説明

転炉サブランスへのプローブ装着方法

【課題】転炉操業において、溶鋼の温度測定や試料採取を行うためのプローブをサブランスに装着するに際して、サブランスホルダーがサブランスを迅速に把持することができ、それによって短時間でプローブをサブランスに装着することを可能にする転炉サブランスへのプローブ装着方法を提供する。
【解決手段】サブランス把持検出センサ29を備えたサブランスホルダー25Aを用いて、まず、第1回目の把持動作を行い、サブランス13を把持できたか否かをサブランス把持検出センサ29によって検出し、サブランス13を把持できていなければ、その位置でサブランスホルダー25Aを所定時間(例えば2秒間)停止させておく。これにより、振動しているサブランス13がサブランスホルダー25Aに接触してその振動が減衰するので、第2回目の把持動作でサブランス13を確実に把持できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉の操業において、溶鋼の温度測定や試料採取を行うためのプローブをサブランスの下端に装着する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程(転炉)においては、所定のタイミングで、溶鋼の温度測定や成分分析のための試料採取が行われ、その際には測定用プローブ(以下、単にプローブという)が使用される。そのプローブは、サブランスの下端に装着された後、転炉内に降下され、溶鋼中に浸漬される。
【0003】
このプローブは消耗品であるために、1回の測定毎に交換する必要があり、そのためのプローブ自動脱着装置やプローブ自動装着装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
このようなプローブ自動脱着装置の一例を図1〜図4に基づいて説明する。
【0005】
図1は、転炉炉体とその上部の概略図である。転炉炉体11の上部には、転炉炉体11内の溶鋼に酸素を吹き込むためのメインランス12と、下端にプローブ14が装着されて転炉炉体11内に降下されるサブランス13が設置されている。そして、転炉炉体11の上方には、サブランス13の下端にプローブ14を自動装着するためのプローブ装着装置20と、サブランス13の下端からプローブ14を自動抜取りするためのプローブ抜取装置50が配置されている。
【0006】
図2は、そのプローブ装着装置20を示す図である。プローブ装着装置20は、図2(a)に示す位置でプローブ14を供給するプローブ供給装置35と、図2(a)に示す位置でプローブ供給装置35から供給されたプローブ14を図2(b)に示す位置までレール32に沿って搬送してサブランス13の下端に装着するためのプローブ装着台車21を備えている。
【0007】
そのプローブ装着台車21は、図3に詳細図を示すように、プローブ14とサブランス13の軸心合わせを行うために、プローブ14を把持するプローブクランプ装置22とサブランス13を把持するサブランスホルダー25を備えている。なお、図3中の31は、レール32上を走行するための車輪である。
【0008】
そして、サブランスホルダー25は、図4に詳細図を示すように、開閉してサブランス13を把持するサブランス把持部26と、そのサブランス把持部26を開閉させるサブランス把持部開閉シリンダー27を備えている。
【0009】
なお、サブランスホルダー25は前進・後退ができるようになっていて、まず、サブランス把持部26を開(サブランスホルダー開)にした状態で待機位置に後退しており、サブランス13を把持する際には、所定の位置まで前進し、サブランス把持部26を閉(サブランスホルダー閉)にして、サブランス13を把持する。そして、サブランス13にホルダー14が装着されたら、サブランス把持部26を開(サブランスホルダー開)にして、待機位置に後退する。
【0010】
ちなみに、プローブクランプ装置22も、図3に示すように、開閉してプローブ14を把持するプローブ把持部23と、そのプローブ把持部23を開閉させるプローブ把持部開閉シリンダー24を備えている。
【0011】
そして、上記のようなプローブ装着装置20およびプローブ抜取装置50を用いてプローブ14の交換作業を行う場合には、以下のような手順で行う。
【0012】
まず、サブランス13を上昇させて、プローブ抜取装置50がサブランス13の下端からプローブ14を抜取る。
【0013】
次に、図2(a)に示したプローブ供給位置でプローブ供給装置35から供給されたプローブ14をプローブ把持部23で把持したプローブ装着台車21が、図2(b)に示したプローブ装着位置まで移動して、サブランス13の下端をサブランス把持部26で把持し、プローブ14とサブランス13の軸心合わせを行う。
