説明

転写装置および画像形成装置

【課題】良好な転写効率を得つつ転写画像ずれを抑制し、転写ベルトの蛇行を抑制する。
【解決手段】弾性層を有しかつトナー像を担持する中間転写ベルト8と、弾性層12bを有するとともに転写ベルト8に当接して形成される転写ニップ11cで転写ベルト8のトナー像を転写材15に転写する転写ローラー12と、転写ベルト8を介して転写ローラー12と圧接するベルト駆動ローラー9とを有し、転写ニップ11cは、転写ローラー12とベルト駆動ローラー9との圧接による圧接ニップ11aと、ベルト駆動ローラー9と接触していない領域の転写ベルト8と転写ローラー12との接触による接触ニップ11bとを含み、転写ローラー12の回転方向の接触ニップ11bの転写ローラー12の周面の距離は転写ローラー12の回転方向の圧接ニップ11aの転写ローラー12の周面の距離の2分の1より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性層を有する転写ベルトと弾性層を有する転写ローラーとを用いて、転写ベルトに担持された像を転写材に転写する転写装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体現像剤を用いる電子写真方式の画像形成装置では、転写ベルトに担持された像の転写紙等の転写材への転写効率が問題となる。特に、転写ベルトに担持されるとともに複数色が重ねられた像を転写材に転写する場合に、転写効率の低下が問題となる。
【0003】
そこで、転写ローラーを転写ベルトに圧接した圧接ニップと、転写ベルトを転写ローラーに巻き掛けるとともに圧接ニップによりはるかに長く形成された巻掛けニップとを含む転写ロングニップを用いて、転写を行う画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置は、転写ロングニップにおいて、転写ベルトの像に転写材を圧接させるとともに転写バイアスが作用する時間を長くすることで、転写効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−166611号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、転写ロングニップを用いた場合、巻掛けニップが長いと、転写時に、転写材に転写された画像が引きずられてずれを生じる場合がある。この画像ずれの原因として、転写ロングニップでのベルト表面速度変化が考えられる。一般に転写ローラーの表層部が転写ローラーのバックアップローラーより軟らかく形成されるので、圧接ニップでは転写ローラーの表層部側が凹み、像を担持する側の転写ベルトの表面がこの凹みに沿って伸張する方向に屈曲する。また、巻掛けニップでは転写ベルトの表面が転写ローラーの外周面に沿って圧縮する方向に屈曲する。このように、転写ニップで転写ベルトの表面の屈曲方向が異なるため、圧接ニップと巻掛けニップとで転写ベルトの表面速度が変化する。そして、巻掛けニップが長くなると、この転写ベルトの表面速度の変化が大きくなるため、画像ずれが生じ易くなる。
【0006】
また、圧接ニップでは転写ベルトの弾性層が圧接荷重により圧縮されることから圧接ニップ中でのベルトの実長さが短くなる。一方、巻掛けニップでは転写ベルトに圧接荷重がかからないため、転写ベルトの弾性層はほとんど変形しない。このため、圧接ニップと巻掛けニップとで転写ベルトの表面速度に差が生じる。
【0007】
更に、転写ロングニップを用いると、転写ベルトと転写ローラーとの接触面積および転写ベルトと転写材との接触面積がいずれも大きくなる。このため、転写材移動方向と直交またはほぼ直交する方向における圧接荷重の差、転写ニップでの転写材の位置(所定位置と異なる位置)、あるいは転写材の姿勢(スキュー)によって、転写ベルトが蛇行しやすくなる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、良好な転写効率を得つつ、転写画像のずれを抑制し、しかも、転写ベルトの蛇行を抑制することのできる転写装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係る転写装置および画像形成装置では、転写ニップが圧接ニップと接触ニップとを含み、圧接ニップのみによる転写ニップに比べて長い転写ロングニップとして形成される。したがって、圧接ニップのみによる転写に比べて良好な転写効率を得ることができる。
【0010】
また、転写ベルトが転写ローラーに巻き掛けられる接触ニップ幅が圧接ニップ幅の2分の1より小さくされる。これにより、転写ローラーに巻き掛けられる転写ベルトの巻掛け量が少なくなることから、転写ベルトは転写ローラーの外周面に沿って圧縮される方向にほとんど屈曲しない。したがって、転写ニップで転写ベルトの表面の屈曲方向がほとんど変化しないため、圧接ニップと接触ニップとで転写ベルトの表面速度の変化が抑制される。その結果、転写時に、転写材に転写された画像のずれを抑制することが可能となる。
【0011】
更に、圧接ニップが転写ローラー側に突出する形状である場合、転写ローラーの半径がバックアップローラーの半径より大きくされることで、転写ベルトを圧接ニップの終了端からバックアップローラー側にガイドしやすくなる。これにより、接触ニップの接触ニップ幅を小さくでき、転写ローラーの外周面に沿う転写ベルトの表面の圧縮方向の屈曲を更に効果的に抑制することが可能となる。
【0012】
更に、圧接ニップが転写ローラー側に突出する形状である場合、転写ローラーの弾性層の厚さが接触ニップ幅より大きくされることで、同様に張架ローラーが転写ベルトを圧接ニップの終了端からバックアップローラー側にガイドしやすくなる。これにより、接触ニップ幅を小さくでき、転写ローラーの外周面に沿う転写ベルトの表面の圧縮方向の屈曲を更に効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
更に、圧接ニップが転写ローラー側に突出する形状である場合、転写ベルトの弾性層の厚さが接触ニップ幅より小さくされることで、同様に張架ローラーが転写ベルトを圧接ニップの終了端からバックアップローラー側にガイドしやすくなる。これにより、接触ニップ幅を小さくでき、転写ローラーの外周面に沿う転写ベルトの表面の圧縮方向の屈曲を更に効果的に抑制することが可能となる。
【0014】
更に、転写ニップを転写ロングニップとしても、転写材の移動方向における転写ニップの幅を前述の特許文献1に記載の画像形成装置に比べて十分に短くすることができる。すなわち、転写ベルトと転写ローラーとの接触面積および転写ベルトと転写材との接触面積をいずれも小さくできる。これにより、転写材の移動方向と直交またはほぼ直交する方向における圧接荷重の差、転写ニップでの転写材の位置(所定位置と異なる位置)、あるいは転写材の姿勢(スキュー)による転写ベルトへの影響を小さくできる。したがって、転写ベルトの蛇行を効果的に抑制することができる。
