅寸法Wを大きくしてこれら両隙間14a、14bを通過する潤滑油の量を確保する事だけを考えれば、上記両座板13a、13bの内径を大きくしたり、前記両内輪12、12に対するこれら両座板13a、13bの偏心量を多くすれば良い。但し、この様な構造を採用した場合には、これら両座板13a、13bの内周縁部の円周方向の一部で、前記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面と前記両内輪12、12の軸方向内端面との間で挟持する部分の面積が狭くなり、上記両座板13a、13bの支持強度を確保しにくくなる。しかも、上記従来構造の場合には、上記両座板13a、13bを上記両内輪12、12に対し、適正方向に適正量だけ偏心した状態で組み付ける必要があり、組み付け作業が面倒になる。
【0011】
【特許文献1】特開2006−336702号公報
【特許文献2】特開平7−293569号公報
【特許文献3】特開2004−52796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、少なくとも、保持器のリム部と座板との擦れ合い部の摩擦を抑え、これらリム部や座板が摩耗しにくい構造の実現を図るべく発明したものである。
更に、必要に応じて、偏心カム部の周囲に振れ回り部材を回転自在に支持する為の円筒ころ軸受を構成する保持器の軸方向変位を抑える為の座板の組み付け作業が容易でこの座板の支持強度を確保でき、しかも上記円筒ころ軸受に供給する潤滑剤の量を確保できる構造を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の転がり軸受ユニットは、前述した従来から知られている転がり軸受ユニットと同様に、回転軸と、偏心カム部と、振れ回り部材と、複数個の円筒ころと、回転支持用転がり軸受と、座板とを備える。
上記偏心カム部は、上記回転軸の一部に固設されたもので、この回転軸の回転中心に対し偏心した円筒状の外周面を有し、外径がこの回転軸のうちで隣接する部分の外径よりも大きい。
又、上記振れ回り部材は、上記偏心カム部の周囲に配置されたもので、円筒状の内周面を有する。
又、上記各円筒ころは、上記偏心カム部の外周面と上記振れ回り部材の内周面との間に、保持器に転動自在に保持された状態で設けられている。
又、上記回転支持用転がり軸受は、上記回転軸のうちで軸方向に関して上記偏心カム部に隣接する部分に設けられて、上記回転軸を回転自在に支持する。
更に、上記座板は、上記回転支持用転がり軸受を構成する、上記回転軸に外嵌固定された内輪の軸方向端面と、上記偏心カム部の軸方向端面との間で挟持固定されている。
そして、上記座板の軸方向片側面と上記保持器の軸方向端面とを軸方向に対向させている。
【0014】
特に、本発明の転がり軸受ユニットに於いては、上記保持器として、この軸方向端面に多数の凹部を設けたものを使用する。
この様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、上記保持器を、自己潤滑性を有する合成樹脂製とする。
【0015】
又、上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、上記座板の内径寄り部分を、上記内輪の軸方向端面と上記偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持固定する。又、上記座板の外径寄り部分で上記保持器に軸方向対向する部分の円周方向複数個所に、切り欠き若しくは通孔を形成する。更に、これら各切り欠き若しくは通孔の内接円の直径を、上記保持器の内径よりも小さくする。
【0016】
この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項4、5に記載した発明の様に、上記座板の外周縁の円周方向等間隔の複数個所に、この座板の径方向に関する寸法が互いに同じである切り欠きを形成する。
そして、例えば請求項4に記載した発明の様に、上記座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、保持器の内径をRC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、dW <RC −2δを満たすべく、各部の寸法dW 、RC 、2δを規制する。そして、好ましくは、RC −2δ−dW >0.05RC とする。
