説明

軸受及び回転機械

【課題】使用を継続しても、各パッドの荷重分担率を均等化できるティルティングパッド型の軸受を提供する。
【解決手段】本発明の軸受10は、ハウジング12に支点L1で支持され、支点a1と支点bを有する第1レベラ14と、ハウジング12に支点L2で支持され、支点a2と支点cを有する第2レベラ15とを備える。パッド11Aは、荷重伝達体13を介して第1レベラ14の支点a1、第2レベラ15の支点a2に支持される。パッド11Bは、第1レベラ14の支点bに支持される。パッド11Cは、第2レベラ15の支点cに支持される。本発明は、パッド11Aで受けた軸受け荷重を、パッド11B、パッド11Cに分担させることにより、各パッドにおける荷重分担率の均等化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば蒸気タービンの滑り軸受のように、タービンや発電機等の大型回転機械の回転軸を支承するティルティングパッド型の軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タービンや発電機等の大型回転機械においては、図4に示すように、その回転軸101を支承するために、ティルティングパッド型の軸受110が多く用いられている。
この軸受110は、軸受ハウジング112に配設され、ピボット113を中心にティルティング(tilting:傾転又は遥動)可能な複数個のパッド111よりなり、回転軸101の回転により面間115に楔形油膜を形成するものである。この軸受110は、荷重方向に軸中心が偏心するため振動安定性に優れており、高速回転機械で広く採用されている。
【0003】
このような軸受110においては、キャリーオーバー現象によるパッド111の温度上昇が軸受の負荷能力を制限している。このキャリーオーバー現象とは、周方向へ複数に分割されて配設されているパッド111間において、回転軸101の回転方向上流側に配置されたパッド111上に潤滑膜を形成した潤滑油Lhが、隣接するパッド111間で十分に冷却されることなく高温のまま下流側のパッド111に流れ込む現象のことである。この結果、下流側のパッド111に給油される低温の潤滑油Lcは、上流側から流れ込む高温の作動油潤滑油Lhとの混合により、面間115の入口に給油される初期温度が上昇する。
【0004】
例えばパッドを5つ有するON PAD方式の軸受は、回転軸のアライメント調整がし易い長所があるが、荷重方向の下方に配置される3枚のパッドの中で、真下のパッドに荷重が集中し、左右両側に配置される2つのパッドが負担する荷重は小さい。このため回転軸の真下のパッドは軸受温度が高くなりやすく、水平方向の油膜剛性(ばね)が小さいため、水平方向外乱に対して弱いという指摘がなされていた。
特許文献1には、各パッドの荷重分担率が均等化された軸受として、荷重方向の真下のパッドの軸受け面の曲率を軸受中心と同心に形成し、他の軸受け面の曲率を軸受中心と非同心状に形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−180816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の軸受は、各パッドの軸受け面の曲率を変えることにより、軸受け荷重の均等化を図ることにより、軸受温度が高くなりすぎるのを防止する。
しかし、軸受の使用に伴って、軸受け面の曲率は変化する。したがって、当初は初期の目的を達成できるが、長期間にわたって使用を継続すると軸受け面に摩耗が生じ、各パッドの荷重分担率を均等化するという効果は減退する。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、使用を継続しても、各パッドの荷重分担率を均等化できる軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、一つのパッドが受けた荷重を、ティルティング可能なレベラを介して隣接する他のパッドに伝達、負荷する構成を採用する。そうすることにより、荷重が集中するパッドから、他のパッドに荷重を負荷して分担させることで、軸受け荷重の均等化を図る。
