説明

転がり軸受

【課題】従来の転がり疲れ寿命を維持しつつも、軸受のトルクと発塵現象を低減できる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受1は、C含有率が0.3質量%以上1.2質量%以下、Si含有率が0.3質量%以上2.2質量%以下、及びMn含有率が0.3質量%以上2.0質量%以下の鋼でボール4が形成され、かつ浸炭窒化処理又は窒化処理により、転動面4aのN含有率が0.2質量%以上2.0質量%以下、及び転動面4aのSi及びMnを含む窒化物の存在率が面積比で1.0%以上20.0%以下となり、かつ内輪2及び外輪3がSUJ2鋼によって形成され、かつ軸受外径をD、軸受内径をd、転動体の玉径をDa、転動体の数をZとし、軸受平均径dmを(D+d)/2、パラメータAをDa・Z/(π・dm)としたとき、パラメータAが43%以上54%以下となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、転がり軸受は、エアコンファン、冷却ファン、換気扇、クリーナー、及び洗濯機等の家電用モータ全般、並びに汎用モータ、工作機械スピンドル、サーボモータ、及びステッピングモータ等の産業用モータ全般において利用できる。
ここで、従来より、転がり軸受には、早期剥離を防止する課題があるため、例えば、内輪、外輪及び転動体のうち少なくとも一つの転動体が、鋼からなる素材を所定形状に加工した後に、浸炭窒化又は窒化を含む熱処理が施されて得られ、その転がり面のSi及びMnを含む窒化物の存在率が、面積比で1.0%以上20.0%以下であるとともに、その転がり面をなす表層部のN含有率が、0.2質量%以上であるものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−154281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の転がり軸受は、早期剥離の低減を実現できたが、本願発明者は、転動体の大きさと個数が、トルクの大きさ及びグリース漏れの可能性に関わることが分かった(後述の図3及び図4参照)。従って、転がり軸受トルクを低減し、グリース漏れや蒸発、飛散による発塵現象を低減することには、更に改善の余地がある。
本発明の目的は、早期剥離を低減できる材料により形成された転動体を採用し、高炭素クロム軸受鋼SUJ2鋼を利用する場合とほぼ同等な軸受の転がり疲れ寿命を維持しつつも、軸受のトルクと発塵現象を低減できる転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、互いに対向配置される軌道面を有する内輪及び外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配置され、前記軌道面に対する転動面を有する転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより、前記内輪及び前記外輪のうち一方が他方に対して相対移動する転がり軸受において、C含有率が0.3質量%以上1.2質量%以下、Si含有率が0.3質量%以上2.2質量%以下、及びMn含有率が0.3質量%以上2.0質量%以下の鋼によって前記転動体が形成され、かつ、
浸炭窒化処理又は窒化処理によって、前記転動体の転動面のN含有率が0.2質量%以上2.0質量%以下、及び前記転動面のSi及びMnを含む窒化物の存在率が面積比で1.0%以上20.0%以下となり、かつ、前記内輪及び前記外輪がSUJ2鋼によって形成され、かつ、前記外輪の軸受外径をDとし、前記内輪の軸受内径をdとし、転動体の玉径をDaとし、転動体の数をZとし、軸受平均径dmを(D+d)/2とし、パラメータAをDa・Z/(π・dm)としたときに、パラメータAが43%以上54%以下となることを特徴とする転がり軸受である。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の記載において、前記内輪及び前記外輪の軌道面の残留オーステナイト量をγRAB とし、前記転動体の転動面の残留オーステナイト量をγRCとしたときに、0≦γRAB 及び0≦γRC≦50を満たすとともに、γRAB−15≦γRC≦γRAB+15を満たすことを特徴とする転がり軸受である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転動体について現行品(SUJ2鋼を用いた通常の軸受モデル)と比べてパラメータAを小さくしたことで(玉径及び/又は転動体の数を小さくしたことで)、軸受の内部空間を広げ、グリースの攪拌抵抗を小さくし、軸受トルクを低減できる。更に、グリース漏れや蒸発、飛散も低減でき、これによる発塵現象も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の転がり軸受の構成を示す図である。