或いは、請求項5に記載した発明の様に、上記座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、同じくこれら各切り欠きから外れた部分の外径をDW とし、保持器の内径をRC とし、同じく外径をDC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、DW ≒(RC +DC )/2+2δ、言い換えれば、0.9{(RC +DC )/2+2δ}≦DW ≦1.1{(RC +DC )/2+2δ}を満たすべく、各部の寸法dW 、DW 、RC 、DC 、δを規制する。
【発明の効果】
【0017】
上述の様に構成する本発明の転がり軸受ユニットによれば、保持器のリム部と座板との擦れ合い部の摩擦を抑え、これらリム部や座板が摩耗しにくい構造を実現できる。即ち、座板の片面と対向する保持器の軸方向端面に形成した多数の凹部内に入り込んだ潤滑剤が、これら座板の片面と保持器の軸方向端面との相対変位に伴って、これら両面同士の擦れ合い部に供給される。この為、外部からこの擦れ合い部に供給される潤滑剤の量が不足する状態が発生しても、この状態が長時間継続しない限り、上記座板の片面と上記保持器の軸方向端面との摩耗を抑えられる。特に、請求項2に記載した発明の様に、この保持器を自己潤滑性を有する合成樹脂製とすれば、上記摩耗を、より効果的に抑えられる。
【0018】
更に、請求項3〜5に記載した発明によれば、座板の組み付け作業の容易化と、この座板の支持強度の確保と、円筒ころ軸受に供給する潤滑剤の量の確保とを、高次元で並立させられる。
即ち、上記座板の内径寄り部分を、内輪の軸方向端面と偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持固定する為、上記座板の内径を、回転軸のうちでこの偏心カム部に隣接する部分に外嵌できる大きさに規制さえすれば、上記座板の組み付け位置規制を容易に行える。そして、この座板を、上記内輪の軸方向端面と偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持する為、この座板の支持強度を十分に確保できる。
更に、この座板の外径寄り部分の円周方向複数個所に形成する切り欠き若しくは通孔の大きさは、上記支持強度に関係なく大きく(径方向に関する幅寸法を確保)できる。この為、上記切り欠き若しくは通孔を通じて上記円筒ころに十分量の潤滑剤を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
図1〜7は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、1対の保持器9A、9Bの材質及び表面性状、並びに、1対の座板13A、13Bの形状及び組み付け構造を工夫する事により、これら両座板13A、13Bの片面と上記両保持器9A、9Bの軸方向端面との擦れ合い部の摩耗抑制と、これら両座板13A、13Bの組み付け作業の容易化と、これら両座板13A、13Bの支持強度の確保と、1対の円筒ころ軸受5a、5bに供給する潤滑剤の量の確保とを、高次元で並立させる点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図10〜16に示した従来構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0020】
本例の場合、上記両保持器9A、9Bを合成樹脂製としている。合成樹脂製の保持器9A、9Bの繰り返し曲げ応力に対する限界疲労破断は、前述の図10〜11に示した従来構造の様な、鋼板製の保持器9a、9bよりも遙かに優れている(破断寿命が長い)。又、それぞれが金属製(鋼板製)である上記両座板13A、13Bとの擦れ合い部の摩擦は、同じ条件であれば、鋼板製の保持器9a、9bに比べて合成樹脂製の保持器9A、9Bの方が小さくなる。これら両保持器9A、9Bを構成する合成樹脂の種類は特に限定しないが、例えば、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)等が使用可能である。又、転がり軸受ユニットの潤滑に使用する潤滑剤の種類によっては(例えば、エステル油、エーテル油、PAG油等の場合には)、上記両保持器9A、9Bを構成する合成樹脂として、優れた耐油性を有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等を使用する。更に、補強材として、上記両保持器9A、9Bを構成する合成樹脂中に、硝子繊維や炭素繊維等を混入する事もできる。この場合に使用する補強材としては、摩擦係数を低く抑える面から、炭素繊維が好ましい。
【0021】