すなわち本発明は、複数のパッドがハウジングの周方向に配列されるティルティングパッド型の軸受であって、ティルティングが可能にハウジングに支点Lで支持され、支点Lを中心にして、周方向の一方側の支点aと、周方向の他方側の支点bとを有するレベラを備える。本発明の軸受は、複数のパッドとして、互いに隣接するパッドAとパッドBとを含む。そして、パッドAはレベラの支点aにおいてティルティングが可能に支持され、パッドBはレベラの支点bにおいてティルティングが可能に支持されることを本発明の軸受は特徴とする。
本発明の軸受は、レベラを用いて各パッドが分担する荷重の均等化に寄与するものであり、この効果は、軸受を長期間にわたって使用しても変わらない。
【0008】
本発明の軸受において、パッドA及びパッドBのレベラによる支持は、パッドA及びパッドBの少なくとも一方をレベラに直接接触させて支持できるし、他の部材を介して間接的に支持できる。
【0009】
以上では、隣接する2つのパッドA及びパッドBに関して述べたが、例えばパッドを5つ有する軸受の場合には、荷重方向(鉛直方向)の最も下に配置されるパッドAから、その両側に隣接して配置されるパッドB、パッドCに荷重を負荷させることが好ましい。本発明はこの好ましい形態の軸受を提供する。
この軸受は、第1レベラと第2レベラとを備える。
第1レベラは、ティルティングが可能にハウジングに支点L1で支持され、支点L1を中心にして、周方向の一方側の支点a1と、周方向の他方側の支点bを有する。
第2レベラは、ティルティングが可能にハウジングに支点L2で支持され、支点L2を中心にして、周方向の一方側の支点a2と、周方向の他方側の支点cを有する。
パッドA、パッドB、パッドCは、第1レベラ、第2レベラに、以下のように支持される。
パッドAは、第1レベラの支点a1及び第2レベラの支点a2においてティルティングが可能に支持される。なお、支点a1と支点a2とは、位置が一致する場合と異なる場合とがある。
パッドBは、第1レベラの支点bにおいてティルティングが可能に支持される。
パッドCは、第2レベラの支点cにおいてティルティングが可能に支持される。
【0010】
以上の軸受は、パッドAが受ける荷重を、第1レベラを介してパッドBに負荷させるとともに、第2レベラを介してパッドCに負荷させる。したがって、パッドAで受けた軸受け荷重を、パッドB、パッドCにも分担させることにより、各パッドにおける荷重分担率の均等化に寄与する。
【0011】
以上の軸受は、2つの形態を含む。
第1の形態は、パッドAを支持する荷重伝達体を備える。そして、パッドAは、荷重伝達体を介して、第1レベラの支点a1と、第2レベラの支点a2とで支持される。つまりこの形態は、パッドAの受ける荷重を、間接的に第1レベラ、第2レベラに負荷させる。この形態は、支点a1と支点a2とが周方向において異なる位置に存在する。
【0012】
第2の形態は、第1の形態の荷重伝達体の機能を、レベラに持たせる。つまり、第2の形態は、パッドAは、第1レベラにより、支点a1で直接支持される。パッドAを支持する第1レベラを、第2レベラで支持する。そうすることにより、パッドAは、第1レベラを介して第2レベラに間接的に支持される。このとき、支点a1と支点a2とは径方向において同じ位置に存在する。
本発明は、以上の軸受によって回転軸が支承される回転機械を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一つのパッドが集中的に受ける荷重を、ティルティング可能なレベラを介して隣接する他のパッドに負荷する構成を採用する。そうすることにより、荷重が集中するパッドから、他のパッドに荷重を分担させて、各パッドにおける荷重分担率の均等化に寄与する。本発明の軸受は、レベラを用いるものであり、軸受け面の曲率の経年変化に比べると、レベラの経年変化は無視できる。したがって、本発明の軸受は、使用を長期間継続しても、荷重分担率の均等化の効果を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る軸受の構造を示す断面図である。
【図2】第2実施形態に係る軸受の構造を示す断面図である。
【図3】本発明を6つのパッドを備える軸受に適用する形態を示す図である。
【図4】ティルティングパッド型の軸受の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるティルティングパッド型の軸受10の構成を模式的に示す断面図である。