【0015】
更に、バックアップローラーより転写ベルトの移動方向に、張架ローラーを配設することにより、圧接ニップを通過した転写ベルトの移動方向を安定させることが可能となる。これにより、圧接ニップを通過した転写ベルトの移動方向のふらつきを抑制して、接触ニップを確実に形成することができるとともに、接触ニップ幅を圧接ニップ幅より小さくすることがより確実に実現可能となる。
こうして、本発明に係る転写装置および画像形成装置によれば、良好な転写効率を得つつ、転写画像のずれを抑制し、しかも、転写ベルトの蛇行を抑制することが可能となる。
【0016】
また、転写ローラーに転写材把持部材が配設される。この転写材把持部材により転写材を把持した状態で、転写ベルトに担持された像を転写材に転写するので、転写後に転写材
を転写ベルトから確実に剥離することが可能となる。
【0017】
更に、転写ローラーに空気が流動するノズル孔が配設される。転写ローラーの外部の空気がこのノズル孔を流動して転写ローラーの内部に流入することにより、転写材が転写ローラーに吸着される。このようにノズル孔により転写材を転写ローラーに吸着させた状態で、転写ベルトに担持された像を転写材に転写するので、転写後に転写材を転写ベルトから確実に剥離することが可能となる。また、転写後に転写ローラーの内部の空気がノズル孔を流動して転写ローラーの外部に流出することにより、転写材が転写ローラーから容易に剥離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第1例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】(a)は第1例の二次転写部の部分拡大図、(b)は(a)における二次転写ニップの部分拡大図である。
【図3】(a)および(b)は、二次転写ニップの測定方法を説明する図である。
【図4】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図である。
【図5】第2例の二次転写部を示す、図2(a)と同様の部分拡大図である。
【図6】本発明の画像形成装置の実施の形態の第3例を示し、(a)は図2(a)と同様の二次転写部の部分拡大図、(b)は(a)におけるVIB−VIB線に沿う断面図である。
【図7】本発明の画像形成装置の実施の形態の第4例を示す、図2(a)と同様の二次転写部の部分拡大図である。
【図8】実施例の転写効率の測定に用いた画像のパターンを示し、(a)は2×2ドット画像を示す図、(b)は8×8ドット画像を示す図、および(c)はベタ画像を示す図である。
【図9】実施例の画像ずれの評価に用いた画像のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の第1例の一部を模式的にかつ部分的に示す図、図2(a)は第1例の二次転写部の部分拡大図、図2(b)は(a)における二次転写ニップの部分拡大図である。
【0020】
この第1例の画像形成装置1は、トナー粒子とキャリアー液とを含む液体現像剤を用いて画像形成を行う。図1に示すように、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各潜像を担持する潜像担持体である感光体2Y,2M,2C,2Kを備えている。各感光体2Y,2M,2C,2Kは、水平またはほぼ水平にタンデムに配置されている。ここで、各感光体2Y,2M,2C,2Kにおいて、2Yは
イエローの感光体、2Mはマゼンタの感光体、2Cはシアンの感光体、2Kはブラックの感光体を表す。また、他の部材についても同じように、部材の符号にそれぞれ各色のY,
M,C,Kを添えて各色の部材を表す。
【0021】
各感光体2Y,2M,2C,2Kの周囲には、それぞれ、帯電部3Y,3M,3C,3Kが設けられている。また、各帯電部3Y,3M,3C,3Kから、それぞれ、各感光体2Y,2M,2C,2Kの回転方向αに向かって、順に、像書込部である露光部4Y,4M,4C,4K
、現像部5Y,5M,5C,5K、転写装置である一次転写部6Y,6M,6C,6K、および感光体クリーニング部7Y,7M,7C,7Kが配設されている。各露光部4Y,4M,4C,4Kは、それぞれ各感光体2Y,2M,2C,2Kに潜像を書き込む。また、各現像部5Y,
5M,5C,5Kは、それぞれ各感光体2Y,2M,2C,2Kに担持された潜像を液体現像
剤のトナーで現像して現像剤像であるトナー像を形成する。
【0022】
また、画像形成装置1は、転写ベルトであるとともに像担持体である無端状の中間転写ベルト8を備えている。この中間転写ベルト8は、各感光体2Y,2M,2C,2Kの上方
に配置されている。そして、中間転写ベルト8は各一次転写部6Y,6M,6C,6Kで各
感光体2Y,2M,2C,2Kに圧接されている。各一次転写部6Y,6M,6C,6Kは、各感光体2Y,2M,2C,2Kに担持した各色のトナー像をそれぞれ中間転写ベルト8に色
重ねして転写する。これにより、フルカラーのトナー像が中間転写ベルト8に担持される。
【0023】
図示しないが、中間転写ベルト8は、例えば樹脂等の可撓性の基材層と、この基材層の表面に形成されたゴム層等の弾性層と、この弾性層の表面に形成された表層とを有する3層構造の比較的軟らかい弾性ベルトに形成されている。その場合、基材層が内周側に位置し、表層が外周側に位置する。中間転写ベルト8の一例としては、例えば、基材層として例えばポリイミド樹脂等の樹脂を用いることができるとともに、弾性層として例えばウレタンゴム等のゴム層を用いることができ、更に表層として例えばフッ素樹脂やフッ素ゴム系の材料等を用いることができる。もちろん、中間転写ベルト8はこれに限定されることはない。この中間転写ベルト8は図示しない中間転写ベルト駆動モーターの駆動力が伝達される中間転写ベルト駆動ローラー9および中間転写ベルトテンションローラー10に張架されている。そして、中間転写ベルト8はテンションを付与された状態で、回動(移動)方向βに回動するようにされている。
なお、各色Y、M、C、Kに対応する感光体等の部材の配置順は、図1に示す例に限定されることはなく、任意に設定することができる。
【0024】
中間転写ベルト8の中間転写ベルト駆動ローラー9側には転写装置である二次転写部11が設けられている。二次転写部11は、二次転写ローラー12、張架ローラー13、および二次転写ローラークリーニング部14を備えている。
【0025】