更に本例の場合には、上記両保持器9A、9Bの軸方向端面、即ち、これら両保持器9A、9Bを構成するリム部10a、10aの外側面に、それぞれが油溜として機能する、多数の凹部を設けている。即ち、これら各リム部10a、10aの外側面に多数の凹部を設ける事により、これら各リム部10a、10aの外側面の表面積を大きくすると共に、上記各凹部の内側を、それぞれ潤滑剤溜りとしている。そして、上記各リム部10a、10aの外側面に、比較的(これら各リム部10a、10aの外側面を平坦面とした場合に比べて)多量の潤滑剤が付着する様にしている。又、上記各凹部に溜まった潤滑剤が、上記両保持器9A、9Bの軸方向端面と前記両座板13A、13Bとの擦れ合い部(上記各凹部から外れた部分)に、極く短い移動距離で送り込まれる様にしている。
【0022】
上記各リム部10a、10aの外側面に形成する多数の凹部の性状(形状)としては、例えば図3の(A)〜(C)に示す様なものを採用できる。このうちの(A)に示したものは、上記各リム部10a、10aの外側面にディンプル加工を施す事により、これら各リム部10a、10aの外側面に、それぞれが円形若しくは略円形である多数の凹部を形成したものである。この様なディンプル加工により多数の凹部を形成する場合、深い凹部と浅い凹部とを混在させて(例えば交互に配置して)おけば、長期間に亙り、良好な潤滑性能を得られる。即ち、使用開始後の初期段階では、浅い凹部から染み出した潤滑剤により上記擦れ合い部を潤滑し、使用開始後或る程度経過して上記各リム部10a、10aの外側面部分の摩耗が進行し、上記浅い凹部が消滅した状態では、残った深い凹部から染み出した潤滑剤により上記擦れ合い部を潤滑する。この様な構成を採用すれば、上記各リム部10a、10aの外側面部分の摩耗の進行に伴って、上記擦れ合い部で急激な摩耗(異常摩耗)や焼き付きが発生する事を抑えられる。尚、総ての凹部の深さを大きくすれば、上記各リム部10a、10aの外側面部分に保持できる潤滑剤の量を多くできるが、これら各リム部10a、10aの強度保持の面からは不利になる。これに対して、深さの異なる複数種類の凹部を混在させれば、上記各リム部10a、10aの強度保持と長期間に亙る潤滑性能の確保とを両立させられる。何れの場合でも、上記多数の凹部は、射出成形により形成できる他、射出成形後に上記各リム部10a、10aの外側面部分にショットブラストを施す事によっても形成できる。
【0023】
尚、上記各凹部の深さは、0.01〜0.2mmの範囲に規制する事が、必要な潤滑剤量を確保し、且つ、上記各リム部10a、10aの強度低下を実用上問題ない程度に抑える面から好ましい。又、上記各凹部の直径は、特に限定しないが、開口部の直径で0.5〜2mm程度とし、面方向に等間隔で配置する事が好ましい。又、上記各凹部の面積の合計と、これら各凹部から外れた平坦部の面積の合計とは、互いにほぼ等しくする事が望ましい。これら各凹部の面積の割合が50%を大幅に超え(例えば60%を越え)、上記平坦部の面積が狭くなると、上記擦れ合い部の接触面圧が高くなって、この擦れ合い部での摩耗の進行が早まる可能性がある。これに対して、上記各凹部の面積の割合が50%を大幅に下回る(例えば40%未満になる)と、上記各リム部10a、10aの外側面部分への潤滑剤の付着が不十分になり、やはり上記擦れ合い部での摩耗の進行が早まる可能性を生じる。
【0024】
又、上記各リム部10a、10aの外側面に、上記擦れ合い部に供給する為に十分な量の潤滑剤を保持する為、これら各リム部10a、10aの外側面に形成する多数の凹部の形状としては、上述の図3の(A)に示した様な、ディンプル加工による円形若しくは略円形のものの他、図3の(B)(C)に示す様な形状のものも採用できる。このうちの(B)に示したものは、多数の凹部を所定方向に連続する波形凹溝としたもの、(C)に示したものは、夫々が所定方向に傾斜して互いに平行な多数の凹溝としたものである。尚、前述の特許文献3には、前述の図13に示した様に、合成樹脂製の保持器を構成するリム部の外側面に、夫々がこのリム部の直径方向に形成されて、このリム部の内周面から外周面にまで達する複数の凹溝を形成した構造が記載されている。この様な構造を本例の転がり軸受ユニットに適用した場合、遠心力の作用により潤滑剤が上記直径方向の凹溝を極めて円滑に流通して、上記擦れ合い部の潤滑に供される割合が少なくなり、この擦れ合い部の摩耗防止を十分に図れない。これに対して、上記図3の(A)〜(C)に示した様な、直径方向から外れた方向の凹部を多数形成した構造によれば、上記擦れ合い部に十分な潤滑剤を供給して、この擦れ合い部の摩耗防止を十分に図れる。
【0025】