軸受10は、軸受ハウジング(以下、ハウジング)12内に、5つのパッド(以下、パッド)11A、11B、11C、11D、11Eが周方向に配列して収納される。軸受10は、パッド11A〜11Eにより、断面が円の回転軸1を支承するジャーナル軸受である。
【0016】
<パッドについて>
円弧状の断面を有する各パッド11A〜11Eは、内周面に回転軸1の支承面を備える。また、各パッド11A〜11Eは、ハウジング12と対向する外周面に、ハウジング12に向けて突出するピボット11a、11b、11c、11d、11eが形成されている。
パッド11Aは、その下に配置される荷重伝達体13の上面に接するピボット11aの先端を支点(支点a)として、荷重伝達体13にティルティング可能に支持されている。
パッド11Bは、その下に配置される第1レベラ14の上面に接するピボット11bの先端を支点(支点b)として、第1レベラ14にティルティング可能に支持されている。
パッド11Cは、その下に配置される第2レベラ15の上面に接するピボット11cの先端を支点(支点c)として、第2レベラ15にティルティング可能に支持されている。
パッド11D、パッド11Eは、ハウジング12の内壁に接するピボット11d、11eの先端を支点として、ティルティング可能に支持されている。
【0017】
各パッド11A〜11Eの具体的な構成、さらには、パッド11A〜11Eのハウジング12内における具体的な収納構成は、従来公知の手段に従えばよい。例えば、回転軸1を支承する面には、ホワイトメタル等の合金からなる支持部材を配置することができる。また、パッド11A〜11Eを、回転軸1の回転方向に対する移動を防止する手段、径方向への抜け止め手段を適宜設けることができる。さらに、潤滑油を供給する手段を設けることができる。
【0018】
<荷重伝達体について>
荷重伝達体13は、パッド11Aが受けた荷重を、第1レベラ14と第2レベラ15に伝達する。
荷重伝達体13は、パッド11Aに対向する側に平坦な支持面131を備えている。また、荷重伝達体13は、ハウジング12に対向する側に、ピボット132、ピボット133を備えている。ピボット132とピボット133は、支点aを中心にして、対称の位置に形成されている。ピボット132は第1レベラ14に支持され、ピボット133は第2レベラ15に支持される。したがって、パッド11Aは、荷重伝達体13を介して間接的に第1レベラ14と第2レベラ15に支持される。また、パッド11Aが受けた荷重は、荷重伝達体13を介して、第1レベラ14と第2レベラ15に均等に分配される。
【0019】
<第1レベラ、第2レベラについて>
第1レベラ14は、荷重伝達体13を介してパッド11Aからの荷重を受けるとともに、パッド11Bに伝達、負荷する。また、第2レベラ15は、荷重伝達体13を介してパッド11Aからの荷重を受けるとともに、パッド11Cに伝達、負荷する。
【0020】
<第1レベラ>
円弧状の断面を有する第1レベラ14は、第1内周面141と、第1内周面141よりも曲率半径の小さい第2内周面142とを有する。第1内周面141は支点a1を有し、また、第2内周面142は支点bを有する。荷重伝達体13は支点a1において、また、パッド11Bは支点bにおいて、第1レベラ14に支持される。相対的に曲率半径の大きい第1内周面141に対応する部分は肉厚が薄く、第1内周面141よりも内側に空隙が形成される。
【0021】
第1レベラ14の外周面143には、ピボット溝144が形成されている。ピボット溝144に対応して、ハウジング12にピボット16が設けられている。ピボット16の先端がピボット溝144において第1レベラ14(外周面143)を支持する。第1レベラ14は、ティルティング可能にこの支点L1にて支持される。
なお、支点L1から支点a1までの距離をl1(エルイチ)、支点L1から支点bまでの距離をl2(エルニ)とする。
【0022】
<第2レベラ>
円弧状の断面を有する第2レベラ15は、第1内周面151と、第1内周面151よりも曲率半径の小さい第2内周面152とを有する。第1内周面151は支点a2を有し、また、第2内周面152は支点cを有する。荷重伝達体13は支点a2において、また、パッド11Cは支点cにおいて、第1レベラ15に支持される。相対的に曲率半径の大きい第1内周面151に対応する部分は肉厚が薄く、第1内周面151よりも内側に空隙が形成される。
【0023】
