説明

転写装置、及び画像形成装置

【課題】本発明における第1の電荷量が第2の電荷量より大きくなるように調整しない場合に比べて、転写部材における導電層の抵抗値の変動が抑制された転写装置を提供する。
【解決手段】転写装置40が、電源56から給電部材52に電圧が印加されることによって、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって導電層50B内を流れる電荷の第1の電荷量が、芯材50Aから導電層50Bの中間転写体6に接する領域に向かって該導電層50B内を流れる電荷の第2の電荷量より大きくなるように、該第2の電荷量を調整する転写装置40を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる転写部材として、芯材上に導電層の設けられた転写ローラが知られている。電子写真方式の画像形成装置では、この転写ローラに電圧を印加して像保持体との間に電流を流すことで、像保持体上のトナー像を記録媒体や中間転写体等の被転写部材へ転写している。
【0003】
この転写ローラに設けられた導電層として、イオン導電剤を含む導電層を用いた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、転写ローラに電圧を印加する方法として、環境温度や環境湿度に応じて、転写ローラの芯材及び転写ローラの表面に、選択的に電圧を印加することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−84731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本発明における第1の電荷量の絶対値が第2の電荷量の絶対値より大きくなるように調整しない場合に比べて、転写部材における導電層の抵抗値の変動が抑制された転写装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、
請求項1に係る発明は、
表面にトナー像を保持する像保持体に被転写部材を介して向かい合うように配置され、導電性の芯材上にイオン導電剤を含有した導電層を有してなり、前記像保持体の表面に保持された前記トナー像を該被転写部材へ転写する転写部材と、
前記転写部材の表面に接触して配置され、該表面から該転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段から前記転写部材に電圧が印加されることによって、前記導電層における前記電圧印加手段と接する領域から前記芯材に向かって流れる電荷の第1の電荷量が、該芯材から前記導電層における前記像保持体に向かい合う領域に向かって流れる電荷の第2の電荷量より大きくなるように、該第2の電荷量を調整する調整手段と、
を備えた転写装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記調整手段は、前記芯材を接地する第1配線と、前記導電層における前記電圧印加手段と接する領域から前記芯材に向かって流れる電荷の一部が該芯材を介して該第1配線に向かって流れるように、該第1配線に流れる電荷の電荷量を調整する第1調整手段と、を有する請求項1に記載の転写装置である。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記第1調整手段は、抵抗素子、定電圧素子、または定電流源の何れかである請求項2に記載の転写装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記調整手段は、前記芯材を接地する第1配線と、前記第1配線を導通状態または非導通状態に切替える切替手段と、前記像保持体が前記被転写部材に接触した接触状態または該被転写部材から離れた非接触状態となるように、前記像保持体を移動させる移動手段と、前記像保持体上に保持された前記トナー像を前記被転写部材へ転写する画像形成時には、前記第1配線が非導通状態となり且つ前記像保持体が前記接触状態となるように前記切替手段及び前記移動手段を制御し、前記画像形成時以外の非画像形成時には、前記第1配線が導通状態となり且つ前記像保持体が前記非接触状態となるように前記切替手段及び前記移動手段を制御する制御手段と、を有する請求項1に記載の転写装置。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の転写装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び請求項5に係る発明によれば、本発明における第1の電荷量が第2の電荷量より大きくなるように調整しない場合に比べて、転写部材における導電層の抵抗値の変動が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、本発明における第1配線及び第1調整手段を有さない場合に比べて、簡易な構成で、転写部材における導電層の抵抗値の変動が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、本発明における第1調整手段として、抵抗素子、定電圧素子、または定電流源を用いない場合に比べて、転写装置の小型化が図れる。
請求項4に係る発明によれば、本発明における切替手段、移動手段、及び制御手段を備えない場合に比べて、像保持体の傷が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態の転写装置を拡大して示した模式図である。
【図3】第1の実施の形態の転写装置を拡大して示した模式図である。
【図4】第2の実施の形態の転写装置を拡大して示した模式図である。
【図5】第2の実施の形態の転写装置を拡大して示した模式図である。
【図6】転写部材の導電層の抵抗値測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、一の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1には、本実施の形態の画像形成装置の一例を示した。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の画像形成装置10は、所定方向(図1中、矢印X方向)に回転される環状の中間転写体6と、該中間転写体6の回転方向に沿って配列された複数の画像形成部20Y、画像形成部20M、画像形成部20C、及び画像形成部20Kと、各画像形成部20Y、画像形成部20M、画像形成部20C、及び画像形成部20Kに対応して設けられた転写部材50Y、転写部材50M、転写部材50C、及び転写部材50Kと、画像形成装置10に設けられた装置各部を制御する主制御部12と、を含んで構成されている。
【0016】
画像形成部20Yは、図1中矢印Aの方向に回転する像保持体1Yと、この像保持体1Yの表面を帯電する帯電器2Yと、帯電された像保持体1Y表面をY色(イエロー色)の画像情報に基づいて変調された露光光により露光し、像保持体1Y上に静電潜像を形成する潜像形成装置3Yと、Y色現像剤を保持する現像ロール34Yと、像保持体1Y上に形成された静電潜像をY色現像剤で現像して像保持体1Y上にトナー像(Y色)を形成する現像器4Yと、を含んで構成されている。
【0017】
同様に、画像形成部20Mは、図1中矢印Aの方向に回転する像保持体1Mと、この像保持体1Mの表面を帯電する帯電器2Mと、帯電された像保持体1M表面をM色(マゼンタ色)の画像情報に基づいて変調された露光光により露光し、像保持体1M上に静電潜像を形成する潜像形成装置3Mと、M色現像剤を保持する現像ロール34Mと、像保持体1M上に形成された静電潜像をM色現像剤で現像して像保持体1M上にトナー像(M色)を形成する現像器4Mと、を含んで構成されている。
【0018】
