説明

軸体処理装置

【課題】 軸体を凹部に適切に収納することの可能な軸体処理装置を提供する。
【手段】 軸体保持円盤42の進行方向側にあるガイド部材34bの先端部には、回転手段である回転体48が設けられている。回転体48により、ネジ32を凹部44の奥側に向けて押し出すようにしているので、ネジ32を凹部44に適正に収納できる確率を高くすることができる。また、仮に、ネジ32が凹部44に正しく収納されなかった場合には、再び、回転体48がネジ32の本体部32bに接して、ネジ32を凹部44の奥側に押しやり、正しい位置に収納することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネジ、釘などの頭部を有する軸体に対し検査などの処理を行うための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来の頭部を有する軸体の検査装置の概要を示す。検査対象である軸体2(ネジなど)が、搬送ガイド4に頭部を支えられて、矢印6の方向に搬送されてくる。この搬送ガイド4の先端部には、軸体2を個別に保持するための凹部8を有する軸体保持円盤10が設けられている。軸体保持円盤10は、矢印12の方向に回転している。
【0003】
図に示す状態から、軸体保持円盤10が回転し、搬送ガイド4の搬送中心線14が凹部8の中心近傍に来ると、ノズル(図示せず)から空気が放出され、搬送ガイド4の先端にある軸体2を、凹部8の方向に移動させる。これにより、軸体2は、1個ずつ軸体保持円盤10の凹部8に保持される。
【0004】
軸体保持円盤10によって保持された軸体2は、検査部16によって寸法などが検査される。検査の結果が不良であった軸体2は、ノズル18によって不良品回収通路20に落とされる。検査の結果が良好であった軸体2は、ノズル22によって良品回収通路24に落とされる。このようにして、軸体の良品と不良品を選別することができる。
【0005】
このような従来の軸体処理装置においては、搬送ガイド4から軸体保持円盤10への軸体2の移動が適切に行われない場合があった。たとえば、軸体2が凹部8に正しく収納されない状態で、軸体保持円盤10が回転すると、搬送ガイド4と軸体保持円盤10との間に軸体2が挟まり、軸体処理装置の故障を招くという問題があった。このような事態は、処理速度の低下を招くだけでなく、軸体2を傷つけてしまったり、軸体処理装置の処理が不安定になって、不良品である軸体2が誤って良品回収通路24に落とされてしまうという問題を生じることになる。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1には、軸体2が凹部8に正しく収納されなかったことを検出し、搬送ガイド4からの軸体2の供給を停止することのできる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−225457
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、軸体2が適切に凹部8に収納されなかった場合の損害を、それ以上拡大することを防ぐことを目的とするものであり、軸体2を凹部8に確実に収納することはできない。
【0009】
この発明は、上記のような問題点を解決して、軸体を凹部に適切に収納することの可能な軸体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)この発明に係る軸体処理装置は、頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を搬送する軸体搬送部と、軸体搬送部の先端部から出た軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた処理部とを備えた軸体処理装置において、前記軸体搬送部の先端部に、軸体に対し、前記軸体保持部の凹部の奥側方向に向かう力を与えるように、回転して軸体に接する回転手段を設けたことを特徴としている。
【0011】
したがって、軸体を凹部に確実に移送できる確率を増すことができ、装置の処理効率を向上させることができる。
【0012】
(2)この発明に係る軸体処理装置は、軸体保持部が、外周に凹部を有し、回転駆動される円盤であることを特徴としている。
【0013】
したがって、軸体を保持した円盤を回転させることにより、各軸体を順次、処理部に移動させることができる。
【0014】
(3)この発明に係る軸体処理装置は、凹部の移動方向前面側の角部分を、曲線状としたことを特徴としている。
【0015】
したがって、押し出された軸体が、曲線に沿って凹部にスムースに導入される。
