説明

軸に対して駆動ホイールを緊締するかまたは弛緩するための装置

【課題】軸方向に変位可能で、軸をリング状に包囲するばねエレメントによって、軸に対して駆動ホイールを緊締するかまたは弛緩するための装置を改良して、磨耗の僅かなものを提供する。
【解決手段】ばねエレメント37は、半径方向で直に軸36と協働する緊締面38を備えており、ばねエレメント37は、内輪46と、内輪46を同軸的に包囲する外輪47とを備えており、内輪46と外輪47とは、スポークまたはステー48によって互いに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にシートを処理する機械において、軸に対して駆動ホイールを緊締するかまたは弛緩するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
支承箇所に対して歯車またはチェンホイールを、たとえば第2の歯車またはチェンホイールに対する位相のずれ調節することを目的として回動するために、歯車またはチェンホイールは、先ず弛緩する必要がある。
【0003】
背景技術から多数の装置が公知である。
【0004】
たとえばドイツ連邦共和国特許第4447863号明細書において、軸受ジャーナル上に配置された歯車のクランプ結合部を緊締するかまたは弛緩するための装置が開示されている。緊締するために、軸方向に作用するばね装置が設けられており、ばね装置は、円錐形に形成された緊締エレメントを介して、半径方向の緊締作用を形成し、したがって歯車は、軸受ジャーナルに締付けられる。
【0005】
クランプ結合部の緊締および弛緩に際して、円錐面に沿って荷重を掛けて滑動することによって、緊締エレメントが磨耗する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第4447863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、磨耗の僅かな、駆動ホイールと軸との間のクランプ結合部を緊締および解除するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本発明によれば、軸方向に変位可能で、軸をリング状に包囲するばねエレメントによって、軸に対して駆動ホイールを緊締するかまたは解除するための装置において、ばねエレメントは、半径方向で直に軸と協働する緊締面を備えており、ばねエレメントは、内輪と、該内輪を同軸的に包囲する外輪とを備えており、内輪と外輪とは、スポークまたはステーによって互いに連結されている。
【0009】
有利には、ばね装置は、駆動ホイールと固く結合されている。
【0010】
有利には、スポークまたはステーは、半径方向斜め外向きに配置されている。
【0011】
有利には、内輪は、外輪の厚みより小さいか、または同じである厚みを有している。
【0012】
有利には、駆動輪は、チェンをガイドするチェンホイールである。
【0013】
有利には、駆動輪は、軸またはハブ上に配置された歯車である。
【発明の効果】
【0014】
半径方向に作用する緊締装置の格別な利点によれば、ほぼ磨耗なしに緊締または弛緩を行うことができる。
【0015】
有利な形態では、緊締装置は、皿ばねの構成をしたばね装置を備えており、ばね装置は、軸またはジャーナル上で回動可能であるが、摺動不能に配置されている。
【0016】
皿ばねは、内輪(軸受輪)を備えており、内輪は、半径方向に配置されたステーまたはスポークによって、外輪と結合されている。外輪は、内輪に対して軸方向で弾性的に摺動可能に配置されており、この場合ステーまたはスポークは、ばね力を形成する。
【0017】
本発明の実施の形態を図示して、以下に詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】枚葉輪転印刷機の概略断面図である。
【図2】軸に緊締された駆動ホイールを示す図である。
【図3】半径方向の緊締面を備えたばね装置の部分斜視図である。
【0019】
シート7を処理する機械、たとえば印刷機1は、フィーダ2と少なくとも1つの印刷部3,4とデリバリ6とを備えている。シート7は、シートスタック(パイル)8から取り出されて、個別化されるかまたは刺身状にずれ重なった状態でフィーダボード9を介して印刷部3,4に供給される。印刷部3,4は、公知のように、版胴11,12と、版胴11,12と協働するゴムブランケット胴15,20とを備えている。版胴11,12は、それぞれフレキシブルな刷版を固定するためのクランプ装置13,14を備えている。さらに各版胴11,12に、半自動または全自動式の刷版交換のための装置16,17が配設されている。
【0020】
シートスタック8は、昇降制御可能な紙積台10に載設されている。シート7の取出は、シートスタック8の上面から、いわゆるサッカヘッド18を用いて行われ、サッカヘッド18は、とりわけシート7を個別化するための幾つかの持上サッカ19と送りサッカ21とを備えている。さらに上位のシート層をほぐすための吹込装置22およびスタック後ガイドのための接触エレメント23が設けられている。シートスタック8、特にシートスタック8の上位のシート7を揃える、つまり位置調整するために、側方および後方の幾つかのストッパ24が設けられている。
【0021】
デリバリ6は、チェングリッパシステム26を備えており、チェングリッパシステム26では、シート搬送方向にみて相互間隔を有して配置された複数のグリッパブリッジ27が、平行にガイドされたチェン28に配置されており、グリッパブリッジ28は、シート7を前縁で把持する。チェン28に対して平行に、別のチェン対29が配置されており、このチェン対29は、シート後縁を把持するためのグリッパブリッジ31を備えている。チェン28,29は、エンドレスに駆動輪、たとえばチェンホイール32,33,34の周りを循環走行する。チェンホイール33,34は、共通の軸36に嵌められている。チェンホイール33は、軸36に固く嵌められているのに対して、チェンホイール34は、軸36と連結可能に配置されている。