図1および図2(a)に示すように、二次転写ローラー12は、基材12aと、基材12aの外周面に配設された弾性部材からなる弾性層(例えば、ゴム層等)12bとを有している。この弾性層12bは電気抵抗層を形成している。基材12aとして、例えば鉄製の金属材を用いることができる。また、弾性層12bとしては、前述の中間転写ベルト8の弾性層と同じウレタンゴム等の弾性材料を用いることができる。その場合、二次転写ローラー12の弾性層12bの厚さは中間転写ベルト8の弾性層の厚さよりも厚い。
【0026】
また、二次転写ローラー12の弾性層12bの外周面の半径R1(mm)が、中間転写
ベルト駆動ローラー9の半径R2(mm)より大きく設定されている(R1>R2)。更に
、この第1例の画像形成装置1では、図示しないが中間転写ベルト8の弾性層の厚さ(μm)が中間転写ベルト駆動ローラー9の半径R2(mm)より小さく設定されている。こ
の二次転写ローラー12は、画像形成動作時に回転方向γに回転するようになっている。
【0027】
二次転写ローラー12は、図示しないスプリング等の付勢手段の付勢力により弾性層12bが中間転写ベルト8を介して中間転写ベルト駆動ローラー9に圧接される。これにより、図2(a)および(b)に示すように中間転写ベルト8と二次転写ローラー12の弾性層12bとの間に圧接ニップ11aが形成される。このとき、中間転写ベルト駆動ローラー9は二次転写ローラー12の押圧に対するバックアップローラーとして機能する。その場合、二次転写ローラー12の弾性層12bの厚さが中間転写ベルト8の弾性層の厚さより厚いことから、中間転写ベルト8および中間転写ベルト駆動ローラー9が二次転写ローラー12の弾性層12bに食い込むように弾性層12b側が円弧状に凹む。すなわち、
圧接ニップ11aは二次転写ローラー12の弾性層12b側に円弧状に湾曲して突出した形状となる。
【0028】
また、張架ローラー13は、中間転写ベルト駆動ローラー9より中間転写ベルト8の移動方向βに配設される。圧接ニップ11aを通過した中間転写ベルト8が張架ローラー13に巻き掛けられて二次転写ローラー12側にガイドされる。そして、圧接ニップ11aを通過した中間転写ベルト8が二次転写ローラー12の弾性層12bに接触する(つまり、巻き掛けられる。これにより、中間転写ベルト8と二次転写ローラー12の弾性層12bとの間に接触ニップ11bが形成される。この接触ニップ11bは圧接ニップ11aの終了端(中間転写ベルト移動方向βにおける後側の圧接ニップ11aの端)に連続して形成される。つまり、接触ニップ11bは、中間転写ベルト駆動ローラー9と接触していない領域の中間転写ベルト8と二次転写ローラー12との接触により接触ニップとして形成される。圧接ニップ11aと接触ニップ11bとにより、中間転写ベルト8に担持されたトナー像が転写紙等の転写材15に二次転写されるための転写ニップ部である二次転写ニップ11cが構成される。
【0029】
二次転写ニップ11cにおいて、圧接ニップ11aを通過する転写材15は、中間転写ベルト駆動ローラー9と二次転写ローラー12の弾性層12bとの間に中間転写ベルト8とともに挟圧される。また、接触ニップ11bを通過する転写材15は、中間転写ベルト駆動ローラー9から離間した中間転写ベルト8と二次転写ローラー12の弾性層12bとの間に挟圧される。接触ニップ11bを通過した転写材15は中間転写ベルト8から離間して二次転写ローラー12の弾性層12bに巻かれて移動し、最後に弾性層12bから離間する。
【0030】
したがって、中間転写ベルト8が中間転写ベルト駆動ローラー9から離間する位置p1
と転写材15が中間転写ベルト8から離間する位置p2とが、中間転写ベルト駆動ローラ
ー9の中心9aと二次転写ローラー12の中心12cとを結ぶ仮想直線δと中間転写ベルト8の外周面との交点における接線方向ε(つまり、仮想直線δと直交する方向)に異なる。具体的には、位置p1が位置p2より中間転写ベルト8の移動方向βで手前側になる。
【0031】
いま、図2(b)に示すように二次転写ニップ11cにおいて、圧接ニップ11aの中間転写ベルト8の移動方向βの周面の(つまり、圧接ニップ幅)をW1(mm)とし、ま
た、接触ニップ11bの中間転写ベルト8の移動方向βの周面の距離(つまり、接触ニップ幅)をW2(mm)とする。すなわち、二次転写ニップ11cの中間転写ベルト8の移
動方向βの距離(つまり、二次転写ニップ幅)W(mm)は、圧接ニップ11aの距離W1(mm)と接触ニップ11bの距離W2(mm)とを含む。なお、図2(b)には、記載の便宜上、二次転写ニップ幅W(mm)、圧接ニップ幅W1(mm)、および接触ニップ
幅W2(mm)を接線方向εとして示されているが、実際には、これらのニップ幅は、い
ずれも、中間転写ベルト8の移動方向の幅である。
【0032】
この第1例の画像形成装置1では、接触ニップ幅W2(mm)が圧接ニップ幅W1(mm)の2分の1より小さく設定されている(すなわち、W2 < W1/2)。すなわち、二次転写ローラー12の回転方向γの接触ニップ11bの二次転写ローラー12の周面の距離は、二次転写ローラー12の回転方向γの圧接ニップ11aの二次転写ローラー12の周面の距離の2分の1より小さい。また、接触ニップ幅W2は中間転写ベルト8の弾性層の
厚さより大きく設定されている。
【0033】
ここで、二次転写ニップ11cの二次転写ニップ幅W(mm)、圧接ニップ幅をW1
mm)、接触ニップ幅をW2(mm)の測定方法について説明する。図3(a)に示すよ
うに、まず、中間転写ベルト8を中間転写ベルト駆動ローラー9および張架ローラー13
に巻き掛ける。次に、図示しないベルトテンション付与機構により、中間転写ベルト8に通常使用状態と同様のテンションを付与する。次に、二次転写ローラー12の測定用ニップを形成する部分に型取り用の2液硬化型シリコンゴムを塗布する。2液硬化型シリコンゴムとして、本実施形態ではエクザファイン(インジェクションタイプ)(株式会社ジーシー製)を用いることができる。次いで、この二次転写ローラー12の2液硬化型シリコンゴムをベルト駆動ローラー9に中間転写ベルト8を介して通常使用時の圧接力で押しつけて、2液硬化型シリコンゴムに変形部を形成する。そして、2液硬化型シリコンゴムの硬化後、変形部の薄膜化している部分であるニップ形成部を平坦面上で平らにした状態で、このニップ形成部の幅をノギスを用いて測定する。測定されたニップ形成部の幅が圧接ニップ幅W1(mm)と接触ニップ幅W2(mm)とを含む二次転写ニップ幅W(mm)である。次に、図3(b)に示すように、中間転写ベルト8のテンションを十分に緩めて、中間転写ベルト8が前述のテンションを付与した状態よりも多く中間転写ベルト駆動ローラー9に巻き掛かった状態にする。次いで、前述と同様にして二次転写ローラー12に2液硬化型シリコンゴムを塗布するとともに、二次転写ローラー12を中間転写ベルト駆動ローラー9に使用時の圧接力で押しつけて、2液硬化型シリコンゴムに変形部(圧接ニップ部に対応)を形成する。このとき、中間転写ベルト8は圧接ニップ出口(転写材の移動方向における圧接ニップの終了端)から中間転写ベルト駆動ローラー9側に巻き掛かっていて、二次転写ローラー12側には巻き掛かっていないので、接触ニップは存在しない。2液硬化型シリコンゴムの硬化後、変形部の薄膜化している部分であるニップ形成部を平坦面上で平らにした状態で、このニップ形成部の幅をノギスを用いて測定する。測定されたニップ形成部の幅が圧接ニップ幅W1(mm)である。そして、測定された二次転写ニ