更に本例の場合には、前記両座板13A、13Bの形状を工夫する事により、これら両座板13A、13Bの支持強度の確保と、前記両円筒ころ軸受5a、5bに供給する潤滑剤の量の確保とを図っている。上記両座板13A、13Bは、ステンレス鋼板、炭素鋼板等の鉄系合金板、或いは真鍮等の銅系合金板等の金属板を打ち抜き形成する事により、図7の(A)又は(B)に示す様な、円輪状に加工している。即ち、上記両座板13A、13Bは、中心部に円孔17を、外周縁の円周方向等間隔複数個所(図示の例では4個所)に切り欠き18、18を、それぞれ形成している。上記円孔17の内径R17は、回転軸1の一部で偏心カム部3a、3bに隣接する部分の外径D1 (図1参照)と同じか僅かに小さく(R17≦D1 )して、上記両座板13A、13Bを、これら両部分に、径方向に関する位置決めを図った状態で外嵌できる様にしている。
【0026】
又、上記両座板13A、13Bのうちで、上記各切り欠き18、18から外れた外径寄り部分19、19の外径DW は、上記両偏心カム部3a、3bの外周面である内輪軌道6a、6bの偏心運動に拘らず、上記各外径寄り部分19、19と、上記両円筒ころ軸受5a、5bに組み込む保持器9A、9Bを構成する前記各リム部10a、10aのうち、上記両座板13A、13B側に存在する1対のリム部10a、10aとが軸方向に対向し続ける様に、これら両リム部10a、10aの内径RC (図1参照)との関係で規制している。言い換えれば、上記両座板13A、13Bの外周縁が、上記両リム部10a、10aに対し最も径方向内側に変位した状態でも、これら両リム部10a、10aに確実に対向する様に、上記両寸法DW 、RC を規制している。
【0027】
好ましくは、上記両座板13A、13Bのうちで上記各切り欠き18、18部分の外径をdW とし、同じくこれら各切り欠き18、18から外れた部分の外径をDW とし、上記両保持器9A、9Bの内径である、上記両座板13A、13B側に存在する1対のリム部10a、10aの内径をRC とし、同じく外径をDC とし、回転軸1の回転中心αに対する上記両偏心カム部3a、3bの外周面である内輪軌道6a、6bの中心(これら両偏心カム部3a、3bの中心軸)β、γの偏心量を、それぞれδとした場合に、DW ≒(RC +DC )/2+2δ、言い換えれば、0.9{(RC +DC )/2+2δ}≦DW ≦1.1{(RC +DC )/2+2δ}を満たすべく、各部の寸法dW 、DW 、RC 、DC 、δを規制する。この様にこれら各部の寸法dW 、DW 、RC 、DC 、δを規制すれば、上記両座板13A、13Bの外周縁が上記両リム部10a、10aに対し最も径方向内側に変位した状態でも、上記両座板13A、13Bにより上記両リム部10a、10aを、円周方向に関して均等に支承して、これら両リム部10a、10aを含む上記両保持器9A、9B、延ては、これら両保持器9A、9Bに保持された各円筒ころ8a、8bの自転軸が、正規の方向に対し傾斜する事を十分に防止できる。
【0028】
又、上記両座板13A、13Bのうちで、上記各切り欠き18、18部分の外径dW は、上記偏心運動に拘らず、これら各切り欠き18、18部分の外周縁が、上記両リム部10a、10aの内周縁よりも径方向内方に存在し続ける(これら外周縁と内周縁との間に隙間14A、14Bが存在し続ける)様に、これら両リム部10a、10aの内径RC との関係で規制している。
具体的には、上記各切り欠き18、18部分の外径dW 、即ち、これら各切り欠き18、18の内接円の直径を、上記両リム部10a、10aの内径RC よりも小さく(dW <RC )している。更に、上記両内輪軌道6a、6bの偏心量をδとした場合に、dW <RC −2δを満たすべく、各部の寸法dW 、RC 、2δを規制している。そして、好ましくは、RC −2δ−dW >0.05RC としている。
【0029】
上述の様に、上記各部の寸法dW 、RC 、2δを規制すれば、上記各切り欠き18、18部分の外周縁と上記両リム部10a、10aの内周縁との間に、図6に示す様に、常に隙間14A、14Bが存在する状態となる。尚、これら各隙間14A、14Bの径方向に関する幅寸法Wの最小値は、0.5mm以上確保する。この幅寸法Wが0.5mm未満の場合には、上記隙間14A、14B部分がラビリンスシール的に機能する等により、これら両隙間14A、14Bを通過する潤滑剤の量を確保する面から不利になる。これに対して、上記幅寸法Wを過大にすると、上記両座板13A、13Bの内径寄り部分で上記各切り欠き18、18の内径側に存在する部分の、径方向に関する幅寸法が短くなって、上記両座板13A、13Bの強度及び剛性確保が難しくなる。
【0030】
