説明

軸受ブッシュ組立体、軸受と半円状の軸受ブッシュ半部

【課題】
簡単な方法で製造でき、オイル溝の流れ横断面が同じ大きさの支持領域では従来の軸受ブッシュの場合より大きい軸受ブッシュ組立体並びに軸受、特にクランク軸主軸受と質量補償伝動装置軸受を準備すること。
【解決手段】
この発明は、軸受(1)の幅B1 を備える軸受ブッシュ組立体(10)に関し、前記組立体は二つの半円状の軸受ブッシュ半部(11、11’)から成り、軸受ブッシュ半部は互いにから軸方向距離に位置されて幅B2 <B1 /2を有する。この発明によると、軸受ブッシュ半部(11、11’)の周辺の周りに延びているオイル溝(14)が後者(11、11’)の間に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受ブッシュ組立体、軸受と半円状の軸受ブッシュ半部に関する。その外に、この発明はクランク軸主軸受と質量補償伝動装置軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第2678767号明細書(特許文献1)から、二つの間隔を置いて互いに配置されたブッシュから成り、それらブッシュ間にオイル通路が形成されている小さい連接棒目の軸受が知られている。軸受ブッシュは大きな連接棒目の軸受と同様に僅かに言及されている。
【0003】
自動車或いはトラックエンジンのクランク軸は所謂主軸受に支承され、その軸受を介してクランク軸の連接棒軸受のオイル供給が行われる。主軸受はつばを備えて且つつばなしに形成されている。このオイル供給を保証するために、主軸受は上軸受ブッシュを有し、この軸受ブッシュが少なくとも一つのオイル孔と実質的に全内周にわたり延びているオイル溝とを有する。適切なクランク軸ジャーナルが半径方向オイル孔を有し、オイル孔を通して上軸受ブッシュに準備されたオイルが連行されて連接棒軸受に供給される。上軸受ブッシュはつばを備えて且つつばなしに形成されている。この種のつば軸受ブッシュは例えば米国特許第4845817号明細書(特許文献2)から知られている。けれども、通常には所謂構成されたつば軸受ブッシュが重要であり、つば軸受ブッシュには始動円板が移動自在に軸受ブッシュに配置されている。
【0004】
つばを備えて且つつばなしのオイル溝を備える軸受ブッシュは所謂質量補償伝動装置軸受に挿入されている。
【0005】
そのような軸受ブッシュの要件はとりわけオイル溝の流れ横断面の大きさに関する。出来るだけ大きなオイル量を準備するために、幅広く且つ深いオイル溝が望ましい。無論、深さは軸受ブッシュの安定性に関して制限されている。溝底における僅かな材料厚に基づいて、軸受ブッシュ背部が事情によっては軸受収容部に完全には当接しない。幅広過ぎるオイル溝の場合には、さらに、軸受ブッシュの残りの支持領域が僅か過ぎる。
【0006】
従来の軸受ブッシュの別の欠点は、オイル溝が切削工程によって製造されなければならないこと、少なくとも一つのオイル孔が設けられなければならないこと、除去された材料が廃棄物として処理されなければならないことにある。オイル溝の製造並びにオイル孔の製造の場合には、最小の切屑(スパンコール)が生じる。これは仕上げ処理において出来るだけ邪魔になり、費用のかかる洗浄作用によって除去されなければならない。
【特許文献1】米国特許第2678767号明細書
【特許文献2】米国特許第4845817号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、簡単な方法で製造でき、オイル溝の流れ横断面が同じ大きさの支持領域では従来の軸受ブッシュの場合より大きい軸受ブッシュ組立体並びに軸受、特にクランク軸主軸受と質量補償伝動装置軸受を準備することである。
この発明の課題は、この種の軸受ブッシュ組立体用の軸受ブッシュ半部を準備することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、二つの軸方向に間隔を置いた互いに配置されて幅B2 <B1 /2の半円状の軸受ブッシュ半部を備える軸受用幅B1 の軸受ブッシュ組立体によって解決され、軸受ブッシュ半部の間には軸受ブッシュ半部の周辺方向に延びているオイル通路が存在する。
【0009】
この発明は特に20mmから150mmまでの外径を備える軸受ブッシュに関する。
【0010】