【0016】
(4)この発明に係る軸体処理方法は、頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を軸体搬送部によって搬送し、軸体搬送部の先端部から出た軸体を、当該軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部を有し、所定方向に移動する軸体保持部によって保持し、軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行う軸体処理方法において、前記軸体搬送部の先端部において、軸体に接する回転体により、軸体を凹部の奥側方向に運ぶ力を与えることを特徴としている。
【0017】
したがって、軸体を凹部に確実に移送できる確率を増すことができ、処理効率を向上させることができる。
【0018】
(5)この発明に係る軸体処理装置は、小径部に向けて径が連続的に変化する部分を有する頭部と当該頭部の小径側に連続する小径部とを有する連続変化軸体または、頭部と当該頭部より小径の小径部とを有し階段状に径が変化する部分を有する階段変化軸体を搬送する軸体搬送部と、軸体搬送部の先端部から出た前記軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための円形凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた処理部とを備えた軸体処理装置において、前記連続変化軸体の径の連続的変化に対応するよう、前記軸体保持部の円形凹部は、軸体の軸方向に、段差をもって径の異なる部分を設けたことを特徴としている。
【0019】
したがって、軸体の頭部の径が連続的に変化する場合であっても、軸体保持部により安定して軸体を保持することができる。
【0020】
(6)この発明に係る軸体処理装置は、頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を搬送する軸体搬送部と、軸体搬送部の先端部から出た軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた処理部とを備えた軸体処理装置において、前記処理部は回転軸を中心に回転可能に構成され、平常時は軸体保持部を覆うように配置され、軸体保持部を取り替える際には、回転させることによって軸体保持部を覆わない位置に待避できるよう構成されていることを特徴としている。
【0021】
したがって、軸体保持部の取り替え作業を容易とした軸体処理装置を提供できる。
【0022】
(7)この発明に係る軸体処理装置は、頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を搬送する軸体搬送部と、軸体搬送部の先端部から出た軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する検査を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた検査部と、制御部の指令を受けて、軸体保持部に保持された軸体を、不良品回収部に連なる不良品回収通路に脱落させる不良品脱落部と、制御部の指令を受けて、軸体保持部に保持された軸体を、良品回収部に連なる良品回収通路に脱落させる良品脱落部と、検査部の検査結果を受けて、不良品であると判断した軸体を、不良品脱落部によって軸体保持部から不良品回収通路に脱落させ、良品であると判断した軸体を、良品脱落部によって軸体保持部から良品回収通路に脱落させる制御部とを備えた軸体処理装置において、不良品脱落部は、軸体の脱落が行われたか否かを検出する脱落検出部を有し、前記制御部は、不良品であると判断された軸体が不良品脱落部によって脱落されていないことを脱落検出部が検出すると、少なくとも当該未脱落不良品である軸体を、良品回収部に収納されないように制御することを特徴としている。
【0023】
したがって、良品の中に不良品が混入することを防止することができる。
【0024】
「軸体搬送部」とは、軸体を搬送して軸体保持部に与える機能を有するものをいい、頭部を保持して搬送するものに限らず本体部や全体を保持して搬送するものも含む概念である。実施形態では、搬送ガイド34がこれに該当する。
【0025】
「軸体保持部」とは、軸体を保持して処理部に移動させる機能を有するものをいい、頭部を保持して移動させるものに限らず本体部や全体を保持して移動させるものも含む概念である。実施形態では、軸体保持円盤42がこれに該当する。
【0026】