上述の様に構成する本例の転がり軸受ユニットによれば、前記両保持器9A、9Bを構成する各リム部10a、10aと上記両座板13A、13Bとの擦れ合い部の摩擦を抑え、これら各リム部10a、10aや両座板13A、13Bの摩耗を抑えられる。即ち、これら両座板13A、13Bの片面と対向する、上記両保持器9A、9Bの軸方向端面16、16に形成した多数の凹部内に入り込んだ潤滑剤が、上記両座板13A、13Bの片面と上記両保持器9A、9Bの軸方向端面16、16との相対変位に伴って、これら両面同士の擦れ合い部に供給される。この為、外部からこの擦れ合い部に供給される潤滑剤の量が不足する状態が発生しても、この状態が長時間継続しない限り、上記両座板13A、13Bの片面と上記両保持器9A、9Bの軸方向端面16、16との摩耗を抑えられる。しかも本例の場合には、これら両保持器9A、9Bを、前述した様な、自己潤滑性を有する合成樹脂製としているので、上記摩耗を、より効果的に抑えられる。
【0031】
更に図示の例によれば、上記両座板13A、13Bの組み付け作業の容易化と、これら両座板13A、13Bの支持強度の確保と、前記両円筒ころ軸受5a、5bに供給する潤滑剤の量の確保とを、高次元で並立させられる。
即ち、上記両座板13A、13Bの内径は、前記回転軸1のうちで前記両偏心カム部3a、3bに隣接する部分にがたつきなく外嵌自在な大きさとしている。従って、上記両座板13A、13Bの内径寄り部分を、それぞれ円すいころ軸受2、2を構成する内輪12、12の軸方向内端面と前記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面との間で全周に亙り挟持固定する際に、別途、上記座板13A、13Bの径方向位置を規制する為の作業を行う必要がない。この為、これら両座板13A、13Bを所定位置に組み付ける作業を容易に行える。そして、これら両座板13A、13Bを、上記両内輪12、12の軸方向内端面と上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面との間で全周に亙り挟持する事により、上記両座板13A、13Bを、十分に大きな強度で支持できる。
【0032】
これら両座板13A、13bのうちで前記各切り欠き18、18の外周縁と、前記両リム部10a、10aの内周縁との間にそれぞれ設けた上記両隙間14A、14Bは、それぞれが図4〜5に示す様な円弧形で、径方向に関する幅寸法は、円周方向両端まで十分に確保される。又、上記両隙間14A(14B)の円周方向位置は、前記回転軸1の回転に伴う、上記両偏心カム部3a、3bの回転に伴って、図6の(A)→(B)→(C)→(D)→(A)に示す様に円周方向に移動し、前記両円筒ころ軸受5a、5bの周方向複数個所から同時に潤滑剤を供給する。この為、これら両円筒ころ5a、5bへの潤滑剤の供給量を十分に確保できる。
【0033】
[実施の形態の第2例]
図8〜9は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、座板13Cの径方向中間部外径寄り部分の円周方向等間隔複数個所に、それぞれが円周方向に長い円弧形の通孔20、20を形成している。そして、これら各通孔20、20を、常に、保持器9Bを構成するリム部10aの内径側に開口させる様に、各部の寸法を規制している。切り欠き18、18が通孔20、20に変わった点以外の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明を実施する場合で、且つ、座板13A、13Bに切り欠き18、18を形成する場合でも、これら各切り欠き18、18の形状は特に問わない。図7の(A)に示す様な円弧形であっても、(B)に示す様な角形であっても良い。又、上記各切り欠き18、18の数に就いても、複数であれば良く、4個所に限定されず、3個所、5個所、6個所若しくはそれ以上に形成する事もできる。又、回転軸1を支持する為の回転支持用転がり軸受は、図示の様な円すいころ軸受に限らず、玉軸受、自動調心ころ軸受等、他の転がり軸受であっても良い。
【0035】
更に、転がり軸受ユニットを潤滑する為の潤滑剤の種類は特に問わないが、例えば40℃での動粘度が10〜300mm2 /Sの潤滑油が適切に使用できる。又、潤滑剤としてグリースを使用する場合には、流動し易い、NLGI混和ちょう度がNo.0〜No.00のものを、単独で、或いは潤滑油と組み合わせて使用する事が好ましい。何れの場合でも、潤滑油やグリースの基油の種類は特に限定しない。又、例えば、図1〜2に示した動力伝達装置で本発明を実施する場合、潤滑油の量、グリースの充填量は、潤滑油或いはグリースの上面(液面)が、保持器9A、9Bを構成する各リム部10a、10aの内径面の下端位置(図2のLmax 位置)よりも上方位置となるまで、供給乃至は充填する事が好ましい。この位置まで、潤滑油或いはグリースを、供給乃至は充填すれば、回転軸1が1回転する毎に、上記各リム部10a、10aを、それぞれの内径側端部まで、潤滑油乃至はグリースに浸漬して、多数の凹部内に潤滑剤(潤滑油乃至具グリース)を貯溜できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】図1の右半部拡大図。