軸受ブッシュ組立体の幅B1 は両軸受ブッシュ半部の幅と軸受ブッシュ半部間に形成されたオイル通路の幅とを含んでいる。この幅B1 は軸受ハウジング内の軸受ブッシュ収容部或いは軸受孔の幅B3 を通して与えられる。縁に置かれた軸方向軸受部材を備える軸受ブッシュ半部の場合には、軸受ブッシュ半部が軸受孔に対して突き出しているので、B3 <B1 である。一般に、B3 ≦B1 が適用される。
【0011】
両軸受ブッシュ半部の間にはオイル通路が形成されていて、その深さのためにこの発明により軸受ブッシュ半部の全厚さが用いられる。両軸受ブッシュ半部の幅B2 がオイル溝を備える従来の個々の軸受ブッシュの支持面の幅と一致するときに、オイル通路は従来の軸受ブッシュにおけるオイル溝より大きい流れ横断面を有する。逆に従来の軸受ブッシュと同じ流れ横断面の場合には、支持面割合が軸受ブッシュ半部の適切な大きな幅によって増加され得る。
【0012】
流れ横断面が軸受ブッシュ半部の距離を幅B2 の選択によって互いに確定されるから、オイル通路の幅とそれによる流れ横断面は利用者自体から選択され得る。
【0013】
オイル溝の費用のかかる製造が省略され、切屑が生じなく、同時に軸受ブッシュ半部における著しい割合が節約される。
【0014】
特に各軸受ブッシュ半部はそれぞれに一縁に軸方向軸受部材を有する。従来のつば軸受ブッシュの場合には、両軸方向軸受部材の間の中間つば寸法が確定している間に、これは今や自由に選択され得る。それにより軸受ブッシュ半部は可変に挿入できる。
【0015】
特に両軸受ブッシュ半部は等しい。それにより製造が著しく簡略化される。
【0016】
特にオイル通路は軸受ブッシュ半部の全周辺長さにわたり延びている。両軸受ブッシュ半部は接触しない。
【0017】
少なくとも二つの半円状の軸受ブッシュ半部の特別な使用は、オイル潤滑された軸受のために、特に車両エンジンに設けられている。
【0018】
部分面に互いに位置する第一と第二の軸受ブッシュ半部を備えるオイル潤滑された軸受は、両軸受ブッシュの少なくとも一つが二つに分割されていて二つの半円状の軸受ブッシュ半部から成り立ち、この軸受ブッシュ半部が軸受の軸方向に互いに間隔を置いて配置されていて、軸受ブッシュ半部の間に周辺方向に延びているオイル通路が形成されていることを特徴とする。
【0019】
幅B3 の軸受孔を有する軸受ハウジングとその軸受ハウジングに挿入された幅B1 の軸受組立体とを備えて、上ブッシュと下ブッシュから成り、軸受ハウジングが上ブッシュに少なくとも一つのオイル供給部を有するこの発明のクランク軸主軸受は、上ブッシュが二つに分割されて二つの半円状の軸受ブッシュ半部から成り、軸受ブッシュ半部が軸受の軸方向に間隔を置いて互いに配置されていて、軸受ブッシュ半部の間に周辺方向に延びているオイル通路が形成されていて、そのオイル通路にはオイル供給部が連通することを特徴とする。
【0020】
幅B3 の軸受孔を有する軸受ハウジングとその軸受ハウジングに挿入された上ブッシュと下ブッシュを備えていて、ハウジングが下ブッシュに少なくとも一つのオイル供給部を有するこの発明の質量補償伝動装置軸受は、下ブッシュが二つに分割されて二つの半円状の軸受ブッシュ半部から成り、軸受ブッシュ半部が軸受の軸方向に間隔を置いて互いに配置されていて、軸受ブッシュ半部の間に周辺方向に延びているオイル通路が形成されていて、そのオイル通路にはオイル供給部が連通することを特徴とする。
【0021】
クランク軸主軸受と質量補償伝動装置軸受の軸受ブッシュ半部は軸方向軸受部材を備えているか、或いは軸方向軸受部材なしですむ。
【0022】
内径D並びに部分面を備える幅B2 の半円状の軸受ブッシュ半部は、軸受ブッシュ半部が軸受の幅B2 の第二半円状の軸受ブッシュ半部対幅B1 の軸受ブッシュにより構成でき、両軸受ブッシュ半部が軸方向に間隔を置いて互いに配置されていて、軸受ブッシュ半部の間に周辺方向に延びているオイル通路が存在し、そして軸受ブッシュ半部のmm単位の軸受ブッシュ外径D対mm単位の幅B2 の関係Vに適用されて:
20≦D≦24のための2.5≦V≦6
24<D≦40のための2.4≦V≦8.5
40<D≦60のための 4≦V≦12
60<D≦100のための 5≦V≦20
100<D≦150のための4.8≦V≦20
であることを特徴とする。
【0023】
特に、半円状の軸受ブッシュ半部は外周面に対して突き出す部分面において少なくとも一つの保持カムを有する。特別な実施態様によると、各部分面にはそれぞれ一つの保持カムが設けられている。各部分面におけるそれぞれに少なくとも一つの保持カムの予定は、高い並び精度が保証され、軸受収容部における軸方向移動が阻止されるという利点を有する。