【0014】
そして、サブランス13を所定量だけ降下させて、サブランス13の下端にプローブ14を装着する。
【0015】
その後、所定の測定タイミングで、サブランス13を降下させて、プローブ14を溶鋼中に浸漬させる。
【特許文献1】特開昭50−099796号公報
【特許文献2】特開平11−335717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記のようなプローブ自動脱着装置を用いた場合、以下のような転炉操業を行う際には、プローブ交換作業を迅速に行うことが要求されるにもかかわらず、うまくプローブの装着ができない、あるいは、装着に時間がかかってしまうことがあるという問題があった。
【0017】
すなわち、通常、転炉の吹錬工程においては、その吹錬処理の終盤にサブランス装着プローブによるサンプリング測定の1回目を行い、その時点における溶鋼温度・炭素含有量・溶鋼溶存酸素濃度を測定するとともに、溶鋼サンプルを採取し、その後の酸素吹込み量や副原料の投入量の推定計算を行う。
【0018】
そして、吹錬処理終了直後にサブランス装着プローブによるサンプリング測定の2回目を行い、所望の溶鋼温度・成分値になっているかを確認して吹錬処理終了の判定をするとともに、この測定データを次工程の成分調整などに使用する。
【0019】
その際に、上記の1回目の測定タイミングは、その後の推定計算の計算結果を良好なものとするために、吹錬処理終盤のできるだけ遅い時期に設定するのが良い。そうすると、1回目の測定と2回目の測定の時間間隔は短くなり、プローブ交換作業を短時間で行うことが必要となる。
【0020】
しかし、サブランスは長尺であるために、その下端部が大きく振動し、サブランスホルダーがサブランスをうまく把持することが難しく、把持動作を何回も繰り返して時間がかかってしまうことが多い。振動が自然に減衰するのを待ったとしても、やはり時間がかかってしまう。その結果、プローブの装着までに長時間を要し、2回目の測定および吹錬処理終了の判定が遅延し、吹錬処理の作業能率が悪くなる。
【0021】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、転炉操業において、溶鋼の温度測定や試料採取を行うためのプローブをサブランスに装着するに際して、サブランスホルダーがサブランスを迅速に把持することができ、それによって短時間でプローブをサブランスに装着することを可能にする転炉サブランスへのプローブ装着方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、振動しているサブランスにサブランスホルダーを積極的に接触させてやれば、サブランスの振動が減衰して、サブランスホルダーがサブランスを容易に把持できるようになると着想した。すなわち、第1回目の把持動作でサブランスホルダーがサブランスを把持できなくとも、そのままの位置でサブランスホルダーを所定時間停止させておけば、振動しているサブランスがサブランスホルダーに接触してその振動が減衰するので、第2回目の把持動作でサブランスを確実に把持できるようになり、いたずらに把持動作を何回も繰り返したり、振動が自然に減衰するのを待ったりするのに比べて短時間でサブランスを把持できるとの考えに至った。
【0023】
上記の考え方に基づいて、本発明は以下のような特徴を有している。
【0024】
[1]転炉のサブランスにプローブを装着するに際して、プローブ装着時にサブランスを把持するサブランスホルダーが以下の手順によってサブランスを把持することを特徴とする転炉サブランスへのプローブ装着方法。
(a)サブランスホルダーに、サブランスを把持できたか否かを検出するセンサを設置しておき、
(b)サブランス把持完了タイミング時に、前記センサで、サブランスを把持できたかを検出し、
(c)サブランスを把持できなかったセンサ出力の場合には、
(c−1)そのタイミングの状態を、所定時間継続し、
(c−2)サブランスホルダーの後退→開→前進→閉の動作を行うことで、サブランスを把持する。
(d)上記(c−2)でもサブランスを把持できない場合は、上記(b)〜(c)を繰り返す。
【0025】
[2]前記[1]に記載の転炉サブランスへのプローブ装着方法に用いる転炉サブランスへのプローブ装着装置であって、プローブ装着時にサブランスを把持するサブランスホルダーに、サブランスを把持できたか否かを検出するセンサが設置されていることを特徴とする転炉サブランスへのプローブ装着装置。
【0026】