同様に、画像形成部20Cは、図1中矢印Aの方向に回転する像保持体1Cと、この像保持体1Cの表面を帯電する帯電器2Cと、帯電された像保持体1C表面をC色(シアン色)の画像情報に基づいて変調された露光光により露光し、像保持体1C上に静電潜像を形成する潜像形成装置3Cと、C色現像剤を保持する現像ロール34Cと、像保持体1C上に形成された静電潜像をC色現像剤で現像して像保持体1C上にトナー像(C色)を形成する現像器4Cと、を含んで構成されている。
【0019】
同様に、画像形成部20Kは、図1中矢印Aの方向に回転する像保持体1Kと、この像保持体1Kの表面を帯電する帯電器2Kと、帯電された像保持体1K表面をK色(ブラック色)の画像情報に基づいて変調された露光光により露光し、像保持体1K上に静電潜像を形成する潜像形成装置3Kと、K色現像剤を保持する現像ロール34Kと、像保持体1K上に形成された静電潜像をK色現像剤で現像して像保持体1K上にトナー像(K色)を形成する現像器4Kと、を含んで構成されている。
【0020】
画像形成部20Y、画像形成部20M、画像形成部20C、及び画像形成部20Kに含まれる装置及び各部材の材料構成は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる公知の構成が挙げられるため、ここでは詳細な説明を省略する。
また、以下では、上記Y色(イエロー)、M色(マゼンタ)、C色(シアン)、及びK色(ブラック)毎に備えられた各構成要素を、色毎に区別しないで説明する場合は、符号末尾の添字Y、M、C、Kを省略して説明する場合がある。
【0021】
各色の画像形成部20毎に設けられた転写装置40(転写装置40Y、転写装置40M、転写装置40C、及び転写装置40Kの各々)は、図2に示すように、円柱状の転写部材50(転写部材50Y、転写部材50M、転写部材50C、転写部材50K)、該転写部材50の外側に接触して配置された円柱状の給電部材52(給電部材52Y、給電部材52M、給電部材52C、及び給電部材52K)、及び給電部材52に電圧を印加する電源56(電源56Y、電源56M、電源56C、及び電源56K)を含んで構成されている。
【0022】
転写部材50は、像保持体1上のトナー像を中間転写体6の外側の面に一次転写する。
本実施の形態の画像形成装置10では、この転写部材50は、導電性で且つ円柱状の芯材50A上に、イオン導電剤を含有した導電層50Bの設けられた構成とされている。導電層50Bは、導電性または半導電性とされている。
【0023】
なお、本実施の形態では、「導電性」とは、体積抵抗率が10Ω・cm未満であることを意味する。また、「半導電性」とは、体積抵抗率が10Ωcm以上1013Ωcm以下であることを意味している。
【0024】
芯材50Aとしては、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属又は合金の材質、又は、導電性樹脂等が挙げられる。
【0025】
導電層50Bは、イオン導電剤を含んでおり、このイオン導電剤の含有量が調整されることで、導電層50Bの抵抗値(体積抵抗)が調整される。この導電層50Bは、イオン導電剤を含む導電性または半導電性の層であればよいが、例えば、バインダー材料にイオン導電剤を分散させた層が挙げられる。
【0026】
このバインダー材料としては、例えば、ポリウレタン、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)、ハイスチレンゴム(Hi styrene resin masterbactch),IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、ハロゲン化ブチルゴム(Halogenated butylrubber)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、水添加NBR(H−NBR)、EPDM(エチレンープロピレンージエン3元共重合ゴム)、EPM(エチレンプロピレンゴム)、NBRとEPDMとをブレンドしたゴム、CR(クロロプレンゴム)、ACM(アクリルゴム)、CO(ヒドリンゴム)、ECO(エピクロルヒドリンゴム)、塩素化ポリエチレン(Chlorinated−PE),VAMAC(エチレン・アクリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、AU(ウレタンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、NR(天然ゴム)、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)等のゴム材料が挙げられる。
【0027】
導電層50Bに含まれるイオン導電剤としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、通電抵抗変動の理由から、四級アンモニウム塩を用いることが望ましい。なお、これらのイオン導電剤は、単独で用いても、複数種類のものを併用しても構わない。
【0028】
給電部材52は、導電性の部材であり、転写部材50の外周面(すなわち、導電層50B)に接触して配置されている。本実施の形態では、この給電部材52は円柱状に構成されており、電源56に電気的に接続されている。電源56は、その一方の端子が給電部材52に電気的に接続されており、他端側の端子が接地されている。電源56から給電部材52に電圧が印加されると、転写部材50における給電部材52と接触した領域から該転写部材50に電圧が印加される。そして、この転写部材50への電圧の印加によって、転写部材50と像保持体1との間に、像保持体1上に保持されたトナー像が中間転写体6側(転写部材50側)に移行する電界が形成されることで、像保持体1上のトナー像が中間転写体6に転写される。
【0029】
この電源56から給電部材52を介して転写部材50の表面(導電層50B)に印加される電圧の極性は、正極であっても負極であってもよいが、正極であることが望ましい。この望ましい理由については、後述する。
【0030】
中間転写体6は、環状(ベルト状)に構成されており、その内側に設けられた、上記転写部材50と、複数の円柱状部材30A、円柱状部材30B、円柱状部材30C、及びバックアップロール14と、によって支持されている。中間転写体6は、これらの転写部材50、複数の円柱状部材30A、円柱状部材30B、円柱状部材30C、及びバックアップロール14の内の少なくとも1つが回転駆動され、その他の部材が従動回転されることで、像保持体1の回転方向(図1中、矢印A方向)とは逆方向(図1中、矢印X方向)に回転される。この中間転写体6としては、電子写真方式の画像形成装置に用いられる公知の材料構成の中間転写体が挙げられる。
【0031】
また、画像形成装置10は、図1に示すように、中間転写体6上のトナー像を記録媒体Pに転写する二次転写装置28と、記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する定着器9と、記録媒体Pを収納する用紙トレイTと、各像保持体1の表面の付着物を除去する除去部材(図示せず)と、各像保持体1表面の残留電荷を除去する除電器(図示せず)と、中間転写体6表面をクリーニングするベルトクリーナ8とを含んで構成されている。
【0032】
二次転写装置28は、環状の中間転写体6の内側に配置された円柱状または円筒状のバックアップロール14と、中間転写体6を介してバックアップロール14に向かい合うように該中間転写体6の外側に配置された円柱状または円筒状の二次転写部材17とを含んで構成されている。
【0033】
画像形成装置10に設けられた装置各部は、主制御部12に電気的に接続されている。
【0034】