【図2】パラメータAと寿命比との関係を示す特性図である。
【図3】パラメータAと動トルク(動トルク比)との関係を示す特性図である。
【図4】パラメータAとグリース漏れ量(グリース漏れ量比)との関係を示す特性図である。
【図5】非接触シール付き転がり軸受の構成例を示す図である。
【図6】接触シール付き転がり軸受の構成例を示す図である。
【図7】非接触シールド付き転がり軸受の構成例を示す図である。
【図8】プラスチック製保持器を有する転がり軸受の構成例を示す斜視図である。
【図9】実施例1を説明する特性図である。
【図10】実施例2を説明する特性図である。
【図11】実施例3を説明する特性図である。
【図12】実施例4を説明する特性図である。
【図13】実施例5を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態は、転がり軸受である。
図1は、本実施形態の転がり軸受1の構成を示す。
図1に示すように、転がり軸受1は、互いに対向配置される軌道面2a,3aを有する内輪2及び外輪3と、内輪2及び外輪3の間に転動自在に配置され、軌道面2a,3aに対する転動面4aを有するボール4と、内輪2及び外輪3の間に転動自在に配置されたボール4を円周方向に等間隔に保持する保持器5と、を有する深溝玉軸受である。このような転がり軸受は、内輪2の外周面及び外輪3の内周面に設けた対向する軌道面2a,3a間に複数のボール4が保持器5により保持されつつ転動自在に配置され、ボール4が転動することにより、内輪2及び外輪3のうち一方が他方に対して相対移動する。
【0010】
ここで、転がり軸受1は、以下の条件を満たしている。
(1)C含有率が0.3質量%以上1.2質量%以下、Si含有率が0.3質量%以上2.2質量%以下、及びMn含有率が0.3質量%以上2.0質量%以下の鋼によってボール4が形成されている。
(2)浸炭窒化処理又は窒化処理によって、ボール4の転動面4aのN含有率が0.2質量%以上2.0質量%以下、及びボール4の転動面4aのSi及びMnを含む窒化物の存在率が面積比で1.0%以上20.0%以下になっている。
(3)内輪2及び外輪3の軌道面2a,3aの残留オーステナイト量をγRAB とし、ボール4の転動面4aの残留オーステナイト量をγRCとしたときに、0≦γRAB 及び0≦γRC≦50を満たすとともに、γRAB−15≦γRC≦γRAB+15を満たしている。
(4)内輪2及び外輪3がJIS G 4805規格のSUJ2鋼によって形成されている。
(5)外輪3の軸受外径をDとし、内輪2の軸受内径をdとし、ボール4の玉径(ボール径)をDaとし、玉数をZとし、軸受平均径dmを(D+d)/2とし、パラメータAをDa・Z/(π・dm)としたときに、パラメータAが43%以上54%以下になっている。
【0011】
以上の条件(1)乃至(5)を満たす本実施形態の転がり軸受の寿命は、従来の内外輪及びボール全てにSUJ2鋼を使用したものと同等に維持されつつも、低トルクかつ低発塵のものとなる。図2乃至図4を用いて、その理由を説明する。
図2は、横軸にパラメータAをとり、縦軸に転がり軸受の寿命比をとっている。そして、図2には、SUJ2鋼により形成されたボールと内外輪により得られる結果(従来例又は通常例)A、ボール及び内外輪が条件(1)乃至(4)(条件(4)については従来と同様)を満たし、ボールの玉径及び玉数が従来と同様であり、パラメータAを調整していない(パラメータAが約60%)のボールにより得られる結果(参照例)B、及び条件(1)乃至(5)(条件(4)については従来と同様)を満たす転がり軸受により得られる結果(実施形態の例)C及びDを示す。ここで、寿命比は、従来例Aの寿命を1.0とした場合の値である。
【0012】
図2に示すように、参照例Bの寿命は、従来例Aの約1.5倍になる。その一方で、参照例Bに対して、条件(5)を加えた実施形態の例C及びDは、従来例Aと同等(寿命比=1.0)になる。
なお、図2中に実線や一点鎖線で示すように、転がり軸受の寿命は、パラメータAを連続的に変化させたとき、すなわち、玉数Zや玉径Daを連続的に変化させたとき、線形的に変化する。
【0013】
ここで、図3は、パラメータAと動トルク(動トルク比)との関係を示す。
図3に示すように、パラメータAを小さくすると、すなわち、玉数Zや玉径Daを小さい値にすると、ボールの転がり摩擦抵抗の総和、保持器の保持ポケット内での滑り抵抗の総和、及びボールの慣性力の総和が小さくなるため、動トルクが小さくなる(低トルクになる)。
