説明

転がり軸受

【課題】クリープ防止、及び高速環境下での軸受振動への対応が可能な転がり軸受を提供する。
【解決手段】外輪3と、内輪2と、外輪と内輪との間に設けられた複数の転動体4と、外輪外周上に設けられた環状のOリング11とを有し、Oリング11には内方又は側方に切り欠き12が形成されている。Oリング11によりクリープを防止できるとともに、このOリング11に形成された切り欠き12が、開いたり閉じたりする事により、高速環境下での軸受振動低減効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速冷却ファンモータ、軸流ファンモータ、高温・高速ファンモータブレードサーバ等のファンモータ主軸サポートに使用する転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータ軸を支持するための軸受をハウジングに取り付ける際の嵌合を容易にする為、軸受とハウジングとの間には、通常、正の隙間が設けられている。このような隙間がある状態で、回転体アンバランスによる回転荷重が外輪に作用すると、外輪がハウジングに対して相対回転するいわゆるクリープが発生することが知られている。このようなクリープが発生すると、嵌合面での磨耗が発生し、軸受の支持が不安定になる等の問題が発生する場合がある。
【0003】
このクリープを防止する為に、外輪外周部に1本又は2本の凹溝が形成され、この凹溝内にOリングを巻き付けて、外輪とハウジングとの間の隙間を無くすようにしたものが提案されている(特許文献1)。ここに使用されるOリングは断面形状が円形中実であり、代表的なものは硬度がデュロメータで70程度のニトリルゴム(NBR)で形成されている。
【0004】
このようなOリングの敷設により、クリープ防止効果は得られている。しかし、近年、例えばブレードサーバ用の小径・ミニアチュア軸受を使用したファンモータでは、従来以上の高速・高温(100℃以上)環境下での使用が増加している。このため、高温環境下での外輪とハウジングのクリープ問題や高速化に伴う振動のへの対応が求められている。
【0005】
この部分の改善の先行技術としては、Oリングの材料を、ニトリルゴムを主成分として、加硫剤としての有機過酸化物と、加硫助剤としての金属酸化物と、補強充填剤として塩基性けい酸とを含有するブタジエン−アクリロニトリル−アクリレート系の変性ニトリルゴムとしたものが提案されている(特許文献2)。これは、耐熱性を有する材料からOリングを形成する事により、モータの発熱等で軸受温度が100℃以上になる使用条件であっても、Oリングの破損等を防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−130309号公報
【特許文献2】特開2004−308839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この先行技術には、高温環境対応は可能であるも、上述した高速環境下での振動への対応が必ずしも考慮されているとは言えないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる問題を解決する為になされたものであり、その目的は、クリープ防止が出来るとともに、高速環境下での振動への対応が可能な転がり軸受を提供することである。上記目的を達成する為に、請求項1の発明は、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に設けられた複数の転動体と、外輪外周上に設けられた環状のOリングとを有し、Oリングには切り欠きが形成されている転がり軸受を特徴とする。
また請求項2の発明は、切り欠きは、Oリングの内方に形成されている転がり軸受を特徴とする。
また請求項3の発明は、切り欠きは、Oリングの側方に形成されている転がり軸受を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸受の外輪へ敷設されたOリングの切り欠きが広がったり閉じたりすることにより、軸受振動を低減できるとともに、クリープを防止できる。またOリングを、硬度がデュロメータで60程度の柔軟性を有するようにしたことにより、軸受振動を低減できるとともに、クリープを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例に係る転がり軸受の構成を拡大して示す断面図。
【図2】本発明の第2実施例に係る転がり軸受の構成を拡大して示す断面図。
【図3】本発明の第3実施例に係る転がり軸受の構成を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
以下、本発明の一実施の形態に係る転がり軸受について添付図面を参照して説明する。なお、転がり軸受には、例えばスラスト軸受やラジアル軸受を含めることができるが、以下では一例としてラジアル軸受について説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施例の転がり軸受1は、互いに相対回転可能に対向配置された内輪2及び外輪3と、内外輪間に転動自在に配列された複数の転動体4とを備えており、複数の転動体4は、保持器5により所定間隔で回転可能に保持されている。転動体4として玉やころを用いることが可能であるが、ここでは一例として玉を用いた例を示している。また、内外輪2、3間には、例えばシールやシールドなどの密封板6を設けることができる。これにより潤滑剤(例えば、グリース、油)の漏洩や異物(例えば、水、塵埃)の浸入が防止されている。なお、図1の転がり軸受には、密封板6の一例としてシールドが適用されている。
【0012】
外輪3の外周面3aには、周方向に沿って環状の2列の凹溝10、10が形成され、この両凹溝10、10内には環状のOリング11、11が設けられている。Oリング11は、硬度がデュロメータで70程度のニトリルゴム(NBR)で形成され、図1から明らかな通り、内方に切り欠き12を有している。この切り欠き12には、油、グリースが保持されている。従い、この切り欠き12により、Oリング11の弾性反発力は切り欠き11が広がることにより軸受から発生する振動を抑制する効果を発揮する。即ち、クリープ抑制作用を向上させながら且つ軸受の振動を抑制することができる。
使用される油、グリースは、シリコン系のものがかかる効果を発揮する上では有効である。また、Oリング11は、転がり軸受の使用目的や使用環境に応じて、例えばフッ素ゴム(バイトン)、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマなどの材料で形成することも可能である。
【0013】
なお、上述した実施の形態では、外輪3の外周面3aの両側にそれぞれ凹溝10を形成し、この凹溝10内にOリング11がそれぞれ設けられている転がり軸受について説明したが、これに限定されることは無く、例えば外輪の外周面の片側に凹溝を形成し、この凹溝内にOリングが設けられている転がり軸受であっても上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0014】
また、外輪外周とハウジングとの間のクリープ防止について説明したが、内輪内周に形成された凹溝にOリングを設けることにより、内輪と軸との間のクリープ防止を図ることも可能である。
【0015】
(実施例2)
本発明の第2実施例の転がり軸受20は、図2に示すように、切り欠き22をOリング21の側方(図中右方)に有する構成のみが第1実施例と異なる。かかる構成とする事により、側方に設けられた切り欠き22が閉じる作用によって振動低減効果を発揮する。この切り欠き22は、Oリング21の図中左方の側方に設けられていても勿論差し支えない。
【0016】
(実施例3)
本発明の第3実施例の転がり軸受30は、図3に示すように、前述した両実施例と異なり、Oリング31の断面は円形とされている。しかし、このOリング31は硬度がデュロメータで60程度の柔軟性を有するニトリルゴム(NBR)で形成されている。かかる構成とする事により、Oリング31は自身の柔軟性により振動低減効果を発揮する。
なお、実施例3のOリングに、実施例1又は2で説明したような切り欠きを設けることにより、更に振動低減効果を向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0017】
1、20、30 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
3a 外周面
4 転動体
5 保持器
6 密封板
10 凹溝
11,21,31 Oリング
12、22 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に設けられた複数の転動体と、外輪外周上に設けられた環状のOリングとを有し、Oリングには切り欠きが形成されていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
切り欠きは、Oリングの内方に形成されていることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
【請求項3】
切り欠きは、Oリングの側方に形成されていることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44344(P2013−44344A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180520(P2011−180520)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】