【図3】本発明の実施の形態の第1例に適用可能な保持器の3例を、それぞれ軸方向から見た端面図。
【図4】図1のイ−イ視図。
【図5】同ロ−ロ視図。
【図6】回転軸の回転に伴う各隙間の移動状況を示す、図4と同様の図。
【図7】座板に設けた切り欠きの形状の2例を示す半部側面図。
【図8】本発明の実施の形態の第2例を示す部分断面図。
【図9】座板の側面図。
【図10】従来構造の1例を示す部分断面図。
【図11】図10の右半部拡大図。
【図12】転がり軸受ユニットに適用可能な、従来から知られている合成樹脂製保持器の第1例を示す、軸方向から見た端面図(A)及び径方向から見た側面図(B)。
【図13】同第2例を示す、軸方向から見た端面図(A)及び径方向から見た側面図(B)。
【図14】図10のハ−ハ視図。
【図15】同ニ−ニ視図。
【図16】回転軸の回転に伴う各隙間の移動状況を示す、図14と同様の図。
【符号の説明】
【0037】
1 回転軸
2 円すいころ軸受
3a、3b 偏心カム部
4a、4b 振れ回り部材
5a、5b 円筒ころ軸受
6a、6b 内輪軌道
7a、7b 外輪軌道
8a、8b 円筒ころ
9a、9b、9A、9B 保持器
10、10a リム部
11 柱部
12 内輪
13a、13b、13A、13B、13C 座板
14a、14b、14A、14B 隙間
15 空間
16 軸方向端面
17 円孔
18 切り欠き
19 外径寄り部分
20 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、この回転軸の一部に固設された、この回転軸の回転中心に対し偏心した円筒状の外周面を有し、外径がこの回転軸のうちで隣接する部分の外径よりも大きい偏心カム部と、この偏心カム部の周囲に配置された、円筒状の内周面を有する振れ回り部材と、これら偏心カム部の外周面と振れ回り部材の内周面との間に、保持器に転動自在に保持された状態で設けられた複数個の円筒ころと、上記回転軸のうちで軸方向に関して上記偏心カム部に隣接する部分に設けられて、上記回転軸を回転自在に支持する回転支持用転がり軸受と、この回転支持用転がり軸受を構成する、上記回転軸に外嵌固定された内輪の軸方向端面と上記偏心カム部の軸方向端面との間で挟持固定された座板とを備え、この座板の軸方向片側面と上記保持器の軸方向端面とを軸方向に対向させた転がり軸受ユニットに於いて、この保持器として、この軸方向端面に多数の凹部を設けたものを使用した事を特徴とする転がり軸受ユニット。
【請求項2】
保持器が、自己潤滑性を有する合成樹脂製である、請求項1に記載した転がり軸受ユニット。
【請求項3】
座板の内径寄り部分を、内輪の軸方向端面と偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持固定しており、上記座板の外径寄り部分で保持器に軸方向対向する部分の円周方向複数個所に、切り欠き若しくは通孔を形成すると共に、これら各切り欠き若しくは通孔の内接円の直径を、上記保持器の内径よりも小さくした、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット。
【請求項4】
座板の外周縁の円周方向等間隔の複数個所に、この座板の径方向に関する寸法が互いに同じである切り欠きが形成されており、この座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、保持器の内径をRC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、dW <RC −2δを満たす、請求項3に記載した転がり軸受ユニット。
【請求項5】
座板の外周縁の円周方向等間隔の複数個所に、この座板の径方向に関する寸法が互いに同じである切り欠きが形成されており、この座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、同じくこれら各切り欠きから外れた部分の外径をDW とし、保持器の内径をRC とし、同じく外径をDC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、DW ≒(RC +DC )/2+2δを満たす、請求項3〜4のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−197824(P2009−197824A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37384(P2008−37384)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】