【0014】
また、図4は、パラメータAとグリース漏れ量(グリース漏れ量比)との関係を示す。
図4に示すように、パラメータAを小さくすると(なお、このとき、軸受の内外径及び幅寸法は維持)、軸受の空間容積が大きくなる。これにより、封入されたグリースについて、回転時に軸受内で堆積する容量が増すため、グリース漏れ量が少なくなる、すなわち、グリース漏れや蒸発、飛散を低減でき、低発塵になる。
【0015】
以上のように、従来例Aの約1.5倍の寿命を有する参照例Bに対して、条件(5)を加えた(パラメータAを43%以上54%以下と小さくした)実施形態の例C及びDは、従来例Aと同等(寿命比=1.0)になる。そして、実施形態の例C及びDは、パラメータAを小さくし抑えていることで、低トルクかつ低発塵になる(図3及び図4参照)。
つまり、本実施形態の転がり軸受は、条件(5)を満たすこと、すなわち、玉数Zや玉径Daを小さい値にすることで、それに伴う転がり軸受の寿命低下を条件(1)乃至(4)(特に条件(1)乃至(3))により補って、転がり軸受の寿命を従来のものと同等にしつつ、低トルクかつ低発塵を実現している。
【0016】
すなわち、本実施形態の転がり軸受は、転動体について現行品(SUJ2鋼を用いた通常の軸受モデル)と比べてパラメータAを小さくしたことで(玉径及び/又は転動体の数を小さくしたことで)、軸受の内部空間を広げ、グリースの攪拌抵抗を小さくし、軸受トルクを低減できる。更に、本実施形態の転がり軸受は、グリース漏れや蒸発、飛散も低減でき、これによる発塵現象も低減できる。
【0017】
また、転がり軸受の寿命延長のためには、セラミック球を用いることは効果的であるが、セラミック球は高価である。これに対して、本実施形態の転がり軸受は、安価に転がり軸受の寿命を所望のものとすることができる。
【0018】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、転がり軸受に次のようなシール又はシールドを設けることもできる。
図5は、非接触シール付き転がり軸受の構成例を示す。
図5に示すように、非接触シール10は、内輪2と外輪3との間であって、その軸方向両端部にそれぞれ配置されている。非接触シール10は、一枚の円環状体である芯金11に、ゴムやエラストマー等の弾性材12を被覆して成形され、全体が円環板状に形成されている。この非接触シール10は、その外周縁部10aを外輪3の内周面の軸方向両端部に形成される外輪シール溝3bに嵌合されることによって、外輪3の内周面の軸方向端部に支持固定されている。
【0019】
弾性材12の内周縁部には、軸方向内側に延び、内輪2の外周面の軸方向両端部に形成される内輪シール溝2bの軸方向内側面2b1に非接触の内側リップ12aと、内側リップ12aより軸方向外側に位置し、径方向内側に延び、内輪シール溝2bの径方向内側面2b2に非接触となって該径方向内側面2b2との間でラビリンス隙間13を形成する外側リップ12bと、が形成されている。
非接触シール付き転がり軸受は、このような非接触シール10により、軸受内部にダストや水等が浸入することを防止できる。そして、非接触シール付き転がり軸受は、前述のようなグリース漏れや蒸発、飛散の低減による発塵現象も低減できる。
【0020】
図6は、接触シール付き転がり軸受の構成例を示す。
図6に示すように、接触シール20は、内輪2と外輪3との間であって、その軸方向両端部にそれぞれ配置されている。接触シール20は、一枚の円環板状体を所要の形状に加工してなる芯金21に、ゴムやエラストマー等の弾性材22を被覆して成形され、全体が円環板状に形成されている。この接触シール20は、その外周縁部20aを外輪3の内周面の軸方向両端部に形成される外輪シール溝3bに嵌合されることによって、外輪3の内周面の軸方向端部に支持固定されている。
【0021】
弾性材22の内周縁部には、軸方向内側に延び、内輪2の外周面2cと非接触の内側リップ22aと、内側リップ22aより軸方向外側に位置し、径方向内側に延び、内輪2の外周面の軸方向両端部に形成される内輪シール溝2bの軸方向の内側に向く面2b3に接触する外側リップ22bと、が形成されている。
接触シール付き転がり軸受は、このような接触シールにより、軸受内部にダストや水等が浸入することを防止できる。そして、接触シール付き転がり軸受は、前述のようなグリース漏れや蒸発、飛散の低減による発塵現象も低減できる。
【0022】
図7は、非接触シールド付き転がり軸受の構成例を示す。