上述のように構成された画像形成装置10では、画像形成装置10において記録媒体Pに形成する画像の画像データを含む印刷データが、図示を省略する入出力部を介して主制御部12へ入力されると、この印刷データは、主制御部12において各色(Y、M、C、K)の画像情報に分解された後に、各色に対応する像形成制御部22に出力される。そして、像形成制御部22の制御によって、各画像形成部20における潜像形成装置3が制御されて、レーザ光線Lが変調される。そして、この変調されたレーザ光線Lは、像保持体1の表面に照射される。これらの各像保持体1表面にレーザ光線Lが照射されることで、各像保持体1上には、対応する色の画像情報に応じた静電潜像が形成される。続いて、各色トナーの貯留された現像器4によって、各像保持体1上の静電潜像がトナーにより現像され、各像保持体1上にトナー像が形成される。
【0035】
各像保持体1上に形成されたトナー像は、転写装置40によって、中間転写体6の外側の面に順次一次転写される。この一次転写の終了した各像保持体1は、図示を省略する除去部材によって表面に付着した残留トナーなどの付着物が除去され、図示を省略する除電器により残留電荷が除去される。
【0036】
上記画像形成部20(画像形成部20Y、画像形成部20M、画像形成部20C、及び画像形成部20K)によって、中間転写体6の外側の面に順次一次転写されたトナー像は、中間転写体6の回転(図1及び図2中、矢印X方向)に伴って移動し、用紙トレイTから図示を省略する搬送部材によって二次転写装置28の位置にまで搬送されてきた記録媒体Pに二次転写される。この記録媒体Pに二次転写されたトナー像は、定着器9により記録媒体P上に定着される。これによって、所望の画像が記録媒体P上に形成される。
【0037】
なお、本実施の形態では、この中間転写体6の外側に一次転写されたトナー像を記録媒体Pに二次転写することで、記録媒体Pに画像を形成する一連の処理を、「画像形成処理」と称して説明する。
また、画像形成装置10の装置各部に図示を省略する電源から電力が供給されている期間中で、且つ上記「画像形成処理」以外の期間、すなわち、記録媒体Pに画像の形成されない期間を、「非画像形成時」と称して説明する。
【0038】
ここで、上述のように、転写装置40における転写部材50を、芯材50A上に導電層50Bを設けた構成とし、この導電層50Bにイオン導電剤を含有した構成とした場合には、導電層50Bに電子導電剤等のイオン導電剤以外の導電剤を含有した場合に比べて、導電層50B内の抵抗のばらつきが抑制されると考えられる。しかし、転写部材50に設けられた導電層50Bを、イオン導電剤を含有する構成とし、転写部材50の外周面(導電層50B)ではなく、該転写部材50の芯材50Aに電圧を印加した場合には、導電層50B内のイオン導電剤が該導電層50Bの外周方向に流れて、該導電層50B内において分極が生じ、導電層50Bの抵抗値が変動する場合があった。
【0039】
一方、転写部材50に設けられた導電層50Bを、イオン導電剤を含有する構成とし、転写部材50の外周面(導電層50B)に電圧を印加した場合には、中間転写体6及び像保持体1の回転に伴う転写部材50の回転(像保持体1とは逆方向に回転、図1及び図2中、矢印C方向参照)によって、転写部材50が半周するごとに電界の方向が反転し、導電層50Bの分極が抑制されると考えられる。しかし、イオン導電剤を含有する導電層50B内のイオンの移動度(導電層50B内に含まれる全イオン中の移動するイオンの割合)は、環境温度や環境湿度等によって変化するため、転写部材50の外周面に電圧を印加する構成としても、環境温度や環境湿度によっては、導電層50B内で発生する分極を抑制することが困難となり、導電層50Bの抵抗値の変動を抑制することが困難である場合があった。
また、転写部材50の表面(導電層50B)に印加される電圧の極性を正極とした場合には、特に、該電圧の極性を負極にした場合に比べて、電圧印加の継続時間に伴う抵抗値の変動が顕著となる場合があった。
【0040】
そこで、本実施の形態の画像形成装置10に設けられた転写装置40(転写装置40Y、転写装置40M、転写装置40C、及び転写装置40Kの各々)は、転写部材50、該転写部材50の外側に接触して配置された給電部材52、給電部材52に電圧を印加する電源56に加えて更に、調整部材54を含んだ構成とされている。
【0041】
この調整部材54は、電源56から給電部材52に電圧が印加されることによって(図2中、矢印60A参照)、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって導電層50B内を流れる電荷(図2中、矢印60B参照)の第1の電荷量が、芯材50Aから導電層50Bの中間転写体6に接する領域(像保持体1に向かい合う領域)に向かって該導電層50B内を流れる電荷(図2中、矢印60C参照)の第2の電荷量より大きくなるように、該第2の電荷量を調整する機能を有する。
【0042】
なお、調整部材54は、上記第1の電荷量が上記第2の電荷量より大きくなるように、該第2の電荷量を調整すればよいが、望ましくは、第1の電荷量が第2の電荷量の1.1倍以上2倍以下の範囲となるように調整することが望ましく、第1の電荷量が第2の電荷量の1.1倍以上1.5倍以下の範囲となるように調整することが更に望ましい。
【0043】
上記第1の電荷量及び上記第2の電荷量は、以下の方法によって測定される。
詳細には、第1の電荷量は電源56と給電部材52間に配置した電流計によって測定される。また、第2の電荷量は、第1の電荷量を示す電流値と、芯材50Aと調整部材間に配置した電流計によって測定された電流値と、の差として測定される。
【0044】
調整部材54は、上記機能を有する部材であればよいが、具体的には、第1配線54Aと、この第1配線54Aに設けられた調整素子54Bと、を含んだ構成が挙げられる(図2参照)。
【0045】
第1配線54Aは、該配線の一端側が芯材50Aに電気的に接続され、他端側が接地されている。調整素子54Bは、この第1配線54Aに設けられており、導電層50Bにおける給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって流れた電荷の一部が、該芯材50Aを介して第1配線54A側に流れるように、該第1配線54Aに流れる電荷の量を調整する。
【0046】
調整素子54Bとしては、具体的には、抵抗値が導電層50Bの厚み方向の抵抗値(体積抵抗値)に比べて低くなるように設定された抵抗素子や、給電部材52から転写部材50へ印加される電圧の電圧値の絶対値より小さい電圧値の定電圧を印加する定電圧素子や、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって導電層50B内を流れる電流値の絶対値より小さい電流値の定電流を生成する定電流源が挙げられる。
【0047】
なお、これらの抵抗素子、定電圧素子、及び定電流源の中でも、調整素子54Bとしては、給電部材52から転写部材50へ印加する電圧の電圧値の低減を図る観点から、定電圧素子または定電流源を用いることが望ましく、定電流源を用いることが更に望ましい。
【0048】
また、定電圧素子で印加する電圧の電圧値は、上述のように、給電部材52から転写部材50へ印加される電圧の電圧値の絶対値より小さい電圧値であればよいが、芯材50Aを電気的に開放した状態で給電部材52から転写部材50へ電圧を印加したときの該芯材50Aの電位と同じ電圧値とすることが望ましい。
このような電圧値を設定することで、導電層50Bの抵抗値が上昇しない状態では第1配線54Aに電荷が流れず、導電層50Bの抵抗値が上昇し始めたときに、第1配線54Aに電荷が流れる。このため、導電層50Bの抵抗の上昇にあわせて、芯材50Aから電荷を逃がし、導電層50Bの抵抗値の上昇が抑制される。
【0049】
なお、本実施の形態では、調整素子54Bとして挙げられる、上記抵抗素子の抵抗値や、定電圧素子の電圧値や、定電流源の電流値は、調整素子54B毎に予め設定されている場合を説明する。しかし、これらの抵抗値や、電圧値や、電流値を、環境温度や環境湿度に応じて上記条件を満たすように変更する構成としてもよい。
