説明

軸不斉エステル化合物とその製造方法

【課題】光学分割の工程を経ることなく簡便に製造できる新規な光学活性ビアリールエステル化合物の提供。
【解決手段】ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、三重結合を有する化合物を付加環化反応させる一般式(1)で表される軸不斉エステル化合物の製造方法。


(式(1)中、R1は水素原子、アルカリ金属、アルキル基を表す。RXはアルコキシ基で置換されたナフチル基、等を表し、R3、R4,R5及びR6は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。*は軸不斉であることを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸不斉エステル化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光学活性カルボン酸は、ラセミ体の光学分割、絶対配置決定、鏡像体過剰率決定等に多用されている。また、取り扱いの容易さ、入手し易さの要因から、不斉配位子、あるいは不斉配位子の有用な前駆体としても用いられている。近年では、光学活性カルボン酸自体が有機触媒として高い機能を発揮することも知られている(非特許文献1)。光学活性カルボン酸としては、特に芳香環を有する光学活性ビアリール骨格を持つものが有用であることが広く知られている。
このような光学活性ビアリールカルボン酸誘導体を合成する方法としては、2つのアリールユニットのホモ又はクロスカップリングによるものが多く、また光学活性体を得るためにはカップリング後に光学分割を必要とする。最近では、カルボン酸へと容易に誘導できる、エステル類の[2+2+2]環化付加反応も開発されている(非特許文献2)。さらに、新たな光学活性ビアリールエステル化合物を合成する手法として、触媒的不斉[2+2+2]環化付加反応による方法も開発されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2007,Vol.129,10054
【非特許文献2】Chem.Eur.J.,2001, Vol.7, 5203
【非特許文献3】Organic Letters,2006,Vol.8,3489
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、触媒的[2+2+2]不斉環化付加反応で、軸不斉をとり得る構造を有するビアリールジエステル化合物の合成法は知られているが、官能基の位置選択性、化学収率、不斉収率、更には基質適用範囲が未だ低いという問題点があった。
また、従来のアリールユニットのカップリング法で合成されたビアリールジエステル化合物は、光学分割の操作が必須であり、場合によっては一方の光学異性体が不要になる可能性もある。
そこで、比較的入手が容易な基質を用い、少ない工程数にて、高い光学純度で軸不斉ビアリールエステル化合物を合成できれば、従来法ではほぼ必須の工程であった光学分割の工程を経ることなく、軸不斉光学活性体が簡便に得られる。そのような製造法を提供すること、並びにそのようにして製造できる新規な軸不斉ビアリールエステル化合物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、三重結合を有する化合物を、ロジウム及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒の存在下で触媒的[2+2+2]不斉環化付加反応を行うことにより、1工程でかつ高い光学純度を有する軸不斉ビアリールエステル化合物を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
本発明は以下の内容を包含するものである。
[1]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、三重結合を有する化合物を環化付加反応させる一般式(1)で表される軸不斉エステル化合物の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中、R1は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。RXは下記式(RX)で表される基を表し、R3、R4,R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。また、式(1)中におけるR3、R4及びR5の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。
【0009】
【化2】

【0010】
式(RX)中、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。WはCO22又はORMを表し、R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RMは水素原子、水酸基の保護基を表す。また、式(Rx)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよく、R6とR10とで環又は二価基を形成してもよい。)
【0011】
[2]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、一般式(2−1)で表されるジイン化合物と一般式(3−1)で表されるジイン化合物
【0012】
【化3】

【0013】
(式(2−1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。式(3−1)中、Z1は二価基を表し、R11及びR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
とを環化付加反応させ一般式(4)で表される軸不斉エステル化合物
【0014】
【化4】

【0015】
(式(4)中、R1、R2、R11、R12及びZ1は前記と同じ意味を表す。また、式(4)中におけるR12同士で環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
を得ることを特徴とする前記[1]に記載の製造方法。
【0016】
[3]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、一般式(2−1)で表されるジイン化合物と一般式(3−2)で表される化合物
【0017】
【化5】

【0018】
(式(2−1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。式(3−2)中、Z1及びZ2は二価基を表し、R13及びR14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
とを環化付加反応させ一般式(5)で表される軸不斉エステル化合物
【0019】
【化6】

【0020】
(式(5)中、R1、R2、R13、R14、Z1及びZ2は前記と同じ意味を表す。*は軸不斉であることを表す。)
を得ることを特徴とする前記[1]に記載の製造方法。
【0021】
[4]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、下記一般式(2−2)で表される化合物と下記一般式(3−1)で表されるジイン化合物
【0022】
【化7】

【0023】
(式(2−2)中、R1は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RMは水素原子、水酸基の保護基を表す。R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。なお、R7、R8及びR9のうちの隣接する二つの基で置換基を有していてもよい芳香環、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。式(3−1)中、Z1は二価基を表し、R11及びR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
とを環化付加反応させ一般式(8)
【0024】
【化8】

【0025】
(式(8)中、R1、RM、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びZ1は前記と同じ意味を表す。また、式(8)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよく、R10とR12とで環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
で表される軸不斉エステル化合物を得ることを特徴とする前記[1]に記載の製造方法。
【0026】
[5]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒が下記一般式(6)で表される化合物である前記[1]〜[4]の何れかに記載の製造方法。
[Rh(L)m(Y)n]X (6)
(式(6)中、Lは下記式(7)で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のときn=0又はn=1であり、m=2のときn=0である。
1516P−Q−PR1718 (7)
(式(7)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。))
【0027】
[6]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製する際に、水素ガスを用いてオレフィン性配位子を脱離させることを特徴とする前記[5]に記載の製造方法。
【0028】
[7]一般式(4’)で表される光学活性化合物。
【0029】
【化9】