ップ幅と圧接ニップ幅W1とから、接触ニップW2(mm)(=W−W1)を求める。
【0034】
このように、二次転写ニップ幅は圧接ニップ幅W1(mm)と接触ニップ幅W2(mm)とを含んでいることから、圧接ニップ幅W1(mm)のみによる転写ニップに比べて長い
転写ロングニップとして形成される。しかし、この接触ニップ幅W2(mm)は圧接ニッ
プ幅W1(mm)より小さく制限されることから、接触ニップ幅が圧接ニップ幅より大き
い特許文献1に記載の画像形成装置における接触ニップ幅に比べてきわめて微小である。
【0035】
更に、図1に示すように画像形成装置1は、転写材15を二次転写ニップ11cの方へ給送するゲートローラー16を有する。このゲートローラー16は転写材15を二次転写ニップ11cの方向ζへ送給する。そして、画像形成動作時に、二次転写ローラー12は中間転写ベルト8の移動方向βの移動時に回転方向γに回転するとともに転写バイアスが印加されることにより、二次転写ニップ11cで、中間転写ベルト8に転写されたトナー像を、ゲートローラー16から送給される転写材15に転写する。
【0036】
このように構成された二次転写部11における転写のメカニズムは、次のように想定される。すなわち、圧接ニップ11aでは圧接荷重により中間転写ベルト8の弾性層が変形することで、中間転写ベルト8の表面が転写材15の表面の凹凸に追従する。これにより、中間転写ベルト8に担持されたトナー像と転写材15との密着性が高くなる。そして、トナー像と転写材15との密着性が高くなった状態で、圧接ニップ11aにおいて二次転写バイアスにより電界が形成されることで、中間転写ベルト8に担持されたトナー像が、凹凸を有する転写材15の表面に効果的に転写される。
【0037】
ところで、圧接ニップ11aのみからなる二次転写ニップ11cにより、中間転写ベルト8に担持されたトナー像が転写材15の表面に転写される場合は、転写材15の表面の凸部に付着したトナーは比較的容易に中間転写ベルト8から剥離し易いが、転写材15の表面の凹部に付着したトナーは、転写材15の凸部に付着したトナーに比べて中間転写ベルト8から剥離し難い。この理由は、次のように考えられる。接触ニップ11bが形成されない場合、圧接ニップ11aの出口(圧接ニップ11aの転写材15の移動方向終了端
)で、転写材15が中間転写ベルト8から剥離される。このとき、中間転写ベルト8とトナーとの間、および転写材とトナーとの間には、圧接ニップ11aで付与された圧力により比較的大きな物理的付着力が存在している。圧接ニップ11aの出口付近では圧力が急激に解放されて、中間転写ベルト8の弾性層の変形が回復する。すると、転写材15の凹部では、転写材15の凹部と中間転写ベルト8との間に微小な空隙が発生する傾向となるため、転写材15の凹部に位置するトナーどうしの凝集力が小さくなる。一方、圧接ニップ11aの出口付近では中間転写ベルト8とトナーとの間には、大きな物理的付着力が存在しているため、トナーどうしの凝集力が中間転写ベルト8とトナーとの間の物理的付着力に負けて、トナー膜が膜中で分断される。その結果、転写材15の凹部に位置するトナーの一部が転写材15に付着するが、トナーの残部が中間転写ベルト8に付着したままとなり、トナーの転写残りが発生すると考えられる。
【0038】
この第1例の二次転写部11では、圧接ニップ11aに続いて接触ニップ11bが形成されることで、二次転写ニップ11cが転写ロングニップとされる。この接触ニップ11bでは、中間転写ベルト8を介する中間転写ベルト駆動ローラー9と二次転写ローラー12との圧接が解消する。したがって、転写材15が接触ニップ11bを通過中では、転写材15と中間転写ベルト8とに挟まれたトナーに圧力はほとんどかからない。このため、中間転写ベルト8と中間転写ベルト8に担持されたトナー像との物理的付着力が緩和される。また、圧接ニップ11aでは二次転写バイアスにより転写電流が生じるが、この転写電流により中間転写ベルト8および転写材15が帯電されるため、これにより接触ニップ11bでも電界が存在している。すなわち、転写材15の接触ニップ11b通過中では、中間転写ベルト8とトナーとの物理的付着力が緩和された状態で、トナーに電界が作用する。その結果、中間転写ベルト8と転写材15とが剥離する際、転写材15の表面の凹部に付着するトナーは、電界の作用と、この凹部に隣接する凸部に付着するトナーとの凝集力とにより、中間転写ベルト8から剥離しやすくなる。このように圧接ニップ11aに続いて形成される接触ニップ11bにより、転写材15の凹部に付着するトナーも中間転写ベルト8から比較的容易に剥離するので、転写効率が良好になると考えられる。
【0039】
二次転写ニップ11cにおいて、圧接ニップ11aを通過する転写材15は、中間転写ベルト駆動ローラー9と二次転写ローラー12の弾性層12bとの間に中間転写ベルト8とともに挟圧される。
【0040】
二次転写ローラークリーニング部14は、クリーニングブレード等のクリーニング部材により二次転写ローラー12の弾性層12bに付着する液体現像剤を除去する。クリーニング部材で除去された液体現像剤は液体現像剤容器に回収される。
【0041】
二次転写部11でトナー像が転写された転写材15は、図示しない従来公知の定着部に搬送される。そして、転写材15に転写されたトナー像がこの定着部により、加熱加圧されて定着される。トナー像が定着された転写材15は図示しない排転写材トレイに収容される。
【0042】
この第1例の画像形成装置1によれば、二次転写ニップ11cが圧接ニップ11aと接触ニップ11bとを含んで圧接ニップのみによる転写ニップに比べて長い転写ロングニップとして形成される。したがって、圧接ニップ11aのみによる転写に比べて良好な転写効率を得ることができる。
【0043】
また、中間転写ベルト8が二次転写ローラー12に巻き掛けられる接触ニップ幅W2
mm)が圧接ニップ幅W1(mm)の2分の1より小さくされる。これにより、二次転写
ローラー12に巻き掛けられる中間転写ベルト8の巻掛け量が少なくなることから、中間転写ベルト8は二次転写ローラー12の外周面に沿って圧縮される方向にほとんど屈曲し