「処理部」とは、軸体保持部に保持されて移動されてきた軸体に対して何らかの処理を行う機能を有するものをいう。また、「処理」とは、軸体に対する塗装などの加工だけでなく、検査なども含む概念である。実施形態では、寸法センサ76、カメラ79、80などがこれに該当する。
【0027】
「回転手段」とは、軸体に接して軸体に対して移動力を与える手段を含む概念である。実施形態では、回転体48がこれに該当する。
【0028】
「検査部の検査結果」とは、センサなどからの出力を判断した結果だけでなく、センサなどの出力自体も含む概念である。実施形態では、図16のテーブルにおける良否判断がこれに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のネジ検査装置を示す図である。
【図2】この発明の一実施形態によるネジ検査装置を示す図である。
【図3】凹部44の詳細を示す図である。図3Aは平面図、図3Bは側面図である。
【図4】回転体48の近傍を示す側面図である。
【図5】センサ70の詳細を示す図である。
【図6】インデックス用センサ82の詳細を示す図である。
【図7】寸法センサ76、78の詳細を示す図である。
【図8】カメラ79、80の配置状態を示す図である。
【図9】制御部84の詳細を示す図である。
【図10】搬送ガイド34の先端部に設けられた回転体48の近傍を示す平面図である。
【図11】制御プログラム106のフローチャートである。
【図12】制御プログラム106のフローチャートである。
【図13】制御プログラム106のフローチャートである。
【図14】制御プログラム106のフローチャートである。
【図15】凹部44に対して付されたインデックスIDを例として示す図である。
【図16】処理テーブルを示す図である。
【図17】良品回収通路94の詳細を示す図である。
【図18】センサ70の回転構造を示す図である。
【図19】他の実施形態による回転体48の配置を示す図である。
【図20】他の実施形態による回転体48の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.構造
図2に、この発明の一実施形態による軸体検査装置を示す。軸体搬送部である搬送ガイド34は、左右ガイド部材34a、34bの間にガイド空間36を有している。ガイド空間36の幅は、検査対象であるネジ32の頭部32a(図4参照)より狭く、ネジ32の本体部32b(図4参照)より広く構成されている。また、搬送ガイド34は、矢印38の方向に向かって、徐々に低くなるように構成されている。
【0031】
したがって、ネジ32は、頭部32aをガイド部材34a、34bによって支えられながら、搬送中心線40に沿って、矢印38の方向に搬送されることになる。
【0032】
搬送ガイド34の先端部近傍には、軸体保持円盤42が設けられている。軸体保持円盤42は、モータなどの駆動手段(図示せず)により、矢印46の方向に回転させられる。軸体保持円盤42の外周には、所定間隔にて凹部44が設けられている。図3に示すように、凹部44の幅Wは、ネジ32の頭部32aより狭く、ネジ32の本体部32bより広く構成されている。したがって、凹部44によって、ネジ32の頭部32aを支えることが可能となっている。
【0033】
図2に戻って、軸体保持円盤42の進行方向側にあるガイド部材34bの先端部には、回転手段である回転体48が設けられている。この回転体48を側面から見た図を、図4に示す。回転体48は、下部ベース50、中間ベース52によって軸支されている。また、回転体48は、プーリ54に巻かれたベルト55を介して、モータなどの駆動手段(図示せず)により回転させられる。
【0034】
なお、回転体48の上部は、ガイド部材56によって支えられている。ガイド部材56は、ガイド軸58に固定されており、ガイド軸58は、下部ベース50、中間ベース60によって軸支されている。したがって、図2の矢印62に示すように、ガイド部材56は、ガイド軸58を中心として左右に回動させることができる。これにより、回転体48の上部の位置をガイドすることが可能である。
【0035】
図10に、回転体48近傍の拡大図を示す。軸体保持円盤42が回転し、搬送中心線40が凹部44の中心と一致すると(あるいは一致する手前になると)、ノズル66(図4参照)から空気が吹き出され、ネジ32を矢印68の方向に押し出す。これとともに、ネジ32の本体部32b(図においては、頭部32aは省略している)が、矢印64の方向に回転する回転体48に接する。これにより、ネジ32は、矢印11の方向に回転させられるとともに、矢印68の方向に押し出される。なお、凹部44の深さ、幅は、本体部32bの直径に対して、僅かに大きく形成することが好ましい(この実施形態では、本体部32bの直径に対して0.5%程度大きく形成した)。