【0030】
(式(4’)中、R1及びR2は同一または異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R11は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12'は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Z1は二価基を表す。また、式(4’)中におけるR12'同士で環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
【0031】
[8]一般式(8’)で表される光学活性化合物。
【0032】
【化10】

【0033】
(式(8’)中、R1は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R7、R8及びR9はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R11は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R10'及びR12'はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。RMは水素原子、水酸基の保護基を表す。なお、R7、R8及びR9のうちの隣接する二つの基同士で置換基を有していてもよい芳香環、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。Z1は二価基を表す。また、式(8’)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよく、R10'とR12'とで環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
【発明の効果】
【0034】
本発明の方法によれば、三重結合を複数有する化合物とイン構造を有するエステル化合物をロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の存在下で反応させることにより、1工程でエナンチオ選択的に光学活性ビアリールエステル化合物を製造することができるので、光学分割の工程を経ることなく軸不斉光学活性体を得ることができる。また、本発明に係わる光学活性ビアリールエステル化合物は比較的入手が容易な基質を原料として製造することができ、金属触媒の配位子の製造中間体、不斉有機触媒の製造中間体などとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るエステル化合物は、上記した一般式(1)、(4)、(5)、(8)、(4’)及び(8’)で表されるエステル化合物であり、後に詳しく述べる本発明の製造方法により製造することができる。
一般式(1)、(4)、(5)、(8)、(4’)及び(8’)において、R1及びR2は、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
ここで、R1及びR2で表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
また、R1及びR2で表されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0036】
一般式(1)、(4)、(5)、(8)、(4’)及び(8’)において、R3〜R10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表し、R11〜R14、R10'及びR12'は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
ここで、R3〜R14、R10'及びR12'で表されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0037】
3〜R14、R10'及びR12'で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
3〜R14、R10'及びR12'で表されるアリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子などが挙げられ、これら置換基は該アリール基上に複数置換されていてもよい。
【0038】
3〜R10で表されるアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基等が挙げられる。これらアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。
3〜R10で表されるアリールオキシ基としては、炭素数6〜18のアリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。これらアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子などが挙げられ、これら置換基は該アリール基上に複数置換されていてもよい。
【0039】
なお、一般式(1)中におけるR3、R4及びR5の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士及びR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士、一般式(4)中におけるR12同士、一般式(8)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士及びR10とR12、一般式(4’)中におけるR12'同士並びに一般式(8’)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士及びR10'とR12'とで環又は二価基を形成してもよい。
形成される環の具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の脂肪族環;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香族環が挙げられる。該環の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、前記したような基が挙げられる。
また、形成される二価基としては、置換基を有していてもよく、鎖内に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよいメチレン鎖等が挙げられる。かかる場合のメチレン鎖としては、例えば、炭素数3〜6のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。また、前記のメチレン鎖内の炭素原子が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されていてもよく、このような基の具体例としては、2−オキサトリメチレン基、3−オキサペンタメチレン基、メチレンジオキシ基、2,4−ジオキサペンタメチレン基等が挙げられる。また、該メチレン鎖の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシを有するアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0040】
一般式(RX)、(8)及び(8’)において、RMで表される水酸基の保護基としては、アルキル基、アラルキル基、アシル基、三置換シリル基等が挙げられる。
ここで、RMで表されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。また、これらアルキル基はアルコキシ基で置換されていてもよく、具体的なアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基等が挙げられる。
Mで表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、1−フェニルメチル基、トリフェニルメチル基等が挙げられる。
Mで表されるアシル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐の脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基が挙げられ、具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、ピバロイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基等が挙げられる。
Mで表される三置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0041】
一般式(3−1)、(3−2)、(4)、(5)、(8)、(4’)及び(8’)において、Z1及びZ2で表される二価基としては、酸素原子、硫黄原子、メチレン鎖、NRN、Si(RSi2等が挙げられる。ここで、RNは、アルキル基、アリール基、アルカンスルホニル基、アリーンスルホニル基又はアシル基を表し、RSiは、アルキル基又はアリール基を表すか、Si(RSi2で環を形成してもよい。
メチレン鎖としては、直鎖又は分岐のメチレン鎖が挙げられ、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、2,3−ブタンジイル基、ジフルオロメチレン基等が挙げられる。
NRNにおけるRN及びSi(RSi2におけるRSiで表されるアルキル基としては、例えば直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては前記したようなアルキル基が挙げられる。RN及びRSiで表されるアリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、具体的には前記したようなアリール基が挙げられる。
NRNにおけるRNで表されるアルカンスルホニル基及びアリーンスルホニル基としては、例えばメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。
Nで表されるアシル基としては、炭素数2〜10の直鎖又は分岐の脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基が挙げられ、具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、ピバロイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基等が挙げられる。
Si(RSi2で形成される環としては、シロラン環、シリナン環、シレパン環等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、一般式(1)で表されるエステル化合物の中でも、上記した一般式(4)、(8)、(4’)及び(8’)で表されるエステル化合物が好ましい。
次に本発明の軸不斉エステル化合物の製造方法(単に「本発明の製造方法」ということがある)について説明する。
本発明の軸不斉エステル化合物の製造方法は、以下のスキーム1及びスキーム2に記載するように、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィン化合物とを含む触媒の存在下に反応を行い、詳しくはエナンチオ選択的に[2+2+2]環化付加させるものである。
【0043】
【化11】