図7に示すように、非接触シールド30は、内輪2と外輪3との間であって、その軸方向両端部にそれぞれ配置されている。非接触シールド30は、鉄板やステンレス板などの薄い金属板をプレス加工などにより、一枚の円環状体として形成されている。非接触シールド30は、その外径が外輪3の外径よりも小径、且つ外輪3の内径よりも大径で、その内径が内輪2の外径よりも小径、且つ内輪2の内径よりも大径をなすように形成されている。この非接触シールド30は、その外周縁部30aを外輪3の内周面の軸方向両端部に形成される外輪シール溝3bに嵌合することによって、外輪3の内周面の軸方向端部に支持固定されている。そして、非接触シールド30は、内周縁部30bが内輪2の外周面の軸方向両端部に形成される内輪シール溝2bの径方向内側面2b2に非接触となって該径方向内側面2b2との間でラビリンス隙間31を形成している。
【0023】
非接触シールド付き転がり軸受は、このような非接触シールドにより、軸受内部にダストや水等が浸入することを防止できる。そして、非接触シールド付き転がり軸受は、前述のようなグリース漏れや蒸発、飛散の低減による発塵現象も低減できる。
また、本実施形態では、保持器をプラスチック製保持器とすることもできる。
図8は、プラスチック製保持器40を有する転がり軸受1の構成例を示す。
【0024】
図8に示すように、転がり軸受1は、内輪2及び外輪3の間に転動自在に配置されたボール4を円周方向に等間隔に保持するプラスチック製保持器40を有する。
転がり軸受1は、このように、標準的な鉄製保持器ではなく、プラスチック製保持器40を有することにより、保持器40とボール4との接触による摩擦粉の発生を低減できる。これにより、転がり軸受1は、さらに、グリースの劣化を抑制できる。
【0025】
また、本実施形態では、前記条件(3)を必須の条件としないこともできる。すなわち、本実施形態では、少なくとも前記条件(1)、(2)、(4)及び(5)(特に条件(1)、(2)及び(5))を満たせば、軸受トルクを低減でき、更に、グリース漏れや蒸発、飛散の低減により発塵現象を低減できる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
条件(1)乃至(4)の条件を満たすボール及び内外輪を用い、軸受内径dが8mm、軸受外径Dが22mm、幅が7mmの軸受を用いた場合に、玉数Zを減少させて(7個から5個に減少させて)、パラメータAにしたときの結果を図9に示す。
図9に示すように、玉数Zが7個である参照例(例えば、日本精工株式会社製、名番608 玉径3.969mm×玉数7個)の場合、転がり軸受の寿命は、従来例の約1.5倍になり、パラメータAは、約60%になる。
これに対して、玉数Zを5個とした実施例は、パラメータAが約43%となり(条件(5)を満たし)、転がり軸受の寿命が従来例(SUJ2)と同様の寿命比1.0に維持される。そして、この実施例では、パラメータAが約43%に減少しているので、低トルクかつ低発塵となる(図3及び図4参照)。
【0027】
(実施例2)
条件(1)乃至(4)の条件を満たすボール及び内外輪を用い、軸受内径dが8mm、軸受外径Dが22mm、幅が7mmの転がり軸受を用いた場合に、玉径Daを減少させて(3.969mmから3.54mmに減少させて)、パラメータAにしたときの結果を図10に示す。
図10に示すように、玉径Daが3.969mmである参照例(例えば、日本精工株式会社製、名番608 玉径3.969mm×玉数7個)の場合、転がり軸受の寿命は、従来例の約1.5倍になり、パラメータAは、約60%になる。
これに対して、玉径Daが3.54mmである実施例は、パラメータAが約53%となり(条件(5)を満たし)、転がり軸受の寿命が従来例(SUJ2)と同様の寿命比1.0に維持される。そして、この実施例では、パラメータAが約53%に減少しているので、低トルクかつ低発塵となる(図3及び図4参照)。
【0028】
(実施例3)
実施例3では、実施例1に対して、軸受内径d、軸受内径D、及び幅を変えている。すなわち、条件(1)乃至(4)の条件を満たすボール及び内外輪を用い、軸受内径dが12mm、軸受外径Dが32mm、幅が10mmの転がり軸受を用いた場合に、玉数Zを減少させて(7個から5個に減少させて)、パラメータAにしたときの結果を図11に示す。
図11に示すように、玉数Zが7個である参照例(例えば、日本精工株式会社製、名番6201 玉径5.953mm×玉数7個)の場合、転がり軸受の寿命は、従来例の約1.5倍になり、パラメータAは、約60%になる。
これに対して、玉数Zが5個である実施例は、パラメータAが約45%となり(条件(5)を満たし)、転がり軸受の寿命が従来例(SUJ2)と同様の寿命比1.0に維持される。そして、この実施例では、パラメータAが約45%に減少しているので、低トルクかつ低発塵となる(図3及び図4参照)。