【0036】
このように、この実施形態では、回転体48により、ネジ32を矢印11の方向に押し出すようにしているので、ネジ32を凹部44に適正に収納できる確率を高くすることができる。また、仮に、ネジ32が凹部44に正しく収納されなかった場合には、再び、回転体48がネジ32の本体部32bに接して、ネジ32を矢印68の方向に押しやり、正しい位置に収納することが可能となる。
【0037】
図2に戻って、軸体保持円盤42の外周上には、凹部44にネジ32が保持されているかどうかを判断するための光センサ70、72、74が設けられている。光センサ70の詳細を、図5に示す。発光素子70aに対向するように受光素子70bが設けられている。したがって、凹部44にネジ32が保持されていれば、発光素子70aからの光が遮られ、保持されていなければ、発光素子70aからの光は遮られない。これにより、受光素子70bからの出力があれば(受光すれば)ネジ32が保持されておらず、出力がなければ(受光しなければ)ネジ32が保持されていると判断することができる。他の光センサ72、74も同様の構成である。
【0038】
図2に戻って、インデックス用の光センサ82も設けられている。図6に、光センサ82の詳細を示す。発光素子82aと受光素子82bが、軸体保持円盤42を挟むように設けられている。凹部44の部分においては受光素子82bが光を受光し、凹部44の内部分においては受光素子82bが光を受光しない。したがって、受光素子70bからの出力があれば(受光すれば)凹部44であり、出力がなければ(受光しなければ)凹部44でないと判断することができる。
【0039】
これら光センサ70、72、74、82の出力は、制御部84に与えられている。
【0040】
図2に戻って、軸体保持円盤42の上には、寸法センサ76が設けられている。図7に寸法センサ76の詳細を示す。発光素子76aに対向するように、列状に配置された多数の受光素子76bが設けられている。凹部44に保持されたネジ32の頭部32aによって発光素子76aからの光が遮られるので、頭部32aの高さ寸法に応じた位置の受光素子76bまでが、光を受光しないことになる。これにより、頭部32aの寸法を計測することができる。同様にして、本体部32bの長さを計測するための発光素子78a、受光素子78bを有する寸法センサ78が、軸体保持円盤42の下に設けられている。
【0041】
図2に戻って、ネジ32を上部から測定するカメラ79、側面から測定するカメラ80が設けられている。これらカメラ79、80により、ネジ32の頭部の詳細な寸法、ねじ山ピッチなどを計測することができる。図8に、カメラ79、80の詳細を示す。カメラ79、80による撮像時には、下部の光源81が発光されるようになっている。
【0042】
これら寸法センサ76、78、カメラ79、80の出力は、制御部84に与えられている。
【0043】
また、搬送ガイド34の先端部近傍には、空気を吹き付けるためのノズル86が設けられている。このノズル86は、制御部84によって制御され、ネジ32を凹部44に押しやる力を与える。
【0044】
また、軸体保持円盤42上には、不良品のネジ32を不良品回収通路92に落とすための不良品脱落ノズル88、良品のネジ32を良品回収通路94に落とすための良品脱落ノズル90が設けられている。
【0045】
図9に制御回路の詳細を示す。CPU100には、操作用のタッチパネル102、記録装置104、ノズル86、88、90、センサ70、72、74、インデックス用センサ82、寸法センサ76、78、カメラ79、80、光源81が接続されている。記録装置104には、各部を制御するための制御プログラム106が記録されている。
【0046】
2.検査処理
制御プログラム106のフローチャートを図11〜図14に示す。なお、以下では、各処理が順次行われるように記載しているが、並列して処理を行うようにしてもよい。CPU100は、インデックス用センサ82が凹部44を検出したかどうかを判断する(ステップS1)。凹部44を検出すると、当該凹部にインデックスIDを付す(ステップS2)。たとえば、図15に示すように、軸体保持円盤42に30個の凹部44が設けられていた場合、1〜30までのインデックスIDが、各凹部44に付されることになる。
【0047】
図15に示すように、インデックス用センサ82と、ネジ32が搬送ガイド34によって移送される位置、各センサ70、72、74の位置、寸法センサ76、カメラ79、80の位置などとの関係は予め定まっている。したがって、インデックス用センサ82に位置する凹部44のインデックスIDを特定することにより、他のセンサなどの位置にある凹部44のインデックスIDも特定することができる。