【0050】
これらの調整素子54Bにおける設定値(抵抗値、電圧値、または電流値)を、環境等に応じて変更する場合には、例えば、図3に示すように、これらの調整素子54Bの抵抗値、電圧値、または電流値を制御する制御部材54Cを、調整素子54Bに電気的に接続した構成とする。また、転写装置40に、画像形成装置10内の環境温度及び環境湿度を測定する測定装置54Dを設けて、制御部材54Cに電気的に接続する。
そして、制御部材54Cでは、所定時間毎に、これらの測定装置54Dからの測定結果を受けつけて、受け付けた測定結果に対応する、上記第1の電荷量が上記第2の電荷量より大きくなるような抵抗値、電圧値、または電流値となるように、調整素子54Bを制御してもよい。
【0051】
次に、第1の実施の形態に係る転写装置40の作用について説明する。
【0052】
上述のように構成された本実施の形態の転写装置40では、電源56から給電部材52へ電圧が印加されると(図2中、矢印60A参照)、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aを介して導電層50Bの中間転写体6に接する領域(像保持体1に向かい合う領域)に向かって電荷が流れる(図2中、矢印60B及び矢印60C参照)。
ここで、芯材50Aには、第1配線54Aが接続されており、第1配線54Aには上記調整素子54Bが設けられている。このため、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって導電層50B内を流れた電荷(図2中、矢印60B参照)の一部の電荷が、芯材50Aから第1配線54Aを介して調整素子54Bに向かう方向に流れ(図2中、矢印60D参照)、残りの電荷が、芯材50Aから中間転写体6に接する領域に向かう方向に流れ(図2中、矢印60C方向)、2方向に分岐されることとなる。
【0053】
このため、調整部材54によって、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって導電層50B内を流れる電荷(図2中、矢印60B参照)の第1の電荷量は、芯材50Aから導電層50Bの中間転写体6に接する領域(像保持体1に向かい合う領域)に向かって該導電層50B内を流れる電荷(図2中、矢印60C参照)の第2の電荷量より大きくなる。
【0054】
すなわち、本実施の形態の転写装置40では、電源56から給電部材52へ電圧が印加されているときには、転写部材50の導電層50Bでは、上記第1の電荷量が上記第2の電荷量より大きくなる。
このため、環境温度や環境湿度の変動によって、イオン導電剤を含有する導電層50B内のイオンの移動度が変動した場合であっても、調整部材54を有さない構成である場合に比べて、導電層50B内における分極が抑制され、導電層50Bの抵抗値の変動が抑制されると考えられる。
【0055】
また、本実施の形態の転写装置40では、環境温度や環境湿度の変動によって導電層50B内のイオンの移動度が変動した場合であっても、導電層50B内における分極が抑制されることから、転写部材50の表面(導電層50B)に印加される電圧の極性を、より抵抗値の変動の生じやすい正極とした場合であっても、調整部材54を有さない構成である場合に比べて、導電層50Bの抵抗値の変動が抑制されると考えられる。
【0056】
なお、本実施の形態では、各転写装置40は、画像形成装置10に一体的に設けられているものとして説明したが、転写装置40を、画像形成装置10に対して着脱されるように設けた構成としてもよい。
【0057】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
なお、第2の実施の形態に係る画像形成装置及び転写装置の構成は、第1の実施の形態で説明した画像形成装置10及び転写装置40と同様の構成であるため、同じ機能の部分については同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0058】
第1の実施の形態では、転写装置40は、電源56から給電部材52を介して転写部材50に電圧が印加されているときの全期間において、上記第1の電荷量が上記第2の電荷量より大きくなるように調整部材54が第1の電荷量を調整する場合を説明した。
【0059】
本実施の形態では、第1の実施の形態における調整部材54に変えて、調整部材55(図4及び図5参照)を設けた点が第1の実施の形態とは異なる点である。
そして、本実施の形態では、この調整部材55は、電源56から給電部材52を介して転写部材50に電圧が印加されているときの全期間における、導電層50Bの給電部材52と接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷の電荷量の「積算値」を第1の電荷量とし、芯材50Aから中間転写体6と接する領域に向かって流れる電荷の電荷量の「積算値」を第2の電荷量としている点が第1の実施の形態とは異なる。
【0060】
そして、この第2の実施の形態における転写装置41(図4参照)では、調整部材55によって、電源56から給電部材52を介して転写部材50に電圧が印加されているときの全期間における、導電層50Bの給電部材52と接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷の電荷量の「積算値」である第1の電荷量が、芯材50Aから中間転写体6と接する領域に向かって流れる電荷の電荷量の「積算値」である第2の電荷量より大きくなるように、該第2の電荷量を調整する機能を有する。
【0061】
なお、本実施の形態では、「第1の電荷量」は、電源56から給電部材52を介して転写部材50に電圧が印加されているときの全期間における、導電層50Bの給電部材52と接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷の電荷量の「積算値」を示すが、以下では、単に「第1の電荷量」と称して説明する。
同様に、本実施の形態では、「第2の電荷量」は、電源56から給電部材52を介して転写部材50に電圧が印加されているときの全期間における、芯材50Aから中間転写体6と接する領域に向かって流れる電荷の電荷量の「積算値」を示すが、以下では、単に「第2の電荷量」と称して説明する場合がある。
【0062】
次に、本実施の形態における転写装置41について詳細に説明する。
【0063】
図4及び図5に示すように、本実施の形態の転写装置41は、転写部材50、給電部材52、電源56、及び調整部材55を含んで構成されている。この転写装置41は、画像形成装置10に搭載されている(図1中、転写装置41Y、転写装置41M、転写装置41C、転写装置41K参照。これらを総称する場合には転写装置41と称する。)。
【0064】
調整部材55は、上述のように、電源56から給電部材52に電圧が印加されることによって(図4中、矢印61A参照)、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷(図4中、矢印61B参照)の積算値である第1の電荷量が、該芯材50Aから導電層50Bの中間転写体6に接する領域(像保持体1に向かい合う領域)に向かって流れる電荷(図2中、矢印61C参照)の積算値である第2の電荷量より大きくなるように調整する機能を有する。
【0065】
この調整部材55は、上記機能を有する構成であればよいが、具体的には、第1配線58A、切替部58、移動機構60、及び制御部62を含んだ構成が挙げられる。制御部62は、切替部58及び移動機構60に電気的に接続されている。
【0066】