ここで、上記[1]の(b)の「サブランス把持完了タイミング」とは、実際には把持できていないかもしれないが、正常であれば把持できたタイミングをいう。動作的には、「サブランスホルダー前進」→「サブランスホルダー閉」となったタイミングのことである。
【発明の効果】
【0027】
本発明においては、転炉操業で溶鋼の温度測定や試料採取を行うためのプローブをサブランスに装着するに際して、サブランスホルダーがサブランスを迅速に把持することができるようになり、それによって、短時間でプローブをサブランスに装着することが可能となる。その結果、吹錬処理の作業能率が悪化することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
まず、本発明の一実施形態において用いるプローブ自動脱着装置は、前述した図1〜図4に示したものと基本的な構成は同じである。したがって、ここでの説明は省略する。
【0030】
その上で、この実施形態においては、図5、図6に示すように、プローブ装着装置20のプローブ装着台車21に搭載されているサブランスホルダー25が、サブランス13を把持できたか否かを検出するセンサ(サブランス把持検出センサ)29をサブランス把持部26に備えたサブランスホルダー25Aとなっている。
【0031】
ここで、サブランス把持検出センサ29は、サブランス13を把持できたときは、図7に示すように、サブランス13との距離が近くなり、サブランス13を把持できなかったときは、例えば図7に示すように、サブランス13との距離が遠いので、例えば、近接センサでよい。距離感度を調整して、把持できた(近いとき)はON、把持できなかったとき(遠いとき)はOFFの信号出力となるようなものでよい。なお、把持できた/把持できなかったとON/OFFの対応は反転してもよい。
【0032】
そして、このようなサブランス把持検出センサ29を備えたサブランスホルダー25Aを用いてサブランス13の把持を行う際には、まず、第1回目の把持動作を行い、サブランス13を把持できたか否かをサブランス把持検出センサ29によって検出する。サブランス13を把持できていれば、そのままプローブ14の装着を行えばよいが、サブランス13を把持できていなければ、その位置でサブランスホルダー25Aを所定時間(例えば、2秒間)停止させておく。これにより、図8に示すように、振動しているサブランス13がサブランスホルダー25Aに接触してその振動が減衰するので、第2回目の把持動作でサブランス13を確実に把持できるようになる。
【0033】
上記のような本発明の一実施形態におけるシステム構成(機能ブロック図)と動作手順(フローチャート)を以下に示す。
【0034】
まず、システム構成は、図9に示すように、DCS(Distributed Control System:分散制御システム)または上位計算機60、プローブ装着制御装置40、プローブ装着装置20、サブランスホルダー25A、サブランス把持検出センサ29からなっている。そして、DCSまたは上位計算機60からプローブ装着制御装置40にブローブ装着指令が発信され、それを受けたプローブ装着制御装置40からプローブ装着装置20にプローブ装着台車移動指令およびサブランス把持指令が発信され、それを受けたプローブ装着装置20からサブランスホルダー25Aに把持動作指令が発信される。また、サブランス把持検出センサ29からプローブ装着制御装置40にサブランス把持OK/NG信号が発信される。
【0035】
そして、その動作手順は、図10に示すフローチャートの如くである。
【0036】
(S0)スタート
(S1)プローブ装着制御装置40は、DCSまたは上位計算機60からブローブ装着指令が有ったか否かを判断する。ブローブ装着指令が有った場合は、(S2)に進む。ブローブ装着指令が無かった場合は、(S1)を繰り返す。
(S2)まず、プローブ装着台車21をプローブ装着位置に移動させる。
(S3)次に、サブランスホルダー25Aを前進させる。
(S4)サブランスホルダー25Aを閉にする(サブランス把持部26を閉じる)。
(S5)サブランス把持検出センサ29からの信号を入力する。
(S6)そして、サブランス把持検出センサ29からの信号に基づいて、サブランス13を把持できたか否かを判断する。サブランス13を把持できた場合は、(S7)に進む。一方、サブランス13を把持できなかった場合は、(S8)に進んで、サブランス13の把持を再トライする。
(S7)そのままサブランス13を下降させて、プローブ14を装着する。これによって、(S99)に進んで、プローブ装着作業が完了となる。
(S8)サブランス13把持の再トライが2回目以内であるか否かを判断する。再トライが2回目以内であれば、(S9)に進み、再トライを行う。再トライが3回目以上であれば、何か異常があるとして、(S12)に進む。