【0022】
シート後縁用のグリッパブリッジ31を、シートの、処理しようとする版長さに調節するために、駆動歯車もしくはチェンホイール34は、軸36に対して回動することができる。このためにチェンホイール34は、リング状のばねエレメント37と固く結合されている。ばねエレメント37は、同軸的に軸36を包囲していて、緊締面38を備えており、緊締面38は、軸36の緊締面39と半径方向で緊締、つまりクランプ結合するようになっている。
【0023】
チェンホイール34は、円筒形の凹部41を備えており、凹部41に、作業ピストン42が軸方向でガイドされている。ピストン42とシリンダ41との間の作業空間43は、回動導入部44を介して、作業媒体、たとえばニューマチック流体で荷重をかけることができる。
【0024】
ばねエレメント37は、内輪46と外輪47とを備えており、輪46,47は、同軸的に配置されていて、幾つかのスポークまたはステー48によって互いに結合されている。スポークまたはステー48は、直径比で大きな長さを有しており、つまりスポークまたはステー48の長さLは、直径または幅Bの少なくとも5倍の大きさを有している(L=少なくとも5B)。
【0025】
スポークまたはステー48は、内輪46の軸方向端部46.1に配置されていて、半径方向斜め外向きに延びており、そこでは外輪47の軸方向端部47.2が配置されている。内輪46、外輪47およびスポークまたはステー48は、一体的に形成されている。内輪46は、厚さD1を有しており、厚さD1は、外輪47の厚さD2よりも小さいか、またはこれと同じである(D1≦D2)。
【0026】
有利な形態では、ばねエレメント37は、左右逆に配置されているので、作業空間の圧力負荷によって、クランプ結合が解除される。
【0027】
本発明は、軸36上のチェンホイール34の嵌合に基づいて説明した。もちろん本発明は、軸上の歯車の嵌合またはハブ上の歯環の嵌合なども含んでいる。
【符号の説明】
【0028】
1 印刷機、 2 フィーダ、 3 印刷部、 4 印刷部、 6 デリバリ、 7 シート、 8 シートスタック、 9 フィーダボード、 10 紙積台、 11 版胴、 12 版胴、 13 刷版固定装置、 14 刷版固定装置、 16 刷版交換装置、 17 刷版交換装置、 18 吸着ヘッド、 19 持上サッカ、 21 送りサッカ、 22 吹込装置、 23 接触エレメント、 24 ストッパ、 26 チェングリッパシステム、 27 グリッパブリッジ(VK)、 28 チェン、 29 チェン対、 31 グリッパブリッジ(HK)、 32、 チェンホイール、 33 チェンホイール、 34 チェンホイール、 36 軸、 37 ばねエレメント、 38 緊締面(46)、 39 緊締面(36)、 41 凹部(シリンダ)、 42 作業ピストン、 43 作業室、 44 回動導入部、 46 内輪(37)、 46.1 端部、 47 外輪(37)、 47.2 端部、 48 スポークまたはステー48、 D1 厚み、 D2 厚み、 L ステーまたはスポーク48の長さ、 B 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に変位可能で、軸をリング状に包囲するばねエレメントによって、軸に対して駆動ホイールを緊締するかまたは解除するための装置において、
ばねエレメント(37)は、半径方向で直に軸(36)と協働する緊締面(38)を備えており、ばねエレメント(37)は、内輪(46)と、該内輪(46)を同軸的に包囲する外輪(47)とを備えており、内輪(46)と外輪(47)とは、スポークまたはステー(48)によって互いに連結されていることを特徴とする、軸に駆動ホイールを緊締するかまたは解除するための装置。
【請求項2】
ばね装置(37)は、駆動ホイール(34)と固く結合されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
スポークまたはステー(48)は、半径方向斜め外向きに配置されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
内輪(46)は、外輪(47)の厚み(D2)より小さいか、または同じである厚み(D1)を有している(D1≦D2)、請求項2記載の装置。
【請求項5】
駆動輪(34)は、チェン(29)をガイドするチェンホイールである、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
駆動輪(34)は、軸(36)またはハブ上に配置された歯車である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
請求項1から7までのいずれか1項記載の位相調節可能な駆動輪(34)を備えたチェンデリバリを有するシートを処理する機械。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の装置を備えた枚葉輪転印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−121776(P2010−121776A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249654(P2009−249654)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】