【0048】
CPU100は、ノズル86を駆動し、搬送ガイド34からのネジ32を凹部44の方向に押す(ステップS3)。なお、フローチャートでは、凹部44にインデックスIDを付与した後に、ノズル86の駆動を行うように示しているが、実際には、インデックス用センサ82が凹部44を検出すると同時に、ノズル86の駆動が行われる(以下の処理において同様である)。
【0049】
この際、前述のように、回転体48によって、ネジ32が凹部44に向けて付勢される。図15に示すように、インデックス用センサ82が凹部44にインデックスIDとして「1」を付与した場合には、インデックスID「29」が付与されている凹部44にネジ32が収納されることになる。
【0050】
また、CPU100は、センサ70の出力を取得してネジ32の有無を記録する(ステップS4)。ここでは、図15に示すように、インデックスID「23」が付与されている凹部44にネジが収納されているか否かを判断する。本来は、全ての凹部44にネジ32が収納されるが、搬送ガイド34からの搬送が遅れるなどの理由によって、ネジ32が収納されない凹部44も存在する。ネジ32の有無は、図16に示すようなテーブルとして、記録装置104に記録される。
【0051】
CPU100は、寸法センサ76、78の位置に、ネジ32が存在するかどうかを判断する(ステップS5)。これを判断するためには、テーブルを参照して、インデックスID「22」にネジ「有」と記録されているか「無」と記録されているかを判断すればよい。ここでは、図16に示すように、「有」と記録されているので、ステップS6を実行する。
【0052】
ステップS6において、CPU100は、寸法センサ76、78の出力を取得し、頭部寸法や長さが予め記録している規格範囲内にあるかどうかを判断する。CPU100は、その結果により、当該ネジ32が良品であるか不良品であるかを決定し、図16のテーブルに記録する。図16の例では、良品を示す「良」が記録されている。
【0053】
なお、ステップS5において、寸法センサ76、78の位置にネジ32が存在しない場合、ステップS6は実行しない。これにより、無駄な測定処理を行わないようにすることができる。
【0054】
CPU100は、カメラ79、80の位置にネジ32が存在するかどうかを判断する(ステップS7)。存在すれば、寸法センサ76、78よる判定が「良」であるか否かを判断する(ステップS8)。「良」であれば、CPU100は、光源81(図8参照)を点灯させ、カメラ79、80からの画像を取り込む(ステップS9)。続いて、CPU100は、取得した画像に基づいて、ネジ32の頭部の形状、ねじ山の形状などが規格内にあるかどうかを判断する。判断結果を、図16のテーブルに記録する(ステップS10)。
【0055】
CPU100は、寸法センサ76、78による判定結果が「良」であったとしても、カメラ79、80による判定結果が「否」であれば「否」(不良品)を記録する。
【0056】
また、ステップS7において、ネジ32が存在しなければステップS8〜S10は実行しない。さらに、ステップS7において、ネジ32が存在しても、寸法センサ76、78の判定結果が「否」であればステップS8〜S10は実行しない。これにより、無駄な発光や測定処理を行わないようにすることができる。
【0057】
なお、図16に示すように、ここでは、カメラ79、80の位置にはネジ32が存在しないので、ステップS8〜S10は実行されず、ステップS11が処理されることになる。
【0058】
CPU100は、ステップS11において、不良品脱落ノズル88(センサ72)の位置に、ネジ32が存在するか否かを判断する。存在すれば、当該ネジ32に異常処理フラグが付されているかどうかを判断する(ステップS12)。なお、平常状態では、異常処理フラグは付されていないので、ステップS13に進む。なお、異常処理フラグについては後述する。
【0059】
ステップS13において、CPU100は、当該ネジ32が不良であるかどうかを判断する。不良(「否」)であれば、CPU100は、不良品脱落ノズル88を作動し、凹部44からネジ32を脱落させる(ステップS14)。脱落した不良品のネジ32は、不良品回収路92(図2参照)を介して、不良品回収部(図示せず)に回収される。さらに、CPU100は、センサ72の出力により、ネジ32が脱落されたかどうかを判断する(ステップS15)。予定どおり脱落していれば、ステップS16に進む。脱落していない場合には、異常処理を行う。異常処理については、後述する。
【0060】
ステップS13において、CPU100は、ネジ32が不良でなければ、ステップS16に進む。
【0061】