ない。したがって、二次転写ニップ11cで中間転写ベルト8の表面の屈曲方向がほとんど変化しないため、圧接ニップ11aと接触ニップ11bとで中間転写ベルト8の表面速度の変化が抑制される。その結果、二次転写時に、転写材15に転写された画像のずれを抑制することが可能となる。
【0044】
更に、圧接ニップ11aが二次転写ローラー12側に突出する形状である場合、二次転写ローラー12の半径R1(mm)が中間転写ベルト駆動ローラー9の半径R2(mm)より大きくされることで、張架ローラー13が中間転写ベルト8を圧接ニップ11aの終了端から中間転写ベルト駆動ローラー9側にガイドしやすくなる。これにより、接触ニップ幅W2(mm)を小さくでき、二次転写ローラー12の外周面に沿う中間転写ベルト8の
表面の圧縮方向の屈曲を更に効果的に抑制することが可能となる。
【0045】
更に、圧接ニップ11aが二次転写ローラー12側に突出する形状である場合、二次転写ローラー12の弾性層12bの厚さ(mm)が接触ニップ幅W2(mm)より大きくさ
れることで、同様に張架ローラー13が中間転写ベルト8を圧接ニップ11aの終了端から中間転写ベルト駆動ローラー9側にガイドしやすくなる。これにより、接触ニップ幅W2(mm)を小さくでき、二次転写ローラー12の外周面に沿う中間転写ベルト8の表面
の圧縮方向の屈曲を更に効果的に抑制することが可能となる。
【0046】
更に、圧接ニップ11aが二次転写ローラー12側に突出する形状である場合、中間転写ベルト8の弾性層の厚さが接触ニップ幅W2(mm)より小さくされることで、同様に
張架ローラー13が中間転写ベルト8を圧接ニップ11aの終了端から中間転写ベルト駆動ローラー9側にガイドしやすくなる。これにより、接触ニップ幅W2(mm)を小さく
でき、二次転写ローラー12の外周面に沿う中間転写ベルト8の表面の圧縮方向の屈曲を更に効果的に抑制することが可能となる。
【0047】
更に、二次転写ニップ11cを転写ロングニップとしても、転写材15の移動方向における二次転写ニップ11cの幅を前述の特許文献1に記載の画像形成装置に比べて十分に短くすることができる。すなわち、中間転写ベルト8と二次転写ローラー12との接触面積および中間転写ベルト8と転写材15との接触面積をいずれも小さくできる。これにより、転写材15の移動方向と直交またはほぼ直交する方向における圧接荷重の差、二次転写ニップ11cでの転写材15の位置(所定位置と異なる位置)、あるいは転写材15の姿勢(スキュー)による中間転写ベルト8への影響を小さくできる。したがって、中間転写ベルト8の蛇行を効果的に抑制することができる。
【0048】
更に、中間転写ベルト駆動ローラー9より中間転写ベルト8の移動方向βに、張架ローラー13を配設することにより、圧接ニップ11aを通過した中間転写ベルト8の移動方向βを安定させることが可能となる。これにより、圧接ニップ11aを通過した中間転写ベルト8の移動方向βのふらつきを抑制して、接触ニップ11bを確実に形成することができるとともに、接触ニップ幅W2(mm)を圧接ニップ幅W1(mm)の2分の1より小さくすることがより確実に実現可能となる。
【0049】
更に、二次転写部11において中間転写ベルト駆動ローラー9により中間転写ベルト8を駆動することにより、中間転写ベルト8の移動速度を安定させることができる。これにより、二次転写ニップ11cでの転写材18の移動速度を安定することができ、転写画像の画像ずれを発生し難くすることが可能となる。
【0050】
こうして、この第1例の画像形成装置1によれば、良好な転写効率を得つつ、転写画像のずれを抑制し、しかも、中間転写ベルト8の蛇行を抑制することが可能となる。
この第1例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、液体現像剤を用いる従
来公知のタンデム型の画像形成装置と同じである。
【0051】
図4は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図、図5は、図2(a)と同様の二次転写部の部分拡大図である。
図4および図5に示すように、この第2例の画像形成装置1では、前述の第1例とは異なり弾性層12bは基材12aの全周に設けられていない。すなわち、この第2例の画像形成装置1は、弾性層12bの二次転写ローラー円周方向の両端の間に配設された凹部17を有する。その場合、弾性層12bの二次転写ローラー円周方向の長さは、画像形成装置1に使用される転写材15の転写材移動方向のサイズが最大サイズである転写材15の方向のサイズより長くなるように設定されている。
【0052】
凹部17内には、転写材把持部材であるグリッパー18、グリッパー18が着座する転写材把持部材受け部材であるグリッパー支持部19、および転写材剥離部材である剥離爪20が配設されている。図示しないが、グリッパー18は二次転写ローラー12の軸方向に沿って所定数配設されており、各グリッパー18は櫛歯状に構成されている。また、グリッパー支持部19は各グリッパー18に対応して配設されるとともに、剥離爪20はグリッパー18の櫛歯の間および両端に位置する櫛歯の外側に配設されている。
【0053】
各グリッパー18は、転写材15の先端部15aをグリッパー支持部19との間で挟む図5に示す把持位置とこの把持位置から回転方向ηに回転して転写材15の先端部15aを開放する図4に示す解放位置との間で一体に回動可能に設けられる。また、各剥離爪20は、その先端が凹部17内に位置する図5に示す退避位置とこの退避位置から方向θに直線移動して先端が凹部17外に突出してトナー像が転写された転写材15の背面(トナー像の転写面と反対側の面)を二次転写ローラー12の外周面から剥離する突き出し位置(不図示)との間で移動可能に設けられる。
【0054】
そして、凹部17が二次転写ニップ11cに到達する直前に、グリッパー18はグリッパー支持部19に向かって回動してゲートローラー16から給送方向ζに給送されてくる転写材15の先端部15aをグリッパー支持部19との間に把持する。そして、グリッパー18が転写材15の先端部15aを把持した状態で、二次転写ニップ11cにおいて中間転写ベルト8に担持されたトナー像が転写材15に転写される。更に、二次転写ニップ11cを通過した転写材15は、グリッパー18により転写材15の先端部15aが把持されることで中間転写ベルト8から確実に剥離する。その後、グリッパー18はグリッパー支持部19から離間する方向に回動して転写材15の先端部15aの把持を解放する。更に、グリッパー18による転写材把持の解放に相前後して、各剥離爪20が突き出し位置に突き出される。これにより、転写材15の背面が各剥離爪20から突き出される。こうして、転写材15が二次転写ローラー12から剥離される。その後、各剥離爪20は凹部17内の退避位置に戻る。これらのグリッパー18および剥離爪20の各作動は、それぞれ二次転写ローラー12が回転することで図示しないグリッパー制御カムおよび剥離爪制御カムによって制御される。