第2レベラ15の外周面153には、ピボット溝154が形成されている。ピボット溝154に対応して、ハウジング12にピボット17が設けられている。ピボット17の先端がピボット溝154において第2レベラ15(外周面153)を支持する。第2レベラ15は、ティルティング可能にこの支点L2にて支持される。
なお、支点L2から支点a2までの距離をl3(エルサン)、支点L2から支点cまでの距離をl4(エルヨン)とする。
なお、軸受10は、第1内周面141に対応する肉厚の薄い部分に荷重伝達体13のピボット132を収容し、また、第1内周面151に対応する肉厚の薄い部分に荷重伝達体13のピボット133を収容することで、荷重伝達体13を配置するスペースを小さくできる。
【0024】
<作用>
軸受け10は、回転軸1の荷重が、専らパッド11Aに負荷される。しかし、パッド11Aは、荷重伝達体13と第1レベラ14を介してパッド11Bと繋がっている。また、パッド11Aは、荷重伝達体13と第2レベラ15を介してパッド11Cと繋がっている。したがって、荷重Wは、以下のようにして、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cにより分配される。
【0025】
荷重伝達体13がパッド11Aから受けた荷重Wは、第1レベラ14と第2レベラ15に分配される。ここで、支点aから支点a1までの距離と支点aから支点a2までの距離が等しいので、第1レベラ14と第2レベラ15には1/2ずつ分配され、第1レベラ14と第2レベラ15に負荷される。
【0026】
第1レベラ14は、支点L1においてティルティング可能に支持されている。したがって、荷重伝達体13から支点a1に負荷を受けると、支点L1を中心にして、第1レベラ14には時計回りの回転モーメントが生じる。第1レベラ14が時計回りの回転モーメントを受けることにより、第1レベラ14は支点bにおいてパッド11Bに負荷される。この回転モーメントは、支点L1の位置で0(ゼロ)になるように、支点L1の左右に作用する荷重がバランスする。
【0027】
第2レベラ15は、支点L2においてティルティング可能に支持されている。したがって、荷重伝達体13から支点a2に負荷を受けると、支点L2を中心にして、第2レベラ15には反時計回りの回転モーメントが生じる。第2レベラ15が反時計回りの回転モーメントを受けることにより、第2レベラ15は支点cにおいてパッド11Cに負荷される。この回転モーメントは、支点L2の位置で0(ゼロ)になるように、支点L2の左右に作用する荷重が釣り合う。
以上のようにして、軸受10は、回転軸1からの荷重Wを、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cで分担して受ける。
【0028】
<荷重を均等分担する場合>
ここで、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cに作用する荷重を、各々P、P及びPとする。また、回転軸1の軸心とパッド11Aの中心(支点a)とを通る直線と、回転軸1の軸心とパッド11Bの中心(支点b)またはパッド11Cの中心(支点c)とを通る直線とのなす角度をθとすると、式(1)が成立する。
+Pcosθ+Pcosθ=W…(1)
【0029】
パッド11A、パッド11B及びパッド11Cで分担する荷重(P)を等しくする、つまり式(2)を満足する条件を考える。
=P=P=P…(2)
【0030】
いま、荷重伝達体13の支点aと支点a1間の距離と、支点aと支点a2間の距離はl(エル)で等しい。したがって、第1レベラ14、第2レベラ15は、荷重伝達体13から、各々P/2(P/2)ずつ荷重を受ける。第1レベラ14は、この荷重(P/2)と荷重P(P)とが釣り合うので、式(3)を満足する。第2レベラ15についても同様である。このように、第1レベラ14、第2レベラ15のl1/l2(以下、レベラム比)を2にすれば、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cで分担する荷重(P)を均等にできる。
P/2(P/2)×l1=P(P)×l2
l1/l2=2…(3)
【0031】
一方、このときにパッド11A、パッド11B及びパッド11Cが分担する均等の荷重Pは、式(4)に示す通りである。
P(2cosθ+1)=W
∴P=W/(2cosθ+1)…(4)
【0032】
<後流側パッドの分担荷重を小さくする場合>