【0029】
(実施例4)
実施例4では、実施例2に対して、軸受内径d、軸受外径D、幅、及び玉径Daを変えている。すなわち、条件(1)乃至(4)の条件を満たすボール及び内外輪を用い、軸受内径dが12mm、軸受内径Dが32mm、幅が10mmの転がり軸受を用いた場合に、玉径Daを減少させて(5.953mmから5.3mmに減少させて)、パラメータAにしたときの結果を図12に示す。
図12に示すように、玉径Daが5.953mmである参照例(例えば、日本精工株式会社製、名番6201 玉径5.953mm×玉数7個)の場合、転がり軸受の寿命は、従来例の約1.5倍になり、パラメータAは、約60%になる。
これに対して、玉径Daが5.3mmである実施例は、パラメータAが約54%となり(条件(5)を満たし)、転がり軸受の寿命が従来例(SUJ2)と同様の寿命比1.0に維持される。そして、この実施例では、パラメータAが約54%に減少しているので、低トルクかつ低発塵となる(図3及び図4参照)。
【0030】
(実施例5)
条件(1)乃至(4)の条件を満たすボール及び内外輪を用い、軸受内径dが12mm、軸受外径Dが32mm、幅が10mmの転がり軸受を用いた場合に、玉数Z及び玉径Daを減少させて(7個×5.953mmから6個×5.82mmに減少させて)、パラメータAにしたときの結果を図13に示す。
図13に示すように、玉数Z及び玉径Daが7個×5.953mmである参照例(例えば、日本精工株式会社製、名番6201 玉径5.953mm×玉数7個)の場合、転がり軸受の寿命は、従来例の約1.5倍になり、パラメータAは、約60%になる。
これに対して、玉数Z及び玉径Daが6個×5.82mmである実施例では、パラメータAが約51%となり(条件(5)を満たし)、転がり軸受の寿命が従来例(SUJ2)と同様の寿命比1.0に維持される。そして、この実施例では、パラメータAが約51%に減少しているので、低トルクかつ低発塵となる(図3及び図4参照)。
【0031】
なお、実施例1乃至5を説明する図9乃至図13中に実線で示すように、転がり軸受の寿命は、パラメータAを連続的に変化させたとき、すなわち、玉数Zや玉径Daを連続的に変化させたとき、線形的に変化する。
【符号の説明】
【0032】
1 転がり軸受、2 内輪、2a,3a 軌道面、3 外輪、4 ボール、4a 転動面、5 保持器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置される軌道面を有する内輪及び外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配置され、前記軌道面に対する転動面を有する転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより、前記内輪及び前記外輪のうち一方が他方に対して相対移動する転がり軸受において、
C含有率が0.3質量%以上1.2質量%以下、Si含有率が0.3質量%以上2.2質量%以下、及びMn含有率が0.3質量%以上2.0質量%以下の鋼によって前記転動体が形成され、かつ、
浸炭窒化処理又は窒化処理によって、前記転動体の転動面のN含有率が0.2質量%以上2.0質量%以下、及び前記転動面のSi及びMnを含む窒化物の存在率が面積比で1.0%以上20.0%以下となり、かつ、
前記内輪及び前記外輪がSUJ2鋼によって形成され、かつ、
前記外輪の軸受外径をDとし、前記内輪の軸受内径をdとし、転動体の玉径をDaとし、転動体の数をZとし、軸受平均径dmを(D+d)/2とし、パラメータAをDa・Z/(π・dm)としたときに、パラメータAが43%以上54%以下となることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記内輪及び前記外輪の軌道面の残留オーステナイト量をγRAB とし、前記転動体の転動面の残留オーステナイト量をγRCとしたときに、0≦γRAB 及び0≦γRC≦50を満たすとともに、γRAB−15≦γRC≦γRAB+15を満たすことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−127408(P2012−127408A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278951(P2010−278951)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】