【0044】
スキーム中に記載されている記号の表す意味および該記号で表される基などの例は、上記で説明したそれぞれの意味および例と同じである。
本発明の製造方法で用いられるロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒について説明する。
本発明に用いられる触媒成分の一つであるロジウム金属のロジウム源としては、ロジウム化合物が用いられ、好ましいロジウム化合物としては、オレフィン性配位子が配位したロジウム(I)の錯体が挙げられる。具体的なロジウム(I)錯体としては、[Rh(COD)2]X、[Rh(NBD)2]X、[Rh(エチレン)2Cl]2、[Rh(COE)2Cl]2[Rh(COD)Cl]2、[Rh(NBD)Cl]2等が挙げられる。前記錯体化学式中、Xはカウンターアニオンを表し、例えばCl、Br、I、BF4、OTf、ClO4、SbF6、PF6、BPh4、B((3,5−CF32634などが挙げられ、COEはシクロオクテン、CODは1,5−シクロオクタジエン、NBDはノルボルナジエンを表す。
【0045】
本発明に用いられる触媒成分のもう一つである光学活性ビスホスフィンとしては、例えば下記の一般式(7)で表されるものが挙げられる。
1516P−Q−PR1718 (7)
(式(7)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
上記式中、R15、R16、R17及びR18で表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
【0046】
アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
アリール基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0047】
アリール基の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。一方、芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、ヘテロ原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0048】
また、R15、R16、R17及びR18で表される、置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルキル基又はアルコキシ基等の置換基で、1乃至2以上置換されていてもよい。
また、R15、R16、R17及びR18で表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】
また、R15とR16及び/又はR17とR18とで形成してもよい環としては、R15、R16、R17及びR18が結合しているリン原子を含めた環として、四員環、五員環又は六員環の環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環等が挙げられ、これらの環は光学活性体でもよい。
また、Qで表される、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられ、該フェニレン基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等のアルコキシ基;水酸基、アミノ基又は置換アミノ基等で置換されていてもよい。ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1'−ビアリール−2,2'−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基は、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等で置換されていてもよい。また、フェロセンジイル基も置換基を有していてもよく、置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられる。
【0050】
一般式(7)で表される光学活性ビスホスフィンの具体例としては、例えば公知のビスホスフィン類が挙げられ、その内の一つとして下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【化12】

【0052】
(式(9)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示すか、またはシクロペンチル基もしくはシクロヘキシル基を示す。)
【0053】
上記のR21及びR22における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。
21及びR22の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、一般式(9)で表される化合物の基本骨格であるビナフチル環は、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、例えばメチル基、t−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基及びトリフェニルシリル基等のトリアリールシリル基が挙げられる。
【0054】
また、一般式(7)で表される光学活性ビスホスフィンの他の具体例としては、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化13】

【0056】
(式中、R23及びR24は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基を示す。R25、R26、R28及びR29は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R27及びR30は、同一又は異なっていてもよく、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R25、R26及びR27のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよく、R28、R29及びR30のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。また、R27とR30とで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。)
【0057】
上記のR23及びR24における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。R23及びR24の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、R25〜R30で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜10のアシルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、ハロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のハロアルキル基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0058】
25、R26及びR27のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合、並びにR28、R29及びR30のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖としては、例えば、炭素数3〜5のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。また、該置換基を有していてもよいメチレン鎖における置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
また、R25、R26及びR27のうちの二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合、並びにR28、R29及びR30の内の二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合の(ポリ)メチレンジオキシ基の具体例としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等が挙げられる。また、該(ポリ)メチレンジオキシ基に置換する置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0059】
一般式(9)及び(10)で示される光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、例えば2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(m−トリル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(p−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(p−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(シクロペンチル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−t−ブチルフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(以下、segphosという)、(4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラメチル−5,5'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラメチル−5,5'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4',6'−ジメチル−5'−メトキシ−1,1'−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2'−ジフェニルホスフィノ−4,4',6,6'−テトラメチル−5,5'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3',6,6'−テトラメチル−1,1'−ビフェニル)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4'−ジフルオロ−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4'−ビス(ジメチルアミノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6'−テトラメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',5,5',6,6'−ヘキサメトキシ−1,1'−ビフェニル、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジエチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン、1−(2,5−ジメチルホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1'−ビス(2,4−ジエチルホスフォタノ)フェロセン等が挙げられる。
【0060】
それら以外にも、本発明で用いることのできる光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジメチル−1−[1',2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N'−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。
【0061】
本発明で用いられる触媒は、触媒成分として上記で説明したようなロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒であり、例えば、下記一般式(6)で表される化合物である。
[Rh(L)m(Y)n]X (6)
(式(6)中、LはR1516P−Q−PR1718で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のときn=0又はn=1であり、m=2のときn=0である。R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
上記式中、Lで表されるR1516P−Q−PR1718なる光学活性ビスホスフィンについては、前述した通りである。
【0062】
続いて、本発明で用いられるロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の例である一般式(6)で表される化合物について、さらに詳しく説明する。
一般式(6)において、Yで表される非共役ジエン化合物としては、環状でも非環状でもよく、非共役ジエン化合物が環状非共役ジエン化合物である場合には、単環状、多環状、縮環状、架橋環状のいずれであってもよい。また、非共役ジエン化合物は、置換基で置換された非共役ジエン化合物、即ち置換非共役ジエン化合物でもよく、該置換基は、本発明の製造方法に悪影響を与えない置換基であれば特に限定されない。好ましい非共役ジエン化合物としては、例えば、1,5−シクロオクタジエン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。
一般式(6)において、Xで表されるカウンターアニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、BF4、ClO4、CF3SO3(以下、OTfと略記する)、PF6、SbF6、B(3,5−(CF32634及びBPh4等が挙げられる。
【0063】
本発明で用いられる、一般式(6)で表される化合物は、例えば、下記スキーム3に示すように、不活性ガス雰囲気下、公知の方法で得られるか、又は市販されているロジウム−オレフィン配位錯体に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で、例えばMX(Mは一価の金属陽イオンを示し、Xは前記と同じ意味を表す。)でカウンターアニオンの交換反応を行った後、前記のLで表される光学活性ビスホスフィンを反応させることにより(これによりスキーム3中の(A)又は(B)の化合物が得られる)、あるいは更に水素ガスを作用させてオレフィン性配位子を脱離させる(これによりスキーム3中の(C)の化合物が得られる)ことにより得ることができる。あるいはロジウム−オレフィン配位錯体に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で前記のLで表される光学活性ビスホスフィンを2当量反応させたのち、MX(Mは一価の金属陽イオンを示し、Xは前記と同じ意味を表す。)でカウンターアニオンの交換反応を行う(これによりスキーム3中の(B)の化合物が得られる)ことにより得ることができる。なお、化学式中のCODは、1,5−シクロオクタジエンを示す(以下同様)。
【0064】
【化14】