【0055】
この第2例の画像形成装置1によれば、グリッパー18により転写材15の先端部15aを把持した状態で、中間転写ベルト8に担持されたトナー像を転写材15に転写するので、転写後に転写材15を中間転写ベルト8から確実に剥離することが可能となる。また、剥離爪20により転写材15の背面を外周面から突き出すので、転写後に転写材15を二次転写ローラー12の弾性層12bの外周面から確実に剥離することが可能となる。
この第2例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、前述の第1例の画像形成装置と同じである。
【0056】
図6は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第3例を示し、(a)は図2(a)と同
様の二次転写部の部分拡大図、(b)は(a)におけるVIB−VIB線に沿う断面図である。
図6(a)および(b)に示すように、この第3例の画像形成装置1では、二次転写ローラー12の基材12aが円筒状に形成されている。この円筒状の基材12aの一端側は回転軸12dを有する円板状の端壁12a1により閉塞されている。また、基材12aの
他端側は回転軸12eを有する円環状の端壁12a2により部分的に閉塞されている。そ
して、他端側の回転軸12eは円筒状に形成されているとともに、端壁12a2および回
転軸12eを貫通する軸方向の空気吸引部接続孔12fが配設されている。この吸引部接続孔12fは、図示しないが、空気ポンプや空気ブロワー等の空気送給部および空気吸引部に切換弁を介して選択的に接続される。
【0057】
更に、二次転写ローラー12には、基材12aの円筒状部と弾性層12bとを貫通する所定数の空気流動ノズル孔12gが配設されている。これらの空気流動ノズル孔12gは、二次転写ローラー12の軸方向に沿って配設されている。その場合、各空気流動ノズル孔12gは図示例のように二次転写ローラー12の軸方向に沿って1列に配列されている。なお、各空気流動ノズル孔12gはこれに限定されることはなく、周方向に複数列を二次転写ローラー12の軸方向に沿って配列することもできる。このように空気流動ノズル孔12gを周方向に複数列設ける場合には、千鳥状に配列することもできる。
【0058】
このように構成された第3例の画像形成装置1においては、各空気流動ノズル孔12gが二次転写ニップ11cに到達する直前に、空気吸引部が空気吸引部接続孔12fに接続されるように切換弁が設定されるとともに、空気吸引部が作動される。これにより、基材12aの内部の空気が空気吸引部接続孔12fを通して吸引され、基材12aの内部が負圧となる。すると、二次転写ローラー12の空気流動ノズル孔12g形成部分における外部近傍の空気が各空気流動ノズル孔12gを通して基材12aの内部に吸引される。この状態で、ゲートローラー16から転写材15が給送されて、転写材15の先端部15aが二次転写ローラー12の空気流動ノズル孔12g形成部分に到達すると、転写材15の先端部15aは各空気流動ノズル孔12gによって吸引されて二次転写ローラー12の弾性層12bに吸着される。
【0059】
そして、各空気流動ノズル孔12gによって転写材15の先端部15aが吸着された状態で、二次転写ニップ11cにおいて中間転写ベルト8に担持されたトナー像が転写材15に転写される。更に、二次転写ニップ11cを通過した転写材15は、各空気流動ノズル孔12gによって転写材15の先端部15aが吸着されることで中間転写ベルト8から確実に剥離する。その後、空気吸引部の作動が停止されて転写材15の先端部15aの吸引が終了する。そして、転写材15の先端部15aが二次転写ローラー12から剥離される剥離位置に到達すると、空気供給部が作動されるとともに、切換弁が切り換えられて空気送給部が空気吸引部接続孔12fに接続される。すると、基材12aの内部に正圧の空気が送給されとともに、正圧の空気がノズル孔12gから基材12aの外部に流出する。流出した空気により、転写材15が二次転写ローラー12から容易に剥離される。
【0060】
この第3例の画像形成装置1によれば、各空気流動ノズル孔12gにより転写材15の先端部15aを吸引した状態で、中間転写ベルト8に担持されたトナー像を転写材15に転写するので、転写後に転写材15を中間転写ベルト8から確実に剥離することが可能となる。また、転写後に各空気流動ノズル孔12gによる転写材15の吸引が終了するので、転写材15を二次転写ローラー12の弾性層12bの外周面から容易に剥離することが可能となる。
この第3例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、前述の第1例の画像形成装置と同じである。
【0061】
図7は、本発明の画像形成装置の実施の形態の第4例を示す、図2(a)と同様の二次
転写部の部分拡大図である。
図7に示すように、この第4例の画像形成装置1では、張架ローラー13(図7には不図示)と二次転写ニップ11cとの間に、接触調整ローラー(巻掛け調整ローラー)21が配設されている。この接触調整ローラー21は中間転写ベルト8の外側に配設されている。そして、接触調整ローラー21が中間転写ベルト8の外周面を中間転写ベルト駆動ローラー9側に押圧することで、接触ニップ幅W2(mm)の大きさを調整している。
この第4例の画像形成装置1の他の構成および他の作用効果は、前述の第1例と同じである。
【0062】
次に、本発明の実施例1ないし4について説明する。
(実施例1ないし4の共通事項)
(画像形成装置1の構成)
図1に示す、実験用にタンデム型の画像形成装置を製造して用いた。
(中間転写ベルト8の構成)
中間転写ベルト8は基材層、基材層の表面(外周側面)に配設された弾性層、および弾性層の表面(外周側面)に配設された表層の3層構造である。基材層は厚さ100μmのポリイミド樹脂で構成する。また、弾性層はウレタンゴムのゴム層で構成し、ゴム層の厚さは実施例毎に異なり、その詳細は後述する。更に、表層は厚さ7μmのフッ素樹脂のコート層で構成する。中間転写ベルト8の全層の体積抵抗率は、電圧100V印加時で、9.2×109(Ω・cm)である。
【0063】
(二次転写ローラー12の構成)
二次転写ローラー12は、鉄製の基材12aの外周面にゴム層の弾性層12bを配設する。弾性層12bはウレタンゴムのゴム層で構成し、ゴム層の厚さは実施例毎に異なり、その詳細は後述する。弾性層12bの幅(二次転写ローラー12の軸方向における弾性層12bの長さ)は、330mmである。そして、図示しない二次転写ローラー12の押圧機構で中間転写ベルト8を介して中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)の圧接する。