【0024】
特に、半円状の軸受ブッシュ半部は軸受ブッシュ半部の一縁に配置されている軸方向軸受部材を特徴とする。
【0025】
軸受ブッシュ半部は、天領域に関して部分面(≦0.03)の僅かな斜状態を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の例としての実施態様は次に図面に基づいて詳細に説明される。
【実施例】
【0027】
図1には、上ブッシュ4と下ブッシュ3を備える軸受1が図示されている。下ブッシュ3が一部材の滑らかブッシュである間に、上ブッシュ4が二つに分割されて、間隔を置いて互いに配置されている幅B2 の二つの半円状軸受ブッシュ半部11を備える幅B1 の軸受ブッシュ組立体10から成るので、両軸受ブッシュ半部11の間には中間室12が形成されて、組み立てられた状態では軸受ハウジングと一緒にオイル通路14を形成する。これは図3との関係で説明される。
【0028】
図2には、軸受1の別の実施態様が図示されており、同様に上ブッシュ4が二つに分割されて形成されている。軸受ブッシュ組立体10は二つの互いに間隔を置いて配置された軸受ブッシュ半部11’から形成されており、軸受ブッシュ半部がその外壁にそれぞれに一つの軸方向軸受部材13を有する。そのような軸受はとりわけクランク軸主軸受2として使用される。この例でも、下ブッシュ3は一部材の滑らかブッシュから成り立ち。
【0029】
二つに分割されて二つの互いに間隔を置いて配置された軸受ブッシュから成る下ブッシュは唯一の上ブッシュと組合せで質量補償伝動装置で同様に使用できる。
【0030】
図3には、図2に示された軸受1を通る部分断面が図示されており、軸受ブッシュ組立体10を通る断面が延びている。追加的に、中心にオイル供給部21を有する軸受ハウジング20が記入されている。このオイル供給部21は、オイル通路14を形成する両軸受ブッシュ半部11’の間の中間室12に連通する。全軸受ブッシュ厚さLDがオイル通路14のために使用できる。
【0031】
図3はクランク軸主軸受2の代用であり、軸受ハウジング20が連接棒によって形成されている。軸受収容部22はこの例では大きな連接棒目である。
【0032】
図3は質量補償伝動装置軸受の代用であり、この場合には、下ブッシュが二つの軸方向において並んで配置された軸受ブッシュ半部によって形成されている。
【0033】
図4には、斜視表示で軸方向軸受部材13を軸受ブッシュ半部が図示されている。半円状の軸受ブッシュ半部11’の各部分面16が、外周面に対して突き出す保持カム15を有する。
【0034】
次の表には、種々の軸受ブッシュ直径のために、軸受ブッシュ半部の幅B2 とV=D/B2 が記載されて、Dは軸受ブッシュ外径を示す。追加的に軸受ブッシュ組立体のそれに属する幅B1 が形成されている。それ故に、B1 はオイル通路14の幅B4 も含んでいる。
【0035】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施態様による斜視表示の軸受を示す。
【図2】別の実施態様による軸受を斜視表示で示す。
【図3】組み立てられた状態の図2から軸受組立体を通る断面を示す。
【図4】別の実施態様による軸受ブッシュ半部を示す。
【符号の説明】
【0037】
1.....軸受
2.....クランク軸主軸受
3.....第一軸受ブッシュ
4.....第二軸受ブッシュ
10....軸受ブッシュ組立体
11、11’...半円状軸受ブッシュ半部
12....中間室
13....軸方向軸受部材
14....オイル通路
15....保持カム
16....部分面
20....軸受ハウジング
21....オイル供給部
22....軸受収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受(1)の幅B1 の軸受ブッシュ組立体において、二つの軸方向に間隔を置いた互いに配置されて幅B2 <B1 /2の半円状の軸受ブッシュ半部(11、11’)を備えていて、軸受ブッシュ半部(11、11’)の間には軸受ブッシュ半部(11、11’)の周辺方向に延びているオイル通路(14)が存在することを特徴とする軸受ブッシュ組立体(10)。
【請求項2】
各軸受ブッシュ半部(11、11’)はそれぞれに一縁に軸方向軸受部材(13)を有することを特徴とする請求項1に記載の軸受ブッシュ組立体(10)。
【請求項3】
両軸受ブッシュ半部(11、11’)は等しいことを特徴とする請求項1或いは2に記載の軸受ブッシュ組立体(10)。