【0065】
本発明で用いられる、一般式(6)で表される化合物は、また、下記スキーム4に示すように、予めカウンターアニオンの交換反応を行ったロジウム−ビスオレフィン錯体にLで表される光学活性ビスホスフィンを反応させることにより、あるいは更に水素ガスでオレフィン性配位子を脱離させることによっても得ることができる。
【0066】
【化15】

【0067】
スキーム3及びスキーム4に示されるようなロジウム−オレフィン配位錯体の中心金属モル数に対しての、Lで表される光学活性ビスホスフィンの添加量は、ビスホスフィンの一部が酸化を受ける場合があるので、1.0〜2.4倍モル、より好ましくは1.05〜2.2倍モルであることが望ましい。
本発明において、一般式(6)で表される化合物を触媒として調製する際に用いられるロジウム−オレフィン配位錯体としては、オレフィン配位子の選択によって種々の錯体を取り扱うことが可能であるが、入手の容易性より、1,5−シクロオクタジエンのロジウム錯体である[Rh(COD)Cl]2や、ノルボルナジエンのロジウム錯体である[Rh(NBD)Cl]2が特に好ましい。なお、化学式中のNBDは、2,5−ノルボルナジエンを示す(以下同様)。
また、カウンターアニオン交換反応においては、MXとして例えば銀塩(AgX)を用いて行うことが、取り扱いの面で好ましい。
なお、一般式(6)で表される化合物における触媒活性種は[Rh(L)m]Xであるが、その前駆体である化合物、例えば前記スキームに記載の(A)の化合物[Rh(L)(COD)]Xも本発明の製造法において用いることができる。
【0068】
例えば前記スキームに記載の(A)、(B)及び(C)の化合物などの一般式(6)で表される化合物は、触媒として調製後は、特に精製することなく本発明の製造法に用いることができる。さらにいえば、本発明の製造方法においては、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製後即時使用することができ、具体的には、ロジウム化合物と光学活性ビスホスフィンとを反応させて該触媒を調製し、続いて反応基質を加えればよい。
本発明の製造方法において用いられる反応溶媒としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限は無いが、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えばtert−ブタノール等の非求核性のアルコール類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類及び例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら反応溶媒は、夫々単独で用いてもよく、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明の製造方法において、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の、ロジウム金属換算での使用量としては、一方の反応基質に対し、通常0.01〜20 mol%、好ましくは0.1〜10mol%、より好ましくは1〜5mol%程度で充分である。
本発明の製造方法における、[2+2+2]付加環化反応の反応温度としては、使用する基質により自ずから異なるが、通常−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃の範囲である。また、反応時間としては、使用する基質により自ずから異なるが、通常30分〜30時間、好ましくは1時間〜20時間である。なお、反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
該反応終了後は、濾過やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等、この種分野で通常行われる後処理操作を行い、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等の精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的の光学活性エステル化合物を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例中のBINAP、H8−BINAP及びSEGPHOSは以下の化合物であり、配位子中の(R)及び(S)の表記はそれぞれの絶対配置を示す。
【0071】
【化16】