第1配線58Aは、該配線の一端側が芯材50Aに接続され、他端側が接地されている。切替部58は、この第1配線54Aに設けられており、第1配線58Aが導通された導通状態、または第1配線58Aが非導通とされた非導通状態、の何れかの状態となるように切替える。すなわち、切替部58は、第1配線58Aを導通状態とすることで、第1配線54Aによって芯材50Aを接地した状態とし(図5参照)、第1配線58Aを非導通状態とすることで、第1配線54Aによって芯材50Aが電気的に開放された状態(図4参照)とする。この切替部58による切替えは、制御部62によって制御される。
【0067】
移動機構60は、像保持体1の回転軸に相当する位置に設けられた支持部材1Aの長尺方法両端部を支持すると共に、該支持部材1Aを、転写部材50に接する方向(図4中、矢印Y1参照)または転写部材50から離れる方向(図5中、矢印Y2参照)に向かって移動させる。この移動機構60は、制御部62によって制御される。
【0068】
なお、この制御部62は、転写装置41を画像形成装置10に搭載した場合には(図1参照)、画像形成装置10の装置各部を制御する主制御部12に電気的に接続した構成とすればよい。
【0069】
次に、第2の実施の形態に係る転写装置41の作用について説明する。
なお、本実施の形態では、転写装置41が画像形成装置10に搭載され、制御部62が主制御部12に電気的に接続されているものとして説明する。
【0070】
上述のように構成された本実施の形態の転写装置41の制御部62では、主制御部12から画像形成処理を示す信号が入力されると、像保持体1が中間転写体6に接触した接触状態となるように移動機構60を制御すると共に、第1配線58Aが非導通状態となるように切替部58を制御する(図4参照)。また、制御部62は、電源56から給電部材52への電圧印加を開始するように電源56を制御する。
【0071】
制御部62によるこの制御によって、図4に示すように、画像形成装置10における画像形成時には、芯材50Aが電気的に開放した状態とされ、像保持体1が中間転写体6を介して転写部材50に押圧された状態となる。そして、この芯材50Aが電気的に開放状態とされ、像保持体1が中間転写体6を介して転写部材50に近づく方向に押圧された状態で、電源56から給電部材52に電圧が印加されると、導電層50Bの給電部材52に接する領域から芯材50Aを介して中間転写体6に接する領域に向かって、導電層50B内を電荷が流れる。このとき、芯材50Aは電気的に開放状態とされていることから、画像形成時には、給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷(図4中、矢印61B参照)の電荷量は、芯材50Aから導電層50Bの中間転写体6と接する領域に向かって流れる電荷(図4中、矢印61C参照)の電荷量と、同じとなると考えられる。
【0072】
一方、制御部62では、主制御部12から非画像形成時を示す信号が入力されると、像保持体1が中間転写体6から離間した非接触状態となるように移動機構60を制御すると共に、第1配線58Aが導通状態となるように切替部58を制御する(図5参照)。また、制御部62は、電源56から給電部材52への電圧印加を開始するように電源56を制御する。
【0073】
制御部62によるこの制御によって、図5に示すように、画像形成装置10における非画像形成時には、第1配線58Aが導通状態とされて芯材50Aが接地され、像保持体1が中間転写体6から離間した状態となる。そして、芯材50Aが接地され、像保持体1が中間転写体6から離間した状態で、電源56から給電部材52に電圧が印加されると、導電層50Bにおける給電部材52と接する領域から芯材50Aに向かって流れた電荷は、芯材50Aから中間転写体6に向かう方向へは流れず、該芯材50Aから第1配線58A側へと流れる。
このため、非画像形成時には、給電部材52に接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷の第1の電荷量(図5中、矢印61B参照)は、芯材50Aから導電層50Bの中間転写体6と接する領域に向かって流れる電荷の第2の電荷量より大きくなると考えられる。勿論、芯材50Aからの第1配線58Aに抵抗素子、定電圧素子、電源を接続し流れる電流量を制御したり、芯材50Aへの電荷量を画像形成時と非画像形成時で適宜変更することは可能である。
【0074】
従って、本実施の形態の転写装置41では、電源56から給電部材52へ電圧が印加されているときの全期間における、導電層50Bの給電部材52と接する領域から芯材50Aに向かって流れる電荷の電荷量の積算値である第1の電荷量は、芯材50Aから中間転写体6と接する領域に向かって流れる電荷の電荷量の積算値である第2の電荷量より大きくなる。
【0075】
このため、環境温度や環境湿度の変動によって、イオン導電剤を含有する導電層50B内のイオンの移動度が変動した場合であっても、調整部材55を有さない構成である場合に比べて、導電層50B内における分極が抑制され、導電層50Bの抵抗値の変動が抑制されると考えられる。
【0076】
また、本実施の形態の転写装置41では、環境温度や環境湿度の変動によって導電層50B内のイオンの移動度が変動した場合であっても、導電層50B内における分極が抑制されることから、転写部材50の表面(導電層50B)に印加される電圧の極性を正極とした場合であっても、調整部材55を有さない構成である場合に比べて、導電層50Bの抵抗値の変動が抑制されると考えられる。
【0077】
なお、この非画像形成時には、像保持体1の摩耗等の物理的な傷害を抑制する観点から、像保持体1の回転を停止するように、像保持体1の回転駆動を制御する駆動部材(図示省略)を制御することが望ましい。
【0078】
また、本実施の形態においては、非画像形成時の期間中、上記図5に示す状態(第1配線58Aが導通状態とされて芯材50Aが接地され、像保持体1が中間転写体6から離間された状態)となるように制御する場合を説明したが、この図5に示す状態を継続する時間は、非画像形成時の期間中の全期間に限られず、非画像形成時の期間中の特定の期間のみであってもよい。
【0079】
なお、本実施の形態では、各転写装置41は、画像形成装置10に一体的に設けられているものとして説明したが、転写装置41を、画像形成装置10に対して着脱されるように設けてもよい。
【0080】
なお、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、画像形成装置10は、いわゆるタンデム型のカラー画像形成装置である場合を説明したが、本実施の形態における画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であり、且つ像保持体(像保持体1)から中間転写体(中間転写体6)に一次転写されたトナー像を、二次転写装置(二次転写装置28)によって記録媒体Pに二次転写することで該記録媒体P上に画像を形成する画像形成装置であればよく、タンデム型カラー画像形成装置に限定されない。例えば、単色の画像を形成する画像形成装置であってもよいし、4サイクル型カラー画像形成装置であってもよい。
【実施例】
【0081】
以下、本実施の形態の画像形成装置を実施例によって具体的に説明するが、これらの実施例によって限定されない。
【0082】
[実施例A、比較例A]
画像形成装置として、図1に示すタンデム型の画像形成装置(富士ゼロックス社製Docu Centre−IV C5570)を用意した。なお、この画像形成装置で用いられるトナーは、負極に帯電されたトナーである。
【0083】
なお、転写部材(図1中、転写部材50参照)としては、下記構成の転写部材を用いた。
―転写部材Aの調整―
転写部材Aとして、ステンレススチール製の芯材(直径8mmの導電性の芯材(芯材50A))を、イオン導電剤として4級アンモニウム塩である変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウムの過塩素酸塩を含むウレタン発泡層からなる導電層(厚み10mm)で被覆した、図2に示す構成の転写部材50としての転写部材Aを調整した。