【請求項4】
オイル通路(14)は軸受ブッシュ半部(11、11’)の全周辺長さにわたり延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の軸受ブッシュ組立体(10)。
【請求項5】
部分面(16)に互いに位置している第一と第二の軸受ブッシュ(3、4)を備えるオイル潤滑された軸受(1)において、両軸受ブッシュの少なくとも一つ(3或いは4)が二つに分割されていて二つの半円状の軸受ブッシュ半部(11、11’)から成り立ち、この軸受ブッシュ半部が軸受(1)の軸方向に互いに間隔を置いて配置されていて、軸受ブッシュ半部(11、11’)の間に周辺方向に延びているオイル通路(14)が形成されていることを特徴とする軸受(1)。
【請求項6】
幅B3 の軸受孔を有する軸受ハウジング(20)とその軸受ハウジング(20)に挿入されて上ブッシュ(4)と下ブッシュ(3)から成る幅B1 の軸受組立体とを備えて、軸受ハウジング(20)が上ブッシュ(10)に少なくとも一つのオイル供給部(21)を有するクランク軸主軸受(2)において、上ブッシュ(4)は二つに分割されて二つの半円状の軸受ブッシュ半部(11’)から成り、軸受ブッシュ半部が軸受の軸方向に間隔を置いて互いに配置されていて、軸受ブッシュ半部(11’)の間に周辺方向に延びているオイル通路(14)が形成されていて、そのオイル通路にオイル供給部(21)が連通することを特徴とするクランク軸主軸受。
【請求項7】
幅B3 の軸受孔を有する軸受ハウジング(20)とその軸受ハウジング(20)に挿入された上ブッシュ(4)と下ブッシュ(3)を備えていて、ハウジング(20)が下ブッシュ(3)に少なくとも一つのオイル供給部(21)を有する質量補償伝動装置軸受において、下ブッシュ(3)が二つに分割されて二つの半円状の軸受ブッシュ半部(11’)から成り、軸受ブッシュ半部が軸受の軸方向に間隔を置いて互いに配置されていて、軸受ブッシュ半部(11’)の間に周辺方向に延びているオイル通路(14)が形成されていて、そのオイル通路にオイル供給部(21)が連通することを特徴とする質量補償伝動装置軸受。
【請求項8】
内径D並びに部分面(16)を備える幅B2 の半円状の軸受ブッシュ半部(11、11’)において、軸受ブッシュ半部(11、11’)が軸受(1)の幅B2 の第二半円状の軸受ブッシュ半部(11、11’)対幅B1 の軸受ブッシュにより構成でき、両軸受ブッシュ半部(11、11’)は軸方向に間隔を置いて互いに配置されていて、軸受ブッシュ半部(11、11’)の間に周辺方向に延びているオイル通路(14)が存在し、そして軸受ブッシュ半部(11、11’)のmm単位の軸受ブッシュ外径D対mm単位の幅B2 の関係Vに適用される: 20≦D≦24のための2.5≦V≦6
24<D≦40のための2.4≦V≦8.5
40<D≦60のための 4≦V≦12
60<D≦100のための 5≦V≦20
100<D≦150のための4.8≦V≦20
であることを特徴とする半円状の軸受ブッシュ半部。
【請求項9】
外周面に対して突き出す部分面(16)において少なくとも一つの保持カム(15)を備えることを特徴とする請求項8に記載の半円状の軸受ブッシュ半部。
【請求項10】
各部分面(16)において少なくとも一つの保持カム(15)を備えることを特徴とする請求項8或いは9に記載の半円状の軸受ブッシュ半部。
【請求項11】
軸方向軸受(13)が軸受ブッシュ半部(11’)の縁に配置されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の半円状の軸受ブッシュ半部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−544188(P2008−544188A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517427(P2008−517427)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006061
【国際公開番号】WO2006/136432
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(501014452)フエデラル―モーグル・ウイースバーデン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (21)
【Fターム(参考)】