【0072】
(実施例1)光学活性ビアリールジエステル化合物の製造
【0073】
【化17】

【0074】
(スキーム中のMeはメチル基、Etはエチル基、Tsはトシル基、*は軸不斉であることをそれぞれ表す。)
上記反応式に従い、光学活性ビアリールジエステル化合物を製造した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に(R)−SEGPHOS(6.2mg、0.010mmol)、[Rh(COD)2]BF4(4.1mg、0.010mmol)及び塩化メチレン1.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、得られた濃縮乾固物に塩化メチレン0.4mLを加え、これに上記反応式に示した2,4−ヘキサジイン−1,6−ジカルボン酸ジエチルエステル(38.8mg、0.200mmol)の塩化メチレン0.4mL溶液を加え、続いてN,N−ビス(2−ブチニル)トシルアミド(165.2mg、0.600mmol)の塩化メチレン1.2mL溶液を20分で滴下し、滴下後、室温で3時間撹拌した。得られた反応溶液を濃縮し、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/トリエチルアミン=20/1)で精製することにより54%の収率で目的物を無色固体として得た。得られた目的物の光学純度を測定したところ98%eeであった。
融点106.8−107.6℃;[α]25D −5.86° (c 2.93, CHCl3, >98% ee); IR (neat): 2980, 1721, 1163, 1347, 754 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 7.80 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 7.35 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 4.61 (s, 4H), 4.59 (s,4H), 4.00-3.80 (m, 4H), 2.43 (s, 6H), 2.14 (s, 6H), 1.73 (s, 6H), 0.87 (t, J = 6.9 Hz, 6H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 167.9, 143.7, 136.2, 136.0, 135.0, 133.8, 133.7, 129.9, 129.6, 127.5, 127.2, 60.5, 53.7, 53.6, 21.5, 16.3, 16.1, 13.4; HRMS (ESI): calcd for C40H44N2O8S2Na [M+Na]+ 767.2437, found 767.2436; CHIRALPAK IA, hexane//CH2Cl2/2-PrOH = 10:1:1, 1.0 mL/min, retention times: 34.2 min (major isomer) and 50.0 min (minor isomer).
【0075】
(実施例2)光学活性ビアリールジエステル化合物の製造
【0076】
【化18】

【0077】
(スキーム中のMeはメチル基、Etはエチル基、*は軸不斉であることをそれぞれ表す。)
上記反応式に従い、光学活性ビアリールジエステル化合物を製造した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に(R)−SEGPHOS(12.4mg、0.020mmol)、[Rh(COD)2]BF4(8.2mg、0.020mmol)及び塩化メチレン2.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、得られた濃縮乾固物に塩化メチレン0.8mLを加え、これに上記反応式に示した2,4−ヘキサジイン−1,6−ジカルボン酸ジエチルエステル(38.8mg、0.200mmol)の塩化メチレン0.4mL溶液を加え、続いて5−オキサ−2,7−ノナジイン(244.34mg、2.00mmol)の塩化メチレン3.0mL溶液を20分で滴下し、滴下後、室温で3時間撹拌した。得られた反応溶液を濃縮し、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/トリエチルアミン=20/1)で精製することにより28%の収率で目的物を黄色固体として得た。得られた目的物の光学純度を測定したところ99%eeであった。
黄色固体;1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 5.15 (s, 8H), 4.08-3.91 (m, 4H), 2.20 (s, 4H), 1.84 (s, 6H), 0.96 (t, J = 7.2 Hz, 6H)
【0078】
(実施例3)光学活性ビアリールモノエステル化合物の製造
【0079】
【化19】

【0080】
(スキーム中の*は軸不斉であることを表す。)
上記反応式(Meはメチル基、i−Prはイソプロピル基を表す。以下同じ。)に従い、光学活性ビアリールモノエステル化合物を製造した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に(S)−BINAP(6.2mg、0.010mmol)、[Rh(COD)2]BF4(4.1mg、0.010mmol)及び塩化メチレン2.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、塩化メチレン0.4mLを加えた。この溶液に上記反応式に示したモノイン化合物(53.7mg、0.200mmol)の塩化メチレン0.4ml溶液を加え、続いてジイン化合物(29.3mg、0.240mmol)の塩化メチレン1.2mL溶液を20分で滴下し、室温で1時間撹拌した。次いで、溶媒を留去し、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/トリエチルアミン=20/1)で精製することにより目的物を得た。収率99%。光学純度96%ee。
黄色固体; 融点 35.4-36.6 ℃; [α]25D +50.8°(c 3.76, CHCl3, 96% ee); IR (KBr) 2978, 1720, 1594, 1466, 1264, 812 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.80-7.73 (m, 1H), 7.36-7.27 (m, 3H), 7.25-7.17 (m, 1H), 5.26-5.16 (m, 4H), 4.59 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 1.78 (s, 3H), 0.69 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.42 (d, J = 6.3 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 168.4, 154.2, 139.0, 137.7, 135.2, 133.5, 133.3, 129.4, 128.7, 128.5, 127.5, 126.3, 125.5, 125.2, 123.4, 121.3, 113,1, 74.1, 74.0, 67.6, 56.5, 21.0, 20.5, 16.3, 15.9; HRMS (ESI) calcd for C25H26O4Na [M+Na]+ 413.1723, found 413.1731; CHIRALPAK IC, hexane/THF = 95:5, 0.5 mL/min, retention times: 22.2 min (minor isomer) and 24.9 min (major isomer).
【0081】
(実施例4〜13)光学活性ビアリールモノエステル化合物の製造
【0082】
【化20】