【0084】
具体的には、イオン導電剤として4級アンモニウム塩としての変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウムの過塩素酸塩を0.15部質量%と、ポリオール、イソシアネートと、を不活性ガスを導入、機械攪拌することで発泡させ、金型に注型し140℃30分キュアーさせた。研磨により外径が18mmの円柱状の転写部材Aを得た。
【0085】
この転写部材Aについて、下記方法にて導電層の抵抗値を測定した。測定結果を表1に示した。
【0086】
―導電層の抵抗値の測定―
転写部材の導電層(図2中、導電層50B参照)の抵抗値は、常温・常湿環境(22℃、55%RH)の下で、下記方法により測定した。
詳細には、図6に示すように、導電層50Bの設けられた転写部材50(転写部材A)を金属板70上において、芯材50Aの両端部に各500gの荷重をかけて、芯材50Aと金属板70との間に電圧を印加して、10秒後の電流値I(A)を読み取り、以下の式により計算することにより求めた。そして、転写部材50を芯材50Aを回転軸として周方向に60°ずつ回転させ、回転させた位置毎に同じ条件で電圧を印加して電流値Iを読取り、抵抗値を求めた。そして、得られた抵抗値の平均値を、「導電層の抵抗値」として測定した。
なお、なお、この抵抗値の測定は、芯材50Aに印加する電圧の電圧値を、100V、500V、1000V、2000V、及び3000Vの各々とした場合について行った。
【0087】
導電層の抵抗値(R)=電圧(V)/電流(I)
【0088】
―転写部材Bの調整―
転写部材Bとして、ステンレススチール製の芯材(直径8mmの導電性の芯材(芯材50A))を、イオン導電剤としてのエピクロルヒドリンゴムと、バインダーとしてのNBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)と、を含む導電層(厚み10mm)で被覆した、図2に示す構成の転写部材50としての転写部材Bを調整した。
【0089】
具体的には、エピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン社製、Gechron3103、エチレンオキサイド含有量:35モル%)70質量部と、アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製、ニポールDN−219、アクリロニトリル含有量:33.5質量%)30質量部とを混合し、発泡加硫剤として、硫黄(鶴見化学工業社製、200メッシュ)1質量部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラ−M)1.5質量部と、発泡剤として、ベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部と、を加え、オープンローラで混練した。その混練した混合物(ゴム組成物)を芯軸に巻き付け、160℃で20分間加硫発泡させ、10mm厚の導電層を形成し、外径が18mmの円柱状の転写部材Bを得た。
調整した転写部材Bについて、上述した方法にて導電層の抵抗値を測定した。測定結果を表1に示した。
【0090】
−転写部材Cの調整−
上記転写部材Aの調整において用いたイオン導電剤に変えて、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム0.3質量部を用いた以外は、転写部材Aと同様にして転写部材Cを調整した。調整した転写部材Cについて、上述した方法にて導電層の抵抗値を測定した。測定結果を表1に示した。
【0091】
―転写部材Dの調整―
上記転写部材Aの調整において用いたイオン導電剤に変えて、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドの20%イソプロパノール溶液1質量部を用いた以外は、転写部材Aと同様にして転写部材Dを調整した。調整した転写部材Dについて、上述した方法にて導電層の抵抗値を測定した。測定結果を表1に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
(実施例1)
上記に用意した、図1に示すタンデム型の画像形成装置(富士ゼロックス社製Docu Centre−IV C5570)に、一次転写ロールとして、上記転写部材Aを搭載し、図1に示す転写部材50として転写部材Aを搭載した構成とした。この構成とした画像形成装置において、常温・常湿環境(22℃、55%RH)の下で、図4及び図5を用いて説明した転写装置41(調整部材55)による処理と同じ処理を行った。なお、該画像形成装置の駆動時には、像保持体への露光は行わなかった。
【0094】
具体的には、まず、転写部材A(図1中の転写部材50に相当)の芯材を電気的に開放した状態(図4に示す状態)とし、該転写部材Aの表面に接触して配置された給電部材52としての金属棒(ステンレススチール製の円柱状部材(直径8mmの導電性の芯材)(給電部材52に相当))に90μAの定電流(正極)を流した。
この状態で、該画像形成装置における中間転写ベルト(図1中の中間転写体6に相当)、像保持体(図1中の像保持体1)、及び転写部材A(図1中の転写部材50に相当)を、周速250mm/secで回転させ、1時間毎に、10分間、図5に示す状態とする駆動処理を1サイクルとして、18サイクル連続して行なった。これによって、芯材から中間転写ベルトに接する側に向かって導電層内を電荷が流れる時間を18時間とした。
【0095】
なお、この図5に示す状態では、転写部材Aの芯材を銅電線に接続して接地すると共に、像保持体を中間転写ベルト(中間転写体6に相当)から離間した状態とし、像保持体の回転を停止した。
【0096】
<評価>
本実施例における18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Aの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0097】
(実施例2)
上記実施例1で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、実施例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0098】
(実施例3)
上記実施例1で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Cを用いた以外は、実施例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Cの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0099】
(実施例4)
上記実施例1で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Dを用いた以外は、実施例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Dの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0100】
(比較例1)
上記実施例1では、常温・常湿環境(22℃、55%RH)の下で、図4及び図5を用いて説明した転写装置41(調整部材55)による処理と同じ処理を行った。しかし、本比較例では、図4の状態を維持した。
【0101】
具体的には、転写部材A(図1中の転写部材50に相当)の芯材を電気的に開放した状態(図4に示す状態)とし、該転写部材Aの表面に接触して配置された給電部材52としての金属棒(ステンレススチール製の円柱状部材(直径8mmの導電性の芯材)(給電部材52に相当))に90μAの定電流(正極)を流した。