なお、ここでは、図16に示すように、不良品脱落ノズル88の位置(インデックスID「10」)にあるネジ32は、不良品であるので、ステップS14、S15が実行される。
【0062】
ステップS16において、CPU100は、良品脱落ノズル90(センサ74)の位置に、ネジ32が存在するかどうかを判断する。存在すれば、ステップS17において、当該ネジ32に異常処理フラグが付いているかどうかを判断する。ここでは、異常処理フラグが付いていないものとして説明を進める。ステップS18において、CPU100は、良品回収通路94を良品回収箱200に向ける(図17参照)。なお、通常の状態では、進路変更板204は実線の位置にあり、良品回収通路94は良品回収箱200に向いているので、そのままの状態とする。
【0063】
CPU100は、良品脱落ノズル90を作動させ、凹部44にある良品のネジ32を、良品回収通路94に脱落させる。これにより、良品のネジ32は、良品回収箱200に回収される。なお、仮に、良品のネジ32が、良品脱落ノズル90によっても落ちなかった場合には、図2に示す強制脱落ガイド96によって良品回収通路94に落とすことができる。強制脱落ガイド96は、頭部32aに当接し、徐々にネジ32を軸体保持円盤42の外周に押しやり、最後には脱落させるものである。
【0064】
以上の処理が終了すると、CPU100は、ステップS1以下を繰り返し実行する。
【0065】
(異常処理について)
次に、ステップS14において、不良品のネジ32を凹部44から脱落させようとしたにもかかわらず、ネジ32が落ちなかった場合について説明する。これを放置すると、不良品のネジ32は、良品脱落ノズル90または強制脱落ガイド96によって、良品回収通路94に落とされることになってしまう。これでは、良品の中に不良品が混入してしまうことになる。
【0066】
そこで、この実施形態では、不良品であると判断したネジ32が、不良品脱落ノズル88によって落ちなかった場合(ステップS15)、次のような異常処理を行うようにしている。CPU100は、図16に示すテーブルの全てのネジ(全てのインデックスID)に対して、異常処理フラグを記録する(ステップS20)。次に、CPU100は、良品回収通路94を仕掛品回収箱202に向ける(ステップS21)。
【0067】
図17に、良品回収通路94の側断面を示す。良品回収通路94の底部には、軸206を中心として回動可能な進路変更板204が設けられている。進路変更板204は、通常の状態においては、図の実線に示す位置に保持されている。したがって、良品回収通路94に落とされたネジ32は、良品回収箱200に回収される。
【0068】
CPU100は、ステップS21において、モータなどの駆動手段(図示せず)を制御して、進路変更板204を二点鎖線で示す状態に回動させる。これにより、良品回収通路94に落とされたネジ32は、仕掛品回収箱202に回収されることになる。
【0069】
したがって、ステップS14において、脱落されるべきであったにもかかわらず、凹部44に残ってしまった不良品のネジ32は、ステップS19において、良品回収通路94に落とされるが、仕掛品回収箱202に回収されることになる。
【0070】
また、この実施形態では、上記の異常が生じた時点で軸体保持円盤42に保持されている全てのネジ32に対して異常フラグを記録している。したがって、以後、CPU100は、これら異常処理フラグが記録されているネジ32を、良品回収通路94に落とし、仕掛品回収箱202に回収する(ステップS12、S17、S19)。
【0071】
なお、脱落されるべきであったにもかかわらず、凹部44に残ってしまった不良品のネジ32だけを、仕掛品回収箱202に回収するようにしてもよい。この実施形態では、安全をみて、異常が生じた時点で軸体保持円盤42に保持されている全てのネジ32を仕掛品回収箱202に回収するようにしている。
【0072】
異常処理フラグの記録されていないネジ32(異常が起こった後に、軸体保持円盤42に保持されたネジ32)が見いだされると、CPU100は、良品回収通路94の進路変更板204を、図17の実線で示す位置に戻す(ステップS18)。これにより、以降は、良品回収通路94に落とされたネジ32は、良品回収箱200に回収されることになる。
【0073】
(凹部44の形状について)
図3に凹部44の詳細を示す。図3Aが平面図、図3Bが側面図である。この実施形態では、図3Bに示すように、凹部44の上部に段差44aを設けている。これにより、二点鎖線で示すように、頭部32aが皿状になったネジ32に対しても、段差44aの二点の角44b、44cで頭部32aを支えることができ、安定した保持を実現できる。段差は、2段以上(複数の階段状)設けるようにしてもよい。