【0083】
(スキーム中の*は軸不斉であることを表す。)
種々のビスホスフィン及びモノイン化合物を用い、前記実施例3の操作に準じて行った。
結果を以下の表1に示す。触媒量はモノイン化合物に対するものである。
【0084】
【表1】

【0085】
(実施例14〜21)光学活性ビアリールモノエステル化合物の製造
【0086】
【化21】

【0087】
(スキーム中の*は軸不斉であることを表す。)
上記反応式に従い光学活性ビアリールモノエステル化合物を製造した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管にligand(0.010mmol)、[Rh(COD)2]BF4(4.1mg、0.010mmol)及び塩化メチレン2.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、塩化メチレン0.4mLを加えた。この溶液に上記反応式に示したモノイン化合物(0.200mmol)の塩化メチレン0.4ml溶液を加え、続いてジイン化合物(0.220mmol)の塩化メチレン1.2mL溶液を20分で滴下し、室温で1時間撹拌した。次いで、溶媒を留去し、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/トリエチルアミン=20/1)で精製することにより目的物を得た。その結果を以下に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
(実施例21)光学活性ビアリールモノエステル化合物の製造
【0090】
【化22】

【0091】
(スキーム中のMeはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、*は軸不斉であることをそれぞれ表す。)
上記反応式に従い光学活性ビアリールモノエステル化合物を製造した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に(S)−BINAP(6.3mg、0.010mmol)、[Rh(COD)2]BF4(4.1mg、0.010mmol)及び塩化メチレン2.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、塩化メチレン0.8mLを加えた。この溶液に上記反応式に示したモノイン化合物(50.9mg、0.200mmol)とジイン化合物(44.2mg、0.240mmol)との塩化メチレン3.2mL溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。次いで、溶媒を留去し、薄層クロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=25/1/1)で精製することにより化合物(A)と化合物(B)との混合物((A)/(B)=94/6)を96%の収率で得た。化合物(A)の光学純度は74%ee、化合物(B)の光学純度は62%eeであった。
【0092】
(実施例22)光学活性ビアリールジエステル化合物の製造
【0093】
【化23】

【0094】
(スキーム中の*は軸不斉であることを表す。)
上記反応式に従い光学活性ビアリールジエステル化合物を製造した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に(R)−H8-BINAP(6.3mg、0.010mmol)、[Rh(COD)2]BF4(4.1mg、0.010mmol)及び塩化メチレン1.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、得られた濃縮乾固物に塩化メチレン0.4mLを加え、これに上記反応式に示した2,4−ヘキサジイン−1,6−ジカルボン酸ジエチルエステル(38.8mg、0.200mmol)の塩化メチレン0.4mL溶液を加え、続いてN−(2−ブチニル)−N−(3−フェニル−2−プロピニル)−トシルアミド(0.600mmol)の塩化メチレン1.2mL溶液を20分で滴下し、滴下後、室温で3時間撹拌した。得られた反応溶液を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製することにより50%の収率で目的物を無色固体として得た。得られた目的物の光学純度を測定したところ88%eeであった。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.74 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 7.39-7.28 (m, 10H), 7.17-7.08 (m, 4H), 4.65 (s, 4H), 4.54 (d, J = 13.8 Hz, 2H), 4.39 (d, J = 14.1 Hz, 2H), 3.61 (dq, J = 10.8, 7.2 Hz, 2H), 3.54 (dq, J = 10.8, 7.2 Hz, 2H), 2.43 (s, 6H), 1.89 (s, 6H), 0.56 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
CHIRALPAK IA, hexane/CH2Cl2 = 3:1, 0.8 mL/min, retention times: 40.6 min (major isomer) and 49.4 min (minor isomer).
【0095】
以下、本実施例により得られたエステル化合物の構造と物性データを示す。
【0096】
【化24】

【0097】
無色固体;融点 148.3-149.2 ℃; [α]25D -42.8°(c 2.70, CHCl3, 91% ee); IR (KBr) 2947, 1722, 1593, 1430, 1264, 813 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.82-7.74 (m, 1H), 7.39-7.26 (m, 3H), 7.25-7.15 (m, 1H), 5.21 (s, 4H), 3.86 (s, 3H), 3.15 (s, 3H), 2.24 (s, 3H), 1.78 (s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 169.5, 154.1, 139.3, 137.7, 134.7, 133.7, 133.2, 129.5, 128.7, 127.7, 126.4, 125.8, 124.9, 123.5, 121.3, 113.1, 74.1, 74.0, 56.6, 51.2, 16.5, 16.0; HRMS (ESI) calcd for C23H22O4Na [M+Na]+ 385.1410, found 385.1435; CHIRALPAK IC, hexane/CH2Cl2/2-PrOH = 360:40:3, 0.7 mL/min, retention times: 29.2 min (major isomer) and 41.3 min (minor isomer).
【0098】
【化25】