この状態で、該画像形成装置における中間転写ベルト(図1中の中間転写体6に相当)、像保持体(図1中の像保持体1)、及び転写部材A(図1中の転写部材50に相当)を、周速250mm/secで回転させ、1時間毎に、10分間、給電部材52から転写部材Aへの電圧印加を停止(遮断)すると共に、これらの部材(中間転写ベルト、像保持体、及び転写部材A)の回転のみを停止する駆動処理を1サイクルとした。そして、の1サイクルの駆動処理を、18サイクル連続して行なった。
【0102】
<評価>
本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Aの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0103】
(比較例2)
上記比較例1では、給電部材52としての金属棒(ステンレススチール製の円柱状部材(直径8mmの導電性の芯材)(給電部材52に相当))に流す電流を90μAの定電流(正極)としたが、本比較例では、電流の極性を反転させて、該金属棒に流す電流を−90μAの低電流(負極)とした。この点以外は、比較例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Aの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0104】
(比較例3)
上記比較例1で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、比較例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0105】
(比較例4)
上記比較例2で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、比較例2と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0106】
(比較例5)
上記比較例1で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Cを用いた以外は、比較例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Cの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0107】
(比較例6)
上記比較例2で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、比較例2と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0108】
(比較例7)
上記比較例1で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Dを用いた以外は、比較例1と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Dの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0109】
(比較例8)
上記比較例2で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Dを用いた以外は、比較例2と同じ条件で18サイクルの連続した駆動処理を行い、該18サイクルの連続した駆動処理を行った後の、転写部材Dの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本比較例における18サイクルの連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表3に示した。
【0110】
(実施例5)
上記に用意した、図1に示すタンデム型の画像形成装置(富士ゼロックス社製Docu Centre−IV C5570)に、一次転写ロールとして、上記転写部材Aを搭載し、図1に示す転写部材50として転写部材Aを搭載した構成とした。この構成とした画像形成装置において、常温・常湿環境(22℃、55%RH)の下で、図2を用いて説明した転写装置40(調整部材54)による処理と同じ処理を行った。なお、該画像形成装置の駆動時には、像保持体への露光は行わなかった。
【0111】
具体的には、まず、転写部材A(図1中の転写部材50に相当)の芯材に、銅電線(第1配線54Aに相当)の一端を接続し、該銅電線の他端を接地した。そして、この銅電線の長尺方向の中央部に、調整素子54Bとして、抵抗値が75MΩである抵抗素子(日本ファインケム社製、商品名FPタイプ)を設けた。これによって、転写部材Aの芯材を、抵抗素子を介して接地した状態とした。
【0112】
そして、該転写部材Aの表面に接触して配置された給電部材52としての金属棒(ステンレススチール製の円柱状部材(直径8mmの導電性の芯材)(給電部材52に相当))に110μAの定電流(正極)を流した。このとき、該銅電線(第1配線54Aに相当)に流れる電流は20μAであった。このため転写部材Aの導電層における給電部材52に接触する領域から芯材に向かって流れる電荷(110μA)が、該芯材から導電層における中間転写ベルト(中間転写体6)に向かって流れる電荷(90μA)より大きい状態とした(図2に示す状態)。
【0113】
この状態で、該画像形成装置における中間転写ベルト(図1中の中間転写体6に相当)、像保持体(図1中の像保持体1)、及び転写部材A(図1中の転写部材50に相当)を、周速250mm/secで回転させる駆動処理を18時間継続しておこなった。これによって、芯材から中間転写ベルトに接する側に向かって導電層内を電荷が流れる時間を18時間とした。
【0114】
<評価>
本実施例における18時間の連続した駆動処理を行った後の、転写部材Aの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18時間の連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0115】
(実施例6)
上記実施例5で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、実施例5と同じ条件で18時間の連続した駆動処理を行い、該18時間の連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18時間の連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0116】
(実施例7)
上記実施例5では調整素子54Bとして抵抗素子を用いたが、本実施例では、この抵抗素子に変えて、定電圧値が1500Vである定電圧素子(日本ケミコン株式会社製、商品名セラミックバリスタTNR)を用いた以外は、実施例5と同じ条件で18時間の連続した駆動処理を行い、該18時間の連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18時間の連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
なお、この定電圧素子の定電圧値は、該連続した駆動処理を行う前の転写部材Aに、駆動処理時に給電部材52を介して印加する電圧と同じ電圧値の電圧を給電部材52を介して印加したときの、該転写部材Aの芯材の電位と同じ(1500V)となるように設定した値である。
【0117】
(実施例8)
上記実施例7で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、実施例7と同じ条件で18時間の連続した駆動処理を行い、該18時間の連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18時間の連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表2に示した。