【0064】
(張架ローラー13の構成)
張架ローラー13は、従来公知のテンションローラーを用いる。その場合、張架ローラー13は接触ニップ幅W2(mm)が調整可能となるように位置調節可能に設ける。
【0065】
(転写材)
転写材は、コート紙(王子製紙(株)製ウルトラサテン金藤127.9g)および非コ
ート紙(富士ゼロックス(株)製J紙)の2種類を用いる。2種類の転写材を用いる理由は、これらの転写材の表面粗さの違いにより、転写の挙動が異なるためである。このように、転写の挙動が異なる理由は次のように考えられる。すなわち、転写のメカニズムにおいてトナー粒子どうしの凝集力、転写材に対するトナー粒子の付着力、および中間転写ベルト8に対するトナー粒子の付着力が転写挙動に影響すると想定される。そして、転写材の表面粗さによって転写ニップ中でのトナー膜の中間転写ベルトからの剥離挙動やトナー膜中の分断挙動が転写材の種類によって異なるために、転写挙動が異なると考えられる。
【0066】
(転写効率の測定方法)
転写効率は、図8(a)に示す2×2ドット画像、図8(b)に示す8×8ドット画像、および図8(c)に示すベタ画像の3つの画像のパターンについて測定する。その場合、1ドットは1200DPI≒21μm×21μmである。ドットの大きさによって転写の挙動が異なるため、このように3つの画像のパターンを用いて、転写効率を評価した。ドットの大きさによって転写の挙動が異なる理由は、ドットの大きさによって前述と同様に転写ニップ中でのトナー膜の中間転写ベルトからの剥離挙動やトナー膜中の分断挙動が
転写材の種類によって異なるためであると考えられる。
【0067】
また、転写効率は、二次転写前の中間転写ベルト8に担持されたトナーの濃度(OD値)をOD1とするとともに、転写後の中間転写ベルト8上に残留するトナーの濃度(OD
値)をOD2としたとき、転写効率=((OD1−OD2)/OD1)×100(%)と定義する。トナーの濃度は、X−Liteの光学測定計を用いて測定する。二次転写バイアスを変更しながら転写効率を測定し、転写効率が最大となるときの転写バイアスでの結果を採用する。そして、転写効率が90%以上であるときを良好であると判定するとともに、転写効率が90%未満であるときを不良であると判定する。
【0068】
(画像ずれの判定方法)
画像ずれは、図9に示すように転写材の移動方向(図9において左右方向)と直交方向に延びる2ドットの横線画像について判定する。その場合、1ドットは1200DPI≒21μm×21μmである。そして、この横線画像を前述の2種類の転写材に転写する。転写材に転写された横線画像に擦ったような擦り跡が目視で確認されない場合は、画像ずれがないとして良好であると判定する。また、転写材に転写された横線画像に擦ったような擦り跡が目視で確認された場合は、画像ずれがあるとして不良であると判定する。
【0069】
(実施例1ないし4の個別事項)
(実施例1)
圧接ニップ幅W1は4mmであるとともに接触ニップ幅W2は1.9mmである。したが
って、W2 < (W1/2)である。また、転写材移動方向の二次転写ニップ11cの幅は5.9mmである。二次転写ローラー12の半径R1は40mmであるとともに、中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)の半径R2は32mmである。したがっ
て、R2 < R1である。二次転写ローラー12の弾性層12b(ゴム層)の厚さは2.5
mmであり、また、中間転写ベルト8の弾性層(ゴム層)の厚さは250μmである。中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)への二次転写ローラー12の圧接荷重は、80kgfである。
実施例1の評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、転写効率は、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、2×2ドット画像、8×8ドット画像、およびベタ画像のすべてについて90%以上であった。したがって、実施例1では、良好な転写効率が得られたと判定した。また、画像のずれは、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、横線画像に擦れ跡が確認されず、画像ずれは発生しなかったと判定した。
【0072】
(実施例2)
圧接ニップ幅W1は3mmであるとともに接触ニップ幅W2は0.2mmである。したが
って、W2 < (W1/2)である。また、転写材移動方向の二次転写ニップ11cの幅は3.2mmである。二次転写ローラー12の半径R1は40mmであるとともに、中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)の半径R2は24mmである。したがっ
て、R2 < R1である。二次転写ローラー12の弾性層12b(ゴム層)の厚さは5mm
であり、また、中間転写ベルト8の弾性層(ゴム層)の厚さは150μmである。中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)への二次転写ローラー12の圧接荷重は、30kgfである。
実施例2の評価結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示すように、転写効率は、実施例1と同様に、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、2×2ドット画像、8×8ドット画像、およびベタ画像のすべてについて90%以上であった。したがって、実施例2では、良好な転写効率が得られたと判定した。また、画像のずれは、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、横線画像に擦れ跡が確認されず、画像ずれは発生しなかったと判定した。
【0075】
(実施例3)
圧接ニップ幅W1は8mmであるとともに接触ニップ幅W2は0.5mmである。したが
って、W2 < (W1/2)である。また、転写材移動方向の二次転写ニップ11cの幅は8.5mmである。二次転写ローラー12の半径R1は240mmであるとともに、中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)の半径R2は67mmである。したが
って、R2 < R1である。二次転写ローラー12の弾性層12b(ゴム層)の厚さは1.