【0074】
なお、段差の二点の角44b、44cを結ぶ線を、頭部32aの傾斜と一致するように、段差を設けることが好ましい。なお、多くの場合、当32aの傾斜は90度であることから、これに合致するように段差を設けることが適切である。また、段差44aの上部の幅W2を、頭部32aの径より小さくしておけば、傾斜していない頭部32aを有するネジ32(図4に示すようなネジ32)に対しても、兼用して用いることができる。
【0075】
凹部44の進行方向46の前面側は、図3Aに示すように、角を丸く形成している。これにより、搬送ガイド34から凹部44へのネジ32の移動を、スムースに行うことができる。角がネジ32に当接して、ネジ32の凹部44への侵入を妨害することがないからである。
【0076】
(軸体保持円盤42の交換)
軸体保持円盤42の凹部44は、検査対象であるネジ32の大きさや形状などによって適切な大きさ、形状とすることが必要である。そこで、この実施形態では、軸体保持円盤42を取り替え可能に構成している。
【0077】
しかし、軸体保持円盤42の上部には、図2に示すように、センサ70、72、74、寸法センサ76、カメラ79、ノズル88、90が設けられている。したがって、軸体保持円盤42を取り替えようとするときに、これらが邪魔になって作業が困難になる。
【0078】
そこで、この実施形態では、図18に示すような構造としている。図18では、センサ70を例にとって示したが、他のセンサ、カメラ、ノズルについても同様である。
【0079】
センサ70の根本部分は、ブロック71の溝73に保持されている。また、止めネジ77によって、固定されている。止めネジ77をゆるめると、軸75を中心として、破線に示す状態まで回転可能に構成されている。したがって、軸体保持円盤42を取り替える場合には、波線の状態にすれば、取り替えが容易となる。
【0080】
なお、ノズル88はセンサ72とともに回転するように、ノズル90はセンサ74とともに回転するように構成することが好ましい。同様に、寸法センサ76がセンサ70とともに回転するように構成してもよい。
【0081】
3.その他の実施形態
(1)上記実施形態では、処理装置として検査装置を例に説明を行った。しかし、ネジなどの軸体を軸体保持円盤42に保持して、塗装を行うなどの処理を行う装置にも適用することができる。
【0082】
(2)上記実施形態では、軸体としてネジ32を例として説明した。しかし、少なくとも頭部を有し、頭部の径よりも小さい径の部分を有する軸体であれば同様に適用することができる。たとえば、釘、ピンなどにも適用することができる。
【0083】
(3)上記実施形態では、図10に示すように、軸体保持円盤48の進行方向前方側に回転体48を1つ設けている。しかし、進行方向後方側に設けてもよい。また、図19に示すように、双方に設けるようにしてもよい。
【0084】
(4)上記実施形態では、ネジ32の本体部32bに接するように回転体48を設けているが、ネジ32の頭部32aに接するように回転体48を設けるようにしてもよい。また、図20に示すように、頭部32aに接するように、矢印51の方向に回転する回転体48を設けてもよい。
【0085】
(5)上記実施形態では、回転体48として、金属シャフトを用いている。しかし、表面に弾力性部材(ゴムなど)を設けて摩擦力を大きくしてもよい。あるいは、金属シャフトの表面を粗面加工(スクラッチブラスト加工など)することによって摩擦力を大きくするようにしてもよい。これにより、ネジ32を押し出す力を大きくすることができる。
【0086】
(6)上記実施形態では、軸体保持部として回転する軸体保持円盤42を用いている。しかしながら、リニアに移動する軸体保持部(たとえば、直線的な無限軌道)を用いてもよい。
【0087】
(7)上記実施形態では、良品と不良品を回収箱に回収している。しかし、不良品を脱落させ、良品をそのまま製造工程に移送して使用するようにしてもよい。
【0088】
(8)上記実施形態では、良品と判断したネジ32について、ノズル90により良品回収通路94に脱落させるようにしている。しかし、ノズル88を制御して不良品と判定したネジ32を不良品回収通路92に脱落させ、それ以外のネジ32は良品であるとして、強制脱落ガイド96によって脱落させるようにしてもよい。この場合、ノズル90を省略しながらも、CPU100により、強制脱落ガイド96まで搬送して良品回収通路94に脱落させるかどうかを制御することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を搬送する軸体搬送部と、