以上では、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cが分担する荷重を均等にする例を示したが、本発明はこれに限定されない。
前述したキャリーオーバー現象により、回転軸1の回転方向の下流側のパッドの温度が高くなりやすい。そこで、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cの温度差を小さくするためには、P、P及びPに関して、式(5)を満足させることが好ましい。式(5)を満足させるためには、レベラム比を調整すればよい。その一例を、表1に示しておく。
>P>P…(5)
【0033】
【表1】

【0034】
<第2実施形態>
本発明による第2実施形態を、図2を参照して説明する。
第2実施形態に係る軸受20は、第1実施形態に係る軸受10で設けていた荷重伝達体13を省略したものである。図2に示す軸受20において、第1実施形態に係る軸受10と同じ構成については、図1と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0035】
軸受20は、第1レベラ24と第2レベラ25を備える。第1レベラ24は、パッド11Aからの荷重を受けるとともに、受ける荷重をパッド11Bに負荷する。また、第2レベラ25は、第1レベラ24を介してパッド11Aからの荷重を受けるとともに、受ける荷重をパッド11Cに負荷する。
【0036】
<第1レベラ>
円弧状の断面を有する第1レベラ24は、内周面241を有する。内周面241は支点a1と支点bを有する。パッド11Aは支点a1において、また、パッド11Bは支点bにおいて、第1レベラ24に支持される。
【0037】
第1レベラ24は、第1外周面242と、第1外周面242よりも曲率半径の大きい第2外周面243とを有する。第2外周面243には、ピボット溝244が形成されている。ピボット溝244に対応して、ハウジング12にピボット16が設けられている。ピボット16の先端がピボット溝244において第1レベラ24(第2外周面243)を支持する。第1レベラ24は、ティルティング可能にこの支点L1にて支持される。
相対的に曲率半径の小さい第1外周面242に対応する肉厚の薄い部分が、係止部245を構成する。
【0038】
<第2レベラ>
円弧状の断面を有する第2レベラ25は、第1内周面251と、第1内周面251よりも曲率半径の小さい第2内周面252とを有する。第1内周面251は支点a2を有し、また、第2内周面252は支点cを有する。パッド11Aは、第1レベラ24を介して支点a2において、また、パッド11Cは支点cにおいて、第2レベラ25に支持される。相対的に曲率半径の大きい第1内周面251に対応する肉厚の薄い部分が、係止部255を構成する。
【0039】
第2レベラ25の外周面253には、ピボット溝254が形成されている。ピボット溝254に対応して、ハウジング12にピボット17が設けられている。ピボット17の先端がピボット溝254において第2レベラ25(外周面253)を支持する。第2レベラ25は、ティルティング可能にこの支点L2にて支持される。
【0040】
<第1レベラと第2レベラとの係止関係>
第1レベラ24と第2レベラ25とは、第1レベラ24の係止部245と第2レベラ25の係止部255とが軸受20の径方向に干渉するように配設される。そうすることにより、係止部245と係止部255とを接触させて、第1レベラ24が受けたパッド11Aからの荷重を第2レベラ25に負荷させる。なお、係止部245と係止部255とは常に接触させるのが好ましい。そこで、軸受20は、ハウジング12と第1レベラ24との間、ハウジング12と第2レベラ25との間に、引張りばね26、27を設けて、係止部245と係止部255との接触を確保している。
【0041】
<作用>
軸受20は、第1レベラ24がパッド11Aから受けた荷重を、パッド11Bに負荷する。また、第2レベラ25は、第1レベラ24から受けた荷重を、パッド11Cに負荷する。以上のようにして、軸受20は、回転軸1からの荷重Wを、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cで分担して受ける。
軸受20は、2つの第1レベラ24と第2レベラ25で、パッド11A、パッド11B及びパッド11Cによる荷重の分担を可能にしている。つまり、第1レベラ24、第2レベラ25に比べてどうしても剛性が低くなる荷重伝達体13(第1実施形態)を設けることがないので、軸受20は、軸受全体としての剛性を高くできる。また、荷重伝達体13を用いるのに比べて、コストの点でも有利である。