5mmであり、また、中間転写ベルト8の弾性層(ゴム層)の厚さは250μmである。中間転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)への二次転写ローラー12の圧接荷重は、120kgfである。
実施例3の評価結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3に示すように、転写効率は、実施例1および2と同様に、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、2×2ドット画像、8×8ドット画像、およびベタ画像のすべてについて90%以上であった。したがって、実施例3では、良好な転写効率が得られたと判定した。また、画像のずれは、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、横線画像に擦れ跡が確認されず、画像ずれは発生しなかったと判定した。
【0078】
(実施例4)
圧接ニップ幅W1は11mmであるとともに接触ニップ幅W2は5mmである。したがって、W2 < (W1/2)である。また、転写材移動方向の二次転写ニップ11cの幅は16mmである。二次転写ローラー12の半径R1は240mmであるとともに、中間転写
ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)の半径R2は67mmである。したがっ
て、R2 < R1である。二次転写ローラー12の弾性層12b(ゴム層)の厚さは10mmであり、また、中間転写ベルト8の弾性層(ゴム層)の厚さは350μmである。中間
転写ベルト駆動ローラー9(バックアップローラー)への二次転写ローラー12の圧接荷重は、60kgfである。
実施例4の評価結果を表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
表4に示すように、転写効率は、実施例1ないし3と同様に、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、2×2ドット画像、8×8ドット画像、およびベタ画像のすべてについて90%以上であった。したがって、実施例4では、良好な転写効率が得られたと判定した。また、画像のずれは、コート紙および非コート紙のいずれにおいても、横線画像に擦れ跡が確認されず、画像ずれは発生しなかったと判定した。
【0081】
なお、前述の各実施例1ないし4において、各実施例の接触ニップ幅W2は、それぞれ
、対応する圧接ニップ幅W1の2倍に設定しておよび転写効率および画像ずれを評価した
。したがって、圧接ニップ幅W1と接触ニップ幅W2との関係は、いずれもW1< W2であ
る。これらの場合の評価結果は、いずれも転写効率の低下が見られた。これは、接触ニップ幅W2が大きくなったことにより、接触ニップ11bで転写材および中間転写ベルト8
に残存する電荷が時間とともに緩和し、十分な電界が得られなくなったためであると考えられる。また、画像のずれがいずれの場合も若干見られた。これは、接触ニップ幅W2
大きくなったことにより、中間転写ベルト8は二次転写ローラー12の外周面に沿って圧縮される方向に比較的大きく屈曲する。このように、二次転写ニップ11cで中間転写ベルト8の表面の屈曲方向が変化することにより、圧接ニップ11aと接触ニップ11bとで中間転写ベルト8の表面速度の変化が生じるためであると考えられる。
【0082】
なお、本発明の転写装置および画像形成装置は、前述の実施の形態の各例に限定されることはない。例えば、前述の各例の画像形成装置では4色の画像形成装置としているが、単色の画像形成装置でもよい。要は、本発明は特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…感光体、5Y,5M,5C,5K…現像部、6Y,6M,6C,6K…一次転写部、8…中間転写ベルト、9…中間転写ベルト駆動ローラー
、9a…中間転写ベルト駆動ローラーの中心、11…二次転写部(転写装置)、11a…圧接ニップ、11b…接触ニップ、11c…二次転写ニップ、12…二次転写ローラー、12a…基材、12b…弾性層、12c…二次転写ローラーの中心、12f…空気吸引部接続孔、12g…空気流動ノズル孔、13…張架ローラー、15…転写材、17…凹部、18…グリッパー、21…接触調整ローラー、W1…圧接ニップ幅、W2…接触ニップ幅、R1…二次転写ローラーの半径、R2…中間転写ベルト駆動ローラー(バックアップローラー)の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層を有するとともに像を担持する転写ベルトと、
弾性層を有するとともに前記転写ベルトに当接して形成される転写ニップ部で前記転写ベルトに担持された前記像を転写材に転写する転写ローラーと、
前記転写ベルトを介して前記転写ローラーと圧接するバックアップローラーと、
を有し、
前記転写ニップ部は、前記転写ローラーと前記バックアップローラーとの圧接により形成される圧接ニップと、前記バックアップローラーと接触していない領域の前記転写ベルトと前記転写ローラーとの接触により形成される接触ニップとを含み、
前記転写ローラーの回転方向の前記接触ニップの前記転写ローラーの周面の距離は、前記転写ローラーの回転方向の前記圧接ニップの前記転写ローラーの周面の距離の2分の1より小さいことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像を現像剤で現像する現像部と、
弾性層を有するとともに、前記現像部で現像された像が転写される転写ベルトと、
弾性層を有するとともに、前記転写ベルトと当接して形成される転写ニップ部で前記転写ベルトに転写された前記像を転写材に転写する転写ローラーと、
前記転写ベルトを介して前記転写ローラーと圧接するバックアップローラーと、
前記像が転写された前記転写材を定着する定着部と、
を有し、
前記転写ニップ部は、前記転写ローラーと前記バックアップローラーとの圧接により形成される圧接ニップと、前記バックアップローラーと接触していない領域の前記転写ベルトと前記転写ローラーとの接触により接触ニップとを含み、
前記転写ローラーの回転方向の前記接触ニップの前記転写ローラーの周面の距離は、前記転写ローラーの回転方向の前記圧接ニップの前記転写ローラーの周面の距離の2分の1より小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記転写ローラーの径は前記バックアップローラーの径より大きい請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写ローラーの弾性層の厚さは、前記接触ニップの前記転写ローラーの周面の距離より大きい請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写ベルトの弾性層の厚さは、前記接触ニップの前記転写ローラーの周面の距離より小さい請求項2ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写ローラーは周面に凹部を有するとともに、前記凹部に前記転写材を把持する転写材把持部材を有する請求項2ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写ローラーは、空気の流動により前記転写材の吸着または剥離を選択的に行うノズル孔を有する請求項2ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写ベルトの移動方向に、前記バックアップローラーに巻き掛けられた前記転写ベルトを巻掛けて前記接触ニップを形成する張架ローラーが配設される請求項2ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39154(P2011−39154A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184361(P2009−184361)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】