【0099】
無色固体; 融点 106.1-107.7 ℃; [α]25D +44.3°(c 3.13, CHCl3, 94% ee); IR (KBr) 2938, 1725, 1593, 1473, 1266, 807 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.82-7.73 (m, 1H), 7.36-7.19 (m, 4H), 5.21 (s, 4H), 3.86 (s, 3H), 3.67 (dq, J = 14.4, 7.2 Hz, 1H), 3,63 (dq, J = 14.4, 7.2 Hz, 1H), 2.25 (s, 3H), 1.78 (s, 3H), 0.45 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 168.9, 154.2, 139.1, 137.7, 134.9, 133.5, 133.4, 129.4, 128.7, 128.6, 127.6, 126.3, 125.7, 125.0, 123.4, 121.3, 113,1, 74.1, 74.0, 60.1, 56.5, 16.4, 16.0, 13.0; HRMS (ESI) calcd for C24H24O4Na [M+Na]+ 399.1567, found 399.1589; CHIRALPAK IC, hexane/THF = 95:5, 0.5 mL/min, retention times: 25.2 min (minor isomer) and 27.2 min (major isomer).
【0100】
【化26】

【0101】
無色固体; 融点 73.6-74.8 ℃; [α]25D +12.2°(c 2.73, CHCl3, 90% ee); IR (KBr) 2978, 1720, 1595, 1457, 1347, 1265, 667cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.91-7.80 (m, 3H), 7.80-7.73 (m, 1H), 7.41-7.33 (m, 2H), 7.33-7.24 (m, 3H), 7.14-7.07 (m, 1H), 4.78-4.59 (m, 4H), 4.55 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 2.45 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 1.74(s, 3H), 0.67(d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.38 (d, J = 6.3 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 168.0, 154.2, 143.7, 136.1, 135.7, 134.8, 133.8, 133.7, 133.3, 130.0, 129.9, 129.6, 128.7, 127.6, 127.5, 126.7, 126.4, 125.0, 123.5, 120.8, 113.0, 67.8, 56.5, 54.0, 53.8, 21.5, 21.0, 20.4, 16.1, 15.8; HRMS (ESI) calcd for C32H33NO5SNa [M+Na]+ 566.1972, found 566.1977; CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 90:10, 1.0 mL/min, retention times: 22.1 min (major isomer) and 27.9 min (minor isomer).
【0102】
【化27】

【0103】
淡黄色油状物; [α]25D +53.4°(c 3.55, CHCl3, 97% ee); IR (neat) 2935, 1719, 1594, 1464, 1262, 810 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.83 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.78-7.69 (m, 1H), 7.35-7.18 (m, 4H), 4.56 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.96 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.27 (s, 3H), 2.14 (quint, J = 7.5 Hz, 2H), 1.80 (s, 3H), 0.68 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.40 (d, J = 6.3 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 169.2, 154.3, 143.9, 142.5, 133.81, 133.76, 131.4, 130.7, 129.0, 128.7, 127.4, 126.0, 125.6, 123.3, 122.5, 113.3, 67.2, 56.5, 32.5, 32.2, 24.1, 21.1, 20.5, 16.6, 16.2; HRMS (ESI) calcd for C26H28O3Na [M+Na]+ 411.1931, found 411.1936; doubly connected CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 97:3, 0.5 mL/min, retention times: 23.4 min (major isomer) and 27.1 min (minor isomer).
【0104】
【化28】

【0105】
無色固体; 融点 38.9-40.3 ℃; [α]25D +44.7°(c 0.62, CHCl3, 93% ee); IR (KBr) 2932, 1720, 1594, 1464, 1263, 809 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.84 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.80-7.72 (m, 1H), 7.35-7.19 (m, 4H), 4.54 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 2.85-2.62 (m, 4H), 2.21 (s, 3H), 1.85 (quint, J = 3.3 Hz, 4H), 1.78 (s, 3H), 0.72 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.36 (d, J = 6.3 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 169.5, 154.4, 136.7, 135.3, 133.9, 133.6, 133.5, 129.8, 129.6, 129.1, 128.8, 127.4, 126.1, 125.8, 123.3, 122.8, 113.3, 67.3, 56.6, 28.1, 27.7, 22.92, 22.86, 21.2, 20.5, 16.3, 15.7; HRMS (ESI) calcd for C27H30O3Na [M+Na]+ 425.2087, found 425.2109; SUMICHIRAL OA-3100, hexane/2-PrOH = 95:5, 0.5 mL/min, retention times: 15.2 min (minor isomer) and 18.5 min (major isomer).
【0106】
【化29】

【0107】
無色油状物; [α]25D +61.7°(c 2.75, CHCl3, 91% ee); IR (neat) 2978, 1719, 1594, 1470, 1240, 1014 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.83 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.81-7.74 (m, 1H), 7.52 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.36-7.28 (m, 2H), 7.25-7.20 (m, 1H), 5.26-5.17 (m, 4H), 5.21 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.11 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.59 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 3.42 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 1.79 (s, 3H), 0.70 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.34 (d, J = 6.3 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 168.4, 152.3, 139.0, 137.7, 135.2, 133.6, 133.3, 129.4, 128.5, 127.5, 126.19, 126.18, 125.51, 125.49, 123.8, 122.5, 116.3, 95.0, 74.1, 74.0, 67.7, 55.9, 21.0, 20.4, 16.3, 16.0; HRMS (ESI) calcd for C26H28O5Na [M+Na]+ 443.1829, found 443.1857; doubly connected CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 97:3, 0.5 mL/min, retention times: 35.7 min (major isomer) and 38.9 min (minor isomer).
【0108】
【化30】