【0042】
以上の第1、第2実施形態では、5つのパッドを備えるBetween PAD方式の軸受について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、1つのパッドが受けた荷重を他のパッドにも分担させる機構を提案するものであり、隣接する2つのパッドを備え、一方のパッドが一義的に受ける荷重が大きい場合に適用できる。例えば、6つのパッドを備えるON PAD方式の軸受については、図3に示すように、パッドAとパッドBとの間にレベラB1を設け、また、パッドAとパッドCとの間にレベラB2を設けることにより、荷重を分担してもよい、
また、第1、第2実施形態では、回転軸1による荷重が鉛直方向に作用することを前提としているが、荷重が作用する向きが鉛直方向に対して傾いている場合にも適用できる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…回転軸
10,20…軸受
11A,11B,11C,11D,11E…パッド
12…軸受ハウジング(ハウジング)
13…荷重伝達体、
14,24…第1レベラ、15,25…第2レベラ
16,17…ピボット
a,a1,a2,b,c,L1,L2…支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパッドがハウジングの周方向に配列されるティルティングパッド型の軸受であって、
ティルティングが可能にハウジングに支点Lで支持され、前記支点Lを中心にして、前記周方向の一方側の支点aと、前記周方向の他方側の支点bとを有するレベラと、
前記レベラの前記支点aにおいてティルティングが可能に支持されるパッドAと、
前記レベラの前記支点bにおいてティルティングが可能に支持され、前記パッドAと互いに隣接するパッドBと、を備えることを特徴とする軸受。
【請求項2】
前記パッドA及び前記パッドBの少なくとも一方は、間接的に前記レベラに支持されることを特徴とする請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
複数のパッドがハウジングの周方向に配列されるティルティングパッド型の軸受であって、
ティルティングが可能に前記ハウジングに支点L1で支持され、前記支点L1を中心にして、前記周方向の一方側の支点a1と、前記周方向の他方側の支点bを有する第1レベラと、
ティルティングが可能に前記ハウジングに支点L2で支持され、前記支点L2を中心にして、前記周方向の一方側の支点a2と、前記周方向の他方側の支点cを有する第2レベラと、
前記第1レベラの前記支点a1及び前記第2レベラの前記支点a2においてティルティングが可能に支持されるパッドAと、
前記第1レベラの前記支点bにおいてティルティングが可能に支持される、前記パッドAと互いに隣接するパッドBと、
前記第2レベラの前記支点cにおいてティルティングが可能に支持される、前記パッドAと互いに隣接するパッドCと、
を備えることを特徴とする軸受。
【請求項4】
前記パッドAを支持する荷重伝達体を備え、
前記パッドAは、
前記荷重伝達体を介して、
前記第1レベラの前記支点a1と、前記支点a1とは前記周方向において離間する前記第2レベラの前記支点a2とで支持されることを特徴とする請求項3に記載の軸受。
【請求項5】
前記パッドAは、前記第1レベラにより、前記支点a1で直接支持され、
前記第1レベラが前記第2レベラに支持されることにより、前記パッドAは、前記第1レベラを介して前記第2レベラに間接的に支持されることを特徴とする請求項3に記載の軸受。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の軸受によって回転軸が支承されることを特徴とする回転機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164187(P2010−164187A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9236(P2009−9236)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】