(S9)その状態で2秒間待つ。
(S10)サブランスホルダー25Aを後退させる。
(S11)サブランスホルダー25Aを開にする(サブランス把持部26を開く)。そして、(S3)に戻る。
(S12)プローブ装着制御装置40は、エラー出力を行う。
(S13)エラー出力に基づいて、監視員が介入する。
(S99)エンド
【0037】
以上のようにすることによって、この実施形態においては、転炉操業で溶鋼の温度測定や試料採取を行うためのプローブをサブランスに装着するに際して、サブランスホルダー25がサブランス13を把持できたか否かを的確に検知できるようになった。そして、サブランスホルダー25がサブランス13を迅速に把持することができるようになり、それによって、短時間でプローブをサブランスに装着することが可能になった。例えば、従来に比べてプローブ装着時間を約1分短縮できた。その結果、吹錬処理の作業能率が悪化することを防止することができるようになった。
【0038】
なお、図10に示したフローチャートにおいて、S8の再トライの制限回数(2回)とS9の待ち時間(2秒)は、上記の値に限定されるものではなく、操業条件等にあわせて適宜変更されて設定されるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】転炉炉体とその上部を示す図である。
【図2】プローブ装着装置を示す図である。
【図3】プローブ装着台車を示す図である。
【図4】サブランスホルダーを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるプローブ装着台車を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるサブランスホルダーを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態において、サブランスを把持できた状態を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態において、サブランスを把持できなかった状態を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態におけるシステム構成図である。
【図10】本発明の一実施形態における動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
11 転炉炉体
12 メインランス
13 サブランス
14 プローブ
20 プローブ装着装置
21 プローブ装着台車
22 プローブクランプ装置
23 プローブ把持部
24 プローブ把持部開閉シリンダー
25、25A サブランスホルダー
26 サブランス把持部
27 サブランス把持部開閉シリンダー
29 サブランス把持検出センサ
31 車輪
32 レール
35 プローブ供給装置
40 プローブ装着制御装置
50 プローブ抜取装置
60 DCSまたは上位計算機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉のサブランスにプローブを装着するに際して、プローブ装着時にサブランスを把持するサブランスホルダーが以下の手順によってサブランスを把持することを特徴とする転炉サブランスへのプローブ装着方法。
(a)サブランスホルダーに、サブランスを把持できたか否かを検出するセンサを設置しておき、
(b)サブランス把持完了タイミング時に、前記センサで、サブランスを把持できたかを検出し、
(c)サブランスを把持できなかったセンサ出力の場合には、
(c−1)そのタイミングの状態を、所定時間継続し、
(c−2)サブランスホルダーの後退→開→前進→閉の動作を行うことで、サブランスを把持する。
(d)上記(c−2)でもサブランスを把持できない場合は、上記(b)〜(c)を繰り返す。
【請求項2】
請求項1に記載の転炉サブランスへのプローブ装着方法に用いる転炉サブランスへのプローブ装着装置であって、プローブ装着時にサブランスを把持するサブランスホルダーに、サブランスを把持できたか否かを検出するセンサが設置されていることを特徴とする転炉サブランスへのプローブ装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−43317(P2010−43317A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207609(P2008−207609)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】