軸体搬送部の先端部から出た軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた処理部と、
を備えた軸体処理装置において、
前記軸体搬送部の先端部に、軸体に対し、前記軸体保持部の凹部の奥側方向に向かう力を与えるように、回転して軸体に接する回転手段を設けたことを特徴とする軸体処理装置。
【請求項2】
請求項1の軸体処理装置において、
前記軸体保持部は、外周に凹部を有し、回転駆動される円盤であることを特徴とする軸体処理装置。
【請求項3】
請求項1または2の軸体処理装置において、
前記凹部の移動方向前面側の角部分を、曲線状としたことを特徴とする軸体処理装置。
【請求項4】
頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を軸体搬送部によって搬送し、
軸体搬送部の先端部から出た軸体を、当該軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部を有し、所定方向に移動する軸体保持部によって保持し、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行う軸体処理方法において、
前記軸体搬送部の先端部において、軸体に接する回転体により、軸体を凹部の奥側方向に運ぶ力を与えることを特徴とする軸体処理方法。
【請求項5】
小径部に向けて径が連続的に変化する部分を有する頭部と当該頭部の小径側に連続する小径部とを有する連続変化軸体または、頭部と当該頭部より小径の小径部とを有し階段状に径が変化する部分を有する階段変化軸体を搬送する軸体搬送部と、
軸体搬送部の先端部から出た前記軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための円形凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた処理部と、
を備えた軸体処理装置において、
前記連続変化軸体の径の連続的変化に対応するよう、前記軸体保持部の円形凹部は、軸体の軸方向に、段差をもって径の異なる部分を設けたことを特徴とする軸体処理装置。
【請求項6】
頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を搬送する軸体搬送部と、
軸体搬送部の先端部から出た軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する処理を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた処理部と、
を備えた軸体処理装置において、
前記処理部は回転軸を中心に回転可能に構成され、平常時は軸体保持部を覆うように配置され、軸体保持部を取り替える際には、回転させることによって軸体保持部を覆わない位置に待避できるよう構成されていることを特徴とする軸体処理装置。
【請求項7】
頭部と当該頭部より小径の小径部とを有する軸体を搬送する軸体搬送部と、
軸体搬送部の先端部から出た軸体の小径部を取り囲み、頭部を支えるための凹部が設けられ、所定方向に移動する軸体保持部と、
軸体保持部によって保持され移動される軸体に対する検査を行うため、軸体保持部の移動経路近傍に設けられた検査部と、
制御部の指令を受けて、軸体保持部に保持された軸体を、不良品回収部に連なる不良品回収通路に脱落させる不良品脱落部と、
制御部の指令を受けて、軸体保持部に保持された軸体を、良品回収部に連なる良品回収通路に脱落させる良品脱落部と、
検査部の検査結果を受けて、不良品であると判断した軸体を、不良品脱落部によって軸体保持部から不良品回収通路に脱落させ、良品であると判断した軸体を、良品脱落部によって軸体保持部から良品回収通路に脱落させる制御部とを備えた軸体処理装置において、
不良品脱落部は、軸体の脱落が行われたか否かを検出する脱落検出部を有し、
前記制御部は、不良品であると判断された軸体が不良品脱落部によって脱落されていないことを脱落検出部が検出すると、少なくとも当該未脱落不良品である軸体を、良品回収部に収納されないように制御すること
を特徴とする軸体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−166933(P2012−166933A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30923(P2011−30923)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(511041673)株式会社オーエスアイツール (1)
【Fターム(参考)】