【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
(実施例9)
上記に用意した、図1に示すタンデム型の画像形成装置(富士ゼロックス社製Docu Centre−IV C5570)に、一次転写ロールとして、上記転写部材Aを搭載し、図1に示す転写部材50として転写部材Aを搭載した構成とした。この構成とした画像形成装置において、低温・低湿環境(10℃、15%RH)と、高温・高湿環境(28℃、85%RH)の下で、図2を用いて説明した転写装置40(調整部材54)による処理と同じ処理を行った。なお、該画像形成装置の駆動時には、像保持体への露光は行わなかった。
【0121】
具体的には、まず、転写部材A(図1中の転写部材50に相当)の芯材に、銅電線(第1配線54Aに相当)の一端を接続し、該銅電線の他端を接地した。そして、この銅電線の長尺方向の中央部に、調整素子54Bとして、生成する電流値を変更可能な定電流源(トレック社製、商品名610D)を設けた。
【0122】
そして、該転写部材Aの表面に接触して配置された給電部材52としての金属棒(ステンレススチール製の円柱状部材(直径8mmの導電性の芯材)(給電部材52に相当))に110μAの定電流(正極)を流した。そして、芯材(芯材50A)から該銅電線(第1配線54Aに相当)に流れる電流が常に20μAとなるように、調整素子54Bとして設けた定電流源の電流値を調整した。
このため、本実施例では、転写部材Aの導電層における給電部材52に接触する領域から芯材に向かって流れる電荷(110μA)が、該芯材から導電層における中間転写ベルト(中間転写体6)に向かって流れる電荷(90μA)より大きく、且つこの電荷量の差が駆動処理中維持されるように調整した(図2に示す状態)。
【0123】
この状態で、該画像形成装置における中間転写ベルト(図1中の中間転写体6に相当)、像保持体(図1中の像保持体1)、及び転写部材A(図1中の転写部材50に相当)を、周速250mm/secで回転させる駆動処理を18時間継続しておこなった。これによって、芯材から中間転写ベルトに接する側に向かって導電層内を電荷が流れる時間を18時間とした。
【0124】
<評価>
本実施例において、低温・低湿環境(10℃、15%RH)と、高温・高湿環境(28℃、85%RH)と、の各々の環境下で、該18時間の連続した駆動処理を行った後の、転写部材Aの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18時間の連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表4に示した。
【0125】
(実施例10)
上記実施例9で用いた転写部材Aに変えて、転写部材Bを用いた以外は、実施例9と同じ条件で、低温・低湿環境(10℃、15%RH)と、高温・高湿環境(28℃、85%RH)と、の各々の環境下で18時間の連続した駆動処理を行い、該18時間の連続した駆動処理を行った後の、転写部材Bの導電層の抵抗値を、上述した測定方法で測定した。そして、本実施例における18時間の連続した駆動処理を行う前の抵抗値(表1参照)との差を求め、求めた結果を表4に示した。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例1と比較例1は、実施例1では図4及び図5を用いて説明した転写装置41(調整部材55)による処理と同じ処理を行ない、比較例1では図4の状態を維持した点が異なる。表2及び表3に示すように、実施例1は、比較例1に比べて、導電層の抵抗値の変動が抑制されていた。
同様に、実施例2と比較例3は、実施例2では図4及び図5を用いて説明した転写装置41(調整部材55)による処理と同じ処理を行ない、比較例3では図4の状態を維持した点が異なる。表2及び表3に示すように、実施例2は、比較例3に比べて、導電層の抵抗値の変動が抑制されていた。
【0128】
また、表3に示すように、転写部材の導電層に正極の電圧を印加した場合には、負極の電圧を印加した場合に比べて、導電層の抵抗値の変動が大きかった(比較例1と比較例2、比較例3と比較例4の比較結果)。しかし、表2及び表3に示すように、この抵抗値の変動の大きい正極の電圧を印加した場合であっても、対応する実施例1及び実施例2では、比較例1及び比較例3に比べて抵抗値の変動が抑制されていた。
【0129】
また、表2に示すように、転写装置として、図2に示す転写装置40の構成を用いた実施例5〜実施例8では、図4及び図5に示す転写装置41の構成を用いた実施例1〜実施例4に比べて、導電層の抵抗値の変動が更に抑制された。
【0130】
また、表2及び表4に示すように、図2に示す調整素子54Bとして、定電圧素子及び定電流源を用いた実施例では、抵抗素子を用いた実施例に比べて、導電層の抵抗値の変動が更に抑制された。また、表2及び表4に示すように、図2に示す調整素子54Bとして、定電流源を用い、生成する電流値を調整した実施例では、定電圧素子を用いた実施例に比べて、導電層の抵抗値の変動が更に抑制された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像を保持する像保持体に被転写部材を介して向かい合うように配置され、導電性の芯材上にイオン導電剤を含有した導電層を有してなり、前記像保持体の表面に保持された前記トナー像を該被転写部材へ転写する転写部材と、
前記転写部材の表面に接触して配置され、該表面から該転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段から前記転写部材に電圧が印加されることによって、前記導電層における前記電圧印加手段と接する領域から前記芯材に向かって流れる電荷の第1の電荷量が、該芯材から前記導電層における前記像保持体に向かい合う領域に向かって流れる電荷の第2の電荷量より大きくなるように、該第2の電荷量を調整する調整手段と、
を備えた転写装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
前記芯材を接地する第1配線と、
前記導電層における前記電圧印加手段と接する領域から前記芯材に向かって流れる電荷の一部が該芯材を介して前記第1配線に向かって流れるように、該第1配線に流れる電荷の電荷量を調整する第1調整手段と、
を有する請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記第1調整手段は、抵抗素子、定電圧素子、または定電流源の何れかである請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記芯材を接地する第1配線と、
前記第1配線を導通状態または非導通状態に切替える切替手段と、
前記像保持体が前記被転写部材に接触した接触状態または該被転写部材から離れた非接触状態となるように、前記像保持体を移動させる移動手段と、
前記像保持体上に保持された前記トナー像を前記被転写部材へ転写する画像形成時には、前記第1配線が非導通状態となり且つ前記像保持体が前記接触状態となるように前記切替手段及び前記移動手段を制御し、前記画像形成時以外の非画像形成時には、前記第1配線が導通状態となり且つ前記像保持体が前記非接触状態となるように前記切替手段及び前記移動手段を制御する制御手段と、
を有する請求項1に記載の転写装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の転写装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−68518(P2012−68518A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214289(P2010−214289)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】