【0109】
無色固体; 融点 31.8-32.9 ℃; [α]25D +33.4°(c 3.69, CHCl3, 89% ee); IR (KBr) 2978, 1720, 1593, 1454, 1262, 747 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.79 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.77-7.70 (m, 1H), 7.35-7.19 (m, 9H), 5.26-5.16 (m, 4H), 5.16 (s, 2H), 4.61 (sept, J = 6.3 Hz, 1H), 2.27 (s, 3H), 1.76 (s, 3H), 0.70 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.36 (d, J = 6.3 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 168.5, 153.6, 139.0, 137.9, 137.6, 135.2, 133.6, 133.4, 129.3, 129.0, 128.6, 128.2, 127.5, 127.4, 126.6, 126.2, 125.5, 125.5, 123.6, 122.5, 115.3, 74.1, 74.0, 71.2, 67.6, 21.1, 20.4, 16.4, 16.1; HRMS (ESI) calcd for C31H30O4Na [M+Na]+ 489.2036, found 489.2049; CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 95:5, 0.5 mL/min, retention times: 18.2 min (major isomer) and 21.2 min (minor isomer).
【0110】
【化31】

【0111】
無色固体;融点 57.9−58.7 ℃; IR (KBr) 1727, 1267, 1187, 1033, 705 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) 主生成物: δ 7.88 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.1 Hz, 1H),7.46-7.25 (m, 9H), 5.25 (s, 2H), 5.16 (d, J = 12.6 Hz, 1H), 5.10 (d, J = 12.6 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3,39 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.85 (s, 3H), 0.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 168.3, 154.3, 139.6, 139.2, 138.42, 138.37, 137.2, 134.9, 134.0, 133.4, 131.3, 130.4, 129.6, 129.4, 128.7, 128.4, 128.2, 128.0, 127.6, 127.4, 127.2, 126.4, 125.1, 123.4, 121.0, 113.3, 74.2, 74.0, 73.9, 60.0, 56.6, 56.1, 16.2, 12.9; HRMS (ESI) calcd for C29H26O4Na [M+Na]+ 461.1723, found 461.1728; CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 97:3, 0.5 mL/min, retention times for major compound: 27.4 min (minor isomer) and 35.8 min (major isomer); retention times for minor compound: 20.7 min (minor isomer) and 41.3 min (major isomer).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、三重結合を有する化合物を環化付加反応させる一般式(1)で表される軸不斉エステル化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。RXは下記式(RX)で表される基を表し、R3、R4,R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。また、式(1)中におけるR3、R4及びR5の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。
【化2】

式(RX)中、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。WはCO22又はORMを表し、R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RMは水素原子、水酸基の保護基を表す。また、式(Rx)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよく、R6とR10とで環又は二価基を形成してもよい。)
【請求項2】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、一般式(2−1)で表されるジイン化合物と一般式(3−1)で表されるジイン化合物
【化3】

(式(2−1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。式(3−1)中、Z1は二価基を表し、R11及びR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
とを環化付加反応させ一般式(4)で表される軸不斉エステル化合物
【化4】

(式(4)中、R1、R2、R11、R12及びZ1は前記と同じ意味を表す。また、式(4)中におけるR12同士で環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
を得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、一般式(2−1)で表されるジイン化合物と一般式(3−2)で表される化合物
【化5】

(式(2−1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。式(3−2)中、Z1及びZ2は二価基を表し、R13及びR14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
とを環化付加反応させ一般式(5)で表される軸不斉エステル化合物
【化6】

(式(5)中、R1、R2、R13、R14、Z1及びZ2は前記と同じ意味を表す。*は軸不斉であることを表す。)
を得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、下記一般式(2−2)で表される化合物と下記一般式(3−1)で表されるジイン化合物
【化7】

(式(2−2)中、R1は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RMは水素原子、水酸基の保護基を表す。R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。なお、R7、R8及びR9のうちの隣接する二つの基で置換基を有していてもよい芳香環、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。式(3−1)中、Z1は二価基を表し、R11及びR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
とを環化付加反応させ一般式(8)
【化8】

(式(8)中、R1、RM、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びZ1は前記と同じ意味を表す。また、式(8)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよく、R10とR12とで環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
で表される軸不斉エステル化合物を得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒が下記一般式(6)で表される化合物である請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
[Rh(L)m(Y)n]X (6)
(式(6)中、Lは下記式(7)で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のときn=0又はn=1であり、m=2のときn=0である。
1516P−Q−PR1718 (7)
(式(7)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。))
【請求項6】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製する際に、水素ガスを用いてオレフィン性配位子を脱離させることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(4’)で表される光学活性化合物。
【化9】

(式(4’)中、R1及びR2は同一または異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R11は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12'は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Z1は二価基を表す。また、式(4’)中におけるR12'同士で環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
【請求項8】
一般式(8’)で表される光学活性化合物。
【化10】

(式(8’)中、R1は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R7、R8及びR9はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R11は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R10'及びR12'はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。RMは水素原子、水酸基の保護基を表す。なお、R7、R8及びR9のうちの隣接する二つの基同士で置換基を有していてもよい芳香環、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。Z1は二価基を表す。また、式(8’)中におけるR7、R8及びR9の中から選ばれる隣接する任意の2つの基同士で環又は二価基を形成してもよく、R10'とR12'とで環又は二価基を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)

【公開番号】特開2010−13437(P2010−13437A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117750